2019年6月29日土曜日

仏の顔もサンドバックに浮かんで消える


 はい買っちまいました。
 PENN720

 一度でも欲しいと思ったら逃れられない運命だよね~。
 ああ、この可愛らしい魚模様にキレイめのライトプルー、一体どんな竿にあわせてやろう。黒やグレーのブランクスなら無難ではあるにしても、このアメリカンポップな意匠造形の素敵なリールにはもっとスマートなそれでいて質実剛健な竿をあわせてやりたい。青であわせるならパームスのコーラルスターとかに青系があったか、でもメタリックな青いリールにあわせるならむしろミスタードンのような透明感のあるブルーの方が涼しげで良いのではないだろうか?心はウキウキと舞い上がるが、実際には今使ってるのは茶色の個体なのでしばらくは”コレだ!”という竿と出会うまでお蔵入りだろう。

 てなこと考えてましたが、壊しちまいました。修復不能に最悪な感じの壊れ方。オレの所に来たばかりにと思うと面目なくももうしわけなくも恥ずかしい。消えてなくなりたくなるほど意気消沈。
 まあ、あえて克明に恥をさらすことにより、我と己の汲み取り屋さんに来てもらった後のボットン便所の闇よりも深い罪深さを深く反省し、皆様が同じような過ちを犯さないよう他山の石となることをあえて選ぼう。まあワシそういう芸風やし。
 他人の失敗は自分に跳ねが飛んでこなけりゃ最高の娯楽!!っちゅうことで笑ってやっておくんなまし。

 茶色の720Zがボールベアリングが使われていないにもかかわらず、4:1という低速に力の伝達効率の良いスパイラルベベルギアがあわさって、使用上何ら問題がないというか快適に使えているという状況で、コレなら今の茶色のは結構ボロいしもう一台あっても良いなと慢性的PENN症候群を悪化させてしまい、かつ、まとめて放出されてたなかで茶色買った後、720、722系の落札相場が下がってる気がする。欲しい人間にある程度行き渡った感触で、見ているとそこそこ程度の良い個体でも7、8千円ぐらいで落札されることが多く、コレはいま買い時かも知れんと、かねてから欲しいと思ってしまっていた720の初期の青で本体蓋のプレートがお魚のがオークションにかかったので、ソレッとばかりに入札したら、例によって「自分が参加すると落札金額は一段上がる」の法則どおりで、7,8千円で決着せず大一枚ちょっと越えたところでハンマープライス。
 最後の方はワシともう一人で競っていて、わしが参加しなければ間違いなく7,8千円での落札になってたはず。
 でもまあ、そのぐらいの値段はしておかしくないブツだと思うので悪くない取引であった。
 多少表面の傷や腐食とかもあるけど、回転もベール反転や逆転も問題なく”機関良好”な個体で、しばらく本棚の目に付く場所に飾っておいたけど、腐食がこれ以上進まないようにするためにも、一回全部バラして注油してグリスを盛りまくってグリスシーリングしておくことにした。

 基本単純で部品も少ないのでサクサクッと済むはずだった。スプール外してドラグにグリス塗り塗りして、ハンドル外してと思ったらこれが固い。
 CRC666を吹き付けて、ペンチでコンコン叩いてから外そうとするんだけど回ってくれない。回す方向はリール巻くときの逆だから間違いようがないんだけどな?と力掛けていたらちょっと動いた気がしたので、これを外さないことにはハンドル軸のギアも外れず分解できないので思いっきり捻った。
 グリグリッと金属が変形しながら回るような嫌な感触があったので、慌ててやめてハンドル正回転させると、回るんだけど1回転に1箇所カツッと引っかかる所がある。

 コリャなんか壊したなと慌てて本体蓋外して確認してみると、ハンドル軸のギアが割れている。最悪だ。
 回った感触は何だったんだろうと、蓋外したままもう一度ハンドル逆に回してみるとアルミのギアに鋳込んである芯の硬いステンレスがアルミから剥がれてギアが回ってないのに芯だけが嫌な抵抗感を残して回ってしまう。
 完動品だったのに、我が家に来たせいで使えない状態になってしまった。
 マイコンNo.6の時もそうだったけど、使えるモノをわざわざダメにしてしまってもうし訳ない気持ちでいっぱいで、心はどんよりドヨドヨと沈んでしまう。

 一応この状態でも巻けることは巻けて、ただ、一定以上の負荷がかかるとハンドル軸の芯が回ってドラグみたいになっているし、ギアの割れたところが引っかかって一周毎にカツカツと音がしている。正常なラチェット音とか全然気にならないし、むしろ拍子がとれて良いぐらいだけど、さすがに自分が原因で壊した証拠の音を聞かされ続けるのは、責め続けられているようで精神的に辛すぎる。無理。
 アルミを溶接でもして引っかかる割れた部分は削って平面にして”あたり”取るとか、金属加工の技術があればひょっとしたら復活するかもとは思うんだけど、いかんせんそんな技術は持ってない。そもそも回ってるなら芯からギアの歯車部分抜いてハンドル抜けるだろうと思うんだけど、ギアの歯車の下に逆転防止のラチェットが填まってて、それが芯を固定しているのか芯は抜けず、にっちもさっちもな状態。

