2016年4月24日日曜日

PCチェアディテクティブ 第3世代スピンフィッシャー変遷篇

 第3世代のスピンフィッシャーは大別すると小型機種も含め全機種金属製だった3桁時代と、5500ss以下の小型機種がグラファイト製になった4桁時代に分けられる。

 ところが、同じ4桁時代でも顧客からの要望や故障情報やらを反映させてだと思うけど、マイナーチェンジを繰り返して改良を重ねていたリールなので、細かい違いが年代ごとにあるし、心臓部のギア方式の変更なんていうのもどうも4桁時代に行われてきたようだ。
 3桁時代にもマイナーチェンジはあったのだろうけど、我が家には430ssとJOSさんにもらった750ss、550ssぐらいしかないので比較のしようがないが、4桁ssについては、スペア兼部品取り用として同じサイズが何台も転がっているので、分解清掃しながら観察した結果などを整理してみたい。
 ただ、我が家にもすべての年代のモノが転がっているわけではなく、ある程度推測で書いている部分もあり、その部分は推測であることが分かるように書くにしても、間違っていた場合責任はすべて私にあるとは思うところ。でもまあ、あんまり厳しい目でみずに生暖かく見守っていただければと思う。


 心臓部のギアの変更があったと書いたけど、4桁になったときと同時にギア方式の変更があったのは、2チャンネルの「PENNリールスレ」情報というユルいネタによると4200ss。
 3桁時代420ssと430ssがウォームギア、440ss以上がハイポイドギアだったのが、4桁時代に突入と同時に4200ssは今のリールの標準的なギア方式であるハイポイドフェースギア方式に変更されたらしい。
 逆に4桁時代突入とともにギア方式まで変わったのはどうも4200ssだけの模様。
 430系は430ss、4300ssともにウォームギア方式。ついでに第4世代に入って430ssgもなぜか伝統のウォームギア方式を守っている。SUZUKIさんとPENNネタの情報交換していたときに、全世界で最後まで作られたウォームギア方式のリールが430ssgじゃないだろうかとおっしゃっていて、確かに2012年の製造中止後にウォームギア方式のスピニングリールってこれまた同社のインスプール700番台の2012年頃の復刻版ぐらいしか思いつかない。復刻版の時にPENNリールスレで「よくウォームギアの製造技術残ってたな」と書き込んでいた方がいたが、残ってたもなにも現役で作ってたから作れてあたりまえっちゃあたりまえなのである。
 なめらかで耐久性が良いが巻き上げ効率は良くないというウォームギア方式は、例えば昔のABUのカージナルとかに使われていた方式で、それ程は巻き上げ効率よく重いルアーを巻き取ったり強い魚とやりとりをしなくていい小型リールには適しているという判断だったのかなと推測している。
 じゃあ、なんで4200ssはハイポイドフェースギアなのかというと、試験的な意味合いがあったのではないかと私は推理している。
 420系ってこういっちゃなんだが「ミソッかす」である。正直小型リールは430系があれば事足りて420系は出番がないように思う。そういう扱い的にも対象魚種的にも実験しても支障が出にくい小型クラスで市場の評判なり故障具合なりをみて、TAKE先生いわく、大森製作所がスピニングリール用に育て上げた、後の標準となるハイポイドフェースギア方式を他の機種にも広げていったのではと推測している。

 ぜんぜん搭載されているギアの方式なんて気にしてなくって、TAKE先生の本読んで750ssに搭載されているギアがハイポイドギア方式という独特のモノだと初めて知ったぐらいである。
 ここで、出てきたギア方式をちょっと説明しておきたい。言葉で書いてもわかりにくいのでググってもらうなりした方が手っ取り早いけど、いずれも回転の方向を90度変換するスピニングリールに使われる方式で、床屋グルグルみたいな「斜めに山を切った円筒形のギア」に「側面に山を切ったギア」が接触しているのがウォームギア、「斜めに山を切った円筒形のギア」に「片側の平面に斜めに山を切ったギア」が接触しているのが、ハイポイドフェースギア、「傘の上面に斜めに山を切ったギア」がちょっと軸をずらして2つ接触しているのがハイポイドギアという感じ。

