2019年3月30日土曜日

保菌者一等賞!


 賽の河原で父母のために石を積む子供達は、積んだ石の塔を鬼に崩されるという。
 昔の帝政ロシアだかソ連だかの拷問では、穴を掘ってはその穴をまた埋めさせられたという。

 努力が何の意味もなく水泡に帰すとき、人は絶望感にさいなまれる。
 そんな酷いことが、この21世紀の未来社会においてもう平成も終わるというのにいまだ放置されているわけがないかというと、現実には往々にして生じているモノである。
 例えば病気などというものから人はまだ完全には逃れる術を知らない。懸命に治療やリハビリにあたったとしても”薬石効なく”な場合も往々にしてある。
 なんて思わせぶりな枕で書き始めると「ナマジの健康状態は良くないのか」とご心配いただくやも知れませんが、そっちの方はボチボチで心配するほどのことはなくまあ良くも悪くもないんだけど、スピニング熱のほうが、また熱がーッ!!っていう感じでぶり返しており、桜も咲いたしシーバスも釣れ始めたし(ヘラはデコったけど)で、もう大丈夫だろうと思っていたのに、いとも簡単に再発してしまっている。

 管理台帳によると2月からこちら11台を買ったりもらったりしつつも、9台を売りさばいたり人様に進呈したりして、いまネットオークションにかけているのが既に入札されていることもあり、やっと目標の90台に収まる予定だった。
 その後は欲しいリールが出てきたら、棚卸しで使い切れないぐらい備蓄があることが判明したスピンフィッシャーを放出していけばいいやという感じだったのだけど、既に今週1台買ってしまい91台、ネットオークションで入札中のが1台と即決で買おうかどうか迷っているのが1台と、また収拾つかなくなりそうな物欲が爆発している。

 それもコレも写真の1台が原因で、その名も「キャリアーNo.1」ときたひにゃあ、キャリアーって病原菌の保菌者の意味だったのかよ?と偶然にしても皮肉が効いてるなと思う。
 なんで、既に持ってるのをまた買ったのかと、またナマジは”大事なモノには予備が必要だ”とかいって同じの何台も買い集める悪癖が出たか?と思うかも知れないし、それもあるんだけど、仕方なかったんですよ。


 だって、コイツ1,296円だったんですもン、奥さんそりゃ買っちゃいますよネ~。

 例のマイコンNo.6を買った中古釣具屋のワゴン、そう毎回掘り出し物があってたまるものかと思ってたし、それなりの掘り出し物があっても、もう手を出さないぐらいには病状収まっていて、別の中古屋ではD・A・M社のリアドラグの小型スピニングがワンコインぐらいで売ってたのも、これはアワせてもカラツン!とばかりに手を出さなかったぐらいである。
 でも、高いリールの陳列棚から眺めていって、ゴミスピワゴンに視線を移していくと、どうにも我が家にもあるキャリアーっぽく見えるリールがある。心臓がドクンと高鳴るのを努めて冷静に「樹脂製で黒い無塗装に赤い文字のシールなんてのは安リールに良くある良くある」と落ち着かせながら、殺気が漏れないように気取られないようにとスルスルッとそちらに音も立てず忍び寄っていってシュパッと手に取ると、どう見てもキャリアーNo.1である。
 でもお高いんでしょう?と値札を見ると、ワゴンにぶち込んであるんだから大した値段なわきゃァなくて、もう一度書くけど1,296円のゴミスピ一歩手前の価格。
 おかしいでしょ店員さん!と抗議して値段を高く付け直してもらいたくなる混乱した衝動を抑えて、震えそうになる手を押さえながらレジへ急ぐ。
 へっへっへっ、金払ろてもうたらもうワシのモンや、今更返せっちゅうてもそれはデキひん相談でっセ。と、再開発計画で値上がり確実の土地を老夫婦からかすめ取った地上げ屋のような下卑た満足顔で店を出た。

 キャリアーで人気があって何万円もするのはもう一つ小さいSSサイズだけど、No.1だって悪かないし、正直特定の機種だけ異様な値段が付いているのを見るとバカバカしく思う。とはいえ弾数多くなくネットオークションとかでもあまり見かけないキャリアーのNo.1がたまたま中古屋で安く売ってるなんてのは驚き以外のなにものでもない。
 意外にSS以外は値段付かないのでオークションにもかけないだけで中古屋とかではワゴンに並んでよく売られてるんだろうか?そんなわきゃないよね。

 キャリアーは弾数少ないから入手しにくいかも知れないけど、タックルオートとかタックル5あたりのNo.1サイズって上手くすると2千円切るぐらいで入手可能で、かつ渓流からバス釣りからフッコ釣りぐらいの軽めの塩水の釣りまで、ルアーなら身近な釣りをだいたい射程に収める汎用性の高さがあって、絶対いま安くてそれなりに弾もあるうちに買って損はないように思う。値が上がって転売したら儲かるとかいう意味じゃなくて、安く”使える”リールが手に入るっていう意味でね。
 まあ、どのぐらい使えるかってのは、ナマジのフィルム時代の懐かしいの釣果写真達でご確認を。ワシもなかなかヤルもんやな。放流してるヘラごときでデコって凹んでると自分がド下手クソに思えてくるけど、そこまで悪くないヤね。

 キャリアー2台目が手に入り、なんとスペアスプールありの体制が整ってしまった。
 しまったんだけど、実は以前からキャリアーもう一台は手に入りそうにないけど、同じスプール使ってそうな樹脂製のマイクロセブンC1なら入手できそうだなという思いはくすぶってて、マイクロセブンCシリーズもそれほど高”値”の花というほどでもないので買っちまおうかと悩んだけど、90台に収めなきゃならんし止めておこうといったん症状落ち着いてたのに、キャリアーが呼び水になってまた欲しくなってきてしまっている。スプール交換はたしてできるんだろうか?私気になります!

 そうやってもう少しで目標達成だった目論見が脆くも崩れ去ってしまうと、アタイもうどうでもイイの、とハスっぱな台詞を吐いちゃう自暴自棄な気持ちも芽生え、シャブ中がなかなかシャブ止められんように、良くないことだと分かっているのにネットオークションでポチッと入札したりしてしまうのである。
 今の世の中は部屋に居ながら、それこそ世界中からお買い物ができるという、おそろしく欲望をかきたててくる世界になっている。まさに未来に生きているなと感じる。
 もういっそ、海外のオークションあたりで段ボール箱いっぱいに詰まった緑色のスピンフィッシャーとか老後の蓄え切り崩してドカンと買っちまって、チマチマ整備して売っていこうかとか考えてしまったりもする。
 しかし外国のスピニング熱患者にもモノすごいのがいるなァ。
 ワシの部屋の安ダイヤがいつの間にか増えてるのぐらいどうってことない気もしてくる。タックルAがいつの間にやら3台に。うち2台は送料入れると2000円ぐらいかかってて今回のキャリアーNo.1より金かかってるという冗談のような事実。
 さすがに、タックルAよりキャリアーはしっかり作られているしモノとしてのデキは違うようにワシでも思う。


 ちゅう感じでスピニング熱治りませんッ!もういやッ!!

2019年3月23日土曜日

異邦人狂詩曲


 全国50人くらいのナマジファンの皆さんスイマセン、今週もスピニングリールネタの予定だったんだけど、だいたい予想通りに釣りが忙しくなってきてくれてて、長々とクドクドと冗長にネチっこいナマジ品質の記事書いてる暇が作れずスピネタお休みです。

 実際に釣りに行けるのは体力的な限界もあって週2か3ぐらいなんだけど、魚釣れるといろんな情報が得られるので、次の戦略を練って備えなければならなくなり、浮子やらルアーやらを増産掛けたり新作作ったり、ライン巻き替えたりハリス結んだりとやることはいっぱい出てくる。

 ヘラ釣りの方は、完全に春っぽい釣りになってきて、魚の多い公園池では”釣れすぎる”状況になってきたので、次回から魚のうっすーい管理池で、今年こそキッチリ釣り込んでみたいと決意も新たに準備している。桜の咲く頃2年前に始めたヘラ釣りももう3年目に突入する、もう初心者じゃないし、基礎からきっちりクンフー積んできたという自負もある。
 数はやっぱり半日やって5~10釣れるぐらいの適度な難しさの時が一番面白いように感じる。それ以上の自分に不要な魚を釣る必要はあんまり感じない。
 公園池、なぜかここ何回かうどん系の刺し餌食ってこなくて両ダンゴが好釣だったので両ダンゴの修行が予期せず進んでしまい、新しく得た知見をふまえて両ダンゴ用の浮子など増産してみた。
 基本、浅棚の両ダンゴ用の浮子は、足が長くてスマートなタイプが多いようで、そういうのを作ってあったんだけど、魚が上ずって餌が上の棚でつかまるようになると、立ち上がりが早いはずの足の長い浮子が意外に立ち上がってこない。
 たまたまペレット配合系の重い餌を支えるためにトップ太く長くという浮子も作ってあったので使ったら塩梅良かった。
 足の長い浮子は立ち上がり始めるのは早いし小さな力で立ち上がるけどユックリと立ち上がる、対して足が短かい浮子は立ち上がり始めるまでは遅いけど立ち始めると早いという浮子作りの基本があるようだ。加えて足を短くするとその分浮子自体は軽くなって、それとバランスするオモリが当然重くなるので、餌を引っ張って早く沈んでくれるという要素も絡んで、足短めでトップも中空パイプで浮力があって軽い浮子の方が、表面張力だの上下の重量バランスだのも含めた総合的な釣り合い方で、餌が上で止められる状況では結果的に早く立ち上がって早いアタリがとりやすいという結果だったのかなと推測している。
 写真右が好釣だった「パ45太」で左は一般的なバランスで細いパイプトップで作った「パ45」。この二つを比較して浅棚における浮子の立ちやすさ早さなんていうのも検証してみようと思う。
 多分餌がオモリより下にある時点で食ってくるなら、ハリスが下に引っ張られる方向に魚の影響がでてトップ軽く足長くな左の浮子の方が良いとか、状況によって差が出るんじゃないかと思っている。
 かつ、今の主流の浮子というか釣り方が、あまり早いアタリをとらないナジミ込んでいく途中の釣りを想定していると考えると、逆の早いアタリに特化した浮子と釣り方は、そういう狙われ方していない魚が多いかもしれず、玄人衆を出し抜ける手札となり得るんじゃないかと期待している。
 管理池のほうは魚が少ないので、昨シーズンまでは回遊してくる魚をじっくり待てる底釣りを中心に釣りを組み立てていたけど、今期は周りに”寄せ負け”しないように速いテンポで餌を打っていく浅棚や提灯の釣りを重視してみたい。
 あと、魚少ない分型は良いので、ハリスを0.3号中心から0.4号中心、0.5号もということで、底釣り用のは両ダンゴのハリスも昨年のがあったけど、浅棚用のハリスはなかったのでだいぶ結んだ。
 首尾良く釣れると良いんだがどうなることやら。