 終わった、大1枚もかけて入手したけどゴミにしてしまった。と暗澹たる気持ちに沈んでいたけど、ひょっとして720Zとギアもハンドルも同じだから部品まだ「MYSTIC REEL PARTS」さんで在庫してたりして。と、まさかとは思ったけどダメ元で確認してみると、なんと在庫してございます。ギアも銀色のハンドルもあるぅッ!!
 パヤーッと雲の隙間からレンブラント光線が差し込んで頭の上から天使が舞い踊りながら降りてくるような心持ち、あるいは、お釈迦様が天上から垂らしてくれる蜘蛛の糸にすがるカンダタのような気持ち。とにかく救われた。助かった。命拾いした。

 在庫切れになると困るので、条件反射的にポチッと発注。とりあえず1週間もせず国際郵便でブツは届く。
 ただ、填まっているギアを抜かないことにはどうにもならないので、歯車だけ抜いてハンドルの方に抜くのは難しそうなので、現時点ではまだ生きているハンドルを使用不能にしてしまうけど、ハンドルぶった切ってギアを本体から抜くしかないなと判断。
 ということで金鋸も買っちゃいました。

 また余計な失敗をしてさらにドツボにはまるのが怖くて、しばらく放置していたけどいつまでもそのままでは仕方ないので、覚悟を決めてやっつける。
 やることはハンドルぶった切って、切り残し部分を引っぺがしてギアを抜くってだけで簡単で、気をつけることといえば切ったアルミの粉が本体に入ったりしないように覆いをかけるのと、切り残し部分はなるべく薄くしつつ本体側の被せてある金具に傷をあまりつけないように鋸を入れるってぐらいか。
 アルミは柔らかい金属なので金鋸であれば簡単に切れる。津波の後のボランティアで建物の土台の鉄のボルトとか切ったけど鉄は固かった。ちょっと本体側の金具の表面削っちまったけどこのぐらいは許容範囲。見た目はそんなに気にしないんじゃワシ。
 切ったら切り残しの部分をマイナスドライバーでこじって剥がして折り取る。
 無事終了で抜けてくれてホッとしたのは良いんだけど、どうも固着してたのハンドルのネジ部とギアの芯とじゃなくてハンドルのネジの所と本体側の金具が斜めにかじってたかなにかだったようで、金具外したらハンドルのネジはスルスルッと芯から外れてきた。
 うーんこんなしょうもない固着でギアとハンドルが一組死んだのかと思うとなんか悔しくムカつく。

 ともあれ、これで全バラし完了することができて、入手したハンドルノブは黒いので元の白いのと付け替えて、ギアはついでにローター軸のも新品に交換しようと思ったら、微妙に高さが合わずにローターが締まって止まってしまう。ワッシャーの厚さか枚数の調整必要な感じだったけどめんどくさいので予備に保管することにしてローター軸のギアは元のをそのまま使うことにした。
 グリスグッチャリ内部はもちろん、本体表面にも腐食が見られる箇所を中心に塗り込んでおいた。これで当面腐食は止められるだろう。

 これにて無事復活。たまたま中古の銀色のスプールもネットで見つけて確保。
 結局、本体10200円、スプール3000円、部品はハンドル軸のギア10.30ドルとハンドル18ドルで3000円がとこ、加えて金鋸2000円で計約18000円なり。他にも予備部品買ってるので実際にはそれ以上で、未使用に近い箱入り個体が買えそうな値段になってるけど、いいんです。本人納得してれば金額なんてどうでもよしこさん。苦労した分愛着がわくってなもんなんです。
 とりあえず、これまでにネットオークションで手に入れたリールの中で、コイツがナマジ的に一番価値ある1台だと思う。ようやくたどり着いた最終兵器的な1台。とりあえずは所有しているだけで満足だけど、そのうち使ってみよう。PENNは実用機だからナ。


 というのと同時並行で、実はもう一台ぶっ壊している。720のギア割った時点で、買って分解清掃せずに放置してあった大森製作所ダイヤモンド「タックル5No.2」も、グリスシーリングしておかないと固着やら腐食やらが進んでしまうだろうから、一回手を入れておこうと意を決して分解清掃したら壊した。短期間に2機壊したのはだいぶペコッと心が凹んだ。マイコンNo.6も数えると買ったリール使う前に壊したのは3台目である。
 もともと、タックル5No.2とタックルNo.2は左ハンドル用のネジが付いてないのを買ってしまい、箱入りで左ハンドル用ネジ付きのを探して買い直してあった個体。

