2018年1月26日金曜日
絶対王者の陥落
フロロのハリスはというか細いハリスはクレハ社「シーガーグランドマックス」で間違いない、と永年思ってきた。
金地に赤のパッケージ、定価が50m3千円もするハリスは、出た当時、今までのエースとかとそんんなに違うわけがないやろという予想に反して、ぶっちぎりに良いフロロカーボンのハリスだった。最初に結んだときにもう、結びがそれまでのフロロカーボンのように堅い感じじゃなくてしっとりキュッと締まる感じがしてそれだけでちょっと違うなと思わされたし、とにかく強度があってスレに強くて、表面がザラザラになるような場面でも切れずに魚が上がってきて「グランドマックスで良かった」と胸をなで下ろす経験を、愛用者なら何度かしているのではないだろうか。
「直径が半分ぐらいになる切れかかった状態でも魚があがった」と言っている釣り人がいたのもあながちホラとは思えない高性能さに絶大な信頼を置いていた。
ただ、ルアーのリーダーのような太いハリスであれば、引っ張り強度が必要なのはリーダー部分じゃなくて道糸だし、スレに強いハリスが欲しければ物理的に太いハリスを選んでしまえば良いので、わざわざそのために高価なグランドマックス様にご登場願わなくても大丈夫で、ジギングとかの太いハリスはデュエル社の「船ハリス」つかってたし、ナイロンの太いのを選択することもある。普段のシーバス釣りでは生分解性ショックリーダーが廃盤で手に入らなくなってからは、シーガーの「エース」や「フロロショックリーダー」を使っている。昔あったヤマトヨ社の「ジョイナー」は安くて良いフロロハリスだったのだけど最近見かけない。
ちょっと脱線するけど、生分解性ショックリーダーの「RTE」はビヨーンと良く伸びるラインでPEを道糸に使う時にはクッションのように機能していたように思う。PE使用が全盛のシーバス用とかでアタリをはじかない「伸びるナイロンリーダー」とか売れないだろうか?などとアホなことも思ったりする。
話もどして、道糸より太い「リーダー」じゃない、フライのティペットのような細ハリスの場合、引っ張り強度も欲しいし細さも欲しいスレにも強くという贅沢なことをいい始めると結局シーガーグランドマックスだよねということになる。0.3号の細ハリスでデカいヤマメ掛けたときにあげる確率を少しでも上げたければ信頼する一番良いと思うハリスを結ぶしか選択肢はない。現在ではグランドマックスにはよりソフトなFXもあるようだけど、細ハリスではフロロカーボンのパリッとした張りがクシャッと絡まるのを防いでくれてる気がして個人的には好み。なのでFXは使ったことがないけど、強度は同程度でメーカーも釣り方とかでお好きな方を選んで欲しい的なことをいっている。
ただ最初の方でも書いたけど、グランドマックスちょっとお高い。さすがに定価では売ってなくて50m2千円弱で買える。あんまりハリス替えないインチキフライマンな私のフライフィッシングならそんなにハリス減っていかないのでたいしたことないんだけど、ヘラ釣りみたいなハリス交換しまくる釣りではその値段でもちょっときつい。
なんか安いのないかなと考えて、前回ナイロンの安いハリス候補を探したときに、細いルアー用のフロロの道糸は結構あったのを思い出して、試しにと買ってみた。
アジング用だの管理釣り場のマス用だの各社から出てるけど、シーガーからも「R-18」というのが出ていたので1ポンド0.3号相当のを買ってみた。フロロのラインはクレハ社シーガーブランドならやっぱり安心できる気がする。100mで定価は2500円だけど、実売は1500円程度。50m750円はかなりお買い得。
道糸用なのでややグランドマックスよりしなやかな感じか?まあそのあたりはおいおい使って調子を見ていくにしても、まずは強度がないと話にならないので、秤もってテスト。
スプールから出したラインの先に8の字でループを作って秤に掛けてスプールを引っ張ってゆっくり切れるまで。切れたところの数値を読む。グランドマックス、R-18それぞれ3回平均をとる。ホントはもっと回数必要だろうけどまあ主観的な感触得るぐらいはこのくらいでいける。
結果はグランドマックスが650g、540g、620gの平均約603.3g、対してRー18が500g、665g、570gの平均578.3gと結果としてはグランドマックスが僅差で逃げ切ってるけど、正直測る毎にぶれる誤差もあって、この程度の差は誤差の範囲内で「引っ張り強度」だけみれば同程度の強さがあるように感じた。
まったく、問題なくヘラ用のハリスとして使えそうな強度はある。
ナイロンじゃなくてフロロを選択する時って、ヘラの場合フロロのスレに対する強さとかはあまり必要じゃないので、パリッとした張りと伸びの少なさでアタリを明確に出したいときなどに使うのが想定されるけど、その役割は充分果たせると思う。そして安い。0.4号も買っちゃった。っていうかフライ用のティペットもR-18で良いんじゃなかろうかと思えてきた。
そして、こうなるとどうしても気になる。
今時のヘラ用ナイロンハリスとフロロハリスはどっちが引っ張り強度あるのか、試してみたくなった。
一昔前ならフロロはナイロンの1.5倍の引っ張り強度があるというのが大きな利点の一つに数えられていた。でも、前回ハリスの強度を測ったときに、今時のヘラ用ハリスはちょっと前のナイロンラインの1.5倍は引っ張り強度があって驚いたところである。
ならば、フロロと同じ方法で同じ太さを測ったらどう違うか、どちらが引っ張り強度的に優れているか。ナイロン代表には前回0.5号で驚きの強さを発揮してくれた「バリバススーパーへらハリス」0.3号に登場いただいた。
結果は、600g、650g、670g、平均640gで測ってるときの感触としても明らかに強い。伸びて粘る。ある程度予想できたモノの衝撃的である。
もちろんフロロカーボンのハリスには、引っ張り強度以外にも表面が硬くて耐摩耗性に優れスレに強い、張りがあって伸びが小さいのでアタリが直接的に出やすい、比重が重くて沈めやすい、屈折率が水に近く水中で見えにくいなどの利点もあるけど、一番の魅力はナイロンの約1.5倍の引っ張り強度があって細いのが使えるということだったように思う。
今日、引っ張り強度の欲しい状況ならハリスは高級ナイロンハリスを選ぶべきなのかも知れない。
例えば渓流のフライのティペットならヤマメ狙いなら細ハリスでの吸い込みやすさも含めてナイロンの方が適しているかも知れない。イワナだと石に潜られて擦れてとかがあるのでやっぱりあんまり細くないフロロの方が良いのかも。
というぐあいに、道具が日進月歩で進歩してきているので、それまでの常識がひっくり返ったときには、もう一度、なぜそのハリスを選んだのか、その釣りで使うハリスにはどんな要素が求められるのか、それを満たすハリスは現在どの商品なのか、なんていうことを再度検討して詰めておく必要がある。
最終的に引っ張り強度が欲しければ単純に太くして、食いが落ちるのは技術で補えばいいと割り切るにしても、選択肢として知っておくことや限界値を把握しておくのは悪くないはずだ。
道具を替えると、替えたことによる不具合も生じるので、道具が進歩してもあえて替えないという選択肢もあるけど、ラインやらハリやらは消耗品であり新しいのしか売ってなかったら買わざるを得ず、安くて良いのを探し続けることになるのかなと思っている。
ナイロンラインの高性能化にはちょっと注目して、今時の高性能ナイロンなら何ができるか?ってことも気をつけて考えておきたい。今時のナイロンラインは、もう我々古い釣り人が知っているそれとは別物と認識した方が良さそうだ。
新しい釣りを始めてみると見ること聞くこと試すこと新しいことばかりでやっぱりどうにも面白い。苦労もしてるけどね。ハリスも結んだし明日は寒いけど釣りに行くか。
2018年1月21日日曜日
BBCにようこそ
BBC(英国放送協会)はその名の示すように英国の「NHK」のような公共放送局で、賢明な読者のみなさんなら「ナマジそれ逆!」ってつっこみ入れてるところだと思うけど日本の公共放送局であるNHKがBBCの真似なんである。なにせ世界初のテレビ放送を1936年に開始したっていう老舗中の老舗放送局である。
そんなことはどうでもいいんだけど、我々昭和世代の生き物好きならBBC作製の映像は脳裏に刷り込まれているはすで思い入れも深いはずだ。
「見た憶えないんだけど?」と首を傾げている方も生き物好きなら「野生の王国」はます間違いなく見てたはずである。私もテーマ曲の「パーパッパパパパー」「トゥートゥトゥトゥトゥ トゥトゥットゥットトゥ~トゥ~」てな歌詞(若い人ポカーンかもしれんけどマジでこんな歌詞なんです。嘘やと思ったらユーチューブとかで聴いてみてね)と全力で飛び跳ねるカンガルーが蹴っ飛ばした石がオーストラリアの赤い大地の砂埃をまとってミサイルみたいに飛んでいくスロー映像が脳内自動再生余裕なぐらい刷り込まれている。
その野生の王国の見城美枝子さんと専門家とかがしゃべって解説入れてた映像の結構多くがBBC作製だったんである。延々とオーストラリアの珍しい猛禽類とか流してる回とかあって、なんでそんなマニアックなところを特集するんだろうと思ってたんだけど、今思うと元植民地の大英帝国つながりだったんだろうな。
マニアックさではネズミの死体にウジがわいてきれいに骨だけにされるまでを超早送りで映しだした映像とか当時はそんな映像初めて見たのでその技術力の高さにびっくりしたものである。
とにかく滅茶苦茶高い技術で撮られた映像がしかも美しくって、日本の映像技術は当時それほどじゃなくて日本の動物を撮った国内制作の映像とかの回は子供心にショボいと感じてしまったほど差があった。
というのは昔話で、、今じゃNHKも結構やるときはやる感じになっていて、東京海底谷とかダイオウイカとか深い海からすごい映像撮ってくるしダーウィンが来た!なんていう子供から楽しめる娯楽番組でも目から鱗の面白さを連発してくるしで、NHKに受信料払ってるパトロンの一人として、最近はうちの局もけっこうやるんですよフフフ、と余裕の笑みを浮かべていたのである。
その笑みが次第に凍りつき、悔し涙に変わるまでそう時間はかからなかった。
我々のNHKは、報道とか見ないので知らんけど、生き物の映像において過去のBBCになら勝てるところまできたということは身贔屓除いて正当な評価だと思う。それは誇れることだ。でもBBCも先に進んでいるんである。いつまでたっても追い越せないアキレスの追っかけた亀みたいに。
今回観たいアニメのために見放題系有料動画配信業者のNetflixを契約して、ついでと思って観たBBC作製のドキュメンタリーで改めてその実力を思い知らされることになったのだけど、実はそれ以前にもBBC作製の映像は結構みていて。その時はそれほどすごさを感じてなかった。具体的には当のNHKが日本語のナレーション入れて放送している「地球ドラマチック」がそうだし、アマゾンプライムにもいくつかあって観ている。地球ドラマチックは基礎的なことを分かりやすくという感じでそれほどすごみを感じなかったし、アマゾンプライムの方は今思うと2000年代とかのちょっと古い作品だった。プラネットアースとか観たことあったよねっていう既視感なのか本当に観ているのか分からないぐらい、よくありそうな自然の美しさを楽しめる映像だった。悪くはないけど今日その程度なら既に見たことがある映像だ。
これがネトフリで観た今時のBBC作製の映像は、なんというか「日の沈まない国」と呼ばれるほど植民地をかかえ隆盛を極めた帝国の末裔の、中世の博物学とかから連なる科学の歴史の重みとか凄みを感じざるを得なかった。例えるなら「ダーウィンが来た!」と嬉しがっている国とダーウィンを産んだ国の差のようなものを感じたのである。
別にBBC作製の映像が学術的に専門的高度な内容だったわけじゃない。楽しく学べる娯楽性の強い番組だったし、分かりやすく時にやりすぎ感のある演出もありがちな感じであった。でもその随所に、かの国が積み重ねてきた学術的な叡智の裏付けと、そういう叡智を享受し受け入れて慣れ親しみさらに上を求める一般の視聴者の肥えた目を感じずにはいられなかった。
完敗を認めよう。そしてまた明日から上を向いて歩いていこう。アキレスは亀を追い越せる。いつまでも勝てると思うなよ、と負け惜しみを吐いてから。
まず観たのは「デイビッド・アッテンボローの自然の神秘」というシリーズ。アッテンボロー博士はBBC作製の生き物番組ではお馴染みの名案内役なので聞いたことある人も多いだろう。個人的には日本語訳付きでテレビで放送された「地球の生きものたち(題名調べてみたけど自信がない)」が忘れられない。魚類、両生類、爬虫類、ほ乳類そして人間というように進化の道筋をたどるように毎回その分類ごとの生き物の特徴や生態について豊富な美しい映像をふんだんに用いて紹介しつつ、生命の進化やその歴史についてまで博士が分かりやすく案内してくれた。中学生ぐらいだったけど教科書なんかよりよっぽど理解が深まり、かつ心の底から面白かった。
当時で既に初老の域にあったとおもう博士がご健在でかつご高齢にも関わらず相変わらず情熱的で、楽しくて仕方がないという感じで生き物の生態についてやその魅力について語っておられて、少年の日と変わらず生き物のお話を心ときめかせながら視聴させてもらった。
