2018年8月25日土曜日

PCチェアディテクティブ 身近な魚たちの謎編

 アタイ悔しいッ!

 自分の身近な魚についてよく見て考えて、そこから釣りにおける一手を導き出すも良し、魚とそれを取り巻く様々な事象を知ることそのものを楽しんでもまた良し。とにもかくにも五感六感全開で感じて観察してアーでもないコーデもないと思索にふけっておくべきと、口を酸っぱくして書いてきたにもかかわらず、ナマズに2つの種が含まれていそうだということについぞ思い至ってなかった。気付いていてもおかしくない事象を耳に入れており違和感まで感じていたのに、そこからさらに突っ込んで行けてなかった。

 悔しいので、身近な魚についていくつか通説に反するような「ナマジ予想」を紹介しておきたい。ワシも出し抜かれてばかりっちゅうわけにはいかんけんのぅ。
 「釣り人の常識」が間違っているなんてのは、あげてたらきりがないぐらいでむしろ「釣り人の常識」なんて嘘ばっかりなので基本疑ってかかった方が良いってぐらいの感じがするので今回は放置しておいて、ナマジ予想が正しければ図鑑やら今のところの学術的な報告が訂正されそうなものをいくつか紹介してみたい。過去にも書いたことあるネタもあるけどご容赦を。

 その1「イワナ4亜種説はデタラメ」これは河川毎、支流毎のイワナの遺伝子レベルの調査報告を読んで確信したんだけど、アメマス、ニッコウイワナ、ヤマトイワナという亜種に分けられるような違いは全くなさそう。むしろナマズとタニガワナマズのように同じ川でも支流の堰堤上と本流のイワナが別物っぽい印象だった。これはイワナ釣ってても特にアメマスとニッコウは中間的なのが多いし同じ川でどちらのタイプも釣れてくるという釣り人の感覚からもそう思う。ゴギだけは分布域が分断されているし亜種レベルで違うかもというのは、釣り師としても全国の川を釣り歩いた今西錦司先生のご意見で、私はゴギは釣ったことないので語る資格はないけど、実際に釣り場で感じて考えた今西予想に一票入れたい。このへん再整理がDNAの調査とかでハッキリしそうに期待したんだけど、内水面の魚なんて水系毎に固有の遺伝情報持ってる集団とかになりがちで、違うちゃ違うけどみんな違うので整理あんまり進まないのかも。

 その2「マハゼの主食は植物プランクトン系のデトリタス」 図鑑とかでもマハゼは小型の甲殻類や多毛類を食べる肉食系と書かれている。釣り餌としても虫餌を中心にボイルホタテや冷凍エビとか動物質のものを使うので釣り人としてもすんなり納得いきそうなモノである。ウィキペディア先生にも「食性は肉食性が強く、多毛類・甲殻類・貝類・小魚などを貪欲に捕食するが、藻類を食べることもある。」と書かれている。
 でも、釣ってきて腑分けしてみると、多毛類・甲殻類なんてのはほとんど入っているのを見かけない。写真の個体が典型なんだけど胃内容物は左の塊で緑色の藻類の繊維がグチュッと絡まっている。その後ろの腸管内容物は消化液の色なのか茶色がかったペースト状のものであり泥なのか藻類なのか判別しかねる。
 湾奥の運河で見釣りで釣っていると、石の上に陣取ってモシャモシャと石に付いた苔を食べているような行動を取る個体も見受けられ、石の上を縄張りとして他の個体を追い払う行動も見られる。
 腸管の長さが植物専食にしては短いので、海の比較的深い所では動物プランクトンや小型甲殻類をもっぱら食べているのかもしれない。
 でも、河川などでは藻類が利用できるので、まるでアユのように藻類利用しているのではないだろうかと思っている。ハゼ釣ってて朝まずめあまり早い時間よりは、お日様登ってくる時間に活性上がるのも藻類の増殖速度とかと関係してるのかなと密かに思っている。
 アユも虫食ってても、活性上がるのはお日様上がってくる時間とかが多くて、かつ消化管がそれ程長くない、もともと動物食性の魚が藻類食うようになっている感じがして意外なほどマハゼと共通点があるように感じている。
 ということで、マハゼって主な生息地である浅い日の光の届く水域においては主食は藻類やデトリタスといった底生の植物質のモノなのではないかというのがマハゼに関するナマジ予想である。
 「うちの方では胃内容物アミとか小型甲殻類ばっかりだよ」という方は教えてくれると嬉しいです。

 その3「ウナギはエッグフィーダー」 今回の目玉ネタです。ウナギの孵化したばかりの稚魚ってナニ食ってるのか謎が多くて、胃内容物のDNA調べると動物プランクトンが出てくるらしくて、最近だと窒素同位体比で推定して動植物プランクトンの死骸や糞の「マリンスノー」だといわれていてこれが正解だろうと思われているけど、思い切って「ダウト」。
 根拠は孵化直後の稚魚の顔を見た直感。柳の葉の形のレプトケファルスまでいくとマリンスノー食ってるって言われてもそうなんだろうなと納得する顔しているけど、その前の段階プレレプトケファルスの顔は下あごから歯がつきだしていて凶暴でマリンスノー食ってる顔じゃない。でも動物プランクトンとか与えても育つほど食べない。育つのは今のところ深海鮫の卵ベースの餌を与えたとき。
 ナニが餌なのかよくわからん?というのを親が産んだ卵を初期餌料として食べると考えると矛盾が少ない。胃内容物からウナギのDNAが出てきてもそれが餌とは気付かないというのが盲点になってるんじゃないかとナマジ大胆予想。どうでしょう。当たってれば実験室で孵化した稚魚がまだ孵化してない卵食いまくってバレるはずなのでハズレの確率高いとは思うけど大穴狙いで行きます。ウナギは親が稚魚の初期餌料として卵を産んで与える「エッグフィーダー」。

