2018年12月15日土曜日

くらえッ!エメラルド350スプラッシュをーッ!


 ”千円縛り”でぶっ壊れたようなスピニングを買って修繕して楽しむという方針で、一時は症状が治まりかけていたように思えた”スピニングリール熱”だったのだけど、すぐに熱がぶり返してきた。
 なんというか、ぶっちゃけ千円縛りではなかなか欲しいものが買えん!アタイもーイヤッ!!
 前回の記事を読んでもらえば分かると思うけど、誰でもホイと買ってしまえる千円以下で買えるようなリールって、ネットオークションではオレにしか価値が分からないたぐいのものを除くと、買う気にもならない”ゴミ”ぐらいで、ワシがゴミだと思っても欲しがる人はいるのかもしれないけど、ワシがいらんものを買わなきゃならん理由はない。そうでないような代物はよほどの幸運でもないと巡り会えない。トゥルーテンパーもオートベールも幸運な出会いだった。
 オレが欲しいものは他の人も欲しいってのは当たり前で、日本語読めるネットに繋がった人間全てに入札資格がある国内のネットオークションだと、なんぼワシが特殊な性癖の持ち主だったとしてもそんなモン、広いネットの世界には似たような趣味の人間はいくらでもいるモノで、”部品取り”にしかならないような一部破損とかのゴミ回収寸前の個体でも千円程度ならそれこそ部品取りにと入札する輩はいるのである。
 2,3人で競って、惜しいところで競り負けて落札価格が千”数百円”とかいうのを繰り返すと、メチャクチャ頭にくる。アタイ悔しいッ!!
 他にも、この前などソ連製インスプールスピニングなどというモノが出品されていて、ソビエト時代に彼の国で生産されたリールは、寒い国から来たリールらしく発泡スチロールの箱に入ってて替えスプールまでついてるときた日にゃ、今時の高性能なメイドインジャパンにはピクリとも物欲チパカシさせられなかった我が輩も、心のフォックストロット型潜水艦が核魚雷装填して発射寸前のキューバ危機ってなもんで、おもわず前屈みになっちゃう感じで危ねえ危ねぇ。
 終了日時まではだいぶ間があるうちから好き者どもが群がって入札してて5千円は超えてたので、最終的には万単位だろうなと冷静になってあきらめて、なんとか全面核戦争は回避できたものの”沼”はどこに口を開けているか分かったもんじゃないと恐ろしくなった。
 そもそも、これまで避けてきたインスプールのリールを勉強しようというか、いじくって遊びまくろうというのが最初の趣旨だったはずで、トゥルーテンパー727以降、実際に使う本命機であるPENNの714Zと予備機714はしっかり予算つけて既に確保したモノの、もう1台2台は安くて遊べるぐらいの気安いのを入手して、どんなモノかなと楽しみたいと思っているので。共産主義思想に基づき製造されたリールについての考察とか、そっちの深い沼にはまって散財する予定も余裕もないはずである。

 ということで、ミッチェルやカーディナルのような名機でもなく、妙に人気があって高騰している(今の状況でもだいぶ落ち着いたぐらい一時値が上がってたらしい)大森ダイヤモンドでもない、弾数多くて値段もそれなりのインスプールを狙ってなんとか千円縛りでいけないものかと奮闘していた。
 候補としてはトゥルーテンパー先生と同じオリムピック製の「エメラルド350」、ダイワの「8300A」「7250HRLA」あたりが、未使用箱入りとか除くと5千円前後が相場で、ボロボロの”部品取り”程度の個体なら運が良ければ千円縛りでも買えそうな気もする。
 こいつらは3機種とも”熊の手”対策でベールを開いたときに引っかける部品にローターから保護する”棚”が張り出していてインスプール初心者向き。かつ、エメラルド350においては、PENNでは引っかける部品を縦にして高さを稼いでいるのを、カーディナルのように折り曲げて高さを稼いでいて、ベールスプリングの負担が減って長持ちしそうな設計である。
 TAKE先生の著書ではオリムピック製インスプールとしては「シャルマン」が紹介されていて、現在の中古市場の弾数の少なさや設計などからみて、ベールスプリングが弱いンじゃないかという推論だったけど、シャルマンより後に作られたエメラルド350においては、そのあたり改善されているように思えた。

