2018年12月27日木曜日

安物のダイヤモンド


 706Zに端を発し、トゥルーテンパー727から感染発症したスピニングリール熱のおかげで、この秋から冬にかけての間ずいぶん楽しませてもらった気がする。
 とにかくスピニングリールが欲しい、触りたい、分解したい、使いたい、というやっかいな症状は落ち着いてきている。このまま年内いっぱいで峠を越して生還したいモノだ。
 インスプールのスピニングも面白そうだなぐらいの軽い気持ちで、歩を進めたら、思わぬ深い沼にはまった形だけど、おかげでスピニングリールについて再度学んで考える機会を得ることができた。
 興味深かったのは、自分が使ってきたスピニングリール達を改めて眺めてみたら、その場その場で流されてたまたま手にしたリール達だと思っていたけど、結構、そのリールを手にしたのは必然の出会いだったのかもしれないということ。
 ろくなドラグも搭載されていないけど安くて少年の味方だったダイワに始まり、流行のリアドラグも使いつつ、日本で作られていた晩年の頃の大森ダイヤモンドを選んでいるのも、当時費用対効果を考えれば貧乏学生には当然の選択だったように思う。
 海のルアーの流行に乗っかって、往時は名前書いておかないとシイラ船の竿立てのところで迷子になりそうなぐらいの標準機だったPENN5500ssでPENN初体験。
 その後、小型機種について大森キャリアーが使用不能になった後の後継機選びではウィスカーSSトーナメント600とスピンフィッシャー4300ss(+430ss)で迷ったけど僅差でスピンフィッシャー勝利。その後のおそらく今後も死ぬまで続くだろうスピンフィッシャー偏愛体制に繋がっていく。でも革命機SSトーナメントを選んでいても米国では兄弟機が00年代半ばまで売っていて、この2機種に絞られたのも当時種々悩んだんだろうけどこれまた必然だったんだろうなと思う。
 大型機種で丈夫なリョービメタロイヤルに一票入れているのも、ワシまんざらPENNを盲目的に信仰してるだけってわけでもなかったんだなという気がした。よい子のNAVIも買ってるし。
 でも、それ以降で次にPENN以外のスピニング買ったのが40年前のインスプールスピニングであるトゥルーテンパーだっていうのが、なんといっていいのか。ぶっちゃけ買いたくなるリールがまったく出てこなかったということだと思う。
 耐久性やら手入れのしやすさ部品の入手しやすさなんかを除いて、小型スピニングであれば、15年以上前に買ったワゴン売りのNAVI程度でも一般的な釣り人には4桁スピンフィッシャーよりは使いやすいし、丈夫さも実用上問題ないことぐらいは承知している。定価で3千円ぐらいから1万円台ぐらいの日本製の実用機を買って、モデルチェンジのサイクルにでもあわせて古いのは売っぱらって買い換えていけば、故障もまず出ないだろうし費用対効果も高くて賢い方法なのだろうと思う。道具的にはそれで問題なく快適に釣れるはずだ。
 それでもその快適さよりも、自分のような同じ道具を愛着持って使い続けることに執着する人間が、それを放棄して手を出したくなるようなリールなど出てこなかったということである。
 自分がかたくなにPENNにこだわっていて、凄く良い製品が既に出ているのに不便を強いられているのに気付いていないんじゃないかという恐れは心の端にあった。でも、40年前のインスプールのリールでも投げて巻くのに問題ない性能は既に備えていて、シーバス釣るのに必要なぐらいの機能なら問題なく果たしてくれることを知って、さらには今に繋がる90年代後半のシマノのそれなりの高級機も別に完璧でも何でもなくて、だったら今現時点の良くできたリールも所詮今流行ってるだけのモノでしかなく、その程度の微差を産むためにどれだけの試行錯誤や時間や熱量やその他諸々が費やされたのか、そこに敬意を払う必要は認めるにしても、別に流行を追っかけて慣れ親しんだ機種やその管理体制を捨てる程の利点なんてなくて、アタイ一生PENNについていくノ、と改めて思うのであった。