 その前に、今日からシーバス3連戦で、そろそろカワゴカイ系のバチパターンは終わりそうな時期なのに加え、だいぶ釣り人にも叩かれバチも食べ慣れて食い方が弱く、選球眼も厳しくなっているハズなので、いつもの中ニョロだけでなく、いくつか投げる予定のルアーを用意して追加で作ったりしたところ。準備おさおさ怠りないつもり。
 基本的には一番上、いつもの中ニョロは引き続き先発ローテに入ってもらい、やや軽くて動きがない「お手元ルアー」と「F改」で中軸担ってもらおうかと思ったんだけど、F改の在庫が心もとなくなってたのでラパラF9は在庫まだまだあるので改造しようかと思った。けど、過去のは鉛使って重量をゆっくり沈むぐらいに調整してたのを”鉛フリー”でスズハンダとかでとなると鉛より沢山埋め込まねばならず面倒くせえ、タングステンの錘でも使うかと思ったけど、そういえば昨秋好釣だった「自作シンペン」は”動かない動き”といいボリューム感といいF改と同等だったなと思い出して、秋のイナッコが餌の時用のより細めのを増産してバチでもハクでもドンとこい仕様のを用意してみた。ちなみに写真では一番下。
 今日は雨が降らないなら下流エリアの砂州ポイントあたりで始めるつもりだったけど、雨が降るなら釣り人も減るだろうからカワゴカイ系の抜ける2本目橋下に入って、最後過ちポイントも要確認という作戦。

 てなことをやりつつ、復職向けたリハビリメニューも意外に真面目にこなしてて、マスクしながらジョギングも週2で続いているし、電車で出かけて机仕事想定してどっかで時間潰して帰ってくるというのも続けている。ヘラ釣りでも痛感するけど、まだ8時間座ってる体力集中力がないのよね~。困ったもんだ。と人ごとのように思っておく。
 春分の日は、久しぶりに同居人と映画など見に行ってみた。人混みと映画の長い時間集中して観ているのが疲れたけど、「ボヘミアンラプソディー」とても良い映画で楽しめた。
 英国の伝説的バンド「クイーン」を題材にした映画で、評判良いのは聞いてたけど、期待を裏切られずにすんだ。
 多分、私は直撃している世代よりちょっと下の年齢なので、思い入れが強すぎることもなく、素直に作品世界に入って行けたように思う。
 傑出した才能の持ち主がありのままに生きる、その難しさや苦悩や孤独について描きつつも、良い塩梅に暖かい物語に仕上がっていた。
 クイーンあたりのいわゆる「洋楽」って、JOSさんが大好きで、釣り場への行き帰り車の中では「クイーン」「ディープパープル」「ポリス」あたりが良く流れていたのを懐かしく思い出す。あとツーテンの虎ファンさんの車内にはだいたい「ボブ・マーリー」か「六甲おろし」が流れていたのも懐かしい。
 まあでもマンガオタ的には「キラークィーン」とか「バイツァダスト」とかが流れる度にジョジョを思い出すんだけどね。
 クイーン関連商品も売り上げ好調で楽曲ダウンロード数とか凄いらしいけど、野中先生がすかさず便乗して「魁!!クロマティ高校」の外伝描いてるのには腹抱えて笑わせてもらった。クイーンファンの皆様はフレディ出てくるけど「クロ高」読んじゃダメ、絶対!!
 なにしろ巨人史上最強の外国人助っ人の呼び声も高いウォーレン・クロマティー氏に訴訟起こされたという伝説級のバカマンガ。ワシャ好きやけどな。
 
 てな感じでユルユルとしつつもそれなりに忙しくて、リールいじるのは後回しにしてて、かつ昨日もリール1台人様に進呈したりもしてて、やっと目標の90台まで後1台に迫り順調に数を減らしており、スピニングリール熱は”峠を越えた”と思っちょります。
 油断してまたぶり返さないようにしっかり魚釣って養生していこうと思います。
 スピニングリールネタはあと2つぐらい残ってるので、また書くので楽しみにされていた方はしばしお待ち下さい。

2019年3月16日土曜日

翡翠の輝きも悪くない



 水辺で鳥たちを眺めるのは楽しい。

 さすがに目の前でカワウに操業されると「後から来て割り込むのは勘弁してくれよ!!」と、ここでも思ってしまうのだけど、鳥には鳥の理があり人間の理とは別のところで動いているのでしゃーねェっちゃしゃーねぇ。
 カワウが生きていけるぐらいに魚が沢山居る釣り場で釣りたいなら、カワウの襲撃ぐらい織り込み済みで釣りを組み立てるのが正しいんだと思う。ヘタクソでも釣れるように魚ジャブジャブ天然の水域に放流したりしたら、ワラワラと捕食者が寄ってくるのは当たり前。その当たり前の自然の理をねじ曲げてまで欲をかくのは不自然で歪だということに、いい加減気づけよとしつこく書いていく所存。そういうのは「箱」とかの管理できる限定された水域でやっとこうぜ。
 そういう所があっても良いけどジャブジャブ放流しなきゃ川に釣る魚が居ないっていうなら、川の環境や生態系がおかしいってことだろう。そのへんどうにかしようよ、いいかげんさ。

 カワウのような積極的に潜水して魚を追い回す鳥とは漁場が競合すると、どちらかが退散するしかないけど、同じ魚を食べる鳥でも待ち伏せ型の鳥とは隣り合った釣り座?で仲良く操業することもできる。
 都会の鳥って、人間には慣れているのでっていうか、いちいち人様にビビってちゃ商売あがったりなので、警戒してどっかいっちゃて「邪魔してゴメン」ってなることもあるけど、意外に平気で良いペースで着実に水揚げ重ねてたりする。写真撮ろうとカメラ向けると視線を感じるのか飛んでったりするけど、良い釣り座はそうそう諦められないのは彼らも同じようだ。
 ちなみに”鳥見の人”に聞いた話だけど、カメラのファインダー覗かずに済むデジカメになってモニターを横目で見ながら撮ると意外に逃げられないとかも聞いてナルホドナと思わされた。
 
 シーバス釣りのときに夜間操業するアオサギかゴイサギが釣り場にいると、確実に餌になる小魚が寄ってる証拠であり期待が高まる。特にアオサギは大きくて格好いい鳥なので自分の中では”幸運の青い鳥”(実際はその名に反して灰色だけど)的な位置づけである。
 でも一般的には、最近は都会でも珍しくないぐらいに身近になって、まさに”青い鳥”な人気者といったらカワセミで異論はないだろう。
 高度経済成長期に、魚も棲めなくなった水辺が、排水基準とかの規制が効いてきて、魚がいくらか戻ってきてという、自然環境の改善を象徴する存在であり、人もどのみち汚染された自然環境では生きにくいはずなので、まさに”幸せの青い鳥”じゃなかろうか。
 カワセミの名前の由来は”川に棲んでる背中の美しい鳥”という説があるようで、その背中は金属的な青さでキラめいている。羽は緑にお腹が橙色とじつにオシャレ。
 クチバシがアンバランスなぐらい大きくて3頭身ぐらいのゆるキャラじみた愛らしさ。
 漢字で書くと翡翠とも書く。そう宝石の翡翠(ヒスイ)と全く一緒。
 学名はAlcedo atthisで今回調べて初めて知ったんだけど、欧州産も日本のと同一種とされているようだ。まあ鳥は空飛んで海越えられるから飛べない生き物に比べると分布は世界的になっててもおかしくないので当たり前といえば当たり前か。
 でも、日本の釣り人が水辺で親しんでるカワセミと、イタリアの釣り人が同じように”アルチェード”に親しみを覚えているというのはなんとなく親近感が湧いて楽しい気分だ。

 長い枕で、読者の皆様今回スピニングネタじゃないのか?といぶかっていたかもしれないけど、もうおわかりですね。そう「アルチェード」でっせ。
 「なんだと、ナマジが好きなのはPENNだの大森だのの実用機か誰も欲しがらないようなゴミスピじゃなかったのか?アルチェードなんてイタリア製の名機じゃないか、この裏切り者!!ころびやがって!」とお怒りの皆様、イヤイヤ違うんです。弁護士はまだ呼ばんでいいけど、刑事訴訟法第203条に基づきまずは弁解の機会を与えて欲しい。
 コイツはSUZUKIさんからご厚意でいただいたモノで、スピニング熱が長びいている私を心配してさらなる重石を乗せて沈めようと、じゃなくてお見舞いとしていただいたもので、人様のご厚意をむげに断るわけには行かず仕方なく頂戴したモノなんです。
 嘘です、「ブログネタにできそうなら差し上げますよ!」というメールに、一応「そんな高価な物をいただくわけにはいきませんよ」的な心にもないことを返信に書いたけど、よだれ垂らして欲しがっとりました。
 なんと、某中古屋で350円ぐらいだったので気にしないでくださいとのことで、ありがたく頂戴することとして、さすがにもらいっぱなしというのも気が引けたので、こっちからも相応のブツを出さないとこの勝負負けるッ!と別に勝負じゃないけど思ったので、350円のアルチェードには勝てないにしても、我がごみスピえぐり歴でも会心の一撃であった500円の大森ダイヤモンド「オートベールNo.1」を持って取引の場である、とある岸壁に臨んだ。取引の様子は2月22日の釣行顛末記で確認されたい。
 この冬大森熱再燃しているらしいSUZUKIさんにも共に沼に沈んでもらわねばなるまい。自分だけ重石手放して軽くなって、足洗って堅気に戻ろうなんざぁ赦してちゃこの業界生きていけやぁしませんゼ。
 オートベールはベアリング2個も入ってる高級ダイヤモンドだし、ワンタッチスプールはタックル5やタックルオートとスプールの互換性がないので余らせ気味だったこともあり、こういう”お使い”任務にはもってこいだったので「頼んだぞ!」と行ってもらった。


