2014年6月21日土曜日

権威主義と民主主義

と、併記すると前者が悪で後者が正義のような字面だが、私はあまりそう思っていない。

 まず民主主義の象徴である多数決が私は嫌いだ。
 民主主義が必ずしも多数決で物事を決めるシステムではないと理解しているつもりだが、それでも「選挙」や物を買うというような消費に伴う「自由競争」が民主主義的なものだと感じるし、それらには多数決の要素が含まれているように感じる。

 「人間が愚かである」ということを前提にすると、多数決で物事を決めると、愚かな結果となる道理である。
 政治的にそういう状態を指して「衆愚政治」とかいうらしい。
 人は時に賢いけど、時に愚かだと思うので、民主主義は案外上手くいくときもあれば、愚昧な結果を招くこともある。どんなシステムでも良い点悪い点があって上手く運用しなければクソだという話なのかもしれない。
 運用上、割とマシなやり方が、みんなで知恵を絞ってスペシャリストを選んで、ある程度その人に任せてしまうというのがあって、それが選挙だったりするんだろうけど、まあご存じのとおり選挙は声の大きい多数派の利益代表者が選ばれがちなので、少数派の人間は虐げられがちである。
 私も思想的にはマイノリティーというか自分では常識人だと思っているのだが「偏屈な変わり者」と言われがちな人なので、小学校の学級会の昔から、原発反対とかの政策的な話まで、少数派で多数決に負けて「オレのいってることの方が正しいのに」という割と確かな思いがあるのに、悔しい思いをしがちである。
 「愚か者どもの愚かな決定になぜ賢い(と時に思いあがる程度の50歩100歩な愚者であることは重々承知している)私が従わねばならぬのか?」というのは私だけが感じる不条理ではないと考える。
 多数決の結果に従うぐらいなら、同じように自分の思いと違っていても、信頼できる専門家の独断に従う方が心安らかである。

 というような得意でもなければ好きでもない政治的な話を枕に持ってきたのは、ここしばらく香港釣行の番外編を書いていて、魚の種を同定する必要があったのだけれど、その際にいろんな人が知識を持ち寄った「民主主義」的なウィキペディアに代表されるネット情報と、日本の魚類分類の第一人者であり「権威」である中坊徹次教授編著の「日本産魚類検索 全種の同定」東海大学出版会のような図鑑を比較したときに、何となくちょっと似たようなところがあると感じたので、普段「民主主義」に虐げられている少数派の鬱憤をついでにとぶちまけたところである。

 ウィキペディア大先生の便利さやらの利点を否定するのはさすがに難しい。森羅万象これでもかという多岐にわたる項目について、それぞれの知識を持った者が、自由参加で書きこんで議論しつつ最新の情報にアップデートしていく情報は、ネット上で無料公開されているというアクセスのしやすさもあって、調べ物するには非常に簡単かつ早く、今時仕事でもプライベートでも「ググる」の次ぐらいに「ウィキる」ぐらいの勢いでお世話になってる。
 だがしかし、正確性という点では信頼性はイマイチである。「君の名は4-香港魚市場逍遙編-」を読んでいただければ分かると思うのだが、ウィキペディア大先生もその他のネット情報にも結構ミスがあったりする。
 ウィキペディアに関しては、あまり確定的な正確さを重要視すると、最新の情報とかの検証作業に時間が取られて、情報の新しさというネットならではの利点が削られてしまうので利点と裏返しの部分があり、そういうものだと思って使うしかない。
 他のネット上の情報の一般的な不確かさは、結局誰が責任持って書いているか分からない「匿名」の情報だという部分も大きな原因のような気がしている。
 まあ自分も匿名で確かかどうか自信の無いような情報を発信しながらこういうのも何だけど、素人か玄人か書いた人間のレベルもよく分からない情報は、どこまで信頼できるのか見切りが難しい。
 その点、その道の権威が書いた書物や論文は責任者が明確で、書いた情報が間違っていれば著者が「恥を書く」話で、気合いの入り方も違えば信憑性も違ってくるというもの。
 ただ、責任持って書くということは、しっかり裏を取ってということが必要で、時間はかかる。「日本産魚類検索」も第2版が出てからしばらくたつが、最近の遺伝的な情報の解析の進捗による分類の再整理的な動きには対応し切れていない。

