2019年5月19日日曜日

世界3大ナンチャラ水棲生物 毒蛇は急がない編

 一週間のご無沙汰でした、全国100人弱(ちょっと増えました。スピネタ意外に人気かも。てことはみんな釣れてねえんだろうナ)ぐらいのナマジファンのみなさんお待たせです。では引き続きということで前回の最後の”やられたくない”の逆で”世界3大やられてみたい水棲生物”からいってみましょう。

 「やられてみたい」ってお前は真性のマゾッホなのかと聞かれれば、自分のことはよく分からんので否定しきれるものじゃないにしても、今回のはそういうのとは違う。
 あれっスよ「ジョーズ」1だか2だか忘れたけど、関係者が武勇伝として過去に鮫にやられた話とか語り出して傷跡自慢する場面があって、オチはそういう修羅場をくぐってないサメの研究者が傷跡の無い胸を指さして、怪訝な顔をしている他の二人に「イイ女だったゼ」とかいうアメリカンジョークな台詞を吐いてワッハッハーッってなるいかにもハリウッド映画っぽい場面があるんだけど、そういう”修羅場くぐってきた話”で自慢になるような漢の勲章的な体験をしてみたいってことっスよ。
 まあ死んだらしゃれにならんけどね。ジャカジャン。
出典:ウィキメディア・コモンズ、撮影:Daiju Azuma

 1位「エラブウミヘビ」2位「オンデンザメ」3位「アカエイ」
 エラブウミヘビってヤられたら死ぬやんケって話だけど、意外に咬まれてもふつうの毒蛇と違って口も小さくて毒牙が刺さりにくい、ってよりもおとなしい性格であんまり人に咬みついたりしないからこそ、沖縄の方じゃ産卵のために海岸の洞窟とかにやってきたのをオバアたちがヒョイヒョイ拾って漁してるんだろうけど、ぜひその毒を味わってみたい、死ぬのは流石にいやだけど死なない程度でヤられてみたいと思うのである。何故か?ちょっと長く脱線するけど戻ってくる予定なので気にせず読み進めて欲しい。
 オーストラリアというとカンガルーやコアラにウォンバット、最近じゃクァッカワラビーなんてのも人気で可愛らしい有袋類の天国的な印象があるだろうけど、ホモサピ(アボリジニの人たち)とその相棒として一緒にやってきたらしいディンゴ以前には大型の肉食ほ乳類は有袋類のタスマニアタイガーとタスマニアデビルぐらいで、他の大陸と比べると捕食者が役不足的に感じる。ところがどっこい、生物は空いた席を空けておくほどヌルくない。オーストラリアは実は毒蛇とワニ、猛禽類が独自進化した哺乳類以外の上位捕食者が君臨する恐怖の異世界なんである。かもしれない。
 まあワニはクロコダイルダンディーなんて映画があったぐらいでオーストラリアのイリエワニがクソデカいのとかは有名だけど、猛禽類も実はすごい、むかし「野生の王国」で豪州猛禽特集がヤってたんだけど、次々と雄々しく美しい猛禽類が紹介されるのをうっとりと観た記憶がある。最近では、どうもトビの仲間が火を使うんじゃないか?という事例が報告されていて、それが本当なら火を使う猿とも定義されるホモサピ意外で自然状態では初の事例かもって話で度肝を抜かれたものである。
 火を使うといっても自然に発生する野火を刺激に焼け野原でいち早く発芽する植物とかそういう利用方法は珍しくないんだろうけど、どうもくだんのトビ類は野火で燃えている植物を運んで延焼させ逃げ出した小動物を狩ってるような行動が観察されたらしい。アボリジニの人達は昔から知ってたらしく、れいによって「だから昔からそう言ってるジャン」って話らしいけどね。トビといえば仇敵はカラスで、こと頭脳に関しては、ホモサピ3歳児よりは賢いといわれているカラス達に引けを取っていた感が否めないが、火を使うとなったらライバルに一気に差をつけるかもしれない。カラストンビの頭脳的進化合戦には今後も目を離せないところだ。
 でもって、毒蛇についてなんであるが、オーストラリアは実は毒蛇大国で、とにかく種類が豊富で毒性も神経毒、溶血毒、凝血毒、蛋白質分解系種々取りそろえている。
 Netflixオリジナルのドキュメンタリーシリーズで「危険生物72種」っていう各大陸ごとの危ない生物をランキング方式でオドロオドロシくも娯楽性たっぷりに馬鹿っぽく紹介してくれるのがあるんだけど、これの豪州編が毒蛇だらけで、タイガースネークとかブラウンスネークとかだけでも何種もヤバい種がいてある程度は一括りにしても、それでも毒蛇ぞろぞろ強者ぞろいで笑えてくるほどである。
 オーストラリアの毒蛇といえばかの有名な世界3大毒蛇が一角ナイリクタイパンが有名で、フットボールチームだかの名前にもタイパンズってのがあるぐらいだけど、”ナイリク”タイパンっていうぐらいなら当然エンガンタイパンもいて(タイパンにはもう一種新種が発見された様子)、ナイリクタイパンは毒の強さについては毒蛇界最強の誉れ高い種なんだけど、性格的にはおとなしく人里にも出てこないので、実際にはエンガンタイパンの方が人の住む沿岸部に棲み人と遭遇する機会が多く、咬み方も高速でガジガジと連発式に長い毒牙をブスブスと突き立ててくるというエグい攻撃性でオシッコちびりそうになる。っていうエンガンタイパンよりも死亡事故は数が多いタイガースネークその他の方が多いっていうぐらい役者がそろっているんである。
 このぐらい毒蛇の種類が多くかつ分化が進んでたりもすると、毒に対する血清がすべての種を網羅しきれず、かつ同じ種と思われる蛇に咬まれても地域によって毒が違うとかもあるようで、どの血清が効くか分からないような場合は、毒の科学的分析を進めると同時進行で、とにかくいろんな種類の蛇用の血清を打ってみて、結果として効果があったのを追加で打ちまくるとかいうデタラメな出たとこ勝負の修羅場が生じるらしい。
 そういう強者ぞろいの豪州産毒蛇達を紹介するのに、他の生物と同様に研究者やらの専門家と実際に被害にあった人間双方に取材してるんだけど、豪州の生物毒研究の専門家シドニー大学ブライアン・フライ博士が、専門家としても被害者としても何度も登場して「またお前かいな?」とあきれるやら感心するやら。各種有毒生物の専門家として登場するのは良いとして咬まれすぎの刺されすぎだろアンタ、わざとやられてない?と疑ったんだけど、デスアダーに咬まれたときについての談話を効いて疑いは確信に変わった。ぜったいこの人咬ませてます(風評)。
 デスアダーは名前からもそのツチノコっぽい太短い形からもアフリカのパフアダーの縁者だと思ってたんだけど、実はオーストラリアにはマムシなんかもその仲間らしいけどパフアダーの属するクサリヘビ科のヘビっていないようで、その替わりの生態的地位をコブラ科のヘビが占めるようになっててデスアダーもコブラ科のヘビなんである。ご存じのように似たような生態的地位にある生物が分類的には遠くても同じような形態、生態に進化するのを”収斂”現象っていうんだけど、落ち葉とかに潜り込んで待ち伏せ型の狩りをするデスアダーがパフアダーと同じようにツチノコ体型で、細いシッポを振ってルアーにして獲物をおびき寄せるところまで一緒っていうのを知ると進化の神秘を感じずにいられない。
