2021年6月26日土曜日

マイクロセブンとセドリ業

 病気って怖いよね。なりたくなくてもなるときゃなるし、自分の思うように制御できるわけもないし、ダメなときは何やっても薬石効なしでエラい目にあったりするし。

 コロナ禍もちょっと落ち着いてきて、近所漁港も”解禁”して豆アジ釣り放題で”スピニング熱”もさすがに寛解してくれると思うんだけど、実は前回PENN712ネタを書いた後に症状悪化して、いろいろ手を出そうとして競り負けつつも結局2台も新たにスピニングを買ってしまっている。竿の方はボチボチと売りに出してるのもあって後一本売れば我が家の制限数の110本に収まるんだけど、リールの方は2台売る間に3台買ってしまってて既に制限数の90台を大きく越えて100の大台目前となっている。アタイ病気が憎いッ!

 今回の症状のヤバかった点は、ボロいリールを買って整備なり修理なりしてから転売して儲けてやろうっていう山っ気をまた出してしまい、ジャンクリール”人山いくら”のオークションに大森とかPENNとか得意な分野のリールが含まれているのを競り落とそうとしてたところである。まとめて10数台とか今考えると整備するにもえらい手間で競り負けてちょっとホッとしている。概ね買い取り業者とか中古何でも屋とかが倉庫整理の出物とか、売れそうにないボロリールをまとめて売り飛ばそうとしているようなゴミスピに意外なぐらいに値段が付くもので、こんなもん10台あっても5千円もありゃ余裕だろうと5200円とかで入札しておくと、その程度ではまず勝てなくて時に1万円を超えてくるので驚愕した。どうも、まとめて買ったのをバラで値段付けてネットオークションやネットフリーマーケットに出しているようで、オークションで競り負けたときに欲しいと目を付けていた大森スピニングとかがすぐにネットフリーマーケットで売りに出されてたりして、中古単体の相場を調べておいて中古業者から買った品を転売して儲けを出す”セドリ”という商売で小遣い稼ぎをしているようだった。ワシも考えるようなことは既に皆さん実践済みのようで、今更新規参入しようとしてもおいそれとは行かないヌルくない世界のようである。

 見ていると右から左に流しているだけのちょっとこすっからい感じの人から、綺麗に修繕整備して、初心者でも使いやすいようにラインも巻いて買いやすい値段で提供している人もいる。後者は手間考えたら良心的としかいいようがなくて、名機でもなんでもない型遅れのありふれたリールだけど、買ってそのまま快適に使えるようにしてあるのは、特に知識のない初心者とかにとってはありがたいはずで、メーカーが売りつけようとしてくるわけ分からん高級クソリール様を買わされるよりよっぽど楽しく釣りができるだろうって感じで、ワシもこういう商売がしたかったんじゃとは思うけど、既に先達がいてこれまた今更参入するのも簡単じゃないなと思わされた。でもそのままだとゴミ扱いの、ボロいリールを復活させて誰かの楽しい釣りのためにっていうのは、過去にもやってるけどやっぱり自己満足度が高いと思うので儲けを出すのは難しいにしろ機会があったらやっていこうかなとは思うところである。

 っていうのとは関係なく、冒頭写真の大森製作所謹製「マイクロセブンNo.3」は自分で使うために買うてしまいました。

 ちょっと大きめの、シーバスやるにも大きいようなスピニングをはたして何に使うんだろうか?と疑問に思うかもしれない。これは、実は前回買った712の予備機として釣り場に持ち込むために買ったのである。「予備機なんて必要ならいくらでもナマジさんところの蔵にはPENNが転がってるんじゃないの?」って言われるとその通りで心苦しいんだけど、ちょっと説明させてください。お願いします。

 基本ワシ、リール使う釣りに行くときには替えスプールを持っていく。ベイトリールだと現場で交換面倒臭いのでスペアリールの時もあるけど、ライントラブルとか道糸高切れとかやらかした時に、替えスプールがないとすぐに釣りに復帰できない。というわけで、せっかく買って整備したけど売れそうにもない712は実戦投入するしかないなと考えたときに、①スペアスプールを確保しようとしたんだけど、日本じゃ中古の出物も期待できないし、ミスティックリールパーツさんは海外発送やめちゃって代行業者通じると5千円以上するしで、4千円かそこらで買ったリールのスペアスプールに5千円はないよな、そんな金額あればもう一台安いリール買えるじゃんってなって、②そこで既にあるリールで我慢しておけば良いものを、この大きさの替えリールを持ち歩くのはけっこうかさばって邪魔くさいんだよな、などと思ってしまい、③じゃあ、ベール折り畳めて携行性が良い大森スピニングいっとくか?と3段論法的にまた余計なことを思いついてしまったのである。

 大森のNo.2の大きさなら我が家にもいくつか転がってるんだけど、もうチョイ大きいんだよなとNo.3の大きさのをネットオークションとかで探して、候補としてボロい「スーパー7」と見た目キレイめのアウトスプール外蹴り時代の「マイクロセブン」に絞って、後者が1900円で落札できた。弾数少ない大きさだけど需要も少ないので安い。

 到着してみると、”ゴリシャリ感”有りとなってたとおり、巻きが重いしシャーシャー言ってるんだけど、大森の中古でギアが逝ってるのは亜鉛ギアが初期不良でスが入ってた安大森以外いまだ経験しておらず、こんなもんベアリングが錆びてるだけだろうから交換すりゃいいやと、分解清掃に入る。固着が怖いラインローラのナットも素直に取れて、ギアやら主軸やら外して、ローターを抜くと、案の定ベアリングは上面から見えてる部分から赤茶色に錆錆でちょっとコレはベアリングが錆で固着してるんじゃなかろうかと怖かったけど、慎重に本体側から力かけていくと抜けてくれた。

