2018年1月14日日曜日

金なら出してやるっ!

 年が明けるとアニオタ4半期に一度のお楽しみの番組改正でテレビ放送の新作アニメが始まる。今だいたい1回目の放送が終わったところ。3話ぐらいから話が転がり始めるので3話まで観て視聴継続か「切る」か決めるというのがお作法なので、放送始まる前にアニメ情報サイトとか参考に今期はまずどれを観るべきか録画予約していくのがいつもの作業になっている。たぶん今期も50作品ぐらいは始まるので最初からかなり絞っていかないと収拾がつかない。
 録画予約していて困るのが放送時間がぶつかることで、できるオタクなら一度に複数録画も可能な機器を用意しているんだろうけど、我が家のパソコンテレビにはそんな便利な機能はついてないので「グハッ!3月のライオン2期とダーリンインザフランキスかぶってもうた!どないしょ?」とか焦るわけだけど、おちつけもちつけまだ慌てる時間じゃない。
 ネット配信のアベマTVかGYAO!で同時配信か見逃し配信あるかチェックである。ダーリンインザフランキスはGYAO!で2日遅れで見逃し配信があってことなきを得た。あとは情報サイトとかで2日間ネタバレ記事を読んでしまわないように注意するだけだ。

 という感じで今期もなんとかなりそうな感じだったのだけど、1作品だけそもそも1月5日からスタートと情報出てるのに録画するにもなぜか番組表に出てこない作品があって、どうしても観てみたい作品なので困った。公式サイトで放送局を調べてみたらネット配信のみで、有料で動画見放題の「Netflix(ネットフリックス)」独占配信となっている。
 確かにいわれてみればあの作品を原作準拠でアニメ化したら地上波ではグロすぎて放送してくれないだろう。飛び散る血しぶきと臓物で「人間」とはなんぞやという根元を鬼才天才永井豪先生が描きまくったマンガ史に残る大傑作「デビルマン」のアニメ化である。
 しかも監督は「ピンポン」アニメ化とかの実力派湯浅政明監督ときた日にゃあ、こりゃあ女房を質に入れてでもネトフリ契約せにゃならんですゼ。ということで「でもお高いんでしょう?」と調べてみたところ月額650円とお安い上にお試し期間一月無料となっていて、こんなんデビルマンだけ観て解約したらタダじゃん、としっぽ振って契約した。
 それがネトフリ側の撒く餌で撒き餌だけ食って食い逃げなどさせてくれるほどネトフリ甘い釣り人じゃないということを思い知ることになるのだが、ともかく「デビルマン クライベイビー」を観始めたところ、今全10話の4話まで観たところだけどこれは面白いわ。

 デビルマンって昭和のテレビアニメ版が一般的には有名だけど、今でいうところのメディアミックス作品で、豪先生がデーモン族の裏切り者であるデビルマンが戦うという基本設定とかだけ決めたうえで、アニメはアニメ制作陣が創ると同時にマンガ版は豪先生本人がマンガ雑誌に連載開始ということでマンガ版とアニメ版では別作品なんである。
 アニメ版も昭和のオッサンである私など、初めて哀愁という感情を覚えたのはアニメ版デビルマンのエンディング曲にだったんじゃないかってぐらいで、実に裏切り者の悲哀が染みた素晴らしいアニメだったと思う。でもマンガ版はアニメ版の脚本家だったか監督だったかが「今までのアニメやマンガにない新しいヒーローを創ってやると意気込んで創って出来映えに満足して、自信満々にマンガ版を読んだところ「これは負けた」と悔し涙を流した」とかいう話が文庫版デビルマンの解説で紹介されているぐらいに豪先生のマンガ版デビルマンは衝撃的な作品である。
 私も高校生のとき再版かかってマンガコーナーで平積みされていたのを「おっ、デビルマンの原作か、懐かしやン」と手にとって、前半シレーヌに尽くすカイムの純情あたりに娯楽作品として滅茶苦茶上手いなと感心して「アニメ版とぜんぜんちゃうけどめっちゃオモロいやん」と引き込まれて全巻むさぼるように立ち読みしてしまい、それがまた豪先生の撒いた餌で後半のすざまじい展開と描写に「マンガでこんなことまで描いてええの?」とドタマでっかいハンマーで横殴りに持ってかれたぐらいの衝撃を受けた。今でこそ世界を終わらせるような最終戦争の物語ってありふれてて当時も平井和正先生原作の幻魔大戦がアニメ映画化で「警告!ハルマゲドン接近!」とかやってて、ハルマゲどんって鹿児島出身っぽいなとかくだらないネタを思いついたりしてたんだけど、そんな物語は豪先生がとっくの昔にとんでもない完成度で描いてやがったのである。初めてマンガで芸術点の高い作品が描きえるということを強く認識された作品でもあった。
 まあ「デビルマン後」に生まれた作品にも面白いのいっぱいあるけどね。

