ひとまずスピニングリールネタは終幕、と言ったな、あれは嘘だ。
という台詞がシュワちゃん(CV.玄田哲章)で脳内再生されるか、ジョルノ( CV.小野賢章)で脳内再生されるかが、映画ファンとアニオタの差だと思うの。
「またスピニングリールネタかよ!熱さがっとらんやんケ!!」と思われるかもだけど、ぶっちゃけもう熱は冷めてます。イヤほんとですって。
特に”欲しくて仕方ないノ!!”って感じは年開けてからはもうなく、物欲的には治まっててネットオークションも一応見てはいるけど入札するほど欲しいものもない。とはいえ年末の時点で買っただけで触ってなかった3台をいじったら、もうわざわざ紹介するような新しいこともないのかなと思ってたんだけど、なかなかどうしてどのリールも個性や工夫が見て取れて、みんな違ってみんな良い的に面白かったので、そのあたりの紹介と「こんなリール買いました」だけじゃツマンネエと思うので、多分次回になると思うけど実践的スピニングリール改造例的なネタもぶち込んでみたい。
ということで、こんなん買いました紹介一発目が写真のダイワ「7250HRLA」。
オリムピックの「エメラルド350」でかなりお腹いっぱいになってたのでしばらく放置してたけど、なかなかどうしてこいつも悪くない。というか全然人気ないみたいだけど良いジャンという感じ。釣り場で使ってないのでなんともな部分はあるけど、見てのとおりインスプールでそんなに複雑な道具じゃなし特に不都合生じそうにも思えない。
70年代の日本製品が安さと品質の良さで世界市場でのし上がっていった時代のリールで、米国の他に英国とかでも売られたようで、色違いやらワンタッチスプール版のとかもあるようだ。ってことからそれなりの高評価を得て数売りさばいたリールだと見てとれる。国内版は別の名前で売ってたようだけど基本同型、この個体はいかにも米国仕様なPENNのドングリ形っぽいノブのハンドルが付いている。他にミッチェルっぽいハンドルのタイプもネット上で散見された。ダイワはPENNとも技術提携していた歴史があるようなのでその辺の影響かとも思うんだけど、ネットの識者によるとむしろこのリールはダイワが70年代に吸収した「稲村製作所」の技術を色濃く引き継いでいるらしい。
「稲村製作所」もスピニングの歴史を勉強しているとよく出てくる名前で、米国じゃヘドンの名前で出ていますな実力派だったけど、最後は自社ブランドで米国市場を闘ったダイワの軍門にくだったという歴史絵巻らしい。ダイワ強し。
巻き心地とか正直私は気にしない釣り人なので良くても悪くても評価できないんだけど普通にクルクル回ってくれてて、分解清掃する前からコリャ問題なく使えるなという感じ。
ドラグも普通に3階建て方式で、ダイワが国内のドラグ使わない釣り人向けにはあまりと言えばあんまりなドラグのリールを売りさばいていたのと好対照で、米国向けにはしっかりと機能するドラグを入れているという、市場の好みをとらえる上手さがここにも見える。
パカッと本体の蓋を開けると、なんか変なギアが鎮座してて一瞬ギョッとなるけど、これは古い設計だとハンドル軸のギアの根元に付いていることが多い逆転防止のためのギアが上?面に付いているからであり、逆転防止の爪は蓋の裏に付いている。なぜハンドル軸の根元に付けないのかというと、ハンドル軸の根元には平行巻機構のギアが付いているからである。
そう、このリールはこの時代としては珍しいクランク式じゃない減速カム方式の平行巻機構を搭載しているのである。なかなかやるやんケ。
ギア方式自体は普通にハイポイドフェースギアなんだけどスピニングリールで一番大きな歯車であるハンドル軸のギアの直径いっぱいつかって逆転防止の歯を切ってあるので遊びが小さくなっててナルホドという設計。あとベールが大森みたいに折りたたみできるのも地味に良いところ。
ローターとローター軸のギアが、前の持ち主が逆に捻りまくって噛んでしまっているのかどちらにも回らない固着状態だったけど、その他は外せてグリスもぶち込めたので固着したまま分解清掃敢行終了(R4.4追加註:「7250HRLA」のローターはローター軸のギアごと回して外す方式だそうな)。
国内の中古市場じゃインスプールのリールはABUカーディナル、ミッチェル、ダイヤモンドの3強で他は未使用箱入り娘でもなければそんなに値段付いてなくて「7250HRLA」も3千円ぐらいが相場で5千円もだせば結構買える。性能の差はあるといえばあるんだろうけど、どっちが良いと一概には言えないようなむしろ”個性”がある感じで、なぜクソ高い人気機種ばかりををありがたがるのか私には理解できない。なにしろコイツの値段といったら今回次に紹介する「ダイヤモンドスーパー99」と2台で2000円という堂々の”ごみスピ”価格での落札である。費用対効果考えればメチャクチャ良いリールだと思う。
