2019年3月16日土曜日

翡翠の輝きも悪くない



 水辺で鳥たちを眺めるのは楽しい。

 さすがに目の前でカワウに操業されると「後から来て割り込むのは勘弁してくれよ!!」と、ここでも思ってしまうのだけど、鳥には鳥の理があり人間の理とは別のところで動いているのでしゃーねェっちゃしゃーねぇ。
 カワウが生きていけるぐらいに魚が沢山居る釣り場で釣りたいなら、カワウの襲撃ぐらい織り込み済みで釣りを組み立てるのが正しいんだと思う。ヘタクソでも釣れるように魚ジャブジャブ天然の水域に放流したりしたら、ワラワラと捕食者が寄ってくるのは当たり前。その当たり前の自然の理をねじ曲げてまで欲をかくのは不自然で歪だということに、いい加減気づけよとしつこく書いていく所存。そういうのは「箱」とかの管理できる限定された水域でやっとこうぜ。
 そういう所があっても良いけどジャブジャブ放流しなきゃ川に釣る魚が居ないっていうなら、川の環境や生態系がおかしいってことだろう。そのへんどうにかしようよ、いいかげんさ。

 カワウのような積極的に潜水して魚を追い回す鳥とは漁場が競合すると、どちらかが退散するしかないけど、同じ魚を食べる鳥でも待ち伏せ型の鳥とは隣り合った釣り座?で仲良く操業することもできる。
 都会の鳥って、人間には慣れているのでっていうか、いちいち人様にビビってちゃ商売あがったりなので、警戒してどっかいっちゃて「邪魔してゴメン」ってなることもあるけど、意外に平気で良いペースで着実に水揚げ重ねてたりする。写真撮ろうとカメラ向けると視線を感じるのか飛んでったりするけど、良い釣り座はそうそう諦められないのは彼らも同じようだ。
 ちなみに”鳥見の人”に聞いた話だけど、カメラのファインダー覗かずに済むデジカメになってモニターを横目で見ながら撮ると意外に逃げられないとかも聞いてナルホドナと思わされた。
 
 シーバス釣りのときに夜間操業するアオサギかゴイサギが釣り場にいると、確実に餌になる小魚が寄ってる証拠であり期待が高まる。特にアオサギは大きくて格好いい鳥なので自分の中では”幸運の青い鳥”(実際はその名に反して灰色だけど)的な位置づけである。
 でも一般的には、最近は都会でも珍しくないぐらいに身近になって、まさに”青い鳥”な人気者といったらカワセミで異論はないだろう。
 高度経済成長期に、魚も棲めなくなった水辺が、排水基準とかの規制が効いてきて、魚がいくらか戻ってきてという、自然環境の改善を象徴する存在であり、人もどのみち汚染された自然環境では生きにくいはずなので、まさに”幸せの青い鳥”じゃなかろうか。
 カワセミの名前の由来は”川に棲んでる背中の美しい鳥”という説があるようで、その背中は金属的な青さでキラめいている。羽は緑にお腹が橙色とじつにオシャレ。
 クチバシがアンバランスなぐらい大きくて3頭身ぐらいのゆるキャラじみた愛らしさ。
 漢字で書くと翡翠とも書く。そう宝石の翡翠(ヒスイ)と全く一緒。
 学名はAlcedo atthisで今回調べて初めて知ったんだけど、欧州産も日本のと同一種とされているようだ。まあ鳥は空飛んで海越えられるから飛べない生き物に比べると分布は世界的になっててもおかしくないので当たり前といえば当たり前か。
 でも、日本の釣り人が水辺で親しんでるカワセミと、イタリアの釣り人が同じように”アルチェード”に親しみを覚えているというのはなんとなく親近感が湧いて楽しい気分だ。

