2025年8月2日土曜日

大地震ってクソ暑い夏か凍える冬に来る気がするのは気のせいか?

 新潟中越沖地震はクソ夏い時期だったし、阪神淡路や東日本の時は被災した方達が凍えてたのが気の毒で仕方なかった。能登半島地震にいたっては正月に来やがって、神などいないと強く確信を新たにするしだいであったのは記憶に新しい。

 なので、基本的に無神論者なワシは火山帯の上に住んでるような日本人の心得として、神頼みではなく”備えよつねに”のボーイスカウト精神で、リュックに非常用食料とか詰め込んだモノを神棚に乗せていた。コレに水と猫餌を突っ込んで猫用キャリーバックに愛猫を詰め込んで、有事には自転車で避難所まで爆走する予定であった。

 そしてクソ夏い7月30日の朝にそれはやってきた。アリューシャン列島でマグニチュード8を越えるような巨大な地震が生じて、日本でも太平洋側広い範囲で津波注意報が発令され、それはすぐに最大3mの津波警報に格上げされた。注意報の時点で一回避難経路とか確認するためにも練習で行っておこうかと思っていたけど、いきなり本番初舞台である。ただ、遠い震源地なので情報収集なんぼかしてから避難しても間に合いそうではあったので、とりあえずアリューシャン列島の現地情報が来てから行くかと準備しつつネットに張り付いていた。現地映像でデカい津波が来て4m以上とか言ってるので、それが最大時とは限らないので少なくともそれ以上の津波が現地で起こっていて、間違いなくその津波はこちらに向かってきているので、距離があるので減衰するにしてもちょっとシャレにならんなとそそくさと猫をキャリーバックに詰め込んで、ニャーニャー抗議の声をあげるのを無視して、近所のおばちゃんとか呑気に散歩してるので「逃げた方が良さそうですよ」と声を掛けながら小高い丘の上の避難場所に移動する。

 避難場所すぐ到達できるはずなのに、意外に焦っていたのか一回曲がり角を行き過ぎてしまった。時間的余裕があったのでよかったけど、直下型で一刻をあらそうような場面だったら死んでたかも。まあなんとか避難所にたどり着いて駐輪してから海抜40mまでてくてく歩いて登っていくと汗だくになって、6.5キロの愛猫の重みが肩に食い込んだ。

 ありがたいことに避難施設には空調が効いていて、ペット同伴組はまとめて小会議室に案内されてホッと一息。飼い主さん達と話していて、餌はワシ持ってきてるので猫用のドライフードなら融通できますよって話だけど、猫砂どうしようって猫飼い達は心配するのであった。みな自分たちぐらいはどうとでもできるけど、愛猫がこの異常事態にどうなるか不安なようで、その気持ちよく分かるって共感できるだけでもありがたい。外には土もあるのでトイレはそこでしてくれることを祈るのみである。

 で、会議室に落ち着いてしまうと不安な声で鳴き続ける猫をなだめるほかにすることはなく暇。情報は別の部屋とかにはTVがあるし、ワシもタブレットとポケットワイファイは持ってきていたので、逐次ネットニュースとかは確認できる体制。慌てて持ってきたので充電量が怪しく、自治体の施設からの盗電だけど、緊急時ということで目をつぶってもらうことにして充電させてもらう。ついでに、持ってきたモノの確認などして次回以降に活かすとともに「オレ生きて帰れたら避難所のことをブログネタにするんだ」と死亡フラグ臭いことを思う。

 まずは、非常食と水だと思ったけど、これ意外と大きな避難場所では要らないかも?水もすぐに配ってもらえたし、昼ご飯もお湯を注ぐだけでOKのアルファ米の備蓄食料がお昼頃には配布されて、自治体の備えがその辺しっかりしているならなくても良くて、とにかく体の安全だけ確保するのを優先して急いで避難しても良いのかもしれない。暖かい飯があるのに乾パンは食わんよな。逆に役に立ったのは歯ブラシとタオルの洗面セットで、飯のあと歯磨きして顔洗ってスッキリしてというのは特に夏場の汗かきがちな避難においては有用だった。その視点で足らなかったのは衣類のたぐいで、一応寒かったらかぶれるようにアルミブランケットも用意してたけど、エアコンがちょっと効きすぎるぐらいでガサガサ出してきてかぶるのははばかられて、着替え兼寒暖調整用に下着類はなんぼかあると良さげ。その他に持ってきていたのは片付け作業になったら使いそうな、マスクや軍手。電気が来なくなったときの夜間の行動のためのヘッドランプ、火が焚けるようにマッチ、怪しい水が飲めるように口で吸う簡易浄水器あたりと、あとは今回時間があったので暇つぶし用のタブレットとワイファイルーター、当然携帯を持ち込み充電アダプターも持ってきていた。後半ダレてきてからはタブレットでネットやらマンガやらは役に立った。ただこれらは電源が確保できなければ遅かれ早かれただの箱に成り下がるので、電気が復旧しないという状況では、過去事例で被災地からの映像とか見ていると順番待ちして発動発電機で充電していたけど、手巻き式とかで良いのがあったら用意しておくと良いかもしれない。以前持っていたのは試してみたら発電力が小さくて役に立たなかった。

 ちなみに配布された昼ご飯はこんな感じで、炊き込みご飯やらドライカレーやらがあって、ドライカレー食べたけど普通に美味しかった。水でも戻せるアルファー米だそうだけど、暖かい食べ物が胃に収まると人はかなり落ち着くので、可能なら暖かい食べ物は確保したいところ。この辺は個人ではどうにもならないので、自治体なりの対応を期待したい。インフラが死んできつい状況になると、自衛隊が派遣されてきて、暖かい飯とお風呂が提供されるようで、復旧作業と併せてありがたいことである。ただ東南海地震とかデカいのが来ると被災地域が大きすぎて、必ずしも津々浦々手がさしのべられるかというと難しいだろうから、避難所に持ち込むかどうかは判断だけど、乾パンやら水の備蓄はやっぱりあった方が良いだろう。まあいずれにせよ体が一番大事なので、直下型の場合、早ければ20分かからず津波が押し寄せるとかあるらしいので、とにかく着の身着のままでも良いので素早く避難しろってことだろうと思う。

 そしてやはり、手間なのが愛猫関係で、キャリーケースに餌のカリカリのほかに、キャリーケースの中だけでは狭くてしんどいだろうし、外の土でトイレさせるためには逃げられないように繋いで外に出さねばならず、ってのを想定してハーネスを購入済みで、試しに付けたことはあったけど、今回初の本格運用。意外にハーネス自体はいやがらず大人しく着用してくれたけど、不安げな雰囲気やら知らない体臭やらをまき散らす人間どもが沢山いる、知らない場所にいきなり連れてこられて、最初ほぼ固まってケースの中で不安げな鳴き声を上げ続けていた。人間は避難する理由も状況も分かってるけど、猫にしてみればなぜこんな騒々しく不穏な場所に来なければならないのか、納得いかないところであろう。とにかく頭をなでたりして落ち着かせようとするけど、人見知りもするビビりな性格でもありお水も飲んでくれないし前半心配した。10:30くらいに避難所に入って、12時過ぎに昼ご飯食べて、ってやってると多少は慣れてきたのか、単に疲れてきたのか鳴き止んで大人しくなってきて、湿らせた指も舐めてくれるようになった。そしてケージから出たがり始めたので、ハーネスにヒモを取り付けて”猫の散歩”状態で愛猫の現場確認作業に付き合ったんだけど、そこは猫なので身を低くして机の下とか通りたがるので難儀して適当なところで切り上げさせて、抱き上げてなで回したけど「オマエ、オレ騙した」って感じの不審の目をむけて腕から逃げるので、会議椅子のフカフカしたのが気に入ったようで、その上で座って大人しくなったので、ミャーミャー抗議の声をあげ続けているけどまあ良しとしておいた。

 状況は、15時半を過ぎると、東北の久慈で1.3mとやや高い津波が観測されていたけど、この地は数10センチで、それ以降は治まっていくように見え、皆さん帰り始めたので、愛猫のストレス的にも限界だろうから、ワシも撤収した。今回の被害的には震源地近くのアリューシャン列島やらのロシアでは陸上施設に被害もあったようだけど、国内は比較的人的被害は少なく、避難を急いで崖から落ちた事故で亡くなった方がいたぐらいのようだった。まあ、防災無線もメディアも「急いで命を守る行動を!」と緊迫感のある尻のタタキ方をしていたので、焦る気持ちも良く分かる。けど、急ぎつつも冷静確実にということを肝に銘じたい。結局、警報出たけど人的被害が出るような大きな津波は来なかったじゃないか、避難指示必要だったのか?って話はいつでも湧く。でも基本は厳しめの予報に基づいて行動しておいて「思ったよりたいしたことなくて良かったね」って言えるのは何ら問題はないけど、予想を逆に外して、油断してたら津波に持ってかれたって場合、死人に口なしで文句も言えないので、この手の避難の呼びかけは外れてオオカミ少年になっても良いぐらいでちょうど良いんだと思っている。急ぎつつも焦って事故が起きないような呼びかけの方法とかは報道機関も工夫して欲しいけど、結構今回の津波でも大丈夫だろうと避難していない人も多かったように感じるので、尻を精一杯叩くのは気象庁やら自治体、報道機関の正しい役目なんだろうと思う。

 ロシアの被災した方々、国内で亡くなられた方にはもちろん心よりお悔やみ申し上げるところだけど、それとは別に、陸上に被害が少なくても洋上で海水が大きく動くと当然、養殖施設等への被害が生じていて、自然相手だとある程度仕方がないとはいえ、お気の毒で胸が痛む。お見舞い申し上げるとともに、なんか良い感じの復旧支援なりを行政にはお願いしたいところである。

 我が家に戻ってくると、愛猫のワシへの信頼は脆くも崩れ去ったようで、部屋で可愛がってあげようとしても、チュールだけ食べたら下の階に行きたがるので、コバンの城である下の階に放流して「ワシのこの愛が分からんのか?」と悲しくなるけど、多分コバンも分かってくれていると思う。翌日のお昼寝の時にはいつものように股ぐらで丸くなって寝てくれた。可愛いやつめ。東南海地震とかクソデカいのが来たときに生き残れるか、それは時の運だろうと思うけど、愛猫と共に生き残れるよう今回の経験も生かして、油断なく備えておくこととしよう。生きるか死ぬかは運もあるというのはコレまでの津波災害とかで得た教訓である。やるだけのことをやって、後は運が良いことを願おう。皆様”備えよつねに”で一つよろしく。


