ナマザーによる、ナマザーのための、ナマズの本が出た。
前畑政善「田んぼの生きものたち ナマズ」農林漁村文化協会である。
前畑先生は主に琵琶湖でナマズを研究している研究者だそうで、10数年にわたって研究してきたナマズについて、その研究成果を含め、ナマズについて田んぼとの関わりから見えてくる生態や、食文化や信仰などナマズ文化的なものまで、広くわかりやすく紹介してくれている。
田んぼに登って産卵行動を行う様子は豊富な写真で臨場感たっぷりに説明されていて、断片的に知っていた知識もあったけど、おかげで1つながりの生命活動の流れとしてイメージを持って頭に定着してくれた。
ナマズについて、「ナマズ属与太話」で疑問に思っていると書いていたような当方が知りたかった知識も、いくつも回答が示されていた。
ナマズの背中にハシゴ状に並ぶ測線は「大孔器」というそうだ。
ナマズがどこで電気を感じているのか、是非知りたかったが、表皮の「小孔器」で感知するといわれているらしい。やっぱり電気は感じていたんだと思うと、ある種予想どおりだが、それでも不思議で驚きにあふれていると感じる。
THE「ナマズ」のみならず、他のナマズのことも書かれていて、ビワコオオナマズは産卵期にウィードエリアで釣れるので、当方はてっきり水草に産卵するモノだと思い込んでいたが、実は岩に産卵するのであった。ルアー投げてる足元の石組みのあたりをウロウロと2匹で泳いでいるのを見かけたことがあるが、まさにこれから「合体」するところだったわけである(ビワコオオナマズもナマズも雄が雌のお腹に巻き付くようにしてイタします)。
ビワコオオナマズ、江戸時代の文献には9尺(2.7m)のものがいたとか書かれていて、さすがに先生も「魚だけに’尾ヒレ’がついてると思いますが」と書いてますが、いやいや意外にそんな化け物サイズも昔はいたのかもしれませんゼ。
ナンポウオオクチナマズというナマズは、ほとんど情報が出てこない謎のナマズで、中国深センで釣りをする村田さんが、どこかに情報無いかと検索かけてたどり着いたのが、当方のサイト(でもたいした情報持っていなかった)という、当方が香港に釣りに行くという縁がこのナマズから始まった魚なんだけど、このナマズの中国湖南省での養殖の様子の簡単なレポートがありました。養殖対象となって種苗が生産されているから観賞魚ルートで日本にも流れてきて、当方はマニアックな熱帯魚屋のネット上のカタログでその名を知ることになったという事だったようである。日本のナマズの仲間であるナマズ(Silurus)属のナマズではヨーロッパオオナマズに次ぐ大物なので、今後もナマザーなら要チェックのナマズだぜ。
この本には、グレイトなナマザーである前畑先生の「ナマズ愛」が随所に感じられる素晴らしいナマズ本であると、ナマザーナマジが世界中のナマザー達にお勧めする1冊である。
ナマズの「大孔器」の説明に使われている写真は実は「釣り人ナマジ」提供となっている。農林漁村文化協会の担当者さんから、当方のサイトをみて「このナマズの写真を使わせてもらえないでしょうか」と連絡があったときは、ナマザーとして当然協力させてもらいますよとお答えした。むしろほんのチョビッとだけど、この素晴らしいナマズ本に参加させていただき、ナマザーとしてとても光栄に感じています。