という状況で、PENN使いなら1台ぐらい持っててもおかしくない、PENNの主にバスを釣るための(箱にもバスのイラストが描かれている)ベイトキャスティングリールである、レベルマチックシリーズには手が出ていなかった。まあ後発のインターナショナル975は持ってるしいらんだろと。ところがこれが日課のネットオークション・ネットフリマ巡回の時に、送料込み6500円というお安い値段でチョイボロ目の「レベルマチック920」が売りに出されているのを見つけてしまった。相場的には1万円チョイ切りぐらいなのでかなりのお買い得品である。正直いらんリールなので迷った。迷ったけど「迷ったら買っておけ」は蒐集家にとっての鉄則だといつも書いているし、いつものようにスルスルッとマウスが滑ってポチチであった。「ある」のが悪い!!そしてアタイ病気がにくいッ!!!
まあ、PENNとかABUとかの実用機は買った値段ぐらいで売れるのでいらなくなったら売れば良いぐらいのつもりだったけど、このリールなかなかにというか相当に面白い。見た目ももろにアンバサダーっぽいし、平行巻機構とかもABUのパクリ(丸ABUはフルーガーの影響らしい)臭い。遠心ブレーキの効きが強すぎるのでもっと小さいブレーキブロックをと思うも、ミスティックリールパーツさん海外発送やめてしまったから、そもそもPENNの部品自体手に入れにくくなったんだよなと思ったら、丸アブのそれがそのまま使えて、さすがは丸アブのアフターパーツの豊富さよという感じであっさり解決したぐらいで丸アブの影響はもろに受けてるのは間違いない。
1970年代の同じような時代に、日本じゃ丸アブ丸パクリのダイワ「ミリオネア」初代とかが作られてたぐらいで(訴訟沙汰になったんだっけ?)、PENNも丸アブっぽいリール作りたかったんだろうなと思って、見るからに似たような設計だろうし、だったら買うほどのこともないだろうと思っていた。でも買って良かった。見た目はアンバサダー、中身はPENN!予想外にメチャクチャ面白いリールだったので、いつものように分解整備しながら語らせていただこう。ご用とお急ぎでない方はごゆるりと楽しんでいってね。 まずは、PENN両軸なのでハンドルナットは独特の形状で、凹った部分にねじ山をハメることで緩み防止になっている。このハンドルナット専用の工具がPENN両軸を箱付きで買うとついてきたりするので、我が家にもあって余裕の表情で持ち出してみたら、サイズが合わなくて結局モンキーレンチで回した。固着してるとかじゃなければモンキで回りますが、もちろん専用工具推奨。ネットフリマとかで売ってます。でハンドルとドラグホイールを外すとドラグホイールが回ってネジで締まっていくとメインギアの上にあるドラグワッシャー、パッドを押さえることになるスペーサーが引っ張り出せるんだけど、これが円筒形の筒状で、中に収まるメインギアを回す芯の刺さった軸が骨太い。樹脂製とワッシャーを重ねている、なんならインスタントアンチリバース(IAR)の逆転しないベアリングが入ってたりするアンバサダーと比べてエラい太くてさすがPENN”さすペン”という感じである。ちなみにハンドルは見てのとおりシングル。ギア比は4:1と低めで力強く巻ける感じ。 でサイドプレート側から外して、スプールをすぽっと抜くと、遠心ブレーキもアンバサダー方式だし(アンバサダー用の社外品極小パッドに換装)、グルグル棒一本方式の平行巻機構も同じだし、ここまでだとアンバサダーっぽい。ちなみにフットは後期モデルではアンバサダーでいうと7000cみたいなプレート型のものになっている。こいつはプッシュボタンや逆転防止の形式を見ると後期型っぽいんだけど、フットは古い形式のがついているので古い個体に新しいパーツを換装してあるのかニコイチなのか、イマイチ年代特定しにくい個体。いずれにせよ長期にわたって同じモデルを売り続けマイナーチェンジで改良していくのは、これまたさすぺン。