アタイ悔しいッ!
自分の身近な魚についてよく見て考えて、そこから釣りにおける一手を導き出すも良し、魚とそれを取り巻く様々な事象を知ることそのものを楽しんでもまた良し。とにもかくにも五感六感全開で感じて観察してアーでもないコーデもないと思索にふけっておくべきと、口を酸っぱくして書いてきたにもかかわらず、ナマズに2つの種が含まれていそうだということについぞ思い至ってなかった。気付いていてもおかしくない事象を耳に入れており違和感まで感じていたのに、そこからさらに突っ込んで行けてなかった。
悔しいので、身近な魚についていくつか通説に反するような「ナマジ予想」を紹介しておきたい。ワシも出し抜かれてばかりっちゅうわけにはいかんけんのぅ。
「釣り人の常識」が間違っているなんてのは、あげてたらきりがないぐらいでむしろ「釣り人の常識」なんて嘘ばっかりなので基本疑ってかかった方が良いってぐらいの感じがするので今回は放置しておいて、ナマジ予想が正しければ図鑑やら今のところの学術的な報告が訂正されそうなものをいくつか紹介してみたい。過去にも書いたことあるネタもあるけどご容赦を。
その1「イワナ4亜種説はデタラメ」これは河川毎、支流毎のイワナの遺伝子レベルの調査報告を読んで確信したんだけど、アメマス、ニッコウイワナ、ヤマトイワナという亜種に分けられるような違いは全くなさそう。むしろナマズとタニガワナマズのように同じ川でも支流の堰堤上と本流のイワナが別物っぽい印象だった。これはイワナ釣ってても特にアメマスとニッコウは中間的なのが多いし同じ川でどちらのタイプも釣れてくるという釣り人の感覚からもそう思う。ゴギだけは分布域が分断されているし亜種レベルで違うかもというのは、釣り師としても全国の川を釣り歩いた今西錦司先生のご意見で、私はゴギは釣ったことないので語る資格はないけど、実際に釣り場で感じて考えた今西予想に一票入れたい。このへん再整理がDNAの調査とかでハッキリしそうに期待したんだけど、内水面の魚なんて水系毎に固有の遺伝情報持ってる集団とかになりがちで、違うちゃ違うけどみんな違うので整理あんまり進まないのかも。
その2「マハゼの主食は植物プランクトン系のデトリタス」 図鑑とかでもマハゼは小型の甲殻類や多毛類を食べる肉食系と書かれている。釣り餌としても虫餌を中心にボイルホタテや冷凍エビとか動物質のものを使うので釣り人としてもすんなり納得いきそうなモノである。ウィキペディア先生にも「食性は肉食性が強く、多毛類・甲殻類・貝類・小魚などを貪欲に捕食するが、藻類を食べることもある。」と書かれている。
でも、釣ってきて腑分けしてみると、多毛類・甲殻類なんてのはほとんど入っているのを見かけない。写真の個体が典型なんだけど胃内容物は左の塊で緑色の藻類の繊維がグチュッと絡まっている。その後ろの腸管内容物は消化液の色なのか茶色がかったペースト状のものであり泥なのか藻類なのか判別しかねる。
湾奥の運河で見釣りで釣っていると、石の上に陣取ってモシャモシャと石に付いた苔を食べているような行動を取る個体も見受けられ、石の上を縄張りとして他の個体を追い払う行動も見られる。
腸管の長さが植物専食にしては短いので、海の比較的深い所では動物プランクトンや小型甲殻類をもっぱら食べているのかもしれない。
でも、河川などでは藻類が利用できるので、まるでアユのように藻類利用しているのではないだろうかと思っている。ハゼ釣ってて朝まずめあまり早い時間よりは、お日様登ってくる時間に活性上がるのも藻類の増殖速度とかと関係してるのかなと密かに思っている。
アユも虫食ってても、活性上がるのはお日様上がってくる時間とかが多くて、かつ消化管がそれ程長くない、もともと動物食性の魚が藻類食うようになっている感じがして意外なほどマハゼと共通点があるように感じている。
ということで、マハゼって主な生息地である浅い日の光の届く水域においては主食は藻類やデトリタスといった底生の植物質のモノなのではないかというのがマハゼに関するナマジ予想である。
「うちの方では胃内容物アミとか小型甲殻類ばっかりだよ」という方は教えてくれると嬉しいです。
その3「ウナギはエッグフィーダー」 今回の目玉ネタです。ウナギの孵化したばかりの稚魚ってナニ食ってるのか謎が多くて、胃内容物のDNA調べると動物プランクトンが出てくるらしくて、最近だと窒素同位体比で推定して動植物プランクトンの死骸や糞の「マリンスノー」だといわれていてこれが正解だろうと思われているけど、思い切って「ダウト」。
根拠は孵化直後の稚魚の顔を見た直感。柳の葉の形のレプトケファルスまでいくとマリンスノー食ってるって言われてもそうなんだろうなと納得する顔しているけど、その前の段階プレレプトケファルスの顔は下あごから歯がつきだしていて凶暴でマリンスノー食ってる顔じゃない。でも動物プランクトンとか与えても育つほど食べない。育つのは今のところ深海鮫の卵ベースの餌を与えたとき。
ナニが餌なのかよくわからん?というのを親が産んだ卵を初期餌料として食べると考えると矛盾が少ない。胃内容物からウナギのDNAが出てきてもそれが餌とは気付かないというのが盲点になってるんじゃないかとナマジ大胆予想。どうでしょう。当たってれば実験室で孵化した稚魚がまだ孵化してない卵食いまくってバレるはずなのでハズレの確率高いとは思うけど大穴狙いで行きます。ウナギは親が稚魚の初期餌料として卵を産んで与える「エッグフィーダー」。
