2023年7月22日土曜日

目にありったけの力をこめよ!

 ”諸国大名は弓矢で殺す糸屋の娘は眼で殺す”ってなぐらいで昔っから目っちゅうのは口ほどにものを言ったり、3つ点があったら顔に見える”シュミシュクラ現象”なんてのも特に2つの点が目に見えるのが重要じゃないかと感じたりもするところ。車とかヘッドライト2つが目に見えて、もはや”顔”にしかみえんからな。

 当然釣りの対象となる魚でも”目”については、様々な意味で重要な要素であるといえよう。特にルアーの世界で考えると、魚が餌を認識する際の目標的な意味合いを”眼点”が持っていて、まあ”目印”ちゅうぐらいだからな、それを逆に利用して傷ついても致命傷にならないヒレなどに眼状紋を持つ魚なんかもいる。ということはルアーにおいても目のあるいは眼点の意味合いは重要であることは明白である。

 それは魚の側から重要であると同時に、投げる釣り人側からしても重要で、例えば本来眼点あんまり関係なさそうな餌である産卵時に泳ぎ上がったゴカイである”バチ”に対応したルアーとして投げているニョロニョロが、これまた目が剥がれやすいシール目なんだけど、目が落ちるとなんか投げる気が失せるので目だけあらかじめ透明なマニュキュアとかでコーティングして剥がれないようにして、剥げたら黒マジックで眼点書いていたぐらいに、なんかあった方が良い気がするのである。特にプラグはそういう表情が大事に思う。スプーンとかスピナベとか光りモノ要素が強いルアーではワシあんまり気にしたことはないけど、プラグの目が剥げると途端に釣れなさそうな頼りなさを感じてしまう。

 というわけで、今回ルアーをまとめて再塗装した際に古いルアーの樹脂製の目、いわゆる”ドールアイ”の自作にも挑戦したところなので、ルアー図鑑うすしお味第56弾はそのあたりの再塗装組をとりあげてみたいと思います。

 今回メインの目玉作ったクリークチャブ「パイキー」と製造元不明のデカテールブレイドペンシルはだいぶ前に仕入れたブツなんだけど、なんで今頃になって他のルアーもまとめて再塗装してるのかっていうと、ひとえに仕上げのコーティングに使うウレタン樹脂が基本使い切りで、1回封を開けてしまうと冷凍庫にぶち込んでおいたとしても1、2ヶ月とかでビンの中で固化してしまうので、コーティング手前まで作業を進めたルアー(浮子も混じる)をある程度まとめて一気にコーティング作業を片付けたいので、今回目玉のルアー以外にもそろそろボロボロになって引退させたりして弾数減ってきた一軍ルアーの補充とか、中古で買ったけど色を”紀伊色”に塗り直したいとかのルアーがある程度溜まったので梅雨の晴れ間にセッセと作業を行って仕上げたところである。なので目玉作成はずいぶん昔にやっつけてあったので写真は残ってるけどもう記憶薄れがちで、思い出しつつ備忘録的に書いていきたい。

 今回コーティング作業を行ったのは、「パイキー」が木製とプラ版の2個、デカいテールブレードペンシル、元の塗装剥いで再塗装がダーターに症状が出てたときに入手した「ラッキー13」、浜で拾ったエフテック「エスフォー」、ワームで表面デロデロで中古が安かったダイワ「ロビン」、塗装も剥がずに上から好みの色に塗り直しがラパラ「Fマグ14」、ハトリーズ「リトルダイナマイト」、バスディ「レイナ」、主力で弾数揃えておきたいこれもバスディ「海爆リップレス」4個。とりあえず、再塗装前のパイキーとデカペンシル、ラッキー13の状態がこういう感じで、古いルアーはある程度ボロさも味のうちだとは思うけど、木製で塗装剥げまくりなのとか浸水的にもダメだろって感じだし、プラパイキーとデカペンシルのあまりにもがさつな再塗装はあんまり気にしない人間であるワシから見ても酷すぎる。投げる気が失せる。あととにかくこの地では黄色やオレンジの派手な色が強く、地味な色はお呼びじゃないけど、中古で安く買うときは色選んでられないのでとにかく買って好きな色に塗り直す。というわけで金具をハズして再塗装の下準備でサンドペーパーをかけまくる。

