2023年1月14日土曜日

ついでにもひとつキャデラック

 前回紹介したスーパー7の部品取り用としてのキャデラックⅣボロ個体は、結果からも明らかなように、購入時点ですでにある程度”ハズレ”で、ゴミを金掛けて米国から個人輸入するということになることが、予想というか予定されていたところであり、それだけだと悲しすぎるなと、お楽しみ用にもう一台ついでに(何が”ついで”なのか意味不明な供述をしており)とこれまたキャデラックの”Ⅲ”を確保していた。うんうん、しかたないしかたない。来た時点でグリス古くなって回転重く小傷とかはある状態だけど、機関はとくに異常ないようで分解清掃、グリスアップ整備で冒頭写真のようにそこそこ良さげな状態に復活。まあ一安心である。4,975円(送料別)もはりこんで、もともとのお買いモンであるⅣより金かかってるという本末転倒状態だけどまあ気にしないでおこう。

 このリール、形的には丸ミッチェルに似てて、ボディーは丸いベベルギアの形を反映しつつ、主軸が下がるお尻の部分が突き出してるのは基本一緒。ただだいぶ違うのが大きさで、単体の冒頭写真だと渓流とかに使えそうな大きさに見えなくもないけど、実際には重さ約570グラムと海用大型リールのサイズ感で4桁PENNだと金属ボディーの6500ssよりちょい小さいぐらいだろうか。デカリールであるⅣと比較しても右の写真のようにそこそこ勝負になる大きさ。

 でもって、使いもしないだろうから既に飽和状態で我が家の蔵に転がってるデカ大森を、さらにもう一個追加しようとなぜ思ったのかというと、これ1952年発売”ダイヤモンドリール第1号機”の候補の一つだとワシにらんでいるからである。大森沼の住人としてはちょっと興味あるよねって話で、ただ、正確な情報がなくて、このタイプのスピニングだったのは確かだけど、そもそも販売時の名前もブランドも不明、大きさも分からんということで、箱絵っぽいイラストからその正体を推測してるに過ぎないんだけど、候補として絞ったのは今回入手したコンパック「キャデラックⅢ」とオリムピック「ハリケーンNo.45」そして同「サーフライダー」でとりあえずコンパックブランドのに手を出してみたというわけ。他にもオリムピック「ハリケーンサターンNo.49」はハンドルちょい違うだけ、同「マーキュリー」もちょい脚が違うぐらいで似てる、と似たようなのは結構あってこれらのどれかがダイヤモンドリール第1号機なのか?それともダイヤモンドリールブランドで出ている機種が別にあり、これらの中にその同型機が含まれるとかなのか?現時点ではなかなか知りようがないので、引き続き情報気にかけつつ、とりあえず今回のキャデラックⅢは候補の一つという整理にしておくことにした。
 話脱線するけど、マーキュリーと言えば洋楽好きなら”フレディー・マーキュリー”だろうし、アニオタならちょっと前までなら”セーラーマーキュリー”だったんだろうけど、今なら断然”スレッダ・マーキュリー”ちゃんだろう。「ガンダム水星の魔女」の第12話ではドン引きさせられた。

 閑話休題、でもって分解していけばある程度癖とかで大森っぽいか?そうでないか?分かることもあるだろうし、いじったことがない機種なので面白そうなのもあり、はりきって分解清掃注油の作業に突入していく。

 まずは、スプール周り。
 70年前のリールだとすると、ドラグができすぎなぐらいに普通に今時のと同じようなのが入ってる。スプール裏のドラグの音だしは逆回転しない方式で凝ってるし、ドラグパッドとワッシャーを押さえる”蓋”もリールのオマケのドライバーの背中をマイナスドライバーとして使うようなーネジ切ってあってしっかり締めて留める方式。ドラグのバネはドラグノブの中に内蔵、そして、ドラグパッドは3階建て方式。
 ドラグの構造なんて昔っから変わってないって話。
 さすがに皮のドラグパッドは干からびて固くなってるけど、当時の状態のままをなるべく維持しておきたかったので、洗って古い油と汚れを軽く落としてグリス塗るだけにしておいたけど、カーボンのドラグパッドで似たような寸法のを入手して大きさ調整して換装してやれば、今時のリールと遜色ないドラグ性能になるはずである。古い日本製のリールだとドラグが分かってない設計のもたまにあるけど、コイツは既にドラグが分かってるリールである。そのへんちょっと大森臭がするところ。

 次に本体内ギア周り。
 パカッと本体蓋をあけると、丸いボディーに丸いベベルギアが鎮座してるのは丸ミッチェルでも見慣れた構造。
 スプール上下(オシュレーション)機構はハンドル軸のギアの上に突き出したピンで主軸に固定したオシュレーションカムを上下挿せる方式。なのでハンドル一回転一往復。
 ハンドル軸のギア上のピンは、”カラー”をネジで留めている方式で、カラーが回転して摩擦軽減してるのは後年の大森の左右両用じゃないリールでお馴染みの方法と似ている。
 ストッパーはハンドル軸の裏に歯が切ってある方式。
 ギアの素材はローター軸のは真鍮。ハンドル軸のはおそらく亜鉛だと思う。ハンドル軸のギアには当然のように焼き入れした綱だと思うけど鉄系の芯が鋳込んである。そしてその芯を受ける本体のハンドル支持部には真鍮のブッシュが入っている(写真でちょっと見えているのはガタ調整の銅製シム)。このへんのギア周りのしっかりした作りは大森っぽいといえばいえる。
 なにげに本体に本体蓋を填める端は段差になっててカパッと填まって、グリスシーリングしておけば防水性良さそう。