その4「遺伝因子にはまだ知られていない謎がある」 ちょっと身近な魚たちを離れた大きなネタだけど、最近の生物関係の研究手法としてDNA調べたりといった分子生物学的な手法が最終的な切り札となりつつあるんだけど、どうも調べてみたら訳が分からない結果が出たというのが、何か「違和感」感じる程度に目に付く。単なるミスやら個別に納得できる背景やらがある場合もあるんだろうけど、なにか我々人間がまだ知らない「遺伝」をめぐる大がかりな仕組みが、ドカッと残っているんじゃないかという気がする。
違和感感じた例としては、日本のゲンゴロウブナ除くフナ類のDNA調べていくと、今の図鑑で亜種と整理されている分け方と全く関係なく、3パターンぐらいに分かれるように見える結果が出たりするらしい。なんてのとか、どっかで地域の生物の多くが種が生まれて数10万年しかたってないという結果がでたりとかいうのも目にした。
ビシッと快刀乱麻を切るごとしの結果が出ることもある反面、どう理解するべきなのか判断に困る妙な結果がでることが無視できない程度にはあるように感じている。
「DNAを調べた結果」が絶対の正解ではないのかもって囁くのよ・・・私のゴーストが。
だれか研究者とかが報告してくれて予想外れててもご愛敬。もし正解だったら「言ってたとおりでしょ」と大いばりするつもりなので、その時は拍手喝采をお願いします。
2018年8月25日土曜日
2018年8月18日土曜日
ナマズ業界激震!第四のナマズ属襲来
「滋賀県立琵琶湖博物館と北九州市立自然史・歴史博物館は17日、国内で57年ぶりに新種のナマズを確認したと発表した。(by毎日新聞)」
との情報が昨日流れ、既にナマズマニアの間では噂になっていたようだが、恥ずかしながら寝耳に水でめまい起こして気分悪くなるくなるぐらい興奮した。
クッソおくれをとったぜ、ナマザーナマジ一生の不覚。というのも、このナマズ我が故郷東海地方の比較的上流域に棲むらしく、和名としてはタニガワナマズというのが提唱されている。
おそらく標準個体の標本獲った水系で釣りしたことあるうえに、その川で夜釣りに行ったらものすごい数のナマズがいて網ですくえたという話も聞いたことあったのである。
ナマズが産卵のために用水路とか遡上するのはよく見られる行動で、上流の方に遡ってきて堰堤とか魚止めの下に溜まっていることはありがちなので疑問にも思わなかったけど、その夜釣りに行った場所って結構上流のはずで上に行っても産卵に適した水生植物とかの多いところに辿り着けない。
ナマズにしてはへんなのがいると気付いていて然るべきだったのかも知れない。ぬかったとしかいいようがない。
詳しい生態とかはまだ不明らしいけど、どうもイワトコナマズに近いらしいので、岩の下とかに産卵するのかも知れない。というか逆にタニガワナマズの方が広く分布していて実は一般的で、上流域で岩の下に産卵するタニガワナマズが琵琶湖と余呉湖に閉じ込められて湖の岩礁域で産卵するように分化したのがイワトコナマズなのかも知れない。
そういえば東北時代、ナマズ釣れる場所探していて「ここでナマズ大釣りしたことある」と聞いた場所がヤマメ釣るような渓流でちょっと違和感感じたこともあったのである。今のところ生息地は東海地方とされているようだけど、これ多分関西以北ぐらいの広い範囲に棲息しているような気がしてならない。いずれにせよ今後の調査・研究の報告に期待したい。
とりあえず見分け方としては、腹にまで模様があるというのもあるようだけど、色や模様は個体差大きいのでわかりにくい。確実そうなのは「上顎後方歯帯が2枚に分かれている」というやつで、上顎の歯のうち前の方の口幅一杯に並んでる歯の後ろの二列目のやや小さめの歯の並んでいる部分が、真ん中で分かれるか分かれないかで、イワトコナマズも分かれているのでイワトコナマズの生息地以外で上顎二列目の歯が真ん中で分かれていればタニガワナマズということになりそうだ。
ナマズなんていう自分のハンドルネームの元になったような親しい魚に実はまだ知られていない種が紛れ込んでいたなんて驚くとしかいいようがない。
ちなみにコレで日本のナマズ属はナマズ、ビワコオオナマズ、イワトコナマズ、タニガワナマズの4種になりそう。
ついでにナマズ目ならくわえて、ギギ、ネコギギ、ギバチ、アリアケギバチ、アカザ、ハマギギ、トウカイハマギギ、オオサカハマギギ、ゴンズイと移入種でヒレナマズ、マダラロリカリア(プレコ)、アメリカナマズぐらい。
ああっ!タニガワナマズ探しに行きたい。
との情報が昨日流れ、既にナマズマニアの間では噂になっていたようだが、恥ずかしながら寝耳に水でめまい起こして気分悪くなるくなるぐらい興奮した。
クッソおくれをとったぜ、ナマザーナマジ一生の不覚。というのも、このナマズ我が故郷東海地方の比較的上流域に棲むらしく、和名としてはタニガワナマズというのが提唱されている。
おそらく標準個体の標本獲った水系で釣りしたことあるうえに、その川で夜釣りに行ったらものすごい数のナマズがいて網ですくえたという話も聞いたことあったのである。
ナマズが産卵のために用水路とか遡上するのはよく見られる行動で、上流の方に遡ってきて堰堤とか魚止めの下に溜まっていることはありがちなので疑問にも思わなかったけど、その夜釣りに行った場所って結構上流のはずで上に行っても産卵に適した水生植物とかの多いところに辿り着けない。
ナマズにしてはへんなのがいると気付いていて然るべきだったのかも知れない。ぬかったとしかいいようがない。
詳しい生態とかはまだ不明らしいけど、どうもイワトコナマズに近いらしいので、岩の下とかに産卵するのかも知れない。というか逆にタニガワナマズの方が広く分布していて実は一般的で、上流域で岩の下に産卵するタニガワナマズが琵琶湖と余呉湖に閉じ込められて湖の岩礁域で産卵するように分化したのがイワトコナマズなのかも知れない。
