我が家には地上波テレビジョンを視聴するためのアンテナがないのは以前にも書いたが今でもそれは変わっていない。というか最近ますます地上波民放局の存在意義がなくなって斜陽化して”終わってる”と感じる。馬鹿相手にテキトーな視聴者舐めきったような程度の低い番組垂れ流し、声のデカい馬鹿のいちゃもんと闘う気概もなく牙を抜かれ、自分にとって見る価値ある番組っていえば深夜のアニメと格闘技の生中継ぐらいだと思ってた。アニメはネット配信のいわゆる”サブスク”でどうとでもなるけど、ボクシングのタイトルマッチとかは生で観られないと面白さが半減するのでそれだけちょっと残念に思ってた。
ところがどうだ、自分の人生で目にすることができるとは思えなかった日本人のミドル級という重い階級の王者である村田諒太選手が同階級の伝説的王者であるゲンナジー・ゴロフキンと統一戦を、もいっちょ、ワシ想像もできてなかった日本人初のパウンドフォーパウンド(権威あるボクシング雑誌選出による全階級通して一番優れた選手)にその一戦に勝った結果なった井上尚也選手がノニト・ドネアと闘ったこれまた統一戦という、歴史的な2戦、どちらもサブスクというよりは巨大通販サイト”アマゾン”のオマケ的な「アマゾンプライムビデオ」で独占ライブ配信で、テレビ局放映権料高くてもう買えねえんでやンの。とどめは那須川天心VS武尊という我が国格闘技ファンの夢の対決「THE MATCH2022」という東京ドーム超満員5万5千人超のチケットが分で売り切れたという巨大興行をフジテレビ結局放映できずイモひきやがって「アベマTV」独占生中継という有様。ワシも安くはないペイパービューの視聴権買ってパソコンに齧り付いて観てたけど、メインカード以外も夢の対決メジロ押しで、まったくもって金払った甲斐があった。パトロンの一人として大満足じゃ。もうテレビなんかに面白い番組流す余力も残ってないし、見てるの暇つぶしにタダだからとダラダラ流してる層とかパソコン持ってないジーサンバーサンだけだろうと思うと、なぜだかしらんけど胸がすく。視聴者舐めきった姿勢が招いたこの有様だザマミロ。まだ同じ”終わった”マスメディアでも新聞の方が役に立つ。何しろ新聞購読すると新聞紙が手に入ってお掃除にネットでモノ売るときの緩衝材に焚き付けにと様々に使えるときたもんだ。
という感じで、テレビ放送なんてもう役目は終わってて無くて良いなと改めて思ってるんだけど、一方で金払って視聴するネット配信の番組のデキの良さには充分満足している。現在契約して視聴しているサブスクは「アベマTV」「NHKオンデマンド」「ネットフリックス」「アマゾンプライム」で、「アベマTV」はアニメと格闘技が充実していて一番よく利用してるんだけど、他の3つはドキュメンタリーがなかなかに面白くて余は満足じゃと感じている。「NHKオンデマンド」では人間に関する医学ネタやら文化ネタやらを最先端の研究の紹介とか交えつつスタジオで専門家にも来てもらってアレコレ雑談するという「ヒューマニエンス」シリーズや博物館、美術館などの裏側を紹介する「ザ・バックヤード」シリーズなんてのが定番の「NHKスペシャル」「ダーウィンが来た!」と共に面白い。ネットフリックスでは海賊がアリューシャン列島の島に隠した金貨を発掘する「アダック」、ハンターが米国のあちこちで色んな獲物を狩って料理して楽しむ「ミートイーター猟理の達人」なんてのが最近観たのでは面白かった。「アマゾンプライム」ではオリジナルモノは少ないけどBBC系のドキュメンタリーは充実していて、中でも「ワイルド・アラビア~神秘の王国~」という3回シリーズのが、ちょっと出色の面白さだったので紹介してみたい。ということで今回サイトの方でやってる「アニメ・映画など日記」の出張版でいってみます。思いっきりネタバレ含みますので、視聴予定の方は以下読むなら自己責任でお願いします。
”アラビア”っていうと地域としてはほぼアラビア半島と同義らしく、国としてはど真ん中大半を占めるサウジアラビア、南東のカタール、アラブ首長国連邦とオマーン、南西イエメンで構成されてて、砂漠の産油国というのが一般的なイメージだろうか。現代では”イスラム社会”であるというのも重要な要素か?