※PENN両軸ネタの予定でしたが、津波ネタは鮮度の良いうちに提供しておきたかったので先に入れました。あしからずご了承ください。

2025年7月26日土曜日

PENNのドラグの素晴らしいブレーキ性能がワシの購買欲にもあればいいのに

 アタイ病気がにくいッ!って自虐気味の”ネタ”だと思われるむきも多いとは思うけど、購買欲が止められなくなって、自分の意思でどうにもならないというのは、盗癖、アル中、ギャンブル依存等と似たような種類のあからさまな病気であり、生活やら社会性に問題が生じなければ治療の必要がないというだけで、それもまた例に出した依存症のたぐいでも同じだろう。

 ワシ、好きな釣り具が値段が安いのが多いので、経済的に破綻しないから生活が成り立ってるけど、高価なアンティークタックルとかに手を出し始めて、借金してでも買い求め始めたら、買い物依存で自己破産とかシャレにならん結果が待ってるだろう。そう分かっていても欲しくなってしまったら止められる気がまったくしない。

 どのくらい、止められていないかこの三本の「アグリースティックGX2 USCA662MH」を見ていただければある程度分かるだろうか。2本目が欲しいということで、円安も関係なくネット釣具屋で確保したのは以前にご報告しているとおり。2本目を買おうとしていた時点で、待っていれば国内の中古市場に流れてくるのを確保できる可能性は大きいと思っていた。そう分かっていても、今すぐに手に入れてしまいたいという欲求を抑えられなかった。その欲求は切迫したモノであり理屈や意思で止めようのない種類のモノだというのがおわかりいただけるだろうか。割高だったけど買ってちょっと症状は落ち着いた。落ち着いたけど、その後しばらくして予想どおり某中古屋のネット通販サイトに同じ竿が出てきた。なんのためらいもなくそれも確保した。一本の竿は折れても三本の竿は折れないと毛利元就も言っている(言ってない)し、竿は消耗品なので予備が多くて困ることはない。ってのは言い訳で、見たらとにかく欲しくなったので買ったというだけのごく単純な話である。で、このアグリースティックが屈指の名竿というのなら分かる。でもこの竿クソ丈夫でそこは他の追随をゆるさないぐらいだと思うけど、その他はショボい竿でもある。ガイドがステンフレームに直接クロームメッキをかけたような”アグリータフガイド”でショボく、今使ってるのは”当たりロット”のガイドだったのか削れてこないけど、ガイドセッティングが今ひとつ分かってなくて、一番曲がって負荷がかかるだろう、2ピースの竿先側の継ぎの上のガイドがシングルフットになっていて、必死でドラグ堅めで魚寄せてくると毎度のように曲がってブランクス側に寝てしまってるので手で摘まんで起こさなければならないというていたらく。そのうち金属疲労で折れるだろうからその前にガイド換装が必要になるだろう。同じようなパワーのフェンウィックの低級グレードの「FVR66CMH-2J」では、その位置のガイドはダブルフットになっていて、そこはさすがフェンウィック”さすフェン”で竿というモノが良く分かってるのである。下の写真の上がGX2で下がFVRなんだけどGX2の継ぎの上のガイドはスレッド剥離しかかってるのがおわかりいただけるだろうか?シェイクスピアのガイドセッティングやらグリップの配置やらがイマイチなのは今に始まった話ではなく、ワシが最初に買ったスピニング7fのアグリースティックもグリップが短くてトップヘビーでバランス悪くて最初「何じゃこのクソ竿」と思ったものである。それがグリップにオモリかまして調整して使ってるうちに「何じゃこの丈夫で応用範囲の広い竿」って惚れ込むようになるのである。

 というわけで、2本持ってても3本目を買うぐらいには頭がおかしくなってるんだろうと思う。ついでに書くなら前回書いたアグリースティックの9fの船竿?も見つけて即買った。

 幸いなことに、今症状が出まくってる従来型PENN両軸機は安いので個別に見ていくとどうということはないけど、安いとはいえ調子に乗って数を買ってしまうのでここしばらく、月の釣り具予算3万円は軽く超過してしまっている。2千円3千円で買えてしまうと、ブレーキの効きが悪く、マウスはスルスルと滑りがち。

 まあブログネタには困らなくて良いなと思うけど、今の時代一体どれだけの釣り人が従来型PENN両軸機に興味があるというのだろうか?興味あるようなマニア氏達は既にワシの知ってる程度のことはご存じだろう。でも書く。なぜならいつもの基本姿勢でワシが書きたいから書くのである。まあそういうわけで皆様お付き合いいただけると嬉しいです。

 今回は買う予定などなかったけど安かったので思わず買ってしまった、ちょっと面白い2機種を紹介してみたい。

 1台目は「350レベルライン」、コイツは従来型PENN両軸機には珍しく平行巻機構が付いている。付いてるんだけどレベルワインダー(平行巻機構)といって普通想像するような、グルグル棒で行ったり来たりする仕組みではない。従来型PENN両軸機にも「No.9」シリーズには若干丸アブとは違う形式だけど似たような平行巻機構の搭載された機種はある。だがしかし、コイツの平行巻機構はかなり独特で、リールの前方やや上に左右というか前後対称に半分ずつ逆になったひねりの入ってる棒があって、それがユックリ回ることによってスプールにラインが並行に巻かれていくという仕組みで、PENNの特許技術らしい。けどゼブコのベイトキャスティングリールで似たようなのがあったような気もする。サイズも大きめで使うアテはまったくないんだけど、どういう仕組みなのか面白そうで興味あったのと、金属部分のメッキ剥げとか激しめで捨て値で競ることもなく入手できそうだったので確保した。ちなみに千円スタートで送料込みで1760円。発送してもらう手間考えると儲けにもクソにもなってなさそうで申し訳ない気がするぐらいだけど安いのはありがたい。

 分解整備は、平行巻機構の分部品が増えたけど、基本は単純明快なつくりなのでたいした手間でもなく、ギア下の赤繊維ワッシャーが腐ってて割れたけど、ドラグパッドの革はまだしなやかだったので、ギア下ワッシャーだけジュラコン製に換装して組み上げて、早速ライン巻いたらどうなるか試してみた。

 ハンドル回してラインを巻いていくと、スプール糸巻き部分より高い位置の前方に出ている、”半分逆ひねり棒”の上をラインが巻かれてくるけど、半分逆ひねり棒はハンドルの回転より減速されつつユックリと回転していく。するとその回転にあわせて半分逆ひねり棒の上のラインはヒネリに導かれて端の方にユックリと移動していく。そしてラインがスプール幅の端まで来ると、半分逆ひねり棒のヒネリが逆向きの面になって、今度は端から反対方向に逆向きヒネリに導かれてラインがもう一方の端に向かっていく。端に到達したら同様にまた逆のヒネリの面にひっくり返って戻っていく。という仕組みで、常に棒にラインが接触して摩擦が生じている点やらの欠点もあるけど、自動で平行巻きができるという点において平行巻機構の役目は果たしている。なかなか面白い工夫で国内の中古市場でも珍しくない程度には見かけるので、そこそこ評価されて愛用されてたようである。ただ、整備する前にはどういう仕組みで動いているのかやや不思議だった。「不思議もナニも丸アブとかのレベルワインダー動かすホイールギアみたいなのが側板の方に入ってて減速してるだけじゃないのか?」って思うかもだけど、どう見ても側板側もハンドル側も薄っぺらくて、減速するのに必要な大きな径のギアが入ってるようには見えない。側板側には通常の従来型PENN両軸機と同様の位置にクリックブレーキが入ってるのが見て取れるので、そもそも側板側には余分なモノが入ってそうな気がしない。だとするとハンドル側のメインギアから回転を持ってきてるはずで、クラッチ切ってフリースプールにすると半分逆ひねり棒は回ってないのもそのことを裏付けている。メインギアから回転持ってきつつ減速するけど、幅は増えてないから、メインギアと同一平面上にギアがあるはずで、メインギアと同一平面上のギアは、ウォームギア方式なら可能だけどむしろ増速してしまう。増速してもいいから回転を伝えてしまってから、歯を欠いたような例えば1回転で1回だけ歯が噛みあうギアで半分逆ひねり棒のギアを回して、半分逆ひねり棒のギアには普通に歯を付けておいて逆転防止装置をつけるとかか?

 とか思いつつ蓋を開けてみたら、当たらずとも遠からずナマジ予想自己採点40点ぐらいで、正解は、ハンドル軸に入ってるメインギアから回転を持ってきてるのはそのとおりで写真の黄色矢印でさしているギアがそれ。半分逆ひねり棒のギアに逆転防止が付いてるのもあってた。写真では右の右端ピンクの矢印。ただ、ワシ生物系の理系であり、機械科とか出身の人なら、この手のギアとかラックとかを組み合わせた工夫っていろいろ知ってるんだろうけど、ちょっと想像つかん方法だったので面白かったし感心した。写真で見て分かるように、綺麗にハンドル側本体のベークライト樹脂の端の方の空きスペースに収まっている。黄色矢印のギアでメインギアから回転を引っ張ってきたら、それを一回ピストン運動的な直線運動に変換している。これはスピニングのスプール上下の単純クランク方式と一緒で写真の赤矢印の”十手型”の部品が左右に往復運動をする。そうすると1回転に一回だけ十手型部品の先っちょが緑の矢印で示した半分ひねり棒のギアを押す。その分だけちょっとずつ回っていく。ラインの抵抗とかで逆転してしまわないように写真右端の逆転防止の爪をバネで押しつけている。淘汰されて現在使われなくなった方式だけど、ラインがスプールに均一に巻けるという平行巻機構の役割は果たしていて、端の方がややタイミング一定しないきらいはあったし、さっきも書いたようにラインに常に摩擦がかかる方式だけど、ドラグ逆転してラインが出ていくときに、今の連動式や固定式のレベルワインダーだとスプールからレベルワインダーへの角度がきつくなって、ドラグ値と魚の引きによってはレベルワインダーの破損やらラインの損耗が生じかねないのに対し、棒の上滑るだけの比較的ユルい制限しかないというのは有利な点もあるように思う。レベルワインダーがパカッと開いたり、フリーになったり投げるときの摩擦対策がとられている機構のは何種類か見たことあるけど、高ドラグ値でファイト中にレベルワインダーでラインがスプールに入る角度がきつくなってしまうのの対策としては、レベルワインダー取っ払うのが現時点での最終回答なんだと思う。けど、この”半分逆ひねり棒方式”を発展させたら、例えば通常の巻き取り作業では働く位置にあるけど、ドラグが出て強い負荷が掛かるような場面ではスライドして下がるようにするとか、海用のどえらい値段のトローリングリールでも、レベルワインダーがなくて手で平行に巻けるように均らさなきゃならんって、なんか変な気がする。ワシャそういう”手動”でマニュアル方式がむしろ好きだけど、トローリングリール買うような金持ち相手ならオートマチックにしてその分値段に反映させて錢引っ張ってくるべきじゃないの?って思ったりして。1950年代半ばの登場だから特許も切れてるだろうし、PENNのインターナショナルシリーズの焼き直しでしかないトローリングリール作ってるメーカーさん達は頑張ってみたらどうですかね?(特許切れる前のはずだけどオリムがマルパクしてる「レベルライン胴突」はさすがにパテント料払ってるよね?)