 でもって、漠然と4桁グラファイトの4400ssとかも、グラファイト化とともにハイポイドフェースギアになったんじゃないかと思っていたら、使ってるスピンフィッシャーの分解メンテしていたところ、4桁ssでも最初の頃の金色ハンドルの4400ssは左の写真のようにハイポイドギアで、その後の黒色ハンドルの4400ssはハイポイドフェースギアだとよく見たら気がついた。先ほどの4桁化に伴い4200ssで「お試し」後、他のモデルにも採用していったという推測はこの辺りの事実をもとにしている
 4桁グラファイトボディーは初期の金ハンドルのモデルがハイポイドギア、黒ハンドルがハイポイドフェースギアという整理で納得しかかっていたら、次に分解した金ハンドルの4500ssを見て何が何だか分からなくなってしまった。
 右の写真のとおり、ハイポイドフェースギアが搭載されている。

 金ハンドルの初期型からハイポイドフェースギアが搭載されていたら、4200ssが最初にハイポイドフェースギアが搭載されたスピンフィッシャーというネット情報も間違っていることになるし、そもそも4400ssの金ハンドルにはハイポイドギアが付いていることとも並びがとれていなくて整理が付かない。なんでだろうと主にネット情報などを調べてみると、ギアの方式までは言及されていないが、どうも金ハンドルのモデルでもギア比が5.1:1のモデルと4.6:1のモデルがあるようだ。5.1:1は第三世代の450ssと同じで、4.6:1のほうは黒ハンドルの4桁後期型4500ssと同じだと考えると、同じ金ハンドルでもギア方式が2種類ある臭い。
 くだんの金ハンドルの4500ssのハンドルを1回転させたら、ローターは4回半をちょっと超えたところまで回った。4.6:1で間違いなさそう。うちに転がってた金ハンドルの4500ssは金ハンドルでも後の方に作られた「ローギア」モデルのようだ。
 ずいぶん前に(今調べたら2012年だった)イギーさんから、4500ssと5500ssの初期型はギア比が高いんですという情報をいただいていたが、私のもっている件の金ハンドルの4500ssはギア比を示すプレートが剥がれ落ちており、ギア比が高いと聞いても「そうなんだ、ぜんぜん違いわからんかった~」と思っていたが、違いが分かるわけがない。だって黒ハンドルとギア比同じなんだもん。違いの分かる男ぶって「イヤーちょっと巻き取りスピード違うなとは感じてたんですよ」とか書かずに恥もかかずにすんで良かったと胸をなで下ろしている。

 ということで初期型のギア比の高い方をパックリご開帳してみて、中にハイボイドギアが鎮座していたら初期型金ハンドルにも初期型ハイギア型と初期型(の「後期」と書くと変な表現だが)ローギア型があるという整理で一件落着となる。
 なるので、中古屋のウェブショップで探してちゃんとギア比のプレートが残ってて「5.1:1」となってるやつを買いました。同サイズいくつも持ってるのにアホだなと思うけど、まああって困るもんじゃないし使えばいいや。
 開けてみました。推理どおりハイポイドギアが鎮座してましたというめずらしい名探偵ぶり。
 おそらくグラファイトボディーの4400ss、4500ss、5500ssは同様にギアの変遷があったのだと考えるとしっくりくる。
 他にもssjになったときにラインローラーにベアリングが入ったとか、それと同時期あたりに逆転防止のラチェット周りに改良が入ったとか細かいマイナーチェンジはあるけどすべては把握し切れていない。でも大筋は4桁化したときにギアはそのままボディーがグラファイト化、その後ギア変更、その後ハンドルが黒に変更という流れだったのだと思う。

 と、グラファイトボディーの4桁についてはスッキリしたが、メタルボディーの6500ssから9500ssがスッキリしきらない。
 7500ss以上は最終のssjでもハイポイドギア方式でギアは3桁時代からずっと変わっていないと、我が家にある7500ssj、7500ss、750ssをみても「Scott’s Bait and Tackle」にあるssjの展開図をみても思っているのだが、ネット上に「2002年以後のすべてのSSJがハイポイドフェースに移行した」という情報があり、ひょっとしたらうちにあるのより新しいssjでハイポイドフェース搭載機があるのかも知れない。
 ところが、ssj時代に突入していない世代の我が家に2台ある6500ssをあけてビックリ。片方はハイポイドギア方式だがもう片方に「ハイポイドフェースギア」が鎮座している。ハイポイドフェース化はssjの時代に行われたという前記の情報と合致しない。
 ギア比はどちらも4.7:1で3桁650ssが4.8:1なので、4桁になる時点でもギア比の変更があったのは裏付けられるが、その後いつハイポイドフェースギアが搭載されたのかまでは特定できない。
 いずれにせよ650系については、4桁になった時点では最初はハイポイドギアで、ssjより以前にハイポイドフェースギア化したとみるのが妥当だろうか?4桁ssになってからはハンドル変更とかもなかったようで情報が出てこないのでお手上げでござります。現時点で迷宮入りだなこりゃ。中古で買ったのでニコイチとかでギア載せ替えてたりする可能性もある。
 750系以上に最終的にハイポイドフェースギアが採用されたのかどうか、6500ssのハイボイドフェースギア採用はいつ頃だったのか、誰か知ってる人がいたら教えてね。
 