ちなみにミスティックさんところのレベルマチック仕様表で見ると登場は70年代中頃で、製造終了は2004というご長寿モデル。 ただ、ここからが独特で、丸アブとかのメカプレート方式とフレーム構造に慣れていると、いきなり本体を外したら”本体蓋”の裏に直接ギアだのクラッチ板だの主要なメカがくっついていて、そもそも鳥籠型のフレーム構造じゃなくて、横棒のリムとフットをネジ止めして組み立てる方式になっているので驚く。これあれだ、ペンの旧型セネターとか樹脂製プレートを金属板で補強しつつリムとフットをネジ止めして堅牢な両軸受けリールに仕上げている、まさにその方式の蹈襲で、見た目はアンバサダーっぽいけど、構造やらの設計的にはペンの従来型の両軸機種の発展系であると理解した。出自が全く違うといっていい。ちなみにインターナショナル975はアルミ削り出しの一体フレームで、なんなら今の丸ABUにIARが入ってるのと同じようにハンドル基部に瞬間的逆転防止機構も入っているし、こちらはペンインターナショナルシリーズの系統に入れられているとはいえ、シマノ「カルカッタ」の流れをも汲むわりと今時のありがちなアルミ削り出しフレームの丸型ベイトキャスティングリールで、その印象もあってレベルマチックがこんなに独自色の強い機種だとは想定外だった。ちなみにミスティックさんところの部品販売上での仕分け的にリールは「コンベンショナルリールパーツ」「スピニングリールパーツ」「インターナショナルリールパーツ」「フライリールパーツ」に分けられていて、レベルマチックは”従来の”とか”伝統の”という意味の「コンベンショナル」に分類され、インターナショナル975は当然「インターナショナル」に分類されている。 でもって、分解進めてメインのギア周りを分解。本体蓋?にネジ4本で止められている主要メカ部分をパカッと外す。メインギアも外してギア上のドラグを見ていくと、小型機だけど3階建ての多板方式なのはさすぺンで、これが70年代の設計とは思えないぐらいに調整幅もあれば、キュッと締めるのもできるし、滑り出しも良くシャクリもしない「PENNはドラグが良い」の定評を裏切らない良いドラグ。同時代のアンバサダーのドラグも実用充分に良いドラグだけど、レベルマチックのはバス釣るには過剰と思えるぐらいに性能が良い。どんなドラグパッドとか使ってるんだろうと思ったら、バネ的なモノは一番左端に写ってる金属製の曲げワッシャーのみで、ドラグパッドが革製で、こいつがどうも良い仕事しているようだ。革のドラグパッドは腐ってることも多いけど、コイツは健在でグリス塗り直してそのまま使うことにした。2000年のPENNカタログからの孫引きになるけど、ミスティックさんところのレベルマチックの仕様説明をグーグル翻訳して引用すると「Levelmaticベイトキャスティングリールは、コンパクトで効率的なファイターです。小型軽量でありながら、体躯の大きな捕食魚にも負けないパワーを備えています。頑丈なアメリカ製のこのリールは汎用性も高く、様々な釣り場や用途に対応します。レッドフィッシュのキャスティング、スヌークのプラッギング、パイク、マスキー、ウォールアイのトローリングなど、様々な釣り場に対応します。淡水、海水、汽水を問わず、Penn Levelmaticならどんな場所でも対応可能です。ヒラメをフラットにしたり、大型ブルーフィッシュを倒したり、レッドフィッシュと激しく競り合ったり、ラージマウスバスを水平に釣ったり。」となっていて、小型機(軽量は疑問?)だけどバスだけが対象じゃなくて、何でもイケるぜな心意気で設計したので、バス用としてはドラグにしろ塩水でも錆びにくそうな素材選びにしろ過剰なぐらいの性能を与えられているのだろう。ヒラメをフラットにするのが何を意味するのか良くわからんにしてもたいした自信だ。今まで革のパッドは腐ってカピカピになってるようなのしか経験してなかったので、本来の革パッドの性能はなかなかに優れているのだと理解した。メインギア下の赤ファイバーのワッシャーは滑りと劣化しにくさに勝るテフロン製のモノに換装。
