2025年4月19日土曜日

春は新しいコスメで!

  またナマジはなんかとち狂ったことを書き始めたな、春だな~、と思われたかもしれませんが、フライやる人ならピンときたと思うけど、フライロッドのガイドやらグリップ、シートなどのブランクス以外のパーツのことをなぜかフライ業界では”コスメチック”と呼んだりしております。ルアーロッドでも言わなくもないけど横文字好きのフライマンがよく使う表現かと。まあ竿の本体はブランクスで、それ以外はたいした要素じゃなくて”飾り”であり、用が足せる範囲でお好きなようにお化粧して飾ってねということだろうか。ということでフライロッドのガイド換装の顛末記でございます。

 現在主に冬場のカマス釣りで振ってるフライロッドは「ロッキーマウンテンアウトフィッターズ」っていう米国のアウトドアツアー会社の貸し出し用竿っぽいブランドの8番9フィートで中古で安く手に入れて2021年5月から使い始めてはや4年という感じで、さすがに冬の間だけとはいえ年間5~60日は出番があるので、およそ想定していない酷使具合だったようで、針金のガイドが削れて糸溝だらけになってきた。

左が一般的なスネークガイド、右がシングルフット方式
 ルアーしかやらないような人から見ると、ステンレスの針金にクロームメッキかけただけみたいなフライのスネークガイドやらは頼りなく思えるかもだけど、以前にもFuji創業者大村氏の著書から引用させてもらったりしているけど、ハードクロームメッキ仕上げのガイドは実用充分な性能を持ってるとのことで、実際古くからの伝統で今でもフライロッドの世界ではバット部のガイドを除くと硬質クロームメッキのスネークガイドやトップも同様の針金ガイドが多い。重量的にはシングルフットにしてしまえば普通にリングのハマったSiCガイドでも軽くできるけど、フライロッドはそういうものという既成概念が強いせいか、よっぽど走る魚を相手にする場合を除いてフルSiCガイドのロッドとかはお目にかかれない。むしろ針金ガイドをスネークガイドの2カ所で留める方式から、片足にまとめて1カ所で留めるシングルフット方式にしてより軽くっていうのの方が多いぐらいである。我が家でも9番のカベラス「LST」がシングルフット方式になってる。シングル化して軽いかどうかはラッピングに使うスレッドと樹脂が半分になったぐらいで違いが分かるほどの差はないように思う、というかワシャそんな細かいこと気にしてない。

 で、その実用上充分な性能のハズの針金ガイドが削れた。前述の大村氏の著書でも、本来硬質クロームメッキしたガイドは丈夫だけど、品質確保が難しくて経費けちったりするとろくでもないものになってしまう的なことも書かれていて、まあワシの愛竿はいうても安竿で、コスメチックも安くあげているのは致し方ないだろう。イヤなら高級ロッド様を買えという話。ただ、ガイドが徐々に削れてくる不具合は進行が遅く、すぐに不具合が生じ始めるようなものではない。加えて、ガイドの換装はそれほど難しい作業でもないので、削れ始めたのをこの冬の途中で気がついて、カマスシーズン終了したら換装せねばなと、既に交換するガイドは確保してあった。Fuji社製ではないものの、そこそこ名の通った「パシフィックベイ」のなら問題ないでしょう。ということで来期のシーズン間際に作業すると慌ただしくなるので、時間のあるうちに早速という感じで換装とあいなりました。ちなみに今根魚クランクで使用中のアグリースティック「GX2 USCA662MH」の、ステンフレームに直接ハードクロームメッキをかけたような「アグリータフガイド」は、1シーズンなんとか持っていて2期目に突入。意外に頑張ってくれている。まあこれも過去の経験から遅かれ早かれかなと、交換するガイドは確保済みである。