 で、そのエメラルド350が2台まとめて”ジャンク”扱いでオークションにかかった。
 1台はハンドル無し、1台はドラグノブが固着していて外せない。見た目も腐食が見られてショボいという立派な”ごみスピ”具合で、これなら1台千円として2千円で入札すればいけるかもと、まずは2千円で入札。とりあえずは最高入札額だったけど、ぶっちゃけこの2台の良いところ取りをしていわゆる”ニコイチ”を作ってしまえば、稼動する1台と上手く傷つけずに外せば替えスプールも手に入ると想定できる。あとはどの程度ギアとか本体とかが傷んでいるかだけど、それは買ってみないと分からない。となると、壊れ具合の不確定要素が値引き要素だとしても替えスプールで相殺で、ボロい稼動品1台ぐらいにはなりそうで、相場観からいって3千円前後が落札価格だなとうすうすは感じていた。
 でも、最初に決めたことだし制限取っ払うと収拾つかなくなって”収集”になっちまうからなという冷静な思考は、終了日にあっさりと高値更新された時点で溜まった欲求不満も爆発して吹っ飛んだ。
 面倒くせぇ、コイツはもう買っちまおう。どうせ同じような懐具合で3千円ぐらいまでしかこの程度で不安要素のある物には突っ込めないのは皆一緒だろう。だったら3000円に上げたときに高値更新できずにあきらめるのを狙って3,100円ってのを誰でも考えるだろうから、もいっちょダメ押しで3,200円ぶち込んで、それ以上は払うような価値のある品じゃないからオークション終了まで放置と決め込んだ。
 オークション終了時刻になって携帯にメールが来て落札の通知。ヤレヤレだぜと最終的な落札価格みたら、3,200円ドンピシャでハンマープライス!薄氷を踏むような勝利。
 だいたいネットオークションって自分が参加すると相場よりちょっと高い値段でしか落札できないように感じるけど、考えたら当たり前で”相場”の落札結果の時にもし自分が参加していたら落札するにはもう一段階値段を上げてなきゃ落とせてないっていう話。
 入札者少ない不人気商品ほど、自分が参加するとその分如実に落札価格が上がる。 
 
 なんにせよ、目的の物は入手できた。あとはどこまで修繕して使えるようにできるかである。
 エメラルド350はアメリカではHeddon281」の名で売られていて、右側の銘板の表記が違うだけの同型機である。大きさはトゥルーテンパー727より一回り小さい、ちょうど714Zとかぶるような大きさで、バス釣りはじめ内水面の釣りを想定しているのだろう。渓流にはやや大きいかという感じだけど使えなくもなさそう。シーバスにもちょうど良さそうだけど、この大きさは既に714Zを使ってみる予定があるので、まあ遊びで使うかもだけど、そもそも使う具体的な予定があって入手したものでもない。あえて想定するなら、フローターで野池でプカプカ浮いてザラパピーとかタイニーラッキー13とかスピニングっぽいルアー投げたら、ヘドン繋がりで気分でるかもなっていうぐらいか。

 なにはともあれ、分解清掃なんだけど2個体のうち、ハンドル無しの個体は見た目ボロいけど機関はそれなりに程度良くてローター手で回すと、古さ相応にシャリシャリしてるけど滑らかには回ってる。

 もう一個の方が見た目はマシで銘板も残ってるんだけど、回転は引っかかって重くてまともには回らないし、外れないというドラグノブは固着しているとか無理にはめ込んで堅くハマってるとかいうのではなく、ナニを考えてか接着剤でガッチリ固めてある。思ったより程度が悪いし難モノである。
 見た目マシな方はガワだけ生かして、中身は全部ボロい方から移植する方向で、とりあえずは見た目マシな方のドラグノブが外せないと移植も一部しかできないし替えスプールが手に入らないので、まずはそこからいくのにサイドカバー外して、主軸に填まっている平行巻機構のピンを抜いて主軸ごとスプールをひっこ抜く。
 回転が固いのはグリスが固まっているのなら拭き取ってグリス再度塗布で解決なんだけど、ローター軸のギアに傷いってるし、固着したドラグノブをスプール本体にはめたまま無理矢理捻って外そうとして曲がったのか平行巻機構のピンも曲がってしまっている。
 前の持ち主か、それ以前の持ち主か、接着剤で固めた輩もアレだけど、ちょっと乱暴が過ぎるんじゃないですかい?とムカついた。

 こういう接着剤を剥がすのの定石は剥離剤とか溶媒使って溶かして剥がしてやるんだろうけど、ドラグノブ自体が樹脂製なのでちょっと一か八かになるので奥の手にとっておき、まずは暖めて緩める方針で行く。
 小鍋に湯を沸かして、主軸付きの状態でスプールをドラグノブごと小鍋に放り込んで5分ほど茹でる。あまり茹ですぎると当然ドラグノブも溶けて変形のおそれがあるので湯加減注意。
 茹であがったモノが下の写真でございます。
 茹でたら接着剤柔らかくなってメリメリと剥がれてくれた。
 残念なことに、ドラグノブは壊れた後に接着剤で固められていたようで、無事救出とはいかなかった。
 でも土台は残ってるし、スプール本体とドラグパッドその他はなんとか救出。これでスペアスプールは確保できたし、見た目ボロい方の個体は機関は生きてるのでとりあえず、1台稼動する個体に加えてスペアスプールという最低限のアガリは確保できた。あとはどれだけ稼動する個体を良い状態に持って行けるか。

