撮影:Gary Alpert氏 ウィキペディアから |
こんなもん、カブトムシをそこそこの回数飼育した経験がある人間で、今時の生物学的な知識があれば、追加の検証研究とか待たずとも、ある程度の”正解”は分かるはずである。ワシが思う正解をここに書くなら”カブトムシの多くの個体はやっぱりそれでも夜行性である。でも昨今の生物の知識では常識となりつつあるけど、個体ごとの差が生じる程度にカブトムシという種の中にも遺伝的な多様性があり、昼行性の個体か、あるいは状況に応じて昼行性に移行していく個体なのかもだし、それら双方や中間的な者の存在もありえるけど、そういう昼行性を示しうる個体が一定数存在する。っていうところだと思う。
根拠は、まず、本来昼行性なのにオオスズメバチのせいで夜行性を強いられていることの否定材料としては、オオスズメバチなんていう剣呑な生き物は当然同居していない飼育箱の中でも、全ての個体が昼夜関係なくスイカの皮にしゃぶりつくなんてことにはならずに(昔はカブトの餌といえばスイカの皮だった)多くの個体が夜行性で、昼間は飼育箱の底のオガクズとかに潜っている。基本的には夜行性の日周行動をとる性質を持っているとみていいと感覚的に分かる。
ただ、中には昼間っからスイカの皮に夢中な個体も居て、さすがにその個体が夜どう動いているのかまで観察し切れてなかったので「弱っちいから夜餌にありつけなかったのかな?」ぐらいに思っていたけど、一定数、すくなくとも敵が少なければ昼行性に移行できるような行動を取りうる個体が居るということである。
そうなると自然界では、オオスズメバチに限らず鳥とか意外なところで”国蝶”オオムラサキとか、もちろん同族含め他の昼行性の外敵が少ない環境では昼行性のカブトムシ個体は餌場を独占できるので生存・繁殖に有利であり、カブトムシという種全体の中には一定数そういった個体が生じる遺伝的要素が含まれている。で、環境によっては昼行性の個体が多い地域とか逆に夜行性ばかりの地域とかあるのではないだろうか?確か自由研究の方の観察フィールドは庭の木に来るカブトムシを対象にしていたと記憶している。昼間の外敵は少ない環境だろうというのが想像に難くない。
っていうのも仮説でしかなく、いつも矛盾を抱えて反面教師なワシなんだけど、こういう一見理屈が通って分かりやすく思える説のとおりに、観察結果や実験結果が出たときには、逆に慎重になった方が良いと経験則的に思っている。生物に限らないかもだけど、生物の場合特に理屈がサッパリ分からないし、何故そうなるか頭に疑問符が並びまくるような、それでも動かしがたい結果という”事実”が目の前に突きつけられることがままある。
生物の場合、複雑な”生態系”を構成し、それは生物群集はもとより気象海象地形人為的要素まで複雑に絡み合って成立している上に、そういった3次元的な複雑さに加えて、時間経過による影響、そうなるに至った経緯、つまり歴史のようなものも絡んで4次元的にグッチャグチャになっていて始末におえない。なので一見納得もののスッキリした結果に隠れて実は面倒くせぇ複雑でわかりにくい”正解”が隠れているということは多い。なのでスッキリする分かりやすい仮説どおりの都合の良い結果ほど、気を引き締めてそれが全てではけっしてないハズだ、ぐらいの疑いを持って然るべきだと思っている。ごく最近も釣りの場面で「それはないだろ?」って呆然とさせられる事態に心を折られたところである。人間は自分が信じたいことを信じる生き物なので都合良く分かりやすい解釈を求めがちだけど世の中そんなに単純じゃないゼって話。