 思うんだけど、逆にインスプールの単純なややこしくないスピニングに触発されて、本当にスピニングリールに必要とされる機能って突き詰めれば何なのか?あるいは技術的に習熟して補うことによって、どこまで単純な機能のスピニングで釣りを楽しむことができるのかということには興味が出てきた。
 その疑問に一般的な解答を得ることはおそらく不可能だろう。個々人の技量や好み考え方によってスピニングリールに求めるモノは千差万別だろうから「完璧なスピニングリール」とかはあり得ない。
 ただ私個人の中ではそういう1台が”オレがそう思うんならそうなんだろう、オレん中ではな”的にあり得るのかもしれない。特に、とにかくぶっ壊れないことが優先になる大型スピニングじゃなくて、余裕を持って遊ぶ余地のある小型スピニングにおいては、別に第3世代と第4世代のスピンフィッシャーで困ってるわけじゃないけど、もっと自分の釣りに最適化したリールとか逆にもっと削れる機能を取っ払って単純化して技量で使いこなすようなリールとか、そういうのを探っていくのもまた楽しいんじゃないかと思う今日この頃。
 後者の単純化の方向では、多分インスプールでベールアームなしというのが当面の目指すところで、来年からスピンフィッシャー714Zを使いながらその辺意識してインスプールのリールについて習熟していこうと思っている。
 前者の自分の釣りに最適化したリールについては、今一方針が良く分からんかった。今使ってるリールで多少不具合あることもあるけど、そんなもんどってことなくて特段機能的にはこれといった具体的要望があるわけじゃないのに最適化っていってもな?というところだけど、根本的なところで自分がリールにナニを求めているかとつらつら考えていくと、酷い不具合が生じないのは前提として、楽しく面白く気分良く釣りができたら重畳じゃ、っていうのはやっぱりあると思う。
 じゃあナニが楽しく面白く気分良くなることかって考えたら、まずは魚が釣れることだけど、それは今のリールで自分の欲する程度なら充分できてるはず。そう考えると自分の天邪鬼で底意地の悪い性格からいって、人様の思いつかないことができたり、裏をかけたり、素人に理解不能で馬鹿にされるけど玄人衆が「そんな手があったか!」と舌を巻くようなことができれば、心の中でグフフと下卑た笑いを禁じ得ないだろう。
 ということで普通スピニングリールに求められるだろう性能や要素のなるべく逆を行くような天邪鬼なリールを目指せば良いんじゃなかろうか。
 極端にいえば、性能が悪くてすぐぶっ壊れて見た目が格好悪い安っぽいリールである。
 さすがに天邪鬼を自認する私でもそれをそのまま体現したリールで釣りを楽しめる自信はない。
 でも、今時の高級リール様の宣伝文句に踊る「高強度軽量な金属素材」「スムーズで遊びのない逆転防止」「滑らかな回転を生む沢山のベアリング」「精度が高く効率の良いギア」「何かわけわからん横文字の機構」「ご大層なデザイン」「溢れる高級感」あたりなら、あえて「逆に考えるんだ」っていう遊びはできるように思う。ンなもんなくても魚ぐらい釣れらぁ。
 というか、最初の3つに関してなら逆の方が良いんじゃないかと割と真面目に思って書いてきているのは、このブログの読者の皆様ご存じのとおり。

 例えば自分の好きな小型ルアー用スピニングで能力的に優れている3台を選ぶとすれば、4300ss、キャリアーNo.1、ウィスカーSSトーナメント600がベスト3になるだろう。こいつらみんな本体樹脂製でラチェット式逆転防止、ベアリングはラインローラーにも入ってなくて3個か2個と少なめである。
 今の主力機である430ssgは、油が切れたりするとたまに不調になる一方通行ベアリング方式の遊びのない逆転防止機構と錆びそうなラインローラーのベアリングが数少ない気に入らない点であるってぐらい(でも小型リールなら突然逆転しても大事には至らないし、ベアリング錆びたら交換すりゃ済むしなんなら樹脂製ブッシュの大きさあうの探してきて入れてもいいので気にするほどでもないし、理屈じゃないところで好きなので良いんである。)。
 樹脂製の本体とか塩水で使っても絶対錆びないっていうのは、金属では金でも使わない限り塩の腐食から完全に逃れるのは難しいので、そんな大げさな強度が必要されるってわけじゃない小型スピニングでは良い選択だと思っている。
 逆転防止機構については前回書いたとおりでラチェット式とかの方がどう考えても良い。ベアリングについても、なくて良いところに値が張って錆びる部品入れる必要性なんてない。断言するけどない。ローターの所に1個が必須で、後はハンドル軸に1個入れるか2個入れるか、それともブッシュとかで必要な耐久性を確保するかどうかお好きなようにという感じだと思う。