今作では、特徴的な生き物を毎回2種ぐらい取りあげて、生物の進化とその研究の歴史も紐解く5回シリーズとなっていた、もう、番組を収録している場所が英国自然史博物館っていう、大英帝国がイケイケで世界中の珍しい生き物を集めまくっていた時代の膨大なコレクションを母体にした博物館であり、説明する結構レアだったりする動物の標本がいちいち出てきたり、研究の歴史を紐解くときにはまさにその研究者が使った標本まで出てきたり、そういった研究の発端には王族やら貴族やら金持ちがパトロンだったり、珍しい生き物を収集していたりということが大きく関係していたりして、その貴族のペットを画家に描かせた絵画なんてのも出てきたりして、ああ、今に連なる生物学とか進化の研究とかって源流は英国とか欧州にあるんだな、かの国ではそういった興味が科学者だけでなく王室含めた広く一般にまで根付いているんだなと思い知らされた。我が国も皇室は生物関係の学者様を多く輩出していて、図鑑の執筆者に漢字2文字の名前が並んでいて、一瞬中国出身の研究者かな?メイ・ジン博士って読むのかな?とか思ってよくよく見ると天皇陛下で、だから名字がないと気づいて自分のあまりの不敬さに深く反省したぐらいである。
でも、教科書に載ってるような今につながる「進化」なんていう概念を登場させたのが自国の研究者であるダーウィンとウォーレスであるとか、彼の国では思いっきり幕末もののドラマの登場人物並みに親しまれていそうで、かつ、世界中に植民地があって世界中からもの集めまくっていた結果の収集物を実際に展示している博物館が生物史博物館だけでも超弩級なのに、今回調べて別物だと知って個人的に驚いているいわゆる「大英博物館」が別にあって、さらに植物も当然集めまくってたんだけど「王立キュー植物園」まであって、ロンドンっ子ならそういう科学の歴史が作られたときの証拠となったような標本の現物が見られるのである。
分かりやすい例をだすなら、「生物は多様性を持つ」なんていう事柄は自然史博物館の本当に膨大な量の蝶のコレクションとか見たら物量で体感的に分かるんじゃないかと思う。
番組でも科学者間にツギハギの偽物か実在の生き物か論争になったカモノハシとか、ホイホイと当時オーストラリアから送られてきた標本そのものが出てきたりして、これは説得力がある映像だと感じさせられた。
お金持ちのコレクターやらに採集してきた珍しい生物を売って探検旅行に行ってた探検家兼科学者ってウォーレスやベイツに代表されるように生物学に多大な貢献したわけだけど、ベイツっていったら毒のある生き物に似せた模様とかに進化した「ベイツ型擬態」に名を残してるんだけど、そのベイツが南米で採ってきたベイツ型擬態をする蝶は、擬態の元になった種が地域ごとに模様が差があるのに対応して同じように模様を変えているなんてのを、アッテンボロー博士が標本箱からヒョイヒョイと実物の標本つまみ出しながらホラネッて感じで示されると、もう多分このことは忘れることなどないだろう。おそらくこの驚くべき真似ッコぶりはどこかで知識として目にしていたかもしれない、でも現物示されて上手に印象的に説明されると、本当に自然の仕組みの巧妙さに驚くとともに心に刻まれるのである。
シマウマはなぜ縞模様なのかというのもやっていて「それならダーウィンが来た!でもやってたから知ってるヮ、虫除け説が有力なんやろ」と安心したんだけど、結果は眠り病を媒介するツェツェバエに刺されにくくするためであってたんだけど、その解明に至る道がもう歴史ロマンですよこれが。まずは、アフリカでなぜか馬やら人は刺されるのにシマウマが刺されないというのが知られるようになって、シマウマが調教できたらアフリカ開拓が捗るだろうということで、なぜか銀行王国のロスチャイルド家の変わり者がシマウマを調教しようとして何とか馬車を曳かせるまで行ったんだけど実用化普及するまでにいたらなかったとかいう、面白うてやがて哀しきお話も出てきたりして、やっぱりくそ面白いんである。
ぼろ負けの中で、唯一の救いはカタツムリの話のなかで、左右非対称のカタツムリを食べるために片方の顎だけ歯が発達した蛇がいるという話が出てきて、たしか日本にも1種先島のほうにそんなのいたよな、と思っていたらまさにそのイワサキセダカヘビがカタツムリを襲っている映像が流れて、これが詳細に調べた日本人研究者の撮った映像だったことで、日本の科学者はやるときはやるんですよ!と溜飲が下がった。ちなみにカタツムリふつう左巻きの種が多いのに、カタツムリ喰いの蛇がいる地域では右巻きの種の方が多くなるそうで、左巻きのカタツムリをサザエの壺焼きから爪楊枝でクルンッと身を引き出すように食べるために特化した歯をもった蛇は右巻きのカタツムリを上手く食べられない。生き物って面白い。
まあ、最初の1シリーズで打ちのめされて、これは最近のBBCものは期待して良いなと2つ目はもいっちょアッテンボロー博士の「極楽鳥の世界」を視聴したらまた最高で、実はアッテンボロー博士人生で一番情熱を費やしたのは極楽鳥で彼らとの出会いが人生を変えてしまったというほどの極楽鳥マニアで、もう博士ウキウキのノリノリで絶好調。
原産地のニューギニア島から東南アジアを経てヨーロッパにもたらされた極楽鳥の標本が死後の極楽の世界で霞食って生きていて地上にはおりてこないので足さえ生えていないという伝説上の生き物として珍重されてきた歴史やらから始まって、ご自身が若いときに現地人以外で初めてその生態を目にすることになるニューギニア島へのカメラマンを連れての探検の旅の様子とか、今でこそニューギニア島には日本の釣り人もパプアンバス釣りに行ったりして多少馴染みはあるけど、白黒映像の時代には当然のごとくまだ首狩りの習慣とかも残っていたはずで、ものすごい冒険的な旅だったのだろうと思う。当時の現地の人たちの祭り装束の各種極楽鳥の羽を使ったきらびやかさが、白黒なのにアッテンボロー博士の熱のこもった解説で色を帯びて蘇るようだ。
やはり素晴らしいと感嘆していると、現在極楽鳥の保護のため繁殖について研究している研究施設を博士が訪れるのだけど、これがアラブのお金持ちの私設の研究所のようで、いつの時代にも科学だの芸術だのを支援するお金持ちってスゲーとこれまた感嘆させられた。
という感じですっかり負け戦なんだけど題名が「サメ」というのを見つけて「サメならワシちょっと自信あんねン、日本の研究者もがんばりまくってるし、ヒラシュモクが斜めって泳いでるのとか日本人が明らかにしたんでっセ。歴史も文化も鮫皮を刀の握りにしたり下ろし金にしたりしてきた文化の、っていうか日常的にサメの干物食って育った人間やぞ。ちょっとやそっとでは驚かんから覚悟しとけヤ!」と闘いを挑んだ。
いうてもアッテンボロー博士が面白いってだけで、BBC自体はそれほどでもないってこともあり得るだろうと、一縷の望みを抱いて観ていくと、最初南アの「サーディンラン」という大量のマイワシの仲間が沿岸沿いに北上していくのをサメからマグロから鳥からイルカクジラホモサピエンスまでが追っかける大饗宴になる現象が知られてるんだけど、その映像の紹介でマイワシをカタクチイワシ(日本語訳がそうなってるのに加えアナウンサーも英語でアンチョビーと言っている)と間違えていて、おいおいそんなんで大丈夫かBBCさんよぅ、とちょっとほっと胸をなで下ろしコレは勝てるかもと思ったんだけどティータイムのスコーンとクロテッドクリームの上に乗せるジャムより甘かった。
ちょっと演出過剰気味でかつ欧米風の動物保護団体臭さも鼻についたりもするんだけど、それでも至る所にこれでもかというぐらいに知の美が夜空の綺羅星のごとくきらめいていた。興奮させられた。
イワシの大群に群がるカマストガリザメの大群に続いて、いろいろな生態のサメの紹介が続いて、底棲性のサメとして、髭モジャの上から押しつぶしたようなサメが映し出される。「アラフラオオセ、英名タッセルドウッビーゴングとはまた渋いところを持ってきたな、でもそのぐらい知ってるデ」と思いつつアナウンサーがタッソードウビゴンって言って字幕にアラフラオオセと出るのをホッとしつつ視聴していた。アラフラオオセはその名のとおりオーストラリアからインドネシアのアラフラ海に棲む日本にも棲んでいてみなさんおなじみのオオセの仲間である。オオセとの違いは髭モジャ具合が激しく枝分かれしているので見た目ですぐ見分けられる。底棲性のサメって比較的飼育しやすくこの種もたまに観賞魚ルートに乗るので学生時代観賞魚専門誌で読んだのを憶えていた。
オタクの定義に「興味のあることは一度目にしただけで記憶して忘れない種族」というのがあるけど、若い日の私の記憶力は魚オタクの名に恥じぬものだったと自負している。それが最近ときたらもう・・・グチりたくなるていたらくだ。
珊瑚礁の海底で見事にコケの生えた岩のように擬態して小魚を補食した映像が流れて、次のサメにという流れなんだけど、なぜか餌がこなくて場所移動したアラフラオオセをカメラが追っていく。まだ何かあるのか?と怪訝に思って視聴していると、岩陰に入り口を頭に定位したアラフラオオセがしっぽをユラユラとゆらし始める。解説によるとしっぽで小魚が泳いでいる様を擬態し、岩陰が安全な隠れ家であると見せかけて餌を誘っているんだそうな。確かになまめかしくうごめく尾鰭は単独でベラの仲間のような背鰭がつながった小魚に見える。オオセの仲間は海底にへばりついて餌に奇襲を食らわせる戦略が硬骨魚類のアンコウ類と収斂進化しているとは感じていたけど、餌の小魚をおびき寄せるルアーを持つところまでにているとはアラフラオオセ恐れ入った。小魚を小魚の仲間で呼ぶのでルアーというより鮎の友釣りに近い技か?クッソこんな面白い話初めて目にしたぞ。
やられた感ありありでその後もワクワク視聴していくと、ニシオンデンザメが出てきてさすがにコレはオレもそれなりに詳しいはずと思いつつ、解説の、最近まで犬の餌として利用するイヌイット以外には知られてなかった、あたりに「たのんまっせBBCさんアイルランドでは昔から漁獲されててくさやの干物みたいな激臭干物ハカールが伝統食として残ってるぐらいでイヌイット以外でも知ってまっせ」とつっこみつつみていると、非常にゆっくり泳ぐとか、それ日本の研究者が報告してまっせな情報を挟みつつ顔が大写しになった。かわいそうに目玉に寄生虫がついていて、この手のカイアシ類系の外部寄生虫ってヌメリゴチの仲間の目玉にもつくよねと思ってたら、この寄生虫ニシオンデンザメの目しからしか発見されていないようで、しかもニシオンデンザメのほとんどの個体が寄生されていてニシオンデンザメ盲目だということである。ほとんどの個体は嘘だろと信憑性を疑うが、ちょっとネットで調べてみても目に寄生されてる画像が多い。有名な話で、イヌイットは氷に穴をあけて木の棒の単純なルアーで穴の近くまでおびき寄せたニシオンデンザメを銛で突くという漁法があるんだけど、盲目だとすると音とか水流の変化でルアーを追っているのだろうか?謎が謎を呼ぶ神秘の巨大ザメである。
サメ好きなら誰しも思うだろう疑問、サメ類最速の泳者であるアオザメは実際にはどのくらいの早さで泳いでいるのかというのにも果敢に挑戦していた。水中カメラを高速小型ボートで引っ張って興味もって追尾してきた速度を測るという単純明快な作戦。好奇心旺盛なアシカやイルカが追いかけてくるのはあるだろうけど、アオザメ追ってくるかいな?と懐疑的に見ていたけどなんとアオザメ追ってきた。しかもサメって水面のルアーに食ったところを何度か見ているんだけど、静かに体全体をくねらせるようにして泳いでくる印象があったんだけど、さすが高速遊泳に特化したアオザメ、紡錘形の体の体幹部分はブレずに固定したまま、マグロのように尾鰭だけを高速で振って高速遊泳していて痺れた。計測結果は45キロまで測ったところでボートのエンジンがオーバーヒートで煙はいて終了。最高速は「不明だ」という粋な結果。
ほかにも、ニシレモンザメが胎盤とヘソの緒を有する胎生だというのは、サメの仲間では同じような胎生の種が結構いるので驚かなかったけど、胎生でヘソの緒があるので当然ニシレモンザメにはヘソもある。という豆知識には言われてみれば当たり前だけど、なるほどなと妙に感心してしまった。
自分の得意分野のサメについても知らなかったことばかりである。こういう面白楽しい知識を英国民は公共放送で享受しているのかと思うと、アタイ悔しくて悔しくてッ!という感じだけど、改めて自分がものを知らないということを知ることの大事さを思い知らされた。それは自然やこの世の摂理というような人智を越えるものについて人間が知っていることなどたかがしれているということと、素人が多少知ってると齧った程度の知識で思ったところで専門家やらもっと知ってる人は世の中にごまんといるわけで、ユメユメおごらず謙虚に知識を求め続けていかなければいけないということ両方の意味においてである。孔子様ごめんなさいと謝っておこう。
あと単純に映像が美しいというのもやっぱり評価を高くつけざるをえない。大海原をゆくヨゴレのきりもみジャンプを水中からとらえた映像とか、海山の上をゆっくりと羽ばたくように泳いでいく巨大なオニイトマキエイとか画的に迫力あって感動する。
最近はNHKに限らず日本の撮影者も素晴らしいのを撮ってくるようになっているので負けてはいないと思う。「サメ」観てからダーウィンが来た!観たらホッキョクオオカミの生態を追った回で、北極の厳しく雄大な自然が美しくて、ほらねNHKだってやるときはやるでしょと思ってたら、撮影チームはドイツ人2人組だそうでギャフン。
まあ、敵は強い方が燃える的に、お手本のレベルは高けりゃ高い方がいいだろうからNHKも負けずにいい番組作ってくれと願うのみである。勝ち負けつくような単純な話でもないだろうしね。
ここまで読んで前回予告の「陽気なカエルはサンバを踊る」はどうなったんだとお怒りのみなさん。
フッフッフ引っかかったな、これぞ忍法偽予告!