 そんなデスアダーはそのおどろおどろしい名前からも分かるように人を殺すに十分な神経毒の持ち主なんだけど、フライ博士はこの蛇に咬まれて毒で呼吸困難にあえぎながら、同時にとんでもなく気持ち良く「単純にいえば人生最高の経験をしました」とその経験を振り返っておっしゃるのである。
 クレオパトラは神経毒持ちのコブラの一種に胸を咬ませて死んだとされているけど、彼女は政治犯の処刑などをつうじてパフアダーに咬ませた罪人が苦しんで絶叫して死んでいくのに、コブラに噛ませた者が微笑みを浮かべて死んでいくことからコブラの毒が恍惚とするような快楽と死をもたらすことをあらかじめ知ってたに違いない、とかなんとか。
 以前海外のパンクな兄ちゃんが毒蛇に自分を咬ませるんだか薄めた毒を注射するんだかが趣味で、各種蛇毒を取り込んできた彼の免疫系統とかに興味を抱いた科学者が調べたら血液が各種蛇毒の抗血清の宝庫みたいになってて狂喜乱舞したとかいうネット情報を目にして「えらいマゾもおるもんやな~」と人間の性癖の多様性に感心を新たにしたものだが、そんな面倒な話じゃなくてもっと愚直に彼は神経毒による直接的に強烈な快楽を求め溺れてたんだろうなと得心した。
 日本じゃ世界では解禁の方向にある大麻とか程度で官憲に小突き回されて使用がばれたら社会的に抹殺されかねないけど、さすがに各種抜け穴になってた”ハーブ”も取り締まりの対象になってきている昨今でも蛇毒はまだ想定の外だろう。いっちょワシもコブラの神経毒キメて浮き世の憂さも忘れて桃源郷に心を遊ばせてみるか、って思ってもそもそもコブラおらんやんけ。
 我が国にもコブラ科の毒蛇はじつはいる。奄美沖縄方面にヒャンとかハイとかいうのの仲間達が何亜種かいる。でもこいつらハ虫類マニアにしたら見られたら眼福レベルのレアキャラらしくおいそれとは出会えない。海外にいって、インドコブラとかキメるとすると毒量間違って病院行ったときに毒をどのくらい注入したとか医者に英語で説明できる自信がない。まあ日本でも医者にそんなアホなこと正直に話せるかっていえばいいにくそうな気もするけど、そこはまだ日本語なら火事場の糞力的に婉曲な表現を駆使してアレをナニしてニュルニュルっと説明しきるような気はする。
 まあ、現実的じゃないなとあきらめかけた瞬間、ハイ皆さん分かりましたね、そうですコブラ科の神経毒持ちで日本でも比較的個体数がいて出会う機会もあり得る毒蛇として、私はエラブウミヘビにヤられてみたいと思っちゃったのでした。エラブウミヘビの毒エラブトキシンは蛇毒の中でも指折りの強烈さで”死ぬほどの快楽”へと私を誘ってくれるに違いないと思うのである。死ぬほどの快楽と引き替えに戻ってこれなくなっても、我が人生なかなかに楽しかったし別に扶養家族がいるじゃなしかまわねえかなと思ったりもする。もし、世をはかなんで自殺するなら断然コブラ科の神経毒で死にたい。
 よい子はまねしちゃダメ絶対だよ。エラブウミヘビ産地の沖縄とかだと漁業権設定されてるからね。自殺ぐらいしたいやつはすればいいと思うけど密漁はオバアたちの現地では神聖視もされているお仕事を汚す禁忌だし資源保護の観点からもやっちゃダメだからね。よい子の皆さんにナマジからのお願いね。
 悪い子も新たなドッラグ市場の開拓とか商売っ気出してはりきったりしないように。ふつう死ぬからネ。ナマジの書くこと真に受けちゃダメだよ。
 2位はやっぱりサメ好きなら、サメにやられた傷の一つも”勲章”として欲しいよねって思っちゃうのよね。でもそういうふざけたことを書くのは、ホホジロザメに手足持ってかれた方とか、イタチザメに愛する人を殺された方とかに不愉快な思いをさせるかなという気もするので、そういう不謹慎なことをワザと書いていきたいとは思うけどあんまり直接的に嫌な思いをするだろう人が想定できちゃうのは品がなさ過ぎるかなということで、深海に棲んでて人を襲った報告のないオンデンザメに一噛みしてもらいたいなということになりました。深海に棲んでるヤツにどうやって噛まれるか?って、そらぁいつか自分で釣り上げて”間違って”ちょっと噛まれちゃうって話ッスよ。
 3位も下手すると死にますって話で、ナマジも大好き三白眼で睨んでくる身近な海の怪物アカエイ。東京湾に立ち込んで釣るシーバスマンとかには”生きている地雷”として恐れられまくり。とくに稚魚を産むため浅瀬にやってくる春から初夏にかけて、ちょうど今頃の干潟がヤバい。冬場は温排水のあるところが地雷原になる。
 まあ踏んづけちまったらウェーダーはおろかシューズすら貫通するその毒針の強烈さは恐れておくべきだろう。
 死亡事故有りとして”毒魚”としての認識が広まっていて、刺されたときの対処法とかも毒に対しての対応が主体で語られることが多い。
 ただ、その印象が大きいことが逆に死亡事故にもつながりかねないので、ここではあえて「アカエイの毒はキツいけどアナフィキラシーが出なければ死ぬほどじゃない」と言っておく。
 じゃあなぜ人死にが出るのかっていうと、その棘の物理的攻撃力で刺され、切り裂かれたことによる外傷が原因で死に至る、と認識しておいた方が良い。
 干潟で実際に刺された釣り人に取材した記事を読んだことあるけど、同行者の肩を借りて上陸後ざっくり切られたウェーダーをひっくり返したら、真っ赤に染まった海水がドバドバ出てきて、痛みよりも何よりも刺されて切り裂かれた傷の深さと出血量の多さに、単独行なら浜にたどり着く前に出血量多くて倒れてそのまま溺死とかもあり得たかもとゾッとしたとのこと。豪州のクロコダイルダンディーのモデルになった方がアカエイ類に刺されて亡くなってるけど、この時も心臓に達するような刺し傷が原因だったとのこと。
 写真見てもらえば分かると思うけど、尖った先端に扁平な胴部の両側には鋸状の歯がびっしりと並んでいる凶悪な代物である。進化が何万年あるいは何億年の単位で研ぎ上げた究極の業物といってよいかと。
 強いパンチは強靱な足腰の土台があってこそ打てるんだそうだけど、アカエイはその巨体が水底での安定を確保し土台となり、ムチのようにしなる尾っぽを振って蠍のように刺し、切り裂きにくる。
 逆に、陸上で尾っぽの先の方を抑えてしまえば体が重石になって全く武器をふるえなくなってしまうので、釣り上げたらシッポを押さえてしまい動きを封じてロングノーズのペンチとかでメリメリと棘を剥がして武装解除する、なんてのはそれほど危険ではない。
 ということで、エイに刺されたら毒の処理云々を考えるより先に、鋭い刃物で切りつけられたという認識で止血なり病院に急ぐなりを考えなければならないと注意喚起しておきたい。
 昨今ではエイよけグッズも釣り具店とかでは売られているので対策きちんとしていれば過剰に恐れることはないけれど、それでも人を殺すだけの攻撃力を秘めた身近な怪物に敬意を表して、3位に入れてみたところである。