 チョコチョコと改良加えてマイナーチェンジ繰り返して長く作ってきたリールなので、年式によって細かい違いがあるようでちょっとすべてを把握するのは難しいのかも。
 製造コストと性能面見ればハイポイドフェースギアなんだろうけど、そうじゃないカージナルとかにも使われてたウォームギアとかPENN伝統のハイポイドギアとかいろんなのがあるのも、それ自体が面白いと思ってしまうナマジであった。

 こういうのはマニアックなPENN使いなら当然一般常識的に知っていることなのかも知れないけど、あんまり内部の機構がどうこうとか、そもそもギア比すらあんまり気にしてなくて、ギア比低かったら一所懸命巻けばいいんだろうぐらいに思ってたナマジ的には知らんかったことであり、まとまった知識として整理された情報がネット上にも見あたらなかたことから、ちょっと書きとめたところである。

 間違ってたらご指摘ください。7500ssj、6500ss情報に限らず正しい知識を得ることができれば嬉しい。

5 件のコメント:

  1. ご無沙汰してます、イギーです。
    相変わらずのスピンフィッシャー愛に溢れるブログを微笑ましく拝読させていただきました。昨年は愛犬が体調を崩した挙句、残念ながら亡くなって酷いペットロスに陥り、とても釣りどころではなかったのですが、漸く立ち直りつつある今日この頃です。
     で、このブログを読んでリールがいじりたくなり、昨日は久しぶりに4500SSを3台全バラしてメンテしました。ギヤ比5.1:1のモデル2台は内部の刻印を見ると、それぞれ1991年式と1992年式で、何れもハイポイドギヤ仕様でした。この2台は金ハンドルですが、ノブは角ばったゴムではなく、どんぐり型の硬質樹脂製です。ナマジさんの以前から所有していた金ハンドル4500SSは、写真を見る限り角ばったゴム製ノブですので、同じ金ハンドルでも後期型と推察され、ギヤもハイポイドフェースの4.6:1ギヤ比に設計変更されていたのではないかと思われます。ハンドル一つとっても、金ハンドル・どんぐり→金ハンドル・角ゴム→黒ハンドル・角ゴムと設変が実施されているようです。因みに、私は旧どんぐり型のノブが手に馴染んでいますので、これしか使っていません。
    ギヤ比5.1:1仕様の4500SSは、クロスワインドギヤもアルミ製でブラスの軸受けが圧入されたていたりして、ハイポイドギヤの他にもコストの掛かった部品が使われています。メンテ後の巻き心地を比較すると、前記2台のギヤ比5.1:1の4500SSに比して、ギヤ比4.6:1の2000年式4500SSJの方がスムースな気がしますので、設変は単なるコストダウン目的だけではなく、改良の要素もあったのではないかと思いたいですが。まあ、スピンフィッシャーに回転のスムースさを求めること自体が無粋と言えばそうなんですが、私は粘度の低いグリスと日本製のボールベアリングによって、なるべく滑らかに回転する状態で使ってます。また、ラインローラーも(ちっちゃな部品なのにアホみたいに高価だったG〇RR製)ボールベアリング仕様にしてみましたが、これは正直言って効果不明ですね。ナマジさんの“長崎の分身”さんも言っておられるように、4400SSは糸撚れが酷いように思いますが、ラインローラーをボールベアリングタイプに変更しても大して効果は実感されませんでした。
     私がシーバス釣りにどっぷりハマっていた1990年頃は、丁度3桁アルミボディーSSから4桁グラファイトボディーSSに切り替わる頃で、南紀でエキスパートを自認する連中は「グラファイトのやつは蓋のネジも4本になっとるけど、あれは剛性が足らんからやで。メタルの550SSが売り切れる前にもう1台買うとかなアカンで。」などと騒いでいたのを記憶しています。私が1991年のアメリカ出張の土産に4500SSと5500SSを買って帰ったところ、「そんなん、ヤワで使えんでぇ」と揶揄されましたが、結果はご存知の通り。
     昔を懐かしく思い出して、何やら釣りに行きたくなってきました。GWはスピンフィッシャーを持って、ちょいと釣り場に行ってみます。