 でもって今回のアニメ化、舞台は現代に持ってきてて、明とミキちゃんにからむヤンキー少年がライム踏んでからんでくるラッパー少年になったり、タレちゃんがタロちゃんになったりしてるけど、大筋は原作の通りでなかなかに上手いと原作ファンも納得できるうえに、昭和のアニメ版への敬意も、例えば「デビルマンの正体は誰にも知られちゃいけないんだ」という飛鳥了の台詞とか随所に感じられてアニメ版が好きでマンガ版も読んだというような人間が嬉しくなっちゃうような小粋な演出なんである。
 でもって登場人物とかの絵柄も今時風のすっきりした格好いい感じになってるんだけど、それでもデビルマンの目がまごうことなくマンガ版で豪先生が描く狂ったようなつり目なところとかがまったくもってデビルマンなんである。
 なんちゅうかみんな違ってみんな良い的にどちらの作品も良いのに、マンガ版ばかり持ち上げる識者とかの意見には鼻持ちならんものを感じる。大学時代に学祭で漫画研究会が展示会場のゲートの左右にマンガ版とアニメ版のデビルマンの等身大看板を立てていて、うちのガッコの漫研にはそのへんよく分かってる奴がいるなと安心したのを思い出す。

 続きも既に全話公開されていて一気に観ちまいたい気もするのだけど、後半戦の展開を知っていると相当覚悟してちょっとずつ観ざるを得ない。あらすじ知っててもたぶんまた衝撃を受けて精神的にかなりやられることは目に見えている。一話ずつ間をあけてじわじわと楽しんでいきたい。後半湯浅監督がどう料理したのか期待してお手並み拝見である。

 という感じでデビルマンだけ来月までに観て食い逃げしようと思ってたんだけど、契約してアカウント作成時にあなたの好きな作品を3つ選んでくださいってのにポトポチっとしてお薦めされてきた作品見ると、弐瓶勉先生の出世作「BLAME!(ブラム)」のアニメ版があるっ!これまたネトフリオリジナル独占配信である。「シドニアの騎士」アニメ化の時のポリゴンピクチャーズがブラムも3DCGで劇場版アニメ化したとは知ってたけど映画館以外ではネトフリ独占配信だったんだ。と、喜んで視聴。
 原作マンガは結構難解なハードSFでたぶん半分ぐらいしか理解できてないんだけど、アニメ版はだいぶわかりやすいアニメオリジナルの脚本で「サナカン(註:ヘラ餌のサナギ感嘆ではなくそういう登場人物)そっちかよ!?」とか割と大胆にいじってて(追加註:調べてみたら多分原作準拠なんだけど原作ストーリーろくに理解できてないので驚いたというハードSFに向いてない頭の悪さを露呈)、別作品としてみた方がいいのかもしれないけど、アニメ版はアニメ版で1時間半ほどの作品としてきっちり娯楽作品としてわかりやすく落としていてこれまた実にいい感じで楽しめた。3DCGもシドニアよりも進化してる感じでレベル高くて眼福だった。金掛かってんじゃなかろうか?

 ネットの動画配信事業って、今まさに開拓時代で各種サービス業者が儲かる仕組みを作りつつ、顧客を囲い込もうと必死になっていて、各社今だけの出血大サービス状態になってるように感じる。
 アベマTVとか番組表の時間帯に視聴すればタダで観られるってぐらいの大盤振る舞い。
 ネトフリの戦略としてはアニメとドラマに力入れてオリジナル映像独占配信でオタクな客とかを釣ろうとしているんだろう。まんまとハリを掛けられた感触がある。
 アニメ産業の今後を考えると、特定の信者からまさに「お布施」として高額な円盤やらグッズの代金を集める「カルト化」した現状より、ネット配信の薄利多売の方が安定して発展していけるのかもしれない。いろんな手段があって多様化していけばいいんだと思うけど、アニメは観たいけど高価な円盤買うのはためらっていた私のような軽めのニワカアニオタからすれば、いままで、円盤買ってくれてる濃いめのオタク様達の恩恵で新作アニメもタダで拝見させていただいていた心苦しさがあったけど、ネット配信なら大した金額じゃないし喜んで払わせてもらいたいし、パトロンとして大手を振って口を出していける気がする。まあ私からの注文は「あんた達が良いと思う作品を力一杯創ってくれ」ってことだけだけどね。

 ということでネトフリ継続契約していく方針なんだけど、アニメとか映画とかは充実してるけど、ほかに観るものないだろかと思って眺めてみたら生物もののドキュメンタリーも老舗英国はBBC放送の割と新しいシリーズとか日本語訳付きであったりして、これが面白いの面白くないのって、滅茶苦茶面白いんである。
 BBCネタだけで紹介したい話が山ほど出てきたので、今回「アニメ・映画など日記」出張版でアニメネタだったけど、次回は生き物ネタ「陽気なカエルがサンバを踊る」でお送りいたします。
 この次もサービス、サービスゥ!

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