2018年12月22日土曜日

島のもありマス



 我が家の蔵にもシマノの2つや3つは転がってるんです!
 右から「NAVI3000」「95ツインパワー4000XT」「メタロイヤルVS3500ZM」って最後しれっとリョービを紛れ込ませてるけど、今回一緒にバラしてみたのでついでということで堪忍してつかあさい。
 ネットオークションや中古屋で古めのスピニングリールなどほじくり返しつつ、それだけでは”スピニングリール熱”の症状が治まらないので「悪いズビニングはいねが~言うこと聞がねズビニングはいねが~」とユネスコ無形文化遺産風に蔵を漁ってたら、コレまで発掘した古いスピニングとは海で使うので別にしてあったこいつらが出てきたのである。
 そういえばこいつらもいたよなとは思うモノの、メタロイヤルはともかく、シマノのスピニングはこの時代90年代にはすでに瞬間的な逆転防止機構を搭載していて、正直今まで一度も分解清掃などしたことがない。
 だって面倒臭そうなんだモン。
 シマノについてはあんまり興味がない。まあ天邪鬼なので大手っていうだけで興味の対象からほぼ外れるし、ダイワのようにガキの頃からお世話になってたわけでもない。
 でも、今日に繋がる、噂じゃ高性能らしい妙にご大層な高級スピニングリールに関していえば大っ嫌いで、ステラ系列がその先陣を切ってダイワのEX以降のトーナメント系列と覇を競い、私からみれば不毛な争いに消費者である釣り人を巻き込んで、高級リール崇拝の度合いを深め、釣り具の”金のかかるカルト化”を招いてしまっている元凶だ、ぐらいに苦々しく思っている。

 じつは我が家の蔵にはもう一台「98ツインパワー2000」が眠っていて、コイツが私の高級スピニング嫌悪に拍車をかけた一因である。
 今回98ツインパ2000をバラさなかったのは、一度釣り場で全く回らなくなってメーカーに修理に出したら”ギアの摩耗”という「何万もするリールが5年もせんうちにギアすり減るンかよ!」とあきれる原因でギア交換でメーカーメンテされて帰ってきてから、不信感もあってあんまり使わせてなかったので分解清掃する必要もないな、ということで放置したからである。
 2000年から主力で使ってる4400SSがまだギア交換必要でないという”PENN使い”からしたら、鼻で笑っちゃう耐久性である。当時もギアは高強度だの高精度だのを謳ってたはずで、今のも洗剤の「驚きの白さに」と同様に新型はより良くなってます的な宣伝しか書いてないけど、10年単位での耐久性が実地で証明されていないという意味では今現在も状況は基本的に同じで信用できないと皮膚感覚で思ってしまっている。耐久性向上なんていう10年以上も同じ道具使うビンボ臭いごく少数の釣り人の要望にあわせるより、「軽く」とか「回転性能」とか店頭でクルクル回したときに釣り人がホイホイ釣れる性能を向上させた方が、そら儲かるからナ。そっちが重視されてるのは当たり前でしょ。
 一事例を基に、ほぼ思い込みで鬼の首を取ったようなことを書く傲慢さや不確実性、今の高級リール様を好きで使ってる人に嫌な思いをさせることの配慮と品のなさを考慮に入れたとしても、いまや世界の釣り具の趨勢に影響し、業界を牽引する立場に成り上がっているシマノ(とダイワ)には責任があると思うし、無批判に盲信する信者どもも多いので天邪鬼の務めとして厳しくお小言は書いていきたい。姑のようにネチネチとクドクドと。

 じゃあなんでシマノのリール持ってるんだよ?って聞かれると、3台とも我が家の釣りの上手い人のリールでオレのじゃないんである。ツインパ2台はどっかでもらってきたやつで、私にとっては興味も愛着もないリールだったのでたまにラインローラーとハンドルノブの根元に注油するだけでろくにメンテもしてやんなかったけど、そこはさすがシマノという感じでそれでもギア壊れるまでクルクル快調に回ってた。っていうのがあって、釣りの上手い人用のリールとして、安売りされてたNAVIを、ツインパ様に慣れてると泥臭いPENNの使い心地とか違和感あるだろうからというのもこれあり買って持たせたというのが3台の入手事情である。

