2019年10月12日土曜日

神秘的なリール部品


 PENNスピンフィッシャーの4200と4300の大きさがだいぶ集まった。
 上段左から714Z、430ss、4300ss。
 下段左から716Z、420ss、4200ssで、右端の中段?が今主軸機で使っている430ssg。
 こいつらは、糸巻き量的には420ssで4LB150ヤード、430ssで4LB300ヤードというカタログ数値でいわゆるウルトラライトからライトタックルでのルアーの釣りに好適な大きさで、特に4300ssの大きさは汎用性が高くて渓流からバスからシーバスとかの軽めの海の釣りもこなす万能選手で4機種とも愛着もある名機達だ。
 4200の大きさは4200ssがややスプール径小さすぎる気がしてあまり好みじゃなかったんだけど「フェンウィックGFS55Jのリングシートに似合うPENNがどうしても欲しい~」と駄々をこねて716Zは購入。この時も4200ssほどスプール径が小さくなくて使いやすそうで、インスプールのモデルだからかな?ぐらいに思ってたけど、この度ボディーが金属鋳造製の公式第3世代(ミスティックリールパーツさんの整理では第2世代)の420ssを入手(JOSさん感謝!)して使ってみると、4200ssで感じたほどのスプール径の小ささはなく、とても使いやすく実際に好釣である。



 若干ドラグの効きが小型青物釣るには滑り出しが引っかかる感じがあったのでドラグパッドを純正のテフロン乾式からカーボン湿式に換装してドラグも今時のリールと比べても負けやしないゼなものになっている。カーボンのパッドは4400ss用のを耳切るとちょうど良い大きさになる。
 
 という感じで使ってみて感じるのが、後継機のハズの4200ssと420ssがなんかやけに使用感が違うなというところ。
 420ssは430ssと似たような使用感だし、端的に言えば430ssのスプール部分を小っちゃくしただけの設計に見受けられる。
 事実420ssと430ssのハンドル軸のギアは品番「8-420」で共通である。使用感似てて当然。さすれば430ss愛用していたので使いやすく感じたのもまた当然。
 ところが、4200ssになると、設計ががらりと変わってくる。以前どこかで書いたけど、どうも4桁スピンフィシャーになって最初にギア方式を伝統のウォームギア(中型以上ではハイポイドギア)から変更して大森的なハイポイドフェースギアを採用したのは、この4200ssだったようである。
 他のモデルは4桁になっても最初はハイポイドギアでその後ハイポイドフェースギア化というのが多く、同じ4桁スピンフィッシャーでも製造時期でギア方式が違ったりする。最後までウォームギアだったのが4300ssで、4桁化の時に設計し直してメインギアが小さくなり左右両用になっているけど、その設計は430ssgに引き継がれている。
 話を4200ssに戻すと、716Zから420ssになった際にはアウトスプール化しつつもギア方式とかはほぼ一緒、サイレントドック採用でカリカリ鳴らなくしたぐらいか?


 ところが、420ssから4200ssはギア方式から変更したので、当たり前だけど内部設計も全く違っている。
 写真の左が716Zで真ん中の420ssとギア方式やらクランクの形式が同じというのが良く分かると思う。
 対して右の4200ssについては、ギアがハイポイドフェースギアになり、スプールの上下はハンドル軸の歯車を介して上下させるカム方式で、逆転防止機構はローター軸のギアの直上、本体内部に設けられている。
 ちなみにサイレント化はハンドル軸のギアに噛ませたワイヤーの部品が逆転防止の爪を正回転時押し上げる方式。
 という感じで、内部設計をあらためてしげしげと眺めてみると”4200ssはPENNが作った小型ダイヤモンドみたいなスピニング”だと思えてくる。
 ハイポイドフェースギアでローター軸のギアの上に逆転防止を持ってくるってあたりが大森っぽいと思ってしまうのは単なる思い込みだろうか?単に当時の流行か?
 シェイクスピアSIGUMAシリーズとかで、小型で単純、軽量なスピニングを米国で売りまくってた大森を見て、PENN社としても「うちも小型機はああいう軽量軽快なのを目指そうか?」と思っても不思議じゃないように思う。
 4200ssはあきらかに軽く作ることを目標とされて作られている。ライン巻いてグリス込みの湿重量だけど、716Zが255グラム、420ssが253グラムと金属本体なのもあって小型機としてはやや重めなのに対して、4200ssはグラファイトボディー化の効果も遺憾なく発揮して198グラムと大幅に軽量化されている。
 まあそうはいっても、今試しにタックルオートSS測ったら187グラムと本体金属なのに素晴らしく軽くて、軽く小さくは大森にはかなわないなと思うものの、PENNスピンフィッシャーの海でも余裕を持って使える丈夫さを考えると、その分多少重くなってるのはPENNらしい個性だとも思えてきて、まあいいやんケと思えてくる。

