2025年12月31日水曜日

2025年のベスト3(エンタメ編)

 隠居ジイサンの日々は、釣りに忙しくて、なかなかまとまった時間が作りにくい。その中でもマンガとアニメはなんとかかんとか積みがちになるのを消化していっているけど、活字が今年「7つの魔剣が支配する
」というラノベにハマって、10巻以上あるのを読んでいて、これが、定番の魔法学校モノなんだけど、昔の夢枕獏先生やら平井和正先生、菊地秀行先生あたりの伝統を今に伝える感じにダークでドロドロエロエロで非常によろしい。というのがあって活字は他にラノベの新刊をいくつか読んだ程度で、一般小説やらSF小説は完全に”積ん読”状態、ケン一お薦めの「同志少女よ敵を撃て」が積ん読、ひじさんお薦めの「深紅の碑文」他が積ん読、鳥の人のお薦めの「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」も積ん読。という感じで積んでというかポチッとしてFIREタブレットに落としたッきり開いていない。ということで今年は活字部門無しでいきます。映画もいくつかアニメの劇場版を視聴したぐらいで観られていない。2時間なり3時間なりをユックリ集中して観ることがなかなかできていない。まあ、現実が忙しいってのは仕事なら嫌だけど釣りで忙しいので良いことである。その中で時間の許すかぎりにマンガ読んだり、サブスクでアニメやらドキュメンタリー観たりは、既に生活リズムに組み込まれていて、今年も十二分に楽しめた。ということで年末恒例の年間ベスト3エンタメ編いってみましょう。


○マンガ:1位「腸よ鼻よ」、2位オイスター「新婚のいろはさん」、3位「ドカ食いだいすき!もちづきさん」

 1位は、十巻で完結した島袋全優先生の「腸よ鼻よ」で、これ作者の実体験に基づいた「闘病ギャグエッセイマンガ」なんだけど、よくもこんなにも酷い病状を、こんなにも面白おかしいネタに昇華できるなと、心の底から感心するとともに腹から笑える。”あとがき”で「ギャグは盛っても病状はもらないという信念の基」に描いたと書かれているけど、”潰瘍性大腸炎”っていう大腸の酷い病気で最初のつかみの部分から大腸を失うことになるっていうのが予告されてる感じでやや引くんだけど、その後もさらなる激闘の連続で、小腸を肛門につなぐんだけど、上手くいかなくて穴開いたり癒着したり、治療してもしても、悪化して激痛、ひたすら入院・手術の繰り返し、人工肛門をお腹の横に開けたり閉じたり、あまりの激痛に痛み止めの医療用モルヒネも効かなくなり、悪名高いフェンタニル処方されて「フェンタニルって、合成麻薬として嗜まれてるだけじゃなくて医療利用もあるんだ!」って変な驚きかたしたぐらいだけど、術後の退院には”薬を抜く”のが一苦労とかもう、ここまで病気に苦しめられている人も世の中にはいるんだなと圧倒される。っていうしんどいって言葉ですまされないような状況でも、この人マンガ描きまくり。入院中にも画材やらネット機材やら持ち込んで描いてるし(当然医者に止められたりもしてる、そして長い闘病生活の後半はデジタル作画になってる)、とにかくマンガ描くのが好きなんだろうなというのがアリアリと分かる。絵を描くことを禁じられて縛られた雪舟が、それでも描きたくて足で涙を絵の具にネズミの絵を描いた逸話を思い出させる。血と腸液でマンガを描いているといって過言ではない島袋先生は現代の雪舟と言って良いかも。最初マイナーな出版社のWEB連載で始まったようで、後にKADOKAWAから紙の本やらも出たけど、イマイチ作品のすさまじいまでの破壊力のわりには話題になってない気がするので、全力でお薦めしておきたい。もうね、ワシも持病ももってるし薬飲み飲みボチボチやってるけど、人はここまで苦しい難病でも、もちろん作品に出てこないつらさや悲しみもあるのはアホでも分かるけど、それでも情熱のおもむくままに突き進むことができるという事実。人間の力強さ、好きモノの突貫能力、もう励まされる力づけられる胸に火がともる。とにかく万人にお薦めする傑作です。全優先生、人工肛門と付き合いながら入院はもうしなくてすんでいるそうだけど、健康にはお気をつけて、これからもバリバリとマンガ描いて描いて描きまくってください。

