獲れなくなった理由には海水温上昇だの乱獲だのいろいろいわれてるし実際にそういった要素も関係してるんだろうけど、そもそも海のモノというか自然のモノには豊作、大漁があれば逆にハズレ年とかもあって、いつも同じようには獲れなくて当たり前っちゃ当たり前なのである。
じゃあどうするかって?獲れない魚がいる反面、豊漁の魚もいるんである。それ食っておくのが定石というものであろう。
ここ数年ブリは若魚のイナダなんかも含めて特に太平洋側では豊漁で、昨年は本場富山湾で寒ブリ不漁の声も聞いたけど例外的で、なんでかってぐらいに獲れてるようで、サケ定置なんかでもサケ入らないなか、ブリでなんとか食いつないでるとか聞く。
これが、脂の乗りだとかトロだとかうるさいマスコミに踊らされるグルメ様達のおかげで、氷見ブランドとかが有名な日本海側の脂の乗った大型魚は例外的で、それほど脂の乗り的には大したことがないイナダとかくそ安い値段で売っている。イナダ刺身用一柵380円とかもう買うしかない値段が恒常的で養殖ハマチより断然安い。
養殖ハマチが駄目とは全く思ってなくて、最近の養殖ハマチはそれこそ脂が乗ってて美味しいと思う。脂の乗った刺身が食いたいときにクソ高いクロマグロ様のトロとどっちを選ぶかといったら断然養殖ハマチである。値段の違いは養殖の難しさとかに起因していて味の差じゃない。だったら安い方を選ぶ。
でも、脂の乗りが悪いからって、養殖ハマチの半分ぐらいの値段にしかならないってどうかと思う。イナダの刺身はぜんぜんトロじゃないけど正しく青物の刺身の味がして、こんな旨い魚の味が分からないグルメ様達は可哀想な人たちだなと思う。たしかにトロのような魚を食べなれてない人間でも分かる、健康食品の宣伝にもあった「糖とアブラと」みたいな飢餓との闘いが長かった人類の本能を直撃する単純明快な旨さではないかもしれない。
でも脂のコクなんてぇのは、足そうと思えば油を加える調理でもいくらでも可能で、揚げ物やらムニエルやら、刺身でもマヨネーズ追加とかで簡単に補える。マヨ醤油で刺身は下品だけど割と美味しいので結構好き。
油加える料理、刺身系でよくやるのはハワイイ風の刺身のポキで、ちょっと塩を強めに振った賽の目切りの刺身にゴマ油をたっぷり目に後はお好みでネギだの唐辛子だの和えてちょっと冷蔵庫で置いてから食べると、酒飲めないのが恨めしくなる小味の利いた一品でございます。是非お試しあれ。
正直せっかく獲れてるブリ一家がもうちょっと値段つかないと漁師さん困っちゃうだろうと心配で、天然モノのイナダワラサなんかをもっと食べましょうという魚食普及の文章など書いてるのである。あんまり値上がりしてしまっても困るけど、まあアホなマスコミが脂の乗ってないイナダの良さを分かって普及し始めるには優曇華の花が咲くまで待たなければならんだろうから、このブログを読んでる皆さんにこっそり特別に教えてしまいます。ってこんなマニアックなブログ読んでくれてる人たちには「そのぐらい知ってまっセ」な情報かもしれない。それはそれでウンウンと頷いてくれれば喜ばしい限り。
でもってもういっちょ、今年これでもかっていうぐらいに食いまくってるのがマイワシ。私が魚を買ってる魚屋兼八百屋みたいなちっちゃいスーパーはいろんな産地の魚を仕入れてきていて、入梅イワシのころは近場の神奈川産、千葉産に混じって石川県産とかが健闘していて日本海側も獲れてるなと思ってたら、秋に入って北海道、青森産の大羽のぶっといのが入荷しだして、今ちょうど宮城産が並んでいる。どうもサンマ、スルメイカが大不漁でサバまで今一ななかマイワシが特に東北北海道の太平洋側は良いようで、資源状況の評価とか研究機関の発表見ても2010年以降親魚量増加し続けている状態。
同居人の実家の気仙沼でもサンマ、カツオの不漁のあおりを受けまくっているようだけどマイワシだけは豊漁のようでよく食べているようだ。この辺、サンマは目黒に限るとか言っちゃうような陸の人間じゃない港町の人間はたくさんとれて旨い魚がいたら当たり前に利用できているようで安心する。
(小ネタ:南三陸では記録的なタコの豊漁らしい。アワビ食ってるという噂の志津川湾産のマダコとか食べたいところだ。サケ定置だのがダメだった中で海の街に明るい話題。)