ということで我が家にやってきました”アルチェード”。ご覧のとおりギアが入って丸く飛び出しているところにカワセミのレリーフが入った銘板が付いてたのが剥がれていて、それが350円程度というゴミスピ価格の遠因だろうと思うけど、銘板なくてもスプールにも「ALCEDOーMADE IN ITALYー」と書かれていて、値段付けた店員は知識が足りないというよりは、この手の古リールでわざわざイタリアからの輸入品ならそれなりの値段かもと、検索するなりして相場を調べるという仕事の丁寧さに欠けているわけで、中古屋の店員としては程度が低いと書かざるを得ない。おかげで手に入ったんだけどさ。
 アルチェードといえばワシらオッサン世代の元バス釣り少年なら、経典である「ブラックバス釣りの楽しみ方」でオープンウォーターのためのスピニングリールとしてカーディナル、ミッチェルとともに紹介されていたのが印象深いだろう。ていうかそれ以外にほとんど見たことない。カーディナル使いはJOSさんが渓流では見事に教科書通り右手人差し指でラインの放出調整しながらバシバシとピンポイントキャスト決めて釣っていたのが印象深いし、ミッチェルはケン一が高校のときバスプロショップスで個人輸入(って当時は言ってた)してナマジ君がベール手で返して壊したっていうぐらい、釣り場やら売ってるのやら目にしたけど、アルチェードはずっと後になって中古釣具屋じゃない”オールドタックルショップ”で良い値段付いてるのをみかけたぐらいで、我々世代よりちょっと上のそれこそ則さん世代の釣り師が使ってたリールなんだろう。
 その中でも、一番人気あったであろう小型のアルチェード「ミクロン」じゃなくて、コイツはちょっと大きいアルチェード「2CS ERIE」通称「2C」と呼ばれる機種でカーディナル、ミッチェルの2大舶来インスプールに比べマイナーなアルチェードでもまた地味な機種ではある。ということでナマジが手にするのもお許し願いたい。

 ”ALCEDO”の読み方としてはアルセドとか書かれていることもあるけど、まあイタリア語の読みなんでカタカナ表記はどうでも良いかなと。ワシら元バス少年にはアルチェードがなじみ深いのでそう書くことにする。さすがイタリア語は読み方が失われているらしい”ラテン語”の正統な後継筋にあたるらしいので、カワセミの属名ラテン語表記と一緒の単語がイタリア語でもカワセミなんだな、というのも雑学的には楽しめた要素。


 ま、我が家においでいただいたからには何はともあれ歓迎の分解清掃といきたい。
 まずはスプールからとドラグノブ外してみると、確か読んだことあったけどドラグが金輪でハメ殺しになってて、油注すぐらいしか手入れのしようがないなという感じ。だけど、なんかスプール裏の座面にもワッシャーが3枚入ってて、繊維質のワッシャー二枚で金属のワッシャー1枚を挟んでて、それなりに直径も大きく多分一緒に回るので1枚のドラグパッド的に効くんじゃないだろうか?ハメ殺しの下のドラグの構造がどうなってるのかは知りようがないんだけど、案外本命のドラグパッドはコッチだったりして?いずれにせよしっかりドラグは機能してて、ドラグ性能なんてのは半世紀から前のイタリアンリールでさえ既にちゃんとしたのが搭載されてて、今頃になってそんな当たり前の機能をことさら宣伝しなきゃならんってのが、ドラグのなんたるかを知らなかった日本の釣り人相手に長くいい加減なドラグで売ってた日本製リールのそれまでのお粗末さを示しているように思える。それが今じゃ、あつものに懲りてで、実釣において不要なまでの過剰なドラグ性能を備えてたりして、まあこの国の釣り人は相変わらずドラグがなんなのかなんてほとんどの人は知らんのだろうなというのが良く分かる。なーんて本当のことを書くとシラけちゃうからあんまり書かんほうが良いのか。

 お次は蓋をパカッと開けて、ギア行ってみましょう。
 ギアはウォームギアで、ほんとにハンドル軸のギアの分本体が丸く膨らんでるってのがよく分かって笑える。ただ、ギアの軽量化で穴が空いてたり、ウォームギアといってもローター軸のギアが真っ直ぐの筒に床屋のグルグルみたいに歯を切ったものではなく、ハンドル軸のギアの円弧にあわせて微妙にカーブさせて広い範囲でギアとギアを接触させているのとか、なかなかにイタリアの職人さん良い仕事している感が漂ってるのである。
 ローター軸のギアの方、途中に油溜まりのくぼみもあったり傷が入ってる部分もあったりするんだけど、一点で接触してるんじゃなくて円弧に沿って面状に接しているからか、回転はゴロゴロしたりせず滑らかで、ギアがある程度傷ついたりしてもちゃんと機能するように、長く使うことを念頭に設計されてるんだなと感じる。
 その分巻き取りが重いのかも知れないけど、巻くのがかったるくなるほどじゃないし、どうせ釣り場じゃ抵抗のあるルアー引いてるんだから多少の巻きの軽さに何の意味があるんじゃ?50年から経ってギアに多少傷入っても使えるタフさの方がワシにはよっぽど金払う価値があるように思えるんじゃがどうじゃろ?
 ということで、実釣を想定して外してパーツクリーナーで古いグリス落としてグリスシーリングしちゃいたかったんだけど、ハンドル軸のギア外すにはハンドルの根元の金輪をマイナスドライバーで外す必要があるようなんだけど、小さい穴にドライバー突っ込まねばならないようになってて手持ちの眼鏡用の細いドライバーでは力がかけられなくて回せず、とりあえずグリス固まって動かなくなったりしてないので、追加でグリスちょっと足すのと注油で済ますことにした。
 ギアの分解清掃にこだわらなかったのにはもう一つ理由があって、コイツのベアリングはローター軸のギア直上に2つ入ってるんだけど、開放式っていうのかミッチェルと同じで分解したら玉が転がり出てきてなくしちゃいそうな形式で、ちょうど良い回り具合に締めるコツとか難しそうで、当初はそういう難しいのも練習だしやってやろうと思ってたけど、前回書いたマイコンNo.6の失敗で自分の過ちで貴重な稼動個体がゴミになってしまうのが怖くなったのもありベアリングも注油だけで現状保持を優先させた。ワシも人のことはいえず、あつものにこりてナマズを吹いているんである。

 ベールアームは180度近くすんごい角度まで開いてどの位置でベールを起こしても投げるときのフェザリングとかによるライン放出の調整を邪魔しないようになってるんだけど、そのためのベールスプリングがなんと数えたら8重にも巻いてあって、大きく開く分丈夫なバネを入れてるんだなと、ここでもイタリア職人の意外なぐらいの真面目さに、デザインと美食だけだと思ってたイタリアという国をちょっとというか大幅に見直すのであった。
 ドイツの酒場でドイツ人が日本人観光客と仲良くなったときにくり出す定番のネタに「日本人は最高だな!次やるときはイタリア抜きでやろうな!!」という、今時言ったのがバレたら社会正義の戦士(SJW)様につるし上げ食らいそうな不謹慎ネタがあるんだけど、こういうリール見るとイタリア仲間はずれにしなくても良いんじゃネ?と思う。料理は間違いなく世界有数に上手いし美味いしナ。
(こういう戦争を肯定するかのような不謹慎なネタを匿名で書くのは卑怯だ!けしからん!!とSJW様はお怒りになるだろう。私とて先の大戦で日独伊の枢軸国はもとより連合国側も酷い過ちを犯したことは明白だと思っていて、その戦争行為を肯定するつもりは毛頭ない。なくても、限られた読者しかいないネットの片隅のブログでも、それを読んで不快に思う人が居るだろうことも想定している。それでもなお、この程度の黒いネタすら書いちゃいけない”言論統制”された世の中なんてまっぴらゴメンだと思うので、不快に思われた方がおられたら素直に謝罪する用意はあるけど、吐いた唾飲み込んで書いたことを撤回するつもりはない。覚悟決めて書いてるつもりなのでご容赦を。ヒトラーが言論統制で本を焼き始めた時に「本を焼くようなヤツらはそのうち人を焼き始める」と予言した哲学者だったか文学者がいた。言論というのはおおよそ人間の本質の一つと言って良いと思う。それを規制したり無理矢理歪なものにねじ曲げたりする輩は、人間そのものを規制し無理矢理歪なものにねじ曲げようとしているのだと危機感を持って認識するべきだと思っている。)

 そして、このリールの最大の目玉だと私が思うのがラインローラーである。
 ダイヤモンドリールにはダイヤモンドが使ってあるわけじゃない。
 アルチェードにも翡翠が使われているわけじゃない。そもそもアルチェードにカワセミの意味はあってもヒスイの意味はないだろう。
 ただアルチェードのラインローラーは”瑪瑙”製!!
 メ・ノ・ウでッセ!仏教七宝の末席飾る宝石でっせ。まーイタリア人はシャレオツだこと、って話じゃなくて、実は宝石の硬くて摩擦に強く滑りが良いという特性はSICやらがない時代にはロッドのガイドとかにも使われていたりもしたんである。さすがにダイヤモンドを輪っか状のガイドに加工するとかは技術的にか経費的にかやられてなくて、ダイヤのリングは女性のあこがれだかなんだか知らんけど、リングっちゅうてもそういうう意味じゃない!
 ダイヤモンドリングガイドは見たことないけど、ある程度硬くて加工もできる”宝石”はリング状に加工されて実際に竿に取り付けられていたりするのである。
 ルビーガイドなんてのが代表で、そんなオッソロしい高級ガイドの付いた竿おいそれとは振れやん庶民的な私だけど、実は似たようなガイドにはお世話になってて、ルビーってじつは酸化アルミニウム(アルミナ)の一種なんだそうで、我々釣り人にお馴染みのハードガイドとかのお仲間だそうな。他にもサファイヤやコランダムなんて宝石も酸化アルミニウムだそうな。
 アルチェードのラインローラーはメノウという話はわりと知ってる人は知ってる有名な話で、TAKE先生が知らずに「この透明な樹脂はなんだろう?」とカッターの刃をあてる話を読んで、心の中で「先生ヤメテ~」とセクハラ教師に迫られ貞操の危機的な美少女のように叫んじゃったのアタイ。
 まあ漠然とルビーガイドとかと一緒かなと思ってたけど、今回調べてみたらちょっと違った。メノウは水晶とかのお仲間で二酸化ケイ素が主な成分だそうな。ケイ素っちゅうと炭化ケイ素である”SIC”ガイドを思い出すわけだけど、そこまで硬くないようだ。でも硬くて摩擦には強いし滑りも良さそう。
 にしてもまごうことなき宝石でっせ。ワシ宝石なんて時計に入ってる水晶ぐらいしか持ってなかったから気持ち的には初ジュエリーでんがな。ちなみに水晶の入った時計って成金趣味の宝石が文字盤にゴテゴテ付いたヤツじゃなくて、振動子として水晶使ってるいわゆる普通のクォーツ(水晶)時計のことね。わし時計も質実剛健なのが好きだからセイコーのダイバーズウォッチをもう30年近く使ってる。
 っていうメノウなんて高価な素材を使ってるのが伊達や酔狂じゃなくて、もちろん成金趣味でもないのは、緩み止めを填めた引っかかりの少ない丸い頭を持った六角ナットや、樹脂製ワッシャーで隙間なくかつちゃんと回るように調整されたラインローラー全体のきちんとした造りや、ラインが引っかからないように絞られて曲面で構成されたベールワイヤーとの接続部分とかを見れば分かる。ラインの縒れとかなくラインを痛めないように丁寧に作られている。