 では、作業に取りかかりましょう。ガイドの交換で唯一失敗する要素があるとしたら、トップガイドの取り外しで、接着剤の種類によっては外せなくてガイドの金属パイプをヤスリとかで切って外す必要も出てくる。ただ、通常は接着にエポキシが使われているので、そこそこの高温でエポキシ樹脂を温めてやると、ズルッと抜けてくれることが多いので、とりあえず補強に外側に巻かれているスレッドを剥がして、沸騰するお湯で煮てみた。ものの本によるとライターとかの直火であぶれって書いてあったりするけど、直火で炙ると、高温すぎるとガイドに突っ込んである穂先の繊維が焼けてぐずぐずになったりする危険性があるので、とりあえず最初は煮ることにしている。これで外れてくれれば楽。ただ、今回外れる気配がなかったので、結局慎重に直火で炙って抜いてなんとかした。

 抜けたら、とりあえずガイドの向きの基準にしたいので新しいトップガイドを早速接着してしまう。トップガイドのパイプの直径は狭くて入らないとどうしようもないので、ちょっと余裕を見たサイズのを用意しておいてスレッドを巻いて隙間を埋めてからエポキシ接着剤で固定する。

 ガイドの向きは、ブランクを巻いて焼くときに巻いた端は重なり厚くなるので、その方向は反発力が強く、いわゆる「スパイン」と呼ばれ、スパインを背中に持ってきてガイドの向きを決めるのが定石。だったんだけど、最近のブランクスは軽さ重視で薄いシートで巻くようになってるのでスパインがハッキリしないとかも聞く。その場合は無視しても良いだろうけど、換装なら元々着いていた方向にガイドを付けておけば安パイかと。昔のスパインがハッキリしたブランクで変な方向にガイド付けると、投げるときとかに竿が気色の悪い挙動をしたものだけど今時は気にしなくて良いのかもしれない。ちなみにグリグリとブランクを曲げつつ平面に押しつけて転がしてやると、明らかに反発力が強い方向があって、それがスパインの方向。

 で、トップがとりあえず付いたら、スネークガイドを全部取っ払って、新しいのを補修糸で巻き留めていく。外すのは、ガイドの上とかの金属部分をちょっと切って、巻かれているスレッドの端をつかまえて引っ張るとクルクルと剥がれてくれる。端をつかまえるのには魚の中骨抜き用のピンセットがちょうど良く便利。

 新品のガイドは足の先をヤスリで削って尖らせておくと、補修糸が滑らかに乗って段差ができにくい。ラッピングスレッドとしては「イカリ印の補修糸」を何度も書いているけどお薦めする。何が良いかというとナイロン「極細」表記にもかかわらず、昔のグデブロッドのラッピングスレッドを知ってる人ならウヘェってなるぐらいに太い。太い分丈夫なのでギューッとしっかり巻き留められるのと、太いので巻く時間が少なくて済むというのがあって、特に後者は手巻きしてるとありがたい利点。欠点は巻きが厚ぼったくなるのでその分の重量増加と見た目がスマートさに欠けることぐらいか。まあ逆に力強い見た目になるので良しと思ってる。

 ガイドを巻き留めていく「ガイドラッピング」の具体的な方法については、過去にサイトの方で紹介しているので、そこから引っ張っておきます。

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  古いガイドが外れたら、新しいガイドを瞬間接着剤かテープでロッドに仮止めして、スレッドで固定します。

 スレッドの巻きはじめはスレッドの端をテープで固定しておくとやりやすいです。

巻きはじめ

 スレッドの巻き終わりの処理は、細くて強いPE等をワッカにしておいて巻き終えるちょっと前の段階でスレッドで巻き込み、そのワッカに巻き終えたスレッドの端を通して、巻いたスレッドの下に通してほどけないようにします。