 お次は、”世界3大死ぬまでに見てみたい水棲生物の伝説”いってみましょう。
 まあ、最近の撮影技術とかって凄くって、マッコウイカ対ダイオウイカとかシロナガスクジラを狩るシャチとか一昔前ならいくら漁師が「オレ実際に見たんだから」って言ったとしてもなかなか海の中で起こってることは確認しにくくて目にする機会も少なく、そんな怪獣”南海の大決闘”じゃないんだから、とヨタ話として信じてもらえず眉唾物の”海の伝説”として扱われてきたのが、マッコウクジラはダイオウイカの下に一旦潜り込んでから突き上げるように襲ったとかマッコウクジラの体に取り付けたデータロガーの解析からその手に汗握るような深海の大決闘の様子が分かるようになったりして、伝説は事実だったとあきらかにされることが結構増えてきて驚きを禁じ得ない今日この頃である。ほら吹き扱いされていた漁師のジ様達は「だーからオレの言ったとおりだったろ」と誇りを取り戻したことだろう。
 そういった漁師のジ様達しかまだ見たことのない場面が今後あきらかにされ映像として目にすることができることを期待していってみます。ジャカジャン。
出典:ウィキペディア 撮影:あおもりくま CC 3.0

 1位「マンボウ産卵」2位「泳ぐアワビ」3位「アユカケの妙技」
 1位は、昔ニシンの資源量が豊富だった時代はその産卵期太平洋岸のカルフォルニア沖からぐるっと北回りで北海道沖まで沿岸一面白く濁ったというぐらいの”群来(クキ)”が見られたそうだけど、マンボウは1つがいで辺りの海水が白く染まる”二人だけのクキ”状態になるほどの大量の卵と精子を放出すると漁師のジ様はのたまうのである。
 マンボウは3億個の卵を産むってのは眉唾で卵巣内の未成熟の卵を計数したら約3億個というだけで、それを一気に生むとは限らないので実際には一度の産卵数はもっと少ないだろうというのが識者の見解だけど、ワシャそんなことないと思っちょる。だって海が白くなるほどの産卵っていうのを信じるなら一回に産卵放精する量は半端じゃないはずで、卵巣内の卵が全部一度にとはいかなくても、ある程度同期して一斉に成熟する可能性は結構あると思う。
 かてて加えて、卵巣内の卵が3億個と推計されたのは体長1mちょっとにしかならない多分小っちゃい方のマンボウ(現時点の標準和名のマンボウ)で1トン超える最大の現生硬骨魚類であるウシマンボウではなかったはず。漁師のジ様が見たのが、2000年代まで”マンボウ”でひとくくりにされていたマンボウ、ウシマンボウ、カクレマンボウ、のうちウシマンボウなら多回産卵でも1度に何億という卵をぶちまけて海を白く染めていてもワシャ驚かないね。ということで、近年海洋生物の生態解明では活躍しまくりのドローン撮影とかでマンボウ夫婦の愛の営みが撮影されたら、ワシャ久しぶりに大興奮じゃわい。
 2位は、街の人にしたら「何言ってんだコイツ?」だと思うけど、アワビ類を産するような海辺の出身者にしてみれば「当たり前だろナニが伝説なんだ?」と思われるかもしれない。
 我が故郷の方ではアワビ類は稚貝のうちは泳ぐことができて潮に乗って泳いで磯にやってくると信じられていてアワビの小さいのを「流れ子」と呼んだりしていた。我が故郷だけかなと思っていたら、荒木先生も「岸部露伴は動かない」で泳ぐアワビを密漁する話を描いていて、やっぱり全国的にアワビ類の産地じゃ泳いで当たり前のように思われているけど、泳ぐ映像が公開されたこともないし、種苗生産施設を見学させてもらったときも、緑の殻の稚貝たちは塩ビパイプの上とかを普通に這い回っていて泳いではいなかった。
 現時点で常識的な判断であればアワビ類は泳がない。泳ぐのは稚貝になる前の幼生で磯にやってきて稚貝に変態して着底すれば這い回る生活になる。というのが一応の解答になるはずだ。
 でも、私はアワビ泳ぐ説を捨てきれない。泳がないのならなぜ泳ぐのを見たというジ様とかがいて各地で泳ぐと信じられているのか?そこには何か理由があるはずである。アワビが実際に泳ぐことがあるのか、そう見えてしまうあるいはそう信じてしまうなにかが、人の目に触れにくい海の底に隠されていると思うのである。
 ホタテが泳ぐのは有名だけど、バカガイもマテガイもどうも泳ぐといって良いかどうか微妙なラインだけど砂にもぐって水管だけ出してじっとしているという印象ほどおとなしくなく、良い住処を求めて場所移動のため潮に流されつつ足や水流噴出も使うんだろうけどヒョイヒョイと移動するのは確からしく。内房のスズキは結構バカガイ、マテガイ食っているようだ。ホタテのように泳ぎの上手じゃない二枚貝の移動方法は波打ち際の良い位置を常に確保し続けるナミノコガイの移動がYoutubeでもみられるので参考にされたい。
 ”アワビが泳ぐ”の真相として一番ありそうな常識的な線は夜になると活発に動き回るアワビ類が、餌のコンブだのカジメだのによじ登っているのを見つけた漁師が獲ろうとしたら、剥がれ落ちて逃走したのを流れに乗って”泳いだ”ととらえたってのがありそうな話である。通常アワビはつかまりそうになると岩に貼り付いてしまい、そうなるとテコでも動かなくなる。アワビの漁の映像を見ているとタガネで一発でヒョイッと剥がしているけどあれは警戒してガッチリ貼り付く前に剥がしてしまうからこそできる技で貼り付かれるとタガネ使っても苦戦するはず。
 その戦略が使えない海藻にのっているときはアワビ類はとらえられそうになったら重い貝殻を利用して”落ちる”という陸上の甲虫たちと似たような逃走方法を取るのではなかろうか、っていうのが現時点での推理。今回パソコン椅子探偵じゃないけど。
 そうであれば、”アワビは泳ぐ”の真相がなんだか良く分からないこととも符合してくる。アワビ類は基本的に密漁や事故を防止するために昔から夜間は禁漁のことが多い。そうすると”アワビが泳ぐ”のを見たとしても、ハッキリとその見た状況を説明することや実際に”泳ぐアワビ”を他人に見せて証拠を突きつけるわけにもいかず、眉唾扱いされても口をつぐむしかなかったということだったりするのではなかろうか。
 アワビが泳がなくてもかまわないんだけど、なぜ”アワビ泳ぐ伝説”は信じられてきたのか、その理由は私気になります。
 3位も、漁師のジ様のオラ見たダ系伝説。アユカケがえらぶたの棘でアユを引っかけてとらえるという今の標準和名のもとになった伝説。
 NHKのダーウィンが来たでも普通にバックリ口でアユ襲って食ってたし、昔アユのガラ掛けで獲れたのをもらって飼ってたこともあるんだけど、餌のエビやらカニは普通に口で食ってて、やっぱりアユとか小魚じゃないと伝説の妙技は披露してくれないのかなと、そのうち小魚与えてみようと思ってたんだけど、春になって水温上昇したらあっさり死なせてしまい真相究明には至らなかった。
 これも常識的にはえらぶたの棘はスズキでもコチでもそうだけど捕食者対策のための防御の棘で狩りには使わないっていうのが答えなんだろうけど、じゃあなぜ漁師のジ様は見たと主張するのか?そう見える行動なり現象なりが実際に起こっているから名前になるほど巷間に流布した伝説となったのではないのか、その真相がやっぱり私気になります。
 ということで、受信料は文句言わずに払うのでNHKダーウィンチームに続報を期待したい。
 識者の見解や常識なんてものがあっさりと覆る頼りないものであり、昔からの言い伝えやジ様の体験談には意外に”真実”やら驚くべき裏があったりもして軽くあつかったりして油断してはならないと思うのである。

 こうやって書いてるといくらでも書けそうだけど疲れてきたのでとりあえずの最後のネタ投下で”世界3大水棲生物共生関係”いってみましょう。ジャカジャン。
 1位「ワモンダコとスジアラ共闘」2位「テッポウエビ類とハゼ類同居」3位「偕老同穴」
 1位は、NHKスペシャル「ブループラネット」再編集版今やってるけどやっぱりクッソ面白い。その中で紹介されてたんだけど、グレートバリアリーフでワモンダコ(沖縄で「島ダコ」って呼んでるのだと思う)とスジアラが共同で狩りをするっていうのが紹介されてて、2種の魚が片方が追いかけてもう片方が逃げた獲物を狩るってのは古くは欧州のパイクとザンダーだったかパーチだったかの報告例からアカエイ類に驚いて逃げる小魚を狙うスギやらシマアジ類やらいくつも知られているッちゃ知られてるんだけど、ここまで息ぴったり効果的な共闘の事例は初めて知って感動した。
 スジアラは沖縄では「アカジン」の名でめでたい魚とされる、まあハタ系の魚食魚なんだけど、当然それに追われた小魚はサンゴの隙間に逃げ込む。そうするとスジアラの興奮した体色変化を見て取るのだと思うけど、番組ではスジアラが餌のありかを教えてる的な説明してて、ワモンダコがその逃げ込んだサンゴを覆うように腕を広げて襲いかかり隙間に触手をニュルニュルッと突っ込んでいく。そうすることでワモンダコが隠れた小魚を得ることもあれば、タコの魔の手から逃れようとサンゴの隙間から飛び出した小魚をスジアラが得ることもあるという両者持ちつ持たれつの良い相棒。
 連れ立って狩りに出かけるため並んで泳ぐ様を見ると、タコが頭良くて海底にタコランティスを築いているという話もあるぐらいでもあり、案外両者の間に意思疎通が図れる合図があって「一狩り行っとく?」と誘い合って出かけているようにも見えてくる。
 2位は、写真のイトヒキハゼなんかが代表例なんだけどテッポウエビ類の穴に居候するハゼがいて、先日行った水族館でも種名分からんかったけどハゼの仲間がしっかり巣の入り口で警戒態勢を取って、その体に触角を這わせながら視力はあんまり良くないらしいので周辺警護はハゼ任せで巣の修繕にいそしんでいるテッポウエビが観察できてなかなかにほほ笑ましい共生関係だった。テッポウエビ類、英語圏じゃピストルシュリンプとか呼ばれてて、ザ・テッポウエビとか潮干狩りとかでつかまえると威嚇でパッチンパッチンとデカい方のハサミで音を鳴らしてくるんだけど、瞬間的にアワが発生して消えるぐらいの高速の指ばっちんらしく、その衝撃派で獲物を気絶させる種がいるとか、ある種では繁殖期にはその音でコミュニケーションをしていて生息数が多い海域では潜水艦のソナー手はうるさくて閉口するとかなにかと面白い生き物である。先日はサンゴに集団で棲む種が報告されてて、そいつらの中には外敵と闘う兵隊階級のとかが居るとか甲殻類で単なる群れじゃない役割分担のある社会性生物ってなかなか珍しいなと興味深かった。水の中のことを我々はまだあんまり知らないってことなんだろう。
 写真のイトヒキハゼは無事もとのテッポウエビの巣穴に帰れたのだろうか。えらい怒ってて噛みつかれたけど悪かったよゴメンナサイ。
出典:ウィキメディアコモンズ、撮影:アメリカ海洋大気庁(NOAA)