かつ”熊の手”対策のローターから出っ張った棚も備えた初心者向けのインスプールスピニングであり、インスプール使ってみたいけどベールを手で起こしちゃダメってのが不安なんだよなとお嘆きの貴兄にもピッタリ。どうです?1台。
ただ、このリール我が家では出番がなかなかなさそうな感じ。大きさ的に「スピンフィッシャー714Z」「エメラルド350」あたりとモロかぶりで、渓流行くときにジェットスピンに付けて使ったら”気分”かなというぐらいか。しばらく蔵で待機だな。
お次は、みんな大好き大森製作所のインスプールでっせ。といってもサイズが大きくてちょっとルアー用という感じじゃないので全然人気がない機種「ダイヤモンドスーパー99」。
なんで99なんだろなと思ってたけど左巻が99で右巻が100のようだ、ABUアンバサダーが左巻だと数字に1足すのと逆に左は1引いてる。
正直、狙ってたのは「7250HRLA」で、2つまとめて抱き合わせてオークションに掛かってたのでオマケ程度に思ってたけど、実際手にしてみるとコレがなかなかに味わい深い1台で、何か出撃機会を考えてやらなあかんなという感じ。
スプール径が大きいんだけど、分解清掃しながら設計を理解していくとナルホドな感じで、薄いお握りのような三角のボディーに大きなインスプールのスプールとローターが乗っかってる塩梅といい、左巻専用で裏っかわがミッチェル300みたいに背骨の部分が盛り上がってるスッキリとした形といい、なかなかに格好いいリールで、丈夫に作ってある感じの重さといい、我が家にあるリールではコレまで9500ssと706Zが漢らしくて格好いいリールの双璧だったけど、それらに匹敵するぐらい漢らしい。
内部の機構は、大森ダイヤモンドがハイポイドフェースギアにたどり着く以前のリールのようで、おそらく60年代とかのリールなのかも。ワシより年寄りの御先輩。
ドラグは普通にこの時代から3階建てなのねというかんじで、ドラグパッドへたってるので例によってテフロン仕上げガラス繊維製のパッド追加してそれなりに使えるドラグに調整。
パカッと本体開けると、ギアは斜めに溝を切った傘状のギアとギアが接触するスパイラルベベルギアである。
おおーッ、ミッチェルの名機408やそれに影響受けているだろうPENNスピンフィッシャー722Zに搭載されているギアやんけ。たしか刃切りしてギアを作らなきゃならんのでそのための工作機械やら技術がいるけど、力の伝達効率は良く、つまり軽く力強く巻けるギアで、滑らかさも併せ持つとか何とかだったように思う。
凝ったギア入れてんなーと感心しつつ分解清掃していくと、驚きの事実が判明。
このリールにはボールベアリングが1ッコも使われていません。
ベアリングレス機。なんと漢らしい。
右の写真のように油溝を切った真鍮の芯にこれまた真鍮のスリーブを被せていて、この芯とスリーブの接触面の滑らかさでローターの回転の滑らかさを確保している形。
もちろん、ボールベアリングが入っている場合ほどの軽い回転ではない。でも、古いグリスとかぬぐって新たにリール油注してグリスシーリングしたら、まずまず使えるぐらいの巻きの重さでしかなくベアリングなしでもスピニングリールが成立するというのは、ちょっと衝撃を覚えるぐらいの事実。
でも考えたら、ベイトキャスティングリールにおいて、アンバサダーの「C」なしのモデルはスプール軸を受けるのにボールベアリングじゃなくて銅のブッシュが入ってるけど、重いルアーなら問題なく「投げられる」ぐらいの回転が得られるんだから、不可能じゃないんだろう。
ただこういうリールが成立するには、製作精度が高いのは当然として、力の伝達効率が良いスパイラルベベルギア方式も貢献しているんだろうし、ギア比が多分3倍チョイぐらいと小さく力強い設定なのとかもあわさっての全体の設計の上手さによるんだろう。ギア比が小さいからスプールの直径大きくして巻き取り速度を稼いでいるようにも見える。さすが大森製作所、栴檀は青葉から香しか。
という感じで、サクサクと分解清掃してたんだけど、落札時は「動作確認済み」で問題なく作動していた逆転防止機構が、実は爪を歯車に押しつけるバネが錆びていてギリギリ持っている状態で、このまま触らずにここはソッ閉じだと思ったんだけど、なんと、錆を止めるためにちょっとだけグリスを盛るかと触った瞬間ポロッと折れた。大ショック。
あれこれ悩みつつも、ベールスプリングじゃなければそれ程耐久性はイランということは学習済みで、タチウオ用のステンレスリーダーを加工して爪を押しつけるようにバネっぽく細工して復活させた。一安心一安心。