 その3つの要素以外も、ギアは耐久性と精度は良い方が良いんだろうけど、別に普通でいいって話で小型リールならそんなに重くならないし、巻き上げ効率も気にする程じゃないしで、普通でいいよ普通で。1シーズン持たずにギアの歯が飛ぶような粗悪品じゃなきゃいいって程度だと思う。
 何かわけの分からん作った側ですら日本語で必要性や客観的な優位性を説明できない機構なんて故障の原因が増えるだけだからいらんのです。
 デザインはウームという感じ。見た目は重要だけど、コレばっかりは好みもあるからどうともいえん。使ってるうちに最初嫌いでもだんだん惚れてく、なんてツンデレ的事例は良くあることだからどんなのが良いとは言い切れないけど、明らかに減点したくなるのは、なんか見たことあるあるような流行の型に似せたような見た目。
 高級感とか上質感とか、正直ケッて思ってる。あんまりピカピカしてると恥ずかしくって使えねぇって。
 ていう風に考えていくと、今時の高級リール様の逆を行くような天邪鬼リールは充分実現しそうというか、実在しただろう。
 たぶん、一般的な釣り人の感覚で今一番古くさく目に映るあたりの時代のリールがそれなんじゃなかろうか。
 多分今のスピニングリールの軽量金属製高級路線ってダイワのトーナメントEXやシマノのステラあたりからのハズだから、それから金属製が主流になる以前の樹脂製本体の行くところまで行ったあたりの”樹脂製スピニング爛熟期”の80年代終盤から90年代前半あたりに、腐りかけの果実のようなお汁タップリの美味しいスピニングがひっそり実っていたに違いない。

 ということで例によってネットオークションで色々物色して、結構いい加減にホイホイと、3台まとめて買えば送料も安くていいやと聞いたこともないような安パッチいスピニングを落札。一応大森とダイワなら安物でもそれほどアホなリールじゃないだろうと選ぶあたりは、アバンギャルドな無頼派を気取っても結構根元では小心者で保守的なナマジであった。なかなか完全にブランドイメージとかまで払拭してまっさらな気持ちで選ぶってのは難しい。
                   