 3位はカイロウドウケツ類とドウケツエビの共生関係だけど、偕老同穴って共に老いて同じ穴に葬られるっていうぐらいの夫婦の固い絆を表す言葉なんだけど、実際にそういう名前の網篭みたいな形態の海綿生物がいて、その中に閉じ込められる形で雌雄1組のドウケツエビが棲んでいるっていうのを知ったときには、なんとも不思議なことが海の底にはあるものだと驚いた記憶がある。
 いまサクッとウィキって二度目の驚きを感じている。カイロウドウケツの骨格的な部分はガラス繊維性なんだけど、これが生物体内という低温環境で形成されたガラス繊維でありナノテク的な工業への応用が期待されているとかなんとか。
 深い海の底に美しいガラズ細工の謎がひっそりと夫婦の絆を内包しながら息づいている。なんとも不思議なロマン溢れる生き物たちである。

 皆様に、水の中の世界の不思議と驚きを少しでもお届けできたなら幸い。

2019年5月11日土曜日

世界三大ホニャララ水棲生物


 超深海でプクッと泡を発射する。圧縮されていた気体は上昇するにつれ体積を増していき海面近くまで達すると、巨大な泡まみれの水域を発生させ敵の潜水艦を海中で”墜落”させる。
 なんていう架空の兵器をマンガで読んだ記憶がある。ンナあほな、という感じで色々とツッ込みたくなるけど、その兵器にかなり近い”攻撃”を繰り出す海洋生物がいると知ったときは心の底からの驚きと感動を覚えた。
 前回チラッと触れたザトウクジラの”バブルネットフィーディング(泡の網捕食)”である。捕食方法の呼び名からして、もうバトルマンガの主人公が叫ぶ技名みたいで中二臭い格好良さに溢れている。
 イルカの泥の壁を使ってボラを捕食する方法にも”技名”付いたのだろうか?前例にならうなら”マッドウォールフィーディング(泥の壁捕食)”だろうか、研究者の皆さんにはぜひ新機軸の格好いい技名も考えて欲しいもんだ。
 他にも格好いい”技名”のついた捕食方法ってあるよねって考えると、水に棲む生き物に限定しても、サメの仲間やピラニアの仲間が血とか仲間のたてる捕食音に狂って手当たり次第に噛みつき喰らいまくる”狂乱索餌”、ワニ達のそれが有名だけどウナギやらの細長い捕食者全般の常套手段で大きな獲物から肉をむしり取るための回転技”デスロール”あたりがバブルネットフィーディングもあわせて”世界三大叫んでからくり出したい技名の付いた捕食方法”だろう。
 などとくだらないことを考えていたら、他にもいろんな”世界三大”ってあるなと次々に連想されてきて、なかなか良い暇つぶしになったので、せっかくなので読者の皆様にもご紹介してみたい。
 独断と偏見で、かつあんまり範囲広げると三大に絞れなくなるので水棲生物限定でナマジ的にという感じで、それではハリきっていってみよう。

 名前付いてないけど格好いい捕食方法もいろいろ思いつくんだけど、それこそカジキの角やらマオナガの尾ビレなんていう打撃系から、組み技系のタガメやらアナコンダやら、罠系のタヌキモやツノダルマオコゼとか多すぎて収拾つかないので、細かく絞りつついくつかいってみたい。
 まずは、技名の次はマンガにでてくる武器名というか道具名っぽい”世界三大中二な名前のついた捕食器官”あたりから始めてみたい。ジャカジャン。
 1位「バッカルコーン」2位「矢舌」3位「アリストテレスの提灯」
 1位は有名どころで皆さんお馴染みの流氷の天使クリオネことハダカカメガイが餌のミジンウキマイマイとかにバッカルコーンと射出する結構見た目アレな触手系のエグい捕食器官。知らない方が幸せなこともあるよねって思っちゃう肉食の貝であるクリオネの獰猛さを示すがごとく勢いのある語感。昔釣り場に行くとき聞いてたラジオでオタクで有名なアイドルが「スカシカシパン」とか「バッカルコーン」とかよく口にしてて、やっぱりそのあたりは音読したくなる日本語だよネと共感を覚えたものである。
 2位はこれまた肉食の貝であるイモガイ類が獲物に文字通り矢のように射る、特化した歯舌である毒の矢。アンボイナが一番有名だけど個人的にはイモガイも狩るらしい貝喰らいの貝である”イモガイの王”タガヤサンミナシを推したい。綺麗な花には毒の典型で前衛芸術みたいな幾何学模様の渋い美しさのある貝殻も素敵。
 3位は、古代の賢者の名を冠する魔法道具感満載だけど、実際にはウニの口器というありふれた代物。なんだけど実際ガラスに貼り付いて昆布とか囓ってる映像見ると5本歯が結構獰猛な感じでバリバリ食っててこいつら増えすぎると藻場が”磯焼け”起こして回復しなくなるとかいうのも納得である。ちなみに対岸の北の海ではウニの天敵ラッコを乱獲したらジャイアントケルプの森が消えたとかなんとか。ウニとラッコの食欲侮り難しなのである。ちなみに英語の「アリストテレスズランタン」でも中二感たっぷり。
出典:ウィキメディア・コモンズ、撮影:jon hanson

 もいっちょ捕食器官というか捕食補助器官とでもいうべき疑似餌について。ワシもルアーマンだしひとくさり書いとかんとナ。でもアンコウ系入れると3種類アンコウ選ぶだけなので”世界3大アンコウ以外の持ってる疑似餌”でいってみましょう。ジャカジャン。
 1位「Villosa iris(北米産イシガイ類の一種)」2位「アラフラオオセ」3位「ハナミノカサゴ?」
 1位はリンク張ったので元記事で映像見てもらいたいんだけど、日本じゃタナゴ類に卵育てさせられてる貝という位置づけに収まってるイシガイ類だけど、北米のはなかなかにやりよる。バス釣りしてます。バス釣り用のザリガニワームはギドバグが最強だと思ってたけどそれ以上の完成度。ここまで手の込んだリアル志向の疑似餌って他の生き物では思いつかない。普通はまさにワームって感じのミミズ型が多い中、コイツはナニを考えてザリガニ型を選んだのか?考えちゃいねえんだろうけど進化って不思議だね。
 2位は、友釣りは日本独自の釣法でとか言っちゃう鮎師に、そんなもん南の海の底のサメでもやってまっセ、と教えてやりたくなる技巧派。
 以前にも紹介したけどアラフラオオセは衝撃的だったので再度登場。アンコウみたいな潰れた系の典型的待ち伏せ捕食型のサメなんだけど、シッポで小魚の泳ぐ安心空間を演出して寄ってきた魚をバクッといきます。疑似餌を使うサメがいてしかも友釣り系とは恐れいりやの鬼子母豚。
 3位は不確定ながら、ハナミノカサゴかインド洋版のインディアンライオンフィッシュの眼上の皮弁は小魚を模している説を目にして驚いた記憶があったので、元ネタ探したけど見つからず。ただ、画像検索とかで見ていくと、個体によってはそういう形の皮弁を持ってないのもいたりするけど、いくつかの個体では真正面から見たときに目玉模様のある透明な軍配のような皮弁が認められ、それが目の上に飛び出していて折りたたみも可能な感じになっているのを見ると、何らかの意味があってそうなっているのは間違いなく、疑似餌説もあながち嘘じゃないのかなと思う。特にインド洋版の方には胸ビレに目玉模様が散らばってる個体もいて”小魚の群れ感”出してるのかもとかも思う。思うんだけどあの派手な見た目で、疑似餌使って意味あるんかい?という疑問もコレあり。なんだけど毒々しい派手な美しさに妙に似合った可愛い小魚っぽい皮弁が造形として素晴らしいので3位に入れてみた。なんで左右対称に目玉の位置が来ないんだろう?とか考えると、同じ群れの魚は同じ方向向いてるので目の位置は右なら右、左向け左ってことなんだろうか?あの派手な鰭は外敵に対する威嚇用と共に餌の小魚を追い詰めるのにも使うとか聞くとさらに目玉模様の使い方は謎だらけで続報が欲しいところだ。
 ハナミノカサゴ、観賞魚が逃げ出してだかのお決まりの展開で生息地以外の米国東海岸の大西洋に移入していて現地困って在来種のサメにハナミノカサゴで餌付けして天敵にしようとしてるとか、キリンミノとか一部のミノカサゴは集団で狩りを行い、別の個体を誘って一狩り行くんだとか最近なにかと注目の魚でもある。インディアンライオンフィッシュの別名デビルファイヤーフィッシュは名付親に反省してもらいたいぐらいの鼻につく中二臭さ。