そういえば東北時代、ナマズ釣れる場所探していて「ここでナマズ大釣りしたことある」と聞いた場所がヤマメ釣るような渓流でちょっと違和感感じたこともあったのである。今のところ生息地は東海地方とされているようだけど、これ多分関西以北ぐらいの広い範囲に棲息しているような気がしてならない。いずれにせよ今後の調査・研究の報告に期待したい。
とりあえず見分け方としては、腹にまで模様があるというのもあるようだけど、色や模様は個体差大きいのでわかりにくい。確実そうなのは「上顎後方歯帯が2枚に分かれている」というやつで、上顎の歯のうち前の方の口幅一杯に並んでる歯の後ろの二列目のやや小さめの歯の並んでいる部分が、真ん中で分かれるか分かれないかで、イワトコナマズも分かれているのでイワトコナマズの生息地以外で上顎二列目の歯が真ん中で分かれていればタニガワナマズということになりそうだ。
ナマズなんていう自分のハンドルネームの元になったような親しい魚に実はまだ知られていない種が紛れ込んでいたなんて驚くとしかいいようがない。
ついでにナマズ目ならくわえて、ギギ、ネコギギ、ギバチ、アリアケギバチ、アカザ、ハマギギ、トウカイハマギギ、オオサカハマギギ、ゴンズイと移入種でヒレナマズ、マダラロリカリア(プレコ)、アメリカナマズぐらい。
ああっ!タニガワナマズ探しに行きたい。
2018年8月12日日曜日
夏なのでパンツいっちょの漢のはなし
猛暑日の炎天下は危険が危ないので図書館でお勉強しているか、エアコン効いた部屋でグダグダとしている。朝夕夜に活動しないと身が持たぬ。
部屋でグダる時は、ネット配信の「アベマVT」が暇つぶしとして超有能なのはコレまでも紹介してきたとおりで、格闘技の放送とかマニアックなところから日本の老舗団体の興行から、見るモノ沢山あって嬉しい。逆に「DAZN」はUFCの中継以外のボクシングとか日本語解説なしなので、見ていて今一盛りあがらず、実質月に1度か2度ののUFC見るためだけに契約していて割高になっている。
「アベマTV」もどんな番組が視聴者にウケるのか試行錯誤中なようで、放映権料高い割に視聴数少なかったりすると容赦なく整理されてしまう。米国2番目の総合格闘技団体「ベラトール」の放送はもうしてくれないのだろうか? ヒョードル選手とか出てたりして往年の名選手の活躍の場になってたりもする団体なので観られないのはちょっと残念。
でも、逆に面白い企画が始まったりしてなかなかに面白い。「QUINTET」「格闘代理戦争」とかすんごく面白かった。
「QUINTET」は柔術系の大会なんだけど、柔術の国際大会とかも配信されているときあるけど、正直つまらなくて決勝とかだけ観るかんじである。負けないように守りに入っているのか技が決まらなくて判定決着が多いし、打撃なしなので技自体がわかりにくくて攻防が地味だしで、よっぽどの玄人じゃないと楽しめないと思ってたので、桜庭和志選手の発案らしいけどどうなのかなと、あまり期待せずに視聴した。
めっさ面白いんでやがんの!
ルール設定が「その手があったか」と感心するぐらいに上手くて、関節技や絞め技がバンバン飛び出すし、勝負の行方も最後までハラハラだし、戦略性のある作戦も見所だし、さすがMMA世界殿堂入りの桜庭選手、全盛期IQレスラーの異名を取った頭脳派である。ナニをやっているのかというと、5人チームで「抜き試合」をやって引き分けると両者退場で、勝ったときだけ残って次の対戦相手と闘い、どちらかのチームの最後の一人が負けるまで闘うという団体戦。選手は引き分けると敗退だから勝つために積極的に技を仕掛けるし、体重差があってもハンデ付けて闘うしで、どう敵のエースを止めるかとか、見所充分でかつ桜庭選手始め有名どころや柔術界の猛者も呼んできていて、柔術家とかここで勝たずになんとすると気合い入ってるし、呼んでもらえた若手とか光栄に感じているようでチームの勝利に貢献できなくて涙してるシーンもあったりして、とにかく暑苦しいぐらいに盛り上がってて素晴らしい。好評のようで第3回まで行われたところだけど、1回目の所英男選手の腕十字が決まったときは心底嬉しかった。それで負けることはあるにしてもあの思い切りの良さが所選手の魅力である。決めるべきところで決めてくれた。第4回以降も待ち遠しい。
「格闘代理戦争」はUFCにも「タフ」とかいう若手育成のイベントがあって人気番組になってるらしいけど、その日本版で1回目は優勝したら賞金とK-1契約、2回目は賞金とワンチャンピオンシップとの契約。で「代理戦争」ってぐらいで、過去の名選手や現役選手が若手を推薦して金の卵を探すというトーナメント戦。
これが、仲の悪い有名選手間の舌戦やらもお約束的に盛り上げつつ、それぞれ若い選手が夢を目指してここ一番の機会を手に入れようともがくさまが、そのひたむきさ純粋さが胸を打つ。2回目の決勝で負けた選手が、完全に魂抜けて控え室戻るまで顔をあげられなかったのをカメラが追ってたりして「コレですべてが終わったわけじゃないんだヨ」と声をかけてあげたかったけど「コレにすべてをかける」と挑んだ結果の敗退を彼はどう受け止めていくのか、難しいヤね。仕事も辞めてきたそうだけど「地下格闘技」にも出てたとか紹介されていて今アニメやってる「バキ」みたいなのを一瞬想像したけど、アマチュアバンドのライブみたいに、会場借りてお客集めて一杯飲みながら格闘技が見られるという素人興行があるらしい。恥ずかしながら初めて知った。
あと、山本KID選手が首の怪我の関係なのか激痩せしてて心配だ。指導者としては選手時代のやんちゃな姿とは対照的になかなかに理論派であり後身も育ってきているので、しっかり治療して名伯楽になって欲しい。
