2025年6月14日土曜日

ピアレス!オフランス製ざます!!「BAM510M」

 絵だの作文だので賞をもらうとか、スポーツで上位入賞とか、学生時代にはそれなりに機会もあるし、チャレンジの場もあるけど、大人になるととんとそんなモノには縁がなくなる。まあ職場でも部長賞とかその手のが無いわけじゃないけど「賞はともかく金一封はナンボよ?」とか下世話な方向にいきがちな世知辛いしろものであり、純粋に自分の活動に対してお褒めいただき喜ぶというようなことはとんとなかった。

 なので、仲良くしていただいてるネット釣り仲間のMasahiro さんのブログ「アメリカのソルトルアーで日本の魚は釣れるの?」で行われた翻訳コンテスト において、我が翻訳案が見事”優秀作品”に選出され、ワシも苦節17年がところ”お気楽ブロガー”として駄文を書き連ねてきたわけだけど、多少は人様にお褒めいただく”一言半句”が書けるようになったのかなと思うと、素直に嬉しく誇らしく思うところ。コンテスト内容についてはリンク張ったのでそちらで楽しんでいただくとして、我がブログではなんと豪華副賞としていただいてしまった、ちょっとオシャレなフレンチスピニングについて、いつものことながら分解しつつあれこれと書いてみたい。ということでご用とお急ぎでなければゆるりと楽しんでいってください。

 して、そのリールが冒頭写真のピアレス「BAM510M」で、見てのとおり”ベイルレス”マニュアルピックアップのシンプルなワシ好みのスピニングなのである。ただ500g級のそこそこの大型機で、実釣に連れ出すかどうかは微妙なところ、新品箱入りでもあり綺麗なボディーのまま傷つけずに持っておきたい気もする。いずれにせよ我が家に来たからには分解整備なんだけど、基本注油とかは済んでいるので、今回は分解して設計を見るのと、どうもかなりの”プリン巻き”らしいのでその辺をどう対策するかってあたりが”お題”となってくる。

 なのでまずはいつものように分解からである。スプール周りから見ていくと、ドラグはシンプルでスプールの上と下を押さえる方式で、ミッチェルの国のリールだなと思う。思うんだけど、スプール下面に何らかの繊維を樹脂で固めたようなドラグパッドが2枚入っていて、こちらの方が上より面積大きくスプール側下面にははめ込みでスプールそのモノじゃない謎金属のスリーブっぽいのがハマってるのからしてもメインのドラグとみて良さげでこちらはまあ良い。逆に上部は謎金属のスリーブ上部を金属ワッシャーで押さえていて、そりゃアルミとかのかたくなさげな金属を金属で摩擦させたら削れるだろう?というよろしくない塩梅。あとでここはいじってみたい。

 次に本体パカッと開けて、心臓部のギアやら主軸やらを見ていく。

 ギア方式は単純明快ベベルギア方式。スプール上下(オシュレーション)も単純なハンドル1回転で上下一往復する形で、オシュレーションスライダーは樹脂製だけど、スライダーに刺さるハンドル軸のギア上のピンには真鍮製のスリーブがかぶせてあって丁寧な造り。スライダーの固定は、主軸に穴開けて横棒を突っ込んで、その横棒がスライダーの上にハマって、その状態で固定するように下部に切った溝にEクリップがハマる形になっている。

 主軸はステンレスっぽい鉄系で、ローター軸のギアは真鍮、ハンドル軸のギアはこれまた鉄系の芯を鋳込んだ亜鉛っぽい感じで、なんというかギア周りは「マイクロセブンDX」の頃の大森製作所みたいな感じで、真面目に作ってる感じがする。良く言えば古き良き時代を引き継いでる感じで、悪く言えば時代遅れで古くさいとも言えるけど、どちらかというとワシには好ましい。ハンドル軸が鉄系の芯なので当然ながらねじ込み式ハンドル。そしてお待たせしました。全国のBBB団(ボールベアリングをボロクソにこき下ろす者の団)の皆様。久しぶりのボールベアリングレス機です。本体はアルミ鋳造なんだけど、真鍮製のローター軸ギアは本体にネジ止めした真鍮製のスリーブで受けていて、ギア比はだいたい1:3.5ぐらいの低速機なので”ブロンズベアリング”でまったく巻きの重さとかの問題はない。なかなかに心臓部は分かってる人が作った感じになっている(でも同じピアレス社の高級機種にはボールベアリング2個”も”入ってるけどな)。

 で、もいっちょ良いのがラインローラーで投げてるときに出て行くラインがふくらんだのを拾ったりしないようにガードする棒が出てるんだけど、見た感じナットで締めただけなので回ってしまいそうに思うんだけど、分解してみるとネジとベールアームの穴が片側切り欠いてあって方向固定できている。そしてラインローラーは斜めに傾斜のあるツイストバスター系の1カ所にラインが落ち着く形状、回転式で当然のようにボールベアリングじゃなくて樹脂製スリーブが入っている。良いジャンこのリールって思うところ。

 部品数も少なくて、単純設計だけど安っぽい造りじゃなくてちゃんとしてる。以前マニュアルピックアップ機のPENN「706z」をネタにしたときに、norishioさんにフランスにこういうリールがあるよ、と書き込みいただいてた、まさにそのリールだったのでちょっと気になってはいたんだけど、実物目にする機会があって触ることができて実に勉強になった。日本じゃ知名度も無いおフランスの地場リールだけど、なかなか良いリールでした。
 って、めでたしめでたしで終わらないのがドラグをチョイいじりたくなるのとあわせて、最後に残しておいた、ラインが後ろ巻きになっていわゆる”プリン巻き”になる問題で、まあ最終的にはFRPの輪っか填めてアレしてしまえば良いんだから、どうにでもなるとは思ったんだけど、意外にこれがどうしてどうしてって感じだったので、そのあたりを引き続きネットリと書いていきたい。

 まずは、プリン巻きの問題から手を付けてみるけど、これはちょっとどうなのよ?という状態であることが明らかになる。
 下巻きをなんぼか巻いてみると、スプールの下端から巻かれるのは良いとして、上端は斜めになってるスプールエッジの上の方はもとより、底の方の段階ですでに上に届いていなくて、実際にラインが巻かれる幅が、スプールの幅より極端なぐらい狭い。試しにノギス当ててみると、ラインの巻かれている幅(=スプール上下幅)は約14mmなのに、このぐらいまでライン巻いておきたいなというところでスプールの幅を測ると20mmもある。その差6mmはしゃれにならない数字である。で実際にプリン巻きになるぐらいまで下巻き巻いてみると、分かりやすいように最後ライン色変えてみたのが右端の写真だけど、ラインが往復しているのは水色の線で示した幅で、それより上にも下巻きが巻かれているのは、ラインが崩れて広がった分で、巻かれるラインの上部が常に崩れてグチャッとなる分プリン状に巻かれてしまっている。ちなみに真ん中の濃い青の線ぐらいまで巻きたいところだけど、水色の線といかに差が大きいか分かるだろうか?

 要するに設計として、スプール上下幅よりスプールの糸巻き部分の幅が広すぎるというのが決定的で、かつなだらかに傾斜するスプールエッジの形状もよろしくない。ということだろう。内部の設計が真面目でしっかりしているのが大森製作所っぽいと感じたけど、スプール形状がイマイチなのも一緒というより、より極端になっている感じ。
 大森スピニングに処置してきたように、FRPの輪っかを填めてスプールの幅を調整して、スプールエッジの形状を真っ直ぐに整えてやれば抜本的な解決はできると思う。思うけど、そういう”魔改造”は実用機ならやることにためらいはないけど、日本じゃ流通も少ない希少な珍品に、不可逆な改造を加えるのははばかられる。となると、この極端な後ろ巻きをどうにかしてお茶を濁してしまいたい。
 後ろ巻きを補正するには、ラインローラーの位置を上げる、スプールの位置を下げるという方向で、いくつかの手段が考えられる。ラインローラーの位置を上げるには、ベールアームの形状を曲げて伸ばしてラインローラー位置を上げるという力業と、ローターが乗っているブロンズアリングとローターの間に下駄を履かせて嵩上げする。というのが思いつく方法だけど、ベールアーム形状の調整はペンチや万力、トンカチをつかった力仕事で失敗すると取り返しがつかなくなるのであまりやりたくない。スプールの位置を下げるには、スプールが乗ってる台座の上のドラグパッドを薄くするのと、主軸が刺さってるオシュレーションスライダーの上の横棒がハマる溝を深掘りして、その分Eクリップとスライダーにできた隙間に適切なスペーサーを入れる方法を考えたけど、後者は不可逆な手の加え方なのでできれば避けたい。
 ということで、お手軽にできるローターの嵩上げと、スプール座面のドラグワッシャーを薄いのに変えるというので、6mm調整してスプールエッジ丈夫までラインが巻かれて、逆にスプール下部ではラインが崩れまくる極端な前巻きには持っていけなくても、3mmぐらいズラして真ん中へんに持ってきて、なんか樽状に巻けるようになれば良いかなという方針で行ってみた。写真左がローター嵩上げで、黒い根元にみえてるのが元々のスペーサーでそれに加えてローターを1.5mm厚のジュラコンワッシャーで嵩上げした。もう1枚重ねて3mmUPも検討したけど、ローターをローター軸のギアに止めるナットが半分ぐらいしか締められなくなるので無理っぽい。写真右がスプール下の座面にカーボンシートを耐熱接着剤で固めた自作ドラグパッドで、もともとの堅めの樹脂製ドラグパッド2枚と交換、1mm強ぐらいは低くできたと思う。ついでにドラグは調整幅が出るようなバネ的構造がないので、ドラグ上部金属面どうしで摩擦してるのを間にパッド入れるのと調整幅を稼ぐために2mm厚の硬質フェルト製のパッドを入れてみた。ドラグ上面にパッド追加はスプールの上下位置には影響しないけど、ローター嵩上げとスプール下面のドラグパッドを薄くすることで2.5mmぐらいはラインが巻かれる位置が改善されたと思う。
 思うんだけど、今度はなぜかドラグがしゃくって塩梅悪くなった。ドラグが不安定になる要素はあんまりないけど、あるとしたらフェルトパッドか?とテフロンの薄いパッドに交換しても変わらずだったけど、スプール下面の台座上のドラグパッドを自作カーボンシート製パッドから、もとの堅めの樹脂製2枚のうち1枚に戻したら安定した。カーボンシートのドラグパッドは信頼性高いと思ってたけど、たまにドラグ周りは、理屈や経験則にあわない「なんか知らんけど上手くいく組み方」があったりする。
 ということで、ドラグ方面はスプール下面は純正堅い樹脂製を2枚から1枚にして、スプール上面には薄いテフロンパッドを新たに入れた構成になった。3mmズラせればスプール糸巻き部分の真ん中にラインが巻かれるようになって樽状の巻き上がりになるところだけど、これで2.5mmぐらいのズラし幅になって、チョイ後ろ巻きぐらいにはできた。右の写真でスプールの上面と下面にもオレンジのラインが巻かれているように見えるけど、これは金属面に写ってるだけで、実際に巻かれている目印のオレンジラインはスプール下面よりちょい上から巻かれてスプール上面からはまだやや遠い位置まで巻かれている。まあ2.5mm強の調整だとこんな感じ。

 で、冒頭写真で写ってるプリン巻き矯正エコノマイザーをスプールに装着してラインを巻いてやると、写真上のような感じになって、ここまでやってもスプールエッジ近くでラインが崩れて微妙にプリンっぽいけど、このぐらいで勘弁してやろう。これ以上どうこうするなら、スプールの幅をアレして調整だろうな。これひょとして昔はもっとスプール幅狭かったけど、今時のスプールでっかいスピニングの流行追って、雑に主軸とスプールだけマイナーチェンジとかしてるんじゃなかろうか?どうなんだろ。
 で、Masahiroさんに教えてもらったんだけど、マニュアルピックアップ機とハンドル一回転でスプール上下一往復のオシュレーションは相性が良くて、ハンドルを下げたときにスプールが一番上がった状態にハンドルの向きをギアとあわせておけば、常にハンドルを下げたときにスプールが一番上がった状態で投げることができる。
 これは、逆にスプールが下がった状態で投げると、スプールから出て行くラインをラインローラーが意図せず拾ってしまうトラブルが生じるからで、マニュアルピックアップ機では投げるときにスプールは上がった位置であることが望ましい。写真下の位置関係見るとスプールから放出されるラインがふくらんだら確かに引っかけかねない。それを防ぐガードがついてるにしてもである。
 ってのをバンスタールとかは良く分かってて、バンスタール使いの友人にMasahiroさんがマニュアルピックアップ仕様にしたPENN「トルク」を試してもらったとき「ハンドル下げてもスプールが上に来ないから怖くて投げにくい」と言われたそうである。トルクは減速オシュレーション方式なのでハンドルが下に来ていてもスプールが上にあるるとは限らない。その点でも、スプールが上に来た状態でも人差し指がスプールエッジに届く点でも、BAM510Mは合格で分かってる感はある。
 マニュアルピックアップじゃないフルベールで減速式のオシュレーションが搭載されているスピニングで、ハンドル位置が投げたときに勢いで勝手に回りにくい下に来たときに、必ずベールが起こしやすい位置に来るかというとそうでもなく、そのへん瞬間的逆転防止機構が搭載されてなくて遊びが多少あれば、ローターは多少角度変えても増速してるのでハンドルはそれほど動かず調整可能で都合が良かったというのはスピニングリールが分かってる識者の多くが指摘するところ。フルベールの場合投げるときにスプールが上に来ることは必要ないのでハンドルが下の方に来てベールワイヤーが手前に来るようにすれば良かった。PENN7500ssとかギア比の関係か良い位置に来る状態をキープするために垂らしの長さをいつも同じにしてればいつもハンドル下に来たらベールワイヤーが手前に来てたような記憶がある。
 逆に、減速方式のオシュレーション採用のマニュアルピックアップ機では、投げたときにハンドルが回ってしまってもベールが返るわけじゃないので、スプールが上に来てラインローラーが手前に来たら、ハンドル位置はあまり気にしなくても良いかも。減速式オシュレーションならハンドルが多少回ってもスプールはそこまで上下位置が変わらない。と思うけどどうだろうか。でも投げたときにローターが回ってしまうとラインを意図せず拾ってしまう確率が上がるか?