 しかしながら、それまで魚の種の同定には、いろんな図鑑を引っ張り出してきて悪戦苦闘していた時代に「全種の同定」を高らかに謳って出版された「日本産魚類検索」の実用性の高さ、志の高さ、気合いの入りっぷりには感銘を覚えた。今でもネット情報で最新のネタは補足しつつも中古で手に入れた第1版をこれ以上ないぐらいに信頼を置いて愛用している。
 
 結局、権威に頼るにしても、ネットの情報を取捨選択していくにしても、自分がどう判断していくかということが最終的な自分の答えを得るための、めんどくさくも楽しい過程なんだなと再認識したところである。

 よく、無人島に一人で流されるときに1冊だけ本を持っていくならなにを持っていくかという議論があるけど、「日本産魚類検索」は大本命「オーパ!」の対抗ぐらいに私の中で重要な1冊である。

 ちなみに大穴は、実用性を加味してエロ本を1冊。

6 件のコメント:

  1. 日本産魚類検索ですか。全種の同定という聞き慣れないサブタイトルがなにかすごい専門的な響き! 
    このトピの内容とはちょっと違うんですが、魚類検索っていうことでひとつ・・・。
    小ヒラマサとハマチの区別がすぐはつかないレベルの私が、今楽しみにしているものがあります。はれ物切ってじっとしてて暇なんで、ちりめんじゃこ(チリメンモンスター入り)、ネット注文しました。一袋買ったら簡易一覧表がついてるそうなんで、たぶんそれで全部名前わかりそうです。
    はよこんかな~。     Kazu

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  2. 小ヒラマサとハマチは私も唇の端(なのか?)みないと自信ないです。

    チリモン面白そうですね。面白い上に食うと美味い。栄養つけて早くアユ釣りに行けるように養生してください。アユ釣ったらそれを餌にウナギかな。お大事に。

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  3. ちりめんセットやってきました。ちっちゃい魚やカニ、たこの類がたくさん混じっていて、虫眼鏡とピンセットで分けてます。。これなかなかいい買い物でした!!
    おかげさまで傷口はほぼふさがり、肩にに十字の傷を持つ男になりました。竿がもてそうです。笑

    Kazu

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  4.  傷が良くなってなによりですね。

     昔、頬にできものができて切開して取ってもらった時、先生に「迫力ある傷跡にしてください」とリクエストしたのですが聞き入れてもらえませんでした。
     ホッペに十時傷とかあったら格好いいと思ったのですが残念ながら綺麗に治ってしまいました。

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  5. こんばんは
    Consuellaと申します。
    Google+のキャッチフレーズは""多数決は正誤判断に全く関係ありません"。
    まあ多数決で決まったって、正しいかどうかは全く別の問題。
    最近は拡張仕様として、私は空気を読まない事を旨としているまでいきますww

    ところで無人島にいくなら
    牧野植物図鑑もしくは薬用or有毒植物図鑑もお奨めです。
    自然が人の健康幸福に殆ど便宜を図ってくれないことがよくわかります。

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  6. Consuellaさん ごぶさたです 

     私も常々「天然由来素材100%で安心」とかいう広告を見る度に、「じゃあオマエは安心して有毒フグくうんかい?」「ワシが毎年春になると苦しんでる杉花粉は天然素材と違うんかい?」とか突っこんでます。

     そもそも毒って生物の得意分野ですよね。海洋生物ならスナギンチャクのパリトキシンとか、ボツリヌス菌が作るボツリヌス毒素とか化学兵器も真っ青の天然素材がありますよね。
     
     薬用or有毒植物図鑑は生き延びるためにも実用的だし、絶望して死ぬときにも実用的かもしれません。
     

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