 その4「遺伝因子にはまだ知られていない謎がある」 ちょっと身近な魚たちを離れた大きなネタだけど、最近の生物関係の研究手法としてDNA調べたりといった分子生物学的な手法が最終的な切り札となりつつあるんだけど、どうも調べてみたら訳が分からない結果が出たというのが、何か「違和感」感じる程度に目に付く。単なるミスやら個別に納得できる背景やらがある場合もあるんだろうけど、なにか我々人間がまだ知らない「遺伝」をめぐる大がかりな仕組みが、ドカッと残っているんじゃないかという気がする。
 違和感感じた例としては、日本のゲンゴロウブナ除くフナ類のDNA調べていくと、今の図鑑で亜種と整理されている分け方と全く関係なく、3パターンぐらいに分かれるように見える結果が出たりするらしい。なんてのとか、どっかで地域の生物の多くが種が生まれて数10万年しかたってないという結果がでたりとかいうのも目にした。
 ビシッと快刀乱麻を切るごとしの結果が出ることもある反面、どう理解するべきなのか判断に困る妙な結果がでることが無視できない程度にはあるように感じている。
 「DNAを調べた結果」が絶対の正解ではないのかもって囁くのよ・・・私のゴーストが。

 だれか研究者とかが報告してくれて予想外れててもご愛敬。もし正解だったら「言ってたとおりでしょ」と大いばりするつもりなので、その時は拍手喝采をお願いします。

4 件のコメント:

  1. はじめまして、たくまと申します。
    いつも楽しく読ませていただいています。
    マハゼの話なのですが、シャローの見えハゼをぼーっと観察していると結構藻類食っていますよね。実際江戸川放水路近辺で釣れたハゼの腹を開くと、アミが湧いているとき以外は藻類やシアノバクテリア?が出てくることが多いです。
    あと個人的な意見なのですが、マハゼは陸封されても繁殖できるのではないかと思っています。
    ある鶴見川水系の支流で海からは相当距離がある河川というかまあドブなのですが、冬季は工事と渇水で干上がっていた箇所があったにも関わらず、春に小物釣りをしていると産卵後のようなげっそりした大型のマハゼと小型の底性生活に移った直後のマハゼがよく混じりました。
    産卵期のタイミングは海から遡上してくるコースに水がありませんでしたし、小指の第一関節よりも小さいマハゼが海から瀬を超えて堰を超えて干上がった河原を這って遡上してくることは考えにくいので間違いないと思っています。
    スズキやクロダイもそうですが、汽水域に生息している魚の淡水への順応性には驚かされることばかりですね。

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  2. たくまさん おはようございます

     やっぱり少なくとも東京湾とそこに注ぐ河川のマハゼは藻類主食ってくらい食ってますよね。

     しかし、陸封型マハゼは面白いですね。ドブで泥底なのがかえって巣穴掘りやすくていいとかあるのかもとか妄想がはかどります。
     どっか水産試験場とかで調べてくれないですかね?産業的には汽水含め内水面の魚なんて遊漁料稼げるアユとワカサギぐらいしか価値無いのかも知れませんが、県民の楽しい余暇のためにマハゼとか大いに貢献してくれてるはずでちょっとぐらい研究費回してもバチアタらないし納税者としても歓迎なんですが、そういう基礎研究に金がつくご時勢じゃないんですかね。などと愚痴ってしまいます。

     汽水域の生き物の順応性というか、どうなっても生きていけるたくましさはホント感心しますね。テナガエビがダム湖にいるのを見て、エビだし雨の日テクテク歩いて登ったんだろうなご苦労さん、と思ってたらテナガエビは陸封型もいると知ってその変幻自在ぶりに感動を覚えたのを思い出しました。

     近所でテナガもマハゼもそういう謎や驚きも含めて楽しめることの贅沢を日々感じています。

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  3. 「ナマジ予想」ぷぷw
    解明したら赤い絨毯あるいて記念講演。しかし
    解けないまま知の迷宮をさ迷い続ける学者多数…。
    ってな緊迫感ないのがイイw

    ハゼが何食べててもまず日本の景気や世界情勢
    には関係ないのに、こういう話読むと面白いのは
    なぜでしょう?
    日野川でゴギ似のイワナ釣ったときネットの写真
    と比べて見て「ゴギはもっと虫食い紋でかいのか」
    とか残念がっていたのがちと恥ずかしい。イワナの
    分類さえ確定されてはないんですねー。
    近い将来、新聞の片隅に「新発見ハゼの食事情」の
    記事が出たら、ここの読者の皆さんみんなでニヤリと
    笑って祝杯あげましょう!

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    1. kazuさん おはようございます

       イワナに限らず、「種」とかの分類って本来端の方でグチャッと混ざってて当たり前の、さらには日々進化とかいって変わっていく生き物を人間の都合でなるべく定義にあうように線引いただけのもので、新しい知見でより定義に合うような整理がつくなら更新すべきで永遠に確定しない性格のものだと思っています。

       でも「種」を知りたい、たとえそれが経済的にとかは何の価値も生じ得なくても!なんていう知的好奇心って、例えば変なルアーに魚が「何だろう?」って寄ってくるような行動に原型が見られるような、生物としてかなり普遍的にもってる餌を探したり分布域を広げたりする上で役に立ったりする大事な資質なんじゃないかと思っています。
       日本の景気や世界情勢に何の関係もないヨタ話を生物としての人間の本能が面白がっているってことなのかなと思います。

       何の役にも立たないであろう私のヨタ話がkazuさんの本能を刺激したのならとってもとっても嬉しいです。

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