 無事分解して、パーツクリーナーで洗浄してやる。この時代の廉価版の「タックル5」との違いはハンドル軸にも1個ボールベアリングが入ってて、ボールベアリングが豪華にも2個というのと、ハンドルにバランサー兼ねて左右交換時に使う替えネジの収納スペースが設けられている点で(あとワンタッチスプールもあるか)、ボールベアリング2個目は正直無しの「タックル5」でも巻きが重いとかは感じられないので、錆びる場所じゃないので邪魔にはならんけどなくてもかまわないんだけど、後者は地味にありがたくって、中古の個体で箱ごと付属品が揃ってるとかじゃないと、まず替えのネジは付いてないので左右交換ができなくなってる。後年、大森製作所は同じ軸に左右両用にネジ山を切るという独特の方法でこの問題を解決しているけど、この時代の場合、替えネジをリールに収納しておけるのは紛失防止に効果絶大で、見た目的にも個性的なハンドルになっていて格好いいのである。あと、内蹴り式じゃないので、その分の部品が少なくて極めて単純なのも好感度高し。

 でもって、予定通りベアリング交換してやるかと、モノタロウで注文しようとすると、ボールベアリングって大きくなると高くなるって意外だったけど、「No.2」サイズに入ってる外径14mm、内径7mm、幅5mmのは200円ぐらいだけど「No.3」用の外径24mm、内径9mm、幅7mmになると、同じ日本精工製のステンレスベアリングでも500円くらいする。まあ必要経費だろうけど、どうせ金かけるならセラミックボールベアリングとか錆びないやつ入れておいたら錆びるところなくなるなと、ちょっと調べてみたらピッタリの大きさがないのはともかく、値段がお高い。4、5千円してて、それこそリールもう一台買える。

 まあいつもどおり、ここのベアリングは消耗品扱いで錆びたら交換だなと割り切りつつも、がっちりグリス山盛りでグリスシーリングで仕上げておいたので、これで相当塩水には耐えてくれると思う。

 ラインローラーの端の方がやや腐蝕して回転悪くなってたので、輪ゴムで電動ルーターと接続して回しまくって滑らかに回るようにしてやり、本体内部やらベールスプリングやらもグリスでベッチャリにして無事整備終了。

 ギアなんてのは、40年前の設計の亜鉛のギアでも耐久性になんら問題なく丈夫って話で、ベアリング替えたら滑らかにくるくる回ってくれる。今時の高級リール様は、ご大層な設計・製造技術で作ってるように喧伝してるけど、空回ししたときに軽く回るとか、釣り場じゃ先に重さのあるルア-とか付いてるから関係なくなる”店頭性能”は向上してるのかもしれないけど、釣ってて問題が起こらないとか、長持ちするとか”実用機”としての性能が、このリールより進化しているのかはなはだ疑わしいと思っている。

 少なくとも、40年前の設計(上手な設計だとは思うけど)のリールでも魚は快適に釣れるっていうのは、証明してみても良いかなと思ってる。魚釣るの自体はご存じの通り難しいっていうのはあるけど、その難しいことをやるための道具として40年前の道具でも別に問題ないというのは、それ程証明難しい問題じゃないと思ってる。まあPENNの”Z”やらも設計的には40年以上昔のリールだから今更証明するまでもないとは思ってるけどね。しつこく色んな角度からネチネチとこれでもかと証拠を突きつけてみようかなと。

 「PENN712」と「マイクロセブンNo.3」で何を狙うのかというと、リールの大きさ的には青物狙っても良いんだけど、712のセラミックローラーはともかく、マイクロセブンの硬質クロムメッキのラインローラーってドラグ値上げてPEラインで走り回らせてやりとりして良いものか、やったことないので不安がある。案外平気かもしれないけど青物掛ける機会ってそうそうないので、そこは手堅く4500ssと6500ssにまかせて、ちょっと、浜でコチ・ヒラメ狙いでスプーン投げてみたいと思ってるので、そっちに回してみようと思ってる。「コチ・ヒラメにスプーン?」って思われるかもだけど、東北で河川から2kmは禁漁のサケを河口から距離離した砂浜で探ってたときにサケは釣れなかったけどコチは釣れたし、房総でメッキとか狙っててソゲだけどヒラメ釣れたこともある、メタルジグでも釣れるけどもっとユックリ狙えて、ミノーほど底ベタの棚を狙うのに技術が要らない。割とハマると思うんだけどどうだろうか?コチ・ヒラメ狙いならドラグ値そもそも緩めでやるし、そんなに走り回る魚でもないので問題はなかろうと思うのでPE2号ぐらい巻いて試してみたい。 

 という感じのが、2台のうち1台目で、もう一台は「あっ、そっち方面行っちゃうの?」というやや不穏な方向性の1台で、また来週以降ご紹介できたらなと思うちょります。

2021年6月19日土曜日

ワシは表現の自由を尊重するから、オマエが何を言おうと勝手だし尊重するが、ワシも勝手なことをほざかしてもらう

  っていうのが、表現の自由に対するワシの基本的な姿勢である。

 なので、アホがアホなことを言ってても無視すれば良い状況なら、どうぞご自由にご発言いただければよろしいかと。

 だだ、以前も書いたように放っておくと、小うるせぇアホゥの意見がとおって、変な方向に表現の自由がねじ曲げられたりもしているのを散見するので、アホには「アホなこと言うな!」と苦言を呈しておかねばならんと偏屈ジジイは思うのである。

 最近、とあるアニメで女子高生が原動機付二輪に二人乗りするシーンがあって、それに対して「犯罪を容認するかのような表現で問題だ」と創作物の世界と現実世界が区別できてないアホがアホなことを言い出して、問題になってた。

 誰だか知らない人だったけどある芸能人が「ルパン(三世)見るときに、あれは窃盗だ!けしからん、って批判しながら見るか?」って、アホ以外みんなそう思うであろう至極当たり前のことを言ってくれたようで、世の中アホばかりじゃなくて助かりますと胸をなでおろしたところである。

 原付二人乗りは道路交通法に違反しているだろう。でも、若いときのそうたいして人に迷惑かけるわけじゃない”お痛”は青春の一ページを彩る一コマなんじゃないの?立ち小便一つ罪を犯してないんかいな?この程度のことをあげつらうヤツラどもは?

