2022年8月20日土曜日

米国人に学ぶ多様性とかいうもの

  今回珍しくダイワです。雨降って作業できる涼しい時間にちょっとでも保留状態で貯まってるリール整備進めるかと、お楽しみリールは後回しで、ネットフリーマーケットで本命リールとまとめて千いくらのクソ安値で投げ売りされてたので、交渉して本命だけ買っても良かったけどモタクサしてる間に買われてしまうとしゃくなので、エイヤと買った時のオマケリールでございますが、いじってみるとこれがなかなかに面白かったです。

 モノとしてはダイワの「リーガルX2005-2B」という、樹脂製、ロングスプールで純テーパーの時代のわりと安いモデルなんだけど、なんといっても特徴はベールアームのところの、引き金をラインを拾った指でいっしょに引くとベールが起きる「オートキャストⅡ」とかいう機構。この機構、日本じゃそれほど流行らなかったけど、一時米国じゃ大流行で各社特許やら商標権の関係でいろんな仕組みや呼び名があったようだけど、必ずと言って良いぐらいにこの手のスピニングを作ってたぐらいで「左手でベール起こす時間ぐらいあるやろ?アメ人はせっかちやな~」と思ったモノである。

 さすがに、もうこの手のリールは売られてないだろうなと、米国釣り具通販大手の「バスプロショップス」を覗いてみたら、なんとまだ売ってやがる。シマノの「スピレックスFG」とかいう機種で、見た目も今時っぽくてシマノは米国用に今でも”素早く投げるための引き金”付きのスピニングを設計して売っているようだ。他にもあるかなと探してみたら、それ以上に衝撃のスピニングを発見。ダイワの「SSトーナメント」が売ってやがる!マジかよ!!国内では「ウィスカートーナメントSS」の名前で1980年代に登場、それまでサーフキャスティング用の大型スピニングに採用されていた純テーパーのロングスプールを樹脂本体の小型スピニングに初めて搭載、その後一大ロングスプールブームを巻き起こし、今のドデカコンパクトなスプール大きめのスピニングへの道筋を作った偉大なる革命機である。あるんだけど、流石に30年以上も昔のリールが新品で売ってるっていうのは、米国人の好みの多様性と良いものは買い支える選球眼の良さにやっぱり敬意を覚えるところである。SSトーナメントは2000年代ぐらいまでバスプロショップスでは現役で売っててその時点ですでに並外れたロングセラー機だったんだけど、よもや令和の時代にまた売られるとは思ってもいなかった。日本市場でABUのインスプールの「カーディナル3」が何度も復刻されるように、米国ではSSトーナメントはそれに匹敵する伝説的名機扱いなのかもしれない。外蹴りでまだ瞬間的逆転防止機構もラインローラーのベアリングも採用されておらず余分なモノは付いていない単純設計、本体樹脂製で大きめアルミスプールにデカドラグ、700以上にはグルグルコイル式のベールスプリング採用と軽くて壊れる要素が少なく使いやすく完成度は高く確かに名機だとワシも思う。おもわず700のほうにマウスが滑りそうになってすんでのところで踏みとどまった。円安じゃなければ摩擦抵抗少なくて滑ってただろう。くわばらくわばら。

 というぐらいに選球眼の良い米国の釣り人がお好きな、オートトキャスト(仮称)付きのスピニング、どんな塩梅なんだろうかというのは正直興味があって、出番はあんまり想定してないけど、せっかくなので分解整備しつつお勉強してみようってことにあいなりました。

 とりあえず、オートキャストの仕組みからまず紹介しておくと、そんなに複雑な仕組みではなく、上の写真で見ていただけるように、ベールアームの”外側”に出っ張りがあって、それをオートキャストの指をかけるところが伸びた根元のところでテコを使って押し上げて回してやってベールを起こすという仕組みになっている。

 適度な長さとか「Ⅱ」ってなってるぐらいだし色々工夫したんだろうけど右手人差し指で軽くベールが起こせるようになっている。ただ、回転にジャマな機構がローターに追加されているので、軽い回転とバランス的にはどうなのかな?という感じだけど、ワシゃあんまり気にしない人なので気にするほどじゃないかなとは思った。

 で、下の写真でちょっと分かりにくいけど、青で示したところが逆転防止の主軸にハマったブッシュの爪の部分なんだけど、ローター一回転につき一カ所しか掛かる場所がない。当たり前だけどハンドル逆転してオートキャストの引き金が手元に来て止まるためには止まる場所は手前側に一カ所しかありえず、何カ所も作ってしまったら用をなさないのは納得いただけるだろう。今時の”瞬間的逆転防止機構”に慣れた人から見たら、遊びが最大一周近くもあるってどうなのよ?って思うカモだけど、釣ってる間普段はストッパー外しておいて、タモ入れとかで片手を離す必要が生じたときだけストッパーを入れる”ミッチェル方式”を経験して普通に使えてしまうと、何の問題もないことがわかる。瞬間的逆転防止機構の利点って、ジギングやエギングでシャクりまくるときガチャガチャいわないっていうぐらいしかなくて、普通の釣りではハンドルを手で巻いている限りミッチェル方式で逆転する状態でも手で止めときゃ良いだけで全く問題ない。ローター一回転に一カ所だけのストッパーでもなんら問題ないことは使わなくても想像に難くない。何度も書いているように、シャクる釣りのときにガチャガチャいわない程度の利点のために、繊細で水が入らないように防水機能高めたりせにゃならんし、低温で油の粘度が上がって作動不良起こしたりもするという欠点だらけの機構を入れたリールばっかりの我が国の市場はアホやと思うんである。SSトーナメントも売ってる米国市場は賢い。