 ただ、NAVIについては素直に褒め称えたい。15年以上昔にサンキュッパーぐらいで買ってから今まで一度も分解清掃などしていないのに、蔵からほじくり出してきたら普通に使えそうな回りかたしていて立派としかいいようがない。同時に発掘した95ツインパが油が揮発したのかなんなのか、逆転防止が効かなくなっててムカつくのと好対照。ツインパ旗艦機じゃないけど二番艦ぐらいの高級品でっせ。初心者用のNAVIに負けるなや。NAVIマレーシア工場製だけどマレーシアの工業力も侮りがたしだな。
 ただ、90年代のシマノは表面処理がいまいちで腐食が進みやすいように思う。NAVIもツインパも等しくベールワイヤー支持部の先っちょとか白く粉吹いて腐食してた。当時ジギングもやってたケン一が「何万もするようなツインパワーが、ちゃんと海から帰ってきたら水洗いしてるのに表面塗装ボコボコになるってどうなんや!」と憤っていたけど、今時のは大丈夫なんだろうか。

 お小言はいったん終了してNAVI分解清掃。
 コイツにも瞬間的な逆転防止機構が搭載されているので、逆転スイッチ省略で一方通行のベアリングが入ってるだけのスピンフイッシャー430ssgと違って、逆転とかどうやってしてるのか、ローラーベアリングの一種なんだろうと思うけど実際にはどんなもんが入っているのか一度見ておきたいところではあった。
 NAVIは素直な良い子で、本体横の蓋を開けてハンドル軸のギアを外して、平行巻機構は普通な感じのカム方式なので主軸を抜いてローター外してと、普通にサクサクと分解が進む。
 ちょっと水が入ったのか、お尻の金具は内側緑青出てるけどギアとかにはポチポチッと水滴がついたような痕跡は見られるものの、シマノの白いグリスがガッチリガードしていて腐食等無し。ドラグは問題なく優秀なので今回放置。なにも特別なものはないけど、問題生じさせてなくて、あまり「余計なモノがついてない」という良さがあるように思う。
 思うんだけど、瞬間的な逆転防止機構は思った以上にデカいのが、ローターの中にコレしか入ってないってぐらいにデデンと鎮座していて、こんなもんラチェット式なら写真上の右の方の石臼のごとき灰色の樹脂の部品は丸々削って残った台座部分ぐらいで済むって話で、クソ邪魔。
 下の写真、すでに開けた段階で1つローラーのブロックを落っことしてるんだけど、逆転時6個を右側のへこんだ壁に押しつけるようにしつつ中心のスリーブを締めて回転をキュッと止める仕組みのようで、逆転スイッチ切ると良く分からんかったけど全体的にユルっと緩んでスリーブを締めなくなるようだ。
 これが、細かいパーツで止められていて外からのバネが小さいし細い。その細いのをローラーの右に持ってくるのか左に持ってくるのか、細くてどっちに入れて良いのか年寄りには見えなくて、バラしたリールを持ったまま、コケてぶちまけないようにビクビクしつつネットで検索して、右のへこんだ壁に押しつけるんだからバネは左に持ってくると判明して何とか組み上げた。油も追加して軽く注しておいた。
 本体の方は、せっかくのシマノグリスだけど塩が結晶して残ってたらまずいので拭き取って、例のブルーのグリスでグリスシーリングですよ。シマノだからってオレは容赦しないゼ。

 で、95ツインパ様。まずはお尻のカバーを外すとパッキンが固くなっててたぶん防水の用をなさなくなっている。
 20年もたてば樹脂が固化するのは当たり前だろうけど、そのときにパーツ入手しようとしても、製造中止から3年ぐらいしか修理用部品保管してないようなので、防水性に問題を生じさせかねないんだけど、そのへんシマノさんはどう考えてるのかね?もちろん20年も経ったら新しいリール買ってくれって考えてるだろうけどさ、公式見解としてそういうこと恥ずかしげもなくいえるのかって話。リール大事に長く使いたいという客のことなんて微塵も考えてないという設計思想が見て取れる。まあワシャ組むときにシリコン接着剤で防水しておいたけどさ、どうなのよそれって。
 そしてまたこれがムカつくことに、分解するのがめんどくさい。あっち引っ張りこっち外してと、ばらしていくけど、主軸がローターから抜けずに悩んでたら主軸に付いてるスプールが乗る台座が抜けるというちょっと変わった設計で主軸抜かずのままでやっとローターはずれた。ややこしめの機構としては平行巻き機構がベイトリールと同様の軸を行ったり来たりする方式で、その関係のが一本入ってるぐらいで、やってることはNAVIとたいして変わらんだろうと思うんだけど、やたらと複雑になってる。投げて巻く以外に何か副業でもしてるんとちゃうか?