 真似をして実際に二人乗りをして事故でも起こしたらどうするんだ?とか言い出すアホがいるだろうけど、そんなもん真似をするにしても、善悪の判断は自分でするはずで、その罪が真似された作品に帰するわけがない。”原付二人乗りを真似するといけないから「ローマの休日」を発禁にする”とかと、本質的に言ってることは一緒。

 以前書いたことの繰り返しになるけど、殺人やら盗みやら、およそ犯罪や暴力、悪行を真似されるから表現物に認めるべきでない、とか言い始めたらそもそも「聖書」とかからして、兄弟で殺し合ったりするし、磔刑にあったあと生き返るとか嘘ばっか書いてて、真似したらどうするんだッテ話だけど、ソリャ真似するヤツがアホなんやろって話で、表現物の中でさえ暴力や犯罪を認めないっていうアホの主張に付き合ってると、なんも読むモノも観るモノもなくなるって話。アホが自分で選ぶ作品を、暴力も犯罪も出てこない日常系とかばかりにするのは勝手だけど、オレの観る作品にまで規制とかかかり始めると、思いっきり暴れたくなる。

 それでも日本はだいぶマシなようで、地上波放送で人の首が飛ぶような暴力表現があるアニメとか、アメリカとかでは考えられないようだけど日本じゃ深夜アニメなら珍しくもない。だからといって日本で人の首飛ばす犯罪が多いかっていったらそんなわきゃないよね。表現物の影響で犯罪が起こるとか、まあドラマの影響でバタフライナイフが流行って傷害事件とかも起きたけど、ああいうのもバタフライナイフ規制したから傷害事件が減ったかっていえば、刃物ぐらい家に帰って包丁持ってきてもいいいわけで、刺すヤツはバタフライナイフなくても刺すんだろうって思うけど違うのか。

 それでも、日本のアニメは暴力的表現への規制とかが少ないっていうのは、アメリカとかに比べるとずいぶんましなんだろうとは実感してて胸をなで下ろすところである。何しろNHKでやってたアニメ版「ヴィンランドサガ」で、直接的な描写は避けてたけど、ヴァイキングどもによる村中皆殺しなんていうのも皆様の受信料で放送している公共放送でちゃんとエピソード飛ばさずに描写してた。そうじゃなきゃ意味がない。あのヴァイキング達の略奪、暴力、謀略、血と腸で描写された恐ろしさ禍々しさがあるからこそ、そんな中でも発揮される人間の魂の尊さや、主人公の向かおうとする道の清さ正しさが際立って心に訴えかけてくるものがあるのである。日本のアニメは自由を失わないで欲しい。それさえあれば”クールジャパン”とかわけ分からんこと言って売り出さなくても、勝手に世界中のオタク共が買ってくれるだろう。

 アメリカの、アニメに限らず表現物は、近年”ポリコレ”とかいうやつに苦しめられているようで、向こうのオタクどもの嘆きがネットで紹介されているのとか見ると心底同情する。

 ”ポリコレ”はポリティカル・コレクトネスの略だそうだけど、少数者や弱者にも配慮しなければならないっていうのが基本思想なんだと思う。けど、どうもヨソの国のことだから岡目八目でよく見えてる気がするんだけど、行きすぎたポリコレで表現物ががんじがらめに縛られて不自由になってるように見受けられる。典型例が映画の配役で、一定数黒人やらヒスパニックやらアジア系やらを入れないと社会正義の戦士様あたりに怒られるんだそうな。なんちゅうか運動会で手を繋いでみんなでゴールみたいな馬鹿臭さ。基本的に人種が違えども皆平等であるハズで、良い俳優が実力で役もぎとったら、人種的には様々な人種だったっていう結果になるのが理想だろうとは思う。思うけど逆はないだろ、最初に人種枠があってそれで配役にありついてどうする。実力でもぎとらんかい。

 アニメだともっと悲惨で、適当な配役ができなかった的な言い訳がしにくい。何せ描けば良いんだから。最近のアメコミ(あっちのマンガ)のキャラクターで人種も色々、体型や性的なものも配慮して、要するにデブもゲイもいるヒーロー戦隊ってのが紹介されてた。デブの主人公が居てもいいし、ゲイの登場人物が居ても不思議でも何ともない(同性愛とかが変態でも何でもなくて”割と普通”だということは以前書いた)。でもそれを話の設定から必要で出すのなら良いけど、”出すことありき”で役を用意するとかし始めると、例に出されてたアメコミヒーローの見た目からしてもうコレはダメだ感が漂ってたぐらいで、まあつまんないものになるだろう。

 ”ポリコレ”が大事だと思う人達は、そういうことが配慮された作品を見て、配慮されてない作品は見なければ良い。あるいは見て批判するのまでなら、どうぞご自由にっていう、それだけのことだと思うんだけど、ポリコレなんてクソ食らえと思う人が楽しんでるような表現作品を規制したり、排除しようとするのはやめてくれって話である。アンタらは観たいモノを観て、ワシらも観たいモノを観る。それで良いじゃないかと思うのに、世の中には自分が認めないモノをなきものにしようと一生懸命になる小うるせぇ輩が多くて嫌になってくる。

 ただちょっと救いがあるのは、そういうスポンサーの手前もあっての自主規制的な圧の中でも、表現者は何とかして良いものを作ろうとしてて、バットマンの新シリーズの黒人主人公は結構格好いいと評判のようである。バットマンネタでは日本のマンガで「ワンオペ・ジョーカー」というバットマンを赤ちゃんにして無力化してしまうことに成功したジョーカーが、強敵の居ないつまらなさに耐えかねて、バットマンを男手一人で育てるという喜劇があって、「さすがジャパンはオレたちの思いもよらないことをやってくれるゼ」と海外のオタクどもに絶賛されてた。

