2019年6月23日日曜日
ドラグについて大げさなことを謳ってるリールは信用しなくて良い(当社比)
常々書いてきているように、ドラグなんてのは40年前のリールに既にいまと遜色ないような性能のものが搭載されていたぐらいで、ハッキリ言って画期的な性能を喧伝しているようなリールがあったら疑ってかかった方が良い。
基本的にドラグという機構は、回ろうとするスプールと一緒に回るワッシャー(一番底ならスプールそのものでも良い)と回らない主軸に固定されたワッシャーの間にドラグパッドを挟んで適度に摩擦抵抗を発生させながら滑らせるという仕組みである。
日本の釣り人は”日本製リールドラグ暗黒時代”が長かったので知らなかったから、急に進歩した技術が出てきたように感じるのか妙にありがたがってる節があるけど、あんなもんはドラグパッドの材質を適度に滑りが良くて調整幅に繋がる弾性があるものを選んでやることと、主流の3階建て方式にするか、パッド1枚で済ますかの選択とかで、表面積と直径を適切に稼いで安定した能力を発揮するようにどう設計してやるってだけの話である。
ほかにも主軸が太いとスプールの傾きが押さえられるとか接する面積が増えるとかで安定性に寄与するのかもとかはあるけど、ドラグにボールベアリングはあきらかにベアリングの使いどころを間違っている。摩擦を安定的に発生させて作用するのがドラグであり、その時に発生している摩擦力に比較して極めて小さい摩擦力で回ってしまうベアリング入れてどうする。安定は必要だけど低摩擦性は全く必要ない機構のハズである。この辺もっと物理詳しい人とかにガッチリ理論整然と「アホ認定」していただきたいものだ。オレが分かってないアホなのか?
ただ、そういう基本があった中で、リールの性格や使う状況に応じてどういうドラグを選ぶべきか、適切な選択ってのはあるように感じてきていて、ワシもドラグがやっと分かってきて面白くなってきたので、色々いじって楽しんでるので、そのあたりのドラグネタで、ドラグネタ自体は以前も書いたんだけど、それでもしつこくいってみよう。
ドラグをパッド1枚にするか3階建てにするかは、現在主流が3階建て方式なのでそっちの方が優れていると思われているのかもしれないけど、前回ドラグネタ書いたときにPENN9500SSのスプール裏面の土星の輪っか型ドラグやらティボーのコルク1枚ドラグの優秀さを紹介したように、1枚でも直径大きくして表面積稼いであると良いドラグになってたりする。直径が大きいとその分回転したときに長い距離で摩擦を発生させるので摩擦を発生させて機能するドラグとして利点が生じているんだと思う。
PENNスピンフィッシャーの小型の機種もドラグパッド1枚方式のが多くて、シーバスで愛用の4400ssや430ssg最近お気に入りの714Zも1枚方式である。
ただ、これが714Zはデッカいテフロンのドラグパッドで、テフロンのドラグパッド自体は大森ダイヤモンドでもお馴染みなのだけど、1枚方式は初めてだった。
これが、色々調べると普通はグリス無しで”乾式”で使うんだけど、乾式で使ってると摩擦で削れてしまうことがあるという情報もあり、そりゃまずいなとごく薄くドラググリス塗って使ってみたら割と良い塩梅で、これなら大丈夫だろうと調子に乗ってネッチョリと多めにドラググリス塗ったところ、思いっきり安定性がなくなって、止まるときは思いっきり止まるけど、ユルくしていくと全然止まらなくなり欲しいドラグ値に調整できなくなってしまった。
ドラググリスの粘性って思いのほかドラグの効きというか調整幅に影響してきて、これまで使ってた緩めのモリブデングリスより、今使ってる比較的粘っこいCAL'sのドラググリスはあきらかにあまり締まってない早くからドラグが効き始めて、普通の3階建て方式のドラグについては調整幅が広くなった。グリスの粘性がドラグパッドが回るのにブレーキに働いてドラグ表面とワッシャーの摩擦以外のブレーキ力として補助的に効いている感じである。