 デカペンシルがくせ者で、頭のヒートンの刺さってたところの木が腐っててヒートンがズボッと抜けてくる有様なので、超長いヒートンとかあるか探してみたけど都合良く使えそうなモノは見当たらなかったのでヒートンの穴に届くように後頭部?から穴を開けて、前からステンレスワイヤーで作ったアイを突っ込んで、針金のお尻の方を後頭部の穴から引っ張り出して前に持ってって曲げて頭に開けた穴に差し込んで瞬着とティッシュで固めてサンドペーパーかけて平らにならしておく。目玉も綺麗に外せたら再利用もありかなと思ったけど割れた。まあそうなるわな。まあ目玉作るのはやってみたかったので予定どおり。

 ウッドパイキーの目玉はドールアイで外したんだけど、プラパイキーの目玉は当然一体成形で出目にしてあるだけでサンドペーパーかけたら無くなったので、これも貼り付けるなりなんなりしてドールアイにしてしまおう。他のルアーの目は元々の目が綺麗に剥がせたら再利用するしダメならシール目に、吹き目書き目のたぐいは書き目でいいだろう。

 ということでドールアイ作成。昔ならどうやって作るか?ってルアー制作者の書いた本とかにあたる作業が必要だったんだろうけど、今はネットで検索すれば良いだけなので調べ物は極めて楽ちん。色々な人が書いてたりしたけど、百均素材主体にお手軽にという方法を紹介されていた方がいたので、その方法に倣う。

 まずは型取りなんだけど、以前”手動3Dプリンター”挑戦のときにも利用した百均で売ってる”湯煎で成形できる粘土”を利用する。適当にルアーのパッケージとかを枠にしてお湯でゆるめた粘土を枠に填めつつ、目玉の元になる玉を押しつけて冷やして型を取る。玉は今回1個づつ元々のドールアイが無傷で回収できたのでそれを使ったけど、まあ大きさが合うようなガン玉でもシモリ玉でもなんでも大丈夫だと思う。

 ”型”のほうが準備できたら、瞳の部分を用意する。デカペンシルは単純に黒目だけだったので、太いナイロンハリスを炙って先を平らに押しつぶして黒のプラカラーで塗る。パイキーの方はもうちょっと凝ってて、白目の先に黒目があるので、まずは針金の先に涙滴状に粘度の高いエポキシ接着剤で玉を作り固めて、白く塗ってから先端を黒のプラカラーの蓋裏にチョンと押し当てて白目黒目のある”瞳”がいっちょあがり。

 これを型の窪みの位置に合わせて穴を開けた適当なプラの蓋とかに挿していく。

 そして、窪みにUV硬化レジン樹脂を満たしてその中に”瞳”をつっこみ、UVを照射して固める。UVライト2つあるので2個で5分ぐらいかけて固めて、翌日念のため直射日光で30分ほどダメ押しして完全に固化させた。

 おそらくこれ昔は職人さんが作ってた高級品、顔が陶磁器でつくられてたような人形”ビスクドール”のガラスの目の技術流用のグラスアイから発展して、紫外線固化レジン樹脂が登場する前なら2液反応型のエポキシ樹脂とかで作ってたんだろう。紫外線固化樹脂はエポキシと比べても固化に要する時間が短くて済んで時短できるだろうし、紫外線をあて始めるまで固化しないので、固化時間が短いエポキシのように慌てて型に流し込んで瞳を突っ込んでとワチャワチャせずに済むので非常にやりやすい。

 目玉填めるのは、仕上げのウレタンをかける前の段階で、今回本体黄色ベースの色に塗ったので、その眼窩に必要に応じてドリルで針金とかの収まる穴を開けつつ、数は余分に作ったのでデキの良いのを選んでバリとかはみ出した部分をアートナイフで削り上手く填まるようにサンドペーパーで大きさ調整して、ウレタン接着剤を使って固定した。プラパイキーの目玉は本体に穴開けて針金をそこに突き刺しつつウレタン接着剤で固定でデメキンっぽい感じの表情に。