 で、もいっちょが泣く子も黙るPENNブランドを代表する名機。セネターシリーズの末っ子「セネター1/0」。

 まあセネターつったら、使いもせんのに我が家の蔵にも9/0、4/0が転がってるぐらいのもんで、この手のスタードラグ仕様の大型両軸リールの決定版である。特徴としては、以前にも書いたけど樹脂製(初期はベークライト、今時の機種はドライカーボン等)の側板や本体プレートを金属リングでサンドイッチした堅牢な構造。とにかくこの構造は真似されまくっていて、面白いところではガルシアミッチェルもモロパクしてて、ただそこはミッチェル、セネターパクっても白い樹脂を使っててなんかオシャレなの。PENNが作ったミッチェルスパイラルベベル機みたいな720系の裏返しでパクってもそれぞれ味わいが出るのが、さすぺン、さすミッチェというところか。スピニングリールを工業製品として普及させたのが「300」のミッチェルなら、樹脂ボディーを金属板で補強した丈夫な両軸受けリールを工業製品として普及させたのが「セネター」や「ロングビーチ」のPENNなんだろうと思うと、なかなかに両メーカーとも偉大な足跡を残している。ワシPENNについてはスピンフィッシャーシリーズという、PENN社としては”本業”の両軸ではないところから入ったくちで、スピニングの世界ではPENNはもうひとつマイナー感があって悔しいところだけど、両軸に関しては全くもって”世界のPENN”であると、従来型PENN両軸機をいじくってて誇らしく感じるところである。ワシPENNの関係者でも何でもないけどな。

 というなかで、PENN小型機をルアー投げる釣りで使おうというときに、候補をピックアップした中にもセネター1/0は入ってきてはいた。いたけど、本来大型魚を狙うごっつい道具という性格であり、そのための堅牢な作りなわけで、小型機にセネター選ぶ利点はあんまりない。小型機で釣るような魚相手ならそれこそそういう目的で作られているライトタックルな「27モノフィル」や「180ベイマスター」が適切で、セネターは過剰性能だろうというもの。まあ、夢のハタ系10キロオーバーとかPE80ポンド道糸でドラグ締めて狙うとかならありかもだけど、いざ買おうとしても同じように小型機にセネターの性能はいらんだろうと皆考えるのか、中古の球数が少ない上に、たまに出てると良いお値段してるので確保対象からは外していた。いたけど、明らかに安く落札できそうな弾が出てきたので、開始価格3000円にちょっと色つけて入札しておいたら入札ワシだけで確保できてしまった。この個体、程度も良くて機関良好、メッキの剥げも無いぐらいなんだけど、足の裏にデカデカと前の持ち主が名字を彫ってあるという明確な瑕疵があって、今時この手のリールを買う層はコレクターだろうから、こういうキズモノは狙い目だろうという読みがハマってくれた。ワシの手元に来たということは、コレに80ポンドPE巻いてゴツいの釣れという運命の導きだろう。実釣に使うのなら足の裏など竿に付けてたらそもそも見えんので関係ないし、そういうことにしておこう。

 ならば実釣仕様に整備せねばなるまいと分解整備。

 パカッと開けるとステンの銀色が多いなとか、小型機なのに140スクイダーや350レベルラインのような中型機でもそうだったけど、ピニオンギアの上部にリングが填めてあって、ゴリ巻きしてもスプールがハマる切り欠きの部分が欠けたりしないようになってたり、全体的に堅牢な仕様だけど、基本的な構造、設計自体はほぼ従来型PENN両軸機の基本形を蹈襲しているので、分解して増えた部品としては側板や本体の樹脂を挟む金属リングがサンドイッチ方式なので2枚から4枚に増えてるぐらいで部品数は多くなくシンプル。ただ、細かいところでもメインギアの直径が大きく材質が鋼製でピニオンはステンレスっぽい素材で丈夫そうとか、他にも気がつかないけど工夫はあるのかもしれない。ピニオンギアが割れる潰れるって相当な力でゴリ巻きしなきゃ起こらないはずだけど、スピニングでゴリ巻きは愚策だと思うけど、両軸機でゴリ巻きは状況によりありだと思うので、それに耐えうる仕様だと認識しておくのはいざというときの判断材料になるだろう。

 実釣想定でちょっといじったのがドラグとブレーキで、ドラグは革パッドがまだしなやかさを保ってて生きていたけど、ここは”HT-100”カーボンパッド一択だろう。スピンフィッシャーの7500ssとかのドラグパッドが使える。ついでにメインギア下の赤繊維ワッシャーはテフロン製に交換。ブレーキ無しでぶん投げるのは難しいというのがお恥ずかしいけど実態なので、スプールは真鍮にクロームメッキの金属スプールなので側板にとりあえずネオジム磁石2個ウレタン接着剤でくっつけて、投げてみて調整の予定。アルミより真鍮の方が、良伝導体の銅主体なのでマグブレーキは効きやすいのか?

 って感じで、組み上げて80ポンドナイロン下巻きに、ロウニンアジ用にしこたま用意してた7500ss用のスプールから80ポンドのPE引っぺがしてとりあえず巻いてみた。ラインシステムをどう組むか、ロウニンアジ用をそのままだとルアーが泳がない気もするのでどうするかとかもうちょっと悩んでみるけど、とりあえず釣り場に持ち出す用意はできつつある。

 350レベルラインは中身見て面白かったということでワシ的には用済みなので、売れもせんだろうからいじってみたい人はご連絡ください。送料負担していただければお譲りします。1/0セネターのほうは、どうもコイツでゴツいのをやってしまえという流れのような気がするので、ラインシステムに加え竿をどうするかとかまだ詰めるべき所はあるけど、年内に釣り場に持ち込めるように準備していきたい。1/0セネターは久しぶりにガチムチの大物狙い臭のするリールで、ちょっと興奮させられている。3000円+送料の分ぐらいは既に楽しんだと思う。安いもんだゼ。

2025年7月19日土曜日

イカんちゅ

 従来型PENN両軸機にスクイダー(Squidder)という機種があるのは以前から知っていた。「アメ人もイカ釣りするンやな、そういやアメリカオオアカイカ釣ってる古い写真とかみたことあるしな」ぐらいに思っていた。まあ直訳すれば「イカの人」だから、船で使うイカ釣り用の両軸機種とワシが勘違いしていたのも仕方ないだろう。

 しかし、従来型PENN両軸機についてあれこれ勉強していくと、それはまったく見当違いであったと知ることになる。そのへんも「浮かべ釣り道」の管理人さんは、過去の雑誌記事やらカタログやら持ってきて解説しておられて、未熟者のワシとしては従来型PENN両軸機については大いに教えていただいているところでありネットの隅っこで勝手に感謝するところである。

 スクイダーはイカ大好きイカ野郎御用達ではなく、ストライパーを「スクイッディング」と呼ばれる手法で釣る東海岸のストライパー野郎達のためのリールだったのである。要約して引用させてもらうと、スクイッディングはスズと鉛の合金の比較的軽いジグ(あるいはジグヘッド)とウナギや鶏の毛を組み合わせた、サーフからのジギングであり、しゃくって落とし込みっていうのを繰り返してストライパーを誘う釣りのようである。我が国のドジョウテンヤのスズキやタチウオ釣りにも似た釣りで、洋の東西が変わっても、同じようなことを考えるモノだなと思うと面白い。我が家にきた東海岸ルアーセットの中にもスクイッディング用ジグが混じっていて、コイツはデザイン的にまさにそういう用途のジグのようだ。

 というわけで、イカ釣り用の胴突きリールと思ってたら、サーフでやや軽めのリグを扱うための機種だったわけで、そう考えると、コイツのちょっと特殊な機構や仕様に合点がいくというものである。基本の「140スクイダー」はなんと2個もボールベアリングを使用しており、ギア比は微妙に高いんだか低いんだかの1:3.3、糸巻き量は350ヤード/20ポンドとなっていて、細めのラインで軽め(1ozぐらいだった模様)のジグをぶん投げるためにスプール軸はボールベアリングで支持されており、そして、この機種の最も特徴的な機構である「エアブレーキ」を装備している。エアブレーキって半透明のカバーで囲って見える状態のプロペラみたいなのが特徴のダイレクトリールだったかの珍品の写真を見た記憶があるけど、コイツは軽量スプールの裏に羽が生えていて、外からはうかがい知れない仕様。となると、軽めのルアーを投げるには都合が良い性能ってならワシにも使いどころがあるか?っていっても1ozとか想定だろうけどエアブレーキの投げ心地だけでも味わっておきたいなと、スプール幅が狭く最も糸巻き量が少ない「146スクイダー」を探したけど、国内ではあまり流通しなかったのか手に入らず。逆に石物師にもPENN両軸の高級機種ということで140スクイダーは人気があったようで、こちらは中古の弾数豊富で安いのを苦もなく確保できた。できたんだけど140スクイダーにはスプールが大きく分けて3種類ぐらいあって、軽量樹脂スプールと、軽量アルミスプールと普通の?真鍮クローム仕上げスプールで、ワシが狙いをつけたのは真鍮クロームメッキスプールの「140Mスクイダー」のようだったので、軽量樹脂スプールに羽が生えているのは写真で確認できるけど、果たしてクロムメッキスプールにも羽はえてるのか?って疑問に思って、「ORCA」を覗きにいったけど、どうも羽無しのスプールもあるようだけど、どの場合がそうかまでは分からんかった。分からんけどまあいいやと値段も手頃なのもあって買ってしまったのには理由があります。同時期に安く140用の樹脂製スプールが売りに出されていて、そちらは羽が生えてるのが確認できたので、それも確保しておけば有り無し比較もできて替えスプール有り体制も整って万々歳、というお気楽モードでマウスをスルリのクリッククリックってなもんであった。それがあんなことになるなんて。ちなみに、ORCAでは140スクイダーは50ドルもあれば買えるよって相場観だったのが「300ドル超えで売れてやがる!」って驚いて投稿している人が居て、マニア2人以上が競ると値段が釣り上がるってのは万国共通のようである。救いようがないネ。

 でもって、いいブツが手に入ったぜヘッヘッヘってなもんで、早速スプールの確認。スクイダーはじめいくつかのシリーズでは、釣り場でスプール交換が簡単にできるように「テイクアパーツ」という仕組みがあって、ハンドル側に1個だけある摘まみを手で回してしっかり緩めて、ハンドルごと本体プレートをグイッとひねるとパカッと外れるという工具いらずの工夫。で、外してみるとクロームメッキスプールには羽が付いてない。羽が付いているのは色は様々だけど樹脂製とアルミ製の軽量スプールでクロームメッキ真鍮スプールは羽無しなのかな。まあ、写真右のように羽の生えた樹脂製スプールも確保しているので問題なしである。で、早速填めてみた。

 ありゃ!なんじゃこれ?

