2016年7月3日日曜日

カルト化するメイドインジャパンの釣り具

 良い宗教の簡単で乱暴な見分け方は「求められる1人あたりの手間やお金が大きくない」なんだそうな。
 葬式仏教なら、お布施はちょっとかかるけど、あとはナンマイダブとでも唱えておけば何とかなるお手軽さ。
 キリスト教徒なら普通もうちょっと真面目で、日曜には教会で祈ったりする。
 イスラム教徒は、毎日決まった時間にお祈りやら、断食やらでめんどくさそうだが、実際にはそれ程厳しくない宗派も多くて、そのあたりの普通のイスラム教徒達の生活とかは高野秀行先生の「イスラム飲酒紀行」を読むと雰囲気がつかめる。
 ダッカでコーラン暗唱できなかったからという理由で、国の発展の助けにと国際協力できていた人間を狩りやがったような過激な思想に傾いた輩どもがイスラム教徒の主流ではないというのは意識していないと大きな間違いをしかねない。

 一人一人のお布施や直接参加する行動が小さくても、沢山の信者がいたり、教団側が阿漕な儲けに走っていなかったりすれば、宗教としては成り立っていき、その中で、教義や教祖のカリスマやらからくる御利益の有る無しで違いは出るんだろうけど、まあ「良い宗教」といって良いらしい。

 逆をいえば、悪い宗教とは「金と手間がかかる」ものである。
 それも末期的なカルト教団とかになると、傾向が極端になり、極限られた信者しかついて来られないような教義の内容になって、特別なご利益を得るためには特別な信心が必要とされているような場合が多い。「他宗派をぶっ殺せ!」もなかなかついて行けない教義だし、「全私財をお布施として差し出せ」なんてのも良く聞く話である。多くの信者からこつこつ集めることがデキないから少ない信者にはものすごい負担を強いる構造に陥っていて、それがさらにそういったカルト化に拍車をかける。


 ひるがえって考えると、日本の釣り具業界は「カルト化」しかかってるんじゃないか?と不安に思えてくる。

 釣り人人口は減った。バスブームが牽引していた一時のブームを考えると、バス釣り自体が肩身の狭い思いをしているような今日の現状で、他の釣りをいくらはやらそうと、アジングだのエギングだのやってたって、そこらの近所の池にホイホイと釣りに行けたバス釣りとは自ずと収容できる人数に違いがあって、「釣りガール」含め笛吹けど踊ってないってわけでもなさそうだけど、釣り人人口減少分をおぎなうほどになっていない。

 その少なくなった釣り人人口で、かつ、安い釣り具は中国韓国東南アジアから入ってくる中で、日本の釣り具業界は、「高級品志向」に舵を切っているように見受けられる。
 まさに、その姿は信者の少ないカルト教団が高いお布施を払わせようとしている様に重なって見える。
 釣り人が少ないので一人あたりの単価を上げようとして、結果、釣りの敷居を上げてしまってさらに釣り人の減少に拍車をかけているというカルト教団なら破滅への道を転がるパターンに陥っているのではないかと心配になってくる。

 ありていに言って、そこらでシーバス釣るのに使うごときに、5万もする竿やリール買えるかよ?というところである。

 メーカーお抱えの「プロ釣り師」は「道具の値段は基本的に性能に比例するので、予算の許す範囲で高いの買ってください。」と薦めてくる。
 そりゃメーカーの立場に立ったらそう言うんだろう。そういう信仰だといってもいいかも。
 でも、道具に必要な性能は、釣り人の使いこなす技術で制限されるし、釣り方によっても制限される。
 極端な話をしたら、ドラグの使い方知らない人間が良いドラグ付いたリール使っても意味ないし、そこらでふつーにシーバス釣るぐらいなら、特殊なリールの性能など無くてもかまわない。
 私なら「道具なんてのは、とりあえず投げて巻けりゃなんとかなるので、とりあえず中古でも安モンでも良いので、買って釣りに行けばいいよ」と薦めておきたい。
 今時、多少安いからといって、20年以上前の設計のPENNとかよりは単体で使いにくいなんてことはないはずである。PENNで釣れるのにそれよりマシな道具で釣れないわけがない。

 もちろん競技の釣りやら、道具の限界まで使うような釣りやらがあって、そういう釣りをするためのハイエンドモデルがあっても良いんだけど、そうじゃない釣りには「この辺の安いモデルで十分ですよ」という売り方をしないと、最初にそろえる道具が10万円とかだと新規参入する人がいなくなるよという話である。
 シーバス始めるのに「竿とリールで10万円かかります。」というのと「最初は中古で竿1万ぐらいリール5千円ぐらいで充分行けるよ。」というのでは敷居の低さが違ってくると思うのだがどうなんだろう。

 正直、釣り具業界がミスリードして自分の首を絞めているように思う。
 今釣り具業界が根性入れて売らなければならないのは、新品で1万円台ぐらいの実用機や、それ以下の初心者モデルで、それを日本のメーカーは安い外国産に、ハイエンドモデルから引き継いだ使い良さとかで競り勝つ必要があるのではなかろうか。
 難しくても「やっぱり日本製は安くても良いゼ」と言わせないとダメだろうと思う。

