2021年1月16日土曜日

テツ西山の「ヒット:バスルアー」

 最近、目についてイラつかされる言葉に「トイルアー」というものがある。

 本来の意味は釣ることそのものよりも”面白さ”優先のB級バカルア-を示す言葉だと思う。例えば、蓮の葉っぱからツルが伸びていてそこに止まったトンボにハリが付いているという「ホバールアー」は多分トイルアーなんだろう。なぜならば、そのバカバカしい面白さにそのルア-の存在価値があるから。例えば、前から引くとポッパー、後ろから引くとバズペラスイッシャーというマンズ「トゥーファー」の”押しつ押されつ”感は唯一無二でこれまた馬鹿臭くトイルアーといってお叱りは受けないだろう。もちろんこれらトイルアーが意外な実力の持ち主で実釣能力が高いとしても、あからさまな”ウケ狙い”の要素が強いキワモノであるかぎりトイルアーと整理することにあまり異論は出ないだろう。

 ところが、最近ネットのオークションやらフリマ-ケットやらを物色している際に、どうもこの言葉をはき違えて使っている輩が多くいて、実釣能力抜群の古くからの名品に見た目が今時のリアルな造形ではないからぐらいの安易な理由で、”トイルアー”と書いているような事例を散見する。全くもってルア-というモノが、ルアーの釣りというモノが分かっていない田子作及び抜け作だと唾を吐きかけておく。「ホットエヌ」がトイルアーなわけねえだろ?ストーム時代我が国でもバスルア-としてブイブイ言わせて、ラパラ傘下の現代でもトローリングやアンカー打っての下流流しの釣りでサケだの釣るのに米国じゃ定番。もちろん現在の日本でも使いどころがあると踏んでワシも使い始めたところである。インビンシブルがトイルアーだぁ?ボケがっ!ルア-で最も”オモチャ”から遠く実用性重視の”漁具”に近いモノの一つがラパラフローティングである。そのへんがわからん人は楠瀬・福原両先生著の「ラパラ解体新書」でも読んで勉強しておくように。”ラパラの出自は漁具”。本国フィンランドでそのラパラの向こうを張って未だに生き残っているニールズマスター社のミノーが”オモチャ”なわけねえずら!なんか見た目がそれっぽいだけの今時ミノーなんてインビンシブルを総合力で上回る実釣能力など備えていないはず。安価良品「BHポッパー」のどこがトイルアーやねん!あの軽さからくる小気味よい反応、タダ引きしたときの泡引きと揺れ、メッキ釣るのにワシャ絶大な信頼をおいて魂込めて投げている。BHルア-が”トイルアー”だというなら、紀伊半島のこの地でBHポッパー以上に釣れるポッパーを持ってきて見せてくれといいたい。当然メッキ用の名作クリスタルポッパーとかは使った上でBHポッパーをワシャ選んでる。

 なんで、そんなに”わかってない”輩が多いのか?要するに、ルア-の歴史についてあまりにも無知で、見た目今時じゃない”アメリカン”なルア-達が、どういった歴史の中で産まれ、そして現在まで使われているか、愛され続けてきたか、釣り人に魚を釣らせ続けてきたか、今あるルアーの原型となり発展の基礎となってきたか、あたりが頭にないので、古くからあるルアーにお化粧し直して売れそうな”釣り書き”添えてみました。程度のルア-をありがたがって、歴史と実績に裏打ちされた”歴戦の勇士”を”オモチャ”扱いしてしまうという愚挙に出るのだと思う。

 ルア-の、バスルア-の歴史を知りたいならグリッツ・グレ-シャム著「コンプリートブック・オブ・バスフィッシング」あたりを紐解かねばならんのかなと思ったりする。この著名な”バス本”からの引用やらはあちこちで目にするので、一度は読まねばナと思いつつ、そのままにしてあり、多分そのままにしたまま読むことはないのだろう。翻訳ソフト使いつつ英語原文読むのしんどいからな。誰か日本語訳出してくれ。

 でも、そういう基本的な文献をふまえつつ、日本の事情も加味して書いてくれている人がいて、そういうルア-解説本があるので、ちょっと古いけど読んでお勉強してはいかがかと無知蒙昧な田子作または抜け作どもには薦めておく。抜け作でない諸兄にももちろんお薦め。元80年代のバス釣り少年とかなら懐かしくてむせび泣けること請け合い。