 分解自体は、本体蓋から開けていくのではなく、この時代のロングスプール機には良くある、まずスプールの台座を抜いてローターを外してから本体蓋を開けるという順番を知っていればどうということなく進めていける。

 スプール上下(オシュレーション)はハンドル軸からギアを介した減速式で今時みたいなS字じゃなくて単純な直線の溝。

 ボールベアリングはローター軸に一個、ハンドル軸に一個と最低限で、かつラインローラーには樹脂製のスリーブが入ってて、なかなか好ましい作り。

 全体的に、無駄なモノは入ってない感じだし、樹脂製本体は錆に強いしでなかなか実用性は高そうに思う。共回りのワンタッチつきウッドノブのハンドルもベールを起こす位置が理想的な位置に限定されるので投げたときの意図しないベール返りも生じにくそうだし、ドラグはカーボン繊維っぽいパッドの3階建てのが、大きなスプールを生かした大口径で入れられているし、このへんの安めのダイワは扱いやすく作ってあるんだろうなという印象。

 ひとつ困ったのが、ローター軸のギアにハマってるボールベアリング。

 ローターの下には海水入ります。っていうのを証明するかのように錆びまくり。まあ、海水入ってすぐ誤作動するような面倒くせぇ機構は入ってないので、錆びないように浸水させたら整備しておきましょうって話だけど、この手の安めのリールの常として、使いっぱなしで不具合生じるようになったら買い換え、整備は無し。っていう運用状況が目に見えるって感じで、本体からベアリングごとローター軸のギアは外れてくれたけど、ギアとベアリングが錆び付いて固着。ボールベアリングがシャーシャー鳴ってたので交換したかったけど諦めてパーツクリーナーで錆落とせるだけ落としてグリスモリモリでお茶を濁しておいた。ニッパーやら金鋸使ってベアリングむしり取るようにして外して新しいのに変えても良かったけど、そこまで手を掛ける気にもならず、全体グリス盛ってグリスシーリングで整備終了。

 シャーって音はしているけど回転は軽くなって、使う分には問題無さそうで快調。実際に握ってみて、ハンドル逆転で所定位置までローターを回してオートキャストとラインを指で引いてベール起こす、投げてからハンドル回してベールを返す。って想定しながらやってみると、たしかに左手でベール起こさなくて良い分、左手はずっとハンドルの世話だけしてれば良いし、右手でパチンとベール起こすのも素早くて手返しは良くなりそうで、次々投げる忙しい釣りなら便利な機能かもとはおもう。なかなか食ってこないボイルねらいで数打ちゃ当たるを狙うときとかが想定されるか?まあ、いつも欲しいってほどの機能ではない。

 ひとつ、感心したというか面白かったのがハンドル回してベール返した時の軽さで、国産のスピニングは、左手でベールを起こすワシのような釣り人が多く、重いウッドノブ付きのハンドルともあいまって、軽くベールが返ってしまうと意図しないベール返りが多くなるのでか、ベールの返りが重くしてあることが昔は多かった。このリールは写真真ん中を通っているL字の部品一本の単純な仕組みながら、ごく軽くベールが返るので気持ちが良い。せっかくオートキャストで素早くベールを起こして投げたのに、さあ巻き取ろうっていう段階でハンドル回してベール返すのに重くて一苦労してたら意味がない。意図しないベール返りはベールを起こす位置が理想的な一カ所に固まるので起こり得ないっていうのもあって、ちゃんとダイワさん軽く仕上げてきてて良く分かってる感じがする。これって要するに昔の国産スピニングにおいてハンドル回してベールが返るのが重かったのは、国内メーカーの技術力が劣っていた、リールの適切な使い方を把握していなかった、っていうことではなくて、作れるけど軽くしたらウチの国の下手くそな釣り人から「ベールの返りが軽すぎて勝手に返る」とかいう間抜けないちゃもんが来るので、できるけどあえてそうしてた。って話で、つくづく声のデカい馬鹿なヘッタクソに合わせて道具作って売ろうとすると、ろくなモノが出てこないなって話。下手クソ用に作った道具はワシ程度のたいして技術的に上手くはない釣り人でもすでに使いにくい。アメリカ市場のように当然流行の最新鋭の機種も売ってるけど、特殊な用途のやら、単純な機構の古い設計のリールも売ってるっていうのは、日本の市場規模では無理なのだろうか?カーディナル3の復刻が商売になるぐらいだから、やりゃできる気はするんだけど新しい金型を起こしてってなると採算取れないんだろうか?以前も書いたけどメーカーは何だって作れる高い技術を持っている。でも結局はそれを欲しがる釣り人が居るかどうかが鍵なので、くっだらないボールベアリング数とか、ワケの分からん昔からある技術の焼き直し程度の”新技術”に皆さん騙されてくれるなと、そんなもんに高いお布施を払うなとお願いしたい。