 いずれにせよ、このピアレス「BAM510M」。総合評価としては、既に書いたように「メカは良くできてるのに、肝心のスプールがイマイチ」という、大森スピニングと似たような評価で、スプールの問題はスプールの幅を改造してしまえばなんとかなるので、ワシ的には充分”有り”だと評価する。大森製作所とちがってデザイン的にオシャレな点は高評価(大森のデザイン、昭和骨董的で好きだけど優れているとは思わない)。流石はフレンチリール。このリールがこの時代まで、こんな古くさい設計で生き残ってきた要因の一つにはルックスの良さがあるんだろうと思う。なんというか金持ちが海辺の別荘ででも使うクルーザーとかに、今時のメイドインジャパンとかデザイン的にダサすぎてしっくりこないだろう。壊れるところもなければ、巻き取り効率よいベベルギアかつ低速機でそれなりに大物が来ても大丈夫、使いどころさえ間違えなければ実用的でもあるだろう。錨泊地でチョイと釣りでもするか、という時にPENNのインターナショナルとかゴツいの出すのも違うだろうしな。フルベールアームが登場する前からスピニングリールが市場にあった欧州という土地柄的にもマニュアルピックアップ機には馴染みもあるだろう。
 っていうような理屈は考えるけど、結局のところどのメーカー、ブランド、機種が生き残り、逆に消えていったか、それは歴史の偶然でしかないように思う。
 何度も書いているけど、良いモノが評価され生き残るのなら大森製作所「マイクロセブンC」シリーズなんていう傑作機が過去も現在もたいして評価されていないし、大森製作所は潰れてしまったのはなぜなのか。日吉も韓国に生産拠点を移して生き残りを図ったけど、良いリール作ってたけど生き残れなかった。でも松尾や瑞穂はリールだけ作ってるわけじゃないので”本業”で生き残ったとしても、五十鈴がしぶとく高級マニアック路線で生き残ってる(大森の二代目も五十鈴に籍を置いていると聞く)。それはなぜなのか?少なくともワシには分からんわい。
 生物の進化でも、現存する生物がその形でいるのは環境やらに適応して必然的にそうなっていくというのもあるけど、根源には偶然性があるようにいわれている。なぜ人類はホモ・エレクトスとかネアンデルタール人じゃなくてホモサピが生き残って繁栄したのかにせまったNHKのドキュメンタリーを見たけど、何度も起こった危機がたまたまホモサピに味方しただけで、一つ間違えれば絶滅していてもおかしくなかったと解説されていて興味深かった。なぜオーストラリアは有袋類天国なのか、なんてのも大陸移動とかの偶然でそうなっただけだろう。そのオーストラリア以外では消えていった有袋類のなかで、なぜオポッサムだけは南北米大陸で生き残ったのか、生態系の地位が空いてたとかなんとか理屈はつけるんだろうけど、じゃあ他の有袋類との違いは?とかいうと結局説明つかなくて、たまたま生き残った結果生き残ってるとしかいいようがないんだろうと思っている。

 なぜ、ピアレス「BAM501M」が生き残ったのか?理由は結局のところ分からんけど、こういう個性的なリールが生き残れるぐらいには、世界は多様性に満ちた趣味趣向にあふれているってのは、似たような流行追っかけてるだけの没個性的なつまらんリールにうんざりさせられている中、ちょっと良い感じの福音なのではないだろうか。

2025年6月7日土曜日

釣り宿ナマジ、改装リニューアルオープン!

 我が家は借家なんだけど、ハッキリ言ってボロい。まあ家賃がクソ安いので全くもって文句言うべきではないところだけど、できうるなら快適に暮らしたい。住み始める時には、内装のベニヤとかも剥がれてたりしてたので、時間もできるだろうし日曜大工で快適にリフォームしていこうと思って墨壺やら平衡器やらもまずは買ったんだけど、これが年中魚釣るのに忙しく、さすがに雨漏りは直さざるを得ないので、屋根に上って修理したりはしてるんだけど、内装関係はほぼ放置していた。ベニヤが剥げてようが、畳がすり切れてようが死にゃあしない。

 と思ってたんだけど、畳がすり切れてるのがちょっと尋常じゃなくなってきて、原因としては愛猫コバンが元気に部屋の中走り回るから削られていくッテのがあるんだけど、畳表が剥げて下の地が見え始めてるし、ところどころ縁の布がボロくなって剥げてる。とりあえず、これ以上崩壊が進まないように米国人大好き”ダクトテープ”を貼ってみたり、広範囲に禿げちょろけてきた所は段ボールでパッチ当てたりしてるんだけど、当座しのぎにすぎず、かつお客様部屋はもうちょっと小ぎれいにしておきたい。まあ”釣り宿ナマジ”のお客さん達は、このボロさも味わいのうちとして楽しんでるようではあるにしてもだ。

 ということで、畳表の張り替えをせねばならんのかな?と思うんだけど、畳表の張り替えは一枚5千円からしてきて8畳間二部屋やるとなると結構オゼゼがかかり、畳屋さんにあずけてる間の時間もかかるうえに、張り替えても客間はともかく居室はどうせコバンが走り回って削ってしまうからあんまり意味がない。ぶっちゃけ港至近のこの家は津波が来るまでしか使えないので、南海トラフ地震はいつ来てもおかしくないと言われている状況の今張り替えても、すぐに海の藻屑になりかねずあまり気が乗らん。って言う感じでうだうだと先延ばしにしていたけど、いっそ全面段ボールを敷いてしまうかとか考えてて、まてよゴザってい草でできてるし、畳の上に敷いたら似たような感じになるし、耐用年数的にはたいしたことないかもだけど、値段がその分安ければ適当に交換していけば良いだろうから、手間もかからんし現実的ではなかろうか?と考えて、ア○ゾン様で探ったら、手頃な値段のセール品で3畳型一枚約4千円ってのと、1畳型約千円ってのがあって、とりあえず客室用に3畳2枚と1畳2枚と、居室の座ってるPC前用に1畳1枚を購入してみた。

 で、まあめんどくせえことは何もなく、部屋の角とかにあわせて敷き詰めていって、畳用のピンで要所要所留めていくだけでサクサクっとお部屋がリニューアル。
 多少しわが寄ってるのは保管時の折り癖が残ってるだけでそのうち解消するだろうから気にしない。
 多少気にしたほうがいいのは、元々の部屋の畳が”江戸間”か”京間”かの確認ぐらいだけど、紀伊半島でも普通に江戸間なので最近は京間のお屋敷なんて関西の何代も続くような金持ちしか関係ないのかも。

 ”畳と女房は新しい方が良い”などと言うと今時フェミニストどもにつるし上げ食らいかねないけど、確かに新しいイ草の香りは悪くない。畳じゃないけどな。女房の方については黙秘します。ちなみに女房と味噌は古い方が良いって言葉もある。感じ方には個人差がありますっていう多様性の時代。

 とまあ、畳については結局”みっともねぇ”ってのを除けば実害はなく、なんなら段ボールを敷いて対応しておけば、経費的にはタダ同然でいけたんだけど、段ボールはどうにも健康的文化的な生活っていう見た目になりにくいので、思いつきでゴザでどうにかしてしまった。経費もそれほどかからず、それなりの耐久性がゴザにあるようなら費用対効果的に悪くないだろう。

 っていうのとは別に、切実な問題が屋根の雨漏りの他にいくつか生じている。屋根や畳のような建物に付随するものではなく、家電の類いで、3つほど購入やら買い換えやらが必要になってきていた。どれも今すぐでなくて良いんだけど、性能が落ちてきたりしているので長期的には買い換えしないとi
けないのが、冷蔵庫と瞬間湯沸かし器で、瞬間湯沸かし器は入居した当初から湯温が安定せず、低めの設定温度でないと熱湯と水が交互に出てくるような感じで、センサーのバイメタル(温度による収縮率の違う金属を貼り合わせて曲がり具合でスイッチが入ったり切れたりする方式だけど、今でもその方式なのか?)がバカになってるのかもしれん。修理に出すか買い換えるかだけど、低温の設定でも凍えなきゃならんような状態にはないので喫緊の課題ではない。もう一つが冷蔵庫で九州時代から使ってるのでかれこれ15年選手であり、クソ夏の高温時に冷蔵室の冷えがイマイチと感じるようになってきた。冷凍庫は問題ないので夏には定期的に冷凍庫で作ったペットボトル氷を冷蔵室の上の方に入れて低温を維持したりしているので、そろそろ買い替え時である。冷蔵庫に関してはシラスウナギで稼いだ分で買い換えることを目標としており、現在2万円強貯まっている。冷蔵庫今のと同じぐらいの型の新品買うと、国産有名メーカーだと10万円以上、中華製で名前聞いたことあるメーカーだと5,6万ぐらいで、中古は運次第、できることなら10万円以上稼いで国産の良いのを買いたいところなので、来期もせっせとシラスかきせねばである。性能の劣化速度が速いか、”シラス基金”が貯まるのが早いか微妙なところである。

 というのの他に、今現在は問題ないけど、ナニか起こったときに重大な問題になりそうなのが3つめのエアコンである。我が家には1台エアコンがありクソ夏でも快適に過ごせる魔法の機械なんだけど、使っててたまに思うのは「これ、故障したら死にかねんよな」ということで、EUであったように電力供給システムの不具合で停電とか、インドであったように生活インフラへのサイバー攻撃とかで停電ってなったら、太陽光発電とかの自家発電設備でも持ってないかぎりどうしようもない。っていう根本的な問題はあるにしても、機械が1台しかなくて故障したら健康上甚大な被害が予想できるっていうのは避けておかねばと、昨今のクソ夏の度に思ってた。けど、のど元過ぎれば熱さ忘れるって話で、涼しくなると忘れてしまい。かといって夏の暑い時期には電気屋も繁忙期で工事もすぐには来てくれないしエアコンも強気の値段で高い。しかし昨年のクソ夏の暑さはさすがに懲りて、黒潮大蛇行終息で涼しくなるかもって話も耳にするけど、どのみち海水温上昇傾向は続くのだろうから憶えてるうちに買っておいて正解だっただろうと思うけど、2月まだ寒いうちに近所の電気屋さんがセールやってたのでガツンと工事費込みで8万円弱かけて客室の方にもエアコン取り付けてもらった。これで、エアコン片方壊れてももう片方の部屋で涼しく過ごせる。

 過ごせるんだけど、実は古い家なので、エアコンだの電子レンジだのといった大容量の電力を消費する電化製品が想定されておらず、配電盤でブレーカーごとに配線分かれて各部屋に電源が配分されていれば問題ないけど、結構大くくりでまとめてあって、エアコンのある居室と客間は同じブレーカーに繋がる配線で、同時に稼働すると設定温度とかにもよるだろうけど「ブレーカー落ちる可能性があるよ」との電気屋さんのご指摘。配電盤から新たな線を引っ張ってくれば解決だけど、電気工事やってもらうとまたオゼゼが飛んでしまう。なんとかならんかなと考えて、廊下挟んで向かい側の釣り具部屋は別のブレーカーに繋がってるので、そっちから延長コードで引っ張ってくるのぐらいは日曜大工でできるだろうということで、とりあえず居室のコンセントに突っ込めるように電気屋さんには工事してもらっておいて、その後暇をみてメジャー片手に配線経路を考えて、7mの延長コードを買って、天井付近の梁にヒートン打って、無事釣り具部屋のコンセントから引っ張る体制は整って、電源問題も解決。これまで釣り宿ナマジは夏の営業はしてなかったけど、エアコン着いて1年中お客様を迎えられる体制が整った。

 いつもご利用いただいている皆様、新装開店となりました”釣り宿ナマジ”を今後ともよろしくお願いします。看板猫コバンによるご接待(お触りOKでっせシャチョーさん!)、産直のトレトレの魚を中心とした料理、最新の情報に基づく釣り場ご案内は引き続き当宿の”売り”でございます。これからもご期待のうえご指導ご鞭撻のほど重ねてお願い申し上げます。

2025年5月31日土曜日

君の名は?テナガエビ三種盛り編

上からテナガエビ、ヒラテテナガエビ、ミナミテナガエビ
 ワシ、結構釣れた魚(に限らないけど)が初物だった場合、大喜びする。過去何度も、「君の名は?」と問い、魚種を特定するために鰭の筋の数やら、模様の違いやらこまごまとした違いを調べてという同定作業をこなしてきた。

 そんな細かい違いに何の意味があるのかと、釣ったら自慢できるような魚種ならともかく、”外道の雑魚”の名前が分かったぐらいでナニが面白いのか?と感じる人もいるだろう。まあワシそもそも外道も雑魚も魚を指し示す概念として持ち合わせていないからな。

 ただ、言わせてもらえれば、自分の釣っている、釣った魚がなんなのか、その最も基本的な情報である魚種名さえ知らないとなると、ナニを足がかりにその魚の情報を探っていけば良いのか?その魚が釣りの直接の対象魚でなくても自分の狙う魚とどういう関係があるのかは知っておくべき情報のはずである。もちろん同じ魚種においても地域差とか個体差も生じ得て、釣り人は時に、「種」以上に細かく自身が釣りの対象とする魚について知っていかなければならないとしても、まずその魚の種名ぐらい分かってないと話にならない。昔の磯の底モノ師がハタの類いの大型種を全部”クエ”のひとくくりで済ましていて、そんなんじゃ戦略立てようがないだろうと呆れたものである。少なくとも種が違えば生態や行動に差があっておかしくなく、最終的に包括的に複数種を狙うことになることは珍しくないにしても、種ごとにどう違うのか、どう同じなのかが分かっているのと分かっていないのでは大違いで、戦略の立てようが違ってくるだろう。

