2021年1月24日日曜日

3日間すり身汁とかで暖まりたかったらエソを恵んでもらって料理しなさい

  皆様のご厚情におすがりして日々口に糊しておりますナマジでございます。ありがたいことでございます。

 この度は、見知らぬ釣り人に大っきなエソ(ワニエソ)を恵んでいただき、オマンマにありついたときのことなどネタにしようかなと思っちょります。

 漁港で釣ってて、物乞いで入手可能な獲物としては、筆頭がボラ、今期多かったのはアイゴ、自分で釣っても良いけどゴンズイ、そして今回のエソ系だろうか。アイゴとゴンズイは毒針の処理があるので素人には手が出にくいかも知れないが、ボラに関してはなぜ、この美味が”捨てる”ように放流されがちなのかは理解に苦しむ。この週末は自前で釣ってきたボラを刺身でポキでズケ茶漬けで、アラは味噌汁の具にと楽しんで「やっぱり寒のボラは最高やな!」と堪能したので、チヌもそれ程悪くない味だったので見直したけど、ボラを放流してチヌを後生大事に持ち帰る感覚が全く理解できない。ボラの方が数段美味しいと思うンだけど、そう思うのはワシだけか?

 ゴンズイとアイゴは毒魚だけど、棘に毒があって身に毒は無いので、フグのように調理するのに免許がいるわけでなく、バチバチ棘を切れば後は普通に美味しい魚である。皆さんが気付いて持ち帰るようにはならないようなので、ワシの取り分が安泰でありがたいっちゃありがたい。

 それらに比べるとエソ系は”調理が難しい”という難点があるので、持ち帰るには相応の技術が求められる。ちゅうても要するに小骨が多いのが欠点なので、骨ごと叩いてすり身にしてしまうという方針であれば、手間は掛かるけど難しい工程はないので、フグのように素人が手を出してはいけない獲物ってわけではない。

 もらったワニエソは冒頭写真の様になかなかの大物で、すり身にしたらすり身汁と薩摩揚げぐらいは余裕で作れそうな良型。

 早速捌いて”すり身”を作っていく。なるべく骨の入らないような捌き方とかあるのかなとググったら、上から身を押して潰して腹側から背骨を引き抜くと、潰れた身から小骨が背骨にくっついて抜けてくる、という裏技的な捌き方が紹介されていて”なるほどその手があったか”と感心して早速やってみようとした。この方法だと身が潰れてるので刺身は無理としても焼こうが揚げようがご自由にな状態になる。

 すり身は鮮度大事な印象あるので、帰宅して早々に捌き始めたんだけど、鱗落として、内臓を腹びれの下から包丁入れて頭を捻って背骨折ってはずして、内臓抜いて腹側から背骨まで包丁を入れておき潰してから背骨を引き抜こうとしたら、コレが上手く背骨ごと小骨が抜けてくれない。っていうか背骨が抜けない。鮮度が良すぎて身が締まっているのと型が良いので身が思うように潰れてくれなかった。もっと小型のややや身が柔くなってないと使えない技のように感じた。ということで、途中から普通に3枚下ろしだけど、皮がぬるついておろしにくい。途中からの方針変更もあってイマイチ捌くの上手くいかず背骨に身が残ったので可能な範囲でスプーンでこそげて回収しておいた。

 ここからはナメロウ作るのと一緒で、2本包丁でチタタプしていく。その際塩が重要。生の魚肉の細胞が壊されて塩で溶けたタンパク質が網目のようになってすり身をまとめるので練り物は弾力が出るという理屈のはず。塩加減は少なめに振って、叩いてちょっと味見して塩気が感じられなかったら、また振ってから叩く。っていうのを繰り返していると、エソの場合、ちょっと尋常じゃなくすり身の段階でまとまってきて、まるで餅のように持ち上げることができるようになる。すり身がまとまる力は”座り”と練り物業界では呼ぶんだったと思うけど、この座り方は凄い。過去エソ肉ですり身汁作った時は、出張先で買ってきてやや時間が経ってたのでそこまでの座りは出なくて、今回”産地直送”ですり身化してみてエソの練り物原料としての真の実力を思い知らされた気がする。必要なら卵白をつなぎに入れようかとも考えていたけど、コレ全くそんなモノ必要なく、むしろエソすり身をほかのすり身原料、例えば当地では底びき船が操業している時期ならニギスすり身とか安く手に入るんだけど、あんまり”座り”的には優れていないニギスすり身にエソすり身混ぜたら良い塩梅に弾力のある”足の強い”練り物ができるんじゃなかろうか?”高級カマボコ”の原料と言われるエソだけど、エソ自体が白身で美味しい味であるっていうことよりも通常ならカマボコなど練り物に作るには”座り”が弱いような魚種をエソすり身の”座り”でまとめてしまえるので、鯛カマボコでもなんでも作れてしまえるっていうのも大きいのかも。今時の練り物原料というと船上で冷凍すり身に加工して使うスケトウダラすり身が主力だけど、昔はエソ類とかイシモチ類使って各地で良い塩梅に原料を混合してご当地練り物作ってたんだろうなというのは想像に難くない。いまどきそんな”まっとうな”練り物作ってたらちょっとお総菜として気楽に食べられる値段にはならないと思うので、食べたいなら自分で作ってしまうというのはありかもしれない。すり身原料は冷凍保存ある程度効くのでニギス+エソの練り物は機会見つけて是非作ってみよう。

 でもって、すり身にまでしてしまえば、後は煮るなと焼くなと好きにしてくれぃっ!ってなかんじで、塩味ベースで昆布とすり身の出汁に具は大根とネギでシンプルな”すり身汁”にしたところ、まあエソ自体は上品な白身で澄んだ出汁が出るので、昆布出汁と合わさって上品な感じのすまし汁に仕上がった。旨い。

 余ったすり身は、油引いたフライパンで焼いて薩摩揚げ風に。これも旨い。旨いんだけどすり身汁のすり身もこの薩摩揚げ風も、思ったより弾力が強くて”足が強すぎ”るぐらいで、エソ単体ですり身にするならもう少し”寝かせる”時間をとった方が良いのかも知れない。もちろんさっき書いたように”混ぜ物”して良い塩梅に仕上げるのも楽しいだろうと思う。

 出汁は良い味出るので、薩摩揚げ風は味見だけして残したものを具にして、醤油仕立ての野菜チャンコを大鍋いっぱい作ってみた。キャベツと大根どっさりにネギと揚げ。

 これまた、冬の寒い時期に暖まるには最高の良いお味。3日越えて大根グダグダになるまで煮返して堪能しました。

 エソ、すり身にしてしまうなら小骨が多いのは問題にならず、せっかく釣れたこれほどの美味な食材を、みすみす見逃す手はないなとおもうところ。

 こんなに旨いんなら、青物狙うときにメタルジグも投げて底狙って釣ってみようかと思って、安定して釣れるようならすり身作るのに2本包丁で叩くのは時間が掛かってしんどいのでフードプロセッサー(ミキサー)でも買おうかしら?とか思ったけど、獲らぬタヌキのなんとやらで、狙うと案外釣れず難しい印象。まあ今後も釣れてる人が居たらスススと寄っていって”物乞い”作戦で行くか。皆様釣り場で”外道”を欲しがられたら、実はその魚は旨いということを知っておくと良いかもです。

 ワシが欲しがったら、素直にお恵みいただくよう、そこのところはよろしくお願いします。

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