 逆転防止機構はNAVIと同じ方式ででかくて邪魔。逆転防止が効いてないってのは、油が切れたか、逆に油が進入して油が多いかぐらいだろうと思ったけど、油の進入はなさそう。
 お尻の防水パッキンもそうだけど、とにかく逆転防止機構に海水はもちろん、リール内のオイルやグリスも進入しないように、主軸にも樹脂のパッキンがはまってたりする。なのでギアとか内部機関は改めてグリス塗り直す必要ないぐらい綺麗なまま。
 なんでこんなに神経質になってるのかと、PENN使いは海水侵入ぐらい後で本体開けてギアとかそのまま水洗いして必要なら(シーズン中ならワシ内部水洗い後放置乾燥してそのまま使えそうなら使う人)グリスも交換すりゃ良いじゃんと思うんだけど、こいつら逆転スイッチも付いてるような”瞬間的逆転防止機構”はそうはいかなくて、海水入ったりしたらもちろん、自分でメンテする人の書いてる記事とか読むと、油が多すぎても少なすぎても油の粘度が不適切でも動作不良起こすような繊細な機構らしい。
 分解清掃時はローラーを丁寧に拭き拭きして汚れ水分油分を除去してから、油注さずに組んで、締め付ける方のスリーブに適量油を垂らして差し込んで、ローター回したりして油をなじませると上手くいくことが多い。上手くいかなければまたふき取ってやり直し、だそうだ。幸い一発で決まって復活したけどつくづく面倒くせぇ。
 そんな面倒な機構を水辺で使う道具の中に入れるから、各社躍起になって防水性なんてのを求めなきゃならんわけで、仮に水中で使用して完全に浸水したとしても正常に作動するはずのラチェット式の逆転防止機構が搭載されているリールなら防水性なんて気にするほどのことやないやんケ。アホくさ。
 「逆転がピタッと止まって遊びがない」ってガチャガチャうるさいってだけで実害ってあるのか?あるにしても例えば4桁スピンフィッシャーにはラチェットの歯の数が多い改造パーツが売られてたように、ラチェット式の改良工夫で何とかなる部分も多いし、なんか他にもいい方法あるだろうと思う。だいたいガチャガチャいうのってジギングだのエギングだのしゃくりまくる系の釣りだけで、巻物系のルアーの釣りとかなら関係ないだろ。ジギングするならガチャガチャいわない方が良いかなと思わなくもないけど、そのための値段の差とかを聞いたら「あっ、それならガチャガチャいう方で結構です」ってワシなら尻込みするね。
 しかも欠点としては、デカくて重くて不具合起きやすくて、値段が高くなるほかにも実害だらけ。
 予言しておくけど何十年か後に今の逆転防止の方式は笑いのネタになるだろう。その時になってアホなことみんな揃って何でやってたんだろうって不思議に思うだろうけど、今はそれが当たり前だとみんな思ってるだけで理由などないのである。過去のリアドラグの流行とかと一緒。瞬間的な逆転防止をやめるか、やるにしても430ssgに入ってるような油多い分には問題ない系の小型で丈夫な一方通行のベアリングにしたらリールは単純で不具合が少なく安くできる。ラチェット式ならもっと軽いし確実で丈夫。たぶん他にも一方通行のベアリング方式以外の現実的な解決方法は出てくる。今のデカくて不具合の多い瞬間的逆転防止機構は、残るとしてもエギング用リールとか限られた用途に限られていくだろうと思う。

 今、単純確実な逆転防止機構を搭載して、丈夫さとか精度とかを最新技術で追求して作ったら売れるのに、と思ったりするけど、実際には作っても売れない可能性が高い。
 なぜならまさに、そういうややこしくなくて丈夫なリールとして売り出されたのがリョービのメタロイヤルだからである。売れてたらリョービは釣り具事業から撤退していないだろうって話。
 写真見て分かるように、ダイワが提唱する前からドデカコンパクトな感じで機械の部分が小さくて糸巻きの部分が大きい。
 平行巻き機構も、ギアの上で小さい衛星状の部品がはまって回ってるなんかよく分からん形のカム方式で機構は小さくかつ道糸は真っ直ぐきれいに巻けている。
 逆転防止はラチェットじゃなくてローターの裏に歯がある方式で歯の数が多くできるので遊びはあるにしても充分小さい(個人により感じ方に差があります)。ラインローラーも普通だけど十分なようでライントラブルなんてPEでもナイロンでも気にせず使えていた。ビワコオオナマズ狙って一晩投げ続けても特にトラブルもなく快適。後年は釣りの上手い人がシイラロッドにつけてライギョ釣ってたけど、ドラグの締まりも逆転防止機構の強度もきっついアワセでも問題なく対応していた。
 その他にも今見ると主軸をカムに止めるネジが2本になってたり本体カバーのネジの横に位置を固定し補強する軸が入っていたりと、細かいところにも「丈夫に作るぜ」という設計思想が見てとれて良いリールだったんだなと感心する。
 スピンフィッシャーもいつまでもパーツが手に入るわけじゃないだろうから次世代の主戦力機をと採用検討していたのに、4桁スピンフィッシャーの生産停止より先に景気悪くなって釣りブーム縮小したらリョービが釣り具から手を引いてしまうとは予想外だった(釣り具ブランドのリョービは釣り具量販店J屋グループが引き継いでいる)。