その粘性が、そもそもテフロン素材の1枚パットの場合、表面が滑りやすいことを利用して良い塩梅にブレーキ掛けてたのに、表面積が大きい1枚型ゆえにテフロン本来より滑らずネッチョリと粘るようになって、このクラスのリールで出したいドラグ値が出にくくなってしまったのではないかと考えた。
グリス拭き取って”乾式”で使えば良いんだろうけど、ご近所はシーバスはともかくコイをかけるとドラグにかなり頼るやりとりになるので、そういうのを想定していない小型リールのドラグパッドのままでは”削れる”のが不安になってきた。
ということで、幸い手に入らなくなってる714Z用のテフロンドラグパッドの代わりに4400ss用のカーボンシートのドラグパッドが使えるとのことなので、交換して様子を見てみた。
当たり前だけど、これまで使ってた4400ssと同様に良い塩梅のドラグになって、カーボンのパッドとCAL'sのドラググリスは相性良く、調整幅も申し分ない。
3階建てのパッドの場合、テフロンにCAL'sのドラググリスでも違和感なかったんだけどなかなか微妙なモノである。
お次に、最近いじったドラグで驚いたのが前回もちょっと触れたけど、ポスカ1のドラグ。2枚が写真のような薄緑と白の混じったパッドなんだけど、メチャクチャドラグ値が上げられる。ラインが全く出ていかないいわゆる”フルドラグ”が余裕でできてしまう。石綿代替品とかいうやつだと思うけど手触りザラザラでいかにも摩擦力強そうな素材。スプールの座面に乗っている赤い繊維質のワッシャーもざらついてるけどそれ以上。
ただ、逆にユルいドラグ値を安定してかけられない感じだったので、間に薄いテフロンパッドを噛ませて実質殺して小型リールに必要な適度なドラグ設定が可能な調整幅を確保しておいた。
で、もいっちょちょっと面白かったのが、ハズレ引いたアルファ030のドラグ。フェルトか何かの柔らかい素材に樹脂がかけてある表面のドラグパッドなんだけど、2枚が完全に耳付きワッシャーに固着してしまっている。
実はこの状態でも問題なくドラグ作動していて、固着していない面がワッシャーと滑ってるので機能するのである。無理矢理剥がすとボロボロになりそうだったので、グリスアップだけしてそのまままたぶち込んでおいた。
この方式で、耳付きワッシャーの両面に滑る素材の薄いシートを貼り付ければドラグの高さが低くできて良いんじゃなかろうか?とか考えてたら、最近出たTAKE先生のリール本読んでたら、本職の技術者はさらに突っ込んでいて、耳付きのワッシャー自体を耐久性もたせたドラグパッドの素材で作って、ドラグパッド、耳付きワッシャー、ドラグパッドの3枚を耳付きドラグパッド1枚で代替、という設計のリールが紹介されていた。大型リールではちょっと強度面が心配だけど、小型リールなら問題ないだろうし軽量化と小型化に貢献しそうでナルホドという感じ。
基本単純な機構で、もう新しい工夫とか出てこないように思うけど、こういう意表を突く改良点とか出てくるのをみると、まだまだ革新的技術が出る余地はあるのかもしれない。けど今のところ40年前のドラグからそれほどは変わってない。
てな感じで、ドラグについて最近学習したことをまとめると、
一.ドラググリスの粘性はドラグの効きと調整幅に影響する。粘度が高いグリスにすると締めがユルい段階から効き始め調整幅は広がる。ただ、テフロンの表面積広い1枚もののドラグパッドとはテフロンの表面の滑らかさを消してしまうので相性悪い。
二.ドラグパッドの素材の性質がドラグの性能に大きく影響する(当たり前)。表面がざらついて摩擦が大きいモノほど高いドラグ値がかけられる。多分順番は石綿代替品、赤い繊維性、カーボンシート、テフロンの順でフェルトはカーボンと同じくらいで柔らかい分調整幅が大きくて耐久性とかが必要とされない小型リールに好適。