 そういうふうに素材も良いのを使ってて高級感あるし、造りも職人さん良い仕事してるしだけど、なんといってもこのリールを手にした釣り人は、その造形の個性的な良さに痺れて、カーディナルやミッチェルともまた違う趣のあるこのリールを持つことに喜びを感じただろうことは想像に難くない。
 ドラグノブがベンツマークみたいな三本の足でリングを支える形とか、全体ベタッと覆ってしまう丸いのより軽くしていると共に、デザイン的にはスプール上面のメイドインイタリーとかのロゴがオシャレに覗いている格好良さで個性的。
 本体のギアの部分が丸く出っ張った”お腹”の感じとかリール全体として木の枝に止まってるカワセミの可愛らしさが思い起こされる可愛いデザインだとおもうし、出っ張ったお腹の分ギアが大きくてギア比高く巻き取り速度が高速化しているという機能面に由来した造形でもあり、上手いデザインだなと改めて見惚れる。
 イタリア人のデザインってどうにもやっぱり格好いい。典型が車なんだろうけど、フェラーリはまだ正統な欧州車的格好良さだけど、ランボルギーニとかになるとちょっとぶっ飛んだ唯一無二のこれぞイタリアンデザインという格好良さになってくる。

 そう思うと、渋いカワセミのレリーフの銘板が落ちているのはちょっと惜しいなと思えてきて、カワセミをあしらったコインとか大きさ合うの見つけて貼り付けちゃおうと、ネットでカワセミコインを探してみたら、あったあったオーストラリアのワライカワセミのコインがある。属が違って学名Dacelo novaeguineaeだけどそこはカワセミ科Alcedinidaeだし目をつぶることにして、直径5センチに近いと良いなと大きさ調べてみたら残念ながらこれ何かの記念コインのようで1オンスもある銀貨でダメだこりゃ。

 ウーンどうしようか?適当にカワセミの写真加工してシールにして貼り付けるとかでお茶濁すか?とか考えていて、ふと「イタリアンリール、つまりイタリールなんだから痛リールにしてしまおう」と思いついた。
 マンガやアニメのキャラクターを車全体にあしらった「痛車」のリール版である。
 ハッキリいって半世紀を生き抜いて現存するアルチェードに対する冒涜である。でも批判を浴びてでもやる意義があるのではと思うところがあった。
 ここのところ毎日ネットオークションにかけられる沢山のスピニングリールやパーツなどを見てきた。その中でどうにも赦せない改悪を施されたリールや醜悪としかいいようのないドレスアップパーツを見るにつけ、どっかで誰かが「あーカッコ悪ぅ」と指摘してやらねばならんという気がした。
 今時のリールにゴテゴテとしたドレスアップパーツが付いていてもなんとも思わない。あんまり興味がないし今時の似たようなリールを個性的にするにはそういうのもありかなとも思う。昔遊漁船の竿立てで迷子になりそうだったPENNにカスタムパーツが豊富に作られてたのも機能面だけでなくそういう意味もあったんだろうと思っている。まあワシゃペイントマーカーで名前書いたけどな。
 ボロボロになった個体のリペイントやら部品の自作やらは私もやってるけど次善の策的にしゃーあんめぇ。そうやって大事に使っていくことには意義もあるし、独特の味わいも出てくる。
 機能面を向上させるカスタムパーツも理解できる。軽いスプールやら釣り人それぞれの手に合ったハンドルノブとか釣りを快適にしてくれるだろう。
 ただ、カーディナル3とかの名機に、本来の質実剛健な実用機のもつ美しさを損なうような悪趣味な勘違いしたドレスアップ?パーツが売られているのとかを見ると、ほとんどそれは陵辱ではないかと憤りを感じるのである。アタイがリールなら泣いて「そんな恥ずかしい格好するぐらいなら舌噛んで死ぬ!!」って言っちゃうわ。
 歴史的な名機に冒涜的な装飾を加えることがどれほど不快か、そういう勘違いを喜んでやってるヤツらに目にモノ見せてやる。というのが罪を犯す1つめの理由。
 もう一つの理由が、既にある素晴らしい造形を修復するのではなく、新たに手を加えて越えるためには、生半可なごまかし程度では全く用をなさず、一旦ブチ壊すぐらいの勢いで覚悟を持っていかないと陳腐なモノにしかならないと思ったからである。
 渋谷駅に近年メキシコだかで発見されて、岡本太郎先生の大作「明日の神話」が修復されて公開されている。この作品に3.11の後に福島の原発の爆発した様子を描いた作品を付け足した自称芸術家集団がいた。
 草葉の陰で太郎先生激怒していることだろう。ご自身の作品を汚されて怒ってるのではない。太郎先生、万博のときに「太陽の塔」に立てこもった過激派だかが現れたのを見て、自分の作品を使って自己表現をしようとする人間が居るというのも実に面白い。創って手放した作品はその後壊されようがどうしようがかまわない、そいうった新たな関係性が生まれていくことがまさに芸術だ、的なことを言って非常に喜んでおもしろがっておられた。
 「福島の原発事故に怒りを覚えて、それを私の作品を使って表現しようとしたのなら、なぜ私の作品にその剥き出しの怒りをぶつけて、作品を壊してしまわないのだ!その程度の怒りや覚悟で新しいモノなど生まれるか!!」と目を剥いて面罵するだろう。
 あとで付け足した部分をちょろっと取り外せば元通り、そんなに悪いことしてないでしょ?ボクらも太郎先生のことはリスペクトしてるからね。なんていう甘っちょろい姿勢で表現などするなと説教したい。そんなものはオママゴトでしかない。家に帰ってお母ちゃんにおチチでも飲ましてもらってろ。
 
 というわけで、元々填まってたレリーフの位置決めの出っ張りも削って平面にして、おもいっきり冒涜的にデカデカとシール貼ってエポキシかウレタンでコーティングしてしまおうと、プリントアウト用のシールも用意して、権利関係の問題がないかもお勉強した。
 そもそも”痛車”って著作権とかに抵触しないのか疑問に思ってたんだけど、調べたらやっぱり抵触するそうで”痛車”にしてくれる業者はちゃんと権利者に許可取って使用料払ってて、どの作品の許可を持ってるかなんかをリストにしていたりする。
 ただ”業”として儲ける場合は権利者の許諾が必要だけど、いわゆる”私的複製”として個人でシールつくって貼るぶんにはおとがめなしだそうである。要するに自前で痛リールにしても良いけど売っちゃダメよという線引きのようだ。かなり不可逆的に覚悟を持って”痛く”してしまうつもりなので売れるようなモノではなくなるだろうから権利関係は問題なさそう。

 さてそれではどんな作品のどの登場人物を使おうかと楽しく悩む。
 まず思いついたのが、アニメ「コードギアス」で、主人公に不思議な力を与える巫女である「C.C.(シーツー)」。リールが「2C」なので分かる人には分かるかなというネタ。
 ただ、コードギアスはメジャーすぎて”痛さ”が足りない。イマイチ冒涜感に欠ける。
 もっと痛いキャラクターでカワセミ関係とかイタリア関係、あるいはエリー関係で何かないかとウィキペディア先生におうかがいしてみる。カワセミ関係、エリー関係はピンとくるのがなかった。「御宿かわせみ」とか「八百森のエリー」じゃどうしようもない。しかし、イタリア関係は痛々しいのが揃ってる。
 例えば「ストライクウィッチーズ」のフランチェスカ・ルッキーニちゃんなんてのは、同作品最近自衛隊がポスターに使って物議を醸してたけど、パンツいっちょで空飛ぶ魔法少女とか公式がアレはズボンといったところでどうしようもなく救いようのない痛さがある。ルッキーニちゃんのおパンツは青のシマパンというのもカワセミっぽい色目で良い。
 でもこの作品を忘れてたらあかんやろというのがあった。「ガンスリンガーガール」である。イタリアを舞台にした美少女ガンアクションもので、年端もいかない少女達を政府の秘密工作機関が炭素繊維の皮膚や人造筋肉でサイボーグに仕立て上げて、テロ組織の鎮圧やら暗殺に使うという酷い設定の作品である。これが設定は痛いんだけど実に良い内容の作品で「好きでナニが悪い」とオタクなら開き直らざるを得ない傑作なんである。
 美少女も誰にしようかよりどりみどり。まあでもトリエラちゃんかな。人身売買でアフリカから売られてきて、変態相手のスナッフビデオに出演させられ、多分手足切り取られるとか酷い目にあったであろう出自が、あやしげな取引で我が家にきてこれからワシに陵辱されるリールと重なるモノがあるように思う。

 というわけで、ロングコートにウィンチェスターM1897のトリエラで決まりだなと思ってたんだけど、結局ようせんかった。
 やろうと思ってたときに先に手を入れてたマイコンNo.6で失態を演じ、モノが自分の手で壊れることの怖さを痛感してしまったのもあって、半世紀がとこを生き抜いたこのリールを覚悟を持ってブチ壊しにする腹づもりを決めきれなかった。ワシも実家に帰ってお母ちゃんのチチ飲んで出なおさなならんようですばい。この腰抜けめ!!
 いうて、ワシお気楽ブロガーとはいえ言葉についてはそれなりに覚悟して書くつもりはあるけど、造形とか視覚的な美の創造とかそっち方面はからきしで、ワシの手を出す分野じゃないとも思うのでまあしゃあないジャン。
 その分、気合い入れて今回も書きまくってみたので読者の皆様どうかお許しください。
 あと、もちろんワシゃ釣り人なので、リール使ってやることといったら本来魚釣ることなので、このリールが充分現役で実釣に耐えうるということを証明はしてみたいと思う。
 使ってぶっ壊れることに関しては、いささかのひっかかりもなく覚悟完了である。

2019年3月9日土曜日

人は過ちを犯すが、それを償うことができたりできなかったりする



 ダイヤモンドマイコンNo.6! オマエに魂があるのなら...応えろ!!