 すでに一部塗装に入ってしまってるけど、塗装について、ルアー作り自体は中学生の頃から気が向いたらやってきたし、ボロくなったルアーや中古で確保した色がイマイチのルアーの再塗装やらの作業は恒常的に発生して、定期的に好むと好まざるに関わらずに”色塗り”はしているわけだけど、それでもルアー作りが趣味で常時沢山のルアーを手がけているような場合を除いて、素人の色塗りは単純なものに限定した方が良いと思っている。せっかくなら網使って鱗模様とかの凝ったカラーリングにしたくなりがちだけど、色を沢山使うとその色の種類数だけ乾燥工程が入ってきて時間も掛かり始めて面倒臭くなる。面倒臭くなると「ちょっと色塗り直しておくか」と気軽に作業に入れなくなって、せっかく買ったエアブラシとかも使われなくなって蔵の肥やしになる。エアブラシも使用時毎回どころか色変えるごとに一旦シンナーとかの溶媒で”うがい”させて掃除してって手間がかかる。2,3個程度の少数作るのにそんなことやってられっかよ!っていうのが実情だろう。ワシ、筆を溶媒で洗うのさえ面倒臭いので、一番よく使う黄色(レモンイエロー)だけペンキ缶入りで買ってきてドボンとドブ漬け、他は車用に売られている”タッチペン”や蛍光塗料のマニュキュアタイプの容器のように筆が容器に内蔵されている塗料を好んで使っている。筆洗わんでいいってのはチョイと気が向いたときに作業するには好適で、使ってみてその便利さに気付いた。

 色について、凝ったパターンが釣れるかっていったらあんま関係なくて、全体的な色調やら縞模様か斑模様かやら、それこそ眼点があるかどうかとか大まかな方向性は関係あるんだろうけど、鱗描いてあっても魚からしたらどうでも良いことだろうと思ってる。でもルアーってそういう”表情”は魅力の1つであることは間違いなくて、投げる気にならないような色では魚が食うとしても投げないから釣れない。なので、単純な塗りやすさ重視の色使いでも、ちょっと投げてみたくなるぐらいには”良い色”に仕上げたい。

 まあ、単色に目玉描いただけでも”目”の威力で不思議と表情出てきて悪くないんだけど、お尻を白にしてツートンカラーにするだけでも、なんかさらに意味がありそうななさそうな表情に見えてきてワシャ好きなカラーパターン。全身黄色に白のお尻の”紀伊色”はワシの必勝カラーなので、今回も目玉製作組と顔を塗らなかったFマグを除いて紀伊色で塗った。同じような紀伊色でも黄色がレモンイエローのペンキの場合はドブ漬けしてお尻をプラカラーの瓶にトプンと漬ける。黄色が蛍光黄色の場合はタッチペンの白で下地を塗ってウレタンコーティングまで済ませてから、蛍光塗料を塗って目玉を入れるという作業順。蛍光色の場合、上からウレタンコーティングしてしまうと蛍光色独特の”色気”が死んでしまうのでこの順番で塗っている。蛍光色はウレタンクリアのツルツルした表面ではなく、ラパラの赤金とか蛍光黄色、あるいはセル玉浮子のオレンジと黄色を思いおこしてもらえば分かると思うけど、ちょっとマットな表面に仕上がった方が発色が良いと思う。

 で、紀伊色でないののうち、Fマグは元はレッドヘッドなんだけど、ワシ実は苦手な色で典型的なツートンカラーでありさっき書いたことと矛盾するんだけど、たぶんシーバス釣りヘッタクソな時代に、シーバスの夜釣りにはレッドヘッドということで散々使ったけど釣れず。それは色がどうのこうのではない理由で釣れてなかったんだと今になって考えれば分かるけど、その当時の釣れなかった印象が頭に残ってしまっていてどうにも投げる気が失せるのである。ということでレッドヘッドでもボディー白ではなくて黄色だと南国的な派手さになって投げたくなるので下半身黄色にドブンとドブ漬けしておいた。