 軽量小型化のためだと思うけど、スプールの大きさ自体も写真のように変えている。径も違うし高さも違う。左が4200ss。
 それらも合わさって、全体的に小さくまとまった可愛いリールになっている。
 4200ssはあんまり使いどころのないミソッカス扱いしてたけど、なかなかにこれも味わい深い1台である。見直した。

 ただ使うとなると、やっぱり420ssのほうが手に馴染みがあるしどうにも格好いいリールなので420ssを新天地での小物釣りには使うことにした。
 3桁と4桁スピンフィッシャーの間には部品互換性がけっこうあって、スプールが共有できるってのが実用性高いんだけど、420ssをいただいて、4200ssのスプールを替えスプールにできるなと思って填めようとして、上手くカチッと止まってくれないので、互換性ないんだなとちょっと残念に思った。どちらの機種もすでに替えスプールの在庫はミスティックさんところにもないのでちょっと困った。
 ただ、互換性ないわりにはスムーズにハマってくれて、寸法的には入らなくもない感じなんである。


 ちょっと頭に引っかかったので、なんとかならんやろか?とあれこれいじりつつ調べてみたところ、どうもこれハマらないのはスプールの径やら高さの問題じゃないようだ。4桁スピンフィッシャーの小型機種のワンタッチッスプールを止める爪の方式には大きく分けて一般的な金属タイプと、終盤にでた樹脂製タイプがあって、金属タイプなら3桁とも互換性あるけど、金属タイプに適合したスプールは樹脂製の爪では止まらず逆もまた止まらないようなのである。写真の白い樹脂の部品が新型の爪(2021.8追記:パーツリストで見る限りどうも金属タイプと樹脂タイプどちらも同じスリーブでイケるよう。互換性無いような設計にはPENNはしないってことか。結局4200ssのスプールが420ssにハマらないのは高さの問題のよう)。

 420ssにハマる新型の爪が装着できる主軸か、逆パターンで4200ssにハマる金属爪の主軸が部品として手に入ればスプール使い回しできそうなんだけど、どちらの部品も在庫がないようである。後者は初期4200ssに採用されていたので間違いなく製造されていたはずだけど、前者は多分4300ssのが流用できるだろうというやや博打的な買い物になる。けど、どっちゃにせよ現時点で入手不能(後から気づいたけどこの方式だとスプール交換するのに軸毎交換が必要で釣り場で交換は非現実的)。
 どうにかならないかと、スプールの径的には4200ssを引き継いでいるはずの420ssgなら替えスプール含めパーツ在庫まだあるようなので、主軸とスプールが移植できないかとかも430系使って検討してみたけど、ワンタッチと普通のスプールじゃ座面の高さが違ってて合わない。

 万事休すか?爪の形状だけなのになンとかならんのかいな?と頭を捻っていたら、爪がハマるスプールの真ん中にハマってる部品”スプールスリーブ”っていうやつだけ手にはいらんかな?とミスティックさんの在庫を確認するもこれまた欠品。
 実はこの部品、716Z,714Z,420ss,430ss,4300ssには共通なのである。4200ssだけ小型化のためにスプールの高さも低くしたので若干短いのである。くそミソッカスめ。
 となると420ssの替えスプールが売りに出されるのを気長に待つしかないなということに落ち着きかけた。海外のネットオークションだと売りに出てるのあったけど、海外発送しませんとなっててアタイ悔しいの。
 ところが、何を考えたのか自分でも良く分からんけど、ちょっとぐらい長くても改造する方法あるンと違うか?とか思ったのか、420ssのスリーブに4200ssから持ってきたスプールを填めてみた。


