2017年2月25日土曜日

沼に足を突っ込んでみなければ「奥が深い」か分からない

 前々から「奥が深い」という言葉自体に違和感を覚えることが多かった。
 まあ、極端な例を出せばその道うん十年の求道者とかが言うならそうなんだろうなと思うが、TVのレポーターとかが体験コーナーとかでちょっと囓っただけで「奥が深いですねー」とか言ってるのをみると、「思いっきり浅いところしかオマエみえてないやろ!」と突っ込まずにいられない。

 まあ、どんな趣味だろうと事がらだろうと、突き詰めていけばどこまででも深く探求できるのが人間の好奇心とか向上心とかの性質で、逆に「奥が浅い」物事などないとも思うのだが、割合良く目にする台詞である。

 ヘラブナ関係の情報をネットであさっていても「奥が深い」という言葉は散見されるので、まあ浅いわけはないだろうが、ネットに転がってる程度の情報でいちいち「深い」と感心するほど「うぶ」でもないスレッカラシな釣り人なので、いかにも大層なことをやっているような大仰な書きぶりの割りにしょうもないことしか書いてなかったりすると鼻ほじりながら半笑いで読ませてもらっている。

 しかしながら競技の世界もあり、釣り具メーカー、餌メーカーが本腰入れて普及させている釣りだけあって、様々な試みがなされていて技術の情報から道具餌の情報から、多種多様な情報に溢れている。玉石混淆なんだろうけど、どれが玉やら石なのやらまだ判別もつきかねる。
 こういういろんな釣り方やらがあることを指して、えてして半可通は「奥が深い」とか言ってしまうんだろうと想像に難くないが、情報が多様に広がっている様は「深い」のではないと思う。
 じゃあどう表現するのかといえば、正解はないのかも知れないけど、椎名誠先生が釣りをするようになって防波堤周りの釣りがいろんな釣りものがあって「情報が華やいでいて楽しい」とか書いていて、なるほどなと読んだことがある。シーナ先生さすが物書き。紋切り型の「奥が深い」よりはずいぶん的を射ている気がする。

 そういう「情報が華やいでいる」ヘラ釣りについて勉強していて、自分はどんな「ヘラ釣り」をしたいのか?という問いが頭に浮かぶ。

 最先端のテクニックや道具、餌を駆使して数を釣りまくり、競技の釣りで勝ち抜けるようなトーナメンターを目指すのか?
 たぶん違うだろう。ハゼとかワカサギとか100釣っても全部美味しく食べられる釣りなら数を目指すのも一興だと思うが、釣りを楽しむためだけに数を競うのには正直抵抗がある。罪深き釣り人がなにを今更な感じだが、シーバス釣りで間違って1日5匹以上とか釣れると、なにか悪いことしているような尻の据わりの悪さを感じるときがある。
 ヘラ釣りにおいて数を釣るという方向を試行するのはある程度必然だと思うが、数が目標なのか、もっというと人より釣りたいかと考えると、それ程釣りたいとも思わない。
 じゃあ一発大物かというとヘラブナはそういう性格の釣りものではあまりない気がするし、近所に管理釣り場があるから、気楽に行けそうだから釣りたいのであって今のところそれ以上ではない。

 ということで、結局いつのも他の釣りものと一緒で、「面白く釣る」「楽しんで釣る」ぐらいしか根本的には目標がない。
 まあ、あんまり釣れないとつまんないので、そこそこアタリとかの反応が出て、半日なり1日釣って5から10も釣れれば、匹数的には充分じゃないだろうか。
  
 その中で、渋いときにでもコンスタントに釣果は出すとか、良く釣れるときには色々実験してみるとか、最初のうちはスカ食うカモだけど楽しんでみたい。

 当面は何とか実戦で使えるようなスカ食わないレベルの技術の取得が課題になるだろうが、そのうちやっつけてしまいたい「ナマジ的課題」もすでにいくつか見えてきたように思う。
 見えてきた課題を総括すると「ヘラ釣りでは高度で複雑な技術とそれを支える最高の道具や餌が必要だ」という、「その幻想をぶち殺す」だろうか?