 と、某ライドン系マンガの主人公気取りで(このネタ前も使ったような気がするけどまあいいや)、中古釣具屋のワゴンに「ドラグがユルい」という札を付けられて、なんとお値段324円というバカみたいなゴミスピ価格でたたき売られていたこのリールを再生させて、次の釣り人に橋渡ししてやるのがオレの宿命か、なんておこがましくも思ってしまっていた。
 最近、スピニングリールいじりまくってて昔は手が出せなかったメイドインジャパンの瞬間的逆転防止機構も分解清掃できるようになったし、強度の必要なギアやらベールアーム周りとかは無理にしても、ドラグやら逆転防止やら程度は破損や劣化していても何とか修繕できる自信もついてきて、自分の手が”動かなくなった道具を蘇らせる力”を持った特別なものになったような、そんな”中二”な気分に干支も4回目が巡って来る歳にもなって浸っていい気になっていた。やってることはそれこそ中学生の遊び程度の内容だったにもかかわらずダ。
 入手時、ドラグがユルいとなっていたけど、そんなもんマイコンのリアドラグは一定の幅で効きを設定しておける方式で、そのことを知らない大森素人が緩めに設定してあるドラグを最後の15まで締めても全然ドラグが効かないので”ユルい”とかほざいてるだけなのは火を見るより明らかで、他にも逆転防止が死んでたしベールの返りも悪かったけど、そんなモン大森製作所のリールが簡単にぶっ壊れるわきゃないってのはいつも書いてるとおりでグリス固まってるだけだろう、と余裕の大森ダイヤモンドアナリスト(経験3ヶ月)ぶりで、さて軽く復活させてネットオークションにでも流せば多少表面に腐食も見られるけど、2千円から上にはなるだろうから安いリールまた1台買えるなと、鼻歌交じりで分解清掃作業に入った。


 しかし、結果から行くと逆転防止の消音部品を破損してしまうという、あたら自分がいじったせいで部品欠損のない完品状態の個体を一部破損有りの状態におとしめてしまうという大失敗をやらかしてしまった。
 私は、釣行記でも釣れなかった失敗やらも隠さず書いているつもりである。なぜなら成功なんて運が良かっただけのこともあったりして参考になるかどうかはあやしいもんだけど、やったらあかんことをやってしまって犯した過ちは、自分を戒めるためにも文字に起こして書き記しておきたいし、同じ過ちを犯さないように読者が他山の石としてくれたら失敗したかいもあるというものなので、いくらでも転がってるような釣果自慢よりも失敗の記録の方が実は大事なんじゃないかと思うからである。
 だから書くわ。アタイ恥ずかしいけど読んで欲しいノ。


 分解するっていってもコイツの場合デカくて一気にやると分解清掃用のお盆に収まりきらないので、とりあえずドラグはドラグだけ外して整備できるのは愛用していたマイコンTBシリーズで知ってたので後回しにして、本体からバラしていってスプール、本体、蓋はお盆の外に雑誌を置いて乗せていく。
 オオッ!スプール止めている台座が、今までいじったことあるリアドラグのスピニングは横棒状だったけど、6角形のをスプールのほうにガッチリはめ込む形になってて大物用だなとちょっと興奮。
 パカッと蓋開けるとギアはいつもの角の立った大森製ハイポイドフェースギアなんだけど、平行巻機構はさすがにスプールも大型で高さもあるので、ハンドル1回転で1往復のクランク式じゃなくて減速カム方式なんだけど、ちょっと銀ビカの亜鉛ダイキャストじゃなさそうなカムが覗いている。
 ギアを抜くと、いつもの鋼製の軸に見慣れない薄緑の樹脂製パーツが填まってて「ハハーン、これがTAKE先生が部屋燃やしかけたとかいう逆転防止機構をサイレント化する部品か~」と、その時はあんなことになるなんて知るよしもないナマジであった。
 平行巻のカムも歯車もやっぱり亜鉛ダイキャストじゃないよねという感じのピカついた素材で小型機とは素材選定からして違うなぁと思うも、カムに引っかかる歯車の出っ張りにはやっぱりカラーが填めてあって、う~ん大森製という作り。
 主軸も太いんだけどローター軸のギアがいまだかつて見たことないぐらいのゴン太で、ギア比は1:3.3と速さより力強く巻くことに重きを置いた仕様。
 ただ、巻き取りスピード自体は10号250mという大口径のスプールなのでそれ程遅くないんじゃないかと思う。
 想定していたのは、巨ゴイとか投げで狙うタマン(ハマフエフキ)とか、ドラグ緩めて尻手ロープつけておいてジーッとドラグ逆転し始めたらやおら竿を手にとってあらかじめ決めていたドラグ値まで一気に締めてアワセを入れるとかだろうか。大きさも造りも実に漢らしい。
 PEラインを使ったロウニンアジのルアーフィッシングが始まった頃、国産のスピニングはドラグはショボいしそもそも耐久性はないしでブッ壊れたりして事実上スピニングはPENNぐらいしか選択肢なかったんだけど、当時90年代後半で、80年代当初の登場ですでに一昔前のリールだったはずのコイツだったら案外いけたんじゃないかという気がする。でも、巻き取りスピードが遅いのは当時の速い動きを多用した釣り方には合わんかったかもしれんか。でも今のゆっくり誘うような釣り方なら充分いけるンじゃないだろうか。というぐらい頑丈な作り方されているのが見て取れた。

 ドラグ除けば複雑な機構は何もなく、いつもの大森方式に逆転防止機構を消音化するくだんの部品が増えてるだけで、清掃注油もつつがなく終了して元通りに組んでいく。
 これぐらい単純なリールでも、分解していくときにデジカメで写真を撮っておくのは重要で、組むときにバネとかがどの位置に掛かってたかなんてのは意外にさっきバラしたばかりでも忘れてしまうモノである。
 今回も抜かりなく写真に収めていたんだけど、それでもお初にお目にかかる逆転防止の省音部品はどう組んで良いのか分からなかった。なぜならハンドル軸のギアの下に隠れているのでハマっているところが確認しようがなかったからである。ついでに言うなら前の持ち主も組みそこなっていて、そのせいでグリスそれ程固まってなかったのに逆転防止が働いてなかったようだと今なら分かる。
 でも、それ程苦労するとも思っていなかった。写真で折れている突起部分を切り替えレバーの金具で引っかけるか外すかで消音と音有りの切り替えをするはずで、それなら金具の後ろに持ってくるか前に持ってくるかの2通り試してみたらどちらかで何とかなるハズだし、それでダメなら再度考えればいいやぐらいに考えた。
 仕組みとしてはハンドル軸が正回転しているときに樹脂製の消音部品が一緒に回って折れた小さな突起じゃない2つあるほうの出っ張りで、常時バネでギアの上の歯車状の部品に押しつけられている逆転防止の爪を押し上げてカリカリ鳴らないようにして、ハンドルが逆転すると押し上げるのと逆に回るので押上げが止まって逆転防止が掛かるということだろうというのは見りゃ理解できた。
 どっちからやったのかうろ覚えだけど、最初に試したのは折れた突起を逆転防止の爪側ににしたはず。その場合、逆転防止が全く効かず正回転も逆回転もしてしまう。多分買ったときこの状態。逆だったかと組み直してみるとカリカリと逆転防止が効いているのでコッチだったなと消音化のツマミを切り替えてみるもなぜかカリカリ音がして消音にはならない。消音化部品が軸といっしょに回ってから、ある程度の摩擦で引っかかりつつ滑り出さないと上手く逆転防止の爪を押し上げてくれないハズなので、ぶっちゃけ消音化しなくても使えるのでまあいいやと思いつつも、消音化しないってことは滑りが良すぎて爪を押し上げ切れてないのかなとグリスぬぐって再度填めてみて、状況変わらないので仕方ないかと思いつつなにげにハンドル逆回転させたらストッパー掛からず逆転してしまい、最後ガリッとモノが取り返しのつかないかたちで壊れた嫌な感触が手にあり、慌てて止めたけど覆水は盆にかえらないし、こぼれた牛乳を嘆いても元に戻らない。
 自分の手の中で何かが壊れてしまう感触って最悪で、ガキの頃にカブトムシの幼虫を育てていて、やっと蛹になったのが嬉しくて、お腹クネクネするのを見て楽しもうと角持って土の蛹室から引っ張り上げようとしたら首チョンパになったときの取り返しのつかない感じ、後悔、自責、罪悪感、その他諸々の嫌な気分を思い出してしまった。心に傷がつくぐらいの世の中で考え得る最も嫌な感触である。
 もうダメだとは分かっていたけど、何かの間違いであることを祈りつつ蓋開けてギア抜いて、ぽっきり折れた突起を平行巻のギアのグリスの中に見つけて、暗澹たる気持ちになって、その日はそれ以上いじる気にならず、ドラグは放置して消音化パーツ取り外して寝た。ちなみに消音化部品とっぱらうとカリカリ音がするけど普通に使える。

 寝て起きても、嫌な気分から逃れられない。敬意を払うべき道具を軽くあつかい慎重さに欠けたこと、使いもしない道具を興味本位で買って本来の目的である釣りに使うことを想定せずにいっぱしの玄人気取りで整備しようとしたこと、が自分を責める主な理由だろうか?
 自分に責められて、せめて修理するためにナニが必要か考えて努力ぐらいはしてバチがアタらないだろうと翌日気合いを入れ直す。
 現状でも消音が効かないだけで使えるといえば使えるので、そう断りを入れて売りに出しても良いけどそれは最後の手段で、まずは今修理する方法がないか考えて、場合によっては確保しておいて直せる時が来たら直すというのもあるかなと考えた。樹脂製パーツなので3Dプリンターとかの性能が上がれば、それ程複雑な形じゃないので金型なしで安く作ってもらえる時代がくるかも知れない。