自分のことを棚あげしておいて書くのも恐縮だけど、釣りの世界では良く分かってない半可通が珍妙な説を信じてたりしがちで「アホとちゃうか?」といつも思ってるので典型例を書いておく。「メインのベイトフィッシュがマイワシなのでマッチザベイトでマイワシカラーのミノーが効果的」とか、心底アホだと思う。いちいちカタカナが多いところからしてアホ確定。だいたい対象魚が特定の餌に学習してて本当にマッチザベイトが必要な状況ではルア-は分が悪くて”ルアーマンがマッチザベイトとか言いだしたら9割方負け戦”って思うぐらいで、ルアーの釣りって基本的に通常対象魚が食ってる餌ではあり得ない派手なアピール力とかで食わせるモンだと思ってる。その中でマッチザベイト的に餌生物にあわせるとしても、模様やらの細かい所まで見てくるような魚には、見た目の”リアルさ”ではルア-では全く似せられていないのでどうしようもなくて、サイズ感だとか動きだとか質感だとか全体的特徴で合わせた方がまだ勝算があるけど、どっちかと言えば水面でごまかしたり光りもので反射食いさせたりというルア-らしい戦略の方がマシなことが多い。どんなに良くできた”リアルミノー”でも冷静に見て本物っぽくはない。ただのオモチャである。魚屋さんに超リアルカラーのミノーが本物と並べてあって、間違ってリアルミノーを今夜のオカズに買ってくヤツがいるか?って考えたら明白で、人間が間違えないぐらいの差があるなら、魚だってシビアなときはその差を見切ってくるってのは当たり前。ちなみに本物の魚を樹脂で固めたようなルア-が過去にはあったし、いまでもあるかもだけど、そいつらが釣れるかといったらルア-の歴史から消えてなくなったし、今存在していてもたいして注目もされていないことからも、いわゆる”リアルタイプ”なルア-はアホな釣り師が食いつくほどには魚は食いつかないんである。こう書くと「オレはいつもマイワシカラーで釣っている、オマエの言うことはデタラメだ!」って思う釣り人は居るだろう。改めて書くけど、マイワシに狂ってるような魚にマッチザベイト的にマイワシカラーのミノーが効くわきゃないとは思ってるけど、マイワシカラー自体が釣れないって思ってはいない。生物にありがちな黒点が並ぶという模様は対象魚に何らかの視覚的興味を抱かせていてもおかしくなく、釣れるカラーではあるんだろう。そういう”なんか生き物っぽい”という要素を強調、あるいは抽出して魚を誘うのがルア-の本質的な部分の一要素だと思うので、マイワシカラーは定番色なだけあって良く釣れるカラーなんだと思う。ただ、黒点が並ぶカラーならマイワシカラーでもニジマスカラーでもそんなに差がないんじゃないかと思ってる。ニジマスカラーの方が黒点多いゾ。
マイワシ食ってるからマイワシカラーで、なんていう安直で都合の良い考え方をしてると思われると恥ずかしいので、若い頃は好きなカラーの一つだったけど近年海ではマイワシカラーは極力避けている。逆に、適度に派手なオイカワカラーとか前述のニジマスカラーあたりは天邪鬼な釣り人としては海で投げたくなるので”リアルカラー”自体あまり使わない方だけどちょくちょく使ってる。普通に釣れます。
実際の釣りの現場では、なんでそうなるの?って全然分からんことが多々生じるので、とりあえず理屈やら説明やらは横にどけておいて、事実だけ知ってれば当座はどうにかなる。変に短絡的にこじつけた理屈を考えてしまうと”正答”にたどりつけないのでそこは気をつける。気をつけつつも横にどけたけど頭の隅には常にその疑問は持ち続けておくと、膨大な情報の積み上げの結果やら、思わぬ方向からのふとした気付きやらで、ある日突然正答にたどりつけることもあるので、焦って”答”を求めずに、また新しい知見でそれまでの正答が覆ったらそれも受け入れる姿勢を持って、答のないような問いを頭の中に響かせておくというのが必要かなと思ったり思わなかったりしてます。