「格闘代理戦争」とも連携していることからも明らかなように、アベマTVはアジア最大の格闘技団体「ワンチャンピオンシップ」を推していくようで、過去の日本人選手名試合特集とかもやっている。日本人選手も結構出場しているのでアベマTVでも以前から放送していたので観ていたけど、最近日本人選手なかなか勝てないのよね、頑張って欲しいところ。アジア各地を回って大会開催していて、ルールも独特で総合では四つん這いの選手への膝蹴りOKとか、ケージの中で薄いオープンフィンガーグローブで闘うムエタイルールの試合とか過激で迫力ある。ムエタイの有名どころとか良く上がってくるけど強すぎる。
というような過激さももちながらも、選手の健康管理も真面目に考えていて、計量時に「尿比重検査」というのを2016年から導入しているそうで、あんまりカラカラに水抜いて計量に上がると失格してしまうようである。水抜いて落とすつもりが軽量失敗とか散見されるなかで、なかなか先進的な取り組みで感心した。これからも楽しみに視聴したい。世界一のUFCがなんぼのもんじゃ、アジアにも面白い地域団体有って盛り上がってまッセ。
最後に、格闘技ネタに付き合ってくれた読者の皆様に、面白い格闘技マンガと書籍ベスト3を独断と偏見で選んで紹介しちゃいます。ジャカジャン。
○ナマジ的格闘技マンガベスト3
1位「拳奴死闘伝セスタス」、2位「帯をギュッとね」、3位「ホーリーランド」
「セスタス」はローマのネロ皇帝の時代の拳奴の闘いを歴史ネタもちりばめつつ描く隠れた名作。師匠ザファルの勝負哲学に痺れる。
「帯ギュ」は往年の少年サンデー人気柔道マンガ。柔道という汗臭そうな題材なのにちょっと小洒落た青春群像劇で恋あり笑いあり、でも熱いゼ。
「ホーリーランド」はいきなり作者が自身の経験から解説を始めるというのが妙なホント臭さを醸し出していた路上格闘モノ。
○ナマジ的格闘技本ベスト3
1位「世界喧嘩旅」、2位「人間処刑台」、3位「空手道ビジネスマンクラス練馬支部」
「世界喧嘩旅」は抱腹絶倒驚天動地の破天荒な漢、大山倍達総帥の強いヤツに会いに行く旅路。
大石圭「人間処刑台」は多額の掛け金が動き、時にリング上で死者も出る何でもありの「地下格闘技」の世界で闘うモノ達の群像劇。描写がグロいけど闘うモノの純粋な有り様が落差で美しい。
「空手道」は漠先生の異色の格闘技モノでサラリーマンモノ。世界一とか目指さない人間にもある「強くありたい」というそれぞれの闘いに共感。
そういえばお薦めされてたボクシング小説「BOX」まだ読んでないな。他にも面白い格闘技モノとかあったら教えてネ。
部屋でグダる時は、ネット配信の「アベマVT」が暇つぶしとして超有能なのはコレまでも紹介してきたとおりで、格闘技の放送とかマニアックなところから日本の老舗団体の興行から、見るモノ沢山あって嬉しい。逆に「DAZN」はUFCの中継以外のボクシングとか日本語解説なしなので、見ていて今一盛りあがらず、実質月に1度か2度ののUFC見るためだけに契約していて割高になっている。
「アベマTV」もどんな番組が視聴者にウケるのか試行錯誤中なようで、放映権料高い割に視聴数少なかったりすると容赦なく整理されてしまう。米国2番目の総合格闘技団体「ベラトール」の放送はもうしてくれないのだろうか? ヒョードル選手とか出てたりして往年の名選手の活躍の場になってたりもする団体なので観られないのはちょっと残念。
でも、逆に面白い企画が始まったりしてなかなかに面白い。「QUINTET」「格闘代理戦争」とかすんごく面白かった。
「QUINTET」は柔術系の大会なんだけど、柔術の国際大会とかも配信されているときあるけど、正直つまらなくて決勝とかだけ観るかんじである。負けないように守りに入っているのか技が決まらなくて判定決着が多いし、打撃なしなので技自体がわかりにくくて攻防が地味だしで、よっぽどの玄人じゃないと楽しめないと思ってたので、桜庭和志選手の発案らしいけどどうなのかなと、あまり期待せずに視聴した。
めっさ面白いんでやがんの!
ルール設定が「その手があったか」と感心するぐらいに上手くて、関節技や絞め技がバンバン飛び出すし、勝負の行方も最後までハラハラだし、戦略性のある作戦も見所だし、さすがMMA世界殿堂入りの桜庭選手、全盛期IQレスラーの異名を取った頭脳派である。ナニをやっているのかというと、5人チームで「抜き試合」をやって引き分けると両者退場で、勝ったときだけ残って次の対戦相手と闘い、どちらかのチームの最後の一人が負けるまで闘うという団体戦。選手は引き分けると敗退だから勝つために積極的に技を仕掛けるし、体重差があってもハンデ付けて闘うしで、どう敵のエースを止めるかとか、見所充分でかつ桜庭選手始め有名どころや柔術界の猛者も呼んできていて、柔術家とかここで勝たずになんとすると気合い入ってるし、呼んでもらえた若手とか光栄に感じているようでチームの勝利に貢献できなくて涙してるシーンもあったりして、とにかく暑苦しいぐらいに盛り上がってて素晴らしい。好評のようで第3回まで行われたところだけど、1回目の所英男選手の腕十字が決まったときは心底嬉しかった。それで負けることはあるにしてもあの思い切りの良さが所選手の魅力である。決めるべきところで決めてくれた。第4回以降も待ち遠しい。
「格闘代理戦争」はUFCにも「タフ」とかいう若手育成のイベントがあって人気番組になってるらしいけど、その日本版で1回目は優勝したら賞金とK-1契約、2回目は賞金とワンチャンピオンシップとの契約。で「代理戦争」ってぐらいで、過去の名選手や現役選手が若手を推薦して金の卵を探すというトーナメント戦。