 でもって1台目は、大森製作所のダイヤモンド「アクションM」という樹脂製の多分ワゴン売りされてたような安パッチい1台。結構ボロくてネジとかも錆びてる、中古で1000円の品。80年代終わり頃とかの製造だとおもうけど当時流行のロングスプールで四角いお尻の造形が、今見ると中途半端に古くさくてかつどこか大森らしい垢抜けない感じもあって今回の趣旨にぴったりで実に良い。
 大森製作所のリールは、日本で作られてた最後の頃のと会社潰れて釣り具量販店J屋グループに吸収された後の時代の「ロングマイコン」というワゴン売りの安リール以外の何物でもないどうにも評価もしようがない代物を購入していたけど、その間の時代、大森製作所最晩年には生産拠点を韓国に移した韓国大森製のリールが存在していたことは知っていたけど手にしたことはなかった。その頃のリールのようである。
 この頃の韓国大森のリールの評判は最悪といって良い。TAKE先生はじめ往年の大森ファンからは総スカンで酷評の嵐である。曰く「大手の真似に成り下がった」「大森の真面目さを捨てた単なる安物」「これは大森ファンの愛したダイヤモンドリールじゃない」等々。
 普通ならそんな酷評を目にしたら買わないんだろうけど、人がダメって言えば言うほど逆らいたくなるのが天邪鬼の困ったところで、地雷踏むの覚悟でいきなり2台も買ってみたところである。
 回転性能だの飛距離だのにこだわるような”うるさ方”が仰ってることなんて自分にとってはあてにならんことが多いし、腐っても大森製作所だし良いところ見つけて楽しめるだろう、ぐらいに考えた。
 さて、手元に来たのをまずは分解清掃だなとバラしていくと、まず本体蓋を留めているネジとかが錆びている時点で全体のデキを察して然るべきだったかも知れないけど、なかなかの安物ッぷりを発揮。
 ドラグは安物なりに苦労の跡が見て取れて味わい深いものが入っている。一番底に皿のような湾曲した金属ワッシャー2枚を向かい合わせて入れてあり、コレが普通ドラグノブに入っているバネの代わりに弾力を備えてて調整幅を稼いでいるんだろう。おそらくABUアンバサダーのハンドル軸に同じようなワッシャーが入っている所からの着想だと思う。おかげでドラグノブが単純な造りで済んでいる。ドラグパッドも1階建て方式だけどテフロンのドラグパッドが入っていてそれなりにドラグとして機能している。ただ、耳付きワッシャーがこれでもかというぐらいに錆びててテフロンと固着していたのはいただけない。写真のどれがテフロンのドラグパッドか分からないと思うけど、一番黒いのが錆がこびり付いたドラグパッドである。
 パカッと本体蓋を開けるとハンドル軸のギアの上には海水侵入したっぽい水玉模様が見て取れる。ハンドル軸で重要なギア側の軸受けはベアリングじゃなくて樹脂製のブッシュかなと思ったら、芯の部分に真鍮っぽい金属のリングが入ってたけどやや頼りないか?ギアは軸だけ堅い金属を鋳込んでた往年の大森の設計とは異なり、安いダイワ製とかと同じくハンドルから伸びる6角形の軸を挿入する方式。
 平行巻機構はさすがにロングスプールなのでクランク方式じゃ往復激しすぎちゃうので減速ギアのカム方式採用。逆転防止はローター軸のベアリング直上の歯に爪を掛ける往年の大森方式でこのリールの数少ない大森っぽいところ。
 ローター軸のギアはベアリングで受けているけど、ベアリングを穴に填めて上からネジ3個で押さえつけているというやっつけ具合。
 オイオイ大丈夫か?と心配になったというか、コリャダメだと思ったのが、本体側のハンドル軸を受けるのにベアリングは入ってるわけないにしても、ブッシュすら見当たらず樹脂製の本体でノーガード直受け。普通ベアリングがないと亜鉛鋳造(ダイキャスト)とかのギアの場合軸が削れていくらしく、だから往年の大森製作所は堅い金属を軸に鋳込んだ真面目な設計を採用してたって話だけど、さすがに本体樹脂の場合は本体削れるでしょ。耐久性とか大丈夫か?
 もちろん、ラインローラーにも樹脂製スリーブとか噛ませてなくて直受け。
 3台もスピニングリールが届いて楽しめるとウキウキだった心が、この時点でどんよりドヨドヨと曇ったのはご想像いただけるだろう。

 もう一台の大森製は、買う時点で多分表面のプリント変えただけの同型機だろうな、という感じだったダイヤモンド「タックルA SS」なので、同じのもう一台もあるのか・・・ハァ。と既に後悔先に立たずな感じになっているが、仕方ないのでバラしていく。ちなみに1500円と予算オーバーだけどまとめ買い送料分を言い訳に買った。新品で売られてたときの価格もそんなモンだろうけど割と美品なので目をつぶる。
 なぜか全くの同型ということではないようで、スプールが微妙に違っていて、替えスプールが手に入る算段すらご破算になりそうな感じ。よく見ると糸巻き量表示が違っててタックルAが2号150mに対しアクションMは2号80mとなっている。
 ローターと本体の大きさは一緒なので浅溝なのかなとスプール交換してみると、スプールの底の出っ張りの高さが違っているようでうまく高さがあわない。糸巻きの部分の幅自体はタックルAの方が若干狭いぐらいの微差で、ワッシャーとかで高さ調整してやれば替えスプールにするのはなんとかなるかもと若干の希望。