 過去何度も書いた繰り返しだけど、生物の世界はきっちり切れ目がある世界ではなく、むしろ今現在でも変化して進化して種の分化や統合が起こりつつある状況にあって、「種」という整理は、人間側が名前付けて整理しておかないとややこしいので、一定の基準で、本来なだらかにグラデーション状に変化していく生物の集団に人間の都合で分かりやすいように区切りを設けたモノだと思っておけば間違っていないと思う。というここで、おさらいがてら「種」という概念とその定義を確認しておくと。生物学的には「種」は形態や生態により、他の生物集団から区別できる生物集団であり、同一の種内では交配して子孫を残すことができ、他種とは遺伝的に隔離されている。というのが一般的な種の概念で、最後の「遺伝的に隔離されている」ことは「生殖隔離」とよばれたりして種の定義とされている。ただ、さっきも書いたようにキッチリ線引きができるモノではないので、アマゴとヤマメみたいに普段は生息地のちがいとかで生色隔離が成り立ってるけど、一緒にしておけば交雑してしまうような、種よりゆるやかな分かれ方「亜種」とされたり、DNAとか調べると結構ちがう傾向が出てくるけど、普通に天然でも交雑してることも多く、なだらかにいろんな変化を含んでるような場合では、線引きが難しいけど、なんとなくいくつかの個体群に分ければ分けられそうで「○○タイプ」とか整理されることもある。そのへん、種を分けるべきか、同じで良いか、むしろ統合かとかはDNA調べるような分子生物学的な手法が盛んになってきてから色々と分かったり、逆に混乱に拍車がかかったりしてもいる。生き物ってのはそれぐらい変わり続けて多様性に富むのがあたりまえで線引きが難しいということは、前提として念頭に置いて考えるべきではある。

 ということで、種なり亜種なりが一緒なら、あるていど形態や生態が同じ生物集団だと考えることぐらいはできそうであり、よって釣りの対象とするなら、その魚の種なり亜種なりの特徴を知り、それを対象とした釣り方を学び、そういった一般的な知識に自分の釣り場、釣り方の特性を加味して、知識を上積みして、戦略を練り試行錯誤していく必要がある。

 で、今回のネタの、本州で普通に狙えるテナガエビの仲間3種については、江戸前小もの釣り修行でもっとも得意として修練を積んだのがテナガエビだったので、思い入れもあり、首都圏在住時にテナガエビとヒラテテナガエビは釣っているので、南方系で関西以西に多いとされているミナミテナガエビは是非釣りたいと移住時考えていた。紀伊半島以南ぐらいだと普通にテナガエビ釣ってるとミナミテナガエビも混ざってくると聞いてたので、釣れると思ってたらテナガエビ自体が近所の川では釣れるほど居るところ見つけられなくて半ば諦めていた。

 ところが、鮎毛針釣りで暗くなるまで粘った帰り道、トボトボジャブジャブと川の浅瀬を帰路についていたら、ヘッドランプの明かりの中にテナガが入ってくる。その川ミナミヌマエビはワサワサいる川でその夜も抱卵雌とかがホヨホヨと泳いでたんだけど、テナガは少なくてこれまでシーバス釣ってるときとか、鮎釣りの帰途に足下とかに居ないか気にはしてきたけど、下流のテトラではたまに見るけど、それも釣りになるほどは居ないのでテナガは居ない川という認識だったけど、何匹か居るのでちょっと意外な感じがして、やや大きめのオスがいたので捕まえたくなってタモ構えてそっちに足で追い込んで確保。手にとってみて戦慄が走る。ハサミに毛があんまり生えてない。ひょっとしてと思って、歩く足の爪を確認すると明らかに短い。ミナミテナガエビだった。その場でススキの枯れ穂を竿に仕掛けをでっち上げて、川虫とミナミヌマエビむき身を餌に10匹弱釣ったところ、どれもミナミテナガエビだった

 その日の探索の結果、ミナミテナガがいるのは10mあるかどうかの狭い範囲の流れの強い側の浅瀬に限られていて、それまで反対側の流れの弱い砂底の方は何度も通っていたのに気がついてなかったという、ちょっと入渓地点を変えたことによりたまたま見つけた生息地だった。釣りってそんなもんだけど、ドンピシャの場所と時間の黄金郷のすぐ隣に不毛の砂漠が広がっていたりする。端から端まで場所と時間と状況を変えてすべてを調べ尽くすことのいかに難しいことか。あらためて思い知らされることとなった。

 テナガエビとミナミテナガエビとヒラテテナガエビの3種においてヒラテテナガエビは形態的にかなり違うので、テナガエビ釣ったことある釣り人ならすぐに判別可能だろう。その名のとおりハサミ脚(第2歩脚)がごつくて平べったい。全体的にゴツくて殻も分厚く、どこかニホンザリガニのような渓流性のザリガニを彷彿とさせる雰囲気がある。ちなみに外来種のアメリカザリガニがニホンザリガニを減少させたというのは、ほぼ嘘っぱちである。生息環境が止水や下流域の暖かい水を好むアメザリと渓流やわき水の冷水域を好むニホンザリガニでは生息地があまり重ならない。多くの人が昔は田んぼの脇の水路とかにニホンザリガニが居たと言ってるのは、冷たい湧き水を引いてるならともかく、基本的には赤く発色するまえのアメリカザリガニの幼令個体をニホンザリガニだったと思い違いしているだけである。田んぼで捕まえてきた赤くないザリガニを長期飼育していると、脱皮して大きくなっていく課程で、あるときハサミ脚が赤くなったなと思ったら次の脱皮で全身真っ赤になる。ちゃんとアメリカザリガニの長期飼育ができていればそういう勘違いはしないはずである。アメリカザリガニとの競合が起こりそうな河川の下流域や止水域では生息域がかぶるのはテナガエビやスジエビなどであり、これらには何らかの影響はあったんだろうと思う。思うけど大河川ではテナガエビの方が優勢なように思う。アメリカザリガニが問題になるのは天敵のナマズやらウナギやらも居ないような狭い水域に持ち込まれ、希少な植物やら刈り取って動植物を食い散らかすような場合だろう。ちなみに逃げ場もない水槽でアメリカザリガニとテナガエビを一緒に飼うと、テナガエビが長いリーチを活かした攻撃でアメリカザリガニを完封してしまい、アメリカザリガニ歩脚全部切られてダルマ状態にされるらしい。ハサミの強さならアメザリ有利に思えるけど攻撃できる間合いに入らせてもらえないようだ。ロングリーチを活かしたジャブとストレートでゴリゴリのインファイターを懐に入らせないアウトボクサーみたいなものか?

 で、ノーマルのテナガエビとミナミテナガエビの違いは、パッと見ただけではわからんぐらい似ている。ちょっと昔はミナミヌマエビは胸の”M”字模様がくっきりとしているのに対し、テナガエビはややグチャッと乱れるとか書かれていることが多かったけど、模様だ色だは個体差やら体色の変化やらでアテにできないことがある。今回ミナミテナガエビとしたエビたちも、M字はハッキリしていない。ていうか写真だとM字がない。これは夜間に釣ったからというのが原因と思われ、光の強い状況では保護色に効く模様をハッキリとさせていることが多くても、夜とか濁りの中では色がボヤけてることが多い。あと個体差も大きい。この程度の模様の出方で種の同定ができるとは考えにくい。肉眼で細かく見ればうっすら透けて見えるような模様は確認できるかもだけど、そんな難しいことしなくても他の見分け方を使えばいけるので、そっちを使う。

上段2匹テナガエビ、下段2匹ミナミテナガエビ
 頭の触角が生えているところの角の長さ等も同定の際の基準となるようだけど、ワシがテナガ釣りするようになったころから言われ始めて、見分けやすいので使われるようになったのが、ハサミ脚の毛の有無、歩脚の爪の長さの違いで、特に歩脚の爪の長さの違いはハサミ脚の発達していない小型個体や雌にも適応できるので、一番頼りになると思う。ただパッと見て目立つのはオスの場合ハサミ脚の毛で、今回もタモで掬った1匹目で毛の少ないハサミが目についたので、初物のミナミテナガの予感に戦慄が走ったのである。写真上段は過去釣ったテナガエビで毛が良く写ってるハサミ部分を切り取った画像で、下が当地で釣ったミナミテナガエビ2匹のハサミ。いかにテナガエビのハサミが毛深いかおわかりいただけるだろうか?

上列テナガエビ、下列ミナミテナガエビ
 で、これはミナミテナガエビだろ!って色めき立って歩脚の爪を確認する。短い、っていうか普通。ミナミテナガエビの歩脚の爪は、まあエビの爪ならこんなもんだろ、石の上這い回ったりするし、しっかり引っかけるためにある程度太くないと駄目だろうしという感じで納得できる。

 ところが、テナガエビの歩脚の爪は、上段写真の真ん中の雌の黒っぽい卵を背景に写ってるのが分かりやすいけど、鎌かっていうぐらいに細くて長い。後ほど考察するけど、なんか特殊な用途にでも使わない限りこの細長さはないと思う。

 このぐらい違うと、生物の世界に100%はなく、例えば交雑個体の可能性もないではないし、ワシが念頭においてない最初から検討対象としてない南方系の種とかが気温上昇の影響で生き残ってるとかあるかもだけど、まずミナミテナガエビで間違いないだろうと思っている。国内最大種のコンジンテナガエビとかだったりしたらそれはそれで嬉しいけどね。24センチ(半分ハサミ脚だけど)とそこそこ大型のオス個体でもハサミ脚が黒くはなくコンジンっぽくなかったのでコンジンはないだろうけどな。

 で、そんな毛だの爪の長さだのが違う種が釣れたぐらいで、なにを”戦慄”せにゃならんのだ?どうでもいいだろ、たいした違いかよ?って思うかもしれない。そう思うのは”センスオブワンダー”の欠如であり、生き物や自然の不思議や仕組みに対する興味や感動する心を欠いているといわざるを得ず。せっかく魚釣りして自然や生き物に触れる機会が多いのに、その楽しさの根源にあるものを理解できておらず、木を見て森を見ていないと指摘せざるを得ない。センスオブワンダーって言葉は今では”SFを楽しむ素養”的な意味合いで使われることが多いけど、もともとは「沈黙の春」で有名なレイチェル・カーソン先生の著書から来ていて、自然や生命の不思議を楽しむ素養というような意味があった。カーソン先生引用されまくってるから知ってるけど著書はパラパラと摘まみ読みぐらいで通して読んだことないっていうのがちょっと恥ずかしいけどね。

 種が違うと、似ている種同士でもちょっと違う。そのちょっとの違いがなぜ生じているか?っていうあたりにまで突っ込んでいけると、その違いはメチャクチャ楽しめる味わい深い違いとなる。

 今回のテナガエビ(以下「ノーマルテナガ」と書く)とミナミテナガエビの違いでいえば、前々からノーマルテナガのほうがハサミに毛が多く、脚の爪が長いってことは、河口域の葦ッパラとかにノーマルテナガは適応していて、ドロドロッちい環境で底の有機物を毛で濃し取るようにして食べてたり、葦に長い爪を引っかけて行動してたりしてるんじゃないかと思っていた。葦のある釣り場では葦の上の方に餌垂らしておくと登ってきて釣れる。っていうか底の方に餌落とすと絡んで上がらないことがある。

 で、今回釣ったついでにネットでまたお勉強してみたら、やっぱりノーマルテナガのほうが河口域に適応しているというのはあってるようで、逆にミナミテナガは中流域とかにも居るとのこと。ノーマルテナガの脚の爪の長さについては不自然なぐらい長くて、内股に折り曲げて爪の背で歩いているのは何の意味があるのか?と水槽観察から書いている人もいて、歩くときの爪の向きまで見られていなかったので、見る人は見てるもんだなと感心した。葦とか壁面とかに引っかけて登るほかに、ドロドロの底に沈まないように長い爪で重量分散させて歩いているのかも?とか考えるとまた楽しめる。

 で、重要なのはミナミテナガとノーマルテナガでは生息域が川の河口ではかぶるけど、ミナミテナガはノーマルテナガでは産卵期でもなければ居ないような中流域でも生息しているってことで、これまで紀伊半島に来てからテナガを探したのは河口域ばかりで、ミナミテナガが中流域より上にもいる可能性は考えてなかった。ノーマルテナガがグチャッと居た東京湾に流れ込む川とかでの成功体験に意識せず引っ張られてしまってたっていうお粗末。なので近所の河川でももうちょっと中上流域を探らないといけなくなってきて、イマイチ釣れていない絶不調もあり自転車積んで電車でGOとかで新規開拓するか?とか思ってたけど、そんなことやってる場合じゃなくなってきた。改めて探って居なければ居ないでそういうもんだけど、N川の上流では数は少ないけど、やっぱりミナミテナガが居て釣れたし、釣れないまでも初めて探りを入れたN川の支流で意外に大型のカワムツが多いとか、テナガに限らず発見はあって、不調で停滞気味だったのを打破して新しい展開に突っ込み始めている。

 ノーマルテナガとミナミテナガとの違いの、違いが生まれた背景、生態や進化に思いをはせるだけでも、お好きな人間なら丼飯余裕の楽しさがあるうえに、さらにその違いから釣りの戦略を立て、実際に獲物を手中に収めることができるとなれば”センスオブワンダー”は釣りをより楽しくする香辛料の役割だけでなく、”釣るための武器”の一つにさえなり得るのである。