 2位のオイスター先生「新婚のいろはさん」は一転してホノボノとした作品で、マンガ書くことしか考えていないような青年の元に、ある日幼なじみである一つ年上の憧れの女性が押しかけ女房としてやってきて、という新婚さんのイチャイチャする様子を描いた、昔ならケッ!と唾はきかけてやったような内容の作品なんだけど、なんというか天然で家事全般の能力の高いいろはさんの可愛らしさと、マンガのことしかできない妙に堅くて真面目な始君の2人の夫婦の仲むつまじさも微笑ましく、他の登場人物も魅力的で楽しめるんだけど、時々オイスター先生ならではの鋭い台詞が刺さってくる。結婚して作風が変わったと、ギャグマンガにいらないモノは全てそぎ落としてたころとは変わってきたと同業者に指摘されて始君が返す「余計なものは大事なんだ!!」「必要ないものは要るんだ!!」っていう台詞とか、幼いころに両親と死に別れて叔母に育てられてきた、本の世界に没頭することでその孤独を忘れていた始君の抱える心の闇。それをいろはさんが「深くはないけどどこまで広がってるか分からないぐらい広がっている黒い水」に例えて、一生すくい続けることを誓うところとか、普段は影響が見えないぐらいの両親を失った心の傷を、それでも一生消えないだろうと思いつつ、自分が癒やしつくせるかも分からなくとも、癒やしていく存在であり続けることを誓う、深い愛情を感じる心の中での台詞とか、ホノボノ新婚ギャグマンガと思って油断してるとやられます。

 3位は、上半期ぐらいにネットで話題になっていた、まるよのかもめ先生「ドカ食いダイスキ!もちづきさん」秋に3巻が出たんだけど、なかなかに衝撃的な面白さ、食べるのが大好きなOLさんが、時に生活習慣病とかによる死を象徴する髑髏を背景に、血糖値の急激な上昇と多幸感で”至って”しまうまでドか食いする異色のグルメマンガ?間違いなく過食症とかの病気で、なんとか食べ物を遠ざけ食欲を抑えこむ手段を講じても結局コンビニで買えてしまう現実に主人公のもちづきさんが買い物カゴに食べ物ぶち込みつつ吐いた鬼気迫る台詞「「ある」のがいけない!!!「ある」のがいけない!!!!」にはこのモノにあふれ購買欲を洗脳するかの如く煽ってくる世界に対する呪詛の言葉として強烈なモノを感じつつ共感し大笑いさせてもらった。すでにそのシーンだけ切り取られてネットミーム(ネット上でのある種の共通言語)と化しつつある。と同時に釣り具を買うときのワシの心の中の叫びにもなっている。


○アニメ:1位「トリリオンゲーム」、2位「宇宙人ムームー」、3位「未ル 私の未来」

 1位の「トリリオンゲーム」は最初期待していなかったけど、観始めたらがこれまたクソ面白かった。スペリオールっぽいオッサンが喜びそうな経済マンガとか書いてごめん、自分もろオッサンなので超楽しめた。ほぼ詐欺師のハル君が最後は帳尻あわせて誰も裏切らないところが良い。ビジネスマンガとかまず興味ない世界だったけど、本作はビジネスマンガのふりをした”俺ツエー”系で、むっちゃ気持ちいい人たらしのハル君の口八丁手八丁と、ある意味ヒロイン的ポジションで「はわわわわ」と振り回されるガク君の相棒感と、熱い登場人物達と暑苦しい絵柄がドンピシャにハマってて最高に楽しめて唯一無二。

 2位の「宇宙人ムームー」は恒星間航行さえ実現した文明を戦争で失ってしまった宇宙人が地球の機械文明を学ぶ、って話だけど地球の支配者は猫でその奴隷が人間と認識して猫になりすましてやってくる猫アニメでもある。身近な機械のうんちくが楽しく、独特の造形の陰キャヒロインも可愛らしくて良い。サブヒロインの実は家電にめっぽう強い(作中2番目ぐらい)鮫洲さんもイヤなやつかと思ったら良い娘でとか登場人物も魅力的でためになって超楽しい作品だった。皆さん、掃除機の電源コードの黄色いテープと赤いテープの意味を正しく知ってますか?