 結果填まった。ちょっとボタンの部分が飛び出してるのは、そこにラインが巻いてしまうという嫌な不具合を誘発しそうで怖いけど、とりあえず使えなくもなさそうであり、高さ違うけどスプールの上下幅も問題なく許容範囲で、元々互換性は保って設計していた臭い。流石や。
 いずれにせよもしもの時の替えスプールぐらいの役目は果たしてくれそうである。
 420ssのスリーブも欠品だけど、同じスリーブを使ってる716Zの替えスプールが安く某ネットオークションに出ていたのでサクッと確保。とりあえず420ss替えスプール有りの体制が整ってバンザイである。

 まあ、あとはスプールとか主軸の欠品してたのがミスティックリールパーツさんで在庫復活するのを気長に待ちつつ、ネットオークションでスプール出てたら見逃すなってところだろう。
 在庫復活なんてあるのか?といぶかしむ筋もおられるかと思うけど、どっかの釣具屋が潰れて倉庫から在庫出てきたとか、復刻版発売にともなってとかだと思うけど、在庫復活することが実際にあったんですよハイ。

 714Z、716Zを運用して行くにあたり、壊れそうな部品はベールスプリングは在庫あったので確保してあるし、ベールワイヤーはベールアームの穴の位置を変えて返るときの衝撃を弱くして長持ちするように手を入れたし、あとはワンタッチを止める主軸の金属の爪が折れることがあるようなので(だから新型4桁のワンタッチの爪は交換可能な樹脂製なんだろう)主軸の予備だけ欲しいなと思ってたんだけど、ながらく欠品だったのがなぜか先日復活しているのを発見。
 ついでに他の部品も含めて確保。

 ワンタッチの爪折れ問題はPENN社の方でも把握していたようで、今回買った金属製の中でも2種類あるのが見て取れて、1種類は写真じゃクロっぽく写っちゃってるけど、馴染みのある銅製の爪のやつで、左のはどうもステンレス製の爪のようである。耐久性は大幅に増したんじゃないだろうか?
 それでも金属の爪は折れるということで、最終的な形は樹脂製の爪を交換しながら使うという方式になったんだろうと推測できる。
 スピンフィッシャーが、長く売っていく間に顧客からの修理の依頼やらを受けて情報集積して細かい改善を重ねた”たたき上げの実用機”であるってワシが書くのはこういうことですワ。不具合修正するより先にニューモデルが出るような促成栽培のポッと出の一発屋とは年期が違うんですワ。

 ちなみに他に買った部品にも主軸が見えてると思うけど、本当は5500ssの主軸が欲しかった。なぜなら5500ssの永年使ってる個体で消耗品以外で唯一壊れたのが主軸に填まってる真鍮の台座の部分で、ドラグ効いてライン出て行くときに力の掛かる部分であり、そこが金属疲労で割れるのが、ギアが摩耗するとかより早かった。ので、予備あれば欲しいなと思ったんだけど、やっぱり同じような壊れ方するのか、5500ssの主軸は欠品だった。
 購入できた4500ssや4400ssの主軸は逆にその大きさのリールで釣る魚ではドラグそれ程負荷かけないので壊れないということなのかもしれない。
 ミスティックさんちの在庫見てるだけでなかなか想像を広げて楽しめるのである。

 最近、実釣に忙しくて道具いじってる暇も道具ネタネチネチと書く余裕もなかったけど、今日は台風でこもってたので久しぶりにネチっこく書いてみました。
 楽しんでいただけたら嬉しいです。
 台風被害にあった方々にはお見舞い申し上げます。こちらはだいぶ降りましたが峠は越えた様子、これからの進路にあたってる方々は逃げるときはケツまくってためらいなく逃げてください。

※2021追記、コロナ禍の物流の混乱等を受け、「MYSTIC REEL PARTS」さん海外発送を止めてしまっています。

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