 長い枕で、読者の皆様今回スピニングネタじゃないのか?といぶかっていたかもしれないけど、もうおわかりですね。そう「アルチェード」でっせ。
 「なんだと、ナマジが好きなのはPENNだの大森だのの実用機か誰も欲しがらないようなゴミスピじゃなかったのか?アルチェードなんてイタリア製の名機じゃないか、この裏切り者!!ころびやがって!」とお怒りの皆様、イヤイヤ違うんです。弁護士はまだ呼ばんでいいけど、刑事訴訟法第203条に基づきまずは弁解の機会を与えて欲しい。
 コイツはSUZUKIさんからご厚意でいただいたモノで、スピニング熱が長びいている私を心配してさらなる重石を乗せて沈めようと、じゃなくてお見舞いとしていただいたもので、人様のご厚意をむげに断るわけには行かず仕方なく頂戴したモノなんです。
 嘘です、「ブログネタにできそうなら差し上げますよ!」というメールに、一応「そんな高価な物をいただくわけにはいきませんよ」的な心にもないことを返信に書いたけど、よだれ垂らして欲しがっとりました。
 なんと、某中古屋で350円ぐらいだったので気にしないでくださいとのことで、ありがたく頂戴することとして、さすがにもらいっぱなしというのも気が引けたので、こっちからも相応のブツを出さないとこの勝負負けるッ!と別に勝負じゃないけど思ったので、350円のアルチェードには勝てないにしても、我がごみスピえぐり歴でも会心の一撃であった500円の大森ダイヤモンド「オートベールNo.1」を持って取引の場である、とある岸壁に臨んだ。取引の様子は2月22日の釣行顛末記で確認されたい。
 この冬大森熱再燃しているらしいSUZUKIさんにも共に沼に沈んでもらわねばなるまい。自分だけ重石手放して軽くなって、足洗って堅気に戻ろうなんざぁ赦してちゃこの業界生きていけやぁしませんゼ。
 オートベールはベアリング2個も入ってる高級ダイヤモンドだし、ワンタッチスプールはタックル5やタックルオートとスプールの互換性がないので余らせ気味だったこともあり、こういう”お使い”任務にはもってこいだったので「頼んだぞ!」と行ってもらった。


ということで我が家にやってきました”アルチェード”。ご覧のとおりギアが入って丸く飛び出しているところにカワセミのレリーフが入った銘板が付いてたのが剥がれていて、それが350円程度というゴミスピ価格の遠因だろうと思うけど、銘板なくてもスプールにも「ALCEDOーMADE IN ITALYー」と書かれていて、値段付けた店員は知識が足りないというよりは、この手の古リールでわざわざイタリアからの輸入品ならそれなりの値段かもと、検索するなりして相場を調べるという仕事の丁寧さに欠けているわけで、中古屋の店員としては程度が低いと書かざるを得ない。おかげで手に入ったんだけどさ。
 アルチェードといえばワシらオッサン世代の元バス釣り少年なら、経典である「ブラックバス釣りの楽しみ方」でオープンウォーターのためのスピニングリールとしてカーディナル、ミッチェルとともに紹介されていたのが印象深いだろう。ていうかそれ以外にほとんど見たことない。カーディナル使いはJOSさんが渓流では見事に教科書通り右手人差し指でラインの放出調整しながらバシバシとピンポイントキャスト決めて釣っていたのが印象深いし、ミッチェルはケン一が高校のときバスプロショップスで個人輸入(って当時は言ってた)してナマジ君がベール手で返して壊したっていうぐらい、釣り場やら売ってるのやら目にしたけど、アルチェードはずっと後になって中古釣具屋じゃない”オールドタックルショップ”で良い値段付いてるのをみかけたぐらいで、我々世代よりちょっと上のそれこそ則さん世代の釣り師が使ってたリールなんだろう。
 その中でも、一番人気あったであろう小型のアルチェード「ミクロン」じゃなくて、コイツはちょっと大きいアルチェード「2CS ERIE」通称「2C」と呼ばれる機種でカーディナル、ミッチェルの2大舶来インスプールに比べマイナーなアルチェードでもまた地味な機種ではある。ということでナマジが手にするのもお許し願いたい。

 ”ALCEDO”の読み方としてはアルセドとか書かれていることもあるけど、まあイタリア語の読みなんでカタカナ表記はどうでも良いかなと。ワシら元バス少年にはアルチェードがなじみ深いのでそう書くことにする。さすがイタリア語は読み方が失われているらしい”ラテン語”の正統な後継筋にあたるらしいので、カワセミの属名ラテン語表記と一緒の単語がイタリア語でもカワセミなんだな、というのも雑学的には楽しめた要素。