 釣り人ならくっだらない新製品をありがたがってる暇があったら、センスオブワンダーを磨いておけって、ちょっと魚釣れないと道具ばっかり買ってることへの自戒も込めて今回テナガネタを書いてみた。

 以前、釣り人なら「新しい釣り場」の発見については、新しい天体の発見以上の価値を認めるべきと書いた。もちろん新しい釣りモノや釣り方についても同様である。今回ミナミテナガエビという新しい釣りものを見いだし、新たな釣り場を開拓できたことは、ワシ的にとても大きい意味を持つ。たとえ釣れるのがそれほど大きくもないエビで”小物”であったとしても、その楽しみは決して小さくなく、ワシにとっては天体の発見にもひけを取らない大発見であると満足している。

2025年5月20日火曜日

<重要>サンライン「クイン★スター」とサンヨーナイロン「エクストラV-500」には生分解性がありまーす

 水中等の自然環境中で、細菌など微生物の働きで分解される、いわゆる”生分解性”のあるナイロンラインについて、ワシはサイトを立ち上げた当初から推しまくっていて、っていうか、生分解性のショックリーダーを世に広めるのが大きな目的の一つでサイトを立ち上げたと言っていいぐらいである。あつかえもせん細糸を絡ませて釣り場に捨てていく弩級の輩どもは論外として、普通に釣り場にゴミを出さないように心がけている釣り人でも、どうしても根がかりしたり、魚に切られたりして環境中にラインを放出してしまうことは想定される。それがラインに生分解性があったらだいぶマシな結果になる。時間の経過で劣化してボロボロになってもマイクロプラスチックとして百年単位で環境中に残ってしまうといわれている生分解性のない素材でできたラインと比較して、速やかに生物たちの力を借りて分解されて環境中から排除されるのなら、 環境に与える影響は小さくてすむだろうことは確かだろう。

 この問題には、釣り用のナイロンラインの製造元である日本の各メーカーでも結構真面目に取り組んでいて、以前も紹介したけど元祖の東レ「フィールドメイト」も初代は性能的にいまいちで受け入れられなかったのを再度2010年代に改良版を出しているし、バリバスのモーリス「RTE」も第2世代まで開発して頑張ったし、ラインの国内工場持ってるデュエルも作ってたし、ダイワも石鯛の捨てオモリ用で売っていた。でも全部廃盤になってしまった。少なくともショックリーダーとして使用する分には、引っ張り強度、耐摩耗性共に足りなければより太いのを使えば良いだけで、多少太くて伸びがあるのは技術でカバーして使いこなすのが釣り人の”腕前”ってもんだろうと思うけど、日本の釣り人の多くが、釣り糸は単純に細くて引っ張り強度が強いのが良いぐらいの評価基準しか持っていなくて、そうじゃなければ変にマニアックに低伸度で感度が良いとかをありがたがる。これまで何度も書いてきたけどアホでしかない。だから「生分解性ショックリーダー」という魚釣るための性能的には及第点ぐらいのショボいものであっても、一番大事な釣り場に魚が沢山いることに効いてくる”環境性能”的に優れていることを正しく評価することができなかった。マヌケでお粗末で腹立たしくワシも釣り人の一人として恥ずかしいかぎりである。ラインにナニが必要かは自分がやる釣りに応じて、それぞれ適切なものや好みのモノがあるだろうけど、一般的にそこいらでシーバス釣ったり海の小もの釣りしたり川魚釣ったりでは、引っ張り強度なんて今時のナイロンラインなら十分だし、結びやすさやらトラブルの少なさ扱いやすさやらで、そこそこの太さのあるナイロンラインで、根ズレやら歯の対策にフロロのリーダーでも接続しとけば事足りる。細いPEやらエステルやらなんやら、飛距離だ感度だ小うるさいこだわりで選ぶ釣り人のどれだけが、それらの細糸の利点を引き出せているのかはなはだ疑わしい。何度でも書くけど飛距離なんて魚に接近する方法いくらでもあるので多少の差はカバーできるし、遠投してる多くの釣り人はなんにも魚が居ないところを引っ張ってる時間が長くなってるだけだったりする。ちゃんと食ってくるゾーンが分かっててそこに届かせるために投げてるか?そして感度が良いラインの向こうでは魚が感度良く釣り人の動きを感じているだろう。感度が悪くて魚が違和感覚えにくい道具立てで、分かりにくいアタリをとれるようになると「ショートバイトが多くてスレてる」とか聞いた風な言い訳をしなくてすむようになる。

 で、環境性能的に優れている生分解性のラインを釣り人の要望に応えられるぐらいに高性能化するには、まだ何段階か必要で、ラインメーカーさんの頑張りを期待するしかないと思っていたら、思わぬ方向から解決策の大きな突破口が見つかった。

 「これまで分解しないとされていた市販の釣り糸が海洋で生分解することを発見」というどうゆうことやねん???と驚愕するネットニュースが5月15日ぐらいに流れてきた。

 ワシそういう話題しか記事読まないから、ヤフー様がお勧めしてきてくれたってだけで、一般の人の目にはついてないかもなので、興味のある人はネタ元の東京大学の記者発表にリンク張ったのでご一読いただきたい。ネットの記事では、東大中心とした研究グループによる報告で、市販されているナイロン釣り糸の中に生分解性があるものが認められて、ナイロンは環境中で生分解されないとされていたこれまでの常識を覆す発見であると紹介されていた。ワシ的に衝撃的な内容だった。

 生分解性があるナイロンライン、釣具屋で以前から普通に買えていたみたいです。

 分解されるってことは劣化が早いってことでもあり、メーカー側は公表されたくない事実かもだけど、市販品のレベルの強度を新品時持っていて生分解性のナイロンラインなんて、夢の釣り糸だろそれはって話で、メーカー側は堂々と”生分解性”を謳って売って欲しいし、釣り人も釣り業界も少しでも環境負荷が減るようにそういうラインを使う方向に行かねば嘘だろうと思う。ナイロンラインを劣化するまで使い続けるような弩級の素人のドアホどもの意見は無視するべきである。もちろん生分解性があるからといって釣り場に捨てて良いわけじゃないけど、それでも釣り場環境の保全に貢献するのは間違いなさそうに思う。遊びの釣りだけじゃなくて記者発表でも触れられているように漁業にも大きく貢献する発見だろう。具体的な銘柄がなんだったのか?も知りたいし、どういう細菌とかが分解しているのか、銘柄によって違いが出るのはどういう仕組みか、もしかして昔はナイロン系とかのプラ素材を分解する生物ってほとんど居なかったけど、環境中にプラゴミがあふれたことによってプラ素材を食う生物が増えてるとかもあるのか?とか研究の続報も知りたいし、現状の研究結果もネットの紹介記事だけでは断片的でよく分からんので、東大の記者発表検索してちょっとお勉強してみた。

 銘柄はすぐに判明。お題に書いてしまってるけどサンライン「クインスター」とサンヨーナイロン「エクストラV-500」の2銘柄で顕著で、実験には色つきのを使ってたけど、キモになるのは引用すると「ナイロン6とナイロン6,6の共重合体(2種類以上の異なる単量体(モノマー)が結合してできた高分子(ポリマー))の釣り糸の中で、共重合体の比率がある範囲に入る市販の釣り糸が、海洋中で生分解性ポリマーの標準物質であるセルロースと同程度の生分解性を示すことを世界で初めて明らかにしました。」ということらしく、ストレーンのデュポン社のカローザス博士が開発した最初のナイロンであるナイロン6,6と東レとかが開発したナイロン6を混ぜた塩梅によって生分解性の違いとかが生じているようだ。2銘柄に関しては生分解性素材の代表的なセルロース(木とか紙とかもセルロース)と同じぐらいの生分解性があって、クインスターだと海底で3ヶ月で強度は20%まで劣化するとか。あと東レ「銀鱗」も先にあげた2銘柄ほどではないけど生分解性があるとのこと。

 クインスターってJ州屋とかで売ってる代表的なボビン巻きナイロンラインじゃん。っていうかワシ50LBのショックリーダーとして愛用してる。ちょっとごわついた感じの堅めのナイロンって印象で、ややフロロ寄りのナイロンと思ってなんの問題もなく使ってたけど、生分解性があるって認識なかったから、リーダーとして組んでスプールに巻きっぱなしで保管してるヤツとか劣化して強度低下してしまってるかもだから要注意だな。

 とりあえず根魚クランクに使ってる先っちょのハリスはフロロの8号だったけど、根掛かりやら切られることは極力避ける方針で生分解性はイランかもだけど、念のため手元にあった50ポンド12号を早速導入。さらにシーバス用に4号、アジのハリス用に一番細い0.6号も購入。さっき書いたようにやや堅めの印象でワシの好み的には道糸にはどうかな?と思うけど、色も道糸向きの黄色とかもあるし、ハリスで使ってみていけそうなら導入したい。この際好みだなんだは無視すべきか?少なくともハリスでクインスターの商品ラインナップに適切な太さがある分は、どうしてもシーガーのフロロカーボンハリスに頼りたいって場合を除いて全部クインスターにしていこうと思っている。過去の生分解性ナイロンリーダーは伸びまくりでさすがに道糸には使いにくそうだったけど、クインスターとか普通に道糸に使われてる糸だろうし、好みは別として使って使えないことはなさげで、生分解性ナイロンの釣り糸としての性能は、”リーダーとしてはなんとか使いどころがある”って程度から、いきなり飛躍して”道糸でも普通に使えまっせ”ってレベルに革命的に向上したと言えるるだろう。

 ただ不思議なのは、なんでナイロン6にもナイロン6,6にも生分解性なんてないのに、その共重合体には生分解性があるのかっていう仕組みとか、いったいどんな細菌とかが分解しているのかとかとか、そのへんはまだ分かってないようなので、引き続きの研究と報告に期待したい。

 なんというか、分かってしまえば「もうできてるじゃん」っていう話だけど、典型的な”コロンブスの卵”で、最初に見つけたその着眼点、分析力が素晴らしいと手放しで賞賛したい。さすがは日本の最高学府”東京大学”って他も参加してるにしても思ったところ。また通常ならこういうの「プレスリリース」って横文字使いたがるところだけど「記者発表」って漢字表記なのが頭良さげ。まあ実際頭いい人が入る大学だろうから当然か。横文字やらローマ字略称やらでさも己が賢そうに見えるように粉飾してるドアホどもは、頭が良いから分かりやすい言葉を選ぶことができるってのを肝に銘じよ。

 クインスターとかの安いボビン巻きナイロンラインの性能を馬鹿にして「オレ様はそんな低レベルな道具は使わない」とか言っちゃうような弩級のバカは釣りなどやめてしまえ。クインスターやらが生分解性という環境性能で再評価されるようになったら、そりゃ各社、1から生分解性ナイロン開発するのに比べたら、条件に合致させて高性能化するのは、現状で既に釣り糸として売り物レベルの性能があるのでわけないはずである。今、クインスターなりエクストラVなりを買って、その開発を後押ししてやらねば、ただでさえ釣り糸のゴミは文字通り収拾つかないぐらいの”日本の釣り場の現実”があるので、こんなチャンスを見逃すようなマヌケに釣れる魚などろくにいないのは明白。なので、とっとと釣り具を中古屋にでも売ってしまって撤退しておけと自称達人でカリスマのワシャ親切にも助言してやるのじゃ。

 今後は生分解性のナイロンラインを使いこなせなければ、時代遅れのヘッタクソということになるだろう。


<注>いつも週末に記事あげてますが、今回はネタの重要性に鑑み、なるべく当ブログのトップに出る期間を長くして多くの人に伝わるように早出ししています。なので今週末24日(土)に更新は無しの予定です。あしからずご了承ください。また、このクソ重要なネタに触れないような雑誌、映像番組等の釣りメディアがあれば、およそ役に立つような情報など期待できないので切った方が良い釣りに繋がるかと存じます。

2025年5月17日土曜日

大事なモノにはやっぱり予備が必要だ

使用中のウエダ(上)、アグリースティック(下)
  根魚クランク、実弾は良い感じに補充できたけど、弾が補充できたら、銃器そのものの方もしっかり準備しておきたいってのが、病気の時の熱暴走って感じで、去年やってたし竿もリールもあるヤンコビッチ、って話だし、昨年安く手に入れて大活躍してくれたシェイクスピア「アグリースティックGX2 USCA662MH」になんの不満もないんだけど、これが大事なモノには予備が必要だと考える性格なので、同じような竿がもういっちょ欲しい。って、もともとアグリースティックもウエダ「プロ4ピッチンスティック」の代打的に入れた竿なので、ウエダを予備にすりゃ良いといえば良いはずである。でも理屈じゃないのが病気の怖いところで、とにかくもっと予備がほしかったの。アタイ病気が憎いッ!