 で、目玉作製組はべつに紀伊色でも良かったけど、古いルアーなので、雰囲気出して古典的な塗りでいくかと、クリークチャブっぽく赤で鰓を描いてから、ウレタン筆塗り2回で仕上げる際の1回目にグリッターを側面に振りかけてギラギラっとさせてみた。タッチペンの赤はしっかり乾燥すればウレタンクリアーには溶けないんだけど、今回乾燥1日では足りなかったようで筆塗りでウレタン樹脂ヌリヌリしてたらちょっと溶けて流れ始めて焦った。2個目からは鰓は筆でなぞらないようにウレタン”置く”ぐらいの感じで塗った。ウレタンクリアーも長持ちするならドブ漬けできる大瓶で買えば楽なんだけど、使い切りが基本なのでこれだけは面倒だけど小瓶で買って筆塗りで、使用後の筆もウレタン薄め液で洗ってる。ちなみに油性ペンやペイントマーカーはウレタンクリアーに溶けるので上からちょい修正ぐらいには使えるけど基本的にはルアーの塗装には向かない。

 塗装したルアーを乾燥させるのは以前は竿掛けを利用してベランダで作業してたけど、ベランダには野良ネコ様が行き来する可能性もあるので、今は使ってない部屋で、ダンボール箱の上に針金を波形に曲げたものを3本ほど張った”乾燥ブース”を設けて作業している。

 塗装が終わったら先に目を入れたヤツ以外の目を入れて、金具、ハリを取り付けるんだけど、今回デカペンシルはブレードまで緑で塗られてたので、元に戻すのに手間食った。ひたひたのシンナーと一緒に小袋に入れてしばし放置の後、キッチンペーパーで大まかに溶けた塗料を拭き取って、その後は真鍮ブラシでクレンザーつけてセッセと擦って何とかいぶし銀な光沢にまで回復させた。錆びたヒートンやらカップやらも真鍮ブラシで磨いておいた。フックはデカペンシルにはマンズのフロッグからハズして余らしてたダブルフックのデカいのを装着。

 でもって目はもちろん”投げたくなるような表情”を大きく左右するので、毎回気合い入れてドールアイをおごるわけにもいかんけど、ドールアイ入れなかったヤツラにも可愛い目を入れてやりたいところ。さきほども書いたように元々付いてた3Dの目とかが綺麗に外せたら再利用。その他は、スプレーやらエアブラシで塗料吹いて吹き目にするのも型紙作って吹くだけだけど、書き目とその応用編のシール目はさらに簡単なので書き目とシール目。これまでも再塗装時にはだいたいルアーの目は書き目かシール目で済ませている。シール目は毛バリの目としてもよく使うので作り方憶えておいて損はない。

 ぶっちゃけ簡単である。書き目は筆の尻とか適当な直径の棒で白目を描いて、それより細い楊子やら竹串の切ったので黒目を描く。描くというか判子押す感じというか、棒の先にやや多めに付けた塗料の滴をルアーに乗せるようにすると綺麗に丸い目が描ける。簡単なので何度かペットボトルの側面とかで練習して塗料の量とかの加減さえ把握できれば楽勝。失敗した場合もウレタンクリアーの上に描いた目なら完全に乾燥する前にアルコールで拭いてやればやり直せる。

 でシ-ル目は書き目ができたならなお簡単。白目になるシールやシートをポンチで抜いて、黒目を描いてやる。あとはルアーに貼ろうが樹脂で固めてフライの目に使おうがご自由に。シールに上手にエポキシとか盛ってやれば立体的な目も作成可能。

 ってな感じでダルマと一緒で目を入れたら完成。全体的に良い感じに仕上がってくれたと思う。デカペンシルの出しどころはまだ思いつかんけど、パイキーあたりは水噛みの良いメタルリップがついてるからN川で足場高いところから投げても泳いでくれそうなのでハリ換えて秋には使おう。他のは一軍メンバーの補充要員とかなので出番はあるはず。はよ投げてみたくなってくる。

 ドールアイはそこそこ手間かかって、その分雰囲気のある表情が出せるけど、書き目、シール目でも充分ルアーはいい顔になる。ボロくなったルアーとか、拾って元からボロいルアーとか、中古でたたき売られているボロルアーも、再塗装して目を入れてやると、途端にヤリそうな顔になってきて実際に活躍してくれたりする。単純な色使いであればそんなに難しい技術は必要ないので、ボロいルアーのその傷に想い出が刻まれているとかなら別だけど、そうじゃないなら再塗装してやって現役復帰させて使い倒してやるのは、とても楽しいし、ぶっちゃけお金も節約できるしで良いんではないでしょうか?是非お試しを。

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