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  2. イギーさん お久しぶりです

     さすがリアルタイムで変遷を経験しておられる方は違いますね。どんぐりノブと角張ったゴムノブの違い確かにその通りです。細かいところまでよくみられてますね。
     クロスワインドギアも素材が変わったのは気づきましたが、軸受けだけ真鍮入ってるのは見逃してました。

     ペンはなんだかんだいっても集めて飾っておくようなリールじゃなく釣り場で潮かぶってなんぼだと思いますのでGWは是非良い釣りしましょう。

     愛犬の件、残念でしたね。とくに懐きもしないクールなカエルでさえ、死なれたらけっこうガックリきます。感情表現豊かに人と関係を築いていく犬ともなると喪失感はいかほどかと心中お察ししお見舞い申しあげます。幸せな犬生を送り、今は安らかな眠りについているのではないでしょうか。

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  3. イギーです。
    愛犬の件、お気遣い痛み入ります。室内飼いで寝る時も私のベッドの脇で寝ていましたので、かけがえのない存在でした。デカい図体(30kg)のくせに、釣って帰ったヒラメ65cmにビビッて近付けなかったこと、ハマチを捌いていると刺身の切れ端を貰うために横に座って待っていたこと、一緒にキス釣りやスズキ釣りに行ったこと、思い出いっぱいです。いかん、また泣けてきた…。犬好きブログではないので、もう止めときます。
     さて、次の休日は4400SSと5500SSもオーバーホールして、楽しむとします。メカ音痴でも自分で部品単位まで完全にバラしてメンテできるのもスピンフィッシャーの良いところで、昔、愛機だったト-ナメントSS1000を分解したら組み立てられなくなって苦労して以来、スピンフィッシャー以外はバラしてません。SS1000はずっとパーツクリーナー洗浄と注油だけで使ってますが、ごりごり言いながらもキス釣りでは現役です。こいつも酷使してますが、初めてヒラスズキを釣った思い出深いリールでもあり、大事にしています。
    GWはキスとシーバス釣りに行く計画です。ナマジさんも体調を整えて釣りを楽しんでくださいね。

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  4. こんにちは。
    なかなか濃ゆい内容の記事ですね。
    特にギアの変遷の辺りは大変面白く、勉強になりました
    自分の手持ちのPENNは714Zのみですが、記事を読んでいたらアウトスプール&ウォームギアのPENNも欲しくなってしまいました。

    ところで記事の中に「全世界で最後まで作られたウォームギア方式のリール」とありましたが、現行でウォームギア機を普通にラインナップしているメーカーがあったりするのでこちら(http://www.dam.de/en/content/quick%C2%AE-retro)か復刻704Z辺りが最期のウォームギア機の称号にふさわしいかと……
    ただ、日本ではなかなかに入手難易度が高そうです。

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  5. イギーさん おはようございます
     愛犬ネタ、このブログはリールのギアとかハンドルの差違からはては宇宙の法則まで何でもありですから歓迎ですよ。
     もうすぐGWだ!とウキウキしてしまうのですが、どのみち自宅療養中で毎日休日の癖してなにがちがうんだというところです。
     毎日釣りに行けるほどではないですが、リハビリがてら3日に1日は釣りに行ければなと思っています。良い季節ですし楽しみましょう。

    714Z使いのUnknownさんもおはようございます
     楽しんでいただけたのなら何よりです。
     古いインスプール時代のは写真で見たことありましたが、ドイツのD・A・Mクイックが今でも作られているというのも初めて知りました。貴重な情報をありがとうございます。
     ドイツ人もメカ好き釣り好きッぽいですよね。こだわりのウォームギア仕様に「ドイツのリールは世界一ィィ!」という感じのプライドが感じられます。設計、デザインとテストはドイツでやってるよと書いてありますが、ヨーロッパだと工場はどこにあるんでしょうね。旧東欧や旧ロシアあたりでしょうか?高級日本製や小規模工房製とかの一部例外をのぞけば世界中のリールの工場が東アジア、東南アジアにあるもんだと思っていたので、ドイツリールは全くのノーマークでした。世界には私が知らないリールもまだ沢山あるのかもですね。
     ダムクイックレトロは、ユニークな設計とちょっと色目も黒に金の仏壇カラーで私の好みで物欲刺激されたりしています。

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