2020年10月11日日曜日

3日間反省しつつスズキを隅々まで食べなさい



 70もあるようなスズキ様をお持ち帰りするのはいろいろな意味でよろしくないと思っている。
 まずは、釣り場のスズキ様が減る。
 スズキ自体は海にはいっぱい泳いでいるのかもしれないけど、陸っぱりで狙える釣り場にやってきた個体や群れって考えるとそんなに多くはない。特にワシの釣ってる対岸までルア-が届く小規模な河川に出入りしているような魚は数が限られているはずで、リリースしておけば再度釣れる可能性もあるもんだと認識している。
 かつ、スズキとワシが呼んでるのは70センチ以上なわけだけど、セイゴが40,50のフッコに育つには餌の状況にもよるだろうけど2年もあれば足りるようで、そこまでの成長は早い。でもそこらへんの大きさから繁殖行動に参加するようになると、そちらに栄養を取られて成長速度はガクンと落ちる。80センチ越えるには10年以上かかるとか。
 だから、シーバス釣ってて良く釣れてくるのは40,50のレギュラーサイズでそれ以上の大きさになるととたんに数が減るのである(「生物多様性とスズキ」恒星社厚生閣刊参照)。
 スズキと呼べる大きさの魚は貴重なんである。

 次に持ち帰りるのに難儀するのも持ち帰りたくない理由で。40,50なら米袋に詰めてリュックに入らないこともない。70はさすがにどうにもならないので自転車の前カゴにぶち込んで運ぶしかなく、かつ持ち帰るとなるとその後の釣りは諦めて撤収作業に入らざるを得ず、せっかく魚が釣れる日の釣りの時間が削られてしまう。ワシのような足で釣る釣り人は70のスズキぶら下げて釣りを続けるのは正直無理で、70が入るクーラーボックスとかを釣り場に持ち込むとか想像もできないぐらい面倒臭い。荷物持ちでも雇うぐらいの金持ちでなければそんな釣りは成立しない。


 さらにいうなら、70を越えるような魚は一人暮らしのオッサンが料理して食うにはいささか手に余る大きさだ。
 まずは、デカくて流しにギリギリだし、冷蔵庫に入れるのも”つの字”に曲げて押し込めねばならん始末で一般家庭の台所では料理しにくい。
 かつ、70チョイのスズキ様で4キロだかそこらはあるハズで、歩留まり6割で2.4キロの”淡泊な白身”が手に入ることになって、アラとかも料理し始めるとさらに多くのスズキ肉が入手できてしまって、キロ単位の魚肉を男一匹猫一人の体制で数日のウチに食い切らねばならない。冷凍保存?せっかく刺身で食える魚を何が悲しくて冷凍にせにゃならんのだ。白身魚は冷凍すると味がガクッと落ちる、刺身系はダメになる。っていうか冷凍して刺身にできる魚介類が例外で、マグロとかの大物とイカぐらいか?
 スズキ様、決して不味い魚ではない。刺身とか手頃な50ぐらいのが確保できてるとウキウキするぐらいには美味しい。とくに産卵にそなえ荒食いして身が肥える秋は、他の春産卵の白身魚が軒並み味を落としている初夏に、スズキは冬産卵でさすがにその頃には産後の肥立ちもよくなっているので白身の淡泊な味とあわせてそのあたりが旬とされているけど、むしろスズキは晩秋が初夏よりも美味しいと推す声も多い。
 ただ、鱸の食べ方っていうと、刺身、そしてアラは塩焼きか潮汁ってぐらいしか選択肢が思いつかず、淡泊なというと聞こえが良いけど、要するにあんまり味に個性のない魚肉がキロ単位でドンとやってくるのである。いつも通りの刺身とアラ料理だけでは飽きるのは目に見えている。

