文字どおり道ばたに生えてる草食います。
食費を浮かせるために、タンパク質は魚で良いとして、炭水化物は田んぼも畑もなしではどうもならんとして、野菜はそこら辺で食べられる野草を取ってくれば何とかなるんじゃないかということはこれまでも考えていた。
山菜採りなんていうのはそれだけで1つの娯楽分野を形成しているぐらいで、キノコ採りもあわせれば、結構いろんな食材が手に入るはずである。
じゃあ、移住してこれまでなんでやってこなかったんだ?とくにキノコなんて去年もやってたからこちらでもやりゃあ良いジャン。と自分でも思う。
ただ、意外に食材確保するつもりでガッチリやるとなると面倒くせぇことも多い。
キノコなんて当然山なり林に入って行く必要があるから、採って良い場所の確認から始まって場所開拓せねばならず、そもそも釣りで自転車でも徒歩でも足を酷使しまくってるので右膝痛くて山登りたくない。
野草については、生えてるところ見つければ採ってくるのは難しくないかもしれないけど、栽培種じゃない野生種は皮が堅かったり灰汁が強かったりでそのままでは食べられず、手間暇かけてやる必要がある。
例を出すなら、時期になればツクシなんて袋いっぱい採ってこれるけど、じゃあそのハカマ取りをしましょうという段階になったら「こんなに採ってくるんじゃなかった」とウンザリするぐらいに手間暇が掛かる。
婆ちゃんが割とそういうの好きで、蕗とかイタドリとか採ってきて食べてたけど、茹でて水にさらして灰汁を抜いて、皮やら硬い筋やらを丁寧に取ってと細々と手間暇掛けていて、ガキの頃はそういうのの渋い味わいなど分かるわけもなく、スーパーで野菜買ってきたほうが手っ取り早いのに?と思っていた。
手間暇掛けてでも良いと、その味やら楽しみにに魅力を感じているならやれば良いんだけど、食費浮かせたいぐらいのユルい動機では、あんまり手間掛かるんならスーパーで買った方が安くて早い、ってことになってしまう。
そう考えると、そのままあく抜きやら皮むきやらしなくて食べられて、かつ山に分け入らなくても道ばたや釣り場で入手可能、かつ有毒植物と間違える危険が少ない、っていう野草を探すしかないなと思っていた。
そんな都合の良い野草があるかと思われるかも知れないけど、割とあるんである。春の七草なんてそういうのが多くて、ナズナ、ハコベラなんていうのが馴染みもあってまずは候補になる。戦時中の体験談とかで、毎日ハコベばっかりで小鳥じゃねえんだゾっていうようなことが書かれているのを目にしたことがあるけど、そのぐらい身近で食用にも適しているんだと思う。インコにだけ食わせておくのはもったいない。
ナズナも花穂が立って別名の”ぺんぺん草”の由来であるバチ型のタネの部分を目印に探せば間違いようがない。細かく見るとナズナもハコベも何種か含まれた総称のようだけどどれも食べられるうえに似た有毒植物もなく”道草”初心者にはおあつらえ向けだろう。
ということで生えてる場所見つけたら収穫して帰ろうとおもっていたけど、意外に見つけられない。魚釣りに行くときは頭の中魚でいっぱいなので道ばたの草にまで意識が行かないモノである。
ハコベなんて子供の頃インコ飼ってたときには毎日のように近所で収穫していたので探しゃああるはずなんだけど。
ってな感じで野草方面はぜんぜん探索進んでなかったんだけど、昨日ハゼ釣るにあたって、ハゼ釣るなら当然天ぷらか唐揚げかで揚げ物が第一の選択肢で、となると天ぷらで食っちまえる野草なら取ってきてももハゼ揚げるついでなので調理に手間が掛からない。
多少皮がかたかろうが、灰汁が強かろうが天ぷらなら下処理いらずっていう野草は結構あるようで、採取の対象がグッと広がる。
今回狙ったのは葛である。
海外じゃ侵略的移入種として大問題になってるらしいけど、原産地である日本でも道ばたのフェンスによじ登り、ススキやセイタカアワダチソウに絡みつきと、どこにでも生えてるようなやっかいな雑草である。
ただご存じのように、地下茎から取れる澱粉は葛湯の素になったり漢方では葛根湯の原料になったりと有用な植物でもあったりする。
このクズが、なんと新芽の部分は可食なんだそうである。毛がモコモコ生えていて茹でたりして食べるには皮むきが必要で面倒だけど、天ぷらならそのままいけるそうである。
しかも、癖もなくかなり美味しいらしい。
困っている移入先の国に教えてあげなきゃならん有用情報かもしれんけど、まずはワシが食うてみんとナ。
釣り場からの帰り道、自転車にまたがったまま道ばたの草むらから立ち上がっているクズの新芽をポキポキと折り取っていくと、ものの10分ほどでまあこれぐらいあれば足りるだろうという程度には採取できた。
ついでにヒージャー汁にはフーチバーでお馴染みのヨモギの柔らかそうな部分の葉っぱも摘んどいた。草餅の”草”としてのほうが有名か?
そんなに沢山摘んだつもりはなかったけど、一食では食い切れなくて翌日昼飯回しにする程度には量もあって、これで味が良ければ簡単に採れて文句ない食材ということになる。
調理は、水洗い、適当に切りそろえる、衣つけて揚げる、完成。と至って簡単。
ちょっと堅い部分も若葉も試しに揚げてみた。
クズ、何の問題もなく美味しくいただけます。癖がなくってちょっと野草としては物足りないぐらいだけど、歯ごたえも適度にあって美味しいという情報に偽りなしでございました。
クズの新芽なんて地上部が枯れている冬以外は入手可能で、いくらでも採り放題である。こりゃいい獲物をみつけた。
若葉もそれなりに食える。新芽のやや根元の堅い部分はちょっと噛み切りにくいけどまあ食えないほどじゃない。
ヨモギも当たり前に食えるけど、こちらはもろに草餅の香りが強くて個性的で、あんまりいっぺんに沢山食うモノではなさそう。
市販の野菜でいえば春菊ポジションか?臭いに癖のある獣肉や脂っぽい肉を食べるときに口中をほろ苦さと峻烈な香りでさっぱりさせるとかが使いどころかも。
”道草”第1弾はなかなかに良い収穫があった。
今密かに、こういう”サバイバル系”の食に注目が集まってるというのがあって、ネット上にもいろんな記事が紹介されているので、ちょっとづつお勉強して毒草の罠にかからないようにだけ気をつけて、これからも道草食ってみたい。