2025年7月5日土曜日

SEAが好き!

77シーボーイ、78シースキャンプ、85シーボーイ
 「やっぱハンドルノブはベークライトが良いよ。丈夫だし経年とかで変形しないし。」   

 釣り宿ナマジに集う、違いの分かるフライマンどもがそんなことをのたまっちょりました。高級そうなウッドノブとか吸水で膨らんで回らんようになるとか、木材に樹脂浸透させたのもあるけど、そんなしち面倒くさいことするぐらいなら最初から樹脂にして、その分安くしろとのこと。ベーク最高、次点でエボナイトも悪くないそうな。フライリール自体シンプルで、ハンドルノブもライン引っかけないようにってのもあって極力単純で必要最小限の小さいのがついている。小さいけどフライリールは増速してなくてギア比1:1なので、その小さなハンドルノブで意外と力強く巻けたりする。その分巻きが遅いので、たとえスプールの芯の部分の直径を大きくしてあるラージアーバータイプでも、200m下巻きしなきゃならんとかになると、結構うんざりしたりする。

 そんな釣り具オタどものベークライト談義を受けて、まあアニオタのワシとしては「ベークライトって言ったら、起動実験で暴走した零号機を拘束するのにラボ全体に特殊ベークライト注入して固めたぐらいだからな」などとワケの分からないことを口走っており、ってなもんだったけどベークライトって検索して調べてみると、最も早く実用化された人工合成樹脂で、フェノール樹脂というものらしいけど、商品化したベークライト社の命名に由来してベークライトの呼称が一般的に使われているらしい。電気的、機械的特性が良好で、合成樹脂の中でも特に耐熱性、難燃性に優れるという特徴を持つそうな。価格が比較的安価なのもポイント高いか。丈夫で安価で成形も容易な合成樹脂となれば、使い勝手は良かっただろうし、ハンドルノブのような常に摩擦熱がついてまわる部分には耐熱性に優れている点が向いているのだろう。熱で溶かして成形する樹脂じゃないので固化させてしまえば熱では溶けないってことか。ついでにエボナイトも調べて、あれって人工合成樹脂じゃなくて天然ゴム由来の樹脂だと初めて知って驚いた。

 当然、リールに使うとそれまでの金属素材に比べて、軽く、耐腐食性に優れ安価な製品を作ることができただろう。現在リールに使われる樹脂系の素材としては、やっすいナイロン系(ガラス繊維強化)の樹脂やらルアーでも使われるABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、ブッシュとかに使われるジュラコンとかのポリアセタール樹脂なんかもあるけど、一般的には炭素繊維強化プラスチック(FRTP)のいわゆるグラファイトボディーとか呼ばれる樹脂系素材が一般的で、PENNでも4桁スピンフィッシャーの5500ss以下が”グラファイトボディー”になってるし、新しいセネターとかフレームがグラファイト素材のものもある。でもPENN社の黎明期の1930年代はじめとかには、まだそういう樹脂はなかったので、ベークライトが選択されていた。そういう合成樹脂のいち早い取り込み方、使い方の上手さがPENNの両軸の躍進を産んだ一因だろう。

 ちょっと脱線して、炭素繊維強化プラスチックについて、なんかイマイチどんなものなのかよく分かってなかったけど、今回ちょっと調べて、竿のブランクスが典型だけど、樹脂を含ませたシートを成形しつつ高圧下で”焼いて”樹脂部分少なく炭素繊維主体に圧着した仕上がりにした”ドライカーボン”と普通のFRP(ガラス繊維強化樹脂)のようにカーボンの繊維を樹脂で固めた”ウェットカーボン”があるということで、リールとかのカーボンボディーはウエットのほうなんだなと理解した。

 で話戻して、強度的にはさすがに金属には劣るベークライトを、PENNでは金属の輪っかで補強して丈夫なリールに仕上げたりもしているんだけど、今回紹介する、「77シーホーク」、「78シースキャンプ」、「85シーボーイ」達Sea軍団(冒頭写真の3台)は、金属の輪っかの補強無し、ベークライト直留め方式で実用的な強度のあるリールに仕上げてある。補強の入ってない単純な分、お値段控えめに設定できただろうし、整備性も悪くない。ぶっちゃけ小型機に求められる強度ってそこまでじゃないし、両軸受けリールはそもそも90度回転方向を変換するスピニングと違って、構造上丈夫に仕上がるのがあたりまえなので、コレで十分と言えば十分で、だからこそ使い込まれた固体を中古で買っても、整備してやれば問題なく復活するのだろう。 