 あと、ポリコレをおちょくってる作品も散見されるようになってきてて、日本のマンガでもあからさまに真っ黒に塗った登場人物がいきなり出てきてクスッとさせられたり、米国の「サウスパーク」っていうアニメのゲームでは、キャラクターの肌の色が選択できて、色が濃いほどゲームの難易度が上がる設定だったりとか。なかなかキツめにシャレが効いている。

 表現の自由は、基本的にそれが実際に犯罪を犯して表現したモノでなければ、犯罪を描こうが何しようが勝手だと思っている。その表現というもののなかには「表現の自由は制限されるべき」という表現も含まれているという矛盾がもともとあるんだと思う。最近重要な概念として、「多様性」というのが思想や表現についても重要視されるようになっていると思うけど、同じように多様性を認めるなら「多様性を認めない」という思想も認める必要がある。などと、矛盾した思考の堂々巡りに陥りがちなんだけど、結局、我々が表現物を楽しみ受け取る姿勢としては、面白いモノを面白いと賞賛し、つまんねぇものをツマンネェと批判し、観る価値もないと思うモノは観ない。という個人的な楽しみに帰り着くのではないかと思う。そこだけしっかり確保して間違わなければ、表現者は多少制限かかったぐらいでへこたれないと思うので、どうにかなりそうな気がする。

 描きたいモノがある人間は、両手縛られたって、涙を絵の具に足の指で鼠を描くぐらいに、もうどうしようもなくあふれてくる情熱で、なんとしてでも自分のなんか奥の方からか浅い所からかわからんけど湧き出してくるモノを表現せずにいられない。古今東西そうやって溢れ出たものが、芸術・娯楽として多くの人を楽しませ感動させ、あるいはひんしゅくを買い目を背けさせてきた。それはいずれにせよとても”人間的”な人をして人たらしめているような大事なことだとワシャ思う。

 そういう大事な営みを、よくわからん正義感みたいな頓珍漢な屁理屈にもなってないような言いがかりでもって、変な方向にねじ曲げようとするアホどもの行いは、人が営々と営んできた芸術とか文化に対する冒涜でしかないと、多様な考え方のある中でワシは考えて、自由にお気楽にブログに書いているのである。

2021年6月13日日曜日

ねこまんま-ナマジのビンボ飯猫飯篇-

 冒頭右の写真例のように冷や飯に温め直した味噌汁ぶっかけて余り物で一食やっつける、というのはビンボ飯的には非常に良くある場面で、ぶっちゃけ割と美味しかったりするし手間はかからんし、残りモンだから節約にもなるしで実に素晴らしい。飯に味噌汁ぶっかけた系の汁かけ飯は洗う食器も少ないし良いことずくめなんだけど、一般的には「猫飯」と呼ばれて犬畜生の餌の形式でありお行儀が悪いとされてたりするが、かまうもんかと思ってる。

 ところで、「猫飯」って西日本と東日本で別のものを言うってご存じだろうか?例外もあるようだけど西日本では一般的に今紹介した味噌汁かけ飯のことだけど、東日本では上の写真の左側のように白飯にかつぶしと醤油を掛けたものをそう言うらしい。ワシも後者は小説かマンガかで初めてかつぶしご飯もそう呼ぶらしいと知って微妙に違和感を覚えたように思う。

 犬猫、昔はこんな餌で飼ってたって言うと、今時のペット業界の嘘に騙されてる人々は驚くかも知れないけど、犬猫は炭水化物消化できるのでこの手の餌でもちゃんと育ちます。以前「犬も猫も人間との長い共存の歴史の中で炭水化物を消化する能力を手に入れている」的なことを書いたけど、ゴメン嘘ついてました。犬はそもそも祖先のオオカミの仲間からしてちょっと雑食ですね。スペインだったかで一時は絶滅したオオカミを再導入したっていう話を追っている記録映像を観たんだけど、葡萄農園に定点カメラが設置されていて、葡萄食いに来るネズミでも狙ってるのかと思ったら、あっちの葡萄は作業しやすいように低い棚に枝が伸びてて、そこにぶら下がってる葡萄の実をオオカミがヒョイパクしてて、そういや狐が「あの葡萄は酸っぱいに違いない」って言ったって話があるくらいで、犬科の肉食獣って割と植物質のモノも食べるんだなと認識を新たにしたのを思いだした。味噌汁やらは塩分過多だとか五月蠅いこと言う”ペットフード警察”もネット上では良く目にするけど、そんなもん人間にも塩分多めだろうし腎臓に悪かったりするのかもだけど、いちいち味噌汁飲むときにそんなの気にしてたら飯がまずくなるって話で気にしすぎだと思う。あからさまに毒になるタマネギとか入ってなければ気にする程かと。

 とはいえ、我が家では愛猫コバンには猫飯を与えてはいない。なぜなら食べないから。元野良でずっとご近所さんにもらってたカリカリと魚屋さんのゴミあさりと我が家からの提供による新鮮な魚のアラで育ってきたので、ご飯とかパンとかこっちが食べてると興味引かれるようで食べたそうにちょっかい出してくるけど、食べるかなとちょっと摘まんであげると意外に食べない。ただなぜか麺類は気に入ったようで素麺とかはアグアグと食う。

 そんなコバンの好物は、アジの頭で野性的にバリバリと食ってくれるんだけど、最近、近所漁港は”禁漁”で水揚げが無いので、たまにセイゴの焼いたのを食べさせてるけど基本カリカリした固形餌を食べさせている。魚を主食に与えてると、おやつ的に与えるカリカリは喜んでがっつきすぎてたまに吐いてるぐらいの勢いで食べるんだけど、毎日カリカリだと飽きてきて食いが悪くなって、皿にいつまでも残ってたりする。沢山食うのは健康の基本だと思うので、たまに残ったカリカリの上にイナバの”チャオチュール”をネリネリッとひねり出して食欲を誘ってやると、見事にチュールだけ舐めとるように食べてて笑える。チュール恐るべし。