でピニオンギアとクラッチの関係、逆転防止の方式もバラしつつ勉強しておく。一番上の写真ではいま、ピニオンギアが下がって(使用時には引っ込んでたのが出てくるので上がるイメージ)スプール側の俵型した凸部が写真だとピニオンギアにガチッとハマってクラッチが繋がった状態。ここからカチッとボタン手前に引くと、右下の板が押し込まれて、板の上の斜め突起が、ピニオンを押さえている板を、真ん中写真のように矢印の方向に押し上げて、スプールとピニオンの連結が離されて、フリーに回転するようになる。で、ハンドル回し始めると、ハンドル軸の逆転防止のラチェットの下に2カ所蹴飛ばす突起が設けてあって、それが上の写真の上の方のバネで引っ張ってるグニャグニャ曲がった板を蹴っ飛ばしてカチッと元の位置に戻ってクラッチが繋がる。この方式はインターナショナル975でも似たような感じだった。
逆転防止はインターナショナル957ではハンドル基部に一方通行のベアリングが入れられていたけど、レベルマチックでは一番下の写真のようにメインギア下のラチェットにオレンジの矢印のバネでドックを押しつける方式。水色の矢印のところがちょうどラチェットにドックが掛かってるところ。で、レベルマチックは逆転防止がそういう方式なので巻くときカリカリ鳴るリールだよってのを何度か読んだ記憶があるけど、この個体は鳴かないのでグリスかなんかで音がしなくなってるのかなと思ったら、消音化されていた。緑の矢印の青銅の板がメインギアの下面に当たるようになっていて、正回転時にはドックをラチェットに押しつけないようにしている。ABU方式だと青銅版でラチェットを挟むんだけど、こういう方式もあるのね。どうも、消音化したのは最後の方らしく、ミスティックさんところで展開図を見ると、該当部品は15-910DOGで消音化の板が付いてるイラストになってるけど、部品注文画面で確認すると消音化の板は付いていない。
で分解終了すると、ベイトリールって多分今時のでもそんなに複雑化してないはずで、こんなもンかなという感じ。ただちょっと困ったのがこのリール2カ所にボールベアリングが入ってるんだけど、これが外し方が分からん。検索掛けたら外し方があるらしいということは分かったんだけど、具体的な方法までたどり着かなかったので、知ってる人が居たら教えて欲しいところ。展開図みてもCクリップ的な輪っかを外せば外せそうなんだけど、ベアリング自体のリングかなというのはあるけど、細かすぎてなんか違う気がするし外す自信もない。海外サイトの「アラン・タニのリール修理」でタイリー氏が詳細に整備方法紹介してくれているけど、「ベアリングは前回いじったから今回は注油だけにしておくぜ、ハッハッハ」って肝心なところを飛ばしててイーッとなった。あと、クラッチ切るボタンは力業で押して抜く方式のようなので今回はさわらないでおいたぜハッハッハ。 分解したらパーツクリーナーでプシューとして歯ブラシでゴシゴシ、ティッシュでふきふきで、今回グリスはPENN純正、オイルはいつものダイワリールオイルⅡで仕上げておいた。表面のアルマイトが腐食してるところは、とりあえず見栄えより腐食の進行を止めるの優先で、瞬間接着剤で保護しておいた。エポキシやら車用タッチペン塗料とかだと、すぐ剥がれ落ちたりするので、多少白く粉吹いてみっともないけど機能に支障をきたさないようにという処置。今回、デジカメ写真で分解中バチバチ撮りまくってバネとか部品の配置とかを確認できるようにというのはいつもどおりやってたんだけど、慣れてない独特の癖の強い機種だったので、何度もデジカメの小っちゃい画面で確かめるのは、いちいち立ち上げて該当写真探してと面倒くさいので、PCに取り込んで画像ソフトを立ち上げたままでPC前で作業したら、画面大きくて見やすいし順番に写真遡っていけば良いしで作業しやすかった。