 ワシ無宗教なので死んだら別に葬式なんかあげてもらわなくても良いと思ってるし、なんなら切り分けて燃えるゴミの日に出してもらってもかまわないぐらいに思ってる。贅沢いうなら切り分けて海に撒いてサメの餌にでもしてもらえれば、大好きなサメの血肉となり役立てて嬉しいかもしれない。でも実際にはそんなことしたら死体遺棄で罪に問われるだろうし、葬式なんてのは死者のためじゃなくて、生きて送る側が区切りをつけて種々整理するための儀式として機能しているってのぐらいは分かってるので後始末する生きてる人達の好きなようにやってくれと思う。宗派もナニも気にしないから手短にチャッチャとやっておしまいにしてくれれば良いと思っている。
 とは言いながらも、釣り人という普通の人より水死体になる可能性の高い人種として、水の底でこいつらの世話にはなりたくないなという”おぞまし系”の生物もいたりして、ということで選んでみました”世界三大死体をほじられたくない生物”。ジャカジャン。
 1位「バイ」2位「メクラウナギ類」3位「シナモクズガニ」
 基本的にワシ肉食性の貝類って信用してないのがコレまでのネタでも明白だけど、そんなヤツらに死んだ後のこととはいえおいそれと体をお任せするわけにはいかんって話ではなく、ヤツらの食い方が不気味すぎて触手モンスターに襲われる美少女のようにラメーッ!って叫んで逃げ出したい気がする。まあ死んでたら逃げられんけど。
 皆さんバイはお好きでしょ?ホンモノのザ・バイ貝なんて今時おいそれとは食べる機会がないにしても何とかバイとかツブとかの小味の効いた巻き貝を煮付けたのを肴に日本酒チビチビなんてのは悪くねぇ、なんでバイが信用ならねぇんだ?と思われるのも当然だけど、やつら腐肉食性の掃除屋で漁獲するにも臭いのきついイワシだのサバだのを餌にカゴで獲るぐらいで死体あさり大好きな真性のネクロフォリアで、まあそりゃ生態系でそういう役目の生き物が居なきゃ困るって話ではあるんだけど、食い方がえげつない。ヤツら吻と呼ばれるモロ触手な見た目の器官を伸ばしてその先の口を死体に突っ込んで死体あさりするんだけど、その長さが尋常じゃなくて殻の長さの5倍とかに達するとか。幼い日にバイ篭の外から吻を伸ばして篭の中の吊した餌を囓るの図を図鑑で見てしまい心理的外傷もののダメージを負ったのであった。ラメーッ!って叫んだところでさっきも書いたけど死んでるので抵抗もできず、ハラワタに触手突っ込まれて食い荒らされるのである。これを陵辱といわずしてなんという。
 2位のメクラウナギ類は最近ではヌタウナギ類なのかもしれないけど言葉狩り嫌いなので昔の名前で書いてます。まあ、メクラウナギ類とアナゴ類は死体あさりの定番魚(メクラウナギは魚じゃないか?)だけど、どちらかにお願いしなきゃならないならアナゴさんにお願いしてデスロールでキッチリ決めて欲しい気がする。メクラウナギ類のナニが不気味って魚類が顎を獲得する前段階の原始的な脊椎動物なので口が横に開いたりして実に不気味で怖いんである。でもってその横に開く口を死体に突っ込んで口の中の歯を肉に引っかけたら、体を結んで(始めて聞く人には意味不明かもしれないけど言葉どおりです)開けた穴にもぐらないように踏ん張って肉を引きちぎるという特殊技能持ち。技名つけるなら”自縄自縛捕食”かな。以外にも美味しいらしくて韓国では大人気で韓国出張の時、残念ながら出張した所は食べる地域じゃないらしくて食べられなかったけど皮で作った小物入れがお土産屋に売ってたので買った。日本だと秋田とか深海漁業のあるところとかで密かに人気らしい。不気味なのに加えてここでは書けない個人的な恨みもあってワシの死体を漁らせたくはない。
出典:ウィキメディア・コモンズ、撮影:J. Patrick Fischer

 3位のシナモクズガニも最近ではチュウゴクモクズガニなのかもしれないけど以下略。
 っていうより上海ガニってほうが最近はとおりが良いかも。こちらは中国出張の折に食べる機会を得ている。まあ美味しかったけどエビカニって産地で食う鮮度の良いやつが美味しいってのが基本で、ふん縛って活けモノで流通させるのも特定外来生物だからダメだし日本でわざわざありがたがって食うほどのもんかね?日本で食うなら在来種のモクズガニのガン汁のほうが美味しそう、とかいう気はするけどそれで儲けてる商売の人が居るのであんまり大きな声ではいわないでおく。
 でもってなんでそのシナモクズガニに死体食わせたくないのか。浜辺に打ち上げられた死体がカニにたかられているなんていうのは、サメ映画でも定番の場面で正しい水辺の死体のあり方だと思うしシナモクズガニ自体はぜんぜん不気味でも不快でもなく恨みもなにもないんだけど、シナモクズガニには色々と伝説があって、その一つに中国では戦乱の後はシナモクズガニが美味くなるってのがあって、さすが食の追求に関してはフランス人と双璧の美食の民。人の死体食って肥えようが美味いモノは美味いと言い切ってしまう強烈な食い道楽ッぷりに感心するやら呆れるやら。っていうのが頭にあると、シナモクズガニに死体食われるってことは戦乱に巻き込まれて戦地で”水漬く屍”となったことが暗示されて悲しくなっちゃうんである。
 高校の現国の授業で現代詩として「伝説」ってのが取り上げられて感想文を書かされたんだけど、湖のカニを獲る漁師夫婦が船の上で愛し合ったりしつつ子供が一人前になったら口減らしのために二人で湖に身を投げてカニを肥やすっていう上海ガニ版楢山節考的な詩だったんだけど、今思うとワシ10代の頃から「パソコン椅子探偵」っていうか「君の名は」みたいなことやってて、詩を読んだ感想なんて一っことも書かずに、ひたすら「蟹」としか書かれていない蟹の種類を推理して、当時上海ガニなんて日本じゃほとんど知られてなかったけど、さっき書いた戦乱の後に蟹が美味い伝説とかを紹介しつつ、日本のモクズガニに近縁のシナモクズガニだと考えられる。とかいう報告書みたいな感想文もどきを書いて出したら、まあそういうの楽しんでくれそうなセンセだという読みもあったんだけど、お褒めにあずかりましたとさ。もちろん推理は正解してまっセ。
 子供達の幸せのためになら世の親はその身を蟹に食わせても惜しくないのかもしれんけど、戦争なんてわけのわからんモノに巻き込まれて、知らない土地で死んで屍を蟹に食わせるなんてのは空しいだけなので勘弁ねがいたいもんである。