 猫用なのでチョイ塩分薄めだけど、味見してみると確かに美味いんだコレが。昔、猫缶も食べたことあるけど、普通に塩味薄めのツナ缶にちょっと手を加えたものって感じで、醤油掛けたら普通に食えたのも思い出す。そういえば映画「マッドマックス」の2だったかで主人公マックスが缶詰の犬の餌開けてまず食べて、次に愛犬に食べさせて、その後元々敵だった手下に食べさせるって場面をなぜか良く憶えている。当たり前だけど犬猫が食って健康上問題ないように作られてるペットフードは人間も食える。人間の食品とは基準が違うはずだけど、原材料表示の義務とかは一緒なので、わざわざ健康に悪いようなものを使用・添加して得られる利益があるとは考えにくい。

 チュールはペースト状なので、これパンに塗ってオーブンで焼いて食ったら旨いンと違うか?という気がしたので、早速試してみた。一本14gと少ないので、塩気を足して増量するために適当にマヨネーズも捻ってみた。当たり前に美味しい。美味しいんだけど14g4本で200円弱で安くはなく、全然ビンボ飯ではない。これは猫缶でも同様で、まあ原材料一緒なんだから当然だけど、猫缶安売りで買うのなら人間用のツナ缶安売りで買った方が安いように感じる。猫様に食べていただく高級品をワシのような貧乏人が日々の糧として食って良いわけがない。

 とはいえ、同じ猫様用の餌でもカリカリは安い。今買ってるのは2.3キロ500円位である。100グラム当たり20円強。コレは蛋白源としては安い。まあぶっちゃけ原材料が大豆小麦主体なんで肉の代わりにはならんだろうけど、保存が効くしコレが美味しく食えるとなったらビンボ飯的には色々とはかどるだろう。

 まずは、そのまま摘まんでカリカリといただいてみる。うん、あれだ食えなくはない。食えなくはないんだけど美味くもない。っていうかなんだろ?この酸味と妙な香辛料臭さは?香辛料なんか猫が好むわけないからそれこそ”ネコにコバン”だろうと疑問に思って原材料表を読んでみると酸化防止剤としてトコフェロール(ビタミンE)とともにローズマリー抽出液というのが入っているらしい。ローズマリーか、なるほどそう言われればそんな感じの臭いのような気がする。

 まあ、材料に混ぜて料理してしまえばどうにかなるか?ととりあえず、肉の代わりの具にしてみようと、お好み焼きの具にしてみた。

 まずくはないけど、そのまま囓った時の食感がそのまま残ってるので、やっぱり美味しくもない。

 まあこの程度の料理で美味しく食べられてしまうのなら、この安価な食材?を使った料理がもっと広く人口に膾炙していてしかるべきで、あんまりそういう話を聞かんということは、あんまり美味くもない代物だというコトなのだろうか。

 っていう結論で終わっても良いンだけど、この程度で諦めて良いのか?諦めたらそこで試合終了ですよ、と心の中で安西先生が叱咤激励してくれるので、何か手はないかと考える。

 ”逆に考えるんだ”香辛料臭さをどうにかしようとするんじゃなくて、香辛料が効いた料理にしてしまえば良いンだ。

 と方針を決めて、香辛料を効かせるなら手っ取り早くカレーだなと、本場インド産の何年モノかすでに忘れたけど冷凍庫から出すと今でも辛いカレー粉を振りかけて、めんつゆで味付けてお湯でふやかしてみた。大豆と小麦という”粉モン”が主原料だから、肉の代わりは無理でもカレーの”ルーの代わり”はつとまるんじゃなかろうか?っていう着想は我ながら鋭いと思ったんだけど、鉢の中でふやけたカリカリは、なおも独特の酸っぱさと香料臭さを発揮してて、本場インドのカレー粉が負けそうになってて依然として食えなくはないんだけど美味くもない代物の域を出ない。

 こりゃ、どうにもならんのかもなと半ば諦めつつも、ラップをかけてレンジでチンしてご飯にかけてみた。

 うん、どうにもなってないな。

 猫様って、もっと美食家だと思ってたけど、こんなもん喜んでカリカリ食ってるっていうのは、どうも人間のような意地汚い生き物とは味覚が違うのか、やっぱり適切にタンパク質脂質が含まれていればなんでも食うんだろうか?分からん?分からんということが分かった程度しか分からんなこりゃ。

 今回、絶対おんなじようなこと試してネットに上げてる人は居るだろうと思ったけど、自由な発想の足かせになるだろうからそういうのは検索せずに独自路線でやってみたけど、誰か上手い料理方法を思いついた人とかいるんだろうか?まあ気が向いたら今度検索してみよう。

 とはいえ、カリカリも食おうとおもえば食えなくはなく、カレー味のも完食したけど当然食った後にお腹壊したりとかもなかったので、カリカリの備蓄は、災害時愛猫のための餌となり得るとともに、マックスがそうしたように、極限状態で相棒と友に生き延びていくための糧となり得るというのが分かって、そういう状況に陥りたくはないけど、いざとなったらカリカリ食ってでもコバンと共に生きていこうと思うのであった。

2021年6月5日土曜日

コロナ禍で持病が悪化!さらにPENNの部品供給体制に暗雲が!! 