 2台とも分解して、グリス拭き取って新しいの入れて見た目マシな個体に動いているボロい方の個体のギアと主軸を移植したら、これがイマイチ重くてシャンとしない。主軸だけ交換とか色々試したところ、どうも見た目マシな方の本体とローターの間でゆがみが生じてて、動かなくなるほどではないけど滑らかには回ってくれないようだ。ただ、グリス塗り替えて主軸のムキを裏返したら元の主軸でも回らないって程ではなくなった。主軸も歪んでる。
 結局色々試して、中身はローター軸のギアだけ交換して他は元のままが、見た目マシな個体もちょっと重いけど使えなくない程度になって、ボロい個体は快調に回るというところに落ち着いたので、見た目ボロい個体を実釣用にして見た目マシな個体は予備機兼部品取りという整理でいこうということで、とりあえず最低限の目標は達成できた。
 2台ともベールスプリングは健在で、ベールスプリングだけ交換済みってことはあまり考えにくいので、ボロくなるまで使っても大丈夫なぐらいにベールスプリングの耐久性は良くなってたんじゃなかろうかと思う。けど、2台じゃなんともいえんか。
 これで良し、と思わなくもないんだけど、なんか当たり前すぎて面白くない。予定調和などぶち壊してしまえ。

 ということで、ブッ壊れたドラグノブの再建とハンドルのでっち上げに挑戦してみたい。せっかくだから3,200円分みっちり楽しまなきゃね。
 
 まずは割と簡単そうなドラグノブの方から。
 ドラグノブの中の調整幅を確保するためのバネが残ってるので、バネを剥き出しのまま残ったドラグノブの土台で締め付けるというのをベースに、バネを押さえつつ収まるように円筒形の素材で覆いを作ってやるというのでいこうかと思ったら、ドラグノブの土台に残っている雌ネジが主軸の頭と太さがあってなくてスカスカで締まらない。どういう状況なのか良く分からないけど別の時代のドラグノブを無理矢理接着してたとか、雌ネジがバカになってるのか何にせよ使えない。
 ドラグ締めるだけなら、写真2枚目のように寸法の合うナットで締めるだけというのも手としてはある。あるけどちょっといくら何でも見た目がアレである。
 ということで、バネは手抜きで間に剥き出しで挟む方向で、主軸が真ん中通るようにフェルトを噛ませて、前後にステンレスのワッシャー、その上にナットを持ってきて、ナットを残ってたドラグノブの土台に、高さが締めたときにちょうどスプールとの隙間が小さくなるように調整して、隙間に割り箸削ったのを突っ込んでエポキシで接着固定。一応金属はエポキシ剥がれやすいからそのうち剥がれるだろうけど、ドラグを押さえる面が凸凹してると安定しないだろうから、ステンレスワッシャーを乗せて平らにして固めた。
 まあ、現場でスペアスプール交換するときにワッシャーとか部品落とさないように気をつけなきゃだけど、ドラグの調整自体は問題なくできるので及第点かと。
 ついでにドラグもトゥルーテンパー先生と同じ構成の3階建てだったので同じように、ドラグパッド3枚それぞれにテフロン仕上げガラス繊維製の自作パッドを敷いておいたのでドラグ性能も問題なし。
 あと、回収したスプールにはドラグ作動時の音出しのクリックがなくて、追加しようとしたらこれまたネジが折れてネジ穴潰れているという有様だったので、ドリルで穴をちょと掘って、ペットボトルの蓋とポリカーボネイトの板を使って”音出し”も再建しておいた。音が出ないと意外とドラグ出てるのか出ずに道糸巻けてるのか分かりにくいので作ってみた。大丈夫だろうとあんまり丈夫に作らなかったけどどんなモンか試してみたい。