 死んだあとはまあいいやと割り切っても、生きている間に遭遇してあいまみえるのはご勘弁な生き物たちもいるな、ということで”世界三大やられたくない水棲生物”いってみよう。ジャカジャン。
 1位「ダルマザメ」2位「カンディル類」3位「住血吸虫類」
 1位は、海洋生物でナニが最強の捕食者かって議論になるときに穴馬的に出てくるサメだけどワシャこいつが最強で良いんじゃなかろうかと思う。本命は当然シャチというのが大方の見解で、シロナガスクジラを含む大型のクジラを狩るタイプも知られていて、哺乳類食というクジラでも弱ったり死んだりしたら餌にするホホジロザメが姿見ただけでおびえてその海域から逃げてしばらく寄りつかないという逸話とか知ってると、それはそれで一つの正解なんだろうと感じるけど、でもそのシャチも多分寄生虫とかには囓られてるだろうし、病原菌とかには勝てないこともあるだろうから、その辺まで考慮すると最強ってなんだろうっていうのはよく分からなくなる。ただ、ダルマザメはシャチを直接襲った報告例ネットの海じゃ見つけきれなかったけど、襲って餌とした生物はイルカやマッコウクジラのような歯クジラも含まれ、その他ヒゲクジラ、ホホジロザメ含むサメ類やマグロなどの大型の魚類、果ては潜水艦のネオプレン樹脂製の部品まで囓る無差別ぶりで、シャチも報告例がないだけで襲ってるに違いなく、そういう直接的な襲撃による外的損傷をシャチに与えうる強者であればコレは”海洋最強の捕食者”の称号を与えてはどうか?と検討しても罰はあたらんだろう。
 そう聞くと正体知らない人は「どんな怪物ザメなんだろう」と思うかもしれないけど、実物は50センチぐらいの見た目ショボいサメである。
 水中の捕食者は基本餌生物より格段に大きく一口で餌生物を補食する。陸上では捕食者であるライオンより餌になるアミメキリンやオグロヌーの方が大きかったりするし、インパラがライオンより小さいと言ってもそれ程の体格差はなく一口で食えるような餌ではない、という例に見られるように陸上の捕食者では珍しくない大型の餌生物を狩って噛みちぎって食べる、という水棲生物は実は少ない。例外がさっきから書いているけどクジラも食べるシャチ、ホホジロザメ、ダルマザメあたりと淡水ならピラニアと2位に上げてるカンディルやらなにやらなんである。
 なぜ、水中では大型の餌生物を狩らないのか?コレという解答を目にした憶えがないので私見になるけど、おそらく水中では餌も自分も浮いているので同じ座標に狩って殺した餌を止めておくのが難しいからというのが一つの要因としてあるのではないか。
 陸上なら地に足が付いているので、ライオンなら仕留めた獲物はゆっくり味わえば良いし、ライオンに餌を奪われる立場のヒョウなら木の上に引っ張り上げるとかの工夫は必要かも知れないけど、死んだ獲物がどっかに勝手に行ってしまうことはない。これが、水中の場合たとえば自分より大きなマグロ類を仕留めました。となったときにマグロ類は泳ぐことによって浮力っていうか揚力発生させて浮いていたので沈み始める。囓ってて食べきれるまでに自分が耐えられない水深へと沈下してしまえば、せっかく危険を犯して労力かけて得た獲物を捨てざるを得ない。クジラのように死んでもしばらくは脂肪分とか肺の空気で浮いていてくれればホホジロザメがそうするように流れていくのにつきまといながら食べ続けることはできる。それにしても限界はあって流されて陸地に打ち上げられたりしたら追い切れない。シャチはシロナガスクジラとか大型のヒゲクジラを狩ると、柔らかい舌とかから食い散らかしたうえで大半の肉を満腹したら捨てて移動してしまうらしい。残りはサメとかが囓るか沈んでしまう。沈んで着底してしまえば陸上と一緒でおいそれとは逃げない餌になるので、海底ではさっき書いたように死体ほじくる系生物が普通にご馳走を囓りとっていく。
 っていうナマジ説が正しいのかどうかは別にして、水中を泳ぐ捕食者は一口で餌を食うのが基本であり、水域において動物プランクトンの果たす役割で大きなモノとして植物プランクトンが生産した有機物を次の大きさの捕食者に渡すというのがあるぐらいで、そうやって順番に高次の捕食者ほど大きくなっていく。
 その例外中の例外が50センチかそこらのダルマザメなんである。大型の餌生物を襲う場合実際にはホホジロザメがクジラを食うのは掃除屋的に死体を食ってるって話で、アシカとかは一口とは言わないまでもエアジョーズ的に狩って殺してから流れ去っていくまでには食い切れる程度にホホジロザメは大きい。シャチの食い方は正直どうなの?って思うぐらい無駄が多くて、大型のオスのコククジラが子連れのザトウクジラを狙ってるシャチを追っ払うって映像を見たことあるけど、襲われてるのが赤の他人(他クジラか?)でも追っ払わずにいられないぐらいヒゲクジラにとっては迷惑きわまりなく看過できない級の不倶戴天の敵なんだろう。
 その点、ダルマザメの戦略は特殊というかなんというかなんだけどデッカい獲物の体表面を一口だけ囓り取るというもので、英名クッキーカッターシャークって呼ばれているけどむしろ実態はアイスクリームを半球状にすくい取る器具みたいな歯をもってて5センチかそこらの半球状に皮付き肉を囓り取るんである。
 相手が大型のクジラやサメ、マグロ等なので死にはしないので餌生物の資源量とかに与える悪影響は囓り取った肉の分だけでシャチの食い散らかしに比べるとずいぶんと上品に感じられる。なんというか魚と思うから特殊だけど寄生虫とか陸上なら蚊のような吸血生物に近いと考えれば腑に落ちる気がする。
 実はこれに近い餌の食いかたする魚はほかにもいて、ホンソメワケベラのふりをして近づいて大型魚の体表を囓り取るニセクロスジギンポなんていう個性派がいて悪いやっちゃなぁと思ってたら、最近の研究では本家のホンソメワケベラ自身もたまに”お客”を囓ってて囓りすぎると客来なくなるし、その囓り具合を他のライバル店との関係もあって戦略的に変えたりしているとかなんとか。クソ面白いんでやンの。
 淡水では他の魚の鱗専門食のスケールイーターと呼ばれる魚もいたりするけど、観賞魚の世界では餌がないと他の魚の鰭やら鱗やら囓り始めるのは割と居たような気がする。淡水の閉鎖された水域で餌少なくなったり個体数増えすぎたりしたら手っ取り早く効率よく得られる餌は隣の魚の鰭鱗ってことなんだろう。自然界ってほんと多様性に富んでてありとあらゆる戦略で競われるルールのない修羅場なんだなとワクワクするネ。
 というわけで話戻すけど迷惑っちゃ迷惑だけど洗練された技巧派のダルマザメ、クジラとかにしてみれば蚊に刺されたようなモノだとしても、人間が囓られると鋭利なアイスクリームしゃもじ(器具名知らんので今造語しました)で直径5センチがとこの半球状に肉をえぐられたようになるので、これは縫合するのも難しそうだしメチャクチャ痛そうで、ヘタすりゃ失血死ものである。
 実際に遠泳中の泳者が襲われた事例はあるそうで死亡事故には至らなかったようだけど想像するだに金玉がヒュンと縮み上がる玉ヒュン案件である。 
 2位の「カンディル類」はアマゾンの尻穴野郎として皆様ご存じのお魚。ピラニア(ナッテリーとか)とかコイツとか、大きな獲物が流されていくいとまも与えず大群で食い尽くすって戦略がいかにもアマゾンの強者の力押しって感じでゾクゾクしますね。
 ただ、カンディル類にはピラニア的な軍団派と寄生虫的な尻穴派が入り混じっているようで圧倒的にイヤなのは尻穴派なのは言うまでもなく、尻穴、尿道、穴があったら入りたい輩で入り込んだら内側から柔い肉を囓りつつ引き抜けないように背ビレ胸ビレの棘を立てるとか、これまた玉ヒュン案件なのである。アァーッ!!
 3位の「住血吸虫類」は寄生虫なんだけど、水棲生物なのか?という疑問は生活史のなかに泳ぐ段階があるので水棲生物だとして、そんなもん生で淡水魚やらサワガニやら食う程バカじゃないからオレには関係ないやと思う釣り人の皆様。反省して気をつけてください。住血吸虫類は中間宿主を生で食べることで感染する寄生虫じゃなくて、中間宿主の淡水産巻貝から泳ぎ出たメタセルカリア幼生が直接最終宿主であるホモサピを含む哺乳類の皮膚に穴を開けて潜り込んできて寄生します。
 日本じゃ日本住血吸虫が中間宿主のミヤイリガイ駆除とかで終息宣言がだされていて過去のものとなって忘れ去られつつあるから危機感が全くないんだとおもうけど、いまだ日本住血吸虫の感染地域であるアジアやビルハルツ住血吸虫類やマンソン住血吸虫類の感染地域のアフリカで怪魚ハンター的な釣り人が平気で魚と一緒に水に入って記念写真撮ってたりするのを目にすると、特効薬に耐性のあるヤツらまで出始めてるなか、よくあんなことやるなと老婆心ながら心配になるのである。
 自己責任で寄生されるのは好きにしろだけど、日本でもミヤイリガイ自体は絶滅していない地域もあったりして内房の某河川流域とかが生息地らしいんだけど、アジアから日本住血吸虫持ち帰って卵バラ撒くなよとは釘刺しておきたい。
 こいつらの気色悪さを知ったのはらも先生の小説「ガダラの豚」で、アフリカと日本を舞台にした呪術と超能力、嘘と本当が入り交じる物語なんだけど、その中でアフリカの呪術師が使う”呪い”の現実的な解釈の一つとして「オマエの集落に呪いをかけた、オマエらはやがて腹に水がたまって死に至るだろう」って宣言しつつ、裏で井戸や貯水タンクに住血吸虫の中間宿主である淡水巻貝をぶち込むっていうのが出てきて、タネや仕掛けもあって実際に”効く”呪いってのはあり得て、かつ仕掛けられた側はタネを見破るのは難しいってあたりから、呪術の全てがインチキではなく実効ある手段とハッタリを織り交ぜた駆け引きが存在するという舞台設定が真実味を帯びて虚々実々の騙し合いの物語世界に引き込まれていくのである。
 水に浸かったら皮膚から浸入してくるっていう魚釣りしていたら完全には防ぎきれないようなアブねえ寄生経路なうえに、雄雌つがいで静脈内に陣取って卵バンバン生み始めると卵に激しい免疫反応を起こしてしまい、マンソン住血吸虫やら日本住血吸虫では肝硬変やら起こして腹水溜まってとかエラいことになるのである。
 実に陰湿でイヤーなやられかたでこれまた勘弁願いたいモノである。

