2022年7月16日土曜日

ネコはどこから来てどこに行くのか、PCチェアディテクティブ猫パンチ編

 

 ウチの猫「コバン」は母ネコ「ウニャ子」が住み家にしていた裏の家の崩れた離れから、我が家に来て(というか拉致って)、コレからどこに行くのかワシと共に行くんだろうけどまだよく分からない。その後はペットたちは虹の橋を渡ってどっか安らかな安息の地にて眠るとか聞く。

 という、ごく個別具体的なネコのどこから来てどこへ行くのかではなく、”イエネコ”という種が人との共生の歴史を経て、どこから来てどこに到着しているのか、といういイエネコの歴史は?というあたり、特にどこから来てってところで腑に落ちたりしたことが、猫と暮らしてみてあったので、日々の暮らしと共に紹介してみたい。

 最近のコバンさんのご様子は、暑い昼間は寝る。夕マズメ朝マズメが活性高い。という感じで、さすがに朝マズメ4時とかの高活性にお付き合いするのはしんどいので、カリカリと共に一階に放流して広い部屋の中を走り回ったりして遊んでおられる様子を耳にしつつ下僕は2度寝。


 昼は一緒にワシもお昼寝なんだけど、一緒の布団で寝たいと思うものの、夏の昼のお気に入りの寝床はパソコン箱のうえのダンボールの”巣”で、よほど機嫌が良くないと布団では寝てくれない。むしろパソコンいじってるときに横でコテッと寝てこちらを見つめて”撫でろ”と催促してくるのでネッチョリと撫で回して差し上げる。

 夕方は、釣りから帰って来てシャワーで汗を流して一階に迎えに行くと、せっかく付けた臭いが消えているので、一所懸命自分の臭いを付けようとしているのか、頭をスリスリと足にこすりつけてくるのでとても愛らしい。顔中心にワシャワシャ撫で回してから2階の居室にて餌を与えて、活性が高くなったところで、ペットボトルの蓋やら丸めた紙の棒やらで遊んでいただく。最近、窓にヤモリ2匹が張り付くようになって、ヤモリを襲うのはお気に入りの日課で、まあガラス窓の向こう側なので、ヤモリもなれてきてすぐには逃げなくなってきてたりするけど、ひとしきり飽きるまで暴れてくれるので延々ペットボトルの蓋投げなくて良くて助かる。

 ネコって、小動物とかを狩ると、さんざんなぶり回して遊んで動かなくなってから食べるという行動をよくしている。猫ッ飼いの皆様にはお馴染みの行動かと思う。

 これ、多分定説では、餌を自分で獲る必要ない飼い猫では狩猟本能を満たすための遊びのようになっている、とか、仔猫が狩りの練習をしている行動の延長戦とか言われていると思うんだけど、我が家のコバンさんの場合、狩猟本能を満たすだけでなく、そのあとお食べあそばすので、見てて「食べるんだったらサッサと食えばイイのに」と食べ物で遊ぶことを良くないことと躾られてきた昭和の人間としては思うし、仔猫が狩りの練習をしているっていうのにしては、コバンさん、ダイエットしても6キロ半からある大ネコで仔猫では既にないので違和感がある。

 食べさせようと掴まえてきた、蛾だのバッタだのを遊び倒してから食べるのはまあいいんだけど、我が家の対ゴキブリ戦線で活躍が期待されるアシダカグモ軍曹(候補)が気がつくとベシベシと猫パンチをくらってまさに”虫の息”になってるのは、ちょっと困りもので、コバンさんには申し訳ないけど取りあげて復活しないか様子見てみるんだけど、結局死んでしまってコバンにお返しする事になりがち。さすがにトゲトゲした脚は食いにくいのか残してるけど、本体は最終的にはペロッといただいている。

 なんでこんな一見”残酷”に見える食べ方するんだろうなと、思っていたんだけど、先日、ちょっと肝を冷やす場面に遭遇して、ある程度それっぽい仮説がパソコン椅子探偵の頭に閃いた。謎はひょっとしたら解けた!

 下の階のたたきのスペースは、コバンの運動場的な放流場所となっていると共に、雨の多いこの時期洗濯物干し場にもなってるんだけど、洗濯物を取り込みに1階の放流場に入って行ったら、最初足下にじゃれついてたコバンが洗濯仕事し始めたら、「下僕め相手してくれないんだな」と悟ったのか、部屋の奥の方に行ったと思ったら、なんか激しく猫パンチを繰り出している。また軍曹候補が餌食になろうとしているのかなと、ふと見て背筋が凍った。ムカデに攻撃しかけている。しかもトビズムカデとかいう頭の赤い大型種で10センチ弱はある。噛まれたらムカデ毒耐性自信のあるワシでもちょっとダメージくらいそうな大きさ。コバンなんてイエネコとしては大きいとはいえ6.5キロとかで毒量によっては致命傷くらいかねない。慌てて引き離したんだけど、コバンの指先やら鼻先やら確認しても噛まれて腫れているような様子は認められず、これから腫れて来るという可能性はあるけど(大丈夫だった)、とりあえず痛がってもいないのでそれもあまりなさげで胸をなでおろす。コバンとしてはせっかくいたぶってた獲物から引きはがされて「解せぬ!」と非常に不満そうな顔をしていたけど、こんな剣呑な生き物に猫様を近づけるわけにはいかないので、ネコトイレ掃除用のスコップでムカデ拾って外に放流した。刺されてたりしてたら報復措置で、ワシがキンタマ噛まれたときのようにブチッと頭潰してしまうところだけど、さすがに今回は迷い込んだらコバンに一方的に攻撃されてた状況なので気の毒でもあり、我が家に入ってきて噛まない限りにおいては、ゴキブリやらナメクジやら他の害虫を食べてくれるハズなので、逃がしておいた。