 スプールの幅が寸足らずでスカスカに隙間が空いてる。出品者間違えて145とかのスプール送ってきやがったなとムカついたけど、部品番号見ると写真右ではちょっと小さくて分かりにくいけど「29-140」となっていて、表示上は140のスプールで間違ってない。間違ってないけど実際填めたら合ってないってことは表示が間違ってるのか?いずれにせよこれは出品者さんを責めるのはお門違いだろう。

 仕方ないので、長さ的に「スクイダー145」の可能性が高いので、145の出物がないか調べたら「あるのが悪い!!」って感じでちょうど売りに出てて、だいたい従来型PENN両軸機って2~3千円ぐらいで買えるけど、140ほど球数も無いようなのでややお高い。コイツだけちょっと張り込んでしまって送料込みで7千円がとこかけてしまった。でも、届いたブツでスプール交換してみたらバッチリハマってくれて、スクイダー145は替えスプール有りの体制が組めた。あースッキリ気持ちいい。写真下と右のスプールが元から填まってたスプールで、部品番号の刻印は「29-145」となっていて、「29ー140」となってる145に適合するスプールは一体何なのか?って思う。

 140が最初に作られたあとに幅違いの機種を展開したらしいけど、おそらくそのときに金型流用で間に合わせたとかかなと想像している。というのも樹脂製スプールは軸を鋳込むかたちで製造してるのではなく、スプールの左と右のパーツを作ってから軸に填め込んでるような造りになっていて、合わせ目のところを利用して穴が空いててラインの端を結べるようになっている。新たに金型起こすより140用の金型で作ってぶった切って調整するか、もしくは片方のパーツだけ新しい金型で作れば当面の金型代は節約できる。PENNあるあるだけど、とりあえず使える部品在庫があればそちらか先に使って間に合わせるってのがあって、あっちのマニア氏もワシも困惑したりもするんだけど、たんに140用の部品在庫だぶついてたので長さ調整して使ったのかもしれない。いずれにせよ29-140という番号ありの紛らわしい145用の樹脂製スプールが存在するので、140スクイダーのスペアスプールを入手する際にはお気をつけください。っていう極めて限られた状況での情報を誰が必要としているというのか?でもそんな情報が当ブログの売りでございます。

 でもって、145でエアブレーキは体験できそうだし、140のほうはスプールの出物か軽量スプール付きの安い本体が出てきたら確保するか、いずれにせよ急ぎじゃないな、と思ってたら、遊びに来たひじさんがドンピシャのタイミングで「ナマジは最近PENNの両軸にハマってるみたいだから、家で糸巻き換え用とかに使ってたのが転がってたからお土産に持ってきたよ」といただきましたのが、140スクイダーで待ってましたの樹脂製軽量スプール版。道具との関係って一期一会であると同時に出会うべくして出会うもので、しかるべき時にしかるべきブツが手元にやってくるのである。それはもう避けられない運命であり、だからこそマニアな蒐集家は欲しいと思ったら買っておけば良いのである。どのみち巡り会う世界線なのである。ひじさんアザマス!

 というわけで、9フィートのアグリースティックの船竿だかなんだか分からんへんな竿も、まるでスクイダーと組ませよ!というおぼし召しとしか思えないタイミングで出物があって買う運命で手元に来た。やや柔くて16ポンドナイロンぐらいの細めの道糸が良さげなので145スクイダーの方を分解整備して、実釣に備えることとした。140スクイダーも2台体制整ったしそのうち出番が回ってくるだろう。

 PENNの凸凹ハンドルナット用のスパナも活躍して、サクサク分解整備は進む。テイクアパーツで本体外すと、さすが高級機種だけあって真鍮の金色じゃなくて、ステンの銀色多めなのはちと寂しいけど、機構自体はほぼコレまでいじってきた従来型PENN両軸機と一緒、違ってるのは逆転防止のオンオフスイッチがあって、ハンドル逆回転でラインを繰り出せる「ナックルバスター仕様」にできるらしいけど、ワシには不要だな。なんかハンドル逆回転を使う特殊なテクニックが東海岸のスクイダーどもにはあったのだろうか?まあ気にしないでおこう。あと逆転防止に爪を押しつけるバネが、爪から生えている。ぴょーんと跳んでどっか行ってしまわないのは良いけど、小さいので填めにくいのは変わってなくて、填めやすさ的にはシンプルな銅板板バネ方式が正直良かったように思う。

 ドラグが、出ました革パッド、こいつはまだバッチリ柔らかさも残ってて生きてるのでそのままグリスを新しくして使いました。7500ssとか用のHT-100のカーボンパッドが適合するようだけど、革が生きているうちは革でいっときましょう。耐久性がどうかは分からんところだけど、ドラグのスムーズな滑り出し、調整幅ともに素晴らしい仕事してくれます。ギア裏の赤ファイバーワッシャーだけジュラコンワッシャーに換装はお約束。で、今までハメ殺しで外せないものだと思ってた、メインギアがハマってる軸というかスリーブ。勉強してたらコレ外せるみたいで刺さってるピンを千枚通しの先ででも突いて反対側に出てきた端っこをつかまえて引っ張ると抜けて、スリーブも軸から抜けます、と判明。コレまでの機種では回しながらパ-ツクリーナーで隙間の油を飛ばしてから注油とかで実用上問題ない感じには仕上がってたけど、外せばなお良しだっただろう。まあそのためだけに分解整備やり直さないけど次の機会にでも。今回は外して綺麗にしてグリスアップ注油実行。逆に外し方が分からんかったのが、レベルマチックに引き続きボールベアリングで蓋が取れる構造に思えない。どなたか外し方ご存じのかたおられたらご教授願います。あとこの機種は本体側プレートの金属の輪っかはハメ殺しです。無理にはずそうとしないように。輪っか付きのパーツとして「1N-140ハンドルサイトプレート」として扱われてます。

 って感じで基本的には、従来型PENNの内部の設計は似たような感じで、道具としては単純明快で、機能的にはモデルごとに特徴持たせて拡散していっても基本は同じなので、使う技術的なところにおいてはそれほどグチャグチャ細かい違いを考える必要はなく、単純さの中に自分の技術や戦術を織り込んでいく感じになりそう。ま、なんにせよ楽しめそうである。で、このスクイダーシリーズを楽しむためには、せっかく特別に設けられている”エアブレーキ”がどんなもんか見てみないとイカンだろうということで、早速投げる準備をしてみた。

 用意した竿が先ほど書いた、謎のアグリースティック9fで、この竿妙にグリップが短くてリールシートが下の方にある。船で竿掛けに固定してグリグリ巻くのを前提としているのか、あるいはアグリースティック独特のいい加減な設計なのか判断に迷うが、いずれにせよこれでリールを上にして右手でサミングするにはリールシートが下過ぎる。逆に左手でサミングするにはフォアグリップが短かすぎる。ファイトするにもこのリールシートの位置ではきつすぎて、適当な位置にフォアグリップでっち上げて、投げるときは右手でそっちを握って、巻くときも力が要るときは左手でフォアグリップ握ってという形にするんだろうなということで、ロッドベルトとビニールテープ、ラケット用のグリップテープでフォアグリップでっち上げてみた。

 で、早速投げに行ってみた。

 いやこれ、なかなか難しい。左手サミング自体はカヤックシーバスやらでなんぼか練習してたこともあって、できなくもないんだけど、スクイダーのエアブレーキ、スプール側に羽が生えていて回転時空気をかき混ぜるんだけど、側板側に空気の流れを妨げるように仕切り板が立っていて、空気抵抗を生んで回転にブレーキをかけるって理屈なんだろうし、実際投げるとフィーッて遠心ブレーキの音をおとなしめにしたような音を発して効いてる感じなんだけど、効きが遠心ブレーキほど強くなく、かつマグブレーキのように強さを変更することもできないので、キャスコンは緩めて使うのが公式のお作法のようなのでゆるゆるで投げるんだけど、特に後半の効きが悪い感じで良く言えば抜けよく伸びるし、悪く言えば回転数上がりすぎてバックラッシュする。初速上げすぎるとろくなことにならないので、ユックリ振ることを意識して最終的に横回転系の入った投げ方でたまに綺麗に飛距離が出るようになったけど、ルアー投げるのに使うとしたら、毎回綺麗に投げられるようにならねばならず練習というか慣れが必要なように感じる。ぶっ込みなら多少のバックラッシュは投げた後に直している時間があるので、現時点でもぶっ込み泳がせとかなら導入可能な感じ。まずはそのへんから使って習熟していくのが妥当な手だろう。飛距離は思ったより出てる感じだし、竿は柔くて食い込みは悪くなさそうだし、クリックブレーキ付きなのであたりを待っていてギーッと鳴るのは楽しくて良い。

 エアブレーキがどんなモノか、試してみるだけで良いと思ってたぐらいだったけど、それなりに使いこなせるようになると、スピニングではやりにくい巻き抵抗の大きいディープクランクをベイトで青物も想定される状況で投げられるとか、切る札が増えそうな予感がしているので、ちょっと秋になったらコイツでまずはぶっ込み泳がせから始めて、安定して投げられるように習熟することを目指してみよう。

 昔の石モノ師でも、ABUの6500CSロケットとかでぶっ飛ばしてる今時の遠投カゴ釣り師でも、簡単そうに左手サミングで投げているので、その域まで行けば何かと使える技術になるのではないかと思うと共に、両軸の独特の単純さを楽しむのに従来型PENN両軸機は存外悪くないのではないかと思い始めている。

 従来型PENNで、気持ちの良い釣りができたら最高な気がするので、ちょっとクンフー積んでみたいと思ってます。こうご期待。

※空力ブレーキ搭載リール、コイツ以外に使ってたのはアリオン社「コマンダー」ですね。ダイレクトじゃなくて投げると勝手にクラッチが切れてフリースプールになるとか凝った変態リールだったようです。そういうのはアメ人の専売特許だろとと思ってたけど意外なことにスウェーデンのメーカー。