 どちらが先に作られたのか分からないけど、タックルAが後に作られたのだとしたら改良の跡が見て取れる。逆なら手抜きの跡であり少し悲しい。
 ドラグがテフロンのドラグパッド3枚の3階建て方式になっていて、ドラグは何の問題もないだろう。スプールの糸巻き部分の幅が若干狭くなって平行巻機構の上下動幅分キッチリ道糸が巻けるようになっているのもライントラブルの防止には効いてくれそう。ローターと本体はバラした結果多分一緒だったけど、スプールは明らかにこっちの方が良い。
 どうも他にも同じような型の「プロフィット」「POSCA」というのがあるようで、スペアスプール確保がてら大森でいう「SS」の大きさの見つけたら毒くわば皿までで入手してみるか。このあたりの大森スピニングについてはさすがにネットにも情報少なくて、何か知ってる人いたらタレコミ情報よろしくです。

 次に、ダイワの「スプリンターマックスST600」というのに取りかかる。
 コイツはどうにもならなかったら「スポーツラインST-600X」用にハンドルだけでも取れればいいやと1000円も出してゲット。
 フットの裏には「JAPAN」とだけあるけど、メイドインなのか企画設計なのかなんなんのか。昔愛用していた緑の救命胴衣に「国産」と表記されていて、そりゃどっかの国で作られたんは確かだろうけどさ、というトホホ感でウケを取る鉄板ネタだったのを懐かしく思い出したりした。
 このリールが、ダイワが生き残って釣り具界を牽引するまで成長した鋭さを彷彿とさせるモノで、なかなかに良い勉強させてもらいましたという感じ。
 同じようにワゴン売りで初心者やら普段釣りをしない客層に売っていただろう安物でも、生真面目な大森製作所が「スピニングリールにはきちんと作動するドラグが必要である」って考えてたんだろうってのが見て取れるのに対し、この頃のダイワは「安リール買う層はドラグなんて使わないでしょ」とばかりに、調整幅も滑らかさもクソもないワッシャー2枚を樹脂製スプールにハメ殺して、ある意味ダイワの安リールの伝統である”ドラグノブ=スプールを固定するためのツマミ”方式を樹脂製本体の時代になっても貫いているのである。平行巻機構もクランク式、ベアリングも1個でハンドル軸両側直接本体受けでブッシュすら噛ませてない。薄っすいワッシャーは多分ガタ調整かなにかで耐久性向上には役立ってないだろう。
 この消費者の求めるモノはなにかということに寄り添い、削れるモノは徹底的に削る姿勢が、弱肉強食の資本主義経済自由競争社会で生き残る強さかもしれないなと思わされた。資本主義って厳しいネ。
 と同時に、この手のリールを普段我々釣り人が使っているリールと単純比較するのは間違いだなとも気付かされた。多分新品でも千円台とかの箱にも入ってないようなリールで、夏休み海に行くから釣りでもするかと買ってみて2度と使わないとか、そういう客層が買う道具に、年間100日釣行とか当たり前の玄人衆が求めるような耐久性なんて求めても意味ないじゃん。だったらその分安くって、それなりにリールっぽい見た目なら上出来ってもんでしょ。
 今回の大森スピニング2台はそういう意味で、道具としてのデキとしては安ダイワより良かったけど、安リールとしての洗練度的には負けてるっていうのが、評価するとしたら一つの評価の仕方かもしれない。安ダイワはその辺エグいぐらいの領域にギリギリまで切り込んでる。多分今の安ダイワも今時の消費者はネットとかで要らん知識ばっか増やしてて耳年増だから、オモチャみたいなデキでは売れんと把握してるだろうから、エグいぐらいに良くできたモノを突っ込んできてるんだろうと想像に難くない。
 もし、韓国大森製スピニングの実力を知りたいなら、その時代の実用機であるタックルシルバーあたりを見てみないとなんとも言えないのかも知れない。
 ダイワやシマノが技術的にも力をつけて、リールとしてはどうなんだ?っていうような安リールも売りさばきながら大きくなっていった時代に、中小企業でしかなかった大森製作所が生き残りを賭けて真面目に経費削減のため生産拠点をまだ人件費も安かっただろう韓国に移して、らしくない安リールも作ったりして努力したけど、広告が今以上に効いた90年代初めとかにTVで番組持って宣伝して大量に売りさばけたダイワやシマノには勝てなかったっていうのは「大森が大森らしい真面目さを捨てたのが悪かった」って決めつけできるほど簡単な話じゃなかったんだと思う。正直真面目に良いものつくり続けてたって、宣伝文句にホイホイ踊らされる日本の釣り人を相手にしていたら遅かれ早かれ潰れてたと思う。かといって世界市場で勝ち抜くには、韓国やら台湾でもリールが造れるような時代にもなってきてたし、もう中小企業の市場戦略程度じゃどうにもならなくなっていくなかで、どっかに吸収されずに生き残れたとも思えない。ABUやらPENNでさえ世界的な企業統合の流れに飲まれて今やピュアフィッシング傘下の1ブランドである。死んだ子の年を数えても仕方あるまいて。タラは北の海だしレバは焼き肉屋である。
 ダイワ「スプリンターマックスST600」にはハラホロヒレハラという感じに正直毒気を抜かれた。タックルシルバー買おうとかいうやる気ももう正直なくなった。まあスピニングリールもそろそろお腹いっぱいだ。