という感じだと思う、で以前から気になってたのがスピンフィッシャーの3階建てドラグの場合、パッドが上からカーボン、カーボン、テフロンなんだけど、ひょっとしてこれ、同じ枚数でもその構成を調整することで効かせるドラグ値変えられるんじゃないか?ということ。
そのへんをついでなので750SSで試してみた。予想では全部カーボンにするといつもよりドラグ値上げられるンじゃないか?というのが主な関心事項。
いつもはドラグノブ締めていってギュッと止まるあたりで7キロ前後という認識で、そこからさらに締めることもできるけどあまり安定しなくて、ギュッと止まるあたりが調整しやすい得意なドラグ値だと思っている。なのでギュッと止まるあたりまで締めて秤でその時のドラグ値を3回計ってみた。
結果は驚くほどに綺麗に予想通りで嬉しくなる。やっぱりドラグって単純で理屈どおりの機構である。わけの分からん不思議なフォースとかを発生させたりはしない。
全部カーボンだと3回計って10.4、8.9、10.3キロと10キロぐらいのドラグ値。実際にはそこまで締めるとワシャ竿支えきれんのでこのドラグパッド構成にはしないけど、スピンフィッシャーのドラグをもうちょっと締めたいと思ってるマッチョな貴兄には全部カーボンをお薦めする。10キロぐらいなら余裕でリールはもちます。スプール握りしめて立木と引っ張り合いして確認済み。
以下、通常の1枚テフロンが7.8、7.5、7.8で8キロ弱、実際には竿の曲がりとか見てもうちょっと緩めて6~7キロで使ってた。
テフロン2枚だと6.4,6.7,6.6、全部テフロンだと5.0、5.2,5.4と順次ユルくなっていきましたとさ。
ということでもっとドラグ値上げたいならばドラグパッドに石綿代替品か赤い繊維質のを混ぜるとかで、もちろんリールの耐破壊強度を超えないようには考えなきゃだけど、ドラグ値なんて上げられそうなんである。
カタログ数値でドラグ最大30キロとかのスピニングリールがあっても、30キロのドラグ値をスピニングタックルでかける場面って想像できなくて、そんな数値はカタログ上のこけおどしでしかないということである。
実際に使うドラグ値を想定してその付近の調整幅や作動の安定性があるかどうかってのが重要で、そこはカタログ見ててもわからんから魚掛けてみるか、車とかにラインの先結んで走ってもらうとかして確かめていくしかないんだと思う。
ちなみにこの実験ではグリスは以前使ってたモリブデングリス、ドラグノブは純正のはドラグワッシャーを押さえる部分が樹脂製で、長距離走られると熱で溶けるという噂があるので、念のため押さえるところが真鍮製の第4世代750ssmのドラグノブにしてあるのが細かい気遣い。グリスは次回出番がめぐってきたらCAL’sに塗り直しの予定。
スピニングリールにおいて10キロ程度までドラグが締められたら充分で、耐熱性含めた耐久性を考えると、大型リールではカーボンのパッドが今のところ最良で、小型リールでは広い調整幅とか扱いやすさでフェルトが選ばれてるんだろう。テフロンは滑りが良いので台座とかのワッシャーに使うのにもドラグに与える影響が少なくて良いだろうし、ドラグパッドとしても経年変化とかが少ないし良い素材。
石綿代替品は”フルドラグ”が必要な特殊な釣りにおいては使うのかも知れないけど、正直リールか体を壊しそうで怖いぐらい止まる。
赤い繊維質のワッシャーの素材はそこまで極端じゃなく、リールにはよく使われてきた素材なので耐久性やらにも問題無さそうだしドラグ値上げるならむしろこっちを試す方が危なくないかもしれん。
写真は左から、ポスカ1の石綿代替品2枚と赤い繊維質の1枚、750SSのカーボン2枚とテフロン1枚、マイクロセブンC1のテフロン3枚、714Zのテフロン1枚、タックル5No.1のドラググリスでグッチャリ濡れたフェルト3枚でございます。