 コロナ禍で緊急事態宣言が6月20日まで延長される中、当然のようにそれにあわせて港の”釣り自粛”の看板の日付もペタッとテープ貼って更新されてて、豆アジはよ釣りたいのにどうにもならず、シーバスはセイゴも狙うと難しいもんで思うようには釣れず、チヌなんか初めっからアテになるほど釣れる魚じゃないのは良いとして、我が心のオアシスであったウグイちゃんまでなんか今年は難しくて、にっちもさっちもいかない状況。

 ってのが先日の素晴らしい釣果までは、ゴールデンウィーク前ぐらいからダラダラと続いていて、魚が釣れないと悪化するのが”スピニング熱”というのは、もうガチガチ鉄板のお約束で、売るほどリール持ってるくせに、それでもなんか出物はないかとネットの海をさまよって、程度悪いけどものは試しにと3300円で入札したら3100円で落札できてしまったのが、冒頭の写真の「PENNスピンフィッシャー712」。大きさ的には4400ssと同じぐらい、っていってもPENN使いの人にしか分からんと思うけど、カージナルC4とだいたい同じ大きさで2号か3号のナイロンライン巻いてシーバス狙うような大きさ。4400ssも売って整理したけどそれでも4台確保してあるし、カージナルC4もあるし大森なら”No.2”の大きさだけどそれも何台も蔵に転がってる。落札して届く前には既に”やっちまった”と反省する。インスプールで緑の712と黒金の712zはそんなに需要があるとも思えないんだけど、弾数も少ないのでネットオークションに出ると7,8千円はしてて意外に値が張るんだけど、今回安かったのは銘板が落っこちてるのはPENNではある種お約束なのでまだ良いとして、本体の背中と足下に名前を電気でバチバチと彫る方式で彫ろうとして失敗してて、なんて書いてあるのか良く分からんローマ字が掘ってあるというとってもよろしくない見た目が原因。ワシの場合PENNはインスプールでもあくまで”実用機”扱いだけど、普通の人はこの手のインスプールのスピニングは古き良き時代を楽しむための”アンティークタックル”として求めるわけで、こうも外見が悪いと整備して売りさばこうにも買った値段以上の値段が付く未来がまるで予想できない。送料入れて4千円チョイ、それだけあれば大豆製品ばっかり食ってないで肉かなんかでも食えたはずである。

 ということで売れないとなったら使うことを想定してスペアスプールでも確保するかと、その他の部品在庫も確認しておきたくて「Mystic reel parts」さんのホームページを開いて、衝撃を受ける。普段ワシ英語のサイトは英語能力が貧しい限りなのでグーグルクローム様の自動翻訳で「常に日本語に翻訳」で閲覧してるんだけど、たまたまクローム様の更新に伴って設定が初期化されてたのか原文で表示されて、コレまでコロナ禍関連で海外発送について「完全に停止しました」となってるのを見て、早くコロナ禍終息して発送再開して欲しいな、と無邪気に思ってたんだけど、原文には「Stopped Permanently」となってる。パーマネントリーってワシの英語能力では知らんだけで”完全に”って訳すのか?美容院でかける”パーマ”はパーマネントウェーブの略ってぐらいで、意味的には誇大広告だと思うけど”恒久的な巻髪”っていうような意味で、”恒久的に”今後も基本的にずっと続きますっていう意味だろって、詳しい説明のページに飛ぶと、「郵便料金高なったし、関税も高いし、運送は遅延が多いし、クレームが多くてうちとこみたいな中小企業では海外発送対応はもう対応ようしまへん。世界のお客さんスンマセン。米国にある輸入代行業者とか使ってください。」っていうようなことが書いてある。そんな殺生な!郵便料金の改定とか5年は前の話だと思うので直接的な引き金はコロナで物流が混乱したのが原因だろう。ワシ的にコロナ禍において魚港の実質禁漁の次に被害がデカい。基本的に今保持しているスピンフィッシャーの部品は一生使う分を想定して在庫していて、欲しいのは予想外に出番が増えたインスプールの714zと720zのベールスプリングぐらいだったので、まあそういうことならと速攻で「須山スプリング」さんに現物見本送って10個ずつ作ってもらう注文入れたんだけど、長期的にはどうにかせねばなと、輸入代行業者も調べてみたりした。けど、使うとなると面倒くせぇし当然手数料が掛かって割増になるしで、ミスティックさんにはコロナ禍終息後で良いので国際配送是非復活お願いしたいところである。泣けてくるぜまったく。このコロナ禍に海外発送遅れたりなんだりでミスティックさんにクレーム入れるのが馬鹿ってもので、そんなもん状況考えたら想定できるだろって話で馬鹿のせいでエラい迷惑である。まあスペアスプールは34ドルもしてて、送ってもらったら中古で一台買えるぐらいにはなるので現実的じゃないようでもあるけどね。古い製品のことで今のPENNの輸入元のピュアフィッシングジャパンが何とかしてくれるともおもえんしな。

 というわけで、中古で”部品取り個体”とか部品そのものを探すのもありかなと考えるにしても日本じゃ弾数少ないし米国中心のネットオークションなら「イーベイ」かなと思うも、イーベイに出品してる人も”海外発送いたしません”って人が多いので、ちょっと調べたらこれも代行サービスはあって、送料を節約するのに向こうで留め置いてまとめて配送とかもしてくれるらしい「セカイモン」とかいうところに登録してみた、けど眺めてみると米本国でのPENN需要はさすがに侮りがたく、けっこう強気のお値段設定で手数料送料かけてまで手が出るようなのはなかなかないのが実態のようだ。まあこれは金に糸目をつけない背に腹かえられない事態用だなといまのところ思うんだけど、登録しちまったら覗いてしまうのでひょっとしたら既に足がズボッとはまってしまっているのかもしれない。704の古いのとか、米本国じゃZの復刻版が出たぐらいの人気があって超売れたんだろうとは思うけど弾数多くてそそられるものはある。

 