 で、トップバッターの「77シーホーク」、バラして部品数たったこれだけ。どれだけ単純な設計かおわかりいただけるだろうか?ちなみに革製のサミング用パッドは自作で追加したもので、純正状態ではブレーキといってもバックラッシュしなければ良い程度のクリックブレーキしかついていない。ボールベアリング?アホかそんなもん熱に強いベークを使ってるんだから、ベークに穴開けときゃ充分(なのか?)。唯一贅沢しているのが3倍ぐらいに増速しているギアで、それでも歯が斜めじゃないストレートなギア。

左:フライリール、右:台湾リール
 もちろんもっと単純なリールがあることも知っている。例えばフライリールやムーチングリール、落とし込みリールのような”センターピン”型のリールは増速さえしていないギア無し1:1の単純さを持っている。ただそうすると巻き上げ速度が遅くて、さっきフライリールのところで書いたけど長尺のバッキング巻くのがしんどくなるぐらいトロ臭いリールになる。コレを回避するためにフライリールで言うところのラージアーバー化を押し進めてスプール直径を上げまくって巻きの遅さを改善しているリールもある。”台湾リール”とか”風車リール”とか呼ばれるもので、沖縄のオジイが昔艪を練りながら、あるいは船外機のスロットルを開け閉めしながら片手でスプールの根元を弾いて道糸の出し入れをしつつアオリイカとか釣ってた代物で、なぜか我が家にも1台ある。ただコイツはデカくて持ち運びが不便。その点、77シーホークは実に良い塩梅になっていて、3倍の増速はイライラせずに済む程度には素早く道糸回収できるし、3倍程度のギア比だとデカい魚が掛かったときには力強く巻ける。どれだけベアリングをぶち込んだり、工作精度をあげたりしたところで、巻き取りに掛かる力を決めるのは結局ギア比とスプール径、ハンドル長なので、ハイギアの最新の高級ベイトリール様とワシのシーホークで綱引きしたら、なんの問題も無くシーホークで勝てる。あたりまえの話だけど分からん釣り人多いのではないだろうか?分からんかったら”テコの原理”とかから勉強し直すように。スピニングならまだ本体の剛性の差で単純なゴリ巻き勝負だと、ゆがみが生じない高級リール様が低ギア比のリールに勝つなんてことがあり得るかもだけど(ポンピングありなら安物低速機で勝てる)、両軸受けは樹脂製の本体でも軸がたわむような素材でできてるワケじゃなし、ギア比以外に勝負を決める要素がないはずである。なぜ自分が護岸の足下を狙う”岸壁泳がせ釣り”でシーホークを使うのかといえば、ギア比が低くて力勝負で巻き上げるのが楽だからというのも要因の一つである。

 もう一つこのリールを使う理由には、繰り返しになるけど、このリールの単純さがある。心情的にも好ましく思い、整備性の良さや故障する箇所の少なさも利点と考えている。その単純さは両軸受けリールが生み出されてまもなく、まだ技術がなかったので単純な設計しかできなかったという理由でそうなっているのではない。1933年の発売時に既にPENN社自体が、クラッチも逆転防止もドラグも、樹脂を補強する金属の枠も備えた、後の標準的な設計になる「ロングビーチ」も同時に発売していることからもそれは明らかで、にもかかわらずPENN社としては、この単純なリールをなるべく安価で、でも実用性を十分確保して釣り人に提供しようと、削れるところをとことんまで削った結果の単純さなのだと理解している。増速するギアがなければ巻きがトロくて使いにくい、いっそクリックブレーキは無しでもいけるか?と思うけど実際に使ってみると、素早く仕掛けを落とすときにはクリックブレーキは邪魔になるけど、アタリを待つときや魚とのやりとりの時にクリックブレーキがないとスプールが回転しすぎてバックラッシュする恐れがあり、これは省略できない。逆転防止機構が無いのは根性でハンドルで止めるかスプール親指で押さえろって設計だけど、普通の釣り人が桟橋でオカズ釣るとかぐらいならそれで充分なのだろう。ワシャ親指火傷したくないので革パッド追加してるけどな。っていう、実に攻めた結果の単純化であり、実釣能力は低くないのである。それは販売年が1953年から1980年代後半にまでわたるロングセラーだったことからも裏付けられる。その研ぎ澄まされ無駄を省いた攻めた設計思想が分かれば、コイツでちょっと良い魚を釣って、魚釣るのにそんなご大層な道具なぞいらんのやぞってことは示してみたいと思うのである。なかなか難しいけどな。同じような性能のダイレクトリールには洋銀に彫金仕上げの豪華な逸品から素朴な真鍮製からけったいな迷品から”ケンタッキーリール”と呼ばれて多種多様に存在するけど、それらとはちょっと出自が違う77シーホークをワシの最初で最後のダイレクトリールと心に決めて、いつの日か岸壁でデカい根魚でも釣ってみたいと思っているのである。
 あとダイワにシーホークって名前のベイトキャスティングリールがあるみたいだけど、てめぇんとこ知財関係小うるせぇくせにそれはどうなのよ?と思うぞ、昔PENNの下請け兼代理店だったから了解取ってるのか?