これが、仲の悪い有名選手間の舌戦やらもお約束的に盛り上げつつ、それぞれ若い選手が夢を目指してここ一番の機会を手に入れようともがくさまが、そのひたむきさ純粋さが胸を打つ。2回目の決勝で負けた選手が、完全に魂抜けて控え室戻るまで顔をあげられなかったのをカメラが追ってたりして「コレですべてが終わったわけじゃないんだヨ」と声をかけてあげたかったけど「コレにすべてをかける」と挑んだ結果の敗退を彼はどう受け止めていくのか、難しいヤね。仕事も辞めてきたそうだけど「地下格闘技」にも出てたとか紹介されていて今アニメやってる「バキ」みたいなのを一瞬想像したけど、アマチュアバンドのライブみたいに、会場借りてお客集めて一杯飲みながら格闘技が見られるという素人興行があるらしい。恥ずかしながら初めて知った。
あと、山本KID選手が首の怪我の関係なのか激痩せしてて心配だ。指導者としては選手時代のやんちゃな姿とは対照的になかなかに理論派であり後身も育ってきているので、しっかり治療して名伯楽になって欲しい。
「格闘代理戦争」とも連携していることからも明らかなように、アベマTVはアジア最大の格闘技団体「ワンチャンピオンシップ」を推していくようで、過去の日本人選手名試合特集とかもやっている。日本人選手も結構出場しているのでアベマTVでも以前から放送していたので観ていたけど、最近日本人選手なかなか勝てないのよね、頑張って欲しいところ。アジア各地を回って大会開催していて、ルールも独特で総合では四つん這いの選手への膝蹴りOKとか、ケージの中で薄いオープンフィンガーグローブで闘うムエタイルールの試合とか過激で迫力ある。ムエタイの有名どころとか良く上がってくるけど強すぎる。
というような過激さももちながらも、選手の健康管理も真面目に考えていて、計量時に「尿比重検査」というのを2016年から導入しているそうで、あんまりカラカラに水抜いて計量に上がると失格してしまうようである。水抜いて落とすつもりが軽量失敗とか散見されるなかで、なかなか先進的な取り組みで感心した。これからも楽しみに視聴したい。世界一のUFCがなんぼのもんじゃ、アジアにも面白い地域団体有って盛り上がってまッセ。
最後に、格闘技ネタに付き合ってくれた読者の皆様に、面白い格闘技マンガと書籍ベスト3を独断と偏見で選んで紹介しちゃいます。ジャカジャン。
○ナマジ的格闘技マンガベスト3
1位「拳奴死闘伝セスタス」、2位「帯をギュッとね」、3位「ホーリーランド」
「セスタス」はローマのネロ皇帝の時代の拳奴の闘いを歴史ネタもちりばめつつ描く隠れた名作。師匠ザファルの勝負哲学に痺れる。
「帯ギュ」は往年の少年サンデー人気柔道マンガ。柔道という汗臭そうな題材なのにちょっと小洒落た青春群像劇で恋あり笑いあり、でも熱いゼ。
「ホーリーランド」はいきなり作者が自身の経験から解説を始めるというのが妙なホント臭さを醸し出していた路上格闘モノ。
○ナマジ的格闘技本ベスト3
1位「世界喧嘩旅」、2位「人間処刑台」、3位「空手道ビジネスマンクラス練馬支部」
「世界喧嘩旅」は抱腹絶倒驚天動地の破天荒な漢、大山倍達総帥の強いヤツに会いに行く旅路。
大石圭「人間処刑台」は多額の掛け金が動き、時にリング上で死者も出る何でもありの「地下格闘技」の世界で闘うモノ達の群像劇。描写がグロいけど闘うモノの純粋な有り様が落差で美しい。
「空手道」は漠先生の異色の格闘技モノでサラリーマンモノ。世界一とか目指さない人間にもある「強くありたい」というそれぞれの闘いに共感。
そういえばお薦めされてたボクシング小説「BOX」まだ読んでないな。他にも面白い格闘技モノとかあったら教えてネ。
2018年8月5日日曜日
UMAの証明
幽霊やら霊現象なんてモノは存在しないと思っている。あんなもんはインチキが半分、残りが枯れ尾花と幻覚とかの脳の誤認識で間違いないと思っている。
「宇宙人」はいるんだろうと思っている。宇宙は広いんだろうから人間のようなタンパク質の体をもつ知的生命体はもとより、SFに出てくるような珪素生物とか地球の生物と全く違う仕組みで自己増殖していく「生命」がいてもおかしくないぐらいに夢見がちなことを考えている。
でも、その宇宙人がUFOに乗って地球にやってきているというのは、ないだろそれは?と思っている。宇宙人がやってくるには宇宙広すぎで距離が遠すぎる。メッセージとか情報が宇宙から届くのならまだ分かるけど、ご本人がおいそれとやってくるわけがない。宇宙人ネタなんてのはインチキが半分、以下略。
ただ、いることの証明は1個体でもつかまえてくればすむけど、いないことの証明はいわゆる「悪魔の証明」になるので、事実上不可能だとは知っている。でも、まあいないって。
一方でおなじオカルト系でも、ネッシーとかイエティとかUMA(未確認生物)はいてもおかしくないと思っている。
幽霊や宇宙人のような1個体も捕まっておらず、過去に一度もその存在が証明されたことがない類のわけのわからんモノとは基本的に性質が違うと思っている。
「UMAだって過去に1匹も捕まっていないじゃないか?」と思われるかもしれないけれど、そこがそもそもの認識から間違っている。UMAは1個体捕まった時点で標本にされ未確認生物から、過去に知られている生物にあたるのか、新種なのか研究者が報告し、確認された生物種となるのである。
いま未確認生物とされているものは1匹も捕まっていないとしても、過去に未確認生物だったのが捕まって「確認済み」となった例はいくらでもある。
例えば、とある島に山で夜目が光るので「ヤマピカリャー」と呼ばれる未確認生物がいるといわれていたが、長くその存在は明らかとならなかった。でも、現地の人は食べたりしていて、噂を聞きつけた作家と科学者が懸賞金掛けて探しだして実在することが証明された。そして既存の生物とは種レベルで違うということで新種として報告されたのが「イリオモテヤマネコ」である。この手の「確認された」生物でもっとも有名なのはゴリラだろうか?