 ちゅうわけで、スペアスプールも入手の目処はたたず、売って元が取れる筋も見えてこずでどうしたものかと思うけど、まあ手元に来ちまったものは仕方ないということで、まずは分解清掃して使える状態に復旧しておくかと、久しぶりの全バラし整備にちょっとウキウキ。プラモデルなら組み立てるだけだけど、リールだと分解して掃除して注油して組み立てってできてとってもお得だと考える、のはさすがに無理があるけど楽しくはある。これがまた、この時代のPENNは超単純明快で、部品数50ぐらいしかないのでサクサクと分解してパーツクリーナーでシュッシュと古いグリスを落とした状態がこの写真。ハンドル軸周りのギアが抜けてないのがご愛敬だけど不安になるぐらい部品数少ないのがおわかりだろうか?ベールレス機の「706z」だとさらに部品数少ないし、第4世代の逆転防止周りを一方通行のベアリングだけにして逆回転無しに割り切った「430ssg」も部品の少なさでは良い線いってるけど、部品数50ぐらいって、銃の世界だと「コルトガバメント」がそのぐらいの部品数で、製造も整備も簡単なので100年から前の設計だけど、今でもライセンス生産で途上国とかで造られてその国の軍や警察が使ってるとかいう話を聞く。単純で信頼性の高い道具は武器でも釣り具でも現場で長く愛されるっていうのは同じなんだなと実感できる。

 見ても分かるように、緑の時代のZの付かない古い機種で、まずは細かい所で恐縮なれど、油切れてどこも重くなってたので、分解前にネジ周りにCRC666を吹いてしばらく放置しておいたんだけど、なにげにハンドルノブとハンドル根元の注油口が凝ってて面白い。写真では分かりにくいかもだけど、ボールペンのペン先みたいな感じで丸い頭が顔を見せてるので何だろうと思ったけど、これ下からバネかなんかで球状の蓋を押し上げてる構造のようで、真ん中の丸いのを潤滑油のノズルの先で押さえると隙間ができて油が注せる。ハンドルノブのは後年のモデルでは開放しっぱなしの穴だし、ハンドル根元の注油口は普段はねじで蓋する方式を経て後年省略となってしまった。昔の方が職人さんが技を効かせてたって話は良く聞くけど、確かにこういう細かい所に凝った仕組みを使ってるのは、今みたいにせせこましく経費削減のことを考えないといけなくなる以前の”良き時代”を感じさせてくれる。とともに、やっぱりPENNってセネターとか庶民的な両軸だけど、トローリングの世界でインターナショナルシリーズっていったら高級トローリングリールの代名詞で、スピンフィッシャーもこの時代は細かい所まで贅を尽くした高級品だったのかなという気がした。

 高級品説を裏付けるもう一つのポイントがスピンフィッシャーにしては珍しく、スプールが樹脂性だというところ。てっきりアルミを緑に塗ってあるんだと思ってたので意外に思うと共に、PENNの樹脂部品ってワンタッチのドラグノブがよくヒビが入ってる印象があるけど大丈夫かな?とちと不安になる。けど現状普通に生き残ってるということは大丈夫で、当時の最新素材であったであろう樹脂素材をおごって軽量化を図ったんだろうか。アルミ製のと互換性あるの?っていうのは不安だけど、アルミの方だとなぜかドラグノブが550ssgのが使えるそうなので試してみたら、この樹脂性スプールでも使えたので大丈夫そうではある。

 樹脂性スプールだけど、真ん中には金属のスリーブが入っていてドラグは3階建て方式で今の4500ssとかのドラグパッドがそのまま使える大きさで、ドラグパッドは今のカーボンシート剥き出しの感じよりは樹脂でしっかり固めてある。ドラググリス塗って調子をみたら当たり前にドラグとして良い感じに機能している。面白いのはドラグパッドの一番上の主軸に固定される金属ワッシャーと、ドラグノブのドラグを押さえる金属面に穴ぼこと出っ張りがそれぞれ設けられていて、ドラグを締めていくと、ドラグ効くあたりになるとカチカチと締める感触が得られるとともに、締めたドラグが不用意に変わってしまわないようになっている。4400ssとかユルユルドラグで使ってると、ベール起こすときとかに触ってしまうのかドラグが緩んでしまってるときがあったりするけど、これだとそういうことは無いだろう。芸が細かい。ちなみに4桁第3世代スピンフィッシャーのユルユルドラグ時のドラグ緩み問題は、スプール共通でドラグノブが防水パッキン付きに進化している第四世代スピンフィッシャーのドラグノブに交換してやるとほぼ解決できる。なのでssg自体は430ssgしか持ってないけど、4400~5500ssには第4世代ssgのドラグノブを付けている。ので先ほどスプールの互換性の間接的な確認に使った550ssgのドラグノブは我が家では5500ssに装備されていたのである。

 他にも最新素材を惜しげもなく投入したんだろうなと感じたのがラインローラー。オークション時の写真にもなんか濃い灰色っぽい色で写ってて素材が不明だった。硬質クロームメッキが剥げて地金が錆びてるのかな、あるいは黒っぽく見えるタングステンとかの堅い金属かなと疑問に思ってたけど、届いてみるとどうも質感からいってセラミック系のようである。掃除して注油してやったらちゃんと回ってる。錆々に腐蝕してたらどうにもならんなと一番心配していたけど、流石PENN腐蝕には強い素材を使ってございます。

 あと面白かったのは、ベール反転機構の反転レバーを蹴飛ばす部分が、714zではアルミでベアリングを押さえる蓋が作ってあって、そのアルミに穴を設けてそこから蹴飛ばすためのステンレスの部品が飛び出してるんだけど、712では男らしくベアリングを押さえる蓋自体が真鍮で、その真鍮をちぃと曲げて尖らせて蹴飛ばす方式になってる。スプール樹脂製で軽くしても、本体部品はあくまで錆に強く耐久性のある素材で作ってるところがPENNなのであった。っていう作り方してたのを、714と716という”スパースポーツ”だったり”ウルトラライト”だったりする小型機を造るにあたって、真鍮部品でアルミに置き換えることができる部分はアルミに、ってやったんだけど蹴飛ばしはやっぱり耐久性考えるとアルミじゃ不安だ、ってなってわざわざステンレスの部品を追加したんだろうなと思うと、PENN社の錆びないように、壊れないようにっていうこだわりが、設計思想が、やっぱりとっても頼もしく感じられるのであった。