今年の太平洋マイワシの豊漁は直接的には産卵場所の四国沖とかの水温が低くて(海水温上昇ばかりが取りだたされるけど場所によっては逆もある、西の産卵水域の低海水温がマイワシを増やしスルメイカを激減させているとの説有り)稚魚の生き残りがよかったからじゃないかとか分析されているけど、いわゆる魚種交代が起こりつつあるのかどうかまではよく分からないということだ。
マイワシやサンマ、アジサバなどの浮魚資源は気候の変動周期とかに伴って増減を繰り返して、その時々に多く獲れる魚種がころっと変わる現象が知られている。
中でもマイワシは増加するとなったら爆発的で、前回爆発時最高は昭和63年で国内漁獲量が450万トンとマイワシだけで平成27年現在の日本の海面での総漁獲量355万トンを軽く凌駕する量が獲れていた。
大昔からそういう爆発的な増え方を何度もしてきたらしいことが海底だった地層に眠る鱗の化石とかから知られている。
増えるとなったらとても消費しきれないぐらいに増えるマイワシの大爆発に期待してしまうのは私だけじゃないだろうと思う。昔から大量に漁獲されたことのある魚なので消費方法も食料として生鮮加工各種当たり前として、昔は肥料として大量に使われたようだし、今なら魚粉として飼料としても有用な資源になり得るだろう。どのみちまた減少する資源なので爆発的に増えたとしても、それを見越して加工施設など設備投資をするのは博打的要素もはらみ、理想としてはなるべく長く中くらいの資源量を継続させたいと考えられているようだが、まあ増えるときは獲りきれないぐらい、使い切れないぐらいには増えるんだろう。そこをどう獲ってくるか、どう売りさばくか加工するか、そのあたりで儲けるのが水産関係者の腕の見せどころ博打のはりどころということだと思う。
いずれにせよ今後のまだ分からんことを捕らぬタヌキの皮算用してみても仕方ないし、飼料にするほど獲れるようになるかなんてまだ分からないにしても、現時点の今年の豊漁でも生鮮で出回る分が庶民的な値段になるぐらいには十分で、3匹280円とかこれまた買わずにいられない値段だった。比べて今年割高だったサンマとスルメイカは加工した総菜で何度か食べたぐらいで買わずにずっとイナダとマイワシばっかり買っていた。
マイワシは清少納言も好物にあげてるぐらい昔っから愛されてきた魚なので、ありとあらゆる食べ方があり、脂の乗ってない奴でも干物にしたり、酢締めにしたり天ぷらにしたりと旨い料理法には困らない。もちろん脂の乗った太ったのなら焼いても煮てもサンマがなくてもまあいいかと許せる旨さ。焼くのは遠火の強火とかやったことない人にはちょっと難しいのでお勧めは煮魚。普通に醤油味で煮てしまってももちろん美味しいけど、最近ハマっているのが「梅煮」で、醤油味をごく薄くしてちょっとびっくりするぐらいに梅干しと梅と一緒に漬けた紫蘇をぶち込んで梅味でスッパ過ぎるぐらい酸っぱくして食べるとめちゃくちゃに旨くてご飯がいくらでも進んで太る。煮汁をご飯にかけるというお行儀の悪い食い方もまた旨くて旨くてという感じ。2パック6匹ぐらい買ってきて作って、タッパに入れて冷蔵庫保存しておくと常備菜として最高の一品。ネットでレシピ調べると酢水で下煮して骨まで柔らかくとか難しいこと書いてるけど、そんなもん鰯の骨ぐらい食いながらはずせばいいし多少堅くてもバリバリ食うならなおよし。手軽に麺ツユ薄めて好みで砂糖も入れて、味付けのメインはドカッと梅干し。これでバッチリです。これまた是非お試しあれ。
漁業なんてのは獲れるときに獲れるものを獲って売って食うのが当たり前で、しょうもない周回遅れみたいになってるマスコミ情報なんかに踊らされてると、高くてたいしたことないのを食わされる羽目になって「魚なんて割高で美味しくない」と思ってしまうかもしれない。けど、断じて違うんである。沢山とれれば旨くても安いときはあるのが魚っ食いの醍醐味なんである。そういう目利きも含めて楽しむ贅沢が食文化ってもんだろ?と旨い魚を海から離れた街で堪能しながら書いてみたところである。
いや~、痛快!