 難しそうなのがハンドルのほうで、ドラグなんてナットで締めときゃ充分ってかんじだけど、ハンドルは小型スピニングでそれほど丈夫じゃなくても良いとはいえ、直接力を掛ける部分なので単に右と左からナットで締め付けて留めました、では緩んで空転しかねない。
 なので、普通のリールは締め込む方向にネジを切って”ねじ込み式”になってたり、6角形や、4角形の軸をハンドル軸のギアに貫通させてたりとガッチリ力が伝わる方式になっている。
 エメラルド350においては、上下を切り欠きした円柱のパーツを被せて固定する形式で、この接続パーツが上手く丈夫に作れないと用をなさない。同時代の同じパーツを使ってるオリムピック製のリールを見つけてきて引っぺがして流用するのが妥当だろうけど、探すのが面倒臭いうえにハンドルのないスピニングがまた1台生じるので堂々巡りになる。
 でもこの切り欠きした円柱の直径といい欠け具合といい、なんかどっかで見たことあるなという既視感があるので、脳内検索掛けて「ABUアンバサダーのハンドル軸に入ってるパーツや!」と思い至り、「こういう風に表面がへこんで壊れます」って見本でF師匠が新品と一緒にくれた、瞬間的な逆転防止機構の一方通行のベアリングに填まるスリーブがちょうどあったので試してみると、あつらえたようにピッタリはまる。
 このパーツを接続部品に、ステンレスの軸にナットで位置決めして余ってる竿のブランクをぶった切って填めて固定してで何とかなりそう。
 回す部分は、とりあえず蔵に転がってたアンバサダーのハンドルでどうかな?と試してみると、軸に留めるところは一工夫必要だけど、ちゃんと機能しそうなれど、なんだろう?どうにもこの時代のスピニングにダブルハンドルは違和感がある。ナット剥き出しとかは手作り感あって許せても、ダブハンはネェだろという気がするので、安い小型スピニングのハンドルをネットオークションで探してきてシングルハンドルにすることにした。
 ちょっと良さげなのを見つけるのに時間がかかってしまって、その間既存のハンドルを見た目ボロい方につけて実釣に持ち出してフッコ釣れたりしたけど、黒いハンドル送料込みで700円で確保。
 買った中古ハンドルを軸から外して、新しい軸を多少緩んでも止まるように先っちょ曲げて突っ込んで、隙間を固い樹脂とガイド用のせき糸で埋めつつエポキシでガッチリ固めて、切り欠き円筒型の接続金具との間はギチッと填まるようにカーボンブランク切って削って軸にもせき糸巻いて太さ埋めてエポキシで固定した上に、上からもせき糸巻き巻きしてエポキシ塗装仕上げ。
 ナニが苦労したかって、古い軸からハンドル回す部分を外すのが面倒臭かった。ハメ殺ししてあるピンを釘でもあてがってトンカチでどやしたら抜けるだろうと安易に考えてたけど、固くてかつ釘が滑って上手く打撃できずに、ドリルで時間掛けて固いステンレスのピンの頭削ってある程度釘が収まる穴を穿ってから短いボルトを立てて気合いで叩き込んでやっと外れた。ステンレスって固い固い。アルミ系とかならハンドドリルでも穴あけるのそれ程難しくないだろうけど、ステンレスは全然削れなくってPCの前で格闘技見ながら5分のラウンド終わる毎に穴の深さ確認してたけど、ボルト立つぐらい削れるのに2時間ぐらいかかった。
 隙間を埋めるための固い樹脂は、アクリル板でも買ってきて切るかと思ったけど、そういえばCDとかDVDってポリカーボネイト製だよなと思って、要らないDVDをアクリルカッターで切り出して使った。DVDは2層構造でギラギラの面の方がポリカーボネイトっぽい、印字側は単なるプラっぽくてすぐ割れた。


 外側のエポキシも固化して無事完成。ハンドル折りたたみ式にはできなかったので、袋に入れて持っていって差し込んで留める方式にして、右側には摘まんで回せる金具をつけて、隙間への埃やら海水やらの進入防止にスピンフィッシャーみたいに油染みこませたフェルトを入れて、銘板のところにはまたカモメのシールを貼っておいた。
 摘まむタイプのハンドルノブで軽く巻けて、見た目も、派手な本体の個性を邪魔しない感じに落ち着いててなかなか良いんじゃないでしょうか。と、自画自賛。
 まあ、苦労して修繕したリールには当然思い入れが生まれるよねってことで。

 これで、1台と替えスプールが手に入れば良し、という当初の目標を超えて、まあお金も手間暇も追加してかかったし、1台はちょっと回転重いし、1台は見た目かなりボロいしだけど2台稼動する個体が手元に残って、楽しんだ分も含めて上々の首尾だと思う。
 この2台で”インスプール熱”は結構治まってくれて、といいつつダイワ「7250HRLA」と大森「ダイヤモンドスーパー99」の2台がまとめて2千円で落札できてしまい配送待ちだったりするけど、インスプールのリールはまあ満足したかなという感じになってきた。
 でも、インスプール熱から始まってスピニング全体に興味が広がっていった過程で、他にも実は買ってしまっているし、いろいろと思うところもあったので、年内いっぱいぐらいはスピニングネタで行く予定。自分の中での”スピニングリール論”が再整理できてきたような気がする今日この頃。快方に向かってます。多分。
 さらなる沼の深みに沈んで年開けてもやってたりして。まあそんときゃそん時で。 

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