 という感じで、なかなかにスピンフィッシャーの歴史を、古き良き時代のアメリカの物作りを感じさせてもらえる分解清掃だったんだけど、1つ不具合が生じてて、腐蝕でスリーブが太ったのかあるいは何らかのゆがみでも生じているのか、ハンドル軸のギアが抜けてくれなかった。コイツ抜けないと逆転防止関係もちょっと抜きにくいので、仕方ないので、抜けるところまで引っ張っておいて、ブラシとパーツクリーナーのノズル突っ込んでゴシゴシシュッシュと古いグリスを除去して、最後はいつものように、青いグリスを特盛りにしてグリスシーリングで仕上げておいた。力技で無理矢理抜くとろくなことがないというのは経験則で学んでいる。

 グリスとオイルがまだ馴染んでないし、組み直してアタリが取れてない感じもあって、やや巻きが重いけど、もともとウォームギアは重めでしっとり滑らかな巻き心地が売りでもあるし、経験的に使ってればちょうど良い塩梅ぐらいには軽くなってくると思ってる。ハンドル軸のギアが抜けなくなってるのも回して適度に削れれば抜けてくれると信じたい。
 とりあえず分解清掃しての整備は無事終了で使用可能な状態になって、破損している部品とか探さねばならんこともなくて、とりあえずめでたしめでたし。お野菜の色を料理に生かしたいなら白出汁白出汁という感じだけど、じゃあコレが良い値段で売れるかというと、最初に書いたように絶対に3千円ぐらいにしかならない。ワシが半日がとこかけた手間暇など誰も評価してくれないっていうか、書く分には「分解清掃済みで使用可能」って書いても、それ確認しようがないって話で、やっぱり見た目をどうにかせねばならんっていうのが、リール売りさばくなら重要なんだろうなと思う。

 ワシの苦手な分野である。新品で買ったのならともかく、中古で買ったリールの塗装が剥げちょろげてようが、銘板がなくなってようが、機関がちゃんとしてて魚釣れればイイじゃんって正直思ってるので、手に入れたリールをきちんと機能するように整備してやろうっていうのはやる気満々で取り組めるけど、美しい外観にしようっていうのはあんまりやる気わかないのよね実際。
 塗装技術で元のとおりとまでいかなくても、緑一色に塗り直すだけなら何とかなるだろうって気もするけど、丈夫な塗装にするにはどうすれば良いかとか全く知識がないので手が出せない。車用品店でスプレー塗料買ってきてプシュプシュやればできるのなら簡単だけど、全く一緒の色目の塗料が手に入らなければ今塗られている塗料を剥がす必要があるのか無いのか?とか悩ましい問題はありそうで、そんなに簡単ならみんな自分でリペイントするだろうと思うけど、ルア-のリペイントなら珍しくないし、ワシも簡単なのならできるけど、リールのリペイントって工房に頼んだら良い値段してる印象しかなく、素人にどうにかできる気がしない。
 じゃあなんか素人にできることはないか?って考えて、以前アルチェードの「2CS」をいじったときに、シールベタベタ貼って上からウレタンかエポキシでコーティングして”痛リール”をつくったろうかしらん。って考えたのを思い出して、シールでごまかすっていうのは割と簡単で良いかもしれん。ダメだったら剥がせば原状復帰できるしなと思いついて、とりあえず試してみました。
 せっかくのアメリカンなリール、アメリカンポップカジュアルな雰囲気でアンディ・ウォーホルとまではいかなくても、たとえばフェンウィックのグラス竿のロゴ「FENGLASS」とかの良い塩梅のくだけた気安い感じを目指してみたい。

 ウインドウズの「ペイント」で適当にお絵かきする。
 銘板は720の”お魚銘板”の感じを取り入れて、背中は赤地に白文字のPENNのロゴの配色で「SPINFISHER」、フット側はアメリカンな感じを前面に星条旗背景に「U.S.A.」ときたもんだ。シールプリントできる光沢紙を買ってきて大きさいくつか用意して最初は普通の紙で試し刷りして大きさ微調整して刷ってみる。
 この時点ですでに失敗臭は漂ってたけど、貼ってみたら案外決まるかもと貼ってはみた。

 ご笑覧あれ。
  
 ダメだコリャ!

 徹底的に美的センスに欠ける代物になってしまっていて、これでウレタンコートかけて完成させようって気には当然ならず、ペリペリッと剥いでおいた。まあ何事も経験である。ワシは美的な方向を目指してもダメだというのが分かっただけでも良しとしておこう。
 丸い銘板は素人臭くも悪くはないけど、緑に赤地はドぎつすぎたし、星条旗にいたってはアホにしか見えん。まあ実際アホなんだろうけど、712自体は断じてアホじゃないから相応しくない。
 この見た目でネットオークションにかけたら、3000円以下の値段しかつかず、落札者は届いたらまずシール引っぺがしてウレタンが残ってたら有機溶媒で拭き取ることだろう。

 とりあえず、見た目は無視して2号ナイロンでも巻いて使ってみるか。ってところにおちついたけど、いろいろ勉強になったし”おうち時間”の暇もつぶせていい”遊び道具”ではあった。4千円がとこの価値は充分あったと思うことにしよう。
 良い魚も釣れて、スピニング熱は寛解してくれるんじゃないかって思うけど、それはさておき、とにかく早くコロナ禍落ち着いて近所漁港で豆アジ釣れるようになってくれと願わずにいられない今日この頃。皆様も悪い病気をこじらせないようにご自愛ください。