 ってな具合で、最初はネタも今暖めてるのはもう少し熟成期間がいるし、つなぎの小ネタでお気楽にしょうもないネタ書き散らしてお茶濁そうと書き始めたら妙に興が乗って筆が走ってというかキーボードが叩けてしまい、予定していたネタ半分ぐらいまできた所なんだけど長いし疲れたしで残りは来週ということで、どちら様もよろしく。
 内容的には当初から人生において知ってて役立つとかそういう要素の一切ないしょうもないネタを書き散らす予定ではあったので、せめて見た目的には良い写真でも使っておこうかなと、今回ウィキペディア様とウィキコモンズ様から画像を拝借しております。ワシ少額とはいえちゃんとウィキメディア財団から催促メール来たら寄付してるからこのぐらい使わしてもらっても罰あたらんだろうて。
 出典とか書いてない写真は完全に著作権とか放棄した「パブリックドメイン」とかいう整理の自由に使っていい写真で、出典書いてるのは「勝手に使っても良いけど、出典書いて著作権がどうなってるか分かるようにリンク張っといてね」という整理の写真で著作権の等級とか書いてある「ウィキコモンズ」の該当ページと画像共有サイトの撮影者のページにリンク張りました。多分これで権利関係は問題ないという理解なんだけど、どなたか詳しい方で「コレが足りん」とかあったら手取りあげ足取りで教えてくれると助かります。

 ではまた来週ごきげんよう。 

2019年5月4日土曜日

自由への闘争あるいは逃走

 マスカラスの弟はドスカラスッ!!っとわけ分からん感じで始まっておりますナマジのブログ、元号変わっても引き続きよしなに。

 ちゅうても世間様10連休とかも、すでに700連休ぐらいのワシにはあんまり関係なく、特に変わったこともなく淡々と釣りとリハビリの日々が苦戦しながら続いておりネタもそれほど変わったものがご用意できるわきゃなくて、身近な小ネタとかでご容赦を。
 淡々と変わりなくとはいえ季節は確実に巡っていて、新緑のまぶしい季節となっております。我が家のプランターも春の花は終了で、秋に植えた豆苗の残りがニョキニョキとやる気を出して花を咲かせて豆がなり始めております。
 豆の種類としてはソラマメなんだと思うけど、葉っぱ食べる品種だろうから豆が食えるのかどうか、豆って中毒するやつもあった気がするので花だけ楽しんでおくべきか?ちなみに春先には伸びるそばからヒヨドリについばまれて成長できず、我が家とヒヨドリとの関係は悪化し緊張の度合いを増しております。
 朝、睡蓮鉢で水浴びしている音で目覚めるのとかは風情があっていいんだけど、種だの新芽だのに手(くちばし)を出すのは勘弁して欲しいんですけど。ヒヨドリって木の実とか花の蜜が好きって印象で種だの新芽だのは食うと思ってなかったけど、ひょっとして真犯人は別にいるのかしら?

 室内では、水槽の水草の水上葉が繁茂しまくっていい感じになっている。ライギョの潜む水辺って感じがしていい塩梅だ。そろそろある程度剪定した方が良いか?
 この水槽の主であるコウタイは熱帯魚というほど暖かい地方出身じゃないので、昔は近畿地方でも帰化していたとかで寒さは室内なら問題なく冬でもヒーター入れていない。とはいえ底面濾過から水上部分の植物に水を供給している水中モーターの熱で真冬でも20度弱ぐらいはあるんだけど、気温の上昇とともに水温も20度を超え熱帯原産の水草たちはモリモリと成長する。
 もう少し暑くなってくると、水温上がりすぎるので熱がこもらないようにするためと気化熱で多少温度下げるため、蓋の半分を金網に換えるので、そうなると水槽内は湿度が減少する’擬似的乾期’をむかえ、湿り気が好きな水草の水上葉は適度にしおれたり枯れたりする。
 先日、我が家の風呂場にカマドウマの一種(マダラカマドウマか?同定は素人じゃちょっと無理)が出現、こりゃコウタイの餌にちょうどいいやと捕獲して水槽内に放ったんだけど、葉っぱの上にいたのを狙った最初の一撃を運良く逃れて、茂みに逃げ込んだので「そのうち食われるだろう」と放置しておいたら、水中モーターの電源引っ張ってきてる隙間あたりから逃走したのか、ベンジョコウロギの別名どおりトイレに出現した。なかなかしたたかな生存能力に敬意を表して放置しておいた。台所にはゴキブリ用の毒餌とかあるけど食わずに生き延びてみせてほしい。世帯主として同居を許可する。
 アシタカがサンに「生きろ!そなたは美しい」って台詞を吐いてるけど、ネット上ではじゃあ「不細工はタヒね!」ってことなのか?と疑義が呈されていたりしてクスッとなる。
 カマドウマちゃん(輸卵管ぽいのが突き出てるので雌っぽい)美しくはないかもだけど、したたかに生きろ!って言ってやりたい。ワシごときに言われずとも彼女ならやってくれるだろう。