とはいえ、ピニオンギアを押さえている板を2本のバネを縮めつつ他の部品とも重ねて填めるのはちょっと知恵の輪状態で手こずった。あと本体にメカ部分をネジ止めするとき、外側の2本は樹脂製のクラッチ関連部品を挟み込んでいるので、ネジをきつく締めていくと樹脂部品が変形していくのかいくらでも締め込める感じでやばいので、適当なところで止めておかないとよろしくなさそう。前述したようにフレームが一体型じゃないので、リムやフットをネジ止めしていくときは偏らないように軽く締めてからハンドルグルグル回して良い感じの位置に収めてからしっかり締める、というお作法を怠るとゆがんでどっか干渉してしまうことがあるやにも聞く。でもって、使ってみるとこのリール、多少癖が丸ABUとかとは違うので慣れるまでちょっと戸惑うけど、慣れてしまえば魚釣るのになんの問題もない性能を有しているのが分かる。30年にわたるロングセラーッぷりも頷ける感じで、丸アブのいまだに製造販売されている愛され方には負けるにしても、個性的で”さすPENN”な堅牢な作り、優秀なドラグ。一目でPENNと分かるアルマイトゴールドの存在感。すごく良いリールだと思う。
写真でしか見たことなかったので、ABUだと5000番クラスの大きさだと勝手に思い込んでいたけど、写真でも分かると思うけど赤いアンバサダー5000より一回り小さい感じで、なのに重量は約335gとずっしり重く、イト巻いた状態の5000が約285gなのに比べて、軽量とは言いがたい重量になっている。でも、カップがアルミ以外はれいによってステンと真鍮使いまくりで、丈夫で耐腐食性に優れていて、そういう意図があって重くなってると理解すれば、丸アブより重いといったところで、しょせん小型のベイトキャスティングリールの範疇であり、どうってことはない。いつも書いてるけど、ハリとイトは大事でこだわらないといけない。こいつらに不備があると釣りが破綻するってのは、ちょっと前にトラウマになるぐらい痛い目みて思い知らされたところである。いつも書いてるくせにっていうお粗末な話。竿はまあ好みもあるだろうけど釣果を左右する部分もあり、弘法筆を選ばずで好きなの使ってもハリとイトさえ良ければ、最悪魚バラして終わるだけでよそ様に迷惑掛ける話じゃないので、クッソ使いにくそうな竿みんな使ってるけどご自由にだ。さらにリールまで来たら、投げて巻けりゃ十分で、もろに楽しんで自分の好きなリールで釣れば良いと思ってる。投げて巻くのがトラブルなくできるなんていうのは70年代のリールで既にできてたはずなのに、アホな釣り人に売らんがために変な方向に行ってしまってる今時のリールを”性能が良い”と優良誤認して使うぐらいなら、丸アブならもちろん信頼と実績充分だし、PENNのレベルマチックも悪くない選択肢だと思うのじゃ。まあ、レベルマチックはマニアな人は使ってるから、今更ワシごときが書くまでもないかもだけど、古ABUはお高いけど意外にレベルマチックお手頃価格でっせ、とワシが儲かるわけでもないけどお推めしておきます。
流石に70年代初期の設計ですね
返信削除当時最先端のアンバサダー5000の泣き所のピニオンギアがっつり対策してありますし
クラッチスプリングも折れにくい構造で「両軸のPENN」らしいですね
これ、シーバスに出せば秋なら確実に捕える自信があります。
ドラグが同世代のアンバサダーより遥かに強力だからまた大型ハタ科来たら真価発揮する筈です。
ブレーキブロックなんぞわざわざ取り寄せないでもボールペンの筒を自分の好みのサイズに切ればやりたい放題ですよ。
おはようございます
削除PENNはスピンフィッシャーから入ったので、両軸はあまり馴染みがなかったですが、むしろそっちが”本職”ですよね。
PENN両軸沼は色々遊べそうで深みにハマりつつあります。