というようなことをお勉強して、ドラグは単純な機構であり、説明できないような不思議な力を発揮するようなモノはないと改めて確信しているので、皆様釣具屋にはいつも言ってるように適度に騙されておいて騙されすぎないようにしましょう。というお話でした。
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最近ミッチェル300系のドラグワッシャー交換して再調整しましたがシンプルな構成でこのサイズまでマルチディスクになってないし、
返信削除それよりかなり小さい308系と殆ど同じサイズの小さいワッシャーしか入っていないしペンより頼りない感じですがコンデイションが良ければ、
都市部の運河程度なら差し支えが出る感じではないです。
赤い繊維系のあれ、ミッチェルのは経年劣化から駄目になってましたからスピンフィッシャーのファイバーワッシャーに交換、ドラググリス塗ったらかなり良い感じになりました。
スピンフィッシャーのあのワッシャーは好感触ですがある程度のサイズの魚を調子に乗ってバンバン釣ってると確実に薄くなってきて巻き形状に影響するから定期交換の対象です。
440ssまでは神経質になる必要はないですけど450ss系以上になると無視出来ない問題です。
おはようございます
削除ぶっちゃけ近所でシーバス釣るぐらいなら、そんなにドラグに求められる性能って厳しくないですよね。最悪ドラグ効きが悪かったら逆転スイッチ切ってラインくれてやるってので昔の釣り人は対処してたぐらいだし。それも含めて「なにをご大層に」って思ってしまいます。
赤い繊維系のが経年劣化するのは知りませんでした。参考になります。
PENNの良いところはパーツが手に入れやすいことで、自分の場合メインで使ってる4400ssとかだと5年ぐらいでペッタンコになってきて、カーボンシートの表面が凸凹してない感じになって調整幅も狭くなってくるので交換してます。その年数から逆算して80まで生きる(釣る)つもりでドラグパッドは在庫してます。最近使ってない4500サイズ以上のドラグパッドとかとても死ぬまでに使い切れそうにないです。アホですね。
へたってきて巻き形状に影響してくるのは、ドラグパッドよりも、スプール座面のテフロンのパッドが摩耗で薄くなってくるのとスプール裏自体が若干削れてくるのが大きいと思っています。私はスプール座面のワッシャー交換か追加で調整してます。ご参考まで。
あと、スプール方面の問題の他にベールアームの傾きが変わってくることによる影響も巻き形状に加えてラインローラー角度にも影響してくるので対策が必要だと感じてたんですが、最近一つ解決法を実践してみたのでそのうち書こうと思っています。
こんにちは。カーボンシートを買ってドラグワッシャーを自作したいのですが、どういったシートが適しているのか解らずに調べています。
返信削除匿名さん こんばんは
削除カーボンシートってドラグ作るには売ってる単位が多すぎるのと、樹脂等で固めてない素のシートはおそらくドラグパッドとして使うとばらけてしまうので不向きだと思います。使うなら「カーボンファイバープレート」となっている薄い板状に加工してあるものだと思いますが、ドラグに求められる性質があるか不明でどの製品が良いのか一から試す必要があるとおもいます。
なので、現実的には各メーカーの修理用部品として取り寄せ可能なドラグパッドでサイズのやや大きいモノを買って必要な大きさに切ったり削ったりして合わせるとかが妥当な選択肢だと思います。
私はメーカー品ではなく、中国製の安いのとかがアマゾンとかの通販サイトで「ドラグワッシャー」で検索するとでてくるのでそれを利用しました。
ご参考まで。
大変参考になるアドバイスありがとうございます。なるべく安く済ませたいので、ご教授頂いた品を探してみます。メーカー品は本当に高いですね。ビックリします。
返信削除私のようなジーサンは「昔はドラグパッドなんて入ってないリール売りつけてたくせに生意気な!」と思ってしまいます。
削除自作楽しんでみてください。