さすがにカエルはサンバ踊ったりしませんゼ旦那。
とはいえ全くの嘘偽りかというとそうでもなくて、最後にちょっと「自然の神秘」の中で考えさせられた話を紹介しておきたい。
サンバガエルの話である。リオでは陽気なカエルが軽快なリズムに乗って腰をフリフリ情熱的にサンバを踊る、ってもうだまされる人もいないと思うけど一応しつこく繰り返すのも芸のうちなのでネチっこくいってみました。
ほんとはオスが腰に卵をくっつけてオタマジャクシが生まれるまで世話をする「産婆蛙」なんである。オスだけど。
スペインとかの欧州原産で古くから研究対象になっていて、比較的乾燥した森の中とかに棲んでいるので両生類では珍しく産卵を水中ではなく陸上で済ませメスが生んだ卵をオスが腰のあたりにくっつけてオタマジャクシまで育てて、オスが川とかまで運んでいって放すという変わった生態を持つ。
産卵が水中ではないのでふつうのカエルのオスが水中でメスをつかまえるために前足にある滑り止めのツブツブの突起がこのカエルには見られない。
ところがある研究者が、このカエルを何代にも渡って水の豊富な環境で累代飼育したところ、卵を水中で生むようになりオスがメスを抱くための突起も発達した、しかもその子供世代にもその形質は受け継がれたという報告をする。
要するに環境によって生物の歴史から考えれば極めて短時間で進化が促進さるということが実験室で起こったのである。加えて獲得形質が次世代に引き継がれているように見える。高いところの木の葉を食べようとしていたらキリンの首が伸びた要不要説を支持するような結果でもある。
時代はおりしも世界大戦前夜という空気の中、生物は新しい環境に適応してより良いものに変わっていけるという発表は、超人類の出現をも期待させ、国威発揚の流れの中、研究者は賞賛されるとともにあちこちに講演を依頼され時の人となる。
ところがこの研究は大きな疑惑に巻き込まれていく。匿名の内部告発者が現れ、実験結果はねつ造である、オスの前足の突起も色素を使って作ったものだと主張し、マスコミはじめいつの時代でもそうだけど手のひら返して叩きまくり、研究者は失意の中「あなた方にいまさらなにをいっても聞いてもらえないだろうけど誓って私は不正などしていない」と書き置きを残して自殺してしまう。
科学の世界で捏造事件なんていうのは古今東西数限りなくあって、昨年も我が国の最高学府でデータの改竄が問題になっていたぐらいにありふれた出来事である。まあ嘘ついても追試して再現性がなければバレるので何でそんなアホなことに手を染めるのかよくわからんけど、成果に対する重圧とか名誉欲とか科学者だって聖人君子ばかりじゃないのでいろいろあるんだろう。
この事件もそういったありふれた捏造事件として記録に残っていたはずである。それを今わざわざ取り上げるところのアッテンボロー博士の鋭い感性と知りたがりな旺盛な知識欲に心底敬服する。
この事件は、最近の生物学で熱い分野となっている遺伝情報の「可塑性」という概念が頭にあると、世紀の冤罪じゃないのか?という疑いが頭をよぎって背筋が寒くなるのである。
今時の進化論の基礎には、環境に適応して新しい形質を収得しても遺伝子は変わらないので子の世代にその形質は受け継がれない、親が筋トレしてマッチョになっても、その子供はマッチョで生まれてこない。遺伝子が突然変異など変化して生まれた沢山の子供たちのうちに環境に適応したものがいたらそいつが生き残るという適者選択という概念がある。
でも収得形質は遺伝しないに例外はあって、単細胞の生物とかならウイルスとかが運び屋になって新しい遺伝子を得て収得した形質があったら単細胞なので次の世代にもその遺伝情報が引き継がれる。生殖細胞が特別あしらえになっている多細胞生物では同じことは起きないけど、多細胞生物でも共生していた生物を取り込んで新しく得た能力とかは引き継がれていく。ミトコンドリアだの葉緑体だのである。とかが目にしたことがある例外。
その他に、最近注目されているのがさっきの「可塑性」の「表現型の可塑性」と呼ばれるやつで、遺伝子が同じでもそれが発現して現れる表現型には、一卵性の双生児でも違う人間になるように遺伝子以外の要素で変わる幅があるという現象に関連して、遺伝子以外で何らかの遺伝情報が親から子に引き継がれ、例えるならマッチョが有利な環境下ではマッチョが生まれやすいというような現象が報告されてきている。収得形質が引き継がれることがあるようなのである。
その知識を持って件の事件を見てみると、サンバガエルは遺伝的に表現型の可塑性を持っていて、おそらく先祖がそうであったように水中で産卵しオスの前足の突起も有する表現型になりうる要素をその遺伝情報の中にまだ持っている。でも水が少ない環境下では遺伝子以外の要素が働いて陸上で卵を生むし突起もできない。その遺伝子以外の要素は親が受けた環境要因で変化しかつ子世代に影響する。逆も真なりで水が多い環境にさらされると、遺伝子以外の要素が関係して水中型に変化しその子供世代にもそれは引き継がれる。なんてことが充分あり得るじゃないかと思えてくる。
アッテンボロー博士も同じ疑問を持ったのだろう、実はサンバガエルには自然界で水中型が見つかっていることや、実験の追試は行われていないことを紹介して「事実は謎のままです」と締めくくりつつも、水槽に石で足場を作った水の多い環境でサンバガエルを飼っているように映像では見えて御歳90を越えても、真実を求める心にいささかの衰えもみえず実に正しく科学的なんである。
最後にこの話を紹介したのには、あまりにも世の中「科学的」じゃないと思うからということがある。科学は万能じゃない、分からないことも多いし、今日の科学的常識は明日に陳腐なデマに変わり得る。でも今分からないことがあればなにが分かっていないのか明らかにし、分かっていることはどの程度確かなのか根拠をもとに示し、新しい知見が古い常識を覆したら知識を更新していく。そういう態度こそが「科学的」だとアッテンボロー博士がお手本を見せてくれているように思うので紹介したしだいである。
「科学的に証明された効果」をうたう新商品は、100%正しいような誤解を招く表現であり、どの程度の確からしさなのか示していない時点で全く科学的ではない。アホなペテンにチョロく騙されるなって。
「自分の目で見たものしか信じない」とかいう、手品師に速攻でだまされるような間抜けな価値観は全く科学的じゃない。ドイツのマックスプランク研究所だったかが、大規模な実験でなんか量子が光りより早いとかいう測定結果が出たときに、本当なら今の物理学をひっくり返す大発見だけど、理屈に合わないので自分たちの「科学的」な観測にどこか誤りがあったのかも知れないので、条件データ開示してどこが間違ってるのか指摘してくれみたいな発表をしたことがある。例え最新鋭の機器がはじき出した観測結果でも、理論から他の実験結果から総合的に勘案して論理的に疑わしかったら疑ってかかるというこの態度こそ科学的だと思うのである。目で見て脳が画像処理した程度のいくらでも誤りが紛れ込む過程を絶対的な根拠にする人間には爪の垢をせんじて飲んでほしい。マックスプランク研究所が爪に垢ためてるか知らんけど。
ということで長々書いてみたけど、まあめんどくせえこと考えなくても面白いし、お試し一月は無料なのでNetflixお薦めします。
別にネトフリにお金もらってるわけでもないのに2週にわたって宣伝くせえことを書いているなと思う。
映像っていう芸術というか文化が、大企業様がパトロンになってた景気の良かったテレビの時代から、ネット配信含め多様化の時代に向かっているようにみえ、金払うオタクやら生き物好きやらもパトロンとしての役割が大きくなる時代を迎えようとしている。これまで大企業様の意向に合うようなクソみたいな大量消費礼賛の垂れ流しの番組を見させていただいてたのが、やっとオレらも堂々と意見を言う権利を得てオレら好みのモノを作ってもらえるような時代が来ているように感じている。
でも自由と責任がセットなのと同様に権利と責任もやっぱりセットで、ちゃんとパトロンとしての責任果たさないとつまんねえことになるぞと感じているので、有料ネット配信を応援しつつちょっと一言書きたいというのもあった。
単刀直入に書くと、ネットに違法にアップロードされた動画とか見てタダで済んだとか喜んでんじゃねえゾって話。ちゃんと苦労して創った人間が報われるような仕組みにしていかないと、面白いモノが創られにくくなると思うのである。
購買は選挙なんかよりよっぽど直接的な「一票」入れる意思表示だと思うので、自分の好きなモノはちゃんと買い支えていくぐらいの度量がないと王侯貴族が果たしていたようなパトロンの役目は果たせないと思う。
現代社会において私は奴隷で王様だ。
そんなことはどうでもいいんだけど、我々昭和世代の生き物好きならBBC作製の映像は脳裏に刷り込まれているはすで思い入れも深いはずだ。
「見た憶えないんだけど?」と首を傾げている方も生き物好きなら「野生の王国」はます間違いなく見てたはずである。私もテーマ曲の「パーパッパパパパー」「トゥートゥトゥトゥトゥ トゥトゥットゥットトゥ~トゥ~」てな歌詞(若い人ポカーンかもしれんけどマジでこんな歌詞なんです。嘘やと思ったらユーチューブとかで聴いてみてね)と全力で飛び跳ねるカンガルーが蹴っ飛ばした石がオーストラリアの赤い大地の砂埃をまとってミサイルみたいに飛んでいくスロー映像が脳内自動再生余裕なぐらい刷り込まれている。
その野生の王国の見城美枝子さんと専門家とかがしゃべって解説入れてた映像の結構多くがBBC作製だったんである。延々とオーストラリアの珍しい猛禽類とか流してる回とかあって、なんでそんなマニアックなところを特集するんだろうと思ってたんだけど、今思うと元植民地の大英帝国つながりだったんだろうな。
マニアックさではネズミの死体にウジがわいてきれいに骨だけにされるまでを超早送りで映しだした映像とか当時はそんな映像初めて見たのでその技術力の高さにびっくりしたものである。
とにかく滅茶苦茶高い技術で撮られた映像がしかも美しくって、日本の映像技術は当時それほどじゃなくて日本の動物を撮った国内制作の映像とかの回は子供心にショボいと感じてしまったほど差があった。
というのは昔話で、、今じゃNHKも結構やるときはやる感じになっていて、東京海底谷とかダイオウイカとか深い海からすごい映像撮ってくるしダーウィンが来た!なんていう子供から楽しめる娯楽番組でも目から鱗の面白さを連発してくるしで、NHKに受信料払ってるパトロンの一人として、最近はうちの局もけっこうやるんですよフフフ、と余裕の笑みを浮かべていたのである。
その笑みが次第に凍りつき、悔し涙に変わるまでそう時間はかからなかった。
我々のNHKは、報道とか見ないので知らんけど、生き物の映像において過去のBBCになら勝てるところまできたということは身贔屓除いて正当な評価だと思う。それは誇れることだ。でもBBCも先に進んでいるんである。いつまでたっても追い越せないアキレスの追っかけた亀みたいに。
今回観たいアニメのために見放題系有料動画配信業者のNetflixを契約して、ついでと思って観たBBC作製のドキュメンタリーで改めてその実力を思い知らされることになったのだけど、実はそれ以前にもBBC作製の映像は結構みていて。その時はそれほどすごさを感じてなかった。具体的には当のNHKが日本語のナレーション入れて放送している「地球ドラマチック」がそうだし、アマゾンプライムにもいくつかあって観ている。地球ドラマチックは基礎的なことを分かりやすくという感じでそれほどすごみを感じなかったし、アマゾンプライムの方は今思うと2000年代とかのちょっと古い作品だった。プラネットアースとか観たことあったよねっていう既視感なのか本当に観ているのか分からないぐらい、よくありそうな自然の美しさを楽しめる映像だった。悪くはないけど今日その程度なら既に見たことがある映像だ。
これがネトフリで観た今時のBBC作製の映像は、なんというか「日の沈まない国」と呼ばれるほど植民地をかかえ隆盛を極めた帝国の末裔の、中世の博物学とかから連なる科学の歴史の重みとか凄みを感じざるを得なかった。例えるなら「ダーウィンが来た!」と嬉しがっている国とダーウィンを産んだ国の差のようなものを感じたのである。
別にBBC作製の映像が学術的に専門的高度な内容だったわけじゃない。楽しく学べる娯楽性の強い番組だったし、分かりやすく時にやりすぎ感のある演出もありがちな感じであった。でもその随所に、かの国が積み重ねてきた学術的な叡智の裏付けと、そういう叡智を享受し受け入れて慣れ親しみさらに上を求める一般の視聴者の肥えた目を感じずにはいられなかった。
完敗を認めよう。そしてまた明日から上を向いて歩いていこう。アキレスは亀を追い越せる。いつまでも勝てると思うなよ、と負け惜しみを吐いてから。
まず観たのは「デイビッド・アッテンボローの自然の神秘」というシリーズ。アッテンボロー博士はBBC作製の生き物番組ではお馴染みの名案内役なので聞いたことある人も多いだろう。個人的には日本語訳付きでテレビで放送された「地球の生きものたち(題名調べてみたけど自信がない)」が忘れられない。魚類、両生類、爬虫類、ほ乳類そして人間というように進化の道筋をたどるように毎回その分類ごとの生き物の特徴や生態について豊富な美しい映像をふんだんに用いて紹介しつつ、生命の進化やその歴史についてまで博士が分かりやすく案内してくれた。中学生ぐらいだったけど教科書なんかよりよっぽど理解が深まり、かつ心の底から面白かった。
当時で既に初老の域にあったとおもう博士がご健在でかつご高齢にも関わらず相変わらず情熱的で、楽しくて仕方がないという感じで生き物の生態についてやその魅力について語っておられて、少年の日と変わらず生き物のお話を心ときめかせながら視聴させてもらった。
今作では、特徴的な生き物を毎回2種ぐらい取りあげて、生物の進化とその研究の歴史も紐解く5回シリーズとなっていた、もう、番組を収録している場所が英国自然史博物館っていう、大英帝国がイケイケで世界中の珍しい生き物を集めまくっていた時代の膨大なコレクションを母体にした博物館であり、説明する結構レアだったりする動物の標本がいちいち出てきたり、研究の歴史を紐解くときにはまさにその研究者が使った標本まで出てきたり、そういった研究の発端には王族やら貴族やら金持ちがパトロンだったり、珍しい生き物を収集していたりということが大きく関係していたりして、その貴族のペットを画家に描かせた絵画なんてのも出てきたりして、ああ、今に連なる生物学とか進化の研究とかって源流は英国とか欧州にあるんだな、かの国ではそういった興味が科学者だけでなく王室含めた広く一般にまで根付いているんだなと思い知らされた。我が国も皇室は生物関係の学者様を多く輩出していて、図鑑の執筆者に漢字2文字の名前が並んでいて、一瞬中国出身の研究者かな?メイ・ジン博士って読むのかな?とか思ってよくよく見ると天皇陛下で、だから名字がないと気づいて自分のあまりの不敬さに深く反省したぐらいである。
でも、教科書に載ってるような今につながる「進化」なんていう概念を登場させたのが自国の研究者であるダーウィンとウォーレスであるとか、彼の国では思いっきり幕末もののドラマの登場人物並みに親しまれていそうで、かつ、世界中に植民地があって世界中からもの集めまくっていた結果の収集物を実際に展示している博物館が生物史博物館だけでも超弩級なのに、今回調べて別物だと知って個人的に驚いているいわゆる「大英博物館」が別にあって、さらに植物も当然集めまくってたんだけど「王立キュー植物園」まであって、ロンドンっ子ならそういう科学の歴史が作られたときの証拠となったような標本の現物が見られるのである。
分かりやすい例をだすなら、「生物は多様性を持つ」なんていう事柄は自然史博物館の本当に膨大な量の蝶のコレクションとか見たら物量で体感的に分かるんじゃないかと思う。
番組でも科学者間にツギハギの偽物か実在の生き物か論争になったカモノハシとか、ホイホイと当時オーストラリアから送られてきた標本そのものが出てきたりして、これは説得力がある映像だと感じさせられた。
お金持ちのコレクターやらに採集してきた珍しい生物を売って探検旅行に行ってた探検家兼科学者ってウォーレスやベイツに代表されるように生物学に多大な貢献したわけだけど、ベイツっていったら毒のある生き物に似せた模様とかに進化した「ベイツ型擬態」に名を残してるんだけど、そのベイツが南米で採ってきたベイツ型擬態をする蝶は、擬態の元になった種が地域ごとに模様が差があるのに対応して同じように模様を変えているなんてのを、アッテンボロー博士が標本箱からヒョイヒョイと実物の標本つまみ出しながらホラネッて感じで示されると、もう多分このことは忘れることなどないだろう。おそらくこの驚くべき真似ッコぶりはどこかで知識として目にしていたかもしれない、でも現物示されて上手に印象的に説明されると、本当に自然の仕組みの巧妙さに驚くとともに心に刻まれるのである。
シマウマはなぜ縞模様なのかというのもやっていて「それならダーウィンが来た!でもやってたから知ってるヮ、虫除け説が有力なんやろ」と安心したんだけど、結果は眠り病を媒介するツェツェバエに刺されにくくするためであってたんだけど、その解明に至る道がもう歴史ロマンですよこれが。まずは、アフリカでなぜか馬やら人は刺されるのにシマウマが刺されないというのが知られるようになって、シマウマが調教できたらアフリカ開拓が捗るだろうということで、なぜか銀行王国のロスチャイルド家の変わり者がシマウマを調教しようとして何とか馬車を曳かせるまで行ったんだけど実用化普及するまでにいたらなかったとかいう、面白うてやがて哀しきお話も出てきたりして、やっぱりくそ面白いんである。
ぼろ負けの中で、唯一の救いはカタツムリの話のなかで、左右非対称のカタツムリを食べるために片方の顎だけ歯が発達した蛇がいるという話が出てきて、たしか日本にも1種先島のほうにそんなのいたよな、と思っていたらまさにそのイワサキセダカヘビがカタツムリを襲っている映像が流れて、これが詳細に調べた日本人研究者の撮った映像だったことで、日本の科学者はやるときはやるんですよ!と溜飲が下がった。ちなみにカタツムリふつう左巻きの種が多いのに、カタツムリ喰いの蛇がいる地域では右巻きの種の方が多くなるそうで、左巻きのカタツムリをサザエの壺焼きから爪楊枝でクルンッと身を引き出すように食べるために特化した歯をもった蛇は右巻きのカタツムリを上手く食べられない。生き物って面白い。