 で、お次が「78シースキャンプ」。そもそもスキャンプ(Scamp)ってなんぞ?って調べてみると、「ならず者、腕白、お転婆」等の意味らしい。確かに、クラッチがあってフリースプールにはできるけど、クラッチ繋ぐとダイレクトにスプールとハンドルが繋がって、デカい魚の急激な引きに高速回転するハンドルに指打ちつけたりして、”ナックルバスター”とかこの手のドラグのないリールは呼ばれてるので、腕白っぽいと言えばそうかもしれない。そもそも既にスタードラグが付いて逆転防止機構の搭載された両軸受けリールを製造していたPENN社がなぜ、後からナックルバスターな機種を追加する必要があったのか?ワシにはいまいちピンとこんのじゃ。あっちの海系の釣り人には頑固なのが多い印象だから、使い慣れたナックルバスターなリールを求める声が多かったとかだろうかとは想像しているけど、両軸機種は最初からスタードラグがついているベイトリールとか使ってたワシとしては、ハンドル逆転する機能っていらんよね?と思ってしまう。スピニングでもまともなドラグがついてるリールならハンドル逆転はしなくて良いと思ってるぐらいで、ベイトでハンドル逆転があれば便利というか使い道があるのは、船釣りで底をとり続けるのに波で上下する船の動きに合わせてラインの出し入れをするような場合に、ハンドル逆転ができたら使うかな?ぐらいしか思いつかん。一回使ってみれば良さが分かるとかだろうか?あんまり優先度が高くないので出番はあんまりつくれない気がする。