ワッカを巻き込むワッカに入れる引っ張り出す

 黒一色だと見にくいのでスレッド巻く作業だけ色変えて再度写真に納めました。

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という感じです。

 今回、コーティングに使ったのは、定番の2液反応型のエポキシ系ではなく、ウレタンコート剤。ウレタンも昔から竿補修コーナーには2液性のものが売られていたぐらいで、竿補修には使える素材だけど、今回使ったのはルアーのコーティングなどに使う1液性のウレタンコート剤の東邦産業「ウレタンフィニッシャーEX」で、こいつを長持ちさせる方法が分かったので今後はガイドラッピングにはウレタンコート剤を使う予定。エポキシは意外と消費期限が短く、やるなら竿を何本かまとめて作業したくなるけど、ウレタンコート剤は”使う分だけ小出しにして空気中の水蒸気と反応させないようにして冷凍庫保管”でほぼ消費期限気にしなくて良いぐらい長持ちさせることが可能で、ちょっと使って残りはまた今度、ってのも大丈夫と判明した。そうなると使い勝手が良く、ぶっちゃけ、コーティング剤は固まった後も適度に柔らかく割れにくい樹脂で、補修糸なりラッピングスレッドがほつれないように固めることができれば用は足りるわけで、ガイドを竿に固定しているのはあくまでも補修糸なりスレッドだということが理解できていれば、ガイドラッピングには何が何でもエポキシ樹脂ってこだわらなくても良いんだと思っている。まあ、メーカーとか今時はUV固化レジンだし、釣り場で急ぎ補修とかなら、ナイロンラインでぎっちり固定して瞬間接着剤で固めても釣りはできる。というわけで、コーティングはまあできれば見栄え良さぐらいは気にするけど、ぶっちゃけほつれなきゃそれでいいので、大事なのはガイドを糸で巻き留めるときにしっかりテンションかけて巻いてやることだと思っている。何度か書いたことの繰り返しだけど、そこのところがキモなので意識しておきましょう。

 でもって、その仕上げのコーティング。ロッド回しにセットして、樹脂が偏らないようにユックリグルグルさせながら、割り箸削ったヘラにウレタンコート剤を乗っけるようにしてペタペタと塗っていく。

 1液性ウレタンコート剤と、2液性エポキシコート剤の違いは若干あって、エポキシは実は重ね塗りが苦手で、重ね塗りする前にはサンドペーパーで塗る面をザラつかせておかないと上に乗せたエポキシを弾いてしまったりする。それもあってエポキシの場合はワシャ重ね塗りせず、基本は一発塗りで分厚く盛って仕上げていた。その点1液性ウレタンコート剤は重ね塗りは問題ないんだけど、エポキシに比べると固化時に”痩せる”割合が大きくて、エポキシは2液の科学反応で固まっていくので、盛った厚さに近い感じで固まってくれるけど、ウレタンの場合は空気中の水蒸気と反応して固まる理屈らしいけど、なんぼか有機溶剤が飛んで乾燥してもいるらしく、盛った分よりは薄い皮膜になる。ということで、今回は被膜が一回塗りでは薄い感じだったので二回塗りで仕上げた。まあ一回塗りでもほつれないだろうとは思うけど、なんとなく見栄えも気にしたりしてるのです。固まるのは半日も回しておけばOKで、そのあと吊すなりしてしっかり被膜が固化するまで触らないようにして1週間もおけば万全かと。まあ、ワシャ冬までこの状態で寝かしておくので問題ないだろう。良い感じに仕上がったと思う。

 竿は、ラインやハリに比べれば長持ちするものの、部品取っ替えればずっと使えるリールと違って消耗品の部類だと思っている。使っていれば最終的にはブランクスの繊維が切れてきて、だんだん反発力が無くなっていって最後には普通に使ってて突然折れる。カーボンのテニスラケットとかでもほぼ同じような折れ方をするので、カーボンやグラスのブランクスは基本そういうものなんだろうと思っている。ブランクスが寿命を迎えたらその竿の寿命と諦めざるを得ないけど、意外にガイドが先に折れたり削れたりというのはあって、その場合”コスメチック”を換装するお化粧直しの技術を持っていると、お気に入りの道具を長く使うことができるし、なんなら竿を使いやすいように”魔改造”することも可能なので、身につけておいて損はない技術だとお薦めしておきたい。

 春ですし、ラインシステムも通らないクソみたいな小口径ガイドのついたクソ竿も、お化粧直しでべっぴんさんにしてあげてみるのも一興ではないでしょうか?ぜひ挑戦してみてください。竿一本、ガイド位置やら決めて組み上げるのはそれなりに難しいけど、ガイドの交換ぐらいなら簡単なので、気軽に楽しみましょう。

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