 やれ船釣りだ、磯釣りだと、道具やらそろえなければならない釣りほど、釣り具業界は力を入れるけど、そういう敷居が高い釣りじゃない、のべ竿一本でデキるハゼ釣りみたいな釣りにも、当面のもうけがなくても力を入れて、釣り人を育てる必要があるのではないかと思う。
 最近チョコチョコとそういう小物釣りも人気になりつつあるように感じているけど、そいいう誰でもやれる気軽な釣りが、専門的でカルトな感じの釣りより「釣り全体」を見て大事な意味を持ってきているのではないかと思う。

 ここ数年、江戸前小物釣り師修行と称して小物釣りを楽しんできた現場から今そう感じる。

4 件のコメント:

  1. こんばんは。
    この前、釣り業界の人と話をした時にその方が、最近の釣りは「釣り道」になっていると言っていました。
    たとえばバス釣りではより専門化して、そのこと自体が新規加入を妨げているといったお話でした。

    1つの釣りだけを追求するとそうなるのでしょうが、いろんな釣りをしてみると、そこまではいらんやろうというラインが見えてくるように思います。
    1つの釣りに突き進むのも面白いですが、一歩目のハードルは下げた方が良いと私も思います。
    のべ竿の釣りも面白いですからね。
    「鮒に始まり、鮒に終わる」という言葉もなるほどなあと思い始めました。

    昨日は初めて船に乗ってアジ・サバとキスの釣りをしてきました。
    強風の中、苦戦しましたが、こんな釣りも面白いなあと思いました。
    それなりに釣れたのは一つの釣りをやり尽くしたからでもあるんですけどね。

    釣りは何を釣っても面白いから、ハードルを下げていろんな人に楽しんでもらいたいものです。

    明日から夏休みで少々浮かれています。
    スンマセン

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  2. ツーテンの虎ファンさん おはようございます

     船釣り楽しかったようで何よりです。

     「釣り道」を極めようとする人がいてもぜんぜんかまわないのですが、初心者にもそれしかないようなことを言ってビビらせるなよと。
     「釣り道」の人はよく「~じゃないといけない」的な物言いをしますが、釣りなんてのの楽しみは、その真逆の「何でもあり」の部分にけっこうあると感じているので、私は「なにやっても良いんですよ」と書いておこうと思います。

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  3. こんにちは。ナマジ様。
    ご意見通り初心者にとって敷居が高くなっているのは感じます。
    ただ、どっちかというと釣り人口は一部の魚に集中して増加傾向にあり、
    その対象魚を狙うタックルのみがハイエンド化しているというのが現状ではないかと感じられます。

    周りでもハイエンドタックルなんぞ要らんといった意見も多いですが、実際問題シーバスすらも釣れなくなってきている今、素人ではどうにもできず、昔からポイントを知り尽くしてきたアングラーでさえハイエンドタックルに頼らざるを得ない状況になってきているのも確かです。

    実際、ハイエンド不要派の方々とハイエンドタックル使用者には明確な釣果の差がつきはじめています。
    ハイエンド不要派が釣れずに焦りまくりながらルアーをとっかえひっかえしている横で、ハイエンド使用者はコンスタントに軽量ルアーを遠投して着実に釣果を上げていくという場面があちこちで見られるようになりました。

    場所によってはホントに繊細なタックルじゃないと釣れなかったりします。
    一例としては、手前のブレイクラインを回遊する魚がプレッシャーで居なくなったので、次点のポイントである70m沖のブレイクラインに遠投するときなどです。
    そういった場所で必須となるPE0.6号などは5万クラスの竿でないと扱えません。
    安い竿でも釣りにならないことはないですが、高価な反発力のあるカーボンと軽量チタンガイドの組み合わせでないと飛ばないし、トラブル多いしで、釣れないうえに高価なPEラインを一度で失うこと間違いないです。

    極細ラインと竿の相性に関しては、鮎竿なんかが良い例だと思います。
    なじみのない方は安物でもどうにかなるだろうと思いがちですが、実際やってみるとそんな甘い考えは遥か彼方にぶっ飛びます。

    ナマジさんは首都圏お住いのご様子ですが、ハイエンドタックル不要で釣果を上げておられるようで関西のハイプレッシャーメインの私からすれば
    大変不思議でなりません。

    ナマジ様の腕が大変に優れているのか、はたまた私のフィールドが極端にすれ過ぎているのか分かりません(恐らく前者でしょうが)が、少なくとも瀬戸内海のメバルや神戸のシーバスなどはハイエンドが必須となりつつあります。

    メーカーの回し者みたいな物言いになってしまいましたが、ハイエンドも時代に必要とされて生み出されたもので、それほど極端に現状から外れているとは思えません。
    最も、日常の釣りですらハイエンドが必要となる現状こそ異常といえるのかもしれませんが。

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    1. 匿名様 反応と掲載が送れてスイマセンでした。文字数制限か何かでスパムトレイに分類されていたのを長く気付いていませんでした。お詫びします。