2025年7月12日土曜日

マグブレーキが磁石で鉄をくっつける磁力でブレーキかけているのではないと知ったのは、大人になってずいぶん経ってからだった。

 まあ、ルアー投げる釣りで使えそうなサイズってなると、このへんだろうなって2機種です。

 「27モノフィル」は1950年代後半に登場。ミスティックさんとこで歴史のところを読むと、その名のとおりモノフィラメント(単繊維)ナイロンラインの使用を前提とした軽快なモデルで、糸巻き量は15LB300ヤードとなっている。ナイロン繊維の登場はもっと早く1930年代に遡るけど、釣り糸としてはしばらくはダクロン系の編み糸が主流で、細い単繊維のナイロンラインの活躍はナイロンを発明したデュポン社からかの有名な「ストレーン」が発売されてからとのことで、PENNモノフィルシリーズはストレーンに象徴されるライトタックルな新しい時代の釣りに対応して開発・発売された機種ということらしい。ストレーン、80年代のバス釣り少年だったワシにも懐かしい。蛍光黄色が好きだったけど白っぽい色のも視認性良くてルアー用のナイロンラインにナニが必要か、さすがナイロンを生み出したメーカーよく分かってるって感じだったのを憶えている。

 「180ベイマスター」 は、それより古い1941年以前の登場となっている。糸巻き量は20LB250ヤードとなっていて、モノフィルと同様に15LBを巻くと約333ヤード巻けるはずでほぼ同じような糸巻き量でこちらの方が古くからある小型軽量機なんだけど、モノフィルとの違いは細かく見ていけばあるんだけど、ぶっちゃけ似たような機種で、わざわざモノフィルを新たに売り出したのはPENNもまた「新型です!」って売らないといかんかった販売戦略上の都合なのかなと勝手に想像している。

 両機種とも、ベースになったのは「155ビーチマスター」らしく、部品番号とか見ていくと”155”流用のものが多い。155は1941年以前の登場時「ライトタックル キャスティング リール」という名だったようで、もともとライトタックルの155をベースにさらにスプール幅を狭くして、軽快でスポーティーなあるいは気軽な釣りに対応する機種として用意したのが27モノフィルと180ベイマスターの2機種なんだろうと思う。

 で、いつものように分解整備して紹介っていこうかと思ってたんだけど、おもいっきりはしょっておきます。というのも、上手くいってて大きな問題が生じないかぎり設計は変えないのがPENNのお約束で、マイナーチェンジで逆転防止の爪をラチェットに押さえつける小さいバネが、青銅製の板バネになってなんぼか扱いやすくなったとか、180ベイマスターではギアがメインは鋼系で磁石にくっつくので、ピニオンはステンかと思ったらこちらも磁石にくっつくので「同じ素材同士のギアの組み合わせは削れるんじゃなかったっけ、ピニオンのほうは磁性のあるステンか?」という仕様だったり、27モノフィルではステンのピニオンに真鍮のメインギアの黄金タッグになってて、後発機種では最適化されているのか?と思ったら、調べると結局180のギアには変遷があったようでよく分からんな?とかいうのを除くと、ほぼ機械的には前回紹介した「85シーボーイ」と一緒なので書いてもつまらんというか面倒くせぇだけなので省略。ついでにギア比も一緒で3倍速の低速機。 

 っていう中で、85シーボーイと今回の2機種で大きく違うのは、ベークライトの側板と本体を金属の輪っかで補強している点で、コレがあると”THE従来型PENN両軸機種”って感じになるのと同時に、ベークライトの部分がメチャクチャ薄くできる。両機種ともに平行巻機構(レベルワインダー)が無い機種なので側板側にはクリックブレーキが入ってるだけってのもあって薄っぺらい。本体側も、どうしても厚くなるメインギアの入ってるあたりだけ凸ってるけど、基本的に薄い。比較のために全体としては同程度の大きさになるABU「アンバサダー5000」と並べてみるとこんな感じで一目瞭然。アンバサダーはレベルワインダーのギアが側板側に入ってるし、本体側もメカプレートをカパっと全体覆う形なので厚みがある。と同時にPENNの2機種はスプール径がなるべく大きくなるよう設計してあるので、糸巻き量自体は非常に多くなっているのが分かると思う。リールは糸巻きなので機械部分を小さくっていうのはダイワ「トーナメントSS」あたりに源流を持つ”ドデカコンパクト”コンセプトだけど、それを体現していると言って良いかと。だからといってアンバサダーより従来型PENN両軸機が優れているとは一概に言えないけど、従来型PENN両軸機の無駄のない単純さは魅力ではあると思う。

左:180では革の柔軟性は失われ、右27では原型をとどめていない
 で、分解整備も慣れてきたもんでサクサクと、と分解までは簡単だし組むのも苦労はしなかったんだけど、えらく手こずったのがドラグ回り。革のドラグパッドはいかんせん寿命が短い。180の方は分解時3枚のうち2枚は一応形を保っていたので持つかなと、1枚はナニカあてがうとして、2枚はそのまま使おうとしたけど脱脂の段階でパキパキと割れた。革の柔軟性は既に損なわれていた。27の方にいたっては完全に腐っててネッチョリとした粘土状のものが金属のドラグワッシャーにへばりついている状態で「腐ってやがる、遅すぎたんだ」って感じだったんだけど、その状態で分解前、ドラグは普通に機能していたっていうのがなかなかに驚きの事実。虎は死して皮を残すけど、革は死んでもドラグ性能は生きていた。

 いずれにしても、ドラグパッドは都合つけねばならん。ついでにメインギア下の赤ファイバーワッシャーはボチボチ経年劣化してるだろうから、テフロンかジュラコン製のに換装しておきたい。
 両機種とも、調べるとドラグパッドはパーツナンバー「6-155」で多くの機種で共通の部品となっており、現行では革ではなく、れいのカーボン素材のHT-100製で、「スピンフィッシャー6500SS」にも使われているドラグパッドである。ただワシ抜かってて、6500SSのドラグパッドは7500SSか5500SSと共通のドラグパッド使ってると漠然と思い違いしてて、予備在庫が無い。無いけど6500SSの予備スプール自体は、現状陸っぱり青物狙いでたまに使うだけなので余らせてるのはなんぼかあるので、そっから引っぺがして使う方針を一旦立てた。
オレンジで囲ったのが新しいパッド
 まず革パッドが溶けていた27モノフィルについて、メインギアの下、ラチェットに挟まれていた赤ファイバーワッシャーは、内径が適合した1mm厚のジュラコンワッシャーの外径を爪切りニッパーで大まかに調整、サンドペーパーで仕上げたのに換装。6500SSから引っぱがしてきたドラグパッド3枚をメインギアのしかるべき場所に格納、しようとしたら微妙に外径が大きくて、堅めで加工しにくいHT-100をチアチマ削ってなんとかぶち込んで、手間は食ったけど効きも調整幅もまずまずで滑らかな作動の良い感じのドラグに仕上がって一安心。
 次に、108ベイマスターでは、どうせ6500ssのドラグパッド使っても削らなきゃならんのなら、最初から作るか、という方針でまずいってみた。最初から作るといっても、以前大森「タックルオートNo.3」用に作った、カーボン繊維で編んだ布を耐熱性のあるエポキシ系接着剤で貼り合わせた板状のドラグパッド素材が残っていたので、それをチョキチョキ外周を金バサミで切ってヤスリで整え、内径はアートナイフでちょっとずつ切り込み入れて切り抜いてから微調整。赤ファイバーワッシャーは27同様に1mm厚ジュラコンの外径調整して使う。
 で、グリス塗り塗りしながら組みました。結果、ドラグパッド・ワッシャー全体の厚みが増えすぎて収まりきらず、スタードラグがいっぱいいっぱいになっててギリ填められん。
 どれか薄いモノに変えなきゃならん、ということでメインギア下の1mm厚のジュラコンを0.5mm厚のテフロンに変えたらなんとか収まって、ヤレヤレだぜってドラグテストとかして、低負荷では滑らかにラインが出て行くなと合格出していたんだけど、高負荷でキュッと止めるぐらいにしてライン引き出すと、引っかかってからズルッと出て行く感じであんばいが悪い。しばらくドラグ回して慣らせばどうにかならんか?といじってたら、今度は逆転防止が誤作動し始めて、最終的に1回転に1回ぐらいしか止まらなくなってしまった。何が起こってるのか分からんかったので分解してみると、薄いテフロンワッシャーがメインギアとラチェットの間で押しつぶされてはみ出していて、ラチェットの歯を覆ってしまっている。テフロンワッシャーを新しいモノに変えても結果は同じようなことになってしまう。
 メインギアの中に収まっていれば外周方向にずれることはないだろうけど、ギアの裏だと高負荷掛けると逃げて外周方向にずれてしまうようだ。仕方ないのでとりあえずギア裏には元の赤ファイバーワッシャーを入れて、ドラグパッドを一枚自作カーボンパッドから0.5mmの薄いテフロンに変えて何とか全体の厚みを許容範囲内に収めてみた。一応ドラグとして機能はするようになったけど、エラいしゃくるし回転が安定しない。ナニがダメなのかわからんけどこれではイカンということはわかる。
 タックルオートNo.3では安定した性能を見せてくれているけど、今回は合ってないのか自作カーボンパッドはいまいち。
 厚みがあるとダメなのでフェルトはダメっていうか高負荷掛けるつもりなので熱に強い素材じゃないとまずい。薄くてもテフロンは滑りが良すぎて高負荷掛けにくいだろうからこれもまずそう。なんかないかな?と悩んで、そういえばアンバサダーのドラグが三階建て方式の機種用のドラグパッドはカーボン系素材の薄いシート状だったよなと思い出して、在庫していたので試してみる。
 これは上手くいった。薄いので加工も楽で外周はハサミで切って、内径はアートナイフで調整。メインギア裏のワッシャーはジュラコン1mmにして組んでみたところ、ドラグの滑らかさ、調整幅とも文句なし。もう少しキュッと締まるとなお良しだけど、実際に使うドラグ値ぐらいまでは締められるし、いざとなったらサミングで止めれば良いので上出来というもの。さすがはABU、老舗だけあってドラグパッドも優秀だ。