 しかし、逃がす時点でかなりダメージ食らってて足取りがおぼつかない。あの脚の数なのでなんとかスコップの上を這ってたけど一部機能してない脚もあって、全体的にヨタってた。これしつこく猫パンチで相手の噛みつき攻撃の反撃受けずに完封勝利を収めたら、バリバリ食ってしまえるんだろうな。という感じで、イエネコやるなと思ったときに、ハタと合点がいった。

 イエネコのルーツは”リビアヤマネコ”だといわれている。うちのコバンさんのだらけた姿からはそんな野生の格好いいご先祖さんの姿は想像しにくいけど、北アフリカから中近東に棲む猫科獣で、実際にはいろんな環境に適応して林に棲むこともあるようだけど、一般的には乾燥した砂漠や草原のような環境に適応したヤマネコとして知られている。餌はさすがイエネコのご先祖、ネズミなど齧歯類が筆頭に上がるけど、昆虫から鳥から魚から小動物をなんでも食べるこれまた適応力のある獣のようである。イエネコ同様の大きさで仕留めることが可能で食えるエモノはなんでも食う食性なんだと思う。実際にイエネコも人間由来の餌の他に、意外なぐらい昆虫もよく食べる。自販機の前にたむろしている仔猫が居るので何してるんだろうと思ってたら、飛んできた蛾をバシッと狩ってバリバリ食ってたのを見たことがある。という虫系もいける食性で、リビアネコ棲んでいるのがアフリカや中近東の乾燥した環境が多いとなると、とうぜん先週紹介した「ワイルド・アラビア」でも出てきてた、オブトサソリ(悪名高き”デスストーカー”)なんていう剣呑な毒虫も食うだろう。その時に、さんざん猫パンチでいたぶり倒して、動かなくなってから食うというのは実に理にかなっている。毒虫が一種類なら例えばサソリなら尻尾を先に潰してから食うとかもっと効率的な仕留めかたはあるんだろう。でも砂漠の毒虫には尻尾で刺すサソリも居れば、毒蜘蛛やヒヨケムシのような牙で噛む系もいる。そういう攻撃方法が違う毒虫にたいしても、とりあえず動かなくなるまで一方的に叩いておいて、攻撃する能力を奪ってから食ってしまうのであれば危険性が少なく応用が効く。日本のムカデにもおそらく効いて、あのまま放置してても大丈夫でムカデもバリバリ食えたのかもしれない。

 しかも、その攻撃方法は”仔猫の狩りの練習”の行動をそのまま持っていればいいわけで、特別な技術を大人になって身につけなければならないというわけではない。

 「イエネコが、獲物を動かなくなるまでいたぶってから食べるのは毒虫に反撃をくらわないため」「その攻撃方法は、仔猫の狩りの練習行動に由来する」というのが、今回のパソコン椅子探偵の推理。

 どうでっしゃろ?なんとなくホントっぽくないでしょうか?どなたか科学的に裏付けとって論文でも書いてくれないかしら。”いたぶる”攻撃方法が毒虫に有効なのは、イエネコに毒虫与えてみて、毒虫が動かなくなってネコがさあ食おう、としたときに、かわいそうだけど取りあげて(刺されてもかわいそうだしね)、その状態の毒虫が果たして刺したり噛んだりする攻撃能力を残しているか調べればある程度分かるか?多くの猫科獣で比較して、餌として毒虫を食べている種に”いたぶる”攻撃方法が顕著ならこれも裏付けにはなるか?なんとなくそんな気はするよね。ライオンとか虎とかの大型猫科の成獣が獲物を猫パンチでいたぶってる映像とかあんまみないよね?基本前脚の爪でひきずり倒したら首根っこに噛みついて全力で仕留めにかかってる気がする。


 という感じで、ルーツをたどればなんとアフリカ北部や中近東由来という、今でも色濃くその野生の生態を残しているイエネコ。一緒に暮らしていると動物モノのドキュメンタリーを観るのにも似た驚きと発見にあふれていて、そのうえで可愛いという素晴らしい生き物である。コバンかわいいよ。

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