 3位「未ル 私の未来」は5話しか作られなかったのでもっと観たいと思わされる。ヤンマー製アニメだけどオムニバス形式で各話制作陣が違い、いま我々が考えるべき問題をどのチームも正面から取り上げて力一杯表現しており観る価値のある作品だった。このアニメ、なんか人間やら動物やらに変身できるある種の神のように偏在するAI搭載のロボット”ミル”が、人を助けたりしつつ自身も学習し成長していくという基本一話独立のオムニバス形式の物語なんだけど、3話目で才能ある超絶技巧のピアニストの卵がアルバイトでその技術をAIに学習させるかたちで科学者に協力していたら、本人事故で片手の自由を失うんだけど、本人の技術を学習させていたAIに補助させる特殊な義手が科学者によって開発されて、結果演奏家として成功を収める。だけど、果たしてその表現はそのピアニストのモノなのか否か?ってな脚本で思考実験としてとても良くできた例題であり唸らされた。作中でも開発した科学者への取材で「でも機械が弾いてるんでしょ」とか、まあそういう意見もございますわなってことも言われて、でもその技術はもともと彼女のものを学習させたモノで彼女の技術なんです、っていう整理はあっても口さがない連中はネットとかでお気楽に「こんなの芸術じゃない」とか批判を書き込むのを本人目にしてしまったりしたら、そりゃ苦悩するよねって話。明確な答は無いんだろうけど、それでも今回聞き役に回ったミルは、君の表現は君のモノであり、その感動は自分にも引き継がれていく的な救いのある言葉をピアニストにかけている。パクリの問題を排除してAIの補助を受けてなしえた表現等が芸術たり得るか?たり得るでしょ?ってワシャ思うけど、それも程度問題で例えばパワードスーツとかを使って陸上競技とかで記録を出したときに、それが認められるかとかで考えると、陸上競技ならもちろん認められない。ただ、AIに補助させた、あるいは直接作らせた作品を評価する際に、陸上競技のような明確な線引きができるルールがあるかというと、あるようで無いように思う。もちろん盗作はダメとかごく基本的なルールはある、あるけどいつも書くように、線引きなんか関係なくて面白いモノは面白いしつまらんものはつまらんぐらいしか評価する際の基準ってないように思う。そういうなかで、AIを上手く使えば良いモノができるなら使ってもらえば良いじゃん、と楽しむ側として無責任で正直な気持ちもある。あるけど、AIがまるっと作った極めてデキの良い表現物で感動させられてしまう自分っていう図式を考えると、なんか敗北感がただよったりして。芸術ってそんなんで良いんだろうか?まあ、すぐに答えがでるような話ではなだろうし、実際に技術が発達していく過程で紆余曲折あってなるようにしかならんのだろうけど、行き着く先がAI様にご提供いただく芸術作品を楽しむだけで、人類が芸術を生み出さないっていう極端なディストピアではなく、なんか良い塩梅の落としどころに落ち着いて欲しいとうすぼんやりと願うのみである。


○ドキュメンタリー他:1位NHK「ワイルドライフ 生命の挑戦 恋する生きもたち 水の世界」、2位ネトフリ「WWE”壮大なるドラマ”の裏側」、3位NHK「タモリ・山中伸弥の!?」

 1位のNHK「ワイルドライフ 生命の挑戦 恋する生きもたち 水の世界」は動物の繁殖をめぐる生態の不思議や戦略を美しい映像で紹介するシリーズで陸編と水中編があったけど、水棲生物には相当詳しいつもりがだいぶ驚かされた。一番面白かったのは夜釣りでたまにヒラヒラと舞うように泳いでる姿を見かける小判型の軟体動物ヒラムシの恋のバトルで、雌雄同体でどちらの性にもなれるんだけど、同時にどちらの役割も果たすカタツムリとかと異なり、闘って”精子の槍”で相手を突き刺した方が雄、刺された方が雌となり卵を産むという「なんでやねん?」という生態。カタツムリ方式にしておけば性差別など起きないのに、一時的にせよ性を分けたことにより争いが起こるという寓話的な話で、卵を産むには沢山食べてエネルギーを使ってという大きな負担を背負うことになるので雄になるために刺し合うのである。あと、イリアムナ湖といえば釣り人にはデカいニジマスが釣れる湖という認識だと思うけど、この湖は川で海とつながっているという典型的なベニザケの遡上する川で、その遡上するベニザケを狙う湖産のアザラシがいるとかとか、初めて知ることができたことも多くて楽しい驚きにあふれていた。なんにせよ今時の撮影技術は素晴らしく美しく野生の生き物を映し出してくれて眼福である。