 ということで、基本もちかえるのは個体数も多く持ち運びもそれ程苦労がなくて食べきりサイズである50前後のにして、70越えるスズキ様には流れにお帰り願うことにしていきたい。今回の73はやる気満々で速い流れの中に入ってた個体で、おもいっきりルア-を飲みやがって鰓にハリが刺さって出血多量でお亡くなりになっている。こういうのを防ぐには、単純な方法ならルア-の大きさを上げて口の中に入らないようにするっていうのが考えられるけど、ワシ残念ながら通常狙ってるのは個体数多い50センチぐらいのフッコたちなので、そうするとあまり大きなルア-は使いにくい。ということで、とりあえず今回一仕事してくれたダルトンスペシャルのシングルフックをハリ先を内側にややむけて、口の中で余計な所に掛かりにくく、口の端の方でかかる方向に調整した。当然掛かりやすさ的には悪くなるけど、掛かったらバレにくくなるので相殺されるだろうから、そのへんは実戦導入で塩梅見ながら調整して、他のルア-もそのルア-の出番を想定しつつ調整していきたい。渋い状況で使うルア-とか食いが浅いことが想定されるので掛かり悪くしたら塩梅悪いだろう。


 でもって、せっかく苦労して持ち帰ったスズキ様、余さず食べちゃって楽しまなければもったいない。
 ということで、種々料理してみた。この辺は無職で時間がとれるありがたさで、手間暇掛けて美味しくいただこうという試み。
 とりあえず、刺身と兜焼き系とアラ汁はお約束で普通に美味しい。
 今回、あら炊きはいつもの塩味の潮汁と醤油味のアラの煮付けの中間ぐらい、塩味ベースなんだけど醤油を効かせてオデンの汁を意識して味付けした。
 なぜそういう味付けにしたかは後ほど。
 これで食べた後に骨とかは捨てるゴミとして生じるんだけど、調理時点で出るゴミは鱗と内臓のなんか食べられなさそうな部分と今回そこまで手が回らなかった鰓ぐらいでたいした量にならない。隅々まで食べ尽くす感じになってくる。


 刺身一回食ったぐらいでキロ単位の身が消費できるわけはなく、むしろここからが本番。
 お刺身2柵めは皮をフライパンでジュッと焼いて焼き霜造りにしてみた。
 スズキの皮とか泥臭そうな先入観があったけど、当地のスズキにはそんな心配は全くなく、これはこれで皮のプニコリな感触も楽しめて良いお味。
 右の皿に入ってるのが、アラ炊きの一部で、今回、肝と胃袋の他に内臓としては意外に大きくてしっかりしている浮き袋を入れてみた。
 中国人が乾物にして食うのに血眼になって世界中からかき集めている美味。これまでそれほど意識していなかったけど、多分コラーゲン豊富なスジ肉的なプルクニャ食感になるだろうと予想して、ならばと味付けもオデン的にして、練りカラシ添えて食べてみた。これはちょっと抜群。オデンの牛スジ肉はかなり煮込まないと柔らかくならないけど、スズキの浮き袋はアラに火が通った時点で良い感じに柔らかくプルクニャに煮えていて”オデン味”大正解。さすが食通の中国人が目をつける食材だけあって、魚の浮き袋は乾物にしなくても充分旨い。


 という感じでアラ方面は個性もあって食ってて飽きないんだけど、大量入手した身の方の身の振り方を考えてやらねばならない。
 ただ、食い切れないほどの魚肉を食いきるには”ズケ方面”を攻めるのが吉!というのはメジロ(ブリの手前)でも学んだところである。
 まずは普通に醤油味のズケ。適当にめんつゆと酒で作った漬け汁にぶち込んで2日ほど。
 ただ、カツオとかの濃い味の魚でヤるならこれだけでイケるけど、白身の淡泊な魚にはもう一押し欲しい。ということで、”黄身ダレ”が良いっすよというタレコミもいただいていたので、ズケ丼に卵黄乗っけてユッケ風にしてみた。
 卵黄だけ使うので卵白が残るんだけど、皆さんこういう場合は余った卵白どう処理されてますでしょうか?泡立ててメレンゲにしてケーキでも焼いてますぅ?
 ワシャいい手が思いつかなかったので、筋トレマニアよろしくそのまま飲みました。
 まあ、ユッケ丼風は不味いわけがないよねという感じで丼飯余裕。