 いずれにせよ消音部品の仕組みや役割、構造を良く把握するのが最初にやることで、そのためには実際にギアに填まって働いているところを視覚的に再現するのが私の場合必要。物事を頭の中で正確なイメージを持って考えられるタイプの人なら、それぞれの部品を頭の中で組んでハンドル回してみるなんてことができるんだろうけど、私の場合それが全くできない。おそらく短期記憶の悪さとかそういうのだと思うんだけど、イメージが頭の中ですぐに消えるので、地図を頭の中に置いて回転させたりとかいうことも実はできない。物理的に地図を持って確認しながら歩ける山歩きとかは問題なくできたけど、バイクや車では全くの方向音痴で、道を行き過ぎて一区画ぐるっと回って同じ所に戻ってくるとかいうことが簡単だと思うにもかかわらずできない。3回角を曲がったら良いだけのハズだけど、2回目あたりですでに何回曲がったのか憶えていない状態で思ったような通りに出られないことが多い。歳食ってボケたとかじゃなくて記憶力良かった若い頃でも物語やら魚の名前やらは忘れないのに道順とか人の名前とかはなかなか憶えられなかったように思う。
 なのでギアの軸だけをイメージしてちょうど良い太さの透明なパイプがあったのでそれに折れた消音部品を填めて、実際の高さに持ってきてクルクル回してどういう仕組みなのか確認してみた。
 一番上の写真のピンクの丸で囲った部分が逆転防止の爪の”お尻のトンガリ”でコレを矢印のハンドル正回転方向に押してやると逆転防止の爪がローター軸のギア直上の歯車から離れる。逆回転すると戻って爪が掛かる。一応想像していたとおりの仕組み。
 じゃあナニが悪かったのかというと、填める位置が意外とドンピシャの狭い位置を外しちゃダメで、消音部品の2つある方の出っ張りの間に”お尻のトンガリ”を入れないとちょうど良く作動しない。2枚目の写真の位置がそれである。
 その時に、手前のピンクで書いた位置にあった突起を消音切り替えレバーの爪で引っかけておけば消音部品は軸と一緒に回らず、お尻のトンガリを押せないのでカリカリと音がする、レバーを”解放”の位置に切り替えると解き放たれた省音部品が仕事をしてお尻のトンガリを押し上げてカリカリ音がしなくなる。という仕組み。
 切り替えレバーに引っかけるのも、お尻のトンガリを押し上げるのも小さな力で済むので、強度のある素材である必要はなく、むしろ組み損なったときに平行巻のギアに噛んでギアまで壊さないように、あんまり硬くない樹脂の方が適していると分かる。必要なところに必要な強度の素材を使っているというのが良く分かった。
 分かったら、切り替えレバーに引っかける突起なんてのは、引っかかりさえすれば細かい形状も関係ないし、それ程強度が必要でもないので、ちゃんと作動する様に修理することはできそうに思った。
 ちょっと考えて、単純に接着するだけではポロリもありそうなので、折れた突起の位置に熱した千枚通しで穴を開けてそこに100LBのショックリーダーを突っ込んで接着。適度な太さを持たせて接着を強固にするためにセキ糸をまいて瞬間接着剤で固める。
 コレで行けるだろうと改めてハンドル軸に填めて位置間違えないように横から覗き込みながらギア填めて、蓋してハンドル回してみたら、消音、音有りの切り替えも問題なく、逆転防止も正常に作動してくれた。
 売るときは「消音のための部品を修理してあります」と謳わにゃならんけど、一応完動品に戻すことができて胸のつかえはだいぶスッキリした。今できる範囲で次善の策はとれたと思う。大物狙いの投げ釣り師に自信を持って良いリールなので使って下さいといえると思う。

 気分も良くなって、続いてドラグの方に手を入れる。といっても特に問題もない状態だったので、ドラグパッドやワッシャーにはドラググリスを、その他の部品には防水性の高いいつもの青いグリスを塗ったくってやった。
 ドラグパットが異様に沢山あるように見えるかもだけど、実はドラグ自体は2階建てでドラグパッドはテフロンより滑らない感じの堅めの樹脂製の2枚。
 組み直して、ドラグ値思いっきり手で締めた時の位置を、一応余裕見てもっと力持ちの人ならさらに締めるだろうと、15ある目盛の13に設定して、各目盛でのドラグ値を秤で計ったところ、13で5~6キロ、12で4キロ、11で4キロ弱、10で3キロ、9で2.5キロ、8で2キロ弱、7で1.5キロ、6で1キロ、5で600グラム、4で400グラム、3で300グラム、2で250グラム、1で150グラム、0で130グラムというおおよそのドラグ値となった。
 5~6キロは私がロウニンアジ狙うときに普通設定するドラグ値で、やっぱりそのぐらいの大物狙える性能があるように思う。ネット上では”釣力”10キロとかいう話もでてて、多分最大ドラグ値に近いような数値だから、ドラグパッドの素材変えたりしてもう少しドラグきつく締められるようにしてもリール自体は持つような剛性があるんだろうと、ドラグの試験していても感じられる。大森製作所が釣力10キロとか謳ってたんなら機械的には嘘じゃないんだろうと信じられる。ドラグの滑り出しやら効き方の安定性については手で引っ張り出した程度じゃ分からんって話だけど、滑り出しが悪くて衝撃で怪我するほどにはドラグ値上げられないだろうし、手でゆっくり引っ張ってる限りではそこそこに良いドラグだと思う。特に低いドラグ値の方は滑り出しも滑らかなように感じた。ぶっ込んでユルユルドラグ状態でアタリまつなら尻手ロープいらないかも。

 大きさ的にはこんな感じて、ドラグ試験の時には写真の9500ssのラインを巻き替えたんだけど、9500ssより若干糸巻き量は少ない感じでスプールぎっちり一杯になった。ちなみに重さは800グラムちょいと900グラムオーバーの9500ssより軽く仕上がっている。まあこの大きさのリールに軽さなど求めても仕方ないのでどうでも良いけど。
 正直、手元に確保しておいて使いたくなるリールなんだけど、この大きさのリールを使う釣りの時にリールの試験をしている余裕なんてないはずで、餌なりルアーなり投げる釣りならPENN使うし、ぶっ込んでじっと待つ釣りなら両軸の方が向いてる気がする。
 手に入れて使ってみたいっていう”大森熱”の症状の重い人がおられるようなら送料持ってくれれば差し上げます。人様を沼に沈める重石としてはなかなか良い重量物だと思ったりして。多分来週ぐらいには売りに出す流れかなと思うので欲しい人は先着1名様お早めにnamajipenn-ss@yahoo.co.jpまでご連絡を(注:もう輿入れ先決まっちゃいましたのであしからず)。転売目的はダメよ。

 仕事辞めたら、ボロいリール修繕してネットオークションで売って小遣い稼いで生きてくのもありかな、なんて一瞬思ったりもしたけど、そんな技量は到底ないって今回思い知らされたというか、儲けるには楽しんでちゃダメなんだろうなと色々と先人の事例を見て思い知らされる。
 個人でリールの修理とか請け負ってる人とかやっぱりいて、中にはオークションで分解清掃の権利を売りに出している人とかもいるんだけど、面倒くせえ瞬間的逆転防止機構の搭載された今時のスピニングのオーバーホールが2500円という開始値段になっている。まあそれでも金かけてまで分解清掃しようという釣り人って多くないはずで多分値段はそれ程競り上がらなくて開始時の値段でハンマープライスだと思う。でもあんな面倒くせぇ分解清掃二度とゴメンだとシマノ2台で思ったぐらいで、私ならなんだかんだで1日仕事になる。習熟していって手早くなっても1日2台が関の山で、2500円なんて安値では一日爪の間を機械油で黒く染めて頑張っても5000円にしかならない。金稼ぐんなら日雇いのバイトにでも行った方がなんぼかマシである。
 私の手に負えるPENNやら大森やらのボロい個体を安く仕入れて、楽しく手入れして修理して売りに出したとしても、これまた5千円にもならないだろうから1日1台売っても5千円にもならない。バカくせぇ。そんなら自分で使うって。使ってくれる人にタダであげた方がマシって感じだ。
 儲けるつもりなら、手間なんてかけずに目利きだけで、安いのを中古屋で買ってネットで高く売るとかの転売を数こなすとか、売れる時の単価が高いカーディナルだのミッチェルだの大森一部機種だのの状態の悪い安い弾を確保して、とにかく見た目が上等に見えるように体裁を整えるのを重視して売りさばくとか、リール好きな人間が魂売ってやるようなことをせにゃならんだろう。仕事にして金稼ぐとなると楽じゃない。
 気になったリールがボロくて安かったら、楽しみながら直してみて使ってみる。それ以上を求める必要もないし、それ以上にはなかなか踏み込めないモノだなと思った次第。

 大森ネタはそろそろネタ切れなんだけど、他にもネタは仕入れてあるので今しばらくスピニングリールネタをお届けの予定。
 でも、魚釣れ始めた気配があるのでリールのことなんかどうでも良くなるかも。などといらんことを書くのは典型的な”ボウズフラグ”なのでフラグぶち折って今夜も良い釣りしたいものだ。 

2019年3月3日日曜日

おかわりっ!大森で



 大森製作所が世に送り出したダイヤモンドリール達のうち、どの機種が同社史上最高の傑作だったのか?”究極の一台”はどれか?なーんて書くとエラそうだし重くなるけど、そういうのをワイワイ「オレならコレだ」「いやいやアレだ」とやるのって結論あるようでなくって、言いっぱなしでも根拠もオチもなくたって楽しいジャンとおもってサクッと書き始めてみる。

 nori shioさんも書き込みしてくれていたけど、沼の底に沈んでいる濃いめの大森ファンのブログとかを読んでいると、TAKE先生も絶賛、大森最後のインスプール「コメット」が最高とされていたり、大森にしては珍しいウォームギアが滑らかに回る高級機種「プロラインNo.101」こそ大森の最高傑作と推す声もある。ワシの持ってるマイクロ二世301もそれらに並べてよい機種だとはnori shioさんの見解。
 いやいやインスプールならそうかもしれないけど、大森史上最大のヒット作っていったらマイコンシリーズなわけで、マイコン以外はあり得ないでしょと思う人もいるだろうし、アウトスプールなら小型軽量コンパクト、某”カリスマ”ルアーマンも愛用で人気の高いキャリアーSSが一番良いから一番オクで値が張るんでしょ?と思う人もいるだろう。
 以前私は、「生産性に優れて性能もよいハイポイドフェースギア方式、確実な内蹴り式のベール返し、錆びないし小型軽量な樹脂製スリーブの入ったラインローラー、3階建てのドラグ、単純で確実性の高いローター軸のギア直上のラチェットに歯をかける方式の逆転防止機構、ローター軸(と機種によってはハンドル軸)に一個のベアリング。手入れもなしに放置しても塗装が多少やられる程度の耐久性のある素材。小型リールには充分実用的な単純クランク方式の平行巻機構」を備えた、オートベールとタックルオートあたりが小型スピニングの一つの完成形じゃないかとかも書いた。じっさいこれらを大森のアウトスプールの最高到達点だと推す声も目にする。
 このあたりはまあ妥当な線だとはおもうけど、思うんだけど常々私が主張しているように、良いリールなんてのは釣り人との関係性の中からしか生じ得ないモノで、どんなに世間一般に不評だろうが、その釣り人が愛用してきて一番好きならその人の中での一番はそのリールになるんだろう。「俺が好きなんだからコイツが最高!」って意見は客観性を持った説得力はないにしても、大いに頷けるし気持ちは良く分かる。
 私がコレから安ダイヤの「アクションM」と「タックルA」を使い込んでいって、「オレのダイヤモンドはアクションM」とか言い始めても「ハイハイおジイさんそうですね」とウロ入り始めた年寄りをいたわるような目で見てあげて欲しい。