 
 っていうぐらいに、日本の釣り人のみなさんは釣り具を見る目がない。と正直思っている。主体性が無く付和雷同的で、他人が良いと言ってるもの、まことしやかに大仰な小理屈の付いてるものなんかを、必要性の考慮とか、ましてや実践の場での有用性とか試したりはせず、鵜呑みにしてありがたがってるめでたさよ。
 私の釣り具の趣味が偏狭で凝り固まっていることを認めるのはやぶさかではないけど、正しいつもりで堂々と間違っててその間違った馬鹿面をヌケヌケとさらしているよりはなんぼかましだよな、と口汚く罵りの言葉を書いておく。テメエの趣味だの好みだのぐらい自分でキッチリ育てあげて他人にクチバシ突っ込ませるな!!

 まともな道具が選ばれなくて、大森製作所やリョービがなくなって、スピニングリールについては大手2大巨頭と外様のピュアフィッシング系と台湾メーカー系ぐらいしか買った後の面倒もある程度みてもらえる製品の選択肢がなくなってしまい、中古市場を除くと似たような道具しか売ってないというつまらない状況は、日本の釣り人の犯かした間違いに起因する結果の一つだと思うけど、まだそんな間違いならかわいいモンである。別に逆転防止機構がどんなだって魚釣れりゃ良いといえば良いし、釣り具業界の衰退は釣り人以外の景気の要因とかも大きいだろうし。大手製でもNAVIとか良いリールだし。
 でも、日本の釣り人が、特にルアーマンが、生分解性のラインを選ばなかったのは許し難い間違いだと実は恨み骨髄に思っているし、今でも鉛のガン玉とか鳥を死に追いやりそうなものがいろんな釣りで平気で使われている間違いも、いい加減どうにかしていかなければと思っている。
 生分解性のラインは確かに性能的には太くて伸びがあって今一だったかもしれない。でもそれを逆手にとって太くてショックを適度に吸収するショックリーダーとしてルアーマンなら生かせたはずである。使われ続ければ性能なんていくらでも上がっていく。
 それをメーカーもがんばってモーリス社なんて「RTE」を2世代に渡って開発し発売してくれたけど、選ばれずにもう生産されなくなって久しい。
 こういう間違いを続けていると、日本の釣り人はいつかなにかで「不合格」の烙印を押されて釣りができなくなると、これも予言しておきたい。

 スピニングリールについていろいろと学んだおかげで、自分が必要としていない大げさな逆転防止機構とそれを機能させるための防水やらに手間暇かけてあるような製品を大枚はたいてまで買うという間違いは犯さなくてすみそうである。
 まあ、他に山ほど間違ってるから、そんなところまで間違ってる余裕はないってことで。

 次回たぶん自分でも正解ではないんだろうなと思いつつ、挑戦して自分で確かめずにいられなかったことをネタにして、一連のスピニングリールネタをとりあえず終了する予定。
 クソつまらねぇ正解なんて地平の彼方までブッ飛ばすような、イカしててイカれてる不正解にたどり着いて天を仰いで呆然としてしまいたいんだヨ。

つづく

2 件のコメント:

  1. 浜酔人
    メタロイヤル、私も愛用しております。
    ペン並に丈夫なのは嬉しいのですが、
    個体数が少ないので、部品が壊れたとき
    は、心配してます。

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    1. 浜酔人さん おはようございます

       メタロイヤルやっぱり良いですよね。あまり売れなかったから部品取り個体確保するにも中古もあんまり出てこないし、釣り具部門引き継いだ上州屋がどうにかしてくれるわけもないしで、そのへん考えると、性能的に互角でも中古の弾数多くて部品在庫が確保しやすい(ミスティックの海外発送停止で状況悪化したけど)PENNが使ってて安心かなと、やっぱり思います。

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