ソルトストライカーとFVR
 まあ、アグリースティックのGX2シリーズは現行モデルなのでもう一本買えば良いんだけど、正規輸入がないので海外通販だと今日日円も安いのでエラい割高になる。狙いの魚の大きさ的には一応40,50を想定しているんだけど、いきなりデカいのが来てもおかしくないから、軽いのが売りで薄っぺらい国産の現行モデルはまったく強度的に信用できないので買う気はない。となると、国内中古市場で手に入りそうなのは古いダイコーとかの丈夫な時代の竿とかか、やっぱり米国モノってなる。米国モノなら現行モデルでもそこまで強度に問題はないだろうから及第点か。ということで中古で良さげなのはないかと探って、とりあえずわりと最近のフェンウィックの「FVR66CMH-2J」というのが送料入れて6千円チョイだったので確保。FVRというのはフェンウィックの中では下級グレードの、今時5万とかの竿が珍しくない中で定価2万円ぐらいの竿のようで、キンキンの高弾性じゃない低弾性カーボン使ってるところもポイント高い。「イーグル」シリーズの昔からフェンウィックの安いグレードの竿は良いと思うので期待できる。パワーはミディアムヘビーで8LB~20LBライン対応と、今使ってるアグリースティックGX2が10~25LBライン対応なので似たような堅さ。実際に手にしてみると、パワーはちょうど良い感じ。ただアグリースティックがグラスソリッドという特殊な竿先であからさまにグニャッと食い込み良さそうなのに対して、全体的に張りがあってそこはややアタリ弾かないか?という懸念はある。あるけど40からある根魚はガコンと思いっきり食ってくるので気にせんで良いか?まあ及第点かなと思うんだけど、もっと良いのは無いかと探して、送料込みで6750円で出てたカベラス「ソルトストライカー ISC703-3MHA」というのも確保してみた。カベラスが”ソルト”って売ってるぐらいで、ガイドも全部ダブルフットで丈夫だろうし、7フィートの長さはタメも効きそうで良いし、3本継ぎで携行が楽なのは、もし今後他の場所でやるとかになったときに便利。これも堅さ的には先ほどのフェンウィックと似たような感じの10~20LBライン対応。まあこれも及第点はあげてよさそう。

 ただ、クソデカいのが来たときに及第点の竿でどうにかなるのか?と考えると、最悪竿真っ直ぐ魚に向けて綱引きでなんとかするって裏技はあるので良いといえば良いんだけど、結局アグリースティックの”クソ丈夫さ”を代替する竿ってなかなか無いのが実際で、そうなってくると竿2本もアホみたいに買ってしまったけど、緊急時の予備竿としては機能はするにせよ、やっぱりアグリースティックが使いたいってのがある。そこはもう理屈じゃなくて、好みの問題でどうしようもない話である。今の竿で結果も出てるから、”釣れてる道具は変えない”っていうのも鉄則だと思う。となると仕方ない、一時1ドル158円とかまで円安進んでたけど、戻して140円台前半まで来てたし”買うか迷った釣り具は買っておけ”はこれまた鉄則だし買うか。ということになった。やっぱりアタイ同じ竿の予備が欲しいノ。

 で買おうとしたらこれが意外に難航。まずは今使ってるパソコンだと、パソコン側のか向こうのせいか分からんけど、バスプロショップスのサイトとの接続に不具合が生じる。購入手続きまで行かず途中でエラー画面になってしまい戻っても初期画面まで表示されないお手上げ状態になる。こちらのパソコンのセキュリティーとかが邪魔してるのかなと、古い方のパソコン立ち上げて、そちらなら今の住所になってからも利用してるので大丈夫だろうと思ったら、今度は購入確認画面まで行くんだけど、送料が無料となって、なんか変だなと思いつつも決済しようとするとそこでエラーメッセージが出てどうしようもなくなる。海外発送できなくなったか?仕方ないのであとは代行業者とか探すか?と思ったけど、代行業者は米国内国内送料と国際送料が二重にかかった上で手数料とるからさすがに馬鹿臭いぐらい高くお手上げで、こりゃ諦めるか?と思ったけど、ふと思って輸入してるショップとかないかなと検索掛けてみたら、ヤ○ーショッピングに店出してるところが送料込み13800円で売ってるのを見つけた。バスプロショップスで買うと60ドル弱の本体価格に4千円からの送料は掛かってくるはずで1万2千円がところかかる。とすれば2千円ぐらいの手数料なら許容範囲かとポチッといきました。なければ買わずに済むモノを「「ある」のがいけない!!!「ある」のがいけない!!!!(byもちづきさん)」。4万も5万もする竿があたりまえになった今時とはいえ、アグリースティックに1万4千円!”世界一の安竿”も出世したモノである。まあ金で解決できる問題は金で済ませばいいやという感じで無事確保して症状は治まりつつある。ガイドが一個曲がってたり、グリップのビニールカバーを貫通して傷が付いてたり、相変わらず米国通販の雑さにはまいるけど、ガイドは指で戻せばなんとかなったし、グリップは見なかったことにしておく。ヤレヤレだぜ。しかし、物価高騰のおり食費が以前なら月1万円を切ることさえあったのに今じゃ2万円ぐらいにはなっていて、切り詰めて半額の菓子パン買うかどうかためらうぐらいなのに釣り具には躊躇がないワシ。米が5キロ5000円とかなのは購入時毎回苦虫を噛みつぶすような渋い顔をせざるを得ないのに、竿の取り寄せの手数料2千円ぐらいは許容範囲と思ってしまう不条理。さらに言うなら安竿とはいえ不要不急の竿を3本も買ってしまってる。まあ米の値段始め物価高に関しては米が国内で自給できなくなるとかしょうもないことになっても馬鹿臭いので米農家が儲けられる程度の価格は容認せねばならんということだろうとは思う。けど、もうちょっと安くして欲しい。米農家もJA(旧全農)もそんなに高い値段で売ってないって話も目にするし、値段つり上げてる輩どもには”打ち壊し”ぶちかましたい気分。

 でもって、確保してもしばらく出番はない予備竿たちだけど、仕舞っておくのにフッ素系コート剤のボナンザ塗ってから保管しておくかと、ボナンザスプレー出してきたら間の悪いことプスプスッと使い切ってしまった。でもって前々からスプレー方式はスプールのラインに吹くには都合が良いけど、竿とかに吹くと多くが竿にかからず下に抜けてしまってもったいないと思ってて、確かボナンザってシートに含ませたウェットティッシュみたいなタイプもあったよなと、ア○ゾンで探ったら、シートタイプもあったけどさらにお値打ち感のある原液タイプ50グラム入りがあったので、そっちを購入。スプレーは50mlとなってるけどガスと溶媒分が多そうだから値段同じぐらいなので原液タイプの方がお得だろう。そしてボロ切れに染ませて塗り塗りふきふきして良い塩梅なんだけど、なんかこのパッケージの配色見覚えがあるんだよな、と気になってなんだったけかな?と記憶をまさぐって「あれだ!」と想い出して、蔵から該当するブツをほじくり出してみた。ザウルス時代のバルサ50のパッケージがそっくり。ボナンザは古くからあるので、真似したとしたらおそらくザウルスの方だろうけど、なぜこの配色を真似する必要があったのかは謎で、そもそも真似したのか偶然の一致なのかも分からん。どなたかそのへんご存じの方がおられたらご教授願います。

 で、せっかく50グラムも手に入ったので、以前から懸案事項だった、蔵で保管してる竿のうち袋入りの竿の手入れをやっつける。当然保管する前にも手入れしてから保管してはいる。けど、リールでちょっとやらかしたんだけど、塩水で使った道具を持ち帰るときに袋に入れて持ち帰ると袋に塩水が付着してしまい、帰宅後竿やリールを真水で洗って塩抜きして乾かしてから袋に入れても、袋が塩気にまみれてるので袋の中で塩にやられる、ということが起きると判明。これを避けるためにOニーサンはゴルフクラブ用だそうだけどメッシュ状の筒に竿を入れて持ち帰って筒ごと竿を水洗いして塩抜きしてるそうである。というわけで袋を洗濯して塩抜きして、竿も真水で丁寧に洗って乾燥させてからボナンザで拭いてやって改めて保管、という工程を5本づつぐらいまとめて作業してやっつけた。我が家にゃ現時点で121本の竿があるけど、中古で買った竿で袋無しとか、そもそも元から竿袋など付いてこない安竿とかも多いし、塩水での使用がない渓流竿とかもあるのでそこまでの数はないんだけど、それでも30本からの竿を改めて手入れし直してっていうのは面倒くさかった。まあでもボナンザ原液で買ったかいはあったというモノである。皆様、釣り場から持ち帰る際に塩水付いた道具は袋に入れないように、もしくは袋も塩抜きするように気をつけてください。

 なんにせよ、竿は消耗品のたぐいだと思うので、今後も入手が面倒くさいアグリースティックやらのアメ竿を除くと、ワシ好みの丈夫な竿が日本で新たに売られることは期待できないので、今蔵にある竿達は良い状態で保管し、必要となったらすぐ使えるように準備おさおさ怠りなくしておきたいものである。

2025年5月10日土曜日

予備弾倉は豊富に在庫しておかねばならぬ

  冬のカマスシーズンが終わって、なんとかオカズのアジは確保できていたけど、急ぎ足の春は何が何だかよく分からん感じで、ここ数年恒例のシーバスの不調、読み切れん泳がせと根魚、ちょっと良かったのは単発のマゴチぐらいでこの春は釣れてなかったんじゃ。そんな春の不釣をうけて、症状が出たのがフライリール方面だけだったと思ったかい?そんんなわきゃあない。って話で他にも症状出てました。

 まあ、今年もシーバスは期待薄いので、そうなると期待したいのは昨年良い思いした根魚クランクで、去年良かったからと言って今年も良いと思うなよ!って話ではあるけど、すがるような気持ちで、南方系で夏には港に入ってるのは去年の場合確認できていたハタ系が、春にいつ頃入ってくるか、今か今かとボウズ食らいながら待ち続けてたので、どうしてもそっち方面の妄想がふくらみがちで、症状は主に根魚クランク方面で出まくっていた。

上列60、下列45
 というわけで”ルアー図鑑うすしお味”第79弾はディープクランクで行っておこう。以前にも課題として「サイレントモデル」「サスペンドモデル」の導入と言うことは考えていると書いたところだけど、太いリーダー背負って海水で3mぐらい潜ってサスペンドというのはなかなか無いということで、フックに半田線巻いて調整するってのが妥当かなという今のところの整理だったけど、ラトル無しのサイレントモデルは、元々バルサ製で強度面の不安のあるバグリー「DB3」を代替できる丈夫なルアーが必要ということで、一応ボーマーブランドの「ファットフリーシャッドサイレント」が良さそうかなと、すでにいくつか確保済みだった。で、ツーテンの虎ファンさんにもらったサンシャインフィッシング「ベクトロン60」はネット情報では淡水で最大潜行3mぐらいだろうとされていたんだけど、これが実際に釣り場で根魚クランクタックルの8号リーダーとかで投げても3m強は潜ってくれて、一方ファットフリーサイレントの方は4m以上潜りそうで、そうなると使い分け可能であり、かつ主戦場の水深3mラインで使いやすいのはベクトロン60ということで、買い取り強化月間が始まった。そしてベクトロンには45と30という弟分がいて、30はまだ形状が違うので分かるけど、45は写真ではイマイチ分からず、60のつもりで買ったら45というのが結構あった。ただ、45も3m弱ぐらいは潜ってくれるので、潮位低い日やら根の上とか使いどころはありそうで、同時に買い取り強化月間を進めた結果が写真の有様である。ベクトロンはサンシャインフィッシングというブランドで出てた最後の方の名前で、昔の名前は「トリプルディープクランク」の10、15、20とのことで、ブランドはアングラーズプライド→クランクベイトコーポレーション→ルーハージェンセンときてサンシャインフィッシングと移り変わるって経緯だったのかな?サンシャインフィッシングは日本の輸入元のブランドのようでもあり、変わった経歴のルアーである。ルーハー時代とみられる個体もいくつか混じっている。早速ハタ系も釣れて、バルサ製で中身がみっちり詰まったDB3と完全に互換性があるかというとそうではないだろうけど、基本ラトル入りが多いディープクランクにおいて、ラトル無しは変化をつけるために切る札としては充分機能してくれそうな感触で気に入って一軍起用しているところ。良い仕事してくれそうな予感がある。弾薬は充分補給できた。

下リップサイズ比較、DD22、マッドペッパーマグナム、G23、G25
 できたんだけど、勢いのついた暴走機関車はブレーキぶっ壊れてるのかハナからついてなかったのか、止まるわきゃない。なんか手札として切れる、ちょっと毛色の変わったディープクランクはいねガ、3mぐらい潜る子はいねガ~、とクレイジーサイコナマハゲ状態でネットの海をさまよって、そういえば冬に深場狙う用に候補として買ったアーボガスト「マッドバグ」は個性的で、その時買ったG25は1oz級のデカクランクで4mぐらいは潜ったように思ったのでちょっと潜りすぎかもだったけど、アーボガストブランドお得意のサイズ展開しまくりでパンフィッシュサイズからマスキーサイズまであったはずで、ちょうど良い潜り具合のあるだろう?と、調べてみたらG27が7/8oz、G23が1と3/16ozでどちらも11f(約3.35m)と良さげなカタログスペック上の潜行深度。ただ現在プラドコ社傘下のアーボガストブランドではマッドバグ生産されていないようで、中古と売れ残り在庫品をネットで探し回ったらどうにかクソデカいG23が入手できた。まあ、コイツの役割的には、ド派手にアピール力で勝負なのでデカいのは悪くない。動き的には今時のディープダイバーなら適度にロールを伴って腰を振る感じで水流受け流して巻きもそれなりに軽くという感じなんだろうけど、コイツは試し投げしてみると、まったくと言ってよいほどロールを伴わない激しい腰振りで、フラットフィッシュのようにつんのめるような感じでガコガコ暴れる。といえば分かってもらえるだろうか?普通のディープクランクとは明らかに違う系統の動き。ただ、G23はG25とボディサイズほぼ一緒で、G25もたいがいだけど更に上行くお好み焼きのコテか?っていうぐらいの巨大な金属リップが搭載されているにもかかわらず、それが潜行深度を稼ぐために機能してないようであまり潜らない。デカいリップはむしろ暴れさせる方向に効いているような感じ。G25はそこまで強烈な動きではなく、まあ金属リップの重さで振り子運動してるがごとき激しい動きではあるけど、多少のロールも伴って比較的普通の動き?で、潜行深度もユックリ目に巻くと3m前後は狙えそうだし、リップのリグもガチャガチャいうだろうしラトルも入ってるしで、G23と比較すればおとなしいといっても食ってくるヤツがいれば一ッ発で勝負決まりそうな十分なアピール力なので切る札としては悪くなさそうで合格。あと余談だけどこの手の重い金属リップのルアーって竿立ててユックリ水面引きする小技があって、なんかそういう使い方が流行ったせいで、ティムコ「クランキンダーター」が再販されたとかなんとか。

 しっかしこういう古いアメルアのデザインの良さはなんなんだろうね。同じタイプの先行するルアーとして、ホッパーストッパー「ホッパーストッパー」とかボーマー「ボマー」とかの金属リップのルアーがあったんだろうけど、尻の方に目が付いて見事にザリガニっぽい表情が出て、かつ出来損ないのフォークみたいなリップの形状も、底を小突いて音を立てたり障害物回避したりと機能的にできている。後発でパクリといえばパクリなんだろうけど本家の劣化版にはなってない。同じザリガニルアーとしてレーベル「クローフィッシュ」シリーズやバグリー「クレイフィッシュ」の本物そっくり感も悪くはないけど、マッドバグの方がデザイナーが仕事してる気がする。いわんや今時の日本の「小魚そっくり」ルアーの陳腐さとは雲泥の差。マッド(泥)だけに。今気づいたけど、レーベルとバグリーとアーボガストが同じザリガニでも、クローフィッシュ(爪魚)、クレイフィッシュ(粘土魚)、マッドバグ(泥虫)と違うザリガニの呼称を使ってるのは差別化とか商標権の関係とかあったのかも、などと思ったり思わなかったり。単なる産地(メーカー所在地)での呼称の違いか?