まあ、最初の1シリーズで打ちのめされて、これは最近のBBCものは期待して良いなと2つ目はもいっちょアッテンボロー博士の「極楽鳥の世界」を視聴したらまた最高で、実はアッテンボロー博士人生で一番情熱を費やしたのは極楽鳥で彼らとの出会いが人生を変えてしまったというほどの極楽鳥マニアで、もう博士ウキウキのノリノリで絶好調。
原産地のニューギニア島から東南アジアを経てヨーロッパにもたらされた極楽鳥の標本が死後の極楽の世界で霞食って生きていて地上にはおりてこないので足さえ生えていないという伝説上の生き物として珍重されてきた歴史やらから始まって、ご自身が若いときに現地人以外で初めてその生態を目にすることになるニューギニア島へのカメラマンを連れての探検の旅の様子とか、今でこそニューギニア島には日本の釣り人もパプアンバス釣りに行ったりして多少馴染みはあるけど、白黒映像の時代には当然のごとくまだ首狩りの習慣とかも残っていたはずで、ものすごい冒険的な旅だったのだろうと思う。当時の現地の人たちの祭り装束の各種極楽鳥の羽を使ったきらびやかさが、白黒なのにアッテンボロー博士の熱のこもった解説で色を帯びて蘇るようだ。
やはり素晴らしいと感嘆していると、現在極楽鳥の保護のため繁殖について研究している研究施設を博士が訪れるのだけど、これがアラブのお金持ちの私設の研究所のようで、いつの時代にも科学だの芸術だのを支援するお金持ちってスゲーとこれまた感嘆させられた。
という感じですっかり負け戦なんだけど題名が「サメ」というのを見つけて「サメならワシちょっと自信あんねン、日本の研究者もがんばりまくってるし、ヒラシュモクが斜めって泳いでるのとか日本人が明らかにしたんでっセ。歴史も文化も鮫皮を刀の握りにしたり下ろし金にしたりしてきた文化の、っていうか日常的にサメの干物食って育った人間やぞ。ちょっとやそっとでは驚かんから覚悟しとけヤ!」と闘いを挑んだ。
いうてもアッテンボロー博士が面白いってだけで、BBC自体はそれほどでもないってこともあり得るだろうと、一縷の望みを抱いて観ていくと、最初南アの「サーディンラン」という大量のマイワシの仲間が沿岸沿いに北上していくのをサメからマグロから鳥からイルカクジラホモサピエンスまでが追っかける大饗宴になる現象が知られてるんだけど、その映像の紹介でマイワシをカタクチイワシ(日本語訳がそうなってるのに加えアナウンサーも英語でアンチョビーと言っている)と間違えていて、おいおいそんなんで大丈夫かBBCさんよぅ、とちょっとほっと胸をなで下ろしコレは勝てるかもと思ったんだけどティータイムのスコーンとクロテッドクリームの上に乗せるジャムより甘かった。
ちょっと演出過剰気味でかつ欧米風の動物保護団体臭さも鼻についたりもするんだけど、それでも至る所にこれでもかというぐらいに知の美が夜空の綺羅星のごとくきらめいていた。興奮させられた。
イワシの大群に群がるカマストガリザメの大群に続いて、いろいろな生態のサメの紹介が続いて、底棲性のサメとして、髭モジャの上から押しつぶしたようなサメが映し出される。「アラフラオオセ、英名タッセルドウッビーゴングとはまた渋いところを持ってきたな、でもそのぐらい知ってるデ」と思いつつアナウンサーがタッソードウビゴンって言って字幕にアラフラオオセと出るのをホッとしつつ視聴していた。アラフラオオセはその名のとおりオーストラリアからインドネシアのアラフラ海に棲む日本にも棲んでいてみなさんおなじみのオオセの仲間である。オオセとの違いは髭モジャ具合が激しく枝分かれしているので見た目ですぐ見分けられる。底棲性のサメって比較的飼育しやすくこの種もたまに観賞魚ルートに乗るので学生時代観賞魚専門誌で読んだのを憶えていた。
オタクの定義に「興味のあることは一度目にしただけで記憶して忘れない種族」というのがあるけど、若い日の私の記憶力は魚オタクの名に恥じぬものだったと自負している。それが最近ときたらもう・・・グチりたくなるていたらくだ。
珊瑚礁の海底で見事にコケの生えた岩のように擬態して小魚を補食した映像が流れて、次のサメにという流れなんだけど、なぜか餌がこなくて場所移動したアラフラオオセをカメラが追っていく。まだ何かあるのか?と怪訝に思って視聴していると、岩陰に入り口を頭に定位したアラフラオオセがしっぽをユラユラとゆらし始める。解説によるとしっぽで小魚が泳いでいる様を擬態し、岩陰が安全な隠れ家であると見せかけて餌を誘っているんだそうな。確かになまめかしくうごめく尾鰭は単独でベラの仲間のような背鰭がつながった小魚に見える。オオセの仲間は海底にへばりついて餌に奇襲を食らわせる戦略が硬骨魚類のアンコウ類と収斂進化しているとは感じていたけど、餌の小魚をおびき寄せるルアーを持つところまでにているとはアラフラオオセ恐れ入った。小魚を小魚の仲間で呼ぶのでルアーというより鮎の友釣りに近い技か?クッソこんな面白い話初めて目にしたぞ。
やられた感ありありでその後もワクワク視聴していくと、ニシオンデンザメが出てきてさすがにコレはオレもそれなりに詳しいはずと思いつつ、解説の、最近まで犬の餌として利用するイヌイット以外には知られてなかった、あたりに「たのんまっせBBCさんアイルランドでは昔から漁獲されててくさやの干物みたいな激臭干物ハカールが伝統食として残ってるぐらいでイヌイット以外でも知ってまっせ」とつっこみつつみていると、非常にゆっくり泳ぐとか、それ日本の研究者が報告してまっせな情報を挟みつつ顔が大写しになった。かわいそうに目玉に寄生虫がついていて、この手のカイアシ類系の外部寄生虫ってヌメリゴチの仲間の目玉にもつくよねと思ってたら、この寄生虫ニシオンデンザメの目しからしか発見されていないようで、しかもニシオンデンザメのほとんどの個体が寄生されていてニシオンデンザメ盲目だということである。ほとんどの個体は嘘だろと信憑性を疑うが、ちょっとネットで調べてみても目に寄生されてる画像が多い。有名な話で、イヌイットは氷に穴をあけて木の棒の単純なルアーで穴の近くまでおびき寄せたニシオンデンザメを銛で突くという漁法があるんだけど、盲目だとすると音とか水流の変化でルアーを追っているのだろうか?謎が謎を呼ぶ神秘の巨大ザメである。
サメ好きなら誰しも思うだろう疑問、サメ類最速の泳者であるアオザメは実際にはどのくらいの早さで泳いでいるのかというのにも果敢に挑戦していた。水中カメラを高速小型ボートで引っ張って興味もって追尾してきた速度を測るという単純明快な作戦。好奇心旺盛なアシカやイルカが追いかけてくるのはあるだろうけど、アオザメ追ってくるかいな?と懐疑的に見ていたけどなんとアオザメ追ってきた。しかもサメって水面のルアーに食ったところを何度か見ているんだけど、静かに体全体をくねらせるようにして泳いでくる印象があったんだけど、さすが高速遊泳に特化したアオザメ、紡錘形の体の体幹部分はブレずに固定したまま、マグロのように尾鰭だけを高速で振って高速遊泳していて痺れた。計測結果は45キロまで測ったところでボートのエンジンがオーバーヒートで煙はいて終了。最高速は「不明だ」という粋な結果。
ほかにも、ニシレモンザメが胎盤とヘソの緒を有する胎生だというのは、サメの仲間では同じような胎生の種が結構いるので驚かなかったけど、胎生でヘソの緒があるので当然ニシレモンザメにはヘソもある。という豆知識には言われてみれば当たり前だけど、なるほどなと妙に感心してしまった。
自分の得意分野のサメについても知らなかったことばかりである。こういう面白楽しい知識を英国民は公共放送で享受しているのかと思うと、アタイ悔しくて悔しくてッ!という感じだけど、改めて自分がものを知らないということを知ることの大事さを思い知らされた。それは自然やこの世の摂理というような人智を越えるものについて人間が知っていることなどたかがしれているということと、素人が多少知ってると齧った程度の知識で思ったところで専門家やらもっと知ってる人は世の中にごまんといるわけで、ユメユメおごらず謙虚に知識を求め続けていかなければいけないということ両方の意味においてである。孔子様ごめんなさいと謝っておこう。
あと単純に映像が美しいというのもやっぱり評価を高くつけざるをえない。大海原をゆくヨゴレのきりもみジャンプを水中からとらえた映像とか、海山の上をゆっくりと羽ばたくように泳いでいく巨大なオニイトマキエイとか画的に迫力あって感動する。
最近はNHKに限らず日本の撮影者も素晴らしいのを撮ってくるようになっているので負けてはいないと思う。「サメ」観てからダーウィンが来た!観たらホッキョクオオカミの生態を追った回で、北極の厳しく雄大な自然が美しくて、ほらねNHKだってやるときはやるでしょと思ってたら、撮影チームはドイツ人2人組だそうでギャフン。
まあ、敵は強い方が燃える的に、お手本のレベルは高けりゃ高い方がいいだろうからNHKも負けずにいい番組作ってくれと願うのみである。勝ち負けつくような単純な話でもないだろうしね。
ここまで読んで前回予告の「陽気なカエルはサンバを踊る」はどうなったんだとお怒りのみなさん。
フッフッフ引っかかったな、これぞ忍法偽予告!
さすがにカエルはサンバ踊ったりしませんゼ旦那。
とはいえ全くの嘘偽りかというとそうでもなくて、最後にちょっと「自然の神秘」の中で考えさせられた話を紹介しておきたい。
サンバガエルの話である。リオでは陽気なカエルが軽快なリズムに乗って腰をフリフリ情熱的にサンバを踊る、ってもうだまされる人もいないと思うけど一応しつこく繰り返すのも芸のうちなのでネチっこくいってみました。
ほんとはオスが腰に卵をくっつけてオタマジャクシが生まれるまで世話をする「産婆蛙」なんである。オスだけど。
スペインとかの欧州原産で古くから研究対象になっていて、比較的乾燥した森の中とかに棲んでいるので両生類では珍しく産卵を水中ではなく陸上で済ませメスが生んだ卵をオスが腰のあたりにくっつけてオタマジャクシまで育てて、オスが川とかまで運んでいって放すという変わった生態を持つ。
産卵が水中ではないのでふつうのカエルのオスが水中でメスをつかまえるために前足にある滑り止めのツブツブの突起がこのカエルには見られない。
ところがある研究者が、このカエルを何代にも渡って水の豊富な環境で累代飼育したところ、卵を水中で生むようになりオスがメスを抱くための突起も発達した、しかもその子供世代にもその形質は受け継がれたという報告をする。
要するに環境によって生物の歴史から考えれば極めて短時間で進化が促進さるということが実験室で起こったのである。加えて獲得形質が次世代に引き継がれているように見える。高いところの木の葉を食べようとしていたらキリンの首が伸びた要不要説を支持するような結果でもある。
時代はおりしも世界大戦前夜という空気の中、生物は新しい環境に適応してより良いものに変わっていけるという発表は、超人類の出現をも期待させ、国威発揚の流れの中、研究者は賞賛されるとともにあちこちに講演を依頼され時の人となる。
ところがこの研究は大きな疑惑に巻き込まれていく。匿名の内部告発者が現れ、実験結果はねつ造である、オスの前足の突起も色素を使って作ったものだと主張し、マスコミはじめいつの時代でもそうだけど手のひら返して叩きまくり、研究者は失意の中「あなた方にいまさらなにをいっても聞いてもらえないだろうけど誓って私は不正などしていない」と書き置きを残して自殺してしまう。
科学の世界で捏造事件なんていうのは古今東西数限りなくあって、昨年も我が国の最高学府でデータの改竄が問題になっていたぐらいにありふれた出来事である。まあ嘘ついても追試して再現性がなければバレるので何でそんなアホなことに手を染めるのかよくわからんけど、成果に対する重圧とか名誉欲とか科学者だって聖人君子ばかりじゃないのでいろいろあるんだろう。
この事件もそういったありふれた捏造事件として記録に残っていたはずである。それを今わざわざ取り上げるところのアッテンボロー博士の鋭い感性と知りたがりな旺盛な知識欲に心底敬服する。
この事件は、最近の生物学で熱い分野となっている遺伝情報の「可塑性」という概念が頭にあると、世紀の冤罪じゃないのか?という疑いが頭をよぎって背筋が寒くなるのである。
今時の進化論の基礎には、環境に適応して新しい形質を収得しても遺伝子は変わらないので子の世代にその形質は受け継がれない、親が筋トレしてマッチョになっても、その子供はマッチョで生まれてこない。遺伝子が突然変異など変化して生まれた沢山の子供たちのうちに環境に適応したものがいたらそいつが生き残るという適者選択という概念がある。
でも収得形質は遺伝しないに例外はあって、単細胞の生物とかならウイルスとかが運び屋になって新しい遺伝子を得て収得した形質があったら単細胞なので次の世代にもその遺伝情報が引き継がれる。生殖細胞が特別あしらえになっている多細胞生物では同じことは起きないけど、多細胞生物でも共生していた生物を取り込んで新しく得た能力とかは引き継がれていく。ミトコンドリアだの葉緑体だのである。とかが目にしたことがある例外。
その他に、最近注目されているのがさっきの「可塑性」の「表現型の可塑性」と呼ばれるやつで、遺伝子が同じでもそれが発現して現れる表現型には、一卵性の双生児でも違う人間になるように遺伝子以外の要素で変わる幅があるという現象に関連して、遺伝子以外で何らかの遺伝情報が親から子に引き継がれ、例えるならマッチョが有利な環境下ではマッチョが生まれやすいというような現象が報告されてきている。収得形質が引き継がれることがあるようなのである。
その知識を持って件の事件を見てみると、サンバガエルは遺伝的に表現型の可塑性を持っていて、おそらく先祖がそうであったように水中で産卵しオスの前足の突起も有する表現型になりうる要素をその遺伝情報の中にまだ持っている。でも水が少ない環境下では遺伝子以外の要素が働いて陸上で卵を生むし突起もできない。その遺伝子以外の要素は親が受けた環境要因で変化しかつ子世代に影響する。逆も真なりで水が多い環境にさらされると、遺伝子以外の要素が関係して水中型に変化しその子供世代にもそれは引き継がれる。なんてことが充分あり得るじゃないかと思えてくる。
アッテンボロー博士も同じ疑問を持ったのだろう、実はサンバガエルには自然界で水中型が見つかっていることや、実験の追試は行われていないことを紹介して「事実は謎のままです」と締めくくりつつも、水槽に石で足場を作った水の多い環境でサンバガエルを飼っているように映像では見えて御歳90を越えても、真実を求める心にいささかの衰えもみえず実に正しく科学的なんである。
最後にこの話を紹介したのには、あまりにも世の中「科学的」じゃないと思うからということがある。科学は万能じゃない、分からないことも多いし、今日の科学的常識は明日に陳腐なデマに変わり得る。でも今分からないことがあればなにが分かっていないのか明らかにし、分かっていることはどの程度確かなのか根拠をもとに示し、新しい知見が古い常識を覆したら知識を更新していく。そういう態度こそが「科学的」だとアッテンボロー博士がお手本を見せてくれているように思うので紹介したしだいである。
「科学的に証明された効果」をうたう新商品は、100%正しいような誤解を招く表現であり、どの程度の確からしさなのか示していない時点で全く科学的ではない。アホなペテンにチョロく騙されるなって。
「自分の目で見たものしか信じない」とかいう、手品師に速攻でだまされるような間抜けな価値観は全く科学的じゃない。ドイツのマックスプランク研究所だったかが、大規模な実験でなんか量子が光りより早いとかいう測定結果が出たときに、本当なら今の物理学をひっくり返す大発見だけど、理屈に合わないので自分たちの「科学的」な観測にどこか誤りがあったのかも知れないので、条件データ開示してどこが間違ってるのか指摘してくれみたいな発表をしたことがある。例え最新鋭の機器がはじき出した観測結果でも、理論から他の実験結果から総合的に勘案して論理的に疑わしかったら疑ってかかるというこの態度こそ科学的だと思うのである。目で見て脳が画像処理した程度のいくらでも誤りが紛れ込む過程を絶対的な根拠にする人間には爪の垢をせんじて飲んでほしい。マックスプランク研究所が爪に垢ためてるか知らんけど。
ということで長々書いてみたけど、まあめんどくせえこと考えなくても面白いし、お試し一月は無料なのでNetflixお薦めします。
別にネトフリにお金もらってるわけでもないのに2週にわたって宣伝くせえことを書いているなと思う。
映像っていう芸術というか文化が、大企業様がパトロンになってた景気の良かったテレビの時代から、ネット配信含め多様化の時代に向かっているようにみえ、金払うオタクやら生き物好きやらもパトロンとしての役割が大きくなる時代を迎えようとしている。これまで大企業様の意向に合うようなクソみたいな大量消費礼賛の垂れ流しの番組を見させていただいてたのが、やっとオレらも堂々と意見を言う権利を得てオレら好みのモノを作ってもらえるような時代が来ているように感じている。
でも自由と責任がセットなのと同様に権利と責任もやっぱりセットで、ちゃんとパトロンとしての責任果たさないとつまんねえことになるぞと感じているので、有料ネット配信を応援しつつちょっと一言書きたいというのもあった。
単刀直入に書くと、ネットに違法にアップロードされた動画とか見てタダで済んだとか喜んでんじゃねえゾって話。ちゃんと苦労して創った人間が報われるような仕組みにしていかないと、面白いモノが創られにくくなると思うのである。
購買は選挙なんかよりよっぽど直接的な「一票」入れる意思表示だと思うので、自分の好きなモノはちゃんと買い支えていくぐらいの度量がないと王侯貴族が果たしていたようなパトロンの役目は果たせないと思う。
現代社会において私は奴隷で王様だ。
2018年1月14日日曜日
金なら出してやるっ!