 そしてズケを作ったなら、これまた鉄板の”ズケ茶漬け”もやっておかねばとズケ汁で掛けまわす“だし汁”を作って、ザブザブッといただきましたところこれもまあ最高ですね。
 ズケって実家ではカツオで作るのがほとんどで、味付けは醤油だけ。翌日刺身のつまの大根もあわせて汁ごと浸かったカツオを鍋の湯にぶち込んで一煮立ち後にご飯に掛けるっていうのが定番だったけど、カツオで作ると出汁が良い味でズケ汁にしみ出したタンパク質が熱で凝固したモロモロとした粒子もろとも良い味の汁になるんだけど、スズキでもやっぱりズケ汁に良いエキスが染み出すようで実に良いお味。
 お店の鯛茶漬けみたいに上品にわざわざ別に出汁を用意してとかまったく意味不明、なんならズケ汁湯に溶かしたのを飲んだって良いぐらいに良い味です。


 そして今回、一番上手くいったと思うのが新機軸のスズキのカルパッチョ的な”塩ヅケ”。
 まあ、良くやってる塩味で刺身を漬けてゴマ油とネギあたりで和えるハワイの郷土料理”ポキ”風のをちょっと写真”映え”を目指して平べったい皿に盛ってみました。
 ワシあんま美的センス無いな、というのを思い知らされる”映え”度の低さだけど、味は上出来。
 柵の段階で塩を、ちょっと多すぎじゃネ?ってぐらい振りかけてラップに包んで数時間から2,3日。薄く切って刻みタマネギ散らしてゴマ油を掛け回していただきました。多分コレ油をオリーブオイルにするとバエるンだろうと思うけど、まあ旨けりゃどっちでもイイや。多分オリーブオイルでも美味しいです。
 淡泊な白身のスズキの身が塩で締まってちょっと生ハム的な濃い味が出てきて、そこにゴマ油の香りとコクですよ。不味いわけなさそうでしょ。


 ということで、現時点で残すはアラ炊きの残りぐらいでほぼ完食。
 ワシも堪能したけど、ワシ以上にコバンが贅沢に食いまくってて、最初刺身引いたあとの切れ端とか皮とかにガッついてたけど、だんだん飽きてきたのかプイッとするようになってきて、湯がいてみたり、一応猫も食べることを想定して塩振らずに素焼きにしてあった兜焼きを手で身を千切ってあげたりして、目先を変えてなんとか食べていただきました。ほほ肉とか猫に食わせることになってます。下僕としては喜ぶべきでしょう。

 という感じで、予定外の獲物だったけど、3日ほどかけて美味しく楽しめました。スズキ様ありがとう。ご馳走様。

2 件のコメント:

  1. 私のホームグラウンドでは飲ますのはタブーで
    食用になるような場所じゃないから問題は大きいです。
    あとオールナイロンのラインシステムに純グラスやコンポジットでグラスの率の高いモデル、食い込みにすべてを賭けたようなモデルでバラし対策取ってると
    季節によっては飲まれるのが税金化するから竿の性格を状況に合わせて秋の竿と春の竿しっかり分けて対応しています。
    デカいルアーでの飲み対策は徒労になる可能性も高いですのであまり意識しない方が吉です。

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    1.  ルア-の大きさは確かに、以前スズキサイズで飲まれてお持ち帰りになった時には14センチのミノーだったので、70のスズキにしてみれば、20センチ越えるボラ飲めるぐらいだし意味ないかもですね。

       使ってるのはバラし対策に振った道具立てですが、悪癖の早アワセの恩恵か滅多に飲まれないんですが、それでも飲まれるときは飲まれますね。”税金”かもしれません。
       こちらは都市河川のようなハズレ個体はいまのところ経験してないので最悪今回のように釣り終了で持ち帰ればいいので問題あるようなないようなもんです。
       ちなみに、東京湾周辺で釣っててもルア-飲まれてひっくり返ったときは持ち帰って食べてました。5回もなかったと思いますが、1度もハズレは引かず美味しく食べられました。ハズレ引いたのはハゼ釣ってて飲まれてしまったセイゴで泣きそうになりながら食いました。ハゼは臭くならないのに何なんだろうあの違いはというドブ臭さ。
       ハズレのシーバスの魚肉がキロ単位で冷蔵庫にあるとか、想像するだにほぼ拷問ですね。

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