返信削除ほんまそうですよね。人それぞれ好物はあるでしょうけど、獲れている魚より獲れなくなっている魚の方がもてはやされるというのは何か変ですよね。イワシも不漁の時の方が大騒ぎしていたような。
旨いのに安くなっている魚はその時に食べとかなきゃ損ですよね!次に食べたいと思った時にまだ安いかどうかなんて分からないんだし。
5~6年前に播磨灘のワタリガニが大漁だった時には思い切り堪能したけど、安かったのはそれっきり。また安くならないかな。
ごま油とネギとトウガラシをプラスするあの料理がポキだったんですね。調理法だけ聞いて名前を知らずに楽しんでました。あれ、グレには合わないけど春のチヌとか脂の乗っていない時期の外海のボラなんかにも物凄く合うんですよね~。
あと、刺身にしてみたけど味も素っ気もない。困ったという魚に今回の釣行で当たったけど、そんな時でも卵黄入りの漬け「宇和島鯛めし風」にすると何とかなってしました。
ただこの料理もどの魚でも同じような味にしてしまう料理かというとそうでもなく、元々もまあまあ旨い刺身がこの料理にすることで大化けするアカメのような例もあったりと、とにかく魚料理は面白くて堪りません!
風雲児さん おはようございます
返信削除風雲児さんという頼りになる同志を得て心強いです。
ポキはハワイ本島で始めて食べた正調のものには海藻も入っていましたが、最近は唐辛子入りが人気のようです。
我が国に「漬け」が有るように当然のように太平洋の島々にも味を付けた生の魚を食べる食文化があって、NZのマオリ系の宿の主人がカウアイで作ってくれたのはココナツミルク味のもので、フィジーでもヨコシマサワラで同様のモノを食べさせてくれて、南太平洋の島々を渡っていった人々とその文化に思いを馳せたのを思い出します。
その日取れた魚はまずは普通に刺身で食べるんだけど、食べきれないものは煮たり焼いたりの他に、とりあえず塩を効かせて、その状態から柑橘なんか使って酢締めに持って行ったり干物にしたり、という課程の中で「塩効かせた時点で、刺身とはまた違って旨いぞ」的な発見があって「漬け」系の料理が発展していったのかなとか想像してます。
卵黄入りの漬けはイナダにも合いそう。今度イナダ見つけたら早速試してみたいと思います。
魚は肉のように買ってきてそのまま焼けば良いだけとは行かず、捌いたりが面倒くさいというのも昨今の魚離れの原因の一つらしいですが、捌き方一つとっても簡単に素早くとか技術の習得自体にも楽しめる要素があってやってみれば面白いし、ぶっちゃけ手を抜こうと思えば切り身を買ってくるか、とりあえずぶった切って煮てしまえば何とかなるので、そんなに難しく考えずに、安くて美味しい魚もあるんだしどなたも楽しんで欲しいなと思っています。