 趣味の世界だから、職人が作った工芸品的な道具にお金をかけて道具の目利きから楽しんでももちろん良いし、商品の売り上げと自身の価値観をかけたトーナメンターが時に宗教じみた信念で己の信じるテクニックを世に問うてもぜんぜん構わない。好きにしてくれだ。
 でも、そいういうのが前面に出てきちゃうと敷居が高い感じがしてきて、テキトーにゆるふわな感じでちょっと近所でヘラでも釣ったろかという人間は肩身が狭くてやりにくい。
 なので、シンプルに低コストにを念頭に「ゆるふわなヘラ釣り」を真面目に考えてみたいと思っている。
 しょせん私の釣りは、生活も名声もなにもかかってない、ただの暇つぶしの釣りである。楽しく暇がつぶれればそれで重畳。

 「ゆるふわ」に楽しむのにまずは、ヘラ釣りって道具がめんどくせえという印象があった。釣り座にパラソルとか付いてて道具が多そうだと感じていた。
 でも、実際に道具を買って準備してみると、普通の釣りに無いもので必須なのは「竿掛け」ぐらいで、腰痛持ちなので背もたれ付きのクッションマットなんてのも買ったけど思ったほどお金もかからなかった。餌まだ買ってないけど全体で4万5千円ぐらい。今時そのぐらいは竿一本でもかかったりするけど、竿は安竿が好きなので大手メーカーの初心者用を中古で買ったら1本3千円ぐらいだったので長さ変えて2本買った。道具入れとか竿ケースとかは他の釣りで使っているものを流用できそう。

 でもって、一番お金がかかったのが「浮き」で今後かかりそうなのが「餌」。

 「浮き」は、天然素材であるクジャクの羽の芯とかを使って手作りなので、1本3千円からするのもまあそんなもんだろうとバルサ製やウッド製のルアーの値段と比較しても納得はする。
 納得はするんだけど、でもこの釣りの肝の一つの道具だとはいえやっぱり高いと思ってしまう。
 浮きの性能を決める要素って、目盛りの振ってある「トップ」の素材(の違いに由来する太さの差)、本体ボディーの「浮力」、トップから足まで含めた全体の浮力というか重心のバランス、の3点が主なもので、他の要素としては水の抵抗とか慣性力とかもあるんだろうけど、まあそれ程大きな要素でもなさそう。あとは趣味や好みの話で、だからこそ売ってる「ヘラ浮き」はどれもクジャクやカヤ製のボディーでそれ程奇抜な形はなくて失礼ながら似たような形に収斂されて落ち着いているのだと思う。
 だったら、自分で作ってしまっても良いんじゃないかと考えてネットで情報収集してみると、結構作っている人もいる。それでもカヤを熱したガラスチューブで整形してとかは面倒くさそう。
 もっと「ゆるふわ」に、見た目とか気にしないのなら、いい加減に作ってしまえないだろうかと考えている。
 まずは、使える「浮き」というのが釣り場でどういう動きをしてどんな機能を持っているのかは釣ってみないと知りようがないので、とりあえずはF師匠と釣り具屋さんに勧められた浮きを使って釣れるようにまでなってみて、そこから「いい加減な」浮き作りに挑戦してみたい。

 「餌」のほうだが、これがまた餌メーカーのお抱えテスターとかの記事を読んでいると、使い分けがどうたら、ブレンドの比率がどうたら、作り方がどうたら、複雑怪奇でかつ人によって言ってることが違う。
 まあ、この辺はルアーと全く一緒。メーカー側はいろんなの売ろうとして躍起になってるけど、実際には自分の釣り場やら釣り方にしっくりくるパターンやら得意パターンやらを作ってそれをベースにアレンジするぐらいが休日釣り師には関の山で、沢山あって迷うのは楽しいかも知れないけど、ルアーと違って「餌」は日持ちの問題もあるので、そんなにいろんな種類買えるかよという感じ。
 餌は練れば粘ってバラけにくくなるし、水を多くするとばらけやすくなるというので、その辺の微調整で何とかなることも多いだろうし、極論すれば一番バラけやすい餌と一番バラけにくい餌の2種類を買って混ぜてやれば好きなようにできる理屈である。
 「餌はバラケだけが要素じゃない」とか理屈と膏薬はどこにでも付くんだろうけど、メーカーからも親切に初心者用に釣り方別に配合比率を調整した餌も売ってるので、素人の暇つぶしの釣りぐらいそれで何とかなるように、餌以外の仕掛けだとかも含めて技術を磨いた方が正しいように思う。
 ルアーでも釣れないときに、ルアーが原因だと思い始めるとドツボにはまりがちなのと一緒だろうというのは想像に難くない。釣れやん魚はなにやっても釣れやんのである。