 とはいえ、せっかく我が家に縁あってやってきたリール達。いじくって遊んで楽しんで可能なら使えるリールに改造してみたい。
 まずは、スプリンターマックスから行く。っていってもたいした技術があるわけじゃなし、ドラグをいじるぐらいが関の山である。
 とりあえずハメ殺しのドラグパッドを取り出さなければどうにもならないので、樹脂製スプールをカッターで削って、後刻填め直すときに抜け落ちにくいように対角線上に2カ所だけ削り残す。
 入っていたのは金属と滑りにくい赤い繊維のワッシャー2枚の構成で、ドラグとして機能していたのはむしろスプールの裏側の音出しの赤い樹脂製の爪で、クリックブレーキのフライリールのようなけたたましい逆転音を響かせつつバックラッシュが起こるような回転数上昇をドラグノブ緩めた場合には防いでいる。要するに滑らすか止めるかの2択しかないドラグである。
 この手のドラグの改良はスポーツラインSTで経験済みなので、余ってた中華製カーボンパッドを適当に切って、テフロン仕上げガラス繊維の自作バッドを乗っけて元からあった金属ワッシャーで押さえていっちょ上がり。ついでに抵抗が大きすぎる音出しも先を切って調整しておいた。
 6ポンドナイロン巻いてコイ釣って試したところ、調整幅が狭いのはいかんともしがたいけど、ちゃんとドラグとして機能するようにはなっていた。ただ切って調整した音だしの爪が最初は鳴ってたんだけどそのうち曲がって鳴らなくなってしまって、巻けてるんだかドラグ出てるんだかわからんようになって茂みに突っ込まれたりしたので、帰ってきてからペンチで摘まんで引き延ばして応急処置しておいた。曲がるのも計算して切るか、曲がりにくい素材を接着して補強すべきだったけどまあいいや。