 まあ、パカッと開けて中身を見るために入手したというのが実情なので分解整備してみる。
 パカッと開ける前に、フリースプールになって投げることも想定しているリールなので、スプールの軸の両端はベークライトで直受けではなく、キャップと一体化した金属スリーブで受けている。ハンドル側が6角ナット型で締めっぱなし、蓋側がキャスコン(メカニカルブレーキ)摘まみとして調整できるようにバネが入っている仕様。ちなみに工具無しで外せない締めッパ前提のハンドル側にはれいの小っちゃい玉の油差し口が設けられていて”さすぺン”なのである。
 でもってパカッとご開帳すると、そこはやっぱりPENNでオリハルコンな感じの金色に部品が輝いている。アンバサダーだとステンやアルミ、クロームメッキで銀色なのと好対照。やっぱり海で闘う”武器”はオリハルコン製じゃなきゃだぜ。
 クラッチの2本のバネを使っててクラッチ板の出っ張りがピニオンギアが填めてる部品を押し込むと、スプールがピニオンギアからハズレる方式は「レベルマチック920」にも「インターナショナル975」にも引き継がれていて、マイナーチェンジで改善は続けても、問題を生じず信頼できる方式はテコでも変えないのはこれまたさすぺン。
 ギアはピニオンが真鍮でメインが真鍮軸の亜鉛っぽい素材のもので斜めに歯車が切ってある。
 ベークライトは金属よりは脆いだろうけど、これだけ肉厚で仕上げていれば強度的な不足はないだろうというもの。
 逆転防止もないような単純設計なので、77シーホークほどではないにせよ全バラしても部品数もたいしたことはない
 で、PENN純正グリスでグリスアップしてダイワリールオイルⅡで注油してって、組み上げていくんだけど、今回メチャクチャ参考になる動画チャンネルを見つけたのでついでに紹介しておく。ユーチューブの「支度部屋」ってチャンネルなんだけど、従来型PENN両軸機のメンテナンス動画がいっぱい上がっていて、特に役に立ったのがクラッチレバーの取り付け方で、バネの力でクラッチレバーの先の凸部分が蓋の側面で止まるつくりなので、当然ながらレバーがついていない状態では止まらずもっと回ってしまっている。これにレバーを取り付けるためにワシこれまで指の皮剥けそうになりながら裏側からグリッと回してなんとか取り付けてたんだけど、目から鱗、レバーの凸部を表側にしておいてバネの力が行きつ戻りつで拮抗する所まで持ってきておいて、ササッとひっくり返してネジで留めてしまうという知ってれば簡単至極な方法を学んだ。あと、グリス塗るのにワシこれまで綿棒とか使ってたけど筆を使われていて、早速真似してみたら薄く広くまんべんなく塗れてグリスアップがはかどりまくり。ユーチューブっていつ頃からか広告が増えまくって見る気が失せて、チャンネル登録なんてnorishioさんのところぐらいしかしてなかったけど、これは登録した。お薦め。
 てな感じで、バッチリ整備できたんだけど、クラッチ切ってスプール指で回してエラい回転し続けるので感心する。まあお作法どおりフレーム組むときにゆるく締めてからハンドルグリグリ巻いて良い感じにしてから締めて組み上げているので歪んだりしてないにしても、ボールベアリングなんてなくてもスプール弾いて回すだけならなんの問題もない。軽いルアーの初速でスプール回さなければならないとなると、回り出しの慣性力突破とかにスプールの軽量化やボールベアリングは効いてくるんだろうけど、重めのルアーやらオモリやら投げるのなら気にしなくても良い要素であり、いわゆる”店頭性能”のこけおどしでしかないんだろうなと改めて思う。バカには分からん話だと思うけど、現物いじくって自分で考えてしてるとそのあたりがよく分かってくるので何事も経験だなと思う。最新鋭の旗艦機種買っておけばそれで安心できるバカはリールの歴史を紐解いてお勉強などしなくて済むので楽でいいやね。釣具屋も儲かるしダレも困らんけど、ワシャ基本的にモノ売ろうとしてるやつの言ってることが、洗剤の「驚きの白さに」とかなんも変わってないのに永遠に言ってるのと同じことで、どの方面でも嘘や大げさ紛らわしいのがあってあたりまえだと思ってるので、まずは信用せずに自分で基礎から調べる面倒くさい作業を楽しむことにしている。なぜボールベアリングさえ入ってない78シースキャンプのスプールが指で弾くと回り続けるのか、簡単に説明できる理由があるんだけど、種明かしはそのうちするのでまずは自分で考えてみましょう。