 ま、我が家においでいただいたからには何はともあれ歓迎の分解清掃といきたい。
 まずはスプールからとドラグノブ外してみると、確か読んだことあったけどドラグが金輪でハメ殺しになってて、油注すぐらいしか手入れのしようがないなという感じ。だけど、なんかスプール裏の座面にもワッシャーが3枚入ってて、繊維質のワッシャー二枚で金属のワッシャー1枚を挟んでて、それなりに直径も大きく多分一緒に回るので1枚のドラグパッド的に効くんじゃないだろうか?ハメ殺しの下のドラグの構造がどうなってるのかは知りようがないんだけど、案外本命のドラグパッドはコッチだったりして?いずれにせよしっかりドラグは機能してて、ドラグ性能なんてのは半世紀から前のイタリアンリールでさえ既にちゃんとしたのが搭載されてて、今頃になってそんな当たり前の機能をことさら宣伝しなきゃならんってのが、ドラグのなんたるかを知らなかった日本の釣り人相手に長くいい加減なドラグで売ってた日本製リールのそれまでのお粗末さを示しているように思える。それが今じゃ、あつものに懲りてで、実釣において不要なまでの過剰なドラグ性能を備えてたりして、まあこの国の釣り人は相変わらずドラグがなんなのかなんてほとんどの人は知らんのだろうなというのが良く分かる。なーんて本当のことを書くとシラけちゃうからあんまり書かんほうが良いのか。

 お次は蓋をパカッと開けて、ギア行ってみましょう。
 ギアはウォームギアで、ほんとにハンドル軸のギアの分本体が丸く膨らんでるってのがよく分かって笑える。ただ、ギアの軽量化で穴が空いてたり、ウォームギアといってもローター軸のギアが真っ直ぐの筒に床屋のグルグルみたいに歯を切ったものではなく、ハンドル軸のギアの円弧にあわせて微妙にカーブさせて広い範囲でギアとギアを接触させているのとか、なかなかにイタリアの職人さん良い仕事している感が漂ってるのである。
 ローター軸のギアの方、途中に油溜まりのくぼみもあったり傷が入ってる部分もあったりするんだけど、一点で接触してるんじゃなくて円弧に沿って面状に接しているからか、回転はゴロゴロしたりせず滑らかで、ギアがある程度傷ついたりしてもちゃんと機能するように、長く使うことを念頭に設計されてるんだなと感じる。
 その分巻き取りが重いのかも知れないけど、巻くのがかったるくなるほどじゃないし、どうせ釣り場じゃ抵抗のあるルアー引いてるんだから多少の巻きの軽さに何の意味があるんじゃ?50年から経ってギアに多少傷入っても使えるタフさの方がワシにはよっぽど金払う価値があるように思えるんじゃがどうじゃろ?
 ということで、実釣を想定して外してパーツクリーナーで古いグリス落としてグリスシーリングしちゃいたかったんだけど、ハンドル軸のギア外すにはハンドルの根元の金輪をマイナスドライバーで外す必要があるようなんだけど、小さい穴にドライバー突っ込まねばならないようになってて手持ちの眼鏡用の細いドライバーでは力がかけられなくて回せず、とりあえずグリス固まって動かなくなったりしてないので、追加でグリスちょっと足すのと注油で済ますことにした。
 ギアの分解清掃にこだわらなかったのにはもう一つ理由があって、コイツのベアリングはローター軸のギア直上に2つ入ってるんだけど、開放式っていうのかミッチェルと同じで分解したら玉が転がり出てきてなくしちゃいそうな形式で、ちょうど良い回り具合に締めるコツとか難しそうで、当初はそういう難しいのも練習だしやってやろうと思ってたけど、前回書いたマイコンNo.6の失敗で自分の過ちで貴重な稼動個体がゴミになってしまうのが怖くなったのもありベアリングも注油だけで現状保持を優先させた。ワシも人のことはいえず、あつものにこりてナマズを吹いているんである。