 とはいえ、一般的に大森ダイヤモンドが高く評価される点は、単純な機構に丁寧な設計と適切な素材選定で”必要充分”な、無駄なく実用的で値段も良心的なスピニングリールを世に送り出してきた点だとは言って良いかと思う。
 マイコンあたりはリアドラグにした分やや複雑な機構だけけど、それでも、その後の行き過ぎたゴテゴテしたリール達と比べれば充分単純明快なリールである。最近のリールは原点回帰で軽さとか回転性能とかが重視される傾向にあって、あんまりめんどくせぇ機構は付いてなくて逆転防止の切り替えも省略とかになってたりするけど、そのくせ部品点数としても多くて重く、繊細で扱いにくく防水性とか過剰に求められるようになる「瞬間的逆転防止機構」だけが現代のリールに存在する大きな矛盾点だと私は思っている。逆転防止なんて大森方式のローター軸の部品に歯を掛ける方式でも、それ以前のハンドル軸に設ける方式でも特殊な用途以外には困らないし、カリカリ鳴ろうがガチャガチャしようが慣れればどってことない程度の話である。
 そういう”必要充分”という視点で自分の釣りに照らし合わせて、さっきあげた小型アウトスプールの大森ダイヤモンドの美点をもう一度点検してみる。最初の前提としてアウトスプールを選んだのは、最近インスプールの扱いにも習熟しつつあるけどやっぱりアウトスプールの”ベールを手で返して良い”スピニングの方が馴染みがあるし、そういう釣り人の方が現代では多いんじゃないかと思って、インスプールはまあ語る人も多いのでそういうのは沼の深みに棲む人達にお任せして、私としては”左手でライン放出を調整してそのまま左手でベールを手で返す釣り人”代表として大森アウトスプールについて考えてみたいと思ったからである。
 点検してみると、ベアリングが1個が良いか2個が良いのかっていうのがなかなか難しい問題で、回転性能的にはそんなに差が出ないのはPENNで回らなくなったローター軸のベアリングをハンドル軸に回したら何の問題もなくて、ハンドル軸には回転性能だけ見たらベアリングなんて、少なくとも自分の釣りには必要ないと思っている。ただ、ベアリングの”摩擦が小さくできる”という特性は耐久性にも関わってくるのでベアリングなしだと軸が削れていくのでは困ってしまう。そのあたりは具体的にはベアリング1個のタックルオートと2個のオートベールのどちらを選ぶかなんてのに関わってくる。
 他はほぼ自分の釣りにも有利な美点なんだけどベアリングの他にもう一点、自分の釣りにあきらかにいらないな、というのがあって「確実な内蹴り式のベール返し」がじつはワシにはいらんのじゃないか?と思っている。
 不要なら取っ払える機能なので取っ払っても良いんだけど、重量変わると回転バランスに影響するはずなので”無し”でいくなら最初からない方が良く、部品点数減るのでその分故障箇所や経費の削減という利点が出てくる。
 右手の人差し指でラインの放出を調整して左手でハンドル回してベールを返す釣り人ならベール返しが確実で軽いことは重要でTAKE先生のリールの評価基準でも思いっきり重視している点だけど、そこは人差し指でライン放出調整できないような重いルアーとかも投げる塩分濃いめの釣り人である私には正直関係ないっちゃ関係ない。
 事実、昨年秋にインスプールのリールに慣れた手で430ssgを使って右手人差し指でライン放出止めてハンドル巻いてベールを返そうとしたら、なぜか空振りしてしまい投げ方を元に戻して左手でベール返して釣りは続行できたんだけど、部屋に帰ってから原因調べてみたら内蹴りのベール返しの組み方を間違えてて機能しなくなっていた。おそらく数年前に油ぎれ起こした一方通行のベアリングに注油がてら全分解してグリスアップしたときに組み間違えたんだと思うけど”ベール反転機構なし”の状態で気がつくまで何の問題もなく使用できていたのである。ついでに言うなら4400ssはワシの右手の人差し指じゃスプールまで届きにくいというTAKE先生的評価基準ならダメリールなんである。でも私の中での信頼感と評価は極めて高い。ってぐらい釣り人毎に最適な答って違ってくるよって話。
 実は仕様で”ベール反転機構なし”というスピニングリールなんてのもあったりする。起こすのも返すのも手でやるマニュアル方式。なぜこんな一見”欠陥品”のリールが売られているのか?重量級のルアーを投げるリールで、投げた際にハンドルが回るなどしてベールが反転してルアーが初速のエネルギーを持った状態で急ブレーキがかかりラインが切れたり逆転機構の破損やらが起こるというトラブルはありがちで、私も7500ssの逆転防止機構は2度壊している(それを想定してだと思うけどPENNには音出し式の逆転防止機構が予備に付いているので釣りは続行できた)。ベールを起こす位置を一定にして滑らかな無理ないキャストが実行できていれば起きない”過ち”なんだけどたまに過ちを犯すのが人間というモノである。くだんのリールはエイテックのテイルウォーク”クロシオ”シリーズにあるんだけど、そのあたりの人間の過ちを織り込んで割り切った、実際の釣りの現場が分かってる人が考えた賢い設計だなと感心したモノである。

 ということで、タックル”オート”、”オート”ベールの名に誇らしくその機構を謳っている大森式の”内蹴りのベール返し”なんだけど、大森さんスイマセンそれワシいらんかもしれませんわ。ということで、より単純な外蹴り式のリールが案外良いかもって考えたらどうにもたまらなくなってしまうという”急性大森熱”症状悪化で、実釣でも使用感とか試してみたいならシーバスかなということで、ネットオークションで写真上の「タックル5NO.2」と「タックルNO.2」をサクサクッと落札してしまった。他にも似たようなタイプに「マイクロ7」のアウトスプール版があるけど、これはワンタッチ着脱スプールでベアリング2個とタックルオートに対するオートベールと似たような機種のようで、ベアリング1個の「タックル5」は「マイクロ7(アウトスプール)」の普及版のような関係らしい。
 アホみたいにポンポンとリール買いやがってと自分でも思うんだけど、これがまた外蹴りアウトスプールのダイヤモンドリールって人気薄で1500円と1980円とゴミスピ価格一歩手前のお安さなんである。こりゃあ落札するしかないよね?

 まあ買っちまったモンは仕方あんめぇ。どちらもグリス固まってるのか回転も重いので早速分解清掃実施。特に黒銀の「タックル」の方は普及機だからぞんざいに扱われてたんだろうけど、スプールエッジにも結構傷が入っていたのでハンドドリルで大きな傷はえぐって引っかかりがないようにならしてサンドペーパーかけて、ラインローラーも注油なんかしてもらってなかったようで固着して糸溝できてたのでアロンアルファで溝を埋めておいた。
 パカッと蓋を開けると、オートベール、タックルオートでそろそろ見慣れたいつもの大森式の機構の数々で細かい説明省略。
 ベアリング1個なので、ハンドル軸は真鍮で受けてるけど特に鋼製の軸にも真鍮のはめ殺しのブッシュにも摩耗はないように見える。
 グリスも塗布し直して、さて、左にハンドル付けて終了。と思ったらクリクリ回しても「あれ、入らんがナ?」という感じで填まってくれない。
 愛用していたマイコンTBシリーズやら先頃購入したタックルオートもハンドルは左右兼用だったので、当然そうだと思っていたんだけど「タックル」に関しては左巻き用のネジに交換する必要があるらしい。そのために2枚目写真のようにはめ殺しじゃなくてネジが外せるようになっている。
 「あっちゃー!やってもうた~」という感じである。左用のネジなんて使わなければなくしてしまうだろう。実は紛失防止に「マイクロ7(アウトスプール)」ではハンドルの後ろを延長してハンドルネジの収納スペースを設けている。キャスト時にハンドルが回るのを防ぐ重さ調整のための設計かなと思ってたけど、それも兼ねてるかもだけど収納スペースらしい。ちょっと見た目はイマイチな気がするけどそういう機能があると知ると大森らしい実直な良さのある造形にみえてくる。
 今回落札した2台とも、困ったことに右巻き仕様になってて左巻き用のネジなど付いていなかった。どうすんのよこれ2台も?と途方にくれてしまうのだったけど、でも見たところネジの太さが右にも左にも付けられるマイコン301TBと一緒と違うか?と思ったので試してみた。あっさり装着可能で、私の場合リールを一度に2台使うことはあまりないので使おうと思えばハンドル借りてきて使えるようで一安心。
 と、思わぬ形でハンドルの互換性が判明してしまったけど、実は今回の購入で確かめたかったことに一つに、ダイヤモンドリールのパーツ共有性というのがあって、写真を見る限りスプールなんかは金型代節約のためだと思うけど形一緒で、いろんな機種で使い回せるんじゃないかという気がしていたのでその辺も確認したかった。
 一番下の写真が「タックルNo.2」に「タックル5No.2」のスプールと「マイコン301TB」のハンドルを装着した状態。何ら問題なく部品共有可能。