スパイラルベベルギアってルアー用だとミッチェルとPENNに見られるぐらいで珍しいけど、この時代の日本製投げ釣りリールには意外に多く使われていたのかも知れない。使い道なくて放置中のオリムピックの「モデル93」もスパイラルベベルギア機だ。
力がある巻き上げで、遠投した仕掛けをゴリゴリ巻くのに向いていたのだろうか。私は投げ釣りあんまりしないので、「スーパー99」を使うとしたら、ギア比が低くてゆっくり巻ける、かつ力もあるのを利用してデカいルアーでスズキ狙いとかかな。こいつに武勲をあげさせるために釣りモノ探したくなるぐらいに味のある1台である。
最後の1台はグッと趣が異なるリョービ「サイノスSS700ZM-T」。
リョービの釣り具部門がJ屋に移ってからの時代の製品のようで、本体・ローター・スプール全部樹脂製で、おかげでカタログでは235gという軽量を誇っている。
”樹脂製リール爛熟期”に隠れた名機が実ってたんじゃないか?っていうのを探してたときに買ってしばし放置してあった。ちなみに某中古釣具屋の年末割引で税抜き800円。定価は3,400円と”安物”とまではいかない普及品。
コレがなかなか悪くないリールなんである。
分解していくと、まずはドラグが滑りの悪い赤い繊維のドラグパッドにワッシャー1枚で”ドラグノブ=スプールを固定するためのツマミ”系ドラグなんだけど、そのあたりはもう慣れたモノでフェルトを底に敷いて調整幅稼いで滑りはテフロン仕上げガラス繊維製のパッドで確保という感じで使えるドラグにしてしまうと、ラインローラーは直径大きいラインに優しそうなのがついてて、しかも錆びない樹脂製ブッシュ入り。逆転防止機構がメタロイヤルと同様のローターの裏に爪の掛かる歯を設けた「マルチポイントストッパー」方式。と、悪しき高級リール化への階段であるラインローラーへのベアリングやら瞬間的逆転防止機構の搭載に至っていない良い塩梅の進化具合。まあ安いからおいそれとはベアリングとか入れられないってだけかも知れないけど。
ベアリングはローター軸に1個入ってるだけだけど、ちゃんと軽くクルクル回ってて回転バランスも悪くないように思う。ちなみにハンドル軸は真鍮のブッシュで受けている。
J屋が吸収したスピニングリール屋である大森製作所に関しては、「ロングマイコン」とか見る限りどこが作っても同じような安リールでしかないと思うしブランド自体消えてしまったけど、リョービについては少なくともこのサイノスはリョービらしい技術が残っているうえにまだ日本製で、ちゃんとリョービの日本工場の人にJ屋が飯食わせてたようで立派である。大森の件では正直恨みに近い感情を抱いていたけどちょっと見直した。さすがにもう工場は日本にはないようだけど今でもリョービブランドのリールはJ屋で売っているようである。
ただコイツをコレから使っていくかというと、樹脂製の安いリールとしては大森晩年の「アクションM」を使っていくことにしているので出番が想定されず、あと往年の大森ダイヤモンドのようにハンドル軸のギアに堅い鉄系の軸が鋳込んであれば、ブッシュは真鍮製で問題ないんだろうけど、亜鉛鋳造一体成形のギアの軸受けとして真鍮はどうなのか?どっちか削れちゃうんじゃないかという不安もあって不採用とした。その辺もう少し詳しく次回書いてみたい。
とはいえ安く仕上げつつもなかなかに工夫の跡がしのばれる1台ではあり、ネットオークションとかで売っても低評価で手間賃にもならん気がするし、捨てたり死蔵するのも惜しく思ったので、もう使う機会がなさそうなシマノとダイワのスプリンターマックスと詰め合わせにして使ってくれそうな男の子のいるご家庭に適当に竿も見繕って進呈してきた。ぶっ壊れるまで使ってもらえれば嬉しいナと思う。
いろんなスピニングをいじくってきたけど、どのリールも完璧じゃないけど利点や愛すべき面とかがありそれぞれに個性があって、実釣に支障を生じさせるようなダメな点がなければ、どんなリールでも使い込んで愛着を持つことはできるような気がする。
「スピニングリールの性能は基本的に値段に比例するので、可能な範囲で良いのを買ってください」的なことをいけしゃあしゃあとのたまう、釣具屋のまわし者の言ってることなんて全部無視して良いので、自分が欲しいリールの性能や機能はなんなのか、自分の好きなリールはどんなのか、それを考えて悩むこと自体が楽しくて仕方ないことなので、くれぐれもその楽しみを他人に任せたり奪われたりしないように自分でよく考えて、道具選びの面白さを存分に楽しんで欲しい、と老婆心ながら思うのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