 ベールアームは180度近くすんごい角度まで開いてどの位置でベールを起こしても投げるときのフェザリングとかによるライン放出の調整を邪魔しないようになってるんだけど、そのためのベールスプリングがなんと数えたら8重にも巻いてあって、大きく開く分丈夫なバネを入れてるんだなと、ここでもイタリア職人の意外なぐらいの真面目さに、デザインと美食だけだと思ってたイタリアという国をちょっとというか大幅に見直すのであった。
 ドイツの酒場でドイツ人が日本人観光客と仲良くなったときにくり出す定番のネタに「日本人は最高だな!次やるときはイタリア抜きでやろうな!!」という、今時言ったのがバレたら社会正義の戦士(SJW)様につるし上げ食らいそうな不謹慎ネタがあるんだけど、こういうリール見るとイタリア仲間はずれにしなくても良いんじゃネ?と思う。料理は間違いなく世界有数に上手いし美味いしナ。
(こういう戦争を肯定するかのような不謹慎なネタを匿名で書くのは卑怯だ!けしからん!!とSJW様はお怒りになるだろう。私とて先の大戦で日独伊の枢軸国はもとより連合国側も酷い過ちを犯したことは明白だと思っていて、その戦争行為を肯定するつもりは毛頭ない。なくても、限られた読者しかいないネットの片隅のブログでも、それを読んで不快に思う人が居るだろうことも想定している。それでもなお、この程度の黒いネタすら書いちゃいけない”言論統制”された世の中なんてまっぴらゴメンだと思うので、不快に思われた方がおられたら素直に謝罪する用意はあるけど、吐いた唾飲み込んで書いたことを撤回するつもりはない。覚悟決めて書いてるつもりなのでご容赦を。ヒトラーが言論統制で本を焼き始めた時に「本を焼くようなヤツらはそのうち人を焼き始める」と予言した哲学者だったか文学者がいた。言論というのはおおよそ人間の本質の一つと言って良いと思う。それを規制したり無理矢理歪なものにねじ曲げたりする輩は、人間そのものを規制し無理矢理歪なものにねじ曲げようとしているのだと危機感を持って認識するべきだと思っている。)

 そして、このリールの最大の目玉だと私が思うのがラインローラーである。
 ダイヤモンドリールにはダイヤモンドが使ってあるわけじゃない。
 アルチェードにも翡翠が使われているわけじゃない。そもそもアルチェードにカワセミの意味はあってもヒスイの意味はないだろう。
 ただアルチェードのラインローラーは”瑪瑙”製!!
 メ・ノ・ウでッセ!仏教七宝の末席飾る宝石でっせ。まーイタリア人はシャレオツだこと、って話じゃなくて、実は宝石の硬くて摩擦に強く滑りが良いという特性はSICやらがない時代にはロッドのガイドとかにも使われていたりもしたんである。さすがにダイヤモンドを輪っか状のガイドに加工するとかは技術的にか経費的にかやられてなくて、ダイヤのリングは女性のあこがれだかなんだか知らんけど、リングっちゅうてもそういうう意味じゃない!
 ダイヤモンドリングガイドは見たことないけど、ある程度硬くて加工もできる”宝石”はリング状に加工されて実際に竿に取り付けられていたりするのである。
 ルビーガイドなんてのが代表で、そんなオッソロしい高級ガイドの付いた竿おいそれとは振れやん庶民的な私だけど、実は似たようなガイドにはお世話になってて、ルビーってじつは酸化アルミニウム(アルミナ)の一種なんだそうで、我々釣り人にお馴染みのハードガイドとかのお仲間だそうな。他にもサファイヤやコランダムなんて宝石も酸化アルミニウムだそうな。
 アルチェードのラインローラーはメノウという話はわりと知ってる人は知ってる有名な話で、TAKE先生が知らずに「この透明な樹脂はなんだろう?」とカッターの刃をあてる話を読んで、心の中で「先生ヤメテ~」とセクハラ教師に迫られ貞操の危機的な美少女のように叫んじゃったのアタイ。
 まあ漠然とルビーガイドとかと一緒かなと思ってたけど、今回調べてみたらちょっと違った。メノウは水晶とかのお仲間で二酸化ケイ素が主な成分だそうな。ケイ素っちゅうと炭化ケイ素である”SIC”ガイドを思い出すわけだけど、そこまで硬くないようだ。でも硬くて摩擦には強いし滑りも良さそう。
 にしてもまごうことなき宝石でっせ。ワシ宝石なんて時計に入ってる水晶ぐらいしか持ってなかったから気持ち的には初ジュエリーでんがな。ちなみに水晶の入った時計って成金趣味の宝石が文字盤にゴテゴテ付いたヤツじゃなくて、振動子として水晶使ってるいわゆる普通のクォーツ(水晶)時計のことね。わし時計も質実剛健なのが好きだからセイコーのダイバーズウォッチをもう30年近く使ってる。
 っていうメノウなんて高価な素材を使ってるのが伊達や酔狂じゃなくて、もちろん成金趣味でもないのは、緩み止めを填めた引っかかりの少ない丸い頭を持った六角ナットや、樹脂製ワッシャーで隙間なくかつちゃんと回るように調整されたラインローラー全体のきちんとした造りや、ラインが引っかからないように絞られて曲面で構成されたベールワイヤーとの接続部分とかを見れば分かる。ラインの縒れとかなくラインを痛めないように丁寧に作られている。