 なんにせよ、良い感じに実弾補充できて、ベクトロンは一軍ローテで活躍してくれるだろうし、マドバグG25も切る札としては面白い札。ルアーは準備万端、あとは魚が接岸してくれるかどうかで、こればっかりはやってみないと分からない。マメに釣り場に立って竿を振っておこう。という方針はいつもと同じ。数が釣れるような魚じゃないので、年間通じてポロポロッとなんぼかでも釣れてくれれば帳尻があう。ドカンと良いのが来てくれればなおのこと良しで、そんな甘くはないんだろうけど、そういう可能性がある釣り場なので油断せず釣りたい。

2025年5月3日土曜日

春のフライリール祭り

 今年は、リールネタは年明けにメイドインジャパンのPENNネタで一発書いたッきりで”病気”は治まっていたように見えていたと思う。
 そんなこたぁない。
 冬の釣りものであるカマスが今年は春先まで連れ続いたので、釣れているときは病気の症状は治まってくれる傾向にはある。しかし、カマスも終わりかけて今期の課題やら、次のシーズンへの対策やら考え始めると、ムクムクと物欲がもたげはじめ、れいによって、マウスが滑らかにすべりはじめて、クリッククリックしてしまっていたのである。アタイ病気がにくいっ!

 そもそも、フライリールにはっていうかフライの道具にはあんまり興味がないというか、腕がソレナリでしかないので道具に対して「こうあるべき」というような確固たる好みがない。ぶっちゃけ壊れにくくてあんまり癖が強くなくて安けりゃ上等ってぐらいにしか思っていない。なのでルアー用の釣り具ほどのこだわりも無く、比較的物欲を刺激されない分野ではある。
 あるんだけど、この冬のカマス釣りでは、暗い時間の浅棚攻略で、あまり沈むのが早くないタイプⅡとかのラインでユックリ引くとかも試したし、派生していつも使ってるタイプⅥよりタイプⅣのほうがラインが軽い分食い込みが良いような気もして、ラインの種類を変えたスプールをいくつか用意する必要に迫られた。今使ってるフライリールはサイエンティフィックアングラーズ「システム2ー78M」で替えスプール2個付きで中古で安く手に入れてあるので、スペアスプール体制は比較的充実している。性能的にも全く不服はない。ただ、スプールが3つあったとしても、タイプⅥ、Ⅳ、Ⅱと用意したり、メインのタイプⅥを予備含めて2本用意してもう一種類とかで3つを使い切ると、今期終盤新しいラインの試投の際には「もう一つ二つスペスプールがあると何かとはかどるのにな」と思うところがあった。というわけで、スペアスプールを確保すべく、本体込みでも5千円も出しときゃ買えるので、中古の弾を探していたんだけど、これがなかなか出てこない。「システム2」自体は長年にわたりよく売れた機種なので、中古市場にも弾数多く出ててくる。時代によってスプールが穴あきだったり穴無しだったりと違いはあっても、同じ型番なら時代が違うモデルでも互換性はあるようで、同じの探すのぐらいわけないだろうと思ってたけど、以外に難しい。なぜなら同じライン番手指定の例えば”78”であっても、スプール幅とかの違うモデルがいくつも用意されていて、無印や「L」は比較的よく見かけるけど「78M」って以外にレアな型番で、無印と互換性あるのか分からんこともあり「システム2-78M」は本体、スプールとも出物が見当たらなかった。
左システム1-678、右コンセプト2-35
 となると、まあフライリールはスプールにハンドル付けただけみたいな単純な構造でかさばらないので、試投用に新たなラインを巻いていくのぐらいの用事であれば、新しい安いリール1台買って対応すれば良いか。ということになった。替えスプール1個持ってくのと予備リール1台持ってくのと大して変わらん。ってなったときに、ぶっちゃけカマス釣るのにシステム2の性能の良いディスクドラグとかなくて良いし、バッキングライン回収させられるほど走る魚も想定してないのでラージアーバーでなくても良い。釣りが終わったらラインを巻いて収納できればそれでいいだけである。ただ、スプールの追加とか後々のことも考えると中古弾数が多い機種が望ましく、そうなると信頼と実績のサイエンティフィックアングラーズブランドのクリックブレーキの機種である「システム1」が良いかなということで、安いの無いか探ってたら「システム1ー678」とオマケにあんま状態良くないけど同ブランドの「コンセプト2-35」もついて2500円(送料込み)というのがネットフリマに出てたので、安いしこれでいいやと確保した。

 システム1はもう、クリックブレーキのフライリールはこうです、って見本みたいな典型的な三角のクリックが2つ付いてるタイプ。この△の向きを変えると右巻と左巻が交換できる。
 システム1も2もそうだけど、イングランド製で、フライリールって数が売れないから削り出しとかが多いけど、そこはさすがのサイエンティフィックアングラーズブランドで、世界中で売れる販路持ってるから、金型作ってアルミの鋳造で作られている。鋳造で沢山売るからお値段控えめ。でもフットは丈夫なステンぽいのになってたり、造りはしっかりしてて信頼性が高い。システム2の方はしっかり機能するディスクドラグが入ってて、鋳造の比較的安い価格帯のフライリールとしてはあり得ないぐらいの仕上がり具合になっている。まあシステム1もシンプルなクリック式になってる分ブレーキ的には下級品という感じだけど、単純設計なおかげで壊れたり不具合起こしたりは少ないだろうから、これまた実用的なリールなのは使う前から分かろうというものである。ちなみにどうも同様の機種がシステム2の「LC」という名で売られていた時代もあるようでディスクドラグのが欲しいときは要注意である。CはクリックのCか?

 で、オマケで付いてきた「コンセプト2-35」がけっこう面白いリールだった。おそらく3~5番指定のリールなんだろうけど樹脂製で軽い。フライリールってスプールが塩でやられがちで、長期保管の時とかはライン抜いてとか面倒くさいんだけど、樹脂製なら腐食には強いから海用としては好適。ガタついてた巻き心地もグリス塗りまくったら気にならない程度に回復した。相当に安い感じの造りで精度もあんまり出ていないけど、軽量、高耐腐食は評価できる。
 で、これだけ安い造りのリールならクリック式で良いだろうと思うけど、なぜか主軸からギアを介して隣に持ってきたテフロンパッドの入ったドラグが奢られている。
 なんか見たことある方式だなと思ったけど、これオービスブランドの「バテンキル5/6」と一緒の方式っぽい。コンセプトはどこにも製造国の刻印とか無いけど、バテンキルもイングランド製だったと思うので、どうも英国式のように思う。製造は別の国かもだけど設計自体は英国流とみた。英国のフライリールといえばハーディーが思い起こされるけど、ハーディーやらオービスやらサイエンティフィックアングラーズやらのブランドから製造を下請けしていたフライリール屋が英国にはあるのかもしれない(ブリティッシュリール社というのが怪しい)。
 ドラグは主軸から回転持ってきた小さい歯車の両面にテフロンパッドを乗せて、リールの壁面と、キノコ型のネジ頭みたいな真鍮の部品で挟み撃ちにして、調整つまみでネジを締めて効きを調節。なんだけどイマイチ調整効かずで、バックラッシュしない程度にナットの締め方で調整しておいて、つまみは触らん方が良さげ。
 
 というわけでコンセプト2は軽量小型を活かして試投用の予備機に、システム1はリョービ「455MG」に任せていたシーバス用のフローティングラインを巻き替えしてシーバス用に回す。455MGはマグネシウム本体で軽くて良いんだけど、ある程度予想はしていたけどマグネシウムは塩に弱い。汽水とかで使った後にジャバジャバ水道水で洗ってから保管していても、ラインの間とかに入り込んだ塩気までは完全に取り切れず、スプール内側塩吹いて腐食しがちなので残念ながら塩気のある水域ではイマイチ使えん。軽さに極振りした面白いリールなのだけど残念ながら淡水仕様ってワシの中での整理。まあこの大きさのリール淡水でってなるとサケとかぐらいしかなさげで、出番なさそう。使ってみたいという方おられたらご連絡を。

 っていってるそばから、冒頭写真の右端のは”それ系”のじゃないのか?と気づかれた方はお目が高い。まさにリョービの同じマグネシウム本体のシリーズの最初に作られた機種で「255MG」という渓流とかで使うような小型機種。この機種が欧米でも大ヒットしたので、大型化した455MGとかも追加で作られたという経緯だったらしい。
 渓流なんて行きもしないのに、なんでそんな小型機買ってるのか?そもそもそういう用途ではフルーガー「メダリスト1492AK」があるやんけって話だけど、ジャンクリールとしてこの名作が800円即決(送料別)で出されてるのを目にしてしまったら、そんな値段で売られて良いリールじゃないゼって不憫に思ってしまって、マウスが滑ってクリッククリックもやむなしなのであった。ついでにこういう値段の付け方してる業者さんなら、他にも掘り出し物があるだろうから探してまとめて送料安くあげようとしてしまい、案の定900円即決(送料別)の大森製作所「タックルNo.2」なんてのを見つけてしまい、現在ベイルレス仕様にして絶好調で運用中の同型機の予備機としてこれまたクリッククリックしてしまいアタイ病気が憎いのであった。タックルNo.2の予備機なんて色違いの「タックル5No.2」持ってるから間に合ってるだろって話。

 ただ、結果的に255MGは買って良かった。そのぐらいちょっとやるなというリールで、相場見ても新品箱入りとかでなければクソ安いけど、これはもうちょっと良い値段付けてやって欲しい。
 正直、8番とかだとロッドもリールも多少重くても、そもそも投げてるラインが重いので、あんまり軽さの恩恵は感じてないんだけど、さすがに渓流用ぐらいのサイズになってくると、軽さを楽しめるように思う。
 マグネシウムボディーは鋳造でもあからさまに軽い。
 で、その軽さの要因としては単純な構造も寄与していると思うんだけど、単純な中にも工夫が凝らされていて、ちょっと感心する。
 元々他のメーカーの事例があって真似したのか、自社開発なのかフライリールについては知識があまりなくて分からんのだけど、まずはブレーキがちょっと変わってて良い。単純なクリック方式かと思いきや、回してもカリカリいわないので「外れてるのか?」と不安になるけど、カリカリとクリック音がする方式ではない。ないんだけど、方式としてはクリック方式同様単純で、クリック方式だと、スプールの根元の歯車に爪を掛けるんだけど、255MGでは写真のようにスプール根元には歯車じゃなくて円盤がハマってて、その円盤にクリックの△の先を沿うように円弧状に伸ばした金具で円盤を押さえる方式になってる。ブレーキの摘まみを締めると円盤に強めに金具が押しつけられてブレーキが掛かる仕組み。とはいえこの単純な構造でディスクブレーキみたいな安定した強いブレーキ力が得られたら苦労しないって話で、そこまで優れたブレーキにはなっていない。でも、この大きさのフライリールのブレーキに求められるものって、ラインを引き出したときに過回転してしまってバックラッシュしなければ上出来で、リールファイトなど想定しなくて良いので、このブレーキでユルッと押さえておけば用が足りる。カリカリ音がしないのは静かに釣るには悪くない。なにより個性的。どうしてもリールファイトの必要性が生じたらアウトスプールなのでスプールを手で押さえてブレーキかけろって話で必要充分だろうと思う。
 もいっちょ、芸が細かいのがラインがあたるリールの脚部と逆の柱の前後にパイプ状のローラーがハマってて、ラインを出し入れするときに傷つけないように配慮されている。単純だけどちょっとやる感じなのである。
 マグネシウム鋳造で軽量安価、機構も単純ながら個性的で大ヒットになったのも頷ける感じだけど、いかんせんリョービってブランド力が弱い感じで、リョービのフライリールっていっても中古市場でも需要が少ない。でもこれは買って損はないと思う。フライリールって、特にこの大きさは単純な構造だから「どれ買っても一緒」となりがちだけど、255MGはちょっと違うと思う。この手のフライリールなんて何でも良いんだろうけど、だからこそ持ち主のセンスが表れると思う。でも金掛けてもせいぜい骨董的な価値があるのぐらいしか他と差別化できるネタがなさげだけど、これはちょっと個性的で良いんじゃないでしょうか。リョービはなにげにリール造るの上手かったと思うけど、往事から評価は高くなくて他のブランドからの下請け仕事が多かった。そういう実力はあるけど、知る人ぞ知るなリールはちょっと良い気がする。このリールで魚釣りたくなったので、アユの時期になったら、今年は毛針流しじゃなくてフライで狙ってみようかなどとも考えている。アユの遡上しだいだけど、アユが居なくてもウグイちゃんやカワムツは相手してくれるだろう。