年が明けるとアニオタ4半期に一度のお楽しみの番組改正でテレビ放送の新作アニメが始まる。今だいたい1回目の放送が終わったところ。3話ぐらいから話が転がり始めるので3話まで観て視聴継続か「切る」か決めるというのがお作法なので、放送始まる前にアニメ情報サイトとか参考に今期はまずどれを観るべきか録画予約していくのがいつもの作業になっている。たぶん今期も50作品ぐらいは始まるので最初からかなり絞っていかないと収拾がつかない。
録画予約していて困るのが放送時間がぶつかることで、できるオタクなら一度に複数録画も可能な機器を用意しているんだろうけど、我が家のパソコンテレビにはそんな便利な機能はついてないので「グハッ!3月のライオン2期とダーリンインザフランキスかぶってもうた!どないしょ?」とか焦るわけだけど、おちつけもちつけまだ慌てる時間じゃない。
ネット配信のアベマTVかGYAO!で同時配信か見逃し配信あるかチェックである。ダーリンインザフランキスはGYAO!で2日遅れで見逃し配信があってことなきを得た。あとは情報サイトとかで2日間ネタバレ記事を読んでしまわないように注意するだけだ。
という感じで今期もなんとかなりそうな感じだったのだけど、1作品だけそもそも1月5日からスタートと情報出てるのに録画するにもなぜか番組表に出てこない作品があって、どうしても観てみたい作品なので困った。公式サイトで放送局を調べてみたらネット配信のみで、有料で動画見放題の「Netflix(ネットフリックス)」独占配信となっている。
確かにいわれてみればあの作品を原作準拠でアニメ化したら地上波ではグロすぎて放送してくれないだろう。飛び散る血しぶきと臓物で「人間」とはなんぞやという根元を鬼才天才永井豪先生が描きまくったマンガ史に残る大傑作「デビルマン」のアニメ化である。
しかも監督は「ピンポン」アニメ化とかの実力派湯浅政明監督ときた日にゃあ、こりゃあ女房を質に入れてでもネトフリ契約せにゃならんですゼ。ということで「でもお高いんでしょう?」と調べてみたところ月額650円とお安い上にお試し期間一月無料となっていて、こんなんデビルマンだけ観て解約したらタダじゃん、としっぽ振って契約した。
それがネトフリ側の撒く餌で撒き餌だけ食って食い逃げなどさせてくれるほどネトフリ甘い釣り人じゃないということを思い知ることになるのだが、ともかく「デビルマン クライベイビー」を観始めたところ、今全10話の4話まで観たところだけどこれは面白いわ。
デビルマンって昭和のテレビアニメ版が一般的には有名だけど、今でいうところのメディアミックス作品で、豪先生がデーモン族の裏切り者であるデビルマンが戦うという基本設定とかだけ決めたうえで、アニメはアニメ制作陣が創ると同時にマンガ版は豪先生本人がマンガ雑誌に連載開始ということでマンガ版とアニメ版では別作品なんである。
アニメ版も昭和のオッサンである私など、初めて哀愁という感情を覚えたのはアニメ版デビルマンのエンディング曲にだったんじゃないかってぐらいで、実に裏切り者の悲哀が染みた素晴らしいアニメだったと思う。でもマンガ版はアニメ版の脚本家だったか監督だったかが「今までのアニメやマンガにない新しいヒーローを創ってやると意気込んで創って出来映えに満足して、自信満々にマンガ版を読んだところ「これは負けた」と悔し涙を流した」とかいう話が文庫版デビルマンの解説で紹介されているぐらいに豪先生のマンガ版デビルマンは衝撃的な作品である。
私も高校生のとき再版かかってマンガコーナーで平積みされていたのを「おっ、デビルマンの原作か、懐かしやン」と手にとって、前半シレーヌに尽くすカイムの純情あたりに娯楽作品として滅茶苦茶上手いなと感心して「アニメ版とぜんぜんちゃうけどめっちゃオモロいやん」と引き込まれて全巻むさぼるように立ち読みしてしまい、それがまた豪先生の撒いた餌で後半のすざまじい展開と描写に「マンガでこんなことまで描いてええの?」とドタマでっかいハンマーで横殴りに持ってかれたぐらいの衝撃を受けた。今でこそ世界を終わらせるような最終戦争の物語ってありふれてて当時も平井和正先生原作の幻魔大戦がアニメ映画化で「警告!ハルマゲドン接近!」とかやってて、ハルマゲどんって鹿児島出身っぽいなとかくだらないネタを思いついたりしてたんだけど、そんな物語は豪先生がとっくの昔にとんでもない完成度で描いてやがったのである。初めてマンガで芸術点の高い作品が描きえるということを強く認識された作品でもあった。
まあ「デビルマン後」に生まれた作品にも面白いのいっぱいあるけどね。
でもって今回のアニメ化、舞台は現代に持ってきてて、明とミキちゃんにからむヤンキー少年がライム踏んでからんでくるラッパー少年になったり、タレちゃんがタロちゃんになったりしてるけど、大筋は原作の通りでなかなかに上手いと原作ファンも納得できるうえに、昭和のアニメ版への敬意も、例えば「デビルマンの正体は誰にも知られちゃいけないんだ」という飛鳥了の台詞とか随所に感じられてアニメ版が好きでマンガ版も読んだというような人間が嬉しくなっちゃうような小粋な演出なんである。
でもって登場人物とかの絵柄も今時風のすっきりした格好いい感じになってるんだけど、それでもデビルマンの目がまごうことなくマンガ版で豪先生が描く狂ったようなつり目なところとかがまったくもってデビルマンなんである。
なんちゅうかみんな違ってみんな良い的にどちらの作品も良いのに、マンガ版ばかり持ち上げる識者とかの意見には鼻持ちならんものを感じる。大学時代に学祭で漫画研究会が展示会場のゲートの左右にマンガ版とアニメ版のデビルマンの等身大看板を立てていて、うちのガッコの漫研にはそのへんよく分かってる奴がいるなと安心したのを思い出す。
続きも既に全話公開されていて一気に観ちまいたい気もするのだけど、後半戦の展開を知っていると相当覚悟してちょっとずつ観ざるを得ない。あらすじ知っててもたぶんまた衝撃を受けて精神的にかなりやられることは目に見えている。一話ずつ間をあけてじわじわと楽しんでいきたい。後半湯浅監督がどう料理したのか期待してお手並み拝見である。
という感じでデビルマンだけ来月までに観て食い逃げしようと思ってたんだけど、契約してアカウント作成時にあなたの好きな作品を3つ選んでくださいってのにポトポチっとしてお薦めされてきた作品見ると、弐瓶勉先生の出世作「BLAME!(ブラム)」のアニメ版があるっ!これまたネトフリオリジナル独占配信である。「シドニアの騎士」アニメ化の時のポリゴンピクチャーズがブラムも3DCGで劇場版アニメ化したとは知ってたけど映画館以外ではネトフリ独占配信だったんだ。と、喜んで視聴。
原作マンガは結構難解なハードSFでたぶん半分ぐらいしか理解できてないんだけど、アニメ版はだいぶわかりやすいアニメオリジナルの脚本で「サナカン(註:ヘラ餌のサナギ感嘆ではなくそういう登場人物)そっちかよ!?」とか割と大胆にいじってて(追加註:調べてみたら多分原作準拠なんだけど原作ストーリーろくに理解できてないので驚いたというハードSFに向いてない頭の悪さを露呈)、別作品としてみた方がいいのかもしれないけど、アニメ版はアニメ版で1時間半ほどの作品としてきっちり娯楽作品としてわかりやすく落としていてこれまた実にいい感じで楽しめた。3DCGもシドニアよりも進化してる感じでレベル高くて眼福だった。金掛かってんじゃなかろうか?
ネットの動画配信事業って、今まさに開拓時代で各種サービス業者が儲かる仕組みを作りつつ、顧客を囲い込もうと必死になっていて、各社今だけの出血大サービス状態になってるように感じる。
アベマTVとか番組表の時間帯に視聴すればタダで観られるってぐらいの大盤振る舞い。
ネトフリの戦略としてはアニメとドラマに力入れてオリジナル映像独占配信でオタクな客とかを釣ろうとしているんだろう。まんまとハリを掛けられた感触がある。
アニメ産業の今後を考えると、特定の信者からまさに「お布施」として高額な円盤やらグッズの代金を集める「カルト化」した現状より、ネット配信の薄利多売の方が安定して発展していけるのかもしれない。いろんな手段があって多様化していけばいいんだと思うけど、アニメは観たいけど高価な円盤買うのはためらっていた私のような軽めのニワカアニオタからすれば、いままで、円盤買ってくれてる濃いめのオタク様達の恩恵で新作アニメもタダで拝見させていただいていた心苦しさがあったけど、ネット配信なら大した金額じゃないし喜んで払わせてもらいたいし、パトロンとして大手を振って口を出していける気がする。まあ私からの注文は「あんた達が良いと思う作品を力一杯創ってくれ」ってことだけだけどね。
ということでネトフリ継続契約していく方針なんだけど、アニメとか映画とかは充実してるけど、ほかに観るものないだろかと思って眺めてみたら生物もののドキュメンタリーも老舗英国はBBC放送の割と新しいシリーズとか日本語訳付きであったりして、これが面白いの面白くないのって、滅茶苦茶面白いんである。
BBCネタだけで紹介したい話が山ほど出てきたので、今回「アニメ・映画など日記」出張版でアニメネタだったけど、次回は生き物ネタ「陽気なカエルがサンバを踊る」でお送りいたします。
この次もサービス、サービスゥ!
録画予約していて困るのが放送時間がぶつかることで、できるオタクなら一度に複数録画も可能な機器を用意しているんだろうけど、我が家のパソコンテレビにはそんな便利な機能はついてないので「グハッ!3月のライオン2期とダーリンインザフランキスかぶってもうた!どないしょ?」とか焦るわけだけど、おちつけもちつけまだ慌てる時間じゃない。
ネット配信のアベマTVかGYAO!で同時配信か見逃し配信あるかチェックである。ダーリンインザフランキスはGYAO!で2日遅れで見逃し配信があってことなきを得た。あとは情報サイトとかで2日間ネタバレ記事を読んでしまわないように注意するだけだ。
という感じで今期もなんとかなりそうな感じだったのだけど、1作品だけそもそも1月5日からスタートと情報出てるのに録画するにもなぜか番組表に出てこない作品があって、どうしても観てみたい作品なので困った。公式サイトで放送局を調べてみたらネット配信のみで、有料で動画見放題の「Netflix(ネットフリックス)」独占配信となっている。
確かにいわれてみればあの作品を原作準拠でアニメ化したら地上波ではグロすぎて放送してくれないだろう。飛び散る血しぶきと臓物で「人間」とはなんぞやという根元を鬼才天才永井豪先生が描きまくったマンガ史に残る大傑作「デビルマン」のアニメ化である。
しかも監督は「ピンポン」アニメ化とかの実力派湯浅政明監督ときた日にゃあ、こりゃあ女房を質に入れてでもネトフリ契約せにゃならんですゼ。ということで「でもお高いんでしょう?」と調べてみたところ月額650円とお安い上にお試し期間一月無料となっていて、こんなんデビルマンだけ観て解約したらタダじゃん、としっぽ振って契約した。
それがネトフリ側の撒く餌で撒き餌だけ食って食い逃げなどさせてくれるほどネトフリ甘い釣り人じゃないということを思い知ることになるのだが、ともかく「デビルマン クライベイビー」を観始めたところ、今全10話の4話まで観たところだけどこれは面白いわ。
デビルマンって昭和のテレビアニメ版が一般的には有名だけど、今でいうところのメディアミックス作品で、豪先生がデーモン族の裏切り者であるデビルマンが戦うという基本設定とかだけ決めたうえで、アニメはアニメ制作陣が創ると同時にマンガ版は豪先生本人がマンガ雑誌に連載開始ということでマンガ版とアニメ版では別作品なんである。
アニメ版も昭和のオッサンである私など、初めて哀愁という感情を覚えたのはアニメ版デビルマンのエンディング曲にだったんじゃないかってぐらいで、実に裏切り者の悲哀が染みた素晴らしいアニメだったと思う。でもマンガ版はアニメ版の脚本家だったか監督だったかが「今までのアニメやマンガにない新しいヒーローを創ってやると意気込んで創って出来映えに満足して、自信満々にマンガ版を読んだところ「これは負けた」と悔し涙を流した」とかいう話が文庫版デビルマンの解説で紹介されているぐらいに豪先生のマンガ版デビルマンは衝撃的な作品である。
私も高校生のとき再版かかってマンガコーナーで平積みされていたのを「おっ、デビルマンの原作か、懐かしやン」と手にとって、前半シレーヌに尽くすカイムの純情あたりに娯楽作品として滅茶苦茶上手いなと感心して「アニメ版とぜんぜんちゃうけどめっちゃオモロいやん」と引き込まれて全巻むさぼるように立ち読みしてしまい、それがまた豪先生の撒いた餌で後半のすざまじい展開と描写に「マンガでこんなことまで描いてええの?」とドタマでっかいハンマーで横殴りに持ってかれたぐらいの衝撃を受けた。今でこそ世界を終わらせるような最終戦争の物語ってありふれてて当時も平井和正先生原作の幻魔大戦がアニメ映画化で「警告!ハルマゲドン接近!」とかやってて、ハルマゲどんって鹿児島出身っぽいなとかくだらないネタを思いついたりしてたんだけど、そんな物語は豪先生がとっくの昔にとんでもない完成度で描いてやがったのである。初めてマンガで芸術点の高い作品が描きえるということを強く認識された作品でもあった。
まあ「デビルマン後」に生まれた作品にも面白いのいっぱいあるけどね。
でもって今回のアニメ化、舞台は現代に持ってきてて、明とミキちゃんにからむヤンキー少年がライム踏んでからんでくるラッパー少年になったり、タレちゃんがタロちゃんになったりしてるけど、大筋は原作の通りでなかなかに上手いと原作ファンも納得できるうえに、昭和のアニメ版への敬意も、例えば「デビルマンの正体は誰にも知られちゃいけないんだ」という飛鳥了の台詞とか随所に感じられてアニメ版が好きでマンガ版も読んだというような人間が嬉しくなっちゃうような小粋な演出なんである。
でもって登場人物とかの絵柄も今時風のすっきりした格好いい感じになってるんだけど、それでもデビルマンの目がまごうことなくマンガ版で豪先生が描く狂ったようなつり目なところとかがまったくもってデビルマンなんである。
なんちゅうかみんな違ってみんな良い的にどちらの作品も良いのに、マンガ版ばかり持ち上げる識者とかの意見には鼻持ちならんものを感じる。大学時代に学祭で漫画研究会が展示会場のゲートの左右にマンガ版とアニメ版のデビルマンの等身大看板を立てていて、うちのガッコの漫研にはそのへんよく分かってる奴がいるなと安心したのを思い出す。
続きも既に全話公開されていて一気に観ちまいたい気もするのだけど、後半戦の展開を知っていると相当覚悟してちょっとずつ観ざるを得ない。あらすじ知っててもたぶんまた衝撃を受けて精神的にかなりやられることは目に見えている。一話ずつ間をあけてじわじわと楽しんでいきたい。後半湯浅監督がどう料理したのか期待してお手並み拝見である。
という感じでデビルマンだけ来月までに観て食い逃げしようと思ってたんだけど、契約してアカウント作成時にあなたの好きな作品を3つ選んでくださいってのにポトポチっとしてお薦めされてきた作品見ると、弐瓶勉先生の出世作「BLAME!(ブラム)」のアニメ版があるっ!これまたネトフリオリジナル独占配信である。「シドニアの騎士」アニメ化の時のポリゴンピクチャーズがブラムも3DCGで劇場版アニメ化したとは知ってたけど映画館以外ではネトフリ独占配信だったんだ。と、喜んで視聴。
原作マンガは結構難解なハードSFでたぶん半分ぐらいしか理解できてないんだけど、アニメ版はだいぶわかりやすいアニメオリジナルの脚本で「サナカン(註:ヘラ餌のサナギ感嘆ではなくそういう登場人物)そっちかよ!?」とか割と大胆にいじってて(追加註:調べてみたら多分原作準拠なんだけど原作ストーリーろくに理解できてないので驚いたというハードSFに向いてない頭の悪さを露呈)、別作品としてみた方がいいのかもしれないけど、アニメ版はアニメ版で1時間半ほどの作品としてきっちり娯楽作品としてわかりやすく落としていてこれまた実にいい感じで楽しめた。3DCGもシドニアよりも進化してる感じでレベル高くて眼福だった。金掛かってんじゃなかろうか?