 そういうふうに素材も良いのを使ってて高級感あるし、造りも職人さん良い仕事してるしだけど、なんといってもこのリールを手にした釣り人は、その造形の個性的な良さに痺れて、カーディナルやミッチェルともまた違う趣のあるこのリールを持つことに喜びを感じただろうことは想像に難くない。
 ドラグノブがベンツマークみたいな三本の足でリングを支える形とか、全体ベタッと覆ってしまう丸いのより軽くしていると共に、デザイン的にはスプール上面のメイドインイタリーとかのロゴがオシャレに覗いている格好良さで個性的。
 本体のギアの部分が丸く出っ張った”お腹”の感じとかリール全体として木の枝に止まってるカワセミの可愛らしさが思い起こされる可愛いデザインだとおもうし、出っ張ったお腹の分ギアが大きくてギア比高く巻き取り速度が高速化しているという機能面に由来した造形でもあり、上手いデザインだなと改めて見惚れる。
 イタリア人のデザインってどうにもやっぱり格好いい。典型が車なんだろうけど、フェラーリはまだ正統な欧州車的格好良さだけど、ランボルギーニとかになるとちょっとぶっ飛んだ唯一無二のこれぞイタリアンデザインという格好良さになってくる。

 そう思うと、渋いカワセミのレリーフの銘板が落ちているのはちょっと惜しいなと思えてきて、カワセミをあしらったコインとか大きさ合うの見つけて貼り付けちゃおうと、ネットでカワセミコインを探してみたら、あったあったオーストラリアのワライカワセミのコインがある。属が違って学名Dacelo novaeguineaeだけどそこはカワセミ科Alcedinidaeだし目をつぶることにして、直径5センチに近いと良いなと大きさ調べてみたら残念ながらこれ何かの記念コインのようで1オンスもある銀貨でダメだこりゃ。