 2位のネトフリ「WWE”壮大なるドラマ”の裏側」は、日本ではアベマTVが放映権持ってるけど、アメリカではWWEの放送はネトフリになってて、WWEの興業で年間最大のモノである”レッスルマニア”の裏舞台を追ったドキュメンタリーで、プロレスには脚本があるっていうのは今や常識でウィキっても出てくるぐらいだけど、それを公式がネタばらししている感じでさすがに衝撃的だった。長年ベビーフェイス(良い者)で活躍していた引退表明してたジョン・シーナ選手のヒールターン(闇落ち)の脚本が、幹部連中の一人の発案から始まって、中心選手や本人の了解を得つつアイデアを出し合いつつできあがっていく、その行程をさらけ出していて「ここまで見せて良いンか?」って正直思った。あと、最怖の女子選手としてトップどころの人気を誇るリア・リプリー選手がじつは意外なぐらい繊細で、試合前にはプレッシャーで押しつぶされそうになってるとか、ギャップがすごくて”役”になりきるエンターテナーとしての力量に感服した。プロレスがそういう脚本があるのもわかりきってなおのめり込める”スポーツエンタメ”っていう独特の存在であると再確認したところである。

 3位のNHK「タモリ・山中伸弥の!?」は「NHKスペシャル 人体Ⅲ」のタモリさん、山中先生コンビによる知的エンターテインメント番組だそうで、これまで3回「AI」「認知症」「音楽」をテーマに放送されたけど、どれも面白かった。2人の相性が良いのか掛け合いも楽しく、でも紹介される科学的な知見とかは最新のもので勉強になる。認知症にはウイルス性疾患に痛めつけられるとなる確率が上がり、ワクチンはその確率を下げる傾向が認められるとか、音楽のベースとなるリズムあたりはどの民族でも共通のものでも、旋律とか曲調になると民族ごとの文化の背景に影響されてか好みが分かれるとか面白かった。山中先生の高校時代のバンド名「枯山水」には笑わせてもらった。面白くてタメになるっていう典型の番組です。

 今年もあいもかわらず、アベマTV、Netflix、NHKオンデマンド、アマゾンプライムに金払って番組視聴している。ちょっと困ったことになってきたのは、動画配信サービスが戦国時代っぽくなってて、今観ているサービスに不満はないんだけど、ボクシングとか格闘技の配信が、試合ごとに”独占配信元”が違って、どうしても観たい試合があると、短期の契約をせねばならず面倒くせぇ。アベマTVみたいに単発の”ペイパービュー方式”だと多少高くても払う価値のある試合なら文句ないんだけど、多くは最低1月の契約のための”エサ”となっていて、観る時間これ以上作れないのに1試合のためだけに契約するのもなんか腹立たしい。まあそれでも観るけどな。来年だと噂されている、井上尚弥vs中谷潤人とか銭なら払うので魅せてくれって話である。独占じゃなくて乗り合いで平和にいけんのか?まあそこは戦国時代で生き残りかけて争ってる状況ではできない相談か。なんにせよ全ての面白そうな番組、試合、興業を観ているだけの時間は無いので、今ぐらいの感じで視聴していくしかないんだろうな。

 今年も楽しんだ作品に関わるすべての表現者のみなさんに感謝。来年あたりはAIが作った作品とかも機会があれば視聴してみたいという怖い物見たさの気持ちもある。その場合AIは表現者なのかなんなのか?ややこしい時代だなと思うと同時に、どうなるのかワクワクもしている。

(画像引用元:「トリリオンゲーム」エンディングアベマTV版、まるよのかもめ「ドカ食いダイスキ!もちづきさん」1巻Kindle版)

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