       匿名様のおっしゃっているような考え方が、まさに一般の釣り人のごく普通の感覚なんだろうなと思います。
       だからこそ、それって違うかも知れないよ、というのをしつこく私は書いているのです。釣具屋にあんまりだまされすぎちゃだめよと。適度にだまされてあげるのは健全な釣り具産業の発展のためにも大事ですが鵜呑みにしてはダメだと思います。

       私の主張は大げさに極論で書いている面もあり、また「釣り」とかに明確な正解があるわけもなく私の考えが100%正しく、匿名さんの考えが0%の間違いだとも思いませんが、じゃあ「釣り」の正解って何だって考えたときに、私は本当は「面白いこと」が正解だと思いますが、一つの考え方として「釣れること」が正解という考え方があって、そういう意味では私は自分の釣り方で釣れているので私の考え方も正解の一つだと思っています。
       どれだけ立派な釣り理論を書いたところで、魚釣ってなければ机上の空論ですからね。

       そういう意味で、ハイエンドモデルのタックルを駆使した釣りが不正解とは思っていません。それで良く釣れるのは事実なんでしょう。でも、メーカーお抱えのテスターとかが、自社の製品を売らんがためにそれでしか釣れないようなことを言って、結局、釣りの敷居を高くして長期的には自分たちの首を絞めているのを見るととても愚かに見えるのです。

       初心者が安い道具で釣りに行ってまず最初は魚が釣れない。あたり前でしょう釣り方もなにも知らないのですから。その時に、教えを請うた人からハイエンドモデルを駆使した釣り方を教えられて魚が釣れるようになった人なら実感として「道具が安かったからダメなんだ」と思うでしょう。でも教えを請うた人が「道具そのままで良いから、狙う場所をこういう所にしてごらん」と釣り方を教えて釣れたなら「道具じゃなくて釣り方なんだな」と思うでしょう。
       どちらもある意味釣れているので正解なのですが、釣り関係の媒体に出てくる人はどうしても釣り具会社とかの意向を受けざるを得ないので前者になりがちで、後者が圧倒的に少ないと思うので私はその役割を果たしたいと思うのです。

       沖のブレイク狙いを例に出されて、ハイエンドタックル不要で釣果をあげていることが不思議と書かれていますが、私はよく逆に感じています。
       首都圏のハイプレッシャー具合は当たり前ですが関西同等以上です。救いは東京湾が日本で最もシーバスに関しては資源量が多いとされる海だということですが、その分釣り人多いのでまあ魚のスレ具合は関西と大差ないでしょう。
       その中で、自転車でいける近所の釣り場で良く感じるのは、沖にブレイクも何にもないし潮目もできてなければボイルもないのに、この人達なんで沖に向かって遠投してるんだろう?ってことです。私はボイルがなければ岸際かけ上がりか潮位が高ければ護岸沿いを狙ってます。ほぼ足下なのであまり接近すると足音で逃げられるだろうから、ちょっと距離取って下流側に投げることが多いですが30mも投げれば事足りてます。ボイルも沖目にブレイクのあるような川じゃないので30m投げればだいたい届きます。届かないボイルは遠投してる人にお任せします。
       内房の運河の釣りはもっと極端で、10mぐらいしか投げてません。

       私みたいな近距離特化型のシーバスマンって、専用タックルが必要なわけでもなくメーカーが商品開発力入れてないんで、釣りメディアで華々しく活躍したりはしてないけど、密かにいて実は美味しい釣りを独占的に楽しんでるんですよ。

       ただし、ハイエンドモデルを駆使する釣り方のように、釣り方が色々紹介されているわけではないので、自分で釣り場やパターン見つけるしかなく、近所の釣りがなんとか方針見えてくるまで5年はかかったし、内房の運河の釣りに至っては10年は1カ所しかハマらなくて悩みまくりました。まあ私はそういう苦労が楽しめるので向いているとは思います。

       最新鋭の高性能な道具を駆使して、他の釣り人に釣り勝つというのも楽しみ方の一つだと思いますが、別に正解はそれだけじゃないよと思います。
       競技の世界で勝つのを目指すのならそれが最適解かもしれませんが、釣りって競技かい?って疑問に思う私のようなボウズ食らわなければとりあえず楽しいという釣り人なら、ハイエンドタックルなんていらんのですよ。

       鮎竿でも、今時の競技志向の細仕掛けで効率よく人より釣ろうと思ったらバカ高い軽いカーボンの長竿になるんでしょうけど、昔の職漁師は竹のクソ重い郡上竿で生計立ててたぐらいで、多少性能の落ちる竿にはそれに適合した仕掛けなり釣り方でバランスとって組み立てていけば、楽しくボウズ逃れる釣りぐらいはできるのではないかと思っています。郡上竿の昔と違って今の鮎は難しいというのが実態ならば、仰るようにその現状が異常なんでしょう。

       釣りの世界に100%の正解と0%の不正解はありません。絶対とか必須とか常識とかいわれていることも、だいたいは根性出してしつこく挑戦すればひっくり返せます。
       それを信じることで迷いなく集中できるのは悪いことではないですが、繰り返しになりますが「騙されすぎないように」ということです。何事もほどほどが重要かと思います。

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