捕まえてみたら機知の生物だったなんてオチがつくことも過去にたくさんあっただろう。漁師が麻縄とかで釣りをしていた時代、地中海である季節になると、ものずごい力で縄をブッちぎっていく獲物が掛かることがあって、どんな化け物が掛かってるんだろうと漁師たちはいろいろと想像していたけど、釣りあがらないので確認ができない。ところがナイロンが発明されて、けた違いに丈夫な縄が釣りに使われるようになると、その化け物が揚がるようになった。産卵のために回遊してきた巨大なタイセイヨウクロマグロだった。なんてのも有名な話。
「でも今の時代に、まだ未確認の大型生物なんてあり得ないでしょ」と思うかもしれない。確かにネス湖のような閉鎖的な水域に首長竜はいないかもしれない、でも海ならまだ、シーサーペントが本当に首長竜でした、って報告が飛び込んできても、驚かないわけじゃないけどあり得ると納得できる。だって、メガマウスなんていう大型のサメが始めて確認されたのが1970年代とかの近年っていう前例があるし、最近でもドローンでの観察で魚類第二の巨体を誇るウバザメが多数集まるという行動が始めて報告されたっていうぐらい、コレまでも海の調査なんてずっと行われてきたけれど、それでもまだ神秘が眠っていると確信できるぐらいに海は広くて深いのである。
首長竜はさすがに卵産みに上陸する必要があるから、いるのなら今まで見つからなかったわけがない、とかしたり顔で言う人間は「遠い海から来たCOO」を読んで「その手があったか」と蒙を啓かれるといい。
でも21世紀にもなって、さすがに陸上はもう人の手が入ってないところはなくて、先日「ダーウィンが来た!」でやってたオリンギートみたいに既知の種だと思ってたらDNAとか調べてみたら新種だった的なのはあるにしても、昆虫とかならともかく大型の生物でまったくの未知の新種が出てくるとかは正直無いと思っていた。
ところが、フィリピンのルソン島なんていう人口の多い人の手の入った場所から、2009年に2mにも達するオオトカゲの新種が見つかっている。現地の部族民には狩猟対象として知られていて、狩られた写真を見た研究者が「こんなところにオオトカゲがいるのか?」と驚いて調査したところ、高い樹上で暮らす草食性のオオトカゲを発見しVaranus bitatawaと名付けられた。尻尾が長いにしても2mのオオトカゲが見逃されてたってんなら、大概の陸生UMAがこれまで見逃されてきていても何らおかしくないジャンかと、とっても驚いたことを覚えている。コイツにしろイリオモテヤマネコにしろ昔から食っちゃってた地元民からしたら当たり前のことをいまさらなに学者先生は騒いでるんだと、オラいるって最初から言ってるべさ!という感じだろう。
現在未確認生物とされているヤツらでも、現物の標本をもとに報告されリンネ先生が基礎を築いた分類体系に整理され名前を付けられたらUMAはその時点でUMAじゃなくなるのである。
というのが、今回「枕」で、夏だし読書感想文の季節ということで「ナマジの読書日記」出張版でお送りします。
課題図書は角幡祐介「雪男は向こうからやって来た」である。
角幡祐介先生は、高野秀行先生と並び、新刊出たら全部読まねばならない、と私が思っている現代日本を代表する冒険作家である。
高野先生が、楽しくアヘン中毒になりながらアヘン村からの潜入報告を爆笑必至の筆致で書いてくるよな”天然系”なのに対して、角幡先生は、なんというかこじらせているというかとことん不器用で真面目で、「冒険とはなんぞや」なんて哲学を常に自分自身に問いかけているような芸風で、にもかかわらずどこか悲哀を伴ったような可笑しさが付随してくる味わい深い文章を書く作家なのである。控えめにいってとってもお好みである。
この冬から春にかけて、活字の本が読めなくなるナマジ的読書生活危機をむかえて、読まずにいられなくなる面白い本を読みまくろう、っていうそんな本があれば苦労しないってな方針を立てた。そのときに、自分の読書の傾向と対策を分析して、冒険探検関係と釣り海関係はどうも手堅そうだということで、その手の本で積んであるのから読み始めてみて、何とか目論見通り危機を脱しつつある。角幡先生の作品では「漂流」を先に読んでいて、これまたクッソ面白かったので、今作は角幡先生の実質的処女作らしく、作家の処女作って荒削りながらも作者の初期衝動のほとばしる「魂の力作」であることが多くて、実は読める本がなくなった時に読む用として「確保」に整理していた本だったけど、今読まずしていつ読むということで読んでみた。
期待以上の面白さ。内容は角幡先生が新聞記者を辞めてツァンポー渓谷探検に行く前にひょんなことから日本の「イエティ・プロジェクト・ジャパン 2008雪男捜索隊」に参加したときのルポなんだけど、ぶっちゃけUMAファンなら「ヒマラヤのイエティってクマ説で決着付いたんでしょ?」ぐらいに思ってて、イエティはUMA界では超有名どころの大物だけど、今更それ程には興味をそそられない対象だと思う。
でも違った、なんちゅうかネットに飛び交う公式発表的な短くまとめられた情報だけを拾っていると、確かに地元民がイエティの毛皮として持っていた毛皮がDNA鑑定の結果ヒグマだったとか、2017年のアメリカの研究チームの「クマの可能性大」とする報告とかしか見えてこずクマ説で決着しているように思える。
ファストフードのように簡単に素早く消費されていく情報では、おつゆタップリの本当に美味しいところが抜け落ちてしまっているということをまざまざと感じさせられた。
角幡先生は、とにかく自分の求めるモノに対して、それが未知の渓谷だろうと既知の探検家の足跡だろうと、徹底的に文献にあたり可能であれば関係者に話を聞き、もうそれは執拗と言って良いぐらいに丹念に丹念に情報を集め調べた上で、実際に自分の目と足を使って近づくという方法をとる。
今回のイエティについても1887年のヒマラヤ研究家ワッデルの報告から始まって、あの世界の田部井淳子さんの「私は見た」という証言も本人から聞き取ってきていたりする。田部井さんも見てるんだ!