 で最後に「85シーボーイ」なんだけど、ベークライトの本体と蓋に金属枠の補強こそ入ってないけど、クラッチ切ってスプールフリーにはできるし、スタードラグ付きで逆転防止機構もついているという、従来型PENN両軸機同等というか、普通に船釣りにつかう両軸機に必要な機能は持っていて、正直「これれいいやんけ」っていう仕様のリールだと感じる。この感覚はあながち間違ってないようで「85シーボーイ」自体は1941年以降、1980年代後半までの発売となっているんだけど、同じような仕様で本体と蓋の樹脂がベークライト樹脂からグラファイト樹脂になった後継機「190シーボーイ」は1998年から現役のモデルということにミスティックさんところの整理ではなっていて、しぶとく支持されて生き残ってるようだ。190はギア比が初期3.5:1だったのが後期85と同じ3.1:1になったりとワケの分からん動きをしていて、どうもクソマイナーなリールのようで本場米国のマニア氏達も情報混乱しているようだ。ミスティックさんところの整理表の下の方にその混乱した様子が分かるタニさんところの関連スレッドにリンクが貼ってあって、「実際に数えたけど3.1:1だった」「PENNにはありがちな許容誤差」とか色々言ってるけど結論はでていない。でも「金属の輪っかもない飾り気のないリールだけど使える」「高すぎないギア比は良い、4:1を越えると問題が生じがち」とか評価している人はいて、ハタやら根からゴリゴリ引きはがしたり、淡水で大型ナマズをえっちらおっちら寄せきたりとかには低ギア比のパワーのあるリールには使い道があるようだ。3.1:1の低速ハイパワーを活かせば、太めのライン巻いて85シーボーイにも出番はつくれるかも。
 以前の持ち主の方は普通に船釣りで使ってたようで、今ではあまり見ることがないテトロン系(ポリエステル主原料)の編み糸を巻いて愛用していたようだ。今時なら伸びの少ない編み糸といえばPE(ポリエチレン)ラインが幅をきかせているけど、昔はテトロンもあればナイロンの編み糸であるダクロンなんてのも使われていた。そういう古い時代のリールだけど、なかなかにベークライトの優しい色合い風合いも伴って、良い味が出てきている気がする。
 ワシとしては雰囲気だけ楽しんでる場合じゃないので、使えるように分解整備していく。
 パコッと蓋を外すとスプールが真鍮にクロームメッキで、樹脂製に比べて重めだけど丈夫なのは間違いなさげ、箱の「85M」のMはメタルのMで金属スプールモデルにはMがついたんだと思う。
 で、この「85シーボーイ」はスタードラグ付き、逆転防止付きなのでハンドル回りを外していくと、スタードラグの下に、なんか既視感のあるぶっとい軸を中に通すかたちでドラグディスク達を押さえる筒状の金属スリーブが入ってるのはレベルマチック920と同様。
 そして本体ご開帳といくと、真鍮製半月板からクラッチ関係の部品が覗いているので1つ前の78シースキャンプと似てるんだけど、半月板を外すと、逆転防止機構があるのとメインギアにドラグが入ってるのが当然違う。ギアの直下に逆転防止のラチェットが挟まってて、そこに掛ける爪はギア刺さってる芯が生えている半月板を固定するネジを軸に使ってて、跳んでどっか行きそうな小っちゃいバネでラチェットに爪を押しつけている。基本的に半月板と本体を固定する4本のネジはなんかの軸にも使うという方針のようで、ピニオンギアに填まってる部品もそれを持ち上げるバネも、ネジが心棒として使われている。ちなみにギアはピニオンが真鍮、メインギアは亜鉛っぽい。
 ドラグは普通の顔して3階建て方式で、これがまたパッドは革素材。腐ってない革パッドが優秀なのはレベルマチック920で実感できたので、脱脂ののちPENN純正グリス盛って引き続き使用。ギア裏の赤ファイバーワッシャーは経年で腐りかかってたので、内径の合うポリアセタールのワッシャーの外径を削って換装しておいた。革パットはそのうちダメになるだろうけど、ABU純正のカーボンドラグパッドが外径一緒で内径ちょっと削ればいけそうなのでそっちに換装するか、自前でカーボンドラグパッドでっち上げるか、いずれにせよまたその時が来たら考えよう。
 ドラグと逆転防止関連で多少部品数は増えたけど、両軸受けリールってそんなに複雑化しないはずで、充分単純で整備性も良いと思う。填めるのちょっと苦労したのが、逆転防止の爪で、半月板を向こうに回しておきつつドラグの入ったメインギアを所定の位置に収めつつ、最後の方で隙間を使ってギア下ラチェットに心棒になるネジを刺した状態で爪を掛けて、半月板を回して蓋しつつ、隙間から小っちゃいバネを所定の位置に小さめマイナスドライバーで押し込むというパズルをクリアして、グリス塗ってオイル注して組み上げて無事整備終了。

 85シーボーイは、フリープール機能ありでドラグもついてるっていう普通に使えそうな機種なので、ちょい大きめなのをなんとかするか、それに似合う仕事を割り振れば出番はつくれそうに思う。見た目、蓋側のベークに「PENN」って文字浮かせているのとか、白いシングルハンドルノブとか昭和骨董な感じの良さがどうにもしびれるので、使って魚釣ってみたいモノである。低ギア比なので青物にはむかんきがするけど、根魚狙って根から引っぺがすにはワシも向いている機種ではないかと思ったりしている。ブレーキがスプールの軸を押さえるメカニカルブレーキだけだと、そのままではワシの腕では投げにくいので実戦投入するときにはそのへんもいじるんだろうな。まあなんにせよ現代でも使えそうな機種ではあります。

 100年近い昔の設計のリールだけど、ナックルバスターな78シースキャンプはともかく、77シーホークも85シーボーイも現代でもその単純、低速ゆえの力持ちな特性を活かした釣りはできそうで、なかなかに楽しくなってきたんだけど、他にも買っちまってる従来型PENN両軸機はあるので、そいつらも使ってみたいし、体は一つで寿命は限られていて、残された釣りの時間もおのずと限られているしで、どれから使おうかアタイ迷っちゃうの、な日々なのであった。