 というわけで今回は久しぶりの「ルア-図鑑うすしお味」です。地道に回を重ねて第44弾を 西山徹著「ヒット:バスルアー「カラー図解 釣れるルアー大図鑑」」でいってみましょう。今回ルア-じゃなくてルア-本です。

 故テツ西山氏は、北米やカナダの釣りなんかも守備範囲にあって、英語も堪能な国際派の釣り師という一面も忘れてはいけないと思う。何でも釣れる全方面対応型釣り師としての釣り番組での顔が一般的な印象だけど、米国のルア-釣りの教科書を翻訳しているのも、多くの著作と共に彼の成した仕事の小さくない側面で、こういう”釣り人はどこからきたのか 釣り人はなにものか 釣り人はどこへいくのか”的な歴史的裏付けに基づく筋の通った哲学のある釣り人っていうのが、なかなか表に出てくる今時の釣り人には見当たらずもどかしい。釣り具の広告屋ばっかじゃどうにもならんぜ。

 でもって本著、昔誰かに借りて読んで面白かった記憶があったんだけど、買い直すほどではないかなと思ってたら、ネットフリーマーケットでルア-を検索していたら、お手頃な値段で売られていたので即食いついた。

 当初読んだ時には、いろんなルア-が紹介されていて、田舎の貧乏ルア-少年としては憧れを持って”ええな~欲しいな~”と読んでいたものである。今なら片っ端から買っただろう。っていうか出てくるルア-の多くはうちの蔵にもある。

 ”図鑑”としての構成は、こういっちゃなんだけど一般的・基本的で、ルア-のタイプ毎に代表例の紹介と動かし方、使う場面・状況の解説って感じで、よくあるっちゃよくある形式。ただ、自分がバス釣り少年だったころのルア-達がズラッと並ぶので読んでて心躍りまくるモノがあった。その心の動きは当時のバス釣り少年のものと同じものも要素としては大きいんだけど、改めて読んでみて、テツ西山氏が各ルア-の出自や歴史についてきちんと解説していて、どのような経緯でそのルア-がバスルア-として人気をはくし使われるようになったのか、そのあたりが実に簡潔ながら肝が押さえられていて”分かってらっしゃる”と今回は唸らされるモノがあった。ワシもそれが分かるほどにはルアー投げつつ歳を重ねたということか。

 例えば、バスルア-が最初大型の水面系だったのは、道具が小型ルアーを投げるのに向かなかったというのに加え、「心情的な部分では、巨大なプラグで釣るという意外性こそがバスフィッシングの面白さであり、他の釣りとの明確な差別化であったのだろうと想像できる」というような見解も書いており、なるほどなと、そこは今のバスプラグにも他のルア-にも引き継がれてる要素だな、とか、最も古いバスルア-の一つはシンキングのスイッシャーで、それは心棒にシルクを巻いてペラをつけた大西洋サケ用の”ファントムミノー”が原型で、そこからスイッシャーになり、ペラをハズしてペンシルベイトができたっていうような流れも”歴史があるんだな~”と感慨深い。

 全体読んでバスルア-、特にプラグの歴史で大きな事柄としては、米国で初期の水面系ルア-でいろんな着想が出て試されたことと、バルサミノーの始祖にして最強”ラパラショック”と元祖クランクベイト、フレッドヤングの”ビックO”があるんだろうなと、あらためて歴史を俯瞰して実感することができた。

 これらの歴史的な”仕事”に比較すれば、今時のルア-のコチョコチョとした改良ごときは些末な話であり、たいして今時のルア-が進化してるかっていうとそれ程でもなくて、100年近く前からあるようなルアーが実力発揮する場面もあるんである。日本製ルア-で真に評価に値する工夫は”重心移動”ぐらいだとおもっている。実は高く評価しているけど、みんなが使うから、逆にワシャ近距離戦に特化してあんまり重心移動搭載ミノーとか使わない。けど、これは世界に誇って良いぐらいの技術だとはやっぱり思っている。ルア-の歴史を40年からその身をルア-釣りの世界に置いて感じてきてそう思う。だとしても重心移動搭載形ミノーが有利な飛距離が必要な場面を除けば、固定重心の方が良く釣れることが多いと思うので、ワシャ、ルアー入れるケースの中身がこの「ヒット:バスルア-」からあんまり進化してないルア-で埋まってるんである。

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