 これで2台とも整備が済んで、ラインも巻いて実戦投入の準備が整い、27モノフィルの方が入手時期が早かったこともあり、そちらから近所の港に持ち込んで投げてみた。結果、そのままでは使いにくいということが判明。
 まず、平行巻機構が無いとライン巻くときどっかに偏るんじゃないかという心配はあんまり気にしなくて良かった。30~40m程度のラインの出入りだと多少偏っても気にするほどでもなく、実際には真ん中へん中心にちょっと盛り上がる感じに巻けるので問題なさげ。 クラッチも、つい癖で繋がずにハンドル回し始めたりしてもクランクの場合プカッと浮いて待機してくれているので問題にならない。
 じゃあナニがだめかというと、ブレーキがスプールの軸を両側から押さえるキャスコン(キャストコントロール摘まみ)締めて恒常的に回転押さえつけるのとサミングで調整するだけだと、遠投しようとするとすぐに回転数が上がりすぎてバックラッシュ多発。ならばとキャスコン締めると飛ばん。遠投競技の人とか特別なブレーキは無しのベイトリールでキャスコンもゆるゆるでサミングだけでぶん投げるらしいけど、試技の一発だけ飛んでくれれば良い遠投競技と違って、ルアーの釣りはトラブルなく投げ続けられないと、いちいちバックラッシュ直してたら時合いを逃してしまう。
 昔の石物師とかが使いこなしてたのを知ってると鼻で笑われるかもだけど、ぶっ込んでおく釣りとも投げる回数が違うので、トラブルが少ないことの重要性はまた違うと屁理屈こねておきたい。
 ルアー投げるならなんかキャスコン以外のブレーキは欲しい。って思った人は多いようで、後付けで自作のブレーキを工作する方法はいろんな人が紹介していて、百均で買えるネオジム磁石(なんならピップエレキバンも使えるとか)と金属のスプールでなければアルミ板か銅板で円盤作ってスプールに貼り付けて電磁ブレーキ(マグブレーキ)をこさえてしまうというのが簡単そうなのでやってみた。
 磁石とスプールの距離をダイヤルとかで変えてブレーキ力を調整可能とかいう一般的な”マグブレーキ”の仕様にするのは難しいけど、自分の良く使うルアーの重量にあわせてブレーキ力固定で良ければ、サクサクで簡単にできる。
 アルミ板から円盤切り出してスプールの側板側に貼り付ける。側板側にスプールに接触しないけど磁界にアルミの円盤が入るぐらい近づけてネオジム磁石を貼り付ける。磁石を多く、近くすればブレーキは強く効く。貼り付けるにはエポキシ接着剤は意外にポロッと剥がれやすいので、フロッグチューンでお馴染みのウレタン系接着剤(商品名「パンドー」)で貼り付けたら上手くいった。ウレタン系接着剤はつるっとした表面の樹脂にベチョッと粘っこく接着するけど引きはがすとビヨーンと粘りつつも最終的にベリベリッと綺麗に剥がれるので原状回復や磁石の変更も視野に入れると最適かなと。
 で実際に投げてみたら、「マグブレーキすげえ!」って感じで格段に投げやすくなっていて、もうチョイブレーキ効かせたい気もするので、様子見て磁石追加しても良いし、投げてて多少慣れてきたら逆にブレーキ弱めるために磁石1個外すとかの調整も可能。
 接触型の遠心ブレーキとかだと自作するには相当な精度の技術が要りそうだけど、非接触型の電磁誘導とか利用したマグブレーキって、接触してないがゆえに、工作の精度が雑でも充分成立するので自作するならマグブレーキ一択だなと思ったところ。
 あと、レベルワインダー(平行巻機構)が付いていないリールを使ってよく分かったのが、スプールと連動するタイプのレベルワインダーは結構ブレーキとして働いてるんだなということで、レベルワインダー無しの従来型PENN両軸機がボールベアリングも使ってないのに、指で弾いたスプールがいつまでもクルクル回り続けるのは、そういう理由でブレーキ力が細い軸の先のほうに掛かる摩擦ぐらいのショボいのしか生じてないからなのである。前回の答あわせだけど分かったかな?
 レベルワインダーそう考えると、そこそこのブレーキ力があってかつ、回転・接触型の摩擦力で効かせるブレーキ機構で、効き方としては遠心ブレーキと同様に低速で弱く、回転が速くなるにつれ速度の2乗に比例するかたちで強く効く。てことは、結局店頭性能的に回転が良いリールっていったってあんま意味ねぇじゃんって思う。なぜなら、回転が良すぎると今回キャスコン以外のブレーキ無しの素の27モノフィルで回りすぎて投げにくかったというのを実感してその思いを強めたけど、かねてからワシ、結局ベイトキャスティングリールってさっきも書いたように遠投競技でもなければ、ある程度トラブルが起きないことを重視してブレーキ強めに設定して使うのが通常で、レベルワインダー固定にした機種で店頭でクルックルに回ろうが、実際に釣り場で使うときにはレベルワインダーのブレーキ力も込みでブレーキ力設定してたのを、レベルワインダー抜きでやるとなったらその分遠心ブレーキなりを強く設定しないとならなくなるだけで、回転数が上がるとか、競技的に一発の遠投能力が高いリールに釣り場で何の意味があるのかって話だと思う。ってのに気がついてからTAKE先生の「2500C」読んだら、連動式のレベルワインダーは遠心ブレーキ的に効くって同じようなことを書いておられて、答合わせで”正解”って丸もらった気がしたと共に、ワシより先にネタにされてしまったので、ワシがパクったように見えるやんけ!と思ってしまいました。パクってないんです「真実は一つ」なので同じ所にたどり着いただけなんです。信じてプリーズ。

 で、準備は万端、あとは実戦投入でバンバン釣って、釣ったらまた課題が出てくるだろうから、いざ釣り場へ!ってならない問題が1つ残ってて、気にせず放置してもちょっとやりにくいだけでなんとかなるとは思うけど、できたら細かいところも詰めて、そういう細かい工夫の積み重ねが釣りの技術の向上そのものだと思うので、なんとかしてしまいたい。
 なにが問題かというと”グリップ”の問題で、重心高めの丸アブと比較しても、ごらんのように”腰高”になっている。スプールが大きいせいもあってサミングすべき位置が高くてやりにくいのもあるけど、手前側の横棒(ピラー)の位置が高いのも親指にアタって握りにくい。親指の付け根が浮いていてグリップを保持できていない。
 リールの親指乗せる側を向かい合わせで置いてみたのが下の写真だけど、横棒の位置の高さの違いが分かるだろう。
 上の写真はどちらも、竿は一緒で実際に27モノフィルを使ったときの竿で、フェンウィックの「FVR66CMH-2J」なんだけど、この竿で27モノフィル投げられるかと聞かれれば投げられるし、実際投げてたんだけど「どうにかできんかなぁ」と気になる程度には気になるので、どうにかしてしまいたい。
 なぜ、こういう投げにくいことになるかという原因の一つに、今時の竿はブランクススルーで竿のブランクスがバットエンドまで貫通しているのが流行で、そうなるとリールはロッドの中心より上に来るのがあたりまえ体操。
 一方で、昔の竿はブランクスとグリップが外せて、グリップはオフセットしてリールが沈んだ形になる”ガングリップ”が多かった。27モノフィルも古い時代の設計なのでその時代の竿のグリップに対応しているのだろうと思う。
 で、家にあるグリップ着脱式でオフセットのあるグリップに装着してみたら、案の定良い塩梅。左がダイコー「スピードスティック1#ー26HOBB」で、グリップがシングルのトップウォーター系の柔い竿なので今回の用途には合わん。右はヘドン「パル#5123」のスペックは剥げてて読めないけど、グラスソリッドの短めのマスキーロッドで、ツーテンの虎ファンさんが「ナマジこの手の竿好きやろ」とくれた竿で、もちろんお好みであり丈夫で良い感じでコレを使うのは一つ手としてある。グリップがやや短めだけどなんなら延長手術してもかまわない。
 ちなみに写真の背景に竿が何本も見切れているけど、オフセットしてないグリップの竿は、試すまでもないかもだったけどFVR同様にリールが腰高問題が生じて塩梅悪い。
 もいっちょ、手として考えたのはオフセットグリップ中古の安いのでも買って、ブランクスもグリップもお好きな感じのをあつらえてしまうというもので、オフセットグリップ一応入手した。しかし、高かった。こんなショボい先端の締める部分が欠品の品で落札額3500円で送料入れて4000円がとこかかってしまった。基本2ピースにするので先端無くても突っ込んで接着してしまえば良いんだけど、程度の良いオフセットグリップの相場は軽く万越えだったりする。スピードスティックのグリップもグリップだけで7千円から1万円近い相場になっててビビった。水面系のバスマン道具に金かけやがる。とりあえずブランクスの候補はいくつかあって、手元に既にあるものを利用するか、新たに中古で買うか、いずれにせよ時間の掛かる作業になるので気長に行こうという感じで後回し。
 で、当面ヘドン「パル」と並行して試す竿として、FVRのグリップ微調整したのを試してみたい。FVRはさすがフェンウィック”さすフェン”という感じで、今時の竿だけどちょっとずっしり重いぐらいの厚巻きで、ミディアムヘビーアクションのこの手の竿が簡単に折れたら、バス釣っててもフラットヘッドとかのデカナマズだのマスキーだのが食ってくるのが想定されるお国柄、クレームものであり怖くて華奢にしては売れんのだろう。魚掛けてないけどディープクランクとか引いててしっかりした感じがして頼もしいので結構気に入り始めている。フェンウィックの下級グレード竿は正義。
 で、調整としては親指の付け根が浮いてしまうのを、そこにお座布団敷いてあげて楽にしてやろうという感じ。
 マジックテープが効かなくなった余らしてるロッドベルトを畳んで芯にしてビニールテープでグリグリ巻いて固定。テニス用のグリップテープで滑らないように仕上げていっちょ上がり。という雑い仕事だけどそこそこ良い感じ。あとは釣り場で実際に投げて巻いて掛けて釣ってどうか、試してみたいと思っている。

 ということで、従来型PENN両軸機は、「180ベイマスター」主軸に「27モノフィル」を予備機で、主に根魚クランク用としてしばらく運用してみようとおもっちょりマス。
 とにかく魚が釣れないと、従来型PENN両軸機方面の症状は治まってくれそうにないので、とっととこいつらでオトトを仕留めて治療に励みたいところ。またこれが値段が安いのもあってマウスが思わず滑りやすい分野なのよね。
 さてどうなることやら。

2025年7月5日土曜日

SEAが好き!