ネットの動画配信事業って、今まさに開拓時代で各種サービス業者が儲かる仕組みを作りつつ、顧客を囲い込もうと必死になっていて、各社今だけの出血大サービス状態になってるように感じる。
アベマTVとか番組表の時間帯に視聴すればタダで観られるってぐらいの大盤振る舞い。
ネトフリの戦略としてはアニメとドラマに力入れてオリジナル映像独占配信でオタクな客とかを釣ろうとしているんだろう。まんまとハリを掛けられた感触がある。
アニメ産業の今後を考えると、特定の信者からまさに「お布施」として高額な円盤やらグッズの代金を集める「カルト化」した現状より、ネット配信の薄利多売の方が安定して発展していけるのかもしれない。いろんな手段があって多様化していけばいいんだと思うけど、アニメは観たいけど高価な円盤買うのはためらっていた私のような軽めのニワカアニオタからすれば、いままで、円盤買ってくれてる濃いめのオタク様達の恩恵で新作アニメもタダで拝見させていただいていた心苦しさがあったけど、ネット配信なら大した金額じゃないし喜んで払わせてもらいたいし、パトロンとして大手を振って口を出していける気がする。まあ私からの注文は「あんた達が良いと思う作品を力一杯創ってくれ」ってことだけだけどね。
ということでネトフリ継続契約していく方針なんだけど、アニメとか映画とかは充実してるけど、ほかに観るものないだろかと思って眺めてみたら生物もののドキュメンタリーも老舗英国はBBC放送の割と新しいシリーズとか日本語訳付きであったりして、これが面白いの面白くないのって、滅茶苦茶面白いんである。
BBCネタだけで紹介したい話が山ほど出てきたので、今回「アニメ・映画など日記」出張版でアニメネタだったけど、次回は生き物ネタ「陽気なカエルがサンバを踊る」でお送りいたします。
この次もサービス、サービスゥ!
2018年1月7日日曜日
フラットラップ屋後継者問題
フラットラップの生産中止については、おそらく世界中の愛用者が泡食っていると思う。まあそういう偏愛してた私のような人間もいただろうけど、今のルアーの市場では、このルアーの良さがあんまり評価されなかったのかと思うと寂しい。
フラットラップの良さについてはこれまでも何度も書いてきた。「固定重心なのによく飛ぶ」「固定重心なので動きの立ち上がりが早い」「固定重心の軽いバルサ製ミノーなので動きがキビキビとしていて良い」「世界のラパラが作ってるので安いし手に入れやすい」「ワイヤー貫通式なので大物も安心」「バルサボディーなので修理がきく」あたりがパッと思いつく。思いつくんだけどそういう諸々の要素がありつつ結局のところ「良く釣れる」という結果論的に良いルアーなのである。愛用者として断言する。
パッと思いついた要素のうち「飛距離」はアホでもというと失礼だが素人でも評価しやすい項目である。魚が一回もかからなくても飛びゃあいいんだから分かりやすい。私が釣具屋でもろくすっぽ魚よう釣らんような素人衆相手に道具売りさばこうと思ったら、アホでも分かる飛距離を売りにして「よう飛びまっセ!」と揉み手する。おかげで飛距離をうたい文句にした製品はルアーに限らず竿でもリールでも枚挙にいとまがなく、毎年「同クラス最高の飛距離(当社比)」とかいうのがでてくる。洗剤の「驚きの白さに」と一緒で別にたいして代わりばえもしないことがほとんどだと思う。飛ばないより飛んだ方がいいし飛距離が重要な場面もあるけど、そこそこ飛べば十分なことが多くて、飛距離と引き換えになにかを失うのなら別にそこまで欲しくないというところだ。何事も程度問題でどこまで飛距離を重要視するか、欲しい飛距離を確保したうえで動きの良さだの潜り方だのをどう特徴づけて釣れるルアーにしていくかってあたりがルアーを作る側の腕の見せどころだろう。
でもまあ「動きの良さ」ってのは正直難しい要素だ。バルサミノーの軽やかなキビキビとした動きが良い時もあれば、今時の日本製ミノーのようなヨタヨタってるおとなしめの動きが良いときもあって飛距離のように単純じゃない。昼間に浅いところを泳がせてみればどんな動きかは見ることができるけど、それが魚にとってむしゃぶりつきたくなる動きかどうかなんてのはなかなか人間には知り得るものじゃない。結局、魚を何匹も釣って何となく自分のなかでどんな時にどんな動きが効くのか分かったような気になってくる程度である。
「立ちあがりの早さ」は動きの良さと比べれば割と分かりやすく、かついろんな場面で重要になってくるけど、あんまり分かってない人が多いような気がする。障害物や対岸とかの際に投げ込んですぐに動き始めてくれないと魚が食ってくる範囲を通りすぎてしまうことになりかねない。ツイッチとかジャーキングなんかのルアーを竿で動かすときの追従性の良さにもつながる。
重心移動搭載のミノーでもリール巻き始めたらすぐに動き始めるジャン充分早いジャンって思っている人はたぶん、固定重心のうえに軽いバルサでできているフラットラップやラパラオリジナルフローティングとかの本当に立ちあがりの早いルアーを使ったことがないか見る目がないかなんじゃないかと思う。なにしろ投げて巻きはじめる前にラインの張りで着水直後から動き始めているぐらいである。そのぐらい立ちあがりが早いと、渓流で上流に投げて釣りあがるような時には圧倒的な差になったりする。立ちあがり遅いと流れてしまってて動いてない時間が長い。流れてるだけで食ってくるときは良いけどそういうときばかりじゃない。ラパラフローティング7センチなんて軽くて飛距離は全然だけど上流に投げても流れの中でしっかり泳いでくる。結果釣れるので良いルアーということになる。
この辺は私がシーバスに限らず近距離特化型のルアーマンなので、遠投して広く遠く探る釣り方のルアーマンとは評価の基準が違うということもあるので、まあ異論はあるんだろうと思う。でも釣具屋さん側が発信する情報ほど飛距離ばかりが重要な要素じゃない、ほかの要素の方が大事なことも多い、とは思うので、いつもしつこく書くのである。
とまあ、オリジナルフローティング同様に動きの良さ立ちあがりの早さなんかは持ちながら、飛距離もそこそこ出ちゃうという実に良い案配に設計されたナマジ的史上最高ミノーであるフラットラップ廃盤の衝撃を受けて、さてどうするかと考えた。
とりあえずはわが家の蔵にも在庫がまだあるので、今日明日どうにかしなければならないという差し迫った状況ではない。まずは、まだ売ってるところを探すのとネットオークションや中古屋で出物を探して弾数確保しておくかと探してみた。
通販はどこも売り切れで、バスプロショップスとカベラスにももうなく、別の米国の通販で売れ残ってるのを見つけたけど米国カナダあたりの英語圏以外はファックスでやり取りしろとかなっててめんどくささに諦めた。
Tベリーで安売りされてたとの情報があったので探したら10センチが10個ぐらいあった。即下品に買い占め。ネットオークションでもそれなりに追加できて8センチと10センチで50近くストックできた。けど、障害物際とか攻めまくって1年に5個とかなくすと10年でなくなりそう。とはいえ下品に買いすぎるのも良くないような気もしてきた。物欲にまかせて必要以上に手にいれているような気がしてならずやりすぎ感が漂う。いい加減にしろと自分でも思う。地球にやましい釣り人だ。
かつ、中古は思ったほど弾数も多くなくて値段もあまり安くなってない。デカいのと小さいのは定価以上の値段ついてたりもする。2011年ぐらいから5年ちょいぐらいしか売られていないので中古市場では今後もそれほど弾数稼げそうにない。
ラパラさんが再生産してくれればそれに越したことはない。ラパラ社はFマグも復活させたし、割りとマイナーなところのカウントダウンシャッドラップなんかも復刻してたりして、望みはないわけではないと思う。
期待しつつも、再生産されなかったときのことも想定して、在庫がつきるまでに後継のルアーを見つけていこうということにした。あるもんでなんとかしろよという気がするし、新しいルアーとか試して、利点も欠点も把握していきながら、自分の得意ルアーに育て上げていくのってルアーマンの姿勢として正しいだろうし、何より楽しそうジャン。
まあ、最悪納得いくルアーが見つからなかってもフラットラップを参考にバルサで自作するという最終手段もある。1からあれに匹敵するミノーを設計しろと言われたら無理だけど手本があればそれなりのものをまねて作れる程度の技術は持ってるはずである。あんまり先のことを気にしすぎても仕方ないし気楽に行こうぜ。
というわけで、フラットラップ後継ミノーを探すべくまずは、どういうミノーがほしいのか整理してみる。
まずは固定重心が必須。飛距離ほしくて重心移動が必要な時にはコモモやサスケ、ハードコアリップレスあたりにお出まし願えば問題ないと思っている。特にこの秋にいろいろ試して気に入ったハードコアリップレス90Fはさすがに飛距離を売り物にしているだけあってよく飛ぶし動きも派手目で好みだ。もっと飛距離が必要なら単純に大型化していくかピンテールとかの自重がクソ重いシンキングミノーが結局頼りになる。
次にフローティングで、できればあまり潜らない方がいい。根掛かり馬鹿臭いしなんだかんだいって水面直下がよく釣れるというのもある。根掛かり気にしないでいい場所ならシンキングの固定重心ミノーは大正義ラパラカウントダウンやアスリートシンキングがある。こいつらはそこそこ飛距離も出るしこいつらのヌルヌル系の動きが効くときもあるけど欲しいのは軽いフローティングミノーのキビキビとした動きなので、フローティングであることも必須。水深30センチとかの浅場の釣りでもフラットラップは活躍してくれてたのでできれば水面直下系がありがたい。最悪リップ削って調整できるけど、最初から潜らないのもあるでしょ。
動きはキビキビしていて欲しいんだけど、あんまりロール系か横振り(ウォブリング)系かは気にしてない。それより重要視しているの何というか振り幅小さく振動数が多いような忙しくバタバタしてくれるのがフラットラップの後継というなら理想だと思っている。なかなかプラスチックのミノーでは出せない動きなので、だからこそ効く場面があるのかもしれないけどそこまで贅沢はいわないでおいて、軽いフローティングミノーならではのキビキビ系なら良しとする。よくわからんけど私の目にキビキビ働いてるように映ってくれるならとりあえず良し。まあ動きとかは実際に使い込んでいかないと良いも悪いもわからないもので、判断するのは最終的には釣り場の魚であってオレじゃない。
サイズは、私は残念ながら大物釣り師ではないのでレギュラーサイズの50センチぐらいのフッコを想定すると、7から10センチぐらいがちょうど良いかなと思っている。シーバス釣るにはマッチザベイトな大きさはあんまり関係ないとき多いと思ってる。むしろスレたら小さいルアーとかでかいルアーのアピールで勝負とかの方が釣り場では意識させられる。
飛距離はあんまり期待してないけど、ラパラフローティングみたいに軽すぎてちょっとした風にひらひらと舞うようなのは塩梅が悪いのでそれなりに欲しい。フラットラップほどは飛ばなくても良いけどロングA並以上が合格点かな。飛んでるときにバランス崩して回転しなければ何とかなる程度。
あとは、丈夫なの安いのがありがたいというのもあるけど、入手しやすいというのがかなり重要。今生産中で手にはいるというのも大事だけど、今後も作られ続ける実力があるのかも考慮しなきゃだし、ラパラFマグ生産中止の時に実感したんだけど、中古の弾数が多いと廃盤になっても入手はしやすかったりする。Fマグ生産再開したけど中古だけでも結構補充可能である。
ということで、まずは手持ちのルアーで該当するようなのを蔵から発掘してきたりして、近所ポイント偵察がてら試し投げしてみた。
候補は、インビンシブル8センチとロングAのいつも使ってる12センチの15Aじゃなくて9センチの14Aがまずは合格ラインかなと思う。今でも使ってるし今更テストしなくても実力は折り紙付き。後はどれぐらいフラットラップの能力をカバーできるかという所。
とりあえず手持ちのルアーで固定重心のというと、昔使ってたり中古屋で叩き売られていたのでとりあえず買ってしまったヨーズリ軍団がある。トビマル10センチとクリスタルミノーF9センチは今復刻されているので手に入れやすいはず。スイングミノー9センチとその後継版みたいなGL工房のツルミノーもとりあえず試してみる。
あとはレーベルミノー9センチとタイドミノーSSRもあったので試してみた。
(写真上から順に、インビン、14A、トビマル、クリスタル、スイング、ツル、レーベル、タイドミノーSSR)
結果としては、やっぱりインビンシブル8センチとロングA9センチが今回欲しい性能的には優れている。
インビンシブル8センチは、バルサ製なので動きはまさに求めてたような忙しくキビキビした動きでラパラと遜色ない動きだと思う。飛距離も塗装が厚いせいかそこそこ飛んでくれて実に良いバランスに仕上がっているミノーだ。フィンランド本国でラパラを向こうに回して生き残ってきた実力は伊達じゃない。惜しむらくはサイズが小さめでその次のサイズがいきなり飛んで12センチになることで、9センチ10センチあたりがあればもう少し飛距離も出せるしフッコ狙いにはちょうど良いんだけどまあ8センチでも充分やれると思う。やや近距離向けスレた魚向けという感じか。入手のしやすさは今日本に正規代理店がないので新品の確保は難しいけど、歴史あるミノーなので中古の弾数は豊富で安い中古見つけたらとりあえず確保していきたい。
ロングA9センチはサイズ考えたら良く飛ぶし、動きもツーテンの虎ファンさんが細長めのクランクベイトと評していたぐらいで、キビキビバタバタと良く動いてくれる。プラスチックのルアーでこのぐらい動きが良ければそりゃ売れ続けるだろうという感じ。今でも新品1000円ぐらいで売ってるし、中古もよく見かける。
一応、ボーン素材と普通の透明な素材のも比べてみたけど、12センチのボーンカラーのように極端に浮力が強いというほどではない感じだった。超浅場では潜りすぎるかも。一番上がボーン素材、真ん中が普通ので、一番下が反射板入り。普通の透明素材のにも反射板入りとそうでないのがあって、反射板入りはラトルが顔の下あたりに入っているけど、反射板なしはボーン素材同様ボディーの広い空洞にラトル入っててカラカラ鳴る。
一時期ソルトウォーターグレードボーマーのブランド名で生産されていたポリカーボネイト製の丈夫なモデルは今現在15センチ16A以上の大きなモデルしか売ってないようで、12センチ15Aの方は確保してあるけど9センチ14Aは買っておらず、買っときゃ良かったと後悔している。
一つ考えなければいけないのが、ラトルの問題でロングAはラトル入りである。虎ファンさんとも議論したことがあるんだけど、カヤックシーバスでレンジバイブやフライングダイバーが強いのは固定重心でラトル音がないからかもと思っていた。でも、フライングダイバーって固定重心だけどオモリがゴトゴトいうルアーで、そう考えるとラトル音じゃなくて立ち上がりの早さとかが関係してるんだろうなという意見に落ち着いた。
ミノーはラトルなくてもフックがボディーに当たる音とかも結構しているので、単純にラトル音がないから固定重心がスレには強いってことではなさそう。一撃必殺のつもりで投げたラトルなしのフラットラップがさんざん無視されたあとで15Aぶち込んだら食ってきたなんてことも経験していて、ラトルやオモリの音があるとスレた魚が食ってこないなんて簡単に言える話じゃないのだろう。でも音の違いは色の違いよりは釣果に影響しそうにも思うのでローテーションするときにはその辺意識しておいても損はないと思う。
ということでロングAはロングAで良いミノーでボックスに入れとけなんだけど、フラットラップの後継という意味ではラトルのないのも探しておきたいところ。