 もういっちょ、ついでと言っては何だけどナマジ的には重要案件。「おもり」は重さの微調整のできる鉛の板おもりを使うのがヘラ釣りの常識だが、水鳥の口に入る大きさのおもりには鉛を使わないと心に決めているので、スズ製のガン玉で何とかする。小さいサイズの個数調整や必要なら削って調整で対応する。水鳥は小石を飲んで砂嚢(砂肝)に貯めて食べた餌をすりつぶすのに使っている。散弾銃の弾や釣りのおもりなどで小石大の鉛が環境中にばらまかれると、それを食べた水鳥が鉛中毒で命を落とす。ラインが高切れしておもりが水中に残ってしまうことなど稀なことかも知れないが、暇つぶしの釣りごときで水鳥の命を危険にさらすのは可能な限り避けておきたい。スズ製のおもりは鉛製に比べて若干軽く、そこそこ高価だが釣り業界全体で考えて欲しいと思っていて、とりあえずはスズ製のおもりで充分釣りになることを証明していきたい。ハゼ釣りテナガ釣りワカサギ釣りではスズ製おもりで何の問題もなく釣りができている。


 とまあ、釣る前からゆるふわにして壮大な野望を抱いているのだが、実際に釣ってみれば思うようにはいかなかったり、思いもよらない発見があったりするのだろう。
 正直言って、隣で座って釣っても技術で差が出るような「技術的」な釣りって、私の最も苦手な釣りだと思っている。
 ルアーの釣りにおいては「技術なんて投げて巻くだけ」と割り切って、釣り場やタイミングの選択でいかに「釣れる魚」を見つけるかを主眼において釣ってきたつもりである。

 ただ、釣りにおいて「技術」なんていうのは、「どんなアタリも拾える魔法の浮き」やら「どんな食い渋りでも口を使わせる奇跡の餌レシピ」とかみたいな、ちょっと考えただけであり得ない詐欺のような都合の良い技術ではなくて、丁寧に基本を押さえた手順とかちょっとずつ工夫を加えて手にした手返しだとかの効率化とか、辛酸舐めて頭と体にたたき込んだ得意技とか、そういう地道なものだと理解するぐらいには老成した釣り人になってきているので、座って釣れる釣りならジジイになってもできるだろうし、そろそろ始めて良いタイミングなのかなと思う。
 始めてみて「やっぱりオレには合わん!」となるのか、ハマって毎週詳細に複雑な餌の混合についての報告を書き始めるのか、まあ釣ればおいおい分かるだろう。できれば気楽に長くつき合うことができればいいな。

 「釣り」についての人それぞれの考え方は、前の方でも書いたけど時に宗教じみていると感じられる。
 いまの「ヘラ釣り」の競技の釣りをベースにした考え方がある中で「ゆるふわ」とか、真面目にやっている人からすれば馬鹿にされたように感じるかもしれない。
 せっかくそれで楽しんでいる人がいっぱいいるのに、それに反旗を翻すようなコトを書くのは、教会とかに行って「神などいない!」と叫ぶような無粋な行為かもしれない。でも書く。どんな神を信じようと自由だし、神などいないと信じてもいい。ここは教会じゃないし、ナマジは少数派の天邪鬼の代弁者でありたいと思う。
 お気に障ったらご容赦を、鼻で笑いながら楽しんでいただけたなら幸いです。こうご期待。

4 件のコメント:

  1. こんばんは。お久しぶりです。こちらここのところやっと平穏な日が戻って来たような来ないような生活してます。三寒三温す。w
    自分のネットは更新止まったままですが、ナマジさんのこのブログはずっと読んでますよ。明日鳥取に行くので、また報告しますー。

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  2. KAZUさん こんにちは

     鳥取は渓流解禁かな?良い週末になるといいですね。

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  3. ツーテンの虎ファン2017年3月5日 1:13

    こんばんは!
    土曜日は全国のヘラ師が100名ほど集まる場に行ってきました。
    私がヘラ釣りの経験がないと言ったところ、暖かくなったら連れて行っていただけることになりました。
    私もヘラ釣りデビュー間近です(笑)

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  4. ツーテンの虎ファンさん おはようございます

     なんと、それではそのうちご一緒しましょう。
     その前に、シーバスリベンジですかね。また連絡します。

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