77シーボーイ、78シースキャンプ、85シーボーイ
 「やっぱハンドルノブはベークライトが良いよ。丈夫だし経年とかで変形しないし。」   

 釣り宿ナマジに集う、違いの分かるフライマンどもがそんなことをのたまっちょりました。高級そうなウッドノブとか吸水で膨らんで回らんようになるとか、木材に樹脂浸透させたのもあるけど、そんなしち面倒くさいことするぐらいなら最初から樹脂にして、その分安くしろとのこと。ベーク最高、次点でエボナイトも悪くないそうな。フライリール自体シンプルで、ハンドルノブもライン引っかけないようにってのもあって極力単純で必要最小限の小さいのがついている。小さいけどフライリールは増速してなくてギア比1:1なので、その小さなハンドルノブで意外と力強く巻けたりする。その分巻きが遅いので、たとえスプールの芯の部分の直径を大きくしてあるラージアーバータイプでも、200m下巻きしなきゃならんとかになると、結構うんざりしたりする。

 そんな釣り具オタどものベークライト談義を受けて、まあアニオタのワシとしては「ベークライトって言ったら、起動実験で暴走した零号機を拘束するのにラボ全体に特殊ベークライト注入して固めたぐらいだからな」などとワケの分からないことを口走っており、ってなもんだったけどベークライトって検索して調べてみると、最も早く実用化された人工合成樹脂で、フェノール樹脂というものらしいけど、商品化したベークライト社の命名に由来してベークライトの呼称が一般的に使われているらしい。電気的、機械的特性が良好で、合成樹脂の中でも特に耐熱性、難燃性に優れるという特徴を持つそうな。価格が比較的安価なのもポイント高いか。丈夫で安価で成形も容易な合成樹脂となれば、使い勝手は良かっただろうし、ハンドルノブのような常に摩擦熱がついてまわる部分には耐熱性に優れている点が向いているのだろう。熱で溶かして成形する樹脂じゃないので固化させてしまえば熱では溶けないってことか。ついでにエボナイトも調べて、あれって人工合成樹脂じゃなくて天然ゴム由来の樹脂だと初めて知って驚いた。

 当然、リールに使うとそれまでの金属素材に比べて、軽く、耐腐食性に優れ安価な製品を作ることができただろう。現在リールに使われる樹脂系の素材としては、やっすいナイロン系(ガラス繊維強化)の樹脂やらルアーでも使われるABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、ブッシュとかに使われるジュラコンとかのポリアセタール樹脂なんかもあるけど、一般的には炭素繊維強化プラスチック(FRTP)のいわゆるグラファイトボディーとか呼ばれる樹脂系素材が一般的で、PENNでも4桁スピンフィッシャーの5500ss以下が”グラファイトボディー”になってるし、新しいセネターとかフレームがグラファイト素材のものもある。でもPENN社の黎明期の1930年代はじめとかには、まだそういう樹脂はなかったので、ベークライトが選択されていた。そういう合成樹脂のいち早い取り込み方、使い方の上手さがPENNの両軸の躍進を産んだ一因だろう。

 ちょっと脱線して、炭素繊維強化プラスチックについて、なんかイマイチどんなものなのかよく分かってなかったけど、今回ちょっと調べて、竿のブランクスが典型だけど、樹脂を含ませたシートを成形しつつ高圧下で”焼いて”樹脂部分少なく炭素繊維主体に圧着した仕上がりにした”ドライカーボン”と普通のFRP(ガラス繊維強化樹脂)のようにカーボンの繊維を樹脂で固めた”ウェットカーボン”があるということで、リールとかのカーボンボディーはウエットのほうなんだなと理解した。

 で話戻して、強度的にはさすがに金属には劣るベークライトを、PENNでは金属の輪っかで補強して丈夫なリールに仕上げたりもしているんだけど、今回紹介する、「77シーホーク」、「78シースキャンプ」、「85シーボーイ」達Sea軍団(冒頭写真の3台)は、金属の輪っかの補強無し、ベークライト直留め方式で実用的な強度のあるリールに仕上げてある。補強の入ってない単純な分、お値段控えめに設定できただろうし、整備性も悪くない。ぶっちゃけ小型機に求められる強度ってそこまでじゃないし、両軸受けリールはそもそも90度回転方向を変換するスピニングと違って、構造上丈夫に仕上がるのがあたりまえなので、コレで十分と言えば十分で、だからこそ使い込まれた固体を中古で買っても、整備してやれば問題なく復活するのだろう。 

 で、トップバッターの「77シーホーク」、バラして部品数たったこれだけ。どれだけ単純な設計かおわかりいただけるだろうか?ちなみに革製のサミング用パッドは自作で追加したもので、純正状態ではブレーキといってもバックラッシュしなければ良い程度のクリックブレーキしかついていない。ボールベアリング?アホかそんなもん熱に強いベークを使ってるんだから、ベークに穴開けときゃ充分(なのか?)。唯一贅沢しているのが3倍ぐらいに増速しているギアで、それでも歯が斜めじゃないストレートなギア。

左:フライリール、右:台湾リール
 もちろんもっと単純なリールがあることも知っている。例えばフライリールやムーチングリール、落とし込みリールのような”センターピン”型のリールは増速さえしていないギア無し1:1の単純さを持っている。ただそうすると巻き上げ速度が遅くて、さっきフライリールのところで書いたけど長尺のバッキング巻くのがしんどくなるぐらいトロ臭いリールになる。コレを回避するためにフライリールで言うところのラージアーバー化を押し進めてスプール直径を上げまくって巻きの遅さを改善しているリールもある。”台湾リール”とか”風車リール”とか呼ばれるもので、沖縄のオジイが昔艪を練りながら、あるいは船外機のスロットルを開け閉めしながら片手でスプールの根元を弾いて道糸の出し入れをしつつアオリイカとか釣ってた代物で、なぜか我が家にも1台ある。ただコイツはデカくて持ち運びが不便。その点、77シーホークは実に良い塩梅になっていて、3倍の増速はイライラせずに済む程度には素早く道糸回収できるし、3倍程度のギア比だとデカい魚が掛かったときには力強く巻ける。どれだけベアリングをぶち込んだり、工作精度をあげたりしたところで、巻き取りに掛かる力を決めるのは結局ギア比とスプール径、ハンドル長なので、ハイギアの最新の高級ベイトリール様とワシのシーホークで綱引きしたら、なんの問題も無くシーホークで勝てる。あたりまえの話だけど分からん釣り人多いのではないだろうか?分からんかったら”テコの原理”とかから勉強し直すように。スピニングならまだ本体の剛性の差で単純なゴリ巻き勝負だと、ゆがみが生じない高級リール様が低ギア比のリールに勝つなんてことがあり得るかもだけど(ポンピングありなら安物低速機で勝てる)、両軸受けは樹脂製の本体でも軸がたわむような素材でできてるワケじゃなし、ギア比以外に勝負を決める要素がないはずである。なぜ自分が護岸の足下を狙う”岸壁泳がせ釣り”でシーホークを使うのかといえば、ギア比が低くて力勝負で巻き上げるのが楽だからというのも要因の一つである。

 もう一つこのリールを使う理由には、繰り返しになるけど、このリールの単純さがある。心情的にも好ましく思い、整備性の良さや故障する箇所の少なさも利点と考えている。その単純さは両軸受けリールが生み出されてまもなく、まだ技術がなかったので単純な設計しかできなかったという理由でそうなっているのではない。1933年の発売時に既にPENN社自体が、クラッチも逆転防止もドラグも、樹脂を補強する金属の枠も備えた、後の標準的な設計になる「ロングビーチ」も同時に発売していることからもそれは明らかで、にもかかわらずPENN社としては、この単純なリールをなるべく安価で、でも実用性を十分確保して釣り人に提供しようと、削れるところをとことんまで削った結果の単純さなのだと理解している。増速するギアがなければ巻きがトロくて使いにくい、いっそクリックブレーキは無しでもいけるか?と思うけど実際に使ってみると、素早く仕掛けを落とすときにはクリックブレーキは邪魔になるけど、アタリを待つときや魚とのやりとりの時にクリックブレーキがないとスプールが回転しすぎてバックラッシュする恐れがあり、これは省略できない。逆転防止機構が無いのは根性でハンドルで止めるかスプール親指で押さえろって設計だけど、普通の釣り人が桟橋でオカズ釣るとかぐらいならそれで充分なのだろう。ワシャ親指火傷したくないので革パッド追加してるけどな。っていう、実に攻めた結果の単純化であり、実釣能力は低くないのである。それは販売年が1953年から1980年代後半にまでわたるロングセラーだったことからも裏付けられる。その研ぎ澄まされ無駄を省いた攻めた設計思想が分かれば、コイツでちょっと良い魚を釣って、魚釣るのにそんなご大層な道具なぞいらんのやぞってことは示してみたいと思うのである。なかなか難しいけどな。同じような性能のダイレクトリールには洋銀に彫金仕上げの豪華な逸品から素朴な真鍮製からけったいな迷品から”ケンタッキーリール”と呼ばれて多種多様に存在するけど、それらとはちょっと出自が違う77シーホークをワシの最初で最後のダイレクトリールと心に決めて、いつの日か岸壁でデカい根魚でも釣ってみたいと思っているのである。
 あとダイワにシーホークって名前のベイトキャスティングリールがあるみたいだけど、てめぇんとこ知財関係小うるせぇくせにそれはどうなのよ?と思うぞ、昔PENNの下請け兼代理店だったから了解取ってるのか?