 でもってローター軸のギアを抜きたいんだけど、ちょっと抜きにくい。ローターを留めているナットを外しても抜けず、明らかにローターを回してローター軸のギアの上部から抜かなきゃなんだけど、ギアを固定しないとローターが回せず、ギア固定用の穴とか切り欠きとかがないので、ハンドル軸のギアを押しつけて回転しないようにしてギアをガリッと削ったりしないように慎重にローターを回して緩めると無事外すことができた。
 ハイ、全国のBBB団(ボールベアリングをボロクソに貶す者の団)の皆様、お待たせしました。このリールにはボールベアリングは入ってません。リング状の真鍮製の輪っかが”ブロンズベアリング”として入ってるだけです。実に良い感じです。
 ローター軸のギアは本体内に落とすように外して、上部のカラーを上から抜くような構造になっております。

 そして、独特なのがベールリターンの構造。
 写真上2枚がベールを起こして投げられるようになった状態。
 左のようにローター裏に本体から突き出す棒を”とおせんぼ”するように斜めに板が突き出す形の部品が配置され、これがローターの外までつながる棒につながっていて、棒の先が右写真の矢印の位置でベールアームの穴状の窪みに刺さって反転を止めている。
 ハンドル回してローターが回って”とおせんぼ”してた斜め板が本体から突き出した棒に蹴飛ばされると、下写真左のように、ローターの外でベールアームの窪みに刺さってた棒を内側に引っ張る。そうすると当然刺さってた棒は外れて、ベールアームが返る。写真下右は返った状態で矢印は棒が刺さってた窪み。
 やや機構が複雑だけど、確実に作動する仕組みになってる気がして面白い。

 あと、ラインローラーは固定式で、素材が濃い灰色っぽい金属でタングステンっぽい気がする。固定式なんだけど何故か芯に真鍮のスリーブが入ってて、真鍮のスリーブを延長するようなちょうど良いワッシャー的な部品を追加してやれば、隙間に落ちない太いナイロンライン使用が前提だけど、ラインローラー回転式にも改造可能なような気がする。ベールアーム側にはラインローラーが填まる窪みがあるのでライン落ちないだろうから、逆のベールワイヤーの終わり側に樹脂製のカラーでも成型して追加して隙間の上を覆ってやればある程度細糸でも落ちないようにできるかもしれん。とはいえとりあえずは現状維持で。

 パーツ数も少なく、整備性は良好。ベベルギアで1:3.5ぐらいの低速機なので巻きは重くない。ギアゴロ感もたいしたことなく、ハンドル回してのベールの返りは軽くて気持ち良い。このサイズのリールでラインローラー固定式は、さすがに対象となってくる魚が青物とかだろうから厳しいけど、回転式に改造して、ドラグパッドをカーボンシート式のに換装したら、巻き取りスピードの遅さはスプール径のデカさである程度カバーできるとして、ついでに巻きが軽いので一所懸命巻いたら何とかなりそうで、単純で丈夫に作ってあるしそこそこ使えそうに思う。
 っていうぐらい、基本設計的には良くできてて、1952年製にしては整いすぎてるような気がする。足の裏には「compac japan」表記があるので日本製なのは間違いなく、だとすると大森っぽくはあるんだけど、コイツは”ダイヤモンドリール第1号機”ではないのだろうか?もっと後の時代のとかの可能性もあるのか?
 さすがに70年前の機種でイラストでしか見たことないリールがなんだったかを断定するのは難しいのが正直なところ。なので、今回はその候補の一台ってことでお茶を濁しておきたい。

 実際に第一号機からこの完成度で、大森製作所が”栴檀は双葉より香し”だという結論になったらそれはそれでさすがというところだし面白いなと思ってるので、引き続き情報拾えないか、気が向いたらネットで沼の底のほうに潜ってってみよう。

5 件のコメント:

  1. このキャデラックの国内仕様はオリムピック#83だと思います

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  2. 匿名さん こんばんは
     オリムピックNo.83はボディー同型っぽいですがベールがハーフベールで異なっています。
     このへん似たような機種まだあると思います。

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    1.  オリムピックの83にはフルベールのモノもあったようです。失礼しました。ロゴがオリムピックになってるのとハンドルノブの色が違うぐらいで同型機のようです。匿名さんの情報で正解のようですね。

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  3. ナマジさん、今年もよろしくお願いします。

     なんと、キャデラック系統補完計画でしょうか。自分でリスク負わずして詳細を見られるとは涙が出ます。
    イラスト1点と伏せられた商品名しか手がかりがありませんが、ナマジさんは慎重ですが私はこの機種に特定していいような気がします。

     私は似た機種のHURRICANE MODEL 45 SURFKING に同じく使いもしないのに手を出しましたが、フットにolympicと入っているもののドラグなんかの考え方は大森臭があり、雰囲気はバンタムなどに通じる感じがあると思います。
    アトラスⅡの時期まで日本仕様もコンパック銘で流通させてたので「ダイヤモンドリール第一号」とはいってもダイヤモンド銘の個体があるとは考えづらい気がします。

     このところヘビー級高脂質のコレクションで見てるだけで腹が出そうです。
     この調子でセンタウレ似のハーフベールまでオーバーランしての比較検証期待してます。

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    1. こんばんは
       キャデラック方面はそろそろ熱が冷めてきて、また変な方向にポンと飛びます。
       キャデラックⅢとハリケーンNo.45はビンゴかなと私も思ってますが、真相は謎のままの方が楽しいかなとも思って確定的な書き方は避けました。

       スーパー7がヤ○オクに出ててドキッとしましたが、れいによって「スプール上下しません」というジャンク個体でやはりあの亜鉛鋳造のオシュレーション関係部品には問題があったのかもしれません。

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