ヨーヅリ軍団のミノーがそれぞれ個性的で面白い。トビマルは正直重量アップした改造版しか投げてなかったので今回初めてじっくり動きを見たけど、今時のミノーみたいな振り幅狭い動きで、太さで重さを稼いで飛距離も出るしいかにも釣れそう。ちなみにこれだけラトル入り。逆にクリスタルミノーは頭起点にグワングワンと派手な横振り系でアピール度高い。フラットラップの後継という感じの動きではないけどコレはコレでなかなかに良いかも。お楽しみルアーとして2軍ボックスに入れておくか。
スイングミノーが一番ロール伴った振動数多いキビキビ系の動きで動きは好みだけど、9センチの細身のミノーはやや飛距離不足でかつ、発泡樹脂製という変わった製造方法のせいか復刻されていないので確保も難しい。ツルミノーはヨーヅリから独立した津留崎氏がGL工房でスイングミノーを発展させたやっぱり発泡樹脂製のミノーで、太くして重量稼いで飛距離も確保してスイングミノーの弱点を克服してバランスの良い優等生に仕上げている。完成度の高い固定重心ミノーだと思うけど残念ながらこれも廃盤。中古で見つけたら買ってもいい良いミノーだと思ったけど主軸まかせるには廃盤だと辛い。
レーベルミノーは性能的にはオーソドックスな、まとまってるけど特別悪いところも良いところもない、ミノーってのはこういうモノという感じのミノー。だけど、今売ってるバリューシリーズとかいうのが新品で500円台とかのすざまじい低価格でちょっと心引かれるのだがレーベルミノーの代名詞の「クロスハッチ模様」という鱗模様がカラーにないので候補から外す。
タイドミノーSSRもバランス取れた良いミノーだけどこれまた廃盤。これの12センチはボートシーバスでも良く釣れた。同じシリーズのタイドミノースリムが重心移動で良く飛んで人気だったけどSSRも良かった。
ということで、結局手持ちの駒ではロングAとインビンシブルがやっぱり良いというオチになったんだけど、フラットラップの後継という観点で考えるとロングA以上に飛んでラトルなし、と超浅場を狙えるの、が足りてない気がする。
うちの蔵に転がってないなら新しく買いましょか。ということになって、ネットで今時のミノーなど調べて候補を絞ってみた。フローティングの固定重心のミノー自体は結構作られてて、やっぱり穴撃ち用とか障害物際の釣り用のがある。ルアー作ってる側の人ならやっぱり固定重心のミノーの長所って無視できない要素で、一つぐらいそういうミノーも作ってみたくなるんだろう。でもあんまり多くはない。
そんな中で、候補を絞って2種類ほど買ってみた。
一つはやっぱり固定重心のミノーは得意なのかデュエル社の海外向け「ヨーヅリ」ブランドで出てる「3Dインショアサーフェスミノー9」は垂直系リップの付いた超浅場用。
もいっちょが、バレーヒル社の邪道ブランドから出てる「ごっつあんミノー89F」。
どちらも完全に固定重心のミノーの立ち上がりの早さを認識したうえで作ったような説明ぶりで、良く分かってらっしゃると安心する。早速試投してきたけど、なかなかに良い買い物かも知れない。
「3Dサーフェスミノー」の方は、ワンマイナスとかの水面引きクランクをちょっとミノーっぽくした感じで、ゆっくり引くと水面引きできるし潜らせてもそれ程潜らず超浅場用としてバッチリな感じ。太めなので飛距離も充分出るし、動きも派手めでラトルも入ってていかにもアメリカ人好みな感じに仕上がっている。国内向けじゃない製品のようでパッケージも英語だし、ルアーの背中にも誇らしげに「YO-ZURI」のブランド名が刻印されている。国内でも通販で手に入るんだけど、これがまた安いのよ。新品700円台ってどうなのよ。ちなみに3Dってのはカラーリングが表面に施されているだけじゃなくてボディー内部に立体的にホログラムシートとか配置されているのに由来するらしい。これは超浅場に入ってるやる気のある魚がガッポリ食ってくれそうな気がする。ちょうどロングAの潜りすぎないヤツみたいな感じである。良いところにハマるピースかも。
「ごっつぁんミノー89F」は、一転していかにも日本人好みの良くできた感のあるミノー。リップ小さめで飛距離もかなり出るし、動きは飛距離稼ぐのにやや後方重心なのでおとなしめだけど、それでも今時のミノーにしてはバタバタと良く動いてくれていい感じ。ラトル無しということでロングAとかぶらない。デザインも「魚そっくりでしょスゴイでしょ」的などうでもいい人を釣るためのじゃなくて、単純でスッキリしつつもルアーらしい表情のある好感の持てるものになっている。こことかコモモのアムスデザインとかの作るルアーのルアーらしさを、国内市場向けなのに横文字の名前付けて2番煎じか3番煎じのリアルミノーをご大層な値段で売ってるメーカーには見習ってもらいたいモノである。
こいつぁフラットラップが無い場合の、最初に投げるルアーとして使えそうなぐらいの臭いがプンプンしてくるゼ。
ローテーションでロングAとインビンシブルを織り交ぜて。飛距離が欲しければ重心移動搭載ミノー出して、超浅場なら3Dサーフェスミノーとかいう感じで行けそうに思う。
実際には釣り場で投げてみて、使えるかどうか判断していく中で、思ったようにはいかない場合もあれば、意外な発見とかもあっていつものように楽しく苦労させられるのだろう。今から秋が待ち遠しい気がする。まあ、まだ始まったばかりの春の釣りしっかりやっとけよだけど。
という感じで、今回ルアー図鑑うすしお味第38弾はラパラフラットラップ廃盤ショックを受けて、次世代のエース候補を探すべく、固定重心のフローティングミノーについてあれこれ書いてみました。
(追加註:2019年フラットラップ8カタログ復帰しました。祝!!)
フラットラップの良さについてはこれまでも何度も書いてきた。「固定重心なのによく飛ぶ」「固定重心なので動きの立ち上がりが早い」「固定重心の軽いバルサ製ミノーなので動きがキビキビとしていて良い」「世界のラパラが作ってるので安いし手に入れやすい」「ワイヤー貫通式なので大物も安心」「バルサボディーなので修理がきく」あたりがパッと思いつく。思いつくんだけどそういう諸々の要素がありつつ結局のところ「良く釣れる」という結果論的に良いルアーなのである。愛用者として断言する。
パッと思いついた要素のうち「飛距離」はアホでもというと失礼だが素人でも評価しやすい項目である。魚が一回もかからなくても飛びゃあいいんだから分かりやすい。私が釣具屋でもろくすっぽ魚よう釣らんような素人衆相手に道具売りさばこうと思ったら、アホでも分かる飛距離を売りにして「よう飛びまっセ!」と揉み手する。おかげで飛距離をうたい文句にした製品はルアーに限らず竿でもリールでも枚挙にいとまがなく、毎年「同クラス最高の飛距離(当社比)」とかいうのがでてくる。洗剤の「驚きの白さに」と一緒で別にたいして代わりばえもしないことがほとんどだと思う。飛ばないより飛んだ方がいいし飛距離が重要な場面もあるけど、そこそこ飛べば十分なことが多くて、飛距離と引き換えになにかを失うのなら別にそこまで欲しくないというところだ。何事も程度問題でどこまで飛距離を重要視するか、欲しい飛距離を確保したうえで動きの良さだの潜り方だのをどう特徴づけて釣れるルアーにしていくかってあたりがルアーを作る側の腕の見せどころだろう。
でもまあ「動きの良さ」ってのは正直難しい要素だ。バルサミノーの軽やかなキビキビとした動きが良い時もあれば、今時の日本製ミノーのようなヨタヨタってるおとなしめの動きが良いときもあって飛距離のように単純じゃない。昼間に浅いところを泳がせてみればどんな動きかは見ることができるけど、それが魚にとってむしゃぶりつきたくなる動きかどうかなんてのはなかなか人間には知り得るものじゃない。結局、魚を何匹も釣って何となく自分のなかでどんな時にどんな動きが効くのか分かったような気になってくる程度である。
「立ちあがりの早さ」は動きの良さと比べれば割と分かりやすく、かついろんな場面で重要になってくるけど、あんまり分かってない人が多いような気がする。障害物や対岸とかの際に投げ込んですぐに動き始めてくれないと魚が食ってくる範囲を通りすぎてしまうことになりかねない。ツイッチとかジャーキングなんかのルアーを竿で動かすときの追従性の良さにもつながる。
重心移動搭載のミノーでもリール巻き始めたらすぐに動き始めるジャン充分早いジャンって思っている人はたぶん、固定重心のうえに軽いバルサでできているフラットラップやラパラオリジナルフローティングとかの本当に立ちあがりの早いルアーを使ったことがないか見る目がないかなんじゃないかと思う。なにしろ投げて巻きはじめる前にラインの張りで着水直後から動き始めているぐらいである。そのぐらい立ちあがりが早いと、渓流で上流に投げて釣りあがるような時には圧倒的な差になったりする。立ちあがり遅いと流れてしまってて動いてない時間が長い。流れてるだけで食ってくるときは良いけどそういうときばかりじゃない。ラパラフローティング7センチなんて軽くて飛距離は全然だけど上流に投げても流れの中でしっかり泳いでくる。結果釣れるので良いルアーということになる。
この辺は私がシーバスに限らず近距離特化型のルアーマンなので、遠投して広く遠く探る釣り方のルアーマンとは評価の基準が違うということもあるので、まあ異論はあるんだろうと思う。でも釣具屋さん側が発信する情報ほど飛距離ばかりが重要な要素じゃない、ほかの要素の方が大事なことも多い、とは思うので、いつもしつこく書くのである。
とまあ、オリジナルフローティング同様に動きの良さ立ちあがりの早さなんかは持ちながら、飛距離もそこそこ出ちゃうという実に良い案配に設計されたナマジ的史上最高ミノーであるフラットラップ廃盤の衝撃を受けて、さてどうするかと考えた。
とりあえずはわが家の蔵にも在庫がまだあるので、今日明日どうにかしなければならないという差し迫った状況ではない。まずは、まだ売ってるところを探すのとネットオークションや中古屋で出物を探して弾数確保しておくかと探してみた。
通販はどこも売り切れで、バスプロショップスとカベラスにももうなく、別の米国の通販で売れ残ってるのを見つけたけど米国カナダあたりの英語圏以外はファックスでやり取りしろとかなっててめんどくささに諦めた。
Tベリーで安売りされてたとの情報があったので探したら10センチが10個ぐらいあった。即下品に買い占め。ネットオークションでもそれなりに追加できて8センチと10センチで50近くストックできた。けど、障害物際とか攻めまくって1年に5個とかなくすと10年でなくなりそう。とはいえ下品に買いすぎるのも良くないような気もしてきた。物欲にまかせて必要以上に手にいれているような気がしてならずやりすぎ感が漂う。いい加減にしろと自分でも思う。地球にやましい釣り人だ。
かつ、中古は思ったほど弾数も多くなくて値段もあまり安くなってない。デカいのと小さいのは定価以上の値段ついてたりもする。2011年ぐらいから5年ちょいぐらいしか売られていないので中古市場では今後もそれほど弾数稼げそうにない。
ラパラさんが再生産してくれればそれに越したことはない。ラパラ社はFマグも復活させたし、割りとマイナーなところのカウントダウンシャッドラップなんかも復刻してたりして、望みはないわけではないと思う。
期待しつつも、再生産されなかったときのことも想定して、在庫がつきるまでに後継のルアーを見つけていこうということにした。あるもんでなんとかしろよという気がするし、新しいルアーとか試して、利点も欠点も把握していきながら、自分の得意ルアーに育て上げていくのってルアーマンの姿勢として正しいだろうし、何より楽しそうジャン。
まあ、最悪納得いくルアーが見つからなかってもフラットラップを参考にバルサで自作するという最終手段もある。1からあれに匹敵するミノーを設計しろと言われたら無理だけど手本があればそれなりのものをまねて作れる程度の技術は持ってるはずである。あんまり先のことを気にしすぎても仕方ないし気楽に行こうぜ。
というわけで、フラットラップ後継ミノーを探すべくまずは、どういうミノーがほしいのか整理してみる。
まずは固定重心が必須。飛距離ほしくて重心移動が必要な時にはコモモやサスケ、ハードコアリップレスあたりにお出まし願えば問題ないと思っている。特にこの秋にいろいろ試して気に入ったハードコアリップレス90Fはさすがに飛距離を売り物にしているだけあってよく飛ぶし動きも派手目で好みだ。もっと飛距離が必要なら単純に大型化していくかピンテールとかの自重がクソ重いシンキングミノーが結局頼りになる。
次にフローティングで、できればあまり潜らない方がいい。根掛かり馬鹿臭いしなんだかんだいって水面直下がよく釣れるというのもある。根掛かり気にしないでいい場所ならシンキングの固定重心ミノーは大正義ラパラカウントダウンやアスリートシンキングがある。こいつらはそこそこ飛距離も出るしこいつらのヌルヌル系の動きが効くときもあるけど欲しいのは軽いフローティングミノーのキビキビとした動きなので、フローティングであることも必須。水深30センチとかの浅場の釣りでもフラットラップは活躍してくれてたのでできれば水面直下系がありがたい。最悪リップ削って調整できるけど、最初から潜らないのもあるでしょ。
動きはキビキビしていて欲しいんだけど、あんまりロール系か横振り(ウォブリング)系かは気にしてない。それより重要視しているの何というか振り幅小さく振動数が多いような忙しくバタバタしてくれるのがフラットラップの後継というなら理想だと思っている。なかなかプラスチックのミノーでは出せない動きなので、だからこそ効く場面があるのかもしれないけどそこまで贅沢はいわないでおいて、軽いフローティングミノーならではのキビキビ系なら良しとする。よくわからんけど私の目にキビキビ働いてるように映ってくれるならとりあえず良し。まあ動きとかは実際に使い込んでいかないと良いも悪いもわからないもので、判断するのは最終的には釣り場の魚であってオレじゃない。
サイズは、私は残念ながら大物釣り師ではないのでレギュラーサイズの50センチぐらいのフッコを想定すると、7から10センチぐらいがちょうど良いかなと思っている。シーバス釣るにはマッチザベイトな大きさはあんまり関係ないとき多いと思ってる。むしろスレたら小さいルアーとかでかいルアーのアピールで勝負とかの方が釣り場では意識させられる。
飛距離はあんまり期待してないけど、ラパラフローティングみたいに軽すぎてちょっとした風にひらひらと舞うようなのは塩梅が悪いのでそれなりに欲しい。フラットラップほどは飛ばなくても良いけどロングA並以上が合格点かな。飛んでるときにバランス崩して回転しなければ何とかなる程度。
あとは、丈夫なの安いのがありがたいというのもあるけど、入手しやすいというのがかなり重要。今生産中で手にはいるというのも大事だけど、今後も作られ続ける実力があるのかも考慮しなきゃだし、ラパラFマグ生産中止の時に実感したんだけど、中古の弾数が多いと廃盤になっても入手はしやすかったりする。Fマグ生産再開したけど中古だけでも結構補充可能である。
ということで、まずは手持ちのルアーで該当するようなのを蔵から発掘してきたりして、近所ポイント偵察がてら試し投げしてみた。
候補は、インビンシブル8センチとロングAのいつも使ってる12センチの15Aじゃなくて9センチの14Aがまずは合格ラインかなと思う。今でも使ってるし今更テストしなくても実力は折り紙付き。後はどれぐらいフラットラップの能力をカバーできるかという所。
とりあえず手持ちのルアーで固定重心のというと、昔使ってたり中古屋で叩き売られていたのでとりあえず買ってしまったヨーズリ軍団がある。トビマル10センチとクリスタルミノーF9センチは今復刻されているので手に入れやすいはず。スイングミノー9センチとその後継版みたいなGL工房のツルミノーもとりあえず試してみる。
あとはレーベルミノー9センチとタイドミノーSSRもあったので試してみた。
(写真上から順に、インビン、14A、トビマル、クリスタル、スイング、ツル、レーベル、タイドミノーSSR)