 で、お次が「78シースキャンプ」。そもそもスキャンプ(Scamp)ってなんぞ?って調べてみると、「ならず者、腕白、お転婆」等の意味らしい。確かに、クラッチがあってフリースプールにはできるけど、クラッチ繋ぐとダイレクトにスプールとハンドルが繋がって、デカい魚の急激な引きに高速回転するハンドルに指打ちつけたりして、”ナックルバスター”とかこの手のドラグのないリールは呼ばれてるので、腕白っぽいと言えばそうかもしれない。そもそも既にスタードラグが付いて逆転防止機構の搭載された両軸受けリールを製造していたPENN社がなぜ、後からナックルバスターな機種を追加する必要があったのか?ワシにはいまいちピンとこんのじゃ。あっちの海系の釣り人には頑固なのが多い印象だから、使い慣れたナックルバスターなリールを求める声が多かったとかだろうかとは想像しているけど、両軸機種は最初からスタードラグがついているベイトリールとか使ってたワシとしては、ハンドル逆転する機能っていらんよね?と思ってしまう。スピニングでもまともなドラグがついてるリールならハンドル逆転はしなくて良いと思ってるぐらいで、ベイトでハンドル逆転があれば便利というか使い道があるのは、船釣りで底をとり続けるのに波で上下する船の動きに合わせてラインの出し入れをするような場合に、ハンドル逆転ができたら使うかな?ぐらいしか思いつかん。一回使ってみれば良さが分かるとかだろうか?あんまり優先度が高くないので出番はあんまりつくれない気がする。

 まあ、パカッと開けて中身を見るために入手したというのが実情なので分解整備してみる。
 パカッと開ける前に、フリースプールになって投げることも想定しているリールなので、スプールの軸の両端はベークライトで直受けではなく、キャップと一体化した金属スリーブで受けている。ハンドル側が6角ナット型で締めっぱなし、蓋側がキャスコン(メカニカルブレーキ)摘まみとして調整できるようにバネが入っている仕様。ちなみに工具無しで外せない締めッパ前提のハンドル側にはれいの小っちゃい玉の油差し口が設けられていて”さすぺン”なのである。
 でもってパカッとご開帳すると、そこはやっぱりPENNでオリハルコンな感じの金色に部品が輝いている。アンバサダーだとステンやアルミ、クロームメッキで銀色なのと好対照。やっぱり海で闘う”武器”はオリハルコン製じゃなきゃだぜ。
 クラッチの2本のバネを使っててクラッチ板の出っ張りがピニオンギアが填めてる部品を押し込むと、スプールがピニオンギアからハズレる方式は「レベルマチック920」にも「インターナショナル975」にも引き継がれていて、マイナーチェンジで改善は続けても、問題を生じず信頼できる方式はテコでも変えないのはこれまたさすぺン。
 ギアはピニオンが真鍮でメインが真鍮軸の亜鉛っぽい素材のもので斜めに歯車が切ってある。
 ベークライトは金属よりは脆いだろうけど、これだけ肉厚で仕上げていれば強度的な不足はないだろうというもの。
 逆転防止もないような単純設計なので、77シーホークほどではないにせよ全バラしても部品数もたいしたことはない
 で、PENN純正グリスでグリスアップしてダイワリールオイルⅡで注油してって、組み上げていくんだけど、今回メチャクチャ参考になる動画チャンネルを見つけたのでついでに紹介しておく。ユーチューブの「支度部屋」ってチャンネルなんだけど、従来型PENN両軸機のメンテナンス動画がいっぱい上がっていて、特に役に立ったのがクラッチレバーの取り付け方で、バネの力でクラッチレバーの先の凸部分が蓋の側面で止まるつくりなので、当然ながらレバーがついていない状態では止まらずもっと回ってしまっている。これにレバーを取り付けるためにワシこれまで指の皮剥けそうになりながら裏側からグリッと回してなんとか取り付けてたんだけど、目から鱗、レバーの凸部を表側にしておいてバネの力が行きつ戻りつで拮抗する所まで持ってきておいて、ササッとひっくり返してネジで留めてしまうという知ってれば簡単至極な方法を学んだ。あと、グリス塗るのにワシこれまで綿棒とか使ってたけど筆を使われていて、早速真似してみたら薄く広くまんべんなく塗れてグリスアップがはかどりまくり。ユーチューブっていつ頃からか広告が増えまくって見る気が失せて、チャンネル登録なんてnorishioさんのところぐらいしかしてなかったけど、これは登録した。お薦め。
 てな感じで、バッチリ整備できたんだけど、クラッチ切ってスプール指で回してエラい回転し続けるので感心する。まあお作法どおりフレーム組むときにゆるく締めてからハンドルグリグリ巻いて良い感じにしてから締めて組み上げているので歪んだりしてないにしても、ボールベアリングなんてなくてもスプール弾いて回すだけならなんの問題もない。軽いルアーの初速でスプール回さなければならないとなると、回り出しの慣性力突破とかにスプールの軽量化やボールベアリングは効いてくるんだろうけど、重めのルアーやらオモリやら投げるのなら気にしなくても良い要素であり、いわゆる”店頭性能”のこけおどしでしかないんだろうなと改めて思う。バカには分からん話だと思うけど、現物いじくって自分で考えてしてるとそのあたりがよく分かってくるので何事も経験だなと思う。最新鋭の旗艦機種買っておけばそれで安心できるバカはリールの歴史を紐解いてお勉強などしなくて済むので楽でいいやね。釣具屋も儲かるしダレも困らんけど、ワシャ基本的にモノ売ろうとしてるやつの言ってることが、洗剤の「驚きの白さに」とかなんも変わってないのに永遠に言ってるのと同じことで、どの方面でも嘘や大げさ紛らわしいのがあってあたりまえだと思ってるので、まずは信用せずに自分で基礎から調べる面倒くさい作業を楽しむことにしている。なぜボールベアリングさえ入ってない78シースキャンプのスプールが指で弾くと回り続けるのか、簡単に説明できる理由があるんだけど、種明かしはそのうちするのでまずは自分で考えてみましょう。

 で最後に「85シーボーイ」なんだけど、ベークライトの本体と蓋に金属枠の補強こそ入ってないけど、クラッチ切ってスプールフリーにはできるし、スタードラグ付きで逆転防止機構もついているという、従来型PENN両軸機同等というか、普通に船釣りにつかう両軸機に必要な機能は持っていて、正直「これれいいやんけ」っていう仕様のリールだと感じる。この感覚はあながち間違ってないようで「85シーボーイ」自体は1941年以降、1980年代後半までの発売となっているんだけど、同じような仕様で本体と蓋の樹脂がベークライト樹脂からグラファイト樹脂になった後継機「190シーボーイ」は1998年から現役のモデルということにミスティックさんところの整理ではなっていて、しぶとく支持されて生き残ってるようだ。190はギア比が初期3.5:1だったのが後期85と同じ3.1:1になったりとワケの分からん動きをしていて、どうもクソマイナーなリールのようで本場米国のマニア氏達も情報混乱しているようだ。ミスティックさんところの整理表の下の方にその混乱した様子が分かるタニさんところの関連スレッドにリンクが貼ってあって、「実際に数えたけど3.1:1だった」「PENNにはありがちな許容誤差」とか色々言ってるけど結論はでていない。でも「金属の輪っかもない飾り気のないリールだけど使える」「高すぎないギア比は良い、4:1を越えると問題が生じがち」とか評価している人はいて、ハタやら根からゴリゴリ引きはがしたり、淡水で大型ナマズをえっちらおっちら寄せきたりとかには低ギア比のパワーのあるリールには使い道があるようだ。3.1:1の低速ハイパワーを活かせば、太めのライン巻いて85シーボーイにも出番はつくれるかも。
 以前の持ち主の方は普通に船釣りで使ってたようで、今ではあまり見ることがないテトロン系(ポリエステル主原料)の編み糸を巻いて愛用していたようだ。今時なら伸びの少ない編み糸といえばPE(ポリエチレン)ラインが幅をきかせているけど、昔はテトロンもあればナイロンの編み糸であるダクロンなんてのも使われていた。そういう古い時代のリールだけど、なかなかにベークライトの優しい色合い風合いも伴って、良い味が出てきている気がする。
 ワシとしては雰囲気だけ楽しんでる場合じゃないので、使えるように分解整備していく。
 パコッと蓋を外すとスプールが真鍮にクロームメッキで、樹脂製に比べて重めだけど丈夫なのは間違いなさげ、箱の「85M」のMはメタルのMで金属スプールモデルにはMがついたんだと思う。
 で、この「85シーボーイ」はスタードラグ付き、逆転防止付きなのでハンドル回りを外していくと、スタードラグの下に、なんか既視感のあるぶっとい軸を中に通すかたちでドラグディスク達を押さえる筒状の金属スリーブが入ってるのはレベルマチック920と同様。
 そして本体ご開帳といくと、真鍮製半月板からクラッチ関係の部品が覗いているので1つ前の78シースキャンプと似てるんだけど、半月板を外すと、逆転防止機構があるのとメインギアにドラグが入ってるのが当然違う。ギアの直下に逆転防止のラチェットが挟まってて、そこに掛ける爪はギア刺さってる芯が生えている半月板を固定するネジを軸に使ってて、跳んでどっか行きそうな小っちゃいバネでラチェットに爪を押しつけている。基本的に半月板と本体を固定する4本のネジはなんかの軸にも使うという方針のようで、ピニオンギアに填まってる部品もそれを持ち上げるバネも、ネジが心棒として使われている。ちなみにギアはピニオンが真鍮、メインギアは亜鉛っぽい。
 ドラグは普通の顔して3階建て方式で、これがまたパッドは革素材。腐ってない革パッドが優秀なのはレベルマチック920で実感できたので、脱脂ののちPENN純正グリス盛って引き続き使用。ギア裏の赤ファイバーワッシャーは経年で腐りかかってたので、内径の合うポリアセタールのワッシャーの外径を削って換装しておいた。革パットはそのうちダメになるだろうけど、ABU純正のカーボンドラグパッドが外径一緒で内径ちょっと削ればいけそうなのでそっちに換装するか、自前でカーボンドラグパッドでっち上げるか、いずれにせよまたその時が来たら考えよう。
 ドラグと逆転防止関連で多少部品数は増えたけど、両軸受けリールってそんなに複雑化しないはずで、充分単純で整備性も良いと思う。填めるのちょっと苦労したのが、逆転防止の爪で、半月板を向こうに回しておきつつドラグの入ったメインギアを所定の位置に収めつつ、最後の方で隙間を使ってギア下ラチェットに心棒になるネジを刺した状態で爪を掛けて、半月板を回して蓋しつつ、隙間から小っちゃいバネを所定の位置に小さめマイナスドライバーで押し込むというパズルをクリアして、グリス塗ってオイル注して組み上げて無事整備終了。

 85シーボーイは、フリープール機能ありでドラグもついてるっていう普通に使えそうな機種なので、ちょい大きめなのをなんとかするか、それに似合う仕事を割り振れば出番はつくれそうに思う。見た目、蓋側のベークに「PENN」って文字浮かせているのとか、白いシングルハンドルノブとか昭和骨董な感じの良さがどうにもしびれるので、使って魚釣ってみたいモノである。低ギア比なので青物にはむかんきがするけど、根魚狙って根から引っぺがすにはワシも向いている機種ではないかと思ったりしている。ブレーキがスプールの軸を押さえるメカニカルブレーキだけだと、そのままではワシの腕では投げにくいので実戦投入するときにはそのへんもいじるんだろうな。まあなんにせよ現代でも使えそうな機種ではあります。

 100年近い昔の設計のリールだけど、ナックルバスターな78シースキャンプはともかく、77シーホークも85シーボーイも現代でもその単純、低速ゆえの力持ちな特性を活かした釣りはできそうで、なかなかに楽しくなってきたんだけど、他にも買っちまってる従来型PENN両軸機はあるので、そいつらも使ってみたいし、体は一つで寿命は限られていて、残された釣りの時間もおのずと限られているしで、どれから使おうかアタイ迷っちゃうの、な日々なのであった。