 ウーンどうしようか?適当にカワセミの写真加工してシールにして貼り付けるとかでお茶濁すか?とか考えていて、ふと「イタリアンリール、つまりイタリールなんだから痛リールにしてしまおう」と思いついた。
 マンガやアニメのキャラクターを車全体にあしらった「痛車」のリール版である。
 ハッキリいって半世紀を生き抜いて現存するアルチェードに対する冒涜である。でも批判を浴びてでもやる意義があるのではと思うところがあった。
 ここのところ毎日ネットオークションにかけられる沢山のスピニングリールやパーツなどを見てきた。その中でどうにも赦せない改悪を施されたリールや醜悪としかいいようのないドレスアップパーツを見るにつけ、どっかで誰かが「あーカッコ悪ぅ」と指摘してやらねばならんという気がした。
 今時のリールにゴテゴテとしたドレスアップパーツが付いていてもなんとも思わない。あんまり興味がないし今時の似たようなリールを個性的にするにはそういうのもありかなとも思う。昔遊漁船の竿立てで迷子になりそうだったPENNにカスタムパーツが豊富に作られてたのも機能面だけでなくそういう意味もあったんだろうと思っている。まあワシゃペイントマーカーで名前書いたけどな。
 ボロボロになった個体のリペイントやら部品の自作やらは私もやってるけど次善の策的にしゃーあんめぇ。そうやって大事に使っていくことには意義もあるし、独特の味わいも出てくる。
 機能面を向上させるカスタムパーツも理解できる。軽いスプールやら釣り人それぞれの手に合ったハンドルノブとか釣りを快適にしてくれるだろう。
 ただ、カーディナル3とかの名機に、本来の質実剛健な実用機のもつ美しさを損なうような悪趣味な勘違いしたドレスアップ?パーツが売られているのとかを見ると、ほとんどそれは陵辱ではないかと憤りを感じるのである。アタイがリールなら泣いて「そんな恥ずかしい格好するぐらいなら舌噛んで死ぬ!!」って言っちゃうわ。
 歴史的な名機に冒涜的な装飾を加えることがどれほど不快か、そういう勘違いを喜んでやってるヤツらに目にモノ見せてやる。というのが罪を犯す1つめの理由。
 もう一つの理由が、既にある素晴らしい造形を修復するのではなく、新たに手を加えて越えるためには、生半可なごまかし程度では全く用をなさず、一旦ブチ壊すぐらいの勢いで覚悟を持っていかないと陳腐なモノにしかならないと思ったからである。
 渋谷駅に近年メキシコだかで発見されて、岡本太郎先生の大作「明日の神話」が修復されて公開されている。この作品に3.11の後に福島の原発の爆発した様子を描いた作品を付け足した自称芸術家集団がいた。
 草葉の陰で太郎先生激怒していることだろう。ご自身の作品を汚されて怒ってるのではない。太郎先生、万博のときに「太陽の塔」に立てこもった過激派だかが現れたのを見て、自分の作品を使って自己表現をしようとする人間が居るというのも実に面白い。創って手放した作品はその後壊されようがどうしようがかまわない、そいうった新たな関係性が生まれていくことがまさに芸術だ、的なことを言って非常に喜んでおもしろがっておられた。
 「福島の原発事故に怒りを覚えて、それを私の作品を使って表現しようとしたのなら、なぜ私の作品にその剥き出しの怒りをぶつけて、作品を壊してしまわないのだ!その程度の怒りや覚悟で新しいモノなど生まれるか!!」と目を剥いて面罵するだろう。
 あとで付け足した部分をちょろっと取り外せば元通り、そんなに悪いことしてないでしょ?ボクらも太郎先生のことはリスペクトしてるからね。なんていう甘っちょろい姿勢で表現などするなと説教したい。そんなものはオママゴトでしかない。家に帰ってお母ちゃんにおチチでも飲ましてもらってろ。
 
 というわけで、元々填まってたレリーフの位置決めの出っ張りも削って平面にして、おもいっきり冒涜的にデカデカとシール貼ってエポキシかウレタンでコーティングしてしまおうと、プリントアウト用のシールも用意して、権利関係の問題がないかもお勉強した。
 そもそも”痛車”って著作権とかに抵触しないのか疑問に思ってたんだけど、調べたらやっぱり抵触するそうで”痛車”にしてくれる業者はちゃんと権利者に許可取って使用料払ってて、どの作品の許可を持ってるかなんかをリストにしていたりする。
 ただ”業”として儲ける場合は権利者の許諾が必要だけど、いわゆる”私的複製”として個人でシールつくって貼るぶんにはおとがめなしだそうである。要するに自前で痛リールにしても良いけど売っちゃダメよという線引きのようだ。かなり不可逆的に覚悟を持って”痛く”してしまうつもりなので売れるようなモノではなくなるだろうから権利関係は問題なさそう。