結果としては、やっぱりインビンシブル8センチとロングA9センチが今回欲しい性能的には優れている。
インビンシブル8センチは、バルサ製なので動きはまさに求めてたような忙しくキビキビした動きでラパラと遜色ない動きだと思う。飛距離も塗装が厚いせいかそこそこ飛んでくれて実に良いバランスに仕上がっているミノーだ。フィンランド本国でラパラを向こうに回して生き残ってきた実力は伊達じゃない。惜しむらくはサイズが小さめでその次のサイズがいきなり飛んで12センチになることで、9センチ10センチあたりがあればもう少し飛距離も出せるしフッコ狙いにはちょうど良いんだけどまあ8センチでも充分やれると思う。やや近距離向けスレた魚向けという感じか。入手のしやすさは今日本に正規代理店がないので新品の確保は難しいけど、歴史あるミノーなので中古の弾数は豊富で安い中古見つけたらとりあえず確保していきたい。
ロングA9センチはサイズ考えたら良く飛ぶし、動きもツーテンの虎ファンさんが細長めのクランクベイトと評していたぐらいで、キビキビバタバタと良く動いてくれる。プラスチックのルアーでこのぐらい動きが良ければそりゃ売れ続けるだろうという感じ。今でも新品1000円ぐらいで売ってるし、中古もよく見かける。
一応、ボーン素材と普通の透明な素材のも比べてみたけど、12センチのボーンカラーのように極端に浮力が強いというほどではない感じだった。超浅場では潜りすぎるかも。一番上がボーン素材、真ん中が普通ので、一番下が反射板入り。普通の透明素材のにも反射板入りとそうでないのがあって、反射板入りはラトルが顔の下あたりに入っているけど、反射板なしはボーン素材同様ボディーの広い空洞にラトル入っててカラカラ鳴る。
一時期ソルトウォーターグレードボーマーのブランド名で生産されていたポリカーボネイト製の丈夫なモデルは今現在15センチ16A以上の大きなモデルしか売ってないようで、12センチ15Aの方は確保してあるけど9センチ14Aは買っておらず、買っときゃ良かったと後悔している。
一つ考えなければいけないのが、ラトルの問題でロングAはラトル入りである。虎ファンさんとも議論したことがあるんだけど、カヤックシーバスでレンジバイブやフライングダイバーが強いのは固定重心でラトル音がないからかもと思っていた。でも、フライングダイバーって固定重心だけどオモリがゴトゴトいうルアーで、そう考えるとラトル音じゃなくて立ち上がりの早さとかが関係してるんだろうなという意見に落ち着いた。
ミノーはラトルなくてもフックがボディーに当たる音とかも結構しているので、単純にラトル音がないから固定重心がスレには強いってことではなさそう。一撃必殺のつもりで投げたラトルなしのフラットラップがさんざん無視されたあとで15Aぶち込んだら食ってきたなんてことも経験していて、ラトルやオモリの音があるとスレた魚が食ってこないなんて簡単に言える話じゃないのだろう。でも音の違いは色の違いよりは釣果に影響しそうにも思うのでローテーションするときにはその辺意識しておいても損はないと思う。
ということでロングAはロングAで良いミノーでボックスに入れとけなんだけど、フラットラップの後継という意味ではラトルのないのも探しておきたいところ。
ヨーヅリ軍団のミノーがそれぞれ個性的で面白い。トビマルは正直重量アップした改造版しか投げてなかったので今回初めてじっくり動きを見たけど、今時のミノーみたいな振り幅狭い動きで、太さで重さを稼いで飛距離も出るしいかにも釣れそう。ちなみにこれだけラトル入り。逆にクリスタルミノーは頭起点にグワングワンと派手な横振り系でアピール度高い。フラットラップの後継という感じの動きではないけどコレはコレでなかなかに良いかも。お楽しみルアーとして2軍ボックスに入れておくか。
スイングミノーが一番ロール伴った振動数多いキビキビ系の動きで動きは好みだけど、9センチの細身のミノーはやや飛距離不足でかつ、発泡樹脂製という変わった製造方法のせいか復刻されていないので確保も難しい。ツルミノーはヨーヅリから独立した津留崎氏がGL工房でスイングミノーを発展させたやっぱり発泡樹脂製のミノーで、太くして重量稼いで飛距離も確保してスイングミノーの弱点を克服してバランスの良い優等生に仕上げている。完成度の高い固定重心ミノーだと思うけど残念ながらこれも廃盤。中古で見つけたら買ってもいい良いミノーだと思ったけど主軸まかせるには廃盤だと辛い。
レーベルミノーは性能的にはオーソドックスな、まとまってるけど特別悪いところも良いところもない、ミノーってのはこういうモノという感じのミノー。だけど、今売ってるバリューシリーズとかいうのが新品で500円台とかのすざまじい低価格でちょっと心引かれるのだがレーベルミノーの代名詞の「クロスハッチ模様」という鱗模様がカラーにないので候補から外す。
タイドミノーSSRもバランス取れた良いミノーだけどこれまた廃盤。これの12センチはボートシーバスでも良く釣れた。同じシリーズのタイドミノースリムが重心移動で良く飛んで人気だったけどSSRも良かった。
ということで、結局手持ちの駒ではロングAとインビンシブルがやっぱり良いというオチになったんだけど、フラットラップの後継という観点で考えるとロングA以上に飛んでラトルなし、と超浅場を狙えるの、が足りてない気がする。
うちの蔵に転がってないなら新しく買いましょか。ということになって、ネットで今時のミノーなど調べて候補を絞ってみた。フローティングの固定重心のミノー自体は結構作られてて、やっぱり穴撃ち用とか障害物際の釣り用のがある。ルアー作ってる側の人ならやっぱり固定重心のミノーの長所って無視できない要素で、一つぐらいそういうミノーも作ってみたくなるんだろう。でもあんまり多くはない。
そんな中で、候補を絞って2種類ほど買ってみた。
一つはやっぱり固定重心のミノーは得意なのかデュエル社の海外向け「ヨーヅリ」ブランドで出てる「3Dインショアサーフェスミノー9」は垂直系リップの付いた超浅場用。
もいっちょが、バレーヒル社の邪道ブランドから出てる「ごっつあんミノー89F」。
どちらも完全に固定重心のミノーの立ち上がりの早さを認識したうえで作ったような説明ぶりで、良く分かってらっしゃると安心する。早速試投してきたけど、なかなかに良い買い物かも知れない。
「3Dサーフェスミノー」の方は、ワンマイナスとかの水面引きクランクをちょっとミノーっぽくした感じで、ゆっくり引くと水面引きできるし潜らせてもそれ程潜らず超浅場用としてバッチリな感じ。太めなので飛距離も充分出るし、動きも派手めでラトルも入ってていかにもアメリカ人好みな感じに仕上がっている。国内向けじゃない製品のようでパッケージも英語だし、ルアーの背中にも誇らしげに「YO-ZURI」のブランド名が刻印されている。国内でも通販で手に入るんだけど、これがまた安いのよ。新品700円台ってどうなのよ。ちなみに3Dってのはカラーリングが表面に施されているだけじゃなくてボディー内部に立体的にホログラムシートとか配置されているのに由来するらしい。これは超浅場に入ってるやる気のある魚がガッポリ食ってくれそうな気がする。ちょうどロングAの潜りすぎないヤツみたいな感じである。良いところにハマるピースかも。
「ごっつぁんミノー89F」は、一転していかにも日本人好みの良くできた感のあるミノー。リップ小さめで飛距離もかなり出るし、動きは飛距離稼ぐのにやや後方重心なのでおとなしめだけど、それでも今時のミノーにしてはバタバタと良く動いてくれていい感じ。ラトル無しということでロングAとかぶらない。デザインも「魚そっくりでしょスゴイでしょ」的などうでもいい人を釣るためのじゃなくて、単純でスッキリしつつもルアーらしい表情のある好感の持てるものになっている。こことかコモモのアムスデザインとかの作るルアーのルアーらしさを、国内市場向けなのに横文字の名前付けて2番煎じか3番煎じのリアルミノーをご大層な値段で売ってるメーカーには見習ってもらいたいモノである。
こいつぁフラットラップが無い場合の、最初に投げるルアーとして使えそうなぐらいの臭いがプンプンしてくるゼ。
ローテーションでロングAとインビンシブルを織り交ぜて。飛距離が欲しければ重心移動搭載ミノー出して、超浅場なら3Dサーフェスミノーとかいう感じで行けそうに思う。
実際には釣り場で投げてみて、使えるかどうか判断していく中で、思ったようにはいかない場合もあれば、意外な発見とかもあっていつものように楽しく苦労させられるのだろう。今から秋が待ち遠しい気がする。まあ、まだ始まったばかりの春の釣りしっかりやっとけよだけど。
という感じで、今回ルアー図鑑うすしお味第38弾はラパラフラットラップ廃盤ショックを受けて、次世代のエース候補を探すべく、固定重心のフローティングミノーについてあれこれ書いてみました。
(追加註:2019年フラットラップ8カタログ復帰しました。祝!!)
2018年1月1日月曜日
あけおめ2018イヌ
イヌも嫌いじゃないけどネコが好きッ!明けましておめでとうございますナマジです。
昨夜は北海道産ミズダコの酢蛸をクッチャクッチャと噛みしめつつ格闘技とか見て年越してから昼まで寝たろうと床に入ったはずが、ちゅんちゅらと小鳥さん達が鳴き始める早朝に尿意で目覚めたら目が冴えてしまい、今年の抱負とかそんなモンを元旦に書き初めてみるかと、パソコンの前に座ってみたわけであります。
しかし抱負といっても現時点で健康上の問題を抱え、未来の展望もよくわからん状態で過去の行いを反省したり悔いたりする日々に抱負もクソもあるかよケッってなもんで新年早々やさぐれておりますが、まあ誰しもこの世知辛い世の中、嫌な現実ぐらい抱えてると思うけど、そんなこたどうでもいいジャンよと、現実度外視して夢を語って妄想の世界に旅立ってもバチは当たるまいて。リアルだと書くの辛いし暗くなるからね。
ということで、今年の妄想抱負を発表します。ジャカジャン。
「釣りとネコのことだけ考えて生きる」
コレで行こうかと思います。良識ある人から健康や仕事のことも考えろとお叱りを受けそうですが、まあ待ってください。コレには元日朝から深い思慮と計算の元に精緻に理論を構築した素晴らしい抱負なのです。ちょっと説明させてください。
まず「釣り」ですが、まあいうても昔から釣りのことばっかり考えていると言われ続け、現在も釣りのことを考え、明日以降も釣りのことを考えているだろうことが明白な中、あえて書いたのは結局私の場合に最後のよりどころはそこであると、私の中で最後に勝つのは愛でもなければもちろん金でもなく「釣り」であると確信し、そのことに執着することですべてが上手く回ると妄想したのであります。
本当に消耗激しくて調子の悪い時には、釣りに行くのさえ負担で釣りに行くことがはたして健康のために良いのか悪いのか不安な状態で、まあそれでも釣欲に負けて出かけてたんだけど、出かけた後に体調悪化させたりすると「仕事もせんと遊んで回復遅らせやがって」とさすがに自責の念が湧き、ついでに釣れてないと「魚もろくに釣れやンくせに」という思いがグサグサと突き刺さってくる。かといって釣りに行かないとリハビリも何もやる気が起きない怠惰な人間なのでさらに状況悪化するという嫌な下降する螺旋にとらえられてしまう。
しかし、釣欲に負けまくって釣りにシコシコと行ってたおかげかなんか分からんけど、ちょっとずつ体力戻ってきた感じがして、釣りに行った後の疲れの抜けが早くなってきたような気がしていて、ヘラ釣りで1日座った腰痛とかも一晩寝れば何とかなるようになってきた。
この状態まで来れば、釣りに行きたい→釣りに行く→疲れるけど回復して体力戻る→もっと釣りに行ける→もっと体力ついてくる、という上昇の螺旋に乗っかれるのではないかと思うんですよ。
結局、人間お楽しみがないと頑張れないっス。な感じで目の前ニンジンぶら下げて走れば馬力もでるかなと。そうやって体力回復して健康になっていけば職場復帰も近づくし、釣りも思いっきりやれるというものである。
で「ネコ」である。いうても釣りだけでリハビリに取り組んでるわけじゃない。筋トレもやってるし何十年ぶりぐらいでジョギングなんてのも週1,2回やってる。まあ花粉飛ぶまでの期間の予定だけど、これが昔は長距離もそこそこ得意でトレーニングすればするだけ早く遠くまで走れるようになっていった印象が残ってるんだけど、最初近所周り10分ぐらいから始めようと、軽めに設定した初期設定から一歩も進歩していかない。トレーニングとかって成果がちょっとずつでも着実に現れるから楽しいんであって、毎回進歩がないと単なる苦行でしかない。
そこでまたニンジンぶら下げるんですよ。川縁を鳥見ながら走って橋渡って折り返してくるんだけど、その橋のあたりに餌付けされた野良ネコが何匹かいて、さすがに都会の猫だけあって警戒心強くて最初速効で逃げられてたんだけど(犬猫好きなのに犬猫に嫌われる、よこしまな人間は見分けがつくのか?)、おやつに煮干しなど持っていって「こわくない、こわくない、おびえていたんだね、でももう大丈夫」と懐柔していたら、やっとこわごわながらも手から餌食ってくれるぐらいには慣れてきた。
こいつらを好きにいじくれるぐらいに仲良くなってネコに会うのを走るためのお楽しみにしようかなと考えているのであります。
というわけで、明日は天気良さそうだし「箱」でヘラ釣って釣り初めの予定。デコ食いそうな釣りモノじゃなくてもっと初釣りは手堅くいっとくべしかもしれないけど、しゃらくせえ、デコ上等でやってやる。段底がもうちょっとな気がするので段底主軸にいつものごとく切れる札全部切る。
バチも1月中からボチボチ様子見に行って、多分爆発は2月の頭ぐらいの予定。
体調みながらそろそろプチ遠征で現在海のそばに住んでいる正治さんのところにも遊びに行きたい。
当面そんな感じかな。
後は年間計画的には、4、5月湾奥の小型バチ対策を詰めて、並行して管理池で暑くなるまでヘラ釣り屈辱の最下層を脱出し「釣れてた組」をめざし、6月頃からテナガからマハゼへの小物釣りをリレーして秋の落ちハゼを何とかする。秋には近所のシーバスも狙って、冬に箱で渋いヘラを釣る。って感じで昨年の「近所の釣り」を細かいところ詰めて行って、ある程度結果を残したい。特にヘラと近所ポイントのスズキと落ちハゼかな。
そこでまたニンジンぶら下げるんですよ。川縁を鳥見ながら走って橋渡って折り返してくるんだけど、その橋のあたりに餌付けされた野良ネコが何匹かいて、さすがに都会の猫だけあって警戒心強くて最初速効で逃げられてたんだけど(犬猫好きなのに犬猫に嫌われる、よこしまな人間は見分けがつくのか?)、おやつに煮干しなど持っていって「こわくない、こわくない、おびえていたんだね、でももう大丈夫」と懐柔していたら、やっとこわごわながらも手から餌食ってくれるぐらいには慣れてきた。
こいつらを好きにいじくれるぐらいに仲良くなってネコに会うのを走るためのお楽しみにしようかなと考えているのであります。
というわけで、明日は天気良さそうだし「箱」でヘラ釣って釣り初めの予定。デコ食いそうな釣りモノじゃなくてもっと初釣りは手堅くいっとくべしかもしれないけど、しゃらくせえ、デコ上等でやってやる。段底がもうちょっとな気がするので段底主軸にいつものごとく切れる札全部切る。
バチも1月中からボチボチ様子見に行って、多分爆発は2月の頭ぐらいの予定。
体調みながらそろそろプチ遠征で現在海のそばに住んでいる正治さんのところにも遊びに行きたい。
当面そんな感じかな。
後は年間計画的には、4、5月湾奥の小型バチ対策を詰めて、並行して管理池で暑くなるまでヘラ釣り屈辱の最下層を脱出し「釣れてた組」をめざし、6月頃からテナガからマハゼへの小物釣りをリレーして秋の落ちハゼを何とかする。秋には近所のシーバスも狙って、冬に箱で渋いヘラを釣る。って感じで昨年の「近所の釣り」を細かいところ詰めて行って、ある程度結果を残したい。特にヘラと近所ポイントのスズキと落ちハゼかな。
そんな感じで今年もよろしくです。
登録:
投稿 (Atom)