でもって、数々の文献、証言を総合して角幡先生はイエティには2種類いて大きな動物であるズーティと地元で呼ばれるモノは、生息地やらなにやらから考えてやっぱりヒグマと考えるべきだろうと結論づけている。でも地元でミィティと呼ばれる14歳ぐらいの少年程度の小ささで全身赤みがかった毛で覆われている動物がどうも別にいるようで、「雪男(≒イエティ)と呼ばれる未知の動物が本当にヒマラヤにいるのなら、その正体はこの小さいミィティの方である可能性が高そうなのだ。」と書いている。
このことは実は角幡先生が参加した雪男捜索隊でも共通認識で、普通雪男イエティと聞いて想像するような白い毛に覆われたゴリラのような猿人は”真面目”に雪男を捜索している人達からは既に鼻で笑われるような胡散臭い雪男像のようなのである。
ヒグマだろうと推定されているズーティにくらべても、その正体が今でもぜんぜん明らかではないミィティについて、何かがいるんだろうことは本書を読めば分かる。それが、既知のサルの一種なのかあるいは斜面を登っているので二足歩行しているように見えたカモシカの類とかなのか、本当に未知のサルの一種が棲息しているのかぶっちゃけ分からない。でも何かいる、あるいは見えるのである。じゃないとおかしいと思うぐらいに足跡やら目撃証言やらが出てくるのである。
情報社会に流れる表面的な「イエティはクマ」というツマンネエ情報の陰にひっそりと隠れてミィティは今もヒマラヤの山中を歩いているのかも知れないのである。
なんと素敵な心躍る話ではないだろうか。
こういう面白い話が読めるから活字の本を読むことはやめられないし、本というものが例え電子情報になったとしても、短くまとめたネットに転がってるような情報じゃなくて、それはそれで便利だし面白いことも認めるけど、一人の著者が魂込めてガリガリと書いた長いモノガタリを読む楽しみは人間が滅びるまでは不滅だろうと思うのである。
「宇宙人」はいるんだろうと思っている。宇宙は広いんだろうから人間のようなタンパク質の体をもつ知的生命体はもとより、SFに出てくるような珪素生物とか地球の生物と全く違う仕組みで自己増殖していく「生命」がいてもおかしくないぐらいに夢見がちなことを考えている。
でも、その宇宙人がUFOに乗って地球にやってきているというのは、ないだろそれは?と思っている。宇宙人がやってくるには宇宙広すぎで距離が遠すぎる。メッセージとか情報が宇宙から届くのならまだ分かるけど、ご本人がおいそれとやってくるわけがない。宇宙人ネタなんてのはインチキが半分、以下略。
ただ、いることの証明は1個体でもつかまえてくればすむけど、いないことの証明はいわゆる「悪魔の証明」になるので、事実上不可能だとは知っている。でも、まあいないって。
一方でおなじオカルト系でも、ネッシーとかイエティとかUMA(未確認生物)はいてもおかしくないと思っている。
幽霊や宇宙人のような1個体も捕まっておらず、過去に一度もその存在が証明されたことがない類のわけのわからんモノとは基本的に性質が違うと思っている。
「UMAだって過去に1匹も捕まっていないじゃないか?」と思われるかもしれないけれど、そこがそもそもの認識から間違っている。UMAは1個体捕まった時点で標本にされ未確認生物から、過去に知られている生物にあたるのか、新種なのか研究者が報告し、確認された生物種となるのである。
いま未確認生物とされているものは1匹も捕まっていないとしても、過去に未確認生物だったのが捕まって「確認済み」となった例はいくらでもある。
例えば、とある島に山で夜目が光るので「ヤマピカリャー」と呼ばれる未確認生物がいるといわれていたが、長くその存在は明らかとならなかった。でも、現地の人は食べたりしていて、噂を聞きつけた作家と科学者が懸賞金掛けて探しだして実在することが証明された。そして既存の生物とは種レベルで違うということで新種として報告されたのが「イリオモテヤマネコ」である。この手の「確認された」生物でもっとも有名なのはゴリラだろうか?
捕まえてみたら機知の生物だったなんてオチがつくことも過去にたくさんあっただろう。漁師が麻縄とかで釣りをしていた時代、地中海である季節になると、ものずごい力で縄をブッちぎっていく獲物が掛かることがあって、どんな化け物が掛かってるんだろうと漁師たちはいろいろと想像していたけど、釣りあがらないので確認ができない。ところがナイロンが発明されて、けた違いに丈夫な縄が釣りに使われるようになると、その化け物が揚がるようになった。産卵のために回遊してきた巨大なタイセイヨウクロマグロだった。なんてのも有名な話。
「でも今の時代に、まだ未確認の大型生物なんてあり得ないでしょ」と思うかもしれない。確かにネス湖のような閉鎖的な水域に首長竜はいないかもしれない、でも海ならまだ、シーサーペントが本当に首長竜でした、って報告が飛び込んできても、驚かないわけじゃないけどあり得ると納得できる。だって、メガマウスなんていう大型のサメが始めて確認されたのが1970年代とかの近年っていう前例があるし、最近でもドローンでの観察で魚類第二の巨体を誇るウバザメが多数集まるという行動が始めて報告されたっていうぐらい、コレまでも海の調査なんてずっと行われてきたけれど、それでもまだ神秘が眠っていると確信できるぐらいに海は広くて深いのである。
首長竜はさすがに卵産みに上陸する必要があるから、いるのなら今まで見つからなかったわけがない、とかしたり顔で言う人間は「遠い海から来たCOO」を読んで「その手があったか」と蒙を啓かれるといい。
でも21世紀にもなって、さすがに陸上はもう人の手が入ってないところはなくて、先日「ダーウィンが来た!」でやってたオリンギートみたいに既知の種だと思ってたらDNAとか調べてみたら新種だった的なのはあるにしても、昆虫とかならともかく大型の生物でまったくの未知の新種が出てくるとかは正直無いと思っていた。