 平成最後の日には、体力もちょっとはついてきたしということで、久しぶりに水族館に行ってきた。ゴールデンウィークの人混みでかなり疲れたけどやっぱり水族館はいい。
 モンツキシビレエイというのを初めて見たけど、目玉模様がドンとど真ん中にあってモゾモゾと水底を歩く姿といい最高に愛らしい魚だ。触れずともシビれた。大水槽のターポンはオレの掛けたのはもっとデカかったと死んだ子の歳を数えるようなことを思ってしまったし、ロウニンアジについてはワシの釣ったのの方がずいぶんデカかったなと優越感に浸れた。
 イルカショーも楽しかった。イルカ(バンドウイルカ)も愛嬌があって賢そうだし可愛らしい。欧米の動物保護団体が漁するなとか水族館に閉じこめるなとか煩いこという気持ちも分からんでもない。
 分からんでもないけど牛だって賢いし可愛いからなにが違うんやって話で、そういうと菜食主義者とかが小賢しいこといいやがるけど、植物に痛覚や感情がないなんて、なんでオマエごときに分かるんや?っていつも思う。植物も虫にかじられたりしたら防御反応として毒物質生成したり、周りの他の個体にも情報伝達物質飛ばしたりもするとか知ったら、動物のような神経系やそれが発展した脳が感じる感情がないとしても、’痛み’も感じているといえる気がするし”会話”さえしているように思う。’生き残りたい’という方向性は生物なら基本一緒で、その次元において根本的に我々生き物はすべて等しく、儚く脆くも尊くて罪深いんじゃないのっ?てワシャ思うんじゃ。
 ベジタリストやらヴィーガンやらが自分らだけ手が汚れてないようなしたり顔していられるのを見るたびに、頭が悪いと罪の意識さえ感じずにすんで幸せでイイネ、とうらやましく思う。ワシも頭あんまり良くなくて苦労してきたけど、生きていくことの罪深さぐらいは分かる。
 健康のためとか自分のためにやってるなら止めやしないけど、’痛みを感じる他の命を傷つけたくない’とか脳味噌虫沸いたような御託を並べ始めて他者を非難し始めるのとか目にすると、思いっきりののしって論破してやりたくなる。痛みを感じる感じないで線を引くっていうのが、さっき書いたように痛みを感じるということの定義から難しいってことを棚に上げておいたとしても、どっかに勝手に線を引いてその差別的な線引きに他者を従わせようとする傲慢さ。
 痛みを感じなければ殺して良いとするなら、無痛覚症の人や脳死の人は殺していいのか?現代医学では脳死の方は死者扱いでイイんじゃネ?ってなりつつあるけど、そんな簡単に割り切れるもんじゃないことぐらい分かるでしょ?あんたのカーチャンが脳死で病院のベットに横たわってる、そのときにもう痛みも感じないから管抜いちゃいましょって逡巡もなく即断できんのかアンタは?できるんならすごいけど、心の底から軽蔑する。母親と特別な密接さを持つ哺乳類として、脳死が現代医学の整理で人の死だと定義されるとしても、それを理解し感情を整理するには相当な時間と覚悟というかあきらめが必要とされるんじゃないのか?
 どっかで線を引かなければ、なにも食えなくなる。だからいろんな文化や地域で、歴史的な背景やらをふまえて暗黙の了解やら宗教的禁忌やらなにやらで線が引かれているし、個人でも線を引くし、場合によっては国家とかの体制が制度で線を引くこともある。でも結局は流動的で暫定的なものでしかあり得ないんだと思う。 
 なんてことと同時に、自由自在にクルクルと泳ぎ回るイルカたちを見ていると、最近の分類じゃ’クジラ偶蹄目’って偶蹄目とまとめられたぐらいで、もとは陸にいたカバ的な四つ足の生き物だったはずなのに海洋生活によくもここまで適応進化したもんだなと感じつつ、そういう大海原をいく生き物をプールに閉じこめておくことの是非についても、やっぱり考えてしまう。
 善い悪いは、まずは脇に放置して、イルカの幸せについて、イルカでもないホモサピの自分が、なるだけイルカになったつもりで考えてみる。
 プールに閉じこめられるのはやっぱりヤだろうと思う。大海原を自由自在に泳ぎ回った方が気持ち良さそうに思う。でも、大海原に泳ぎ出せば自由ではあるけど、天敵である人間やら病原性生物から逃げなきゃならんし餌探せなければ餓死する。自由には責任がつきまとう、っていつも書いてるやつである。
 水族館のイルカは病気になれば治療してもらえるし、餌ももらえる。
 ショーを一日何回かしなければならないけど、これは暇つぶしにもなるし仲間と遊ぶのが好きな社会性の強い生物であるイルカにはいうほど負担じゃなくて、むしろ楽しみなんじゃないかと思う。
 南の島で釣り場移動中とかにイルカが船によって来て、船のつくる引波に乗って遊んだり、クルクルとジャンプを披露してくれたりしたのを見ているので、もともとそういう遊び好きな性質を利用してショーを仕込んでいるんだとは思う。
 まあ本当のところはよく分からんにしても、イルカにとって必ずしも不幸せなことばかりではないようには思う。飼育されて得られたイルカの知見がイルカの保護に役立つとかもあるだろう。
 でも、イルカの自由を奪って拘束しているのは事実なので、本当はイルカにとっては、腹が減ったり病気になったら人間を頼って、気が向いたら芸も見せて遊んで、飽きたら海を好きなところまで泳いでいくっていうのが、ワシがイルカなら一番幸せだろうと考える。とらわれの身は正直勘弁願いたいし、水族館のイルカにはやっぱり不幸の臭いがそこはかとなく漂う。
 自由にイルカに選ばせるのが本当は理想かもしれない。イルカが、浅瀬に逃げ込む魚を網でとうせんぼしてくれる漁民と協力する事例は過去現在いくつも知られているし、気が向くとダイバーと遊ぶためにやって来るイルカがいるダイビングスポットなんてのも割とあるようで、そういうのが理想といえば理想なのかもしれない。
 だとしても、イルカをプールに閉じこめておくことが悪かというと、そうとも限らないんじゃないかと思う。一旦脇に置いておいた善悪の判断につっこんでみよう。
 今日、映像撮影技術はものすごく発達していて、先日もNetflixオリジナルの「OUR PLANET-私たちの地球-」というドキュメンタリーシリーズ観たんだけど、めちゃくちゃ痺れる映像満載だった。イルカを例に出すと、イルカが浅場のボラの類をしっぽで泥を巻き上げて泥の壁でグルッと囲んでしまい、パニクったボラは濁った泥の中に逃げ込めば音響カメラ搭載の捕食者であるイルカにやられるのが本能的に分かっているのか、泥の壁を飛び越えて逃げるんだけど、そこを着水地点に仲間のイルカたちが口を開けて待っているなんていう驚きの漁の場面をドローンで空撮していて、初めてザトウクジラの’バブルネットフィーディング’の映像を目にしたときの衝撃を思い出した。ドローンは海外では遊魚船でも利用が始まってるようで、むかし米国の巻き網船が、ヘリでキハダマグロの群を探して巻いていたのの小型発展版で釣りもだいぶ未来にきたもんだと感慨深い。ちなみにその巻き網がキハダと一緒にいるイルカを巻きまくってて批判を浴びて、イルカを巻かない技術で穫ってきたキハダで作った缶詰には「ドルフィンセーフ」とか認定マークがついてたとかなんとか。ホント欧米の動物保護団体ってめんどくせぇ。あんまりうるさいこというと食うモンなくなるぞ。って話で食料生産の現場でのイルカ食等利用はその地での文化的にとか許容されるんならワシャなんの問題もないって思ってるので今回書く気はない。反対意見を言うのも自由だけど食うのも自由って話である。
 今回食う話じゃなくて、研究目的もあるとしても主に見せ物としてイルカを飼うことの善悪についいて考えている。
 ドローンの話書いたように、映像技術が発達してきた現在、必ずしも生きたイルカを飼って見せ物にしなくても、映像で見れば良いし、本物が見たければイルカのいる海に行くべきだという意見もあるだろうとは思う。思うけど、現時点の映像では生きて動く本物の迫力にはまだ遠く及ばない。生きた本物を見せる価値はイルカの自由を奪ってでもあると思う。
 「OUR PLANET」で、ほかにもいろんな素晴らしい映像が楽しめたけど、虎の中でももっとも北方に棲みもっとも大型といわれる亜種アムールトラが、雪の積もる稜線を、形は爪を引っ込めた猫の足そのものなんだけど、馬鹿デカい前足で雪を踏みしめタシッタシッっとやってくる映像の美しさ迫力にはほとほとまいった。
 「OUR PLANET」はまさに欧米の動物保護団体であるWWFが協賛なので時に説教臭かったり、ペルー沖のアンチョビの減少なんていう、水産の教科書にも出てくるぐらいの典型的なエルニーニョとラニャーニャとか気象海象が関係してくる変動なのに乱獲が原因とか嘘こいてたりだけど、アムールトラの美しさには嘘やまやかしはなく、確かにこの美しい捕食者を地球上から失ってはならないと思わされる説得力のある映像だった。
 だとしても、小学生の頃に動物園で強化ガラス越しに相対したトラ(シベリアトラと紹介されてた)の実物の持つ大きさ迫力、ガラスがビリビリと震えるほどの低い咆哮。40年近く昔のことだけどあの感動は映像では代替することができない。多分ほとんどの人がトラといって頭に思い浮かべるその大きさはせいぜいヒョウの大きさでトラは軽くその倍はデカい。間近で見るととにかく顔がバカデカくてビビる。
 アムールトラを撮影するために、撮影班は無人カメラをあちこちに設置するとともに、2冬に及ぶ小屋での張り込みを敢行し執念の撮影で映像をものにしたとのことで、トラの本物なんておいそれと現地に行ったって見られないんである。
 本来何キロ四方にも及ぶ広大な縄張りを持つトラを動物園の檻の中に閉じこめることは、ストレス感じるだろうしトラにとっては不幸なのかもしれない。でもそれでも多くの人に檻の中トラでもいいので見てもらいたいと思うのは傲慢だろうか?トラの尊厳を踏みにじりすぎているだろうか?
 答えは人によってそれぞれあったりなかったりするんだろうけど、野生生物や自然を遠ざける方向性は間違っていると直感的に感じる。そういう直感が働かなくなることの危うさは今の時代常々感じるところである。そんなことも分からんのか?って驚くようなことが増えてきた気がする。
 イルカの幸せがどうのこうの言う資格もないような、遊びで魚を釣って、楽しみのために魚を飼育している人間が書くことにどれだけの説得力があるか分からんけど、そういう他者をさいなむような犠牲のうえにしか得られない感覚もあるんだということは確信している。

 なんで、野生生物や自然環境を守らなければならんのか?そんなもんそうしないとやがてホモサピにも都合が悪いことが起こるからってだけである。その延長線上にイルカ可愛いとかトラかっこいいとか人それぞれの好みがあって、本当はそういう野生生物の幸せを考えてる暇があったら、ホモサピのