2020年1月26日日曜日

ダイコー社「NAIAD MODEL SMF-9078"S.M.M.C-SHAFT"」



 ダイコーは相手先ブランド名製造(OEM)で国内外のロッドを作ってたけど、自社ブランドもあって、このフライロッドは自社ブランドの「ナイアード」で出てたんだけど、バスロッドの印象しかなくて手に入れたときに「フライロッドもあったんだ」と意外な気がしたのを以前も書いたところである。
 昔のダイコーの竿は作りがしっかりしていて丈夫でとっても信頼できて、かつお値段控えめで良い竿屋さんだった。
 ワシも輸出用のスピードスティックのバッタモン(ルー社に収めなかったのを無銘で横流しした品?)というのを愛用していたとか、黒くて太い漢の竿サザンクロススティックで人生最大のクロトガリザメを釣らせてもらったとか良い印象が強い。
 この竿も、前の持ち主であるF船長が相当に使い込んだ上でのお下がりで、その後ルアーマンが片手間にくり出すフライロッドという感じで出番はそれ程多くはなかった気がしているけど、実際には永きにわたり世界各地の水辺で振ってきた竿で、ここのところカマスとタチウオで酷使していたところもあって、リールシートを押さえるリングの填まっているコルクがズレて圧迫することにより、その上のコルクが欠け落ちてしまっていた。
 まあ、こんなもんコルクのリングの余ったのがあれば、まずは原因のリールシートのリングをしっかりコルクと共にグリップに接着し直して固定して、欠けた部分はコルク削ってハメてエポキシで接着後、カッターとサンドペーパーで形整えてならしていっちょ上がりってナもんである。
 ブランクスを自社で焼いている”竿屋”の竿だけあって、ブランクス自体はまったくまだ問題ない感じで適度にヘタッてきてはいるんだろうけど、まだまだ現役で大丈夫そうで頼もしい限り。
 ルー社から受注を受けてスピードスティックの試作品を持ってったら向こうの担当者は試作品をバッキバッキと折りまくって、折れ方で「こんな柔い竿じゃ米国じゃ売れん」と、アメリカ~ンな丈夫な竿を作らされたっていう逸話なんかもあって、竿の耐久性、丈夫さにはこだわりがあっただろう竿屋のブランクスの面目躍如という感じである。
 飛距離?感度?軽さ?フンッて鼻で笑うよね正直。そんなもんでデカイ魚があがるかよって話でワシは米国の釣り人同様、竿は丈夫でデカイ魚もガッチリ寄せて揚げる力強さがなきゃダメだと思ってるし、ガイドだグリップだは補修しながらもブランクスは大丈夫なので使い続けられる竿が愛着持てて良いと思っている。

 渓流のフライはそれまでもやってたけど、シーバス狙いとか海のフライもやってみたいなということで先輩方に相談したら、「そんなの買わなくても使ってないのがあるからあげるよ」とF船長にいただいた竿なんだけど、その時点でコルクグリップの、基本のサムオントップで親指が当たるあたりが削れててなんかベコベコへっこむぐらい使い込まれていて、フライロッド上手に振れるようになるにはグリップ削れるぐらい使い込まなきゃダメなんだなと、チョット感動したのを憶えている。
 写真左の縦に溝が入って削れているあたりがF船長が削った部分である。
 今回グリップ補修するのにしげしげと眺めて「おもえば遠くへ来たもンだ」と感慨深かったのが、写真でみる右の方の削れ方。むしろ削れ方はこちらの方が大きい。
 実は私はグリップの握り方が教科書通りの親指で押す”サムオントップ”ではない。
 最初、フライロッドはそうやって握るモノだと教書で読んで実践してたんだけど、イマイチしっくりこなくてF船長に「軟式テニスのラケットの握りが一番慣れてて力入るのでグリップ正面を親指と人差し指の間で握るのがやりやすいんですよね、ルアーとかはそうしてます」と話したら、あっさりと「サムオントップは基本だけどそれじゃなきゃダメってほどでもないよ、やりやすい握りがあるならそっちでやればいいよ」と教えられ、以降軟式テニスでいうところの”ウエスタングリップ”でフライロッドもルアーロッドも振っている。
 基本は大事だし一番多くの人に適合するんだろうけど、そうじゃない特殊事情の人もいて、そのへんは利点欠点分かったうえで使う分には良いンじゃなかろうかと思っている。ワシャどっちかっていうと異端やから好きなようにやらしてもらいまっサ。
 なので、サムオントップで親指が削る場所は私の握りでは削れず、人差し指の腹がこするところが削れる。のが写真の右側の削れた部分。その削れ方がすでにF船長が削った深さより深くなっているのをみて、20年以上にわたってあちこちで振ってきたことに思いを馳せてしまったのである。

 そりゃ、こんだけ竿ふってくりゃ、技術的、精神的にインチキなフライマンでも魚はなんぼか釣れるようになるよナ、と得心がいった。ちょっと最近釣りすぎだと思っててどうしたんだろうと若干不安になってたけど、まあこれだけ竿ふってあればこのくらい釣れてもバチあたらんだろう。

 にしても、そのぐらい振りまくってもブランクスが大丈夫な昔のダイコーの竿作りは立派なもんだったなぁと感心するところである。

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