2014年12月7日日曜日

教えて!TAKE先生!!

 「本のページ」出張版です。
 気づけば師走で、今年もあっという間に終わりそうですが、今年読んだ釣りの本は「当たり」連発。エドワード・グレイ卿「フライ・フィッシング」に始まり、獏先生の「大江戸釣客伝」も良かったし、久しぶりに読んだ開高先生の「フィッシュオン」とかもう至福の読書時間であった。

 でもって、竹中由浩著「タックルスタディー」「マイナーリールの紳士録1、2」。
 著者のサイト「TAKE’S REEL ROOM」のファンなので、ルアー雑誌に書いた記事を集めた書籍がKindle版で出ているのを見つけて早速買ってみた。
 元シマノのリール開発担当の知識は半端でなく、主にトラウトねらいのルアータックル中心に分かりやすく道具の知識が解説されている。スペック至上主義の弊害を説き、実用性というのを釣りの現場視点から重視しつつも、好みや味わい「らしさ」や挑戦性といった視点もふまえた独特の感性で時に辛辣にこき下ろし、ときに愛あるコメントや時代の綾で消えたものへの哀切をも語る。
 インスプールのミッチェルがものすごく好きだというのがありありと伝わってくるのだが、どこかの偏狭なペン使いのように今時のリールを否定するようなことなく、今の高性能なリールをもたらした先人たちの苦労、釣り人たちの洗練をリールの機能に読みとり讃える度量の大きさ、好みは主張しつつも公平な視野。

 リールについて学びたければまずはTAKE先生の書いたものから始めればいいと思う。アンティークタックルから最新鋭の高級機種まで様々な道具がある中で、こういった識者の解説というのは迷える子羊たちを導く福音である。
 インスプールのリールについてベールを手で返す当方のような釣り人には向かないしラインをかむトラブルも欠点だが、プリミティブ(原始的)な機械でシンプルでコンパクトで釣り具として好ましいという考え方はなるほどなと思わされる。
 中古のインスプールのリールにベールを無理に起こして故障しているものが多いという指摘はケン一のミッチェル壊した前科持ちとしては耳が痛い。

 スピニングリールの90度回転方向を変えるギアの各方式の解説も大変勉強になった。なにげに使っているPENNスピンフィッシャーが採用している「ハイポイドギア」方式は、スプール軸のピニオンギアもハンドル軸のドライブギアもギアの山を斜めに切削して作られているという独特の凝ったもののようだ。今時主流のハイポイドフェースギアに比べ製造コストのかかるギアらしい。
 そう聞くと何となく手間暇かけた逸品という気がしてきてスピンフィッシャーがさらに好きになる。コストが高いイコール高性能ではないとしてもである。TAKEさんはハイポイドギアの写真を撮るためだけに750SSを買う羽目になり採算とれないとサイトで嘆いていた。サイトの方ではスピンフィッシャーを研究室で耐久性テストにかけるといつも弱くて、実際のユーザー評価では海水使用での耐久性に大きな支持を集めていることとテスト結果があってくれないと、面白いぼやき方をしていた。テスト結果より現実が正しい、あるいはテストではうまく実際の使用を再現する条件が与えにくいということなんだろう。

 海の釣りをあまりされないようなので、スピンフィッシャーについて詳しく解説してはいないけど(サイトでは第2世代の渓流用インスプールとハイポイドギア撮影用に買った750SSについて解説している)アメリカで海用の道具として愛されているという位置づけに敬意を払ってくれている書き方になっており、スピンフィッシャー好きとしても誇らしい気がする。
 
 ほかにも当方も大好きなスプーンのバイトやフライリールのメダリストが高評価なのもうれしい。渓流トラウトルアー中心の筆者と塩水系の多い私との違いで、道具に求めるものが違ったりもすることはあるが、違いをふまえればそれは当然であり、やはり良い道具というのは絶対がある世界ではなく、人と道具との関係性からしか生じ得ないのだと再認識した。よい先生は人生を豊かなものに導いてくれる。
 TAKE先生これからも面白い記事書き続けてください。

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