 ついでに、米国釣り市場の”多様性”って話になったので、かの多民族国家で多様性溢れる米国で”ポリコレ(政治的妥当性?)”という名の下の表現の自由に対する侮辱行為についてひとくさり”いかがなものか”と苦言を呈しておきたい。今日日、日本もグローバルスタンダード陣営に巻き込まれてしまってるので、昔から日本も単一民族国家ではなかったにせよ、近年特に都会じゃ店員さんが片言の外国人なのも珍しくないし、紀伊半島の港町でも水産加工場の工員として技術研修生?とかいう名の出稼ぎ外国人労働者が沢山来てて、直売場の特価品確保を巡って女工さんがワシとしのぎを削ってたりする。ってぐらいでいろんな文化のいろんな国から来た人達が暮らしていくには、お互いをよく知って尊重しあっていきましょう。多様性を認めることが大事、差別なんてもってのほか、っていうのはまあお題目として正しい。正しいんだけど、映画だのアニメだので”白人ばかりなのはオカシイ”とか言い出して、ついでに男と女しか出てこないのは性差別だとか言い出して、登場人物にいちいち白人、アフリカ系(黒人って書くと最近は怒られるそうな)、ヒスパニック、アジア系、先住民族、男、女、同性愛者、その他の特殊性癖など、を揃えないと批判されるそうで、新作映画のキャスティングがエラいことになってたりするとそれはそれで笑えるけど、そういう多様性に忖度した作品ばっかになってきて多様性を確保するためのはずが多様性を損なうという馬鹿臭い矛盾が生じてるのを見ると引きつった笑いしか出てこない。彼の国の表現の自由に対するいちゃもんのつけかたはなかなかにどうに入っていて、特にロリコンには厳しいようで、あっちのアニメでは日本の魔法少女モノみたいな作品は「少女が性的に搾取されている」とかいって非難されてるらしい。二次元の絵になに言ってんだ?って思うけど、最近でも「スパイファミリー」のアーニャちゃんがけしからんとあっちではネットで炎上してたと目にして、幼女のアーニャちゃんをみて”性的”っていうのがすぐに思い浮かぶ方がよっぽど変態的で頭おかしいと思ったんだけどどうなんだろう?米国ではそういうわけでジャパニメーションみたいな美少女モノはなかなか作れなくて、仕方ないのであっちのナード(≓日本でいうオタク)は子馬とか出てくる作品で性癖を歪ませているらしい。レインボーダッシュちゃんに欲情できるとかは多様性というもののある意味本質か?日本のマンガで、ロリコンに警告無しの発砲許可がでていて、みつかるとギターに偽装したマシンガン携えたアグネス・ザ・スタンビートが粛正にやってくるという”修正アグネス法”が成立したディストピア(≓パライソ)を描いた作品を読んで腹抱えて笑ったけど、日本でも一時どっかの都道府県が条令でマンガでもなんでも未成年の性的な表現を規制しようとしてて、とある知事が馬鹿でファシストなだけに成立して具現化しそうで怖かった。まあジャパニメーションみたいに画一的に美少女がでてくるのも”様式美”っちゃそうなんだけど、なんだかなと思わんでもないにしても、かといって規制されて女性の登場人物がみな大人でアメコミみたいな頬骨出た顔になったら観る気が失せるのも事実。

 ジャパニメーションで一番ポリコレ的優等生な作品はワシャ「タイガー&バニー」だと思ってたけど、ネットの識者が「ブラックラグーン」をあげていて、人種も様々な犯罪者達勢揃いで確かにそうかもと膝を打った。どちらも面白いので”ポリコレに忖度してアニメを作れ”っていうお題でやれといわれれば、制作者はそれに合わせて作るだけかもしれんっていう気はする。とはいえ表現の自由は、それが脅かされる状況の末路が”言論統制”という言葉から感じる気色の悪さからして想像にたやすいので、レジスタンスとして抵抗しておきたい。なんというか、多様性を尊重して少数者の意見を踏みにじることがないようにっていうのは正しいけど、そうはいってもくっだらねえこと言ってる輩には「馬鹿は黙ってろ!!」って発言権を与えないってわけにはいかんのか?と常々思う。などと、表現の自由の大事さを書いた直後にこんな矛盾したこと書いてまう馬鹿なワシも黙ったほうがええんやろか?

 ”多様性が大事”って昨今よく言われてるけど、わりと匙加減は難しいやね。多様性溢れる珊瑚礁の海よりも、オキアミとか単一種が優占する北の海の方が生産性高かったりする事実も頭の隅に入れておいてバチはあたらんだろう。”正しそうなこと”がいつも正しいとは限らんと天邪鬼としては警戒しておきたい。

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