ところが、フィリピンのルソン島なんていう人口の多い人の手の入った場所から、2009年に2mにも達するオオトカゲの新種が見つかっている。現地の部族民には狩猟対象として知られていて、狩られた写真を見た研究者が「こんなところにオオトカゲがいるのか?」と驚いて調査したところ、高い樹上で暮らす草食性のオオトカゲを発見しVaranus bitatawaと名付けられた。尻尾が長いにしても2mのオオトカゲが見逃されてたってんなら、大概の陸生UMAがこれまで見逃されてきていても何らおかしくないジャンかと、とっても驚いたことを覚えている。コイツにしろイリオモテヤマネコにしろ昔から食っちゃってた地元民からしたら当たり前のことをいまさらなに学者先生は騒いでるんだと、オラいるって最初から言ってるべさ!という感じだろう。
現在未確認生物とされているヤツらでも、現物の標本をもとに報告されリンネ先生が基礎を築いた分類体系に整理され名前を付けられたらUMAはその時点でUMAじゃなくなるのである。
というのが、今回「枕」で、夏だし読書感想文の季節ということで「ナマジの読書日記」出張版でお送りします。
課題図書は角幡祐介「雪男は向こうからやって来た」である。
角幡祐介先生は、高野秀行先生と並び、新刊出たら全部読まねばならない、と私が思っている現代日本を代表する冒険作家である。
高野先生が、楽しくアヘン中毒になりながらアヘン村からの潜入報告を爆笑必至の筆致で書いてくるよな”天然系”なのに対して、角幡先生は、なんというかこじらせているというかとことん不器用で真面目で、「冒険とはなんぞや」なんて哲学を常に自分自身に問いかけているような芸風で、にもかかわらずどこか悲哀を伴ったような可笑しさが付随してくる味わい深い文章を書く作家なのである。控えめにいってとってもお好みである。
この冬から春にかけて、活字の本が読めなくなるナマジ的読書生活危機をむかえて、読まずにいられなくなる面白い本を読みまくろう、っていうそんな本があれば苦労しないってな方針を立てた。そのときに、自分の読書の傾向と対策を分析して、冒険探検関係と釣り海関係はどうも手堅そうだということで、その手の本で積んであるのから読み始めてみて、何とか目論見通り危機を脱しつつある。角幡先生の作品では「漂流」を先に読んでいて、これまたクッソ面白かったので、今作は角幡先生の実質的処女作らしく、作家の処女作って荒削りながらも作者の初期衝動のほとばしる「魂の力作」であることが多くて、実は読める本がなくなった時に読む用として「確保」に整理していた本だったけど、今読まずしていつ読むということで読んでみた。
期待以上の面白さ。内容は角幡先生が新聞記者を辞めてツァンポー渓谷探検に行く前にひょんなことから日本の「イエティ・プロジェクト・ジャパン 2008雪男捜索隊」に参加したときのルポなんだけど、ぶっちゃけUMAファンなら「ヒマラヤのイエティってクマ説で決着付いたんでしょ?」ぐらいに思ってて、イエティはUMA界では超有名どころの大物だけど、今更それ程には興味をそそられない対象だと思う。
でも違った、なんちゅうかネットに飛び交う公式発表的な短くまとめられた情報だけを拾っていると、確かに地元民がイエティの毛皮として持っていた毛皮がDNA鑑定の結果ヒグマだったとか、2017年のアメリカの研究チームの「クマの可能性大」とする報告とかしか見えてこずクマ説で決着しているように思える。
ファストフードのように簡単に素早く消費されていく情報では、おつゆタップリの本当に美味しいところが抜け落ちてしまっているということをまざまざと感じさせられた。
角幡先生は、とにかく自分の求めるモノに対して、それが未知の渓谷だろうと既知の探検家の足跡だろうと、徹底的に文献にあたり可能であれば関係者に話を聞き、もうそれは執拗と言って良いぐらいに丹念に丹念に情報を集め調べた上で、実際に自分の目と足を使って近づくという方法をとる。
今回のイエティについても1887年のヒマラヤ研究家ワッデルの報告から始まって、あの世界の田部井淳子さんの「私は見た」という証言も本人から聞き取ってきていたりする。田部井さんも見てるんだ!
でもって、数々の文献、証言を総合して角幡先生はイエティには2種類いて大きな動物であるズーティと地元で呼ばれるモノは、生息地やらなにやらから考えてやっぱりヒグマと考えるべきだろうと結論づけている。でも地元でミィティと呼ばれる14歳ぐらいの少年程度の小ささで全身赤みがかった毛で覆われている動物がどうも別にいるようで、「雪男(≒イエティ)と呼ばれる未知の動物が本当にヒマラヤにいるのなら、その正体はこの小さいミィティの方である可能性が高そうなのだ。」と書いている。
このことは実は角幡先生が参加した雪男捜索隊でも共通認識で、普通雪男イエティと聞いて想像するような白い毛に覆われたゴリラのような猿人は”真面目”に雪男を捜索している人達からは既に鼻で笑われるような胡散臭い雪男像のようなのである。
ヒグマだろうと推定されているズーティにくらべても、その正体が今でもぜんぜん明らかではないミィティについて、何かがいるんだろうことは本書を読めば分かる。それが、既知のサルの一種なのかあるいは斜面を登っているので二足歩行しているように見えたカモシカの類とかなのか、本当に未知のサルの一種が棲息しているのかぶっちゃけ分からない。でも何かいる、あるいは見えるのである。じゃないとおかしいと思うぐらいに足跡やら目撃証言やらが出てくるのである。
情報社会に流れる表面的な「イエティはクマ」というツマンネエ情報の陰にひっそりと隠れてミィティは今もヒマラヤの山中を歩いているのかも知れないのである。
なんと素敵な心躍る話ではないだろうか。
こういう面白い話が読めるから活字の本を読むことはやめられないし、本というものが例え電子情報になったとしても、短くまとめたネットに転がってるような情報じゃなくて、それはそれで便利だし面白いことも認めるけど、一人の著者が魂込めてガリガリと書いた長いモノガタリを読む楽しみは人間が滅びるまでは不滅だろうと思うのである。
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