 という感じで、フライリールもそれなりフライマンとしては、たまにはお勉強しておかねばなと思うのでありました。

2025年4月26日土曜日

生成AIは印税生活の夢を見るか

ラスコー洞窟壁画、撮影EUX氏、ウィキメディアより
 今時話題の”生成AI”ってウィキペディア先生によると「 生成的人工知能または生成AIは、文字などの入力(プロンプト)に対してテキスト、画像、または他のメディアを応答として生成する人工知能システムの一種である。ジェネレーティブAI、ジェネラティブAIともよばれる。生成的人工知能モデルは、訓練データの規則性や構造を訓練において学習することで、訓練データに含まれない新しいデータを生成することができる。」ってなモノのことを言うようで、要するに、人間の代わりに既存の表現物から学習して要望のあったお題に対してなんかでっち上げてくれるコンピューターソフトのことだと思っている。簡単な問いに答えてくれる「ChatGPT」とか、リクエストに応えてイラストとか文章とか描いてくれる各種「画像生成AI」「文章生成AI」とかが代表例だろう。

 特に後者は、著作権との関連もあって、法的、倫理的な問題が取りざたされ議論になっている。とある文学賞の新人賞作家が、生成AIの出力文章も使ったと公言して話題になったりもしてた。読む方の、読むのに限らず、観る、聴くその他鑑賞する側の立場としては、純粋に考えると生成AIだろうと巨匠の渾身だろうと、出力された作品が面白いか、面白くないかだけが問題である。開高先生が昔、自分の作品を評して「これが実体験ではなく取材だけで書かれているなら素晴らしい」というようなことをのたまう評論家に対して、そんなもん読む側からしたら関係ない、作品として面白いかどうかだけだ、と言い切ってたのを思い出す。

 ただ、生成AIの出力物は作品として純粋に面白いかどうかだけではすまされない、今までの長い歴史で整理されてきた著作権や模倣の概念に当てはまらない事象でもあり、人の仕事を機械が奪うことへの危機感、芸術とはなんぞやに迫るような根本的な問題をも提起されているように思う。特にそのへん顕著なのがイラスト界隈で、そんなもんお客さんが要望したイラストを即座にホイホイと出力できるソフトなんて使われたら、底辺イラストレーターの仕事なんて速攻で無くなりおまんまの食いあげである。ちょっと前までラーメンを箸で食えなかった生成AIイラストとかは、ある種笑いの対象でしかなかったけど、すぐにそんな不具合は修正されて、ネット記事の見出し画像とか生成AIに作らせてるのをわざと分かるように強調したようなイラストも増えたので、気づかないであろうモノも含め確実に普通に使われるようになりつつある。

 10年かそこら前に、今後AIに仕事を奪われる職業としてあがってたのは、自動運転に取って代わられる運転手はじめ単純労働者で、逆に芸術や頭脳労働の方面ではAIでは代替しえないとか言われてたのに、真逆のことが起きている。いまだ車は自動運転は実験段階で、多くの単純労働では高度な金の掛かるAIを使ったシステムに置き換わるどころか、安い労働力でありつづける人間がこき使われ続けている。元々コンピューターとかAI(人工知能)とかは人間の脳の機能の模倣というか外部化、機械化であり、人の脳が行っていたようなことを置換していくのは当然の成り行きだろう。脳生理学者がさも自分の研究対象は特別であると言いたげに「脳のシステムは複雑でAIや機械で再現・置換されることはありえない」とか間抜けなことをぬかしているけど、出始めで画素数が少なく荒い画像しか出力できなかった時代のデジカメ写真を見て「フィルム写真に追いつくことはない」とか言ってたマヌケと同じだと感じる。結局写真の場合、フィルムに焼き付ける物質的な分子数なり色素数的なものを画素数が超えれば良いだけで物理的な数の問題でしかなかったのは明白で、アホかと思っていた。同じことが脳でも言える。いくら複雑と言っても、物理的に電気やら伝達物質やら使って神経のつながり(の他にも色々あると分かってきたようだけど)で制御されているシステムであり、簡単ではないにしても模倣や再現、代替は可能なはずで、脳機能全体の代替とかは難しくとも、当座必要な機能の再現ぐらいは存外早く実現するのではと、近年のそのあたりの技術やらの進歩の早さを見ていると思うところである。で、外部化、機械化された脳機能は頭蓋骨という監獄から解き放たれ、大きさの制限がなくなり、最終的にはホモサピの脳を超え、さらなる高度化、複雑化さえなしえるようにも思う。

 で、そうやって生成AIに仕事を奪われていくイラストレーターは当然危機感を覚えるわな。で”反AI”的な宗派の人もでてくるのはまあそうなんだろうなと思う。いわく「生成AIがやってることは模倣でしかなく、イラストレーターが居なくなるとオリジナリティーのある絵が生まれなくなる」、曰く「既存の作品を学習のために取り込み、その作品の模倣的な出力を生むのは著作権の侵害である」というのが、主な主張だろうか。確かに頷ける面もある。

 ただ、生成AIがやってるのは創造ではなく模倣であるってのは、自分らにブーメラン帰ってきて突き刺さらんのかよ?って思う。すべての作品って良いぐらいに創作物って、それまで制作者が観てきたモノ聴いてきたモノ、ありとあらゆる表現ブツの影響を受けまくってるわけで、全くの独自性を持った表現なんてあり得なくて、模倣の先になんかその人独自の個性が生まれてくるぐらいのもんだと思うので、生成AIがやってることとナニが違うと思う。現時点で人間の方が創造的だとしても、これまた時間の問題で人間のイラストレーターがやってる創造的な仕事ぐらいAIがやり始めるのは明白。すべての表現物が何らかの模倣であるってのは極論に聞こえるかもだけど、じゃあイラストレーターは紙もペンもない時代に洞窟の壁に絵を描いたご先祖のような”絵の創造”からみんなやってるのかって言ったらそうじゃないでしょ?紙に描いてるか液晶タブレットで描いてるか知らんけど、そのやり方は少なくとも模倣してるでしょって話。なにしろマンガの神様の一人である藤子・F・不二雄先生が「「まんがをかく」という作業は、情報やアイデアをいろいろと取り入れ、そしてはき出すということのくりかえしといってよいでしょう。つまり、この世の中に、純粋の創作というものはありえないのです。けっきょく、まんがをかくということは、一言でいえば「再生産」ということになります。かつてあった文化遺産の再生産を、まんがという形でおこなっているのが「まんが家」なのです。」(「藤子・F・不二雄のまんが技法」より引用)って言ってるぐらいだから、独自性なんてあるような無いようなあえかなもので、それがあったら超一流って話で、少なくともそういう独自性があるイラストレーターは、もし生成AIが本当に創造性が無く新しいモノが生みだせないなら、学習元としても必要とされるしもちろんその独創性から評価されて生き残るだろうっていう矛盾。そのへん凡百のイラストレーター氏はどう思ってるんだろう。機械やらシステムやらの発達で仕事が無くなるのって電話交換手やらタイピスト(タイプライター打つ人)の例を出すまでもなく、歴史上ありふれた事例であり、新たな便利な技術が使われないで自分たちが保護されるなんてことは無いと覚悟した方がよろしいかと老婆心ながら厳しいことを書いておきたい。「アナタに描いてもらわないとダメなんだ」と顧客に言わせるだけの実力がなく、なんかそれっぽいイラストでも載せとくか、って需要で飯食ってたイラストレーターさんは生成AIのほうが安ければ使ってもらえなくなるよって話。外野の”反AI宗派”の人なんて今はそう言っててもすぐに転ぶから見ててごらん。

 もう一つの著作権やら模倣の倫理的問題とかはややこしい。キャラクターやら構図そのモノをパクったのなら著作権侵害を認定するのも比較的簡単だけど、そもそも”画風”を学習させてパクるってなってくると、そんなもんさっきも書いたけどどんな表現者でも影響を受けた先達はいるわけで、じゃあそれは著作権を侵害してるのかっていうとそうでもないってのが普通だろう。例えばワシ全然楽しく読めなくて序盤で挫折した「ワンピース」の尾田栄一郎先生の描く女性の胸から腰のくびれの曲線が、師匠である「ジャングルの王者ターちゃん」の徳弘正也先生のそれを引き継いでるなと思ったりするわけだけど、それを著作権侵害というかと言えば、師弟関係だからってのは抜きにしても言わんよねって話。画風自体はだいぶ違うしね。文句言ってる反AI派のイラストレーターさんだって、いろんな表現物見て模倣もしただろうし、影響も受けただろう、そうやって自分の絵柄を育てたんでしょ?同じことAIがやってるだけじゃん、ってなる。でも、そうはいっても話題になってた「ジブリ風イラスト」とかはさすがに宮崎駿先生あたりには、著作権侵害と認めさせるのは難しくとも怒る権利があるだろうと思う。そのへんの線引きは生成AI云々以前に、人間同士でさえも微妙で「ある作品の一部をパクっても、そこに愛があれば「オマージュ」である」とか言われるぐらいで、文学の世界とかでは伝統だけど、パロディーやらオマージュ、本歌取り等はなくてはならんぐらいの表現手法の一つでもある。ワシも今回の題はディック先生の”アンドロ羊”への愛を込めてオマージュさせてもらったつもりである。まさにアンドロ羊はAIが娯楽を求めうるか的な今まさに起こってるような事象を予見する傑作だと思う。ちなみに手塚治虫神の娘さんは「ライオンキングは許せても、田中圭一はゆるせません」と、手塚先生の画風でエログロナンセンスを描きまくった田中先生のマンガの推薦帯に書いておられた。っていうぐらいにあるときは許され、あるときは怒られるのが”パクリ”の実態であり、線引き難しいよって話で、制度的な話については新しく出てきた事象でもあり、学習元を特定できる形で取り込んでるのかとか技術的な難しさもある中でどうするか専門家に考えてもらうしかないけど、表現を楽しむ側の姿勢としては、それが許されるモノかどうか?きちんと考えてイヤなモノは拒否して視聴購読等しない、ってその判断のセンスが求められるのではないだろうか。あからさまのパクリで楽して銭儲けやがる輩の作品など蹴っ飛ばせだけど、健全な笑えるパロディーやら元ネタへの尊敬と愛に満ちたオマージュは制作者と共に楽しむべきだろう。ってのが間違えたくない基本路線だとワシャ思うのじゃ。

 っていうのを考えるきっかけになったのが、最近視聴した「未ル わたしのみらい」というアニメの第3話で、このアニメ、なんか人間やら動物やらに変身できるある種の神のように偏在するAI搭載のロボット”ミル”が、人を助けたりしつつ自身も学習し成長していくという基本一話独立のオムニバス形式の物語なんだけど、3話目で才能ある超絶技巧のピアニストの卵がアルバイトでその技術をAIに学習させるかたちで科学者に協力していたら、本人事故で片手の自由を失うんだけど、本人の技術を学習させていたAIに補助させる特殊な義手が科学者によって開発されて、結果演奏家として成功を収める。だけど、果たしてその表現はそのピアニストのモノなのか否か?ってな脚本で思考実験としてとても良くできた例題であり唸らされた。作中でも開発した科学者への取材で「でも機械が弾いてるんでしょ」とか、まあそういう意見もございますわなってことも言われて、でもその技術はもともと彼女のものを学習させたモノで彼女の技術なんです、っていう整理はあっても口さがない連中はネットとかでお気楽に「こんなの芸術じゃない」とか批判を書き込むのを本人目にしてしまったりしたら、そりゃ苦悩するよねって話。明確な答は無いんだろうけど、それでも今回聞き役に回ったミルは、君の表現は君のモノであり、その感動は自分にも引き継がれていく的な救いのある言葉をピアニストにかけている。パクリの問題を排除してAIの補助を受けてなしえた表現等が芸術たり得るか?たり得るでしょ?ってワシャ思うけど、それも程度問題で例えば脳の補助をするAIじゃなくて、体の機能を補助するパワードスーツとかを使って陸上競技とかで記録を出したときに、それが認められるかとかで考えると、陸上競技ならもちろん認められない。ただ、競技の枠があるからダメなだけで、陸上競技でなければ、例えば作業現場で重い荷物運べたら便利で評価できる。あとは費用対効果とかの話になってくる。でもAIに補助させた、あるいは直接作らせた作品を評価する際に、陸上競技のような明確な線引きができるルールがあるかというと、これまで無かったように思う。もちろん盗作はダメとかごく基本的なルールはあるし、読み物なら純文学かラノベかノンフィクションかとかいうゆるい線引きもある。あるけどいつも書くように、線引きなんか関係なくて面白いモノは面白いしつまらんものはつまらんぐらいしか評価する際の基準ってないように思う。そういうなかで、AIを上手く使えば良いモノができるなら使ってもらえば良いじゃん、と楽しむ側として無責任で正直な気持ちもある。あるけど、AIがまるっと作った極めてデキの良い表現物で感動させられてしまう自分っていう図式を考えると、なんか敗北感がただよったりして複雑な乙女心なのである。芸術ってそんなんで良いんだろうか?まあ、すぐに答えがでるような話ではないし、実際に技術が発達していく過程で紆余曲折あってなるようにしかならんのだろうけど、行き着く先がAI様にご提供いただく芸術作品を楽しむだけで、人類が芸術を生み出さないっていう極端なディストピアではなく、なんか良い塩梅の落としどころに落ち着いて欲しいとうすぼんやりと願うのみである。

 で、このアニメのもう一つ面白いところが企画・制作が「ヤンマー」だということで、最初そんな名前のアニメ制作会社があるんだと思ってたら、もろに”ヤンボーマーボー天気予報”の農機具製作会社ヤンマーが異分野参入でアニメ作ってるって話で、わりと驚いたし面白がっている。地上波テレビ(変換候補筆頭に”痴情派”と出て笑った)がここまで斜陽化するとヤンボーマーボーでスポンサーになってもろくに宣伝にならんとかあるんだろうか?クソみたいな番組しか作られなくなってるなら自社で作ってしまえというのであればその意気や良しである。で、一話目がもろにアニメ化もしている幸村誠先生の傑作マンガ「プラネテス」のユーリのペンダントのエピソードと同じような話で、分かっててやってるのかどうか疑問符が頭の上に浮かんだけど、3話まで見て確信的にオマージュでやってるなと思うに足りる感じである。なんならプラネテスの元ネタの筋書きをAIにぶち込んで脚本書かせてるんじゃないかぐらいの実験的なことをやっててもおかしくないぐらいに思うほど、いまのところデキが良い。ヤンマーのトラクター買う予定はないけどアニメは引き続き楽しみに視聴させてもらうことにする。

 AI様が表現者の仕事を、どの程度になるか分からんけどなんぼかは肩代わりしていくようにはなっていくのかもだけど、今のところまだ人間の作る表現物は面白く楽しめている。まあ、たとえAIに勝てなくなったとしても、表現者は表現することをやめないだろう。と、ゼゼコの一銭も稼げないブログを長らく書き続けているお気楽な表現者としては思うところである。表現することの楽しさをAI様が助けてくれることはあっても肩代わりしてくれることはないだろう。多分きっと、そうあって欲しいと願う。でも、ワシの芸風を学習させた生成AIにこのブログまかせて、マニアックなリールの記事とか書き始めたなら、それはそれで読んでみたいとも思ったり思わなかったりする。

2025年4月19日土曜日

春は新しいコスメで!