 なので内部構造は把握済みで、すぐ使うでもなしで放置してあった。
 回転が悪くてあきらかにベアリングが錆びてる。他は特に悪くないようなんだけど、固着しているとまたねじ切ってしまいかねないので、CRC666をぶっかけて一番寝かせて浸透させてから分解清掃した。
 にもかかわらず、ベールアームにラインローラを固定する円錐形のナットを外そうとして、ちょっと回った感触があったのでCRC吹きつつちょっとずつ回して戻してしながら力をかけたらメキョッと折れた。
 これ、これだけ慎重にやって折れるんならどうやっても折れるはずで、どうしたらよかったのか正直わからない。大森はネジのゆるみ止めの接着剤が強かった時期があったというのを目にした気がするけど、その時代のだったのだろうか?
 安く手に入るリールでかつタックルとマイクロセブン(アウトスプール)ともベール周りは共通なので、安い出物を待って確保すれば復活させることはできるんだけど、その場合、結局また1台使えないリールを作ってしまうわけで、ベール回り以外死んでますっていう都合のいい壊れ方のジャンクが出てこない限り自分的にはスッキリしない。
 折れた部分のラインローラーの軸に穴掘って雌ネジに加工してっていうのをどっかネジ加工してくれる業者でやってくれないだろうか?1本からの対応ってやってくれるにしても手間考えたら多分5千円から1万円ぐらいはするんだろうけど、これも金額の話じゃなくて3400円で買ったリール5千円かけて直しても、それで自分の気持ちがスッキリすればいいじゃないかという気がする。
 気がするんだけど、そこまでする必要性ってあんのかよ?って気もやっぱりするから、1台もらってもらったダイキリさんにもう一台、スペアスプールと部品の確保用に進呈するのがスッキリするし、リールも生きるのかなと思わなくもない。そもそもタックル5はも一つ下の大きさのNo.1が調整済み使用可能な状態でぶっちゃけNo.2はなくても良いッちゃ良い。
 でも、往生際悪くもうちょっと悩んでみたい。タックル5、評価は高くないけど単純な中に初期大森のしっかりとした作りが味わえる隠れた名作だけに簡単には割り切れない。

 2台続けてぶっ壊して、改めてPENNの部品供給体制のありがたさを感じたところである。40年から昔のリールの部品が、その後モデルチェンジ何度かした最後の黒金のZとも共通だったからというのはあるにしても、それも含めていまだに部品が手に入るという、永く使う釣り人の味方でありつづける姿勢。他には丸ABUが近いかもしれないけど、いずれにせよ大量消費文明の現代において希有な存在ではないだろうか。
 オレは一生PENNに愛を捧げることをここに誓う。でも大森ダイヤモンドに浮気はする。
 寛一お宮の昔から、浮気の原因は”ダイヤモンドに目がくらむ”と相場が決まってまさぁね。

8 件のコメント:

  1. お久しぶりです。横浜のハマサです。
    あの時代のリールが、完全に使えるって
    素晴らしいですね🎵
    私は、国内販売がない機種がいつも
    気になっています。

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    1.  まったくです。素晴らしいです。

       日本製のリールで国内販売あっても輸出仕様の方が簡素で実用的だったりして、どんだけ日本市場ってゴテゴテといらん機能がないと売れないのかって感じます。
       遊びの道具だから、買う人間が良ければどうでも良いって言えば良いんだけど、そんなモンがなくても釣りぐらいできるってのはしつこく書いておきたいです。

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  2. 720/722が相場下がってる理由、ワンタッチスプールがない、716/714より少し重いから渓流や管釣りやる人に不評なのが原因かと思います。

    左投げ右巻きじゃなかったら私もミッチェル止めて小型700系で揃えてますし

    それから最近ナマズ釣りに集中していてニゴイにもちょっかい出そうとしていますがナマジさんのスキル、非常に役立ってて助かります。


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    1.  確かにマス釣るのに5フート台の竿に付けるには大きいですよね。
       シーバスやらバスに使うにはちょうど良い大きさだと思いますが、バス釣りで古い道具好きなら両軸つかうだろうし、シーバスはなぜか古い道具って使う人少ない印象ですよね。
       最新の高性能な道具を使えばシーバス釣れるってんなら苦労しないですけど。

       お役に立てているのなら幸いです。

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  3. こんばんは。
    720……最高にイカしたデザインのリールですね。

    確かにこれに合わせられる竿はそうそうなさそうで。
    パッと思い浮かぶ実用的な青いイメージの竿だとちょっと色が濃すぎですがダイコーのプレミアブロスとかテンリュウのスパイクくらいでしょうか?
    最近はPFJが現行でABU Classicsなんて青い竿を出してますがベイトしか無いみたいですし……

    自分も722Zを所有してるんで、ダイヤモンドからPENNに浮気したくなりました。

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    1.  プレミヤブロスは振り出しの9フィートが我が家にも2本あるので候補ですね。
       まあ、最終的には使ってる竿のラッピングスレッドと飾り巻きを空色にまき直してしまうとかでも良いかなと思ってますが、しばらく茶色が現役のうちはたまに眺めてクルクルしておくかなという感じです。

       720/722はPENNにあるまじき小洒落たリールですよね。たまに使ってやっください。

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  4. ナマジさん、「マイクロ7-C2」 某オークションに出てるではないですか?(笑)

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    1. もちろん現在最高額で入札中です。
      今んところ入札私一人だけでこのままいけば良いんですけど。

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