 さてそれではどんな作品のどの登場人物を使おうかと楽しく悩む。
 まず思いついたのが、アニメ「コードギアス」で、主人公に不思議な力を与える巫女である「C.C.(シーツー)」。リールが「2C」なので分かる人には分かるかなというネタ。
 ただ、コードギアスはメジャーすぎて”痛さ”が足りない。イマイチ冒涜感に欠ける。
 もっと痛いキャラクターでカワセミ関係とかイタリア関係、あるいはエリー関係で何かないかとウィキペディア先生におうかがいしてみる。カワセミ関係、エリー関係はピンとくるのがなかった。「御宿かわせみ」とか「八百森のエリー」じゃどうしようもない。しかし、イタリア関係は痛々しいのが揃ってる。
 例えば「ストライクウィッチーズ」のフランチェスカ・ルッキーニちゃんなんてのは、同作品最近自衛隊がポスターに使って物議を醸してたけど、パンツいっちょで空飛ぶ魔法少女とか公式がアレはズボンといったところでどうしようもなく救いようのない痛さがある。ルッキーニちゃんのおパンツは青のシマパンというのもカワセミっぽい色目で良い。
 でもこの作品を忘れてたらあかんやろというのがあった。「ガンスリンガーガール」である。イタリアを舞台にした美少女ガンアクションもので、年端もいかない少女達を政府の秘密工作機関が炭素繊維の皮膚や人造筋肉でサイボーグに仕立て上げて、テロ組織の鎮圧やら暗殺に使うという酷い設定の作品である。これが設定は痛いんだけど実に良い内容の作品で「好きでナニが悪い」とオタクなら開き直らざるを得ない傑作なんである。
 美少女も誰にしようかよりどりみどり。まあでもトリエラちゃんかな。人身売買でアフリカから売られてきて、変態相手のスナッフビデオに出演させられ、多分手足切り取られるとか酷い目にあったであろう出自が、あやしげな取引で我が家にきてこれからワシに陵辱されるリールと重なるモノがあるように思う。

 というわけで、ロングコートにウィンチェスターM1897のトリエラで決まりだなと思ってたんだけど、結局ようせんかった。
 やろうと思ってたときに先に手を入れてたマイコンNo.6で失態を演じ、モノが自分の手で壊れることの怖さを痛感してしまったのもあって、半世紀がとこを生き抜いたこのリールを覚悟を持ってブチ壊しにする腹づもりを決めきれなかった。ワシも実家に帰ってお母ちゃんのチチ飲んで出なおさなならんようですばい。この腰抜けめ!!
 いうて、ワシお気楽ブロガーとはいえ言葉についてはそれなりに覚悟して書くつもりはあるけど、造形とか視覚的な美の創造とかそっち方面はからきしで、ワシの手を出す分野じゃないとも思うのでまあしゃあないジャン。
 その分、気合い入れて今回も書きまくってみたので読者の皆様どうかお許しください。
 あと、もちろんワシゃ釣り人なので、リール使ってやることといったら本来魚釣ることなので、このリールが充分現役で実釣に耐えうるということを証明はしてみたいと思う。
 使ってぶっ壊れることに関しては、いささかのひっかかりもなく覚悟完了である。

2 件のコメント:

  1. こんばんは

    イタリアンリールとはディ.モールト良い!ですね。
    しかも元は350円とは(笑)
    アルチェードミクロンやらコプテスのマスコットやペリカンは一時期、スミスが国内での代理販売していたらしいので、その縁で国内中古市場に流れていたかもしれないですね。
    実釣レビュー楽しみにしています。

    参考までにイタリアンリールマニアのHP貼っときます。
    http://www.antipes.it/index.html

    地味にかなりのリール大国で面白いですよ。

    http://www.antipes.it/mul_Alcedo_CopTes_Mariner.html
    ↑ウォームギアにミッチェルのお家芸、プラナマスティックを組み合わせた夢のリールとかあります(笑)

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    1. おはようございます

       2CS問題なくシーバス釣れます。っていうかけっこう使いやすいです。
       イタリアンリールなかなかにやりますね。

       それ以上に、714Zが手にしっくりくる感じで、やっぱり私はPENN使いだなと改めて思ってるところです。
       ちょっと重量感を感じる頑丈な造りと、カチッとした機械的な性能と、そして見た目が金黒!!コレ重要。

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