2017年1月15日日曜日
2トンの魚を釣る方法
暇つぶしにアベマTVが実に有能。
よく見る格闘技チャンネル、アニメチャンネルの他にも、ドキュメンタリーチャンネルなんてのもあってアメリカの「ディスカバリーチャンネル」から番組引っ張ってきて放送したりしている。
最近見たのでは、大西洋のクロマグロ漁とメキシコ沖のホホジロザメの捕獲作戦が面白くて、見てて思わずアツくなった。
クロマグロ漁の方は、プロの漁師がシーズン中一匹だけという規制の中、300キロからのタイセイヨウクロマグロで一攫千金を狙って奮闘するんだけど、船ごとに悲喜こもごもあり、何時間もかけて寄せてきたのに足下で船底にラインがこすれて切れて「Fワード」叫びまくりのピー音鳴りまくりとか、釣り師としてよく分かる心境だったり、せっかく大物水揚げしたのに身質が悪くて値段が付かなくて愕然としていたり、という人間ドラマがなかなかに味わい深かった。手釣りでやってる船を除くと、各船みんなPENNのインターナショナル使ってて「やっぱりプロのチョイスはPENN」なんだなと気分が良かった。
ホホジロザメの方は多数の個体が集まる(繁殖行動のためだろうと考えられている)、メキシコ沖グアダルーペ島を舞台に、科学者と釣り人がチームを組んで、回遊等行動の把握を目的に衛星に情報を発信し長期間行動が追跡できるタイプのタグをホホジロザメの背びれにガッチリとボルトで固定するため、最大2トンを超えるだろうホホジロザメを釣って、作業台の上に乗せてタグ付けてリリースする、というややこしい作戦の現場からの報告。
ロッドとリールは、はなからあきらめていて、耐加重2トンのロープに、リーダーは「チェーン」、フックは売られている中で最大という強烈なモノで軽く50センチは超えてそうな「ねむり針」。
一個あたり浮力約22キロ(50ポンド)の浮きをいくつも付けて浮力でサメを弱らせつつ小型ボートで追跡し弱ったら綱引きしながら引っ張って、大型の母船の横に用意した作業台に誘導する。作業台はフォークリフト方式で沈めてあり囲いが設けられていて、その中に誘導し作業台ごとサメを水揚する。水から上げると時間との勝負で、ホース口に突っ込んで海水えらに流しながらタグ付けやら体長等データ取りやらやってから、作業台沈めてリリース。という段取り。
と書くと大がかりではあるけど簡単そうに思うかも知れないけど、なんせサイズが小さくて3mオーバー数100キロからのデカブツ相手なので、最初の方苦戦しまくり。
船の下に潜られてロープ切られ、寄せてきても作業台の上にうまく乗せきれず、最強のフックも伸びたり折れたり。
フックが逝くのは最初から浮力の強い浮きを使いすぎだというのが釣り人チームの意見だったけど、科学者は「2個で100ポンドの浮力ぐらいどうってことないよ」とか言ってて、100ポンド約45キロの負荷ならそら太いハリも折れるって、と私も釣り人チームに同意。ラインが強いとハリが負けるのはありがちか。
そのあたり、最初からロープのハリの近くに浮きを沢山付けずに、弱らせて寄せてきてから分散させておいた浮きをサメの近くに集めて追加していく方式に改良して成功させていた。最終的にはサメの近くに8つぐらいの浮きが集中してサメの頭を上げさせて、魚体をかなり浮かせたままボートで引っ張り沈めた作業台に誘導することができていた。
水中で負荷をかけられながら泳ぐというのはホホジロザメのような怪物にとってもなかなか難しいらしく、4m弱、1トンクラスの個体で浮き2個しか沈めておらず、トンクラスの怪物でも100ポンド約45キロの「牽引力」しかないというのは、釣り人としてはまだやりようがあるのかなという気がしてくる。1000キロの獲物でも10キロ単位のドラグテンションが充分意味を持つと推測できるのではないだろうか。まあ私は20キロが限界だけど、45キロの浮き沈めて2時間ぐらいで上がったサイズなら20キロドラグを5時間からかければ上がるのかなという皮算用。道のりは遠いが実現性はないわけでもなさそうだ。実際にホホジロザメのトンオーバーは竿とリール使って釣られていてIGFAの記録にも残っている。
あと、気づいたのが針先が内側を向いた「ねむり針」の優秀さで、「ちもと」が口の中にあるうちは針先が口腔内に向かないので引っかからず、必ず「ちもと」が口の外に出た状態で口の端に、それも餌を咥えて走った後に引っ張られる関係から口の横の端の良いところにばかりかかっていた。
リリース前提なら針が外しやすいし、サメのような下手するとワイヤーリーダーとかでも噛み切りそうな獲物にはリーダーを噛ませないフッキング位置を狙えるという利点もありそうだ。イソンボだのの歯のきつい魚にも応用できる手かも知れない。
正直驚いたのは、トンオーバーとかの水中生物を水揚げしたら自重で内臓とかにダメージが出てリリースできないのではないかと思っていたけど、映像見ている限りダメージあまりないようでスイスイ泳いでいったことである。最大個体は「キメル」という名のついている5m推定2トンクラス、全部で9匹だかにタグ付けしたが、リリース時ひっくり返って沈んだ個体もなければ、ちゃんと移動データも取れていてハワイ沖まで移動した個体もいたとか早速面白い結果が出ていた。やればできるんだ。
今回竿とリールの普通の「釣り」ではなかったけど、色々工夫しながら怪物を仕留めていく過程は釣り人としてとても参考になったし、豊富なホホジロザメの映像は眼福でもあった。
ホホジロサメも保護の対象となりつつあるご時世、遊びで釣って良いような空気ではないのかもしれないけど、こちとら船上まであんなおっかない魚を上げる気はさらさらないので、寄せてきて簡単なタグだけ打ってリーダー切ってリリースするような、調査の手伝い的な釣りで良いので是非やらせてもらいたいモノである。などと夢想してみる。
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