ただ、この半島の生き物や人々の文化というモノについて、我々ははたしてどれだけ知っているだろうか?人々の文化としてはドバイのオイルマネーによる高層建築群とか先住民族である砂漠の民ベドウィンが駱駝と暮らしてるのとかぐらい知ってればマシな方だろうし、生物にいたっては、生き物詳しいと自負しているワシでさえラクダと”デスストーカー”ことオブトサソリぐらいしかすぐには思いつかない。
それもそのはずで、我々日本人は曲がりなりにも”西側”陣営に属していて、その西側の欧州諸国と中東のイスラム圏の国々は、少なくとも十字軍というイスラムの人々からしたら何度もしつこくやってくる侵略者、略奪者の時代から、石油産出が始まってからは”上客”の部類ではあったとしても、対立的な関係にあったハズで、なかなかその実態というのは知り得なかったというのがあったようだ。
今回、取材にあたったBBCも「初めてアラビアの空からの撮影の許可を得て、(西側の)誰もまだ見たことがなかったアラビアを紹介する」という感じで気合いが入っていて、確かに砂漠の景色のドローン撮影の雄大さだけでもかなりの眼福でグイグイと魅せてくれる。
自然の映像美はBBCの売りだと思うけど、今回も砂をしっかりグリップするかんじきの役目を果たす砂漠のトビネズミの足の毛とか、砂嵐から目を守るラクダの長くてちょっと色気のあるまつげとか、細かい所まで鮮明に美しく映し出されていて、そういう映像美だけでウットリと眺めていられる。
まあ砂漠の生き物代表と言えばラクダなわけで、コブに脂肪を蓄え大量の水も飲み溜め可能で餌食わずに長期の旅が可能なラクダについては、さすがにワシでもある程度知っている。砂漠の民のベドウィン族が共に生き、祭りで馬場馬術のような高度な調教ぶりを競う様とかにも感動するが、まあある程度予備知識はある。でも、ドバイのような都会じゃ、駱駝レースが多額の賞金の掛かる大イベントで、走る際の軽量化のために騎手は乗らず、音声やむち打ちでレーズ中伴走する車の中から指示を出せる機械が騎乗しているというハイテク化に彼の地の博打打ち達の熱の入れようが偲ばれるというものであり、予想外の方向に突き進んでて面白かった。なんでもこの50年競走馬の速度はほぼ横ばいなのに対して、ラクダの早さは30%も上昇したとか。伝統的にアラブのお金持ちは鷹狩りが好きとは聞いていたけど、鷹狩り(ハヤブサだったけど)のトレーニング用の獲物としてもドローンに疑似餌を引っ張らせてたりして、石油マネーで潤っている石油王達の生き物との付き合い方がずいぶん”リモート化”されてて面白い。逆に砂漠の民がオアシスの自分の畑に水を引く時間を、日時計で影が当たる位置で時間を決めていたりと昔ながらの伝統が息づいていてその辺の対比も面白かった。
でも、そんな砂漠の人々と共に生きるラクダが、砂漠最強の生き物じゃあないという。じゃあそれは何かというと「オリックス」が最強だという。彼らはその美しい姿とユニコーン伝説の元ネタの一つにもなっているという長い角から乱獲され、絶滅寸前まで行ったけど、保護が効をそうして個体数は復活してきているとのこと、砂漠の強い日差しから体温上昇を防ぐ純白の毛皮を身にまとい、顔にはメジャーリーグの野球選手がデーゲームの時に目の下を黒く塗っている様を連想させる黒い隈取りがあって、長い2本の角の迫力もあって実に美しい獣である。これが、餌や水の少ない砂漠で、雨の臭いなんかを敏感に感じながら餌を求めて、超長距離を移動していくことによって砂漠で生き延びているという”砂漠最強”の動物なんだそうである。ラクダは確かに砂漠を渡れるがそれは人との共生により人が道を示す必要があるけど、オリックスは自らの能力で砂漠を行き来して生きていけるんだとか。正直、野球のチーム持ってるカード会社?のトレードマークでしか知らなかったので、その美しさも砂漠への適応具合もまったく初めて知ったしだいである。
他にも砂漠に住む独特の生物の紹介がありどれも面白かったけど、インド洋の一部であるアラビア海からの湿った空気で、比較的湿潤な気候を持ち、ヒョウまで居る多種多様な生き物の宝庫となっている山岳地帯「ドファール」の生き物たちも興味深かった。特に断崖に棲む猛禽コシジロイヌワシが、イワダヌキことケープハイラックスを狩る技が、見たことも聞いたこともないような方法でお見それした。雄雌のつがいで狩りを仕掛けるんだけど、雄が太陽に向かって高度を上げ、視認しにくい太陽の方角から急降下で仕掛ける。これ自体は他の猛禽とかでも見られるはずで、むしろ戦闘機の戦闘機動として太陽背負って急降下ってのは定番かと、アニメで有名なのは「風の谷のナウシカ」のペジテの王子アステルのトルメキア軍への奇襲突撃シーンとか。でも、ケープハイラックスも負けていない。遠くはゾウの親戚というアフリカ獣上目の牙の生えた狸大のネズミっぽいパッとしない見た目に反してやりおる。その目の網膜には青い色素があってサングラスの役目を果たし、太陽背負って急降下してくる猛禽の姿も捉えることができる。それ故に雄の急降下に気をとられているケープハイラックスを雌の方が不意をついて狩ってしまうのである。これには撮影陣もすっかり騙されたようで、雌が狩った瞬間が撮影できていない。気がついたら雌がハイラックス掴んでドヤ顔で悠々と飛んでいるのである。猛禽ではオーストラリアで野火を延焼させて逃げ出てきた動物を狩る種が何種か報告されていてビックリだけど、アラビアにもまた驚くに値するやつがいるのである。これがまた見た目も実に美しくカッコイイ。カラスと違い光沢をもたないマットな黒の羽を基調に腰のあたりに白い模様が入る。こんなまだ見ぬ猛禽もいたんだと素直に感動した。自分が無知だと認識させられるのは悔しくもあるけど、まだこういう知ることの楽しみが待っているのなら無知もまた楽しからん。
その他にも、寒流がぶち当たるので魚が豊富で季節的な長距離移動をしないザトウクジラとか、海上の石油採掘リグに蝟集する様々な魚たちとか海も魅力的で、その海から立ち上る霧にけぶる崖の道を、アラビアヒョウが歩いて行く姿がこれまた絵になる格好良さでシビれる映像美でありました。
なんというか想像もしてなかった世界がそこにはあって、世界はまだ知らないことに満ちてるんだなと、深い感動を覚えたところ。昨年のNHKのシロナガスクジラVSシャチのド迫力もスゴかったけど、さすがBBC負けてない感じで、迫力はシロナガスに軍配上げるとしても、未知の驚きや映像美の質の高さといった総合点で勝るとも劣らぬものを見せてくれた。
今後ともたいした額でもないけど、パトロンの一人としてサブスク契約続行して新しい作品を楽しみに待ちたい。
金払う、その価値のある作品を見ることができる、素晴らしいことだ。
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