  またナマジはなんかとち狂ったことを書き始めたな、春だな~、と思われたかもしれませんが、フライやる人ならピンときたと思うけど、フライロッドのガイドやらグリップ、シートなどのブランクス以外のパーツのことをなぜかフライ業界では”コスメチック”と呼んだりしております。ルアーロッドでも言わなくもないけど横文字好きのフライマンがよく使う表現かと。まあ竿の本体はブランクスで、それ以外はたいした要素じゃなくて”飾り”であり、用が足せる範囲でお好きなようにお化粧して飾ってねということだろうか。ということでフライロッドのガイド換装の顛末記でございます。

 現在主に冬場のカマス釣りで振ってるフライロッドは「ロッキーマウンテンアウトフィッターズ」っていう米国のアウトドアツアー会社の貸し出し用竿っぽいブランドの8番9フィートで中古で安く手に入れて2021年5月から使い始めてはや4年という感じで、さすがに冬の間だけとはいえ年間5~60日は出番があるので、およそ想定していない酷使具合だったようで、針金のガイドが削れて糸溝だらけになってきた。

左が一般的なスネークガイド、右がシングルフット方式
 ルアーしかやらないような人から見ると、ステンレスの針金にクロームメッキかけただけみたいなフライのスネークガイドやらは頼りなく思えるかもだけど、以前にもFuji創業者大村氏の著書から引用させてもらったりしているけど、ハードクロームメッキ仕上げのガイドは実用充分な性能を持ってるとのことで、実際古くからの伝統で今でもフライロッドの世界ではバット部のガイドを除くと硬質クロームメッキのスネークガイドやトップも同様の針金ガイドが多い。重量的にはシングルフットにしてしまえば普通にリングのハマったSiCガイドでも軽くできるけど、フライロッドはそういうものという既成概念が強いせいか、よっぽど走る魚を相手にする場合を除いてフルSiCガイドのロッドとかはお目にかかれない。むしろ針金ガイドをスネークガイドの2カ所で留める方式から、片足にまとめて1カ所で留めるシングルフット方式にしてより軽くっていうのの方が多いぐらいである。我が家でも9番のカベラス「LST」がシングルフット方式になってる。シングル化して軽いかどうかはラッピングに使うスレッドと樹脂が半分になったぐらいで違いが分かるほどの差はないように思う、というかワシャそんな細かいこと気にしてない。

 で、その実用上充分な性能のハズの針金ガイドが削れた。前述の大村氏の著書でも、本来硬質クロームメッキしたガイドは丈夫だけど、品質確保が難しくて経費けちったりするとろくでもないものになってしまう的なことも書かれていて、まあワシの愛竿はいうても安竿で、コスメチックも安くあげているのは致し方ないだろう。イヤなら高級ロッド様を買えという話。ただ、ガイドが徐々に削れてくる不具合は進行が遅く、すぐに不具合が生じ始めるようなものではない。加えて、ガイドの換装はそれほど難しい作業でもないので、削れ始めたのをこの冬の途中で気がついて、カマスシーズン終了したら換装せねばなと、既に交換するガイドは確保してあった。Fuji社製ではないものの、そこそこ名の通った「パシフィックベイ」のなら問題ないでしょう。ということで来期のシーズン間際に作業すると慌ただしくなるので、時間のあるうちに早速という感じで換装とあいなりました。ちなみに今根魚クランクで使用中のアグリースティック「GX2 USCA662MH」の、ステンフレームに直接ハードクロームメッキをかけたような「アグリータフガイド」は、1シーズンなんとか持っていて2期目に突入。意外に頑張ってくれている。まあこれも過去の経験から遅かれ早かれかなと、交換するガイドは確保済みである。

 では、作業に取りかかりましょう。ガイドの交換で唯一失敗する要素があるとしたら、トップガイドの取り外しで、接着剤の種類によっては外せなくてガイドの金属パイプをヤスリとかで切って外す必要も出てくる。ただ、通常は接着にエポキシが使われているので、そこそこの高温でエポキシ樹脂を温めてやると、ズルッと抜けてくれることが多いので、とりあえず補強に外側に巻かれているスレッドを剥がして、沸騰するお湯で煮てみた。ものの本によるとライターとかの直火であぶれって書いてあったりするけど、直火で炙ると、高温すぎるとガイドに突っ込んである穂先の繊維が焼けてぐずぐずになったりする危険性があるので、とりあえず最初は煮ることにしている。これで外れてくれれば楽。ただ、今回外れる気配がなかったので、結局慎重に直火で炙って抜いてなんとかした。

 抜けたら、とりあえずガイドの向きの基準にしたいので新しいトップガイドを早速接着してしまう。トップガイドのパイプの直径は狭くて入らないとどうしようもないので、ちょっと余裕を見たサイズのを用意しておいてスレッドを巻いて隙間を埋めてからエポキシ接着剤で固定する。

 ガイドの向きは、ブランクを巻いて焼くときに巻いた端は重なり厚くなるので、その方向は反発力が強く、いわゆる「スパイン」と呼ばれ、スパインを背中に持ってきてガイドの向きを決めるのが定石。だったんだけど、最近のブランクスは軽さ重視で薄いシートで巻くようになってるのでスパインがハッキリしないとかも聞く。その場合は無視しても良いだろうけど、換装なら元々着いていた方向にガイドを付けておけば安パイかと。昔のスパインがハッキリしたブランクで変な方向にガイド付けると、投げるときとかに竿が気色の悪い挙動をしたものだけど今時は気にしなくて良いのかもしれない。ちなみにグリグリとブランクを曲げつつ平面に押しつけて転がしてやると、明らかに反発力が強い方向があって、それがスパインの方向。

 で、トップがとりあえず付いたら、スネークガイドを全部取っ払って、新しいのを補修糸で巻き留めていく。外すのは、ガイドの上とかの金属部分をちょっと切って、巻かれているスレッドの端をつかまえて引っ張るとクルクルと剥がれてくれる。端をつかまえるのには魚の中骨抜き用のピンセットがちょうど良く便利。

 新品のガイドは足の先をヤスリで削って尖らせておくと、補修糸が滑らかに乗って段差ができにくい。ラッピングスレッドとしては「イカリ印の補修糸」を何度も書いているけどお薦めする。何が良いかというとナイロン「極細」表記にもかかわらず、昔のグデブロッドのラッピングスレッドを知ってる人ならウヘェってなるぐらいに太い。太い分丈夫なのでギューッとしっかり巻き留められるのと、太いので巻く時間が少なくて済むというのがあって、特に後者は手巻きしてるとありがたい利点。欠点は巻きが厚ぼったくなるのでその分の重量増加と見た目がスマートさに欠けることぐらいか。まあ逆に力強い見た目になるので良しと思ってる。

 ガイドを巻き留めていく「ガイドラッピング」の具体的な方法については、過去にサイトの方で紹介しているので、そこから引っ張っておきます。

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  古いガイドが外れたら、新しいガイドを瞬間接着剤かテープでロッドに仮止めして、スレッドで固定します。

 スレッドの巻きはじめはスレッドの端をテープで固定しておくとやりやすいです。

巻きはじめ

 スレッドの巻き終わりの処理は、細くて強いPE等をワッカにしておいて巻き終えるちょっと前の段階でスレッドで巻き込み、そのワッカに巻き終えたスレッドの端を通して、巻いたスレッドの下に通してほどけないようにします。

ワッカを巻き込むワッカに入れる引っ張り出す

 黒一色だと見にくいのでスレッド巻く作業だけ色変えて再度写真に納めました。

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という感じです。

 今回、コーティングに使ったのは、定番の2液反応型のエポキシ系ではなく、ウレタンコート剤。ウレタンも昔から竿補修コーナーには2液性のものが売られていたぐらいで、竿補修には使える素材だけど、今回使ったのはルアーのコーティングなどに使う1液性のウレタンコート剤の東邦産業「ウレタンフィニッシャーEX」で、こいつを長持ちさせる方法が分かったので今後はガイドラッピングにはウレタンコート剤を使う予定。エポキシは意外と消費期限が短く、やるなら竿を何本かまとめて作業したくなるけど、ウレタンコート剤は”使う分だけ小出しにして空気中の水蒸気と反応させないようにして冷凍庫保管”でほぼ消費期限気にしなくて良いぐらい長持ちさせることが可能で、ちょっと使って残りはまた今度、ってのも大丈夫と判明した。そうなると使い勝手が良く、ぶっちゃけ、コーティング剤は固まった後も適度に柔らかく割れにくい樹脂で、補修糸なりラッピングスレッドがほつれないように固めることができれば用は足りるわけで、ガイドを竿に固定しているのはあくまでも補修糸なりスレッドだということが理解できていれば、ガイドラッピングには何が何でもエポキシ樹脂ってこだわらなくても良いんだと思っている。まあ、メーカーとか今時はUV固化レジンだし、釣り場で急ぎ補修とかなら、ナイロンラインでぎっちり固定して瞬間接着剤で固めても釣りはできる。というわけで、コーティングはまあできれば見栄え良さぐらいは気にするけど、ぶっちゃけほつれなきゃそれでいいので、大事なのはガイドを糸で巻き留めるときにしっかりテンションかけて巻いてやることだと思っている。何度か書いたことの繰り返しだけど、そこのところがキモなので意識しておきましょう。

 でもって、その仕上げのコーティング。ロッド回しにセットして、樹脂が偏らないようにユックリグルグルさせながら、割り箸削ったヘラにウレタンコート剤を乗っけるようにしてペタペタと塗っていく。

 1液性ウレタンコート剤と、2液性エポキシコート剤の違いは若干あって、エポキシは実は重ね塗りが苦手で、重ね塗りする前にはサンドペーパーで塗る面をザラつかせておかないと上に乗せたエポキシを弾いてしまったりする。それもあってエポキシの場合はワシャ重ね塗りせず、基本は一発塗りで分厚く盛って仕上げていた。その点1液性ウレタンコート剤は重ね塗りは問題ないんだけど、エポキシに比べると固化時に”痩せる”割合が大きくて、エポキシは2液の科学反応で固まっていくので、盛った厚さに近い感じで固まってくれるけど、ウレタンの場合は空気中の水蒸気と反応して固まる理屈らしいけど、なんぼか有機溶剤が飛んで乾燥してもいるらしく、盛った分よりは薄い皮膜になる。ということで、今回は被膜が一回塗りでは薄い感じだったので二回塗りで仕上げた。まあ一回塗りでもほつれないだろうとは思うけど、なんとなく見栄えも気にしたりしてるのです。固まるのは半日も回しておけばOKで、そのあと吊すなりしてしっかり被膜が固化するまで触らないようにして1週間もおけば万全かと。まあ、ワシャ冬までこの状態で寝かしておくので問題ないだろう。良い感じに仕上がったと思う。

 竿は、ラインやハリに比べれば長持ちするものの、部品取っ替えればずっと使えるリールと違って消耗品の部類だと思っている。使っていれば最終的にはブランクスの繊維が切れてきて、だんだん反発力が無くなっていって最後には普通に使ってて突然折れる。カーボンのテニスラケットとかでもほぼ同じような折れ方をするので、カーボンやグラスのブランクスは基本そういうものなんだろうと思っている。ブランクスが寿命を迎えたらその竿の寿命と諦めざるを得ないけど、意外にガイドが先に折れたり削れたりというのはあって、その場合”コスメチック”を換装するお化粧直しの技術を持っていると、お気に入りの道具を長く使うことができるし、なんなら竿を使いやすいように”魔改造”することも可能なので、身につけておいて損はない技術だとお薦めしておきたい。

 春ですし、ラインシステムも通らないクソみたいな小口径ガイドのついたクソ竿も、お化粧直しでべっぴんさんにしてあげてみるのも一興ではないでしょうか?ぜひ挑戦してみてください。竿一本、ガイド位置やら決めて組み上げるのはそれなりに難しいけど、ガイドの交換ぐらいなら簡単なので、気軽に楽しみましょう。