 大森2台の方はとりあえずアクションMの方を使うことにして、アクションMの1階建てのドラグの調整幅はもうちょっとあれば良いのにな、とあれこれ試してみて、一番下にフェルトを敷いて調整幅を稼いで、耳付きの錆びた面にテフロン仕上げガラス繊維のパッドを敷いてやると大分改善した様に感じる。
 コイツはそこそこ”良いドラグ”になった気がするのでナイロン0.8号5LBというこれまで使ったこなかで最も細い道糸を巻いて、コイさんに引っ張り回してもらって試験したところ、まずまず良いドラグといって良い感じなんだけど、ちょっと滑り出しが引っかかり気味かなという感じだった。
 帰ってきて色々考えて、スプールが乗っている座面の赤い繊維製のワッシャーの滑りが悪いのが、直径は小さいけどテフロンとかの良く滑るドラグパッド使う際の低いドラグ値では余分な摩擦力を生じさせてドラグの挙動に効いてるのかもと、とりあえず例によってテフロン仕上げガラス繊維のワッシャーを敷いてみたら良くなったような感じがしたけど、いじってるうちにイマイチな感じになって安定しないなと思ったら、ガラス繊維の縦横に編んだ繊維がほつれたようになって切れてしまっている。
 714Zもスプールの高さを下げるため同じ位置に入れていて部屋での試験段階では問題なかったけど、ドラグパッドみたいな面積大きいのはほつれにくくて大丈夫そうでも、幅の狭いワッシャーとかは強度的に不安になってきたので「モノタロウ」で近いサイズのテフロンワッシャーの薄いのを買って穴の大きさ調整して交換しておいた。
 アクションMにも同様に座面には元のワッシャーの上に薄テフロンワッシャーを重ねておいた。良くなった気がする。
 ドラグも良くなったし、ギアや逆転防止などの機構自体は単純で故障しにくそうだし、ロングスプールで直径も大きいのでライントラブルも少なそう。回転バランスとかも問題ないし、樹脂製の小さいリールなので軽さも充分。防水なんて樹脂製なので金属部品だけグリスシーリングでいける。なかなか使いやすそうなリールなんだけど、いかんせん樹脂ボディーで直接ハンドル軸のギアを受けてるのは削れそうだし、ラインローラーも直受けなんだよな、耐久性はどうにも期待できないなと惜しがっていたら。またも頭に浮かぶお決まりの台詞。

「逆に考えるんだ」

 削れちゃってもいいんだと考えるんだ。
 ワシ別に機械屋でも何でもないので金属加工するような技術を持ってないので、リールのギアやらなにやらを直すような手段を持っていない。
 でも、樹脂ならハンドドリルで削れるし、接着剤も各種あるので、ある程度の単純な加工はできる。やったことないけど多分できる。削れるような強度なら削ってサイズの合うブッシュを探してくるなりブッシュ自体を近い大きさのから削り出すなりして加工してはめ込んで固定するとかできるんじゃないだろうか?ラインローラーは金属で受けてるけどライン噛むぐらい隙間できたらこれも薄いシートか何か突っ込むとか工夫はできるだろうって気がする。
 と思うと、この安っぽい紛れもない”ごみスピ”を使うのが楽しみになってきた。
 まああんまり無茶はさせる気はないけど、いざとなったらスズキでもコイでもあがる範囲の”細糸”でセイゴ釣って遊ぶのに使って、不具合出たらその都度工夫して直していき、直す度に強度が上がって良いリールに仕上がっていくなんていうのは面白いかも知れない。
 なにも遊びの釣りで、ガッチガチの高性能な最新鋭機やら人がうらやむような歴史的名機を使わなきゃならないって決まりなどない。ルアーでもB級ルアーの楽しみがあるように、リールでもちょうど時計の世界でやっすいデジタルの”チープカシオ”なんてのにもけっこう人気あったりするように、ちょっとダメ系の二流の安物を楽しむという遊び方があっても良いし、まあ実際にそういう楽しみ方をしている御仁がいることもネットで知って影響を受けまくってるわけだけど、釣りの場合遊びが自分だけで完結するわけじゃなくて魚も巻き込むので、あんまり程度の低い道具だと道糸切れたりして魚大迷惑だったりするのでどうかとも思ってたけど、この程度のデキの道具なら充分釣りになりそうでかつ不具合にも対処する方針が立ったので、実際に使い始めれば想定外の難問とか出てくるだろうけど、それも含めて面白がってしまっても良いんじゃないかという気がしている。ダメでゴミ箱にぶち込むしかなくなったとしても別にたいしたこっちゃない。


 ということで、スピニングリールについて座学はこの辺でいいやという気がしてきた、後は実際に釣り場に持ち出して、使って釣って行く中で失敗して試行錯誤して考えて学んでいく実践に移っていきたい。釣り道具だもん魚釣ってナンボよ。
 来年は430ssgを使う場面では714Zを使ってインスプール修行を引き続き進めてクンフー積んで、タックルMでセイゴ釣って遊んで学ぶというのをやってみたい。

 いくつかまだ買っただけで放置しているリールもあるけど、また気が向いたときにでもいじることにして、ひとまずスピニングリールネタは終幕。お付き合いのほど感謝。

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