 ただ、「タックル」と次に分解した「タックル5」は同型機のようで、スプールどころかギアからナニからほとんど一緒。本体の表記が凸ってるのからシールに変わって色が骨董的な雰囲気の青から70年代日本リール風の黒銀に変わった他、スプールのライン止めが省略されてるとかの細かい違いだけ。ネットでカタログ登場年とか調べたところ「タックル5」は1975年からの登場らしく、「タックル」シリーズは1979年カタログには掲載されていて「タックル5」が消えているので色違いのを後継機的な扱いで「初めてのスピニングリールに」と売っていたようだ。部品共有もナニもあったモンじゃない。設計基本一緒。ただお化粧直ししてでも、一番ややこしくないことから値段も低く設定できるこの型のリールを残していたのは、入門者にも優しかっただろうし「タックル5」の愛用者にも部品供給が続けられて良心的だったんじゃないかと評価できる。
 ちなみに「タックル」のベールアームを樹脂製にした「ニュータックル」というのもあったようだ。 

 「タックル5」の方を分解していくと、思った以上に一緒で笑える。さっき見た「タックル」のギアでも平行巻機構のクランクの輪っかの端が右上の方削ってあって、多分蓋を止めるネジの場所に当たるので削ってあんのかなと思ったけど、こっちの部品も同じようになっててフフってなった。ちょっと削らんと入らんかったんだろうけど、新しく金型かなんかを作り直すのが経費かかるのでそのまんまにしてある感じが、人間の手仕事を感じさせてくれてほほ笑ましい。
 両機ともベールアームは金属製で、ラインローラーを縒りが入りにくいように水平に、とかの調整はしやすい。意外に使っていると金属の板で出来た部品は曲がるようでだいぶ曲がってしまっていた。ダイヤモンドリールのベールアームがたためる意義が小さくたたんで持ち運びしやすいという以上に持ち運びの際等にベールアームの変形を防ぐところにもあったんだなと実感できる。
 部品点数は45をちょっと越えるぐらいでとっても少ない。壊れるカ所やらお金の掛かる部品やらが少なくできている感じでとても好印象。
 このあたりから、分解清掃にパーツクリーナーを使い始めたんだけどスプレーするとグリスとか吹っ飛んでいくし、瓶に貯めて漬け置き洗いも頑固な汚れが落とせて作業が捗る。
 そうやって分解清掃してグリス、オイルを入れ直してやると「タックル」もそうだったけどコイツも問題なくクルクルと快調に回ってくれる。「タックル」のほうは全く手入れされてなかったけど、こちらはラインローラーとスプール外して主軸には注油してあって前の持ち主がだいぶ愛用していたと見えるけど、特にギアとか真鍮のブッシュとかに摩耗は見られず、やっぱりベアリングは1個で良さそうに感じる。
 
 出撃準備も整ったんだけど、ダイヤモンドリールのパーツ共有について確認してみたいという目論見は同型機だったのであんまり達成できなかった。おそらくスプールの形式から見て、アウトスプールの場合、同じサイズのワンタッチスプールの機種「プロライン(アウトスプール版)」「マイクロセブン(アウトスプール版)」「オートベール」はスプール交換可能。ワンタッチじゃない「タックル5」「タックルオート」「タックル」「ニュータックル」はこれまたスプール交換可能なんじゃなかろうか?ギアとかについてはひょっとしたら両者で共通の部分はおろか、インスプールともある程度共通しているようにも思う。
 そこまで調べる気はないにしても、スプールの互換性があるってのは蒐集していくとスペアスプールも手に入ることになって実戦投入するには極めて使える情報だと思うので調べて書いておきたい。自分の選ぶべきは普及版の方だと思うので、ワンタッチスプールじゃないほうのスプール互換性があるか調べてみたくなった。っていっても先にあげた4機種のうち「タックルオート」以外は形が一緒なので互換性あることは明らかで、「タックルオート」と他の3機種のどれかが互換性あることだけ確認すれば良い。



 No.2サイズの「タックルオート」を入手しても、逆にNo.1サイズの「タックル5」とかがあっても確認できる。
 サクッと「タックル5No.1」を某ネットフリーマーケットで3000円で購入。だんだん突っ込む金額が上がってきてヤバい感じに感覚が麻痺しつつあるけど、躊躇なく買ってしまった。
 前回の失敗の轍を踏まないようにちゃんとハンドル左に付いているのを確認して購入。上の写真の右がその個体。コレで左巻き用のネジが1本手に入ってネジだけの使い回しも可能。
 でもって、「タックルオートNo.1」とスプールとハンドル交換してみた。真ん中はタックルートの左右兼用のハンドルネジ。同一軸状に右用と左用のネジ山が交互になる感じで切ってあって、初めて見たときに機械にうとい私の場合「へーこんな方式があるんだ」くらいにしか思えなかったけど、これ機械に詳しい人が見るとびっくりするらしい。いくつかのブログで興奮気味に書いている記事があった。
 ナニが凄いのか分からん。ベイトリールの平行巻機構の細かい版みたいなもんじゃないのかと思って、むしろ平行巻機構の方がなんで端まで行ったら戻ってくるのか?同じ方向に回ってるのに途中で止めても行ったり来たりせずきちんと往復する仕組みが理解できん。
 だとしても既に設計してあって使ってるギアの軸の穴に合わせて、後付けでキッチリ左右のネジ山を切るのがそんなに簡単じゃないんだろうなというのはおぼろげに想像できる気はする。普通はPENNみたいに右と左で軸の穴の大きさを変えて、ネジの先の方半分を細くして右用、残りを太くして左用とかに切るンだと思う。いまのシマノの高級機種もそうなってたはず。そもそも高級機種じゃなければ軸の穴を四角や六角形にしてというのがもっと一般的。それを普及品の「タックル5」でも丈夫で緩まないネジ込み方式にこだわって、次には左右両用のネジまで切ってしまうあたりの大森製作所の真面目な機械屋ぶりなのである。
 ちなみに一番下の写真のようにハンドルとスプールは何の問題もなく交換可能。
 「タックルオート」がいけるんなら、ひょっとして樹脂版の「キャリアー」も行けるんじゃなかろうかと試してみたらキャリアーはダメだった。スカートの直径やら主軸の径は一緒で入ることは入るのだけど高さが合わなくて、低い方はワッシャーか何かを噛ませれば使えなくもないかも?という程度。キャリアーは逆に樹脂製どうしで「マイクロセブンC」とかとスプール互換性有るんじゃないかと思うので興味ある人は調べてみてはいかがかな?キャリアーSS2台買うのはちょっとキツい値段だけど「マイクロセブンCS」を予備機に使ってスプール共有とかできれば実戦的かもしれない。CSも充分お高いけどね。

 「タックル5No.1」も分解清掃してやろうとパカッと開けてみると、なんとグッチャリと”グリスシーリング”されていて、前の持ち主の愛用度合いが見てとれて笑みがこぼれる。正直スプール傷だらけとかのリール見ると「もうちょっと丁寧につこたれよ!」とムカつくモノである。
 2枚目は参考までにベールアームの反対側のベールワイヤー支持部の金属パーツ。重量を金属のベールアームと釣り合わせるために結構大きな金属の部品になっている。樹脂製ベールアームのニュータックルとかどうなってるんだろうか?
 笑ったのが、グリス塗り直してハンドル軸のギアを填めようとしたときになかなか填まらずに押しこんでも浮いてくることで、グリスで機密性上がると空気が抜けずに、左巻きなので後ろのキャップが填まった状態では空気圧で押し返してくるんである。精度高いうえに全然削れてないやンけ。
 くわえてこの個体は分解清掃後もハンドル回すとシャーとコーッの間のような音がしているので、最初ギアとか長い愛用の間にさすがに摩耗したのかなと思ったけど、どこが鳴ってるのか部品外しながら確認したらギア関係なしでローターで、それならベアリングかとベアリング買って交換してみたら、クルックルの滑らかな回転になってしまった。
 大森小型アウトスプールにおいてベアリングは1個あれば上等だと得心した。
 ミニチュアベアリングの世界ではトップブランドらしいミネベア社製とまでいかないけどそこそこ良い日本製の200円弱のステンレス製ベアリングで大復活である。
 大森ダイヤモンドぐらいの精度・耐久性高く作ってあるリールなら、故障するカ所も特には思い当たらないし、手元に来た使い込まれていたであろう個体達がべつにギアもブッシュも摩耗してないのとかみると、消耗品的部品であるベールスプリングとベアリング交換だけしていけば普通に100年使えそうに思う。どっかのメーカーが宣伝で言ってたことなんて大森やらPENNやらの耐久性重視した設計の実用機なら、別に今さら言うほどのことでもなくて、「モデルチェンジまで持てば良い」ってな新品で店頭にある時の性能に振りすぎた”その後”のリールの多くが、そういう代物だったってだけだろう。

 ということで、ナマジ的大森ダイヤモンドリール最高傑作は、どうも「タックル5」が”必要充分”に近い気がして、そうなんじゃないかと今のところ考えている。余計なモノはなるべく付けない方がイイ。「タックル」でも同じだけど色が懐かしい感じの「タックル5」の方が好み。
 あとは実際に使ってみて、金属のベールアームが糸がらみとかのトラブルを頻発させないかとか、ちょっとみてみたいところ。まあそんなに細糸つかわんしワシの場合大丈夫だろとは思う。
 そのあたりを確認するためには樹脂のベールアームの「ニュータックル」との比較が必要だ!とまた1台買いそうになって、なんとか寸前で踏みとどまった。樹脂のベールアームで同じスプールが付いている「タックルオート」がその辺の比較には使えるわけで、もっというなら同じような形の樹脂製ベールアームの「キャリアーNo.1」使ってたので既に使用感は”普通に使える”って知ってるだろう。全く油断も隙もありゃしない。くわばらくわばら。

 ということで、私と同じようにベールを手で起こす釣り人の皆さんには、大森の「タックル5」「タックル」といったアウトスプールで外蹴り方式の機種をお薦めしちゃいます。こいつら人気薄で安く手に入るうえに、部品数少なくて手入れも楽だしで、今時のリールに飽きたら、こういう良くできたリールを自分で分解清掃したりしながら理解して愛着持って使うなんてのはとっても楽しいですよと提案してみたい。

 さあさあ、皆さんふかーい沼に一緒に沈みましょう。ヌルヌルしてて気持ち良いですよ。
 現時点で我が家のリール数は制限である90台を3台オーバー。手放す速度より手に入れる速度が速くて困ります。全然へらんがナ。
 次回も大森ネタ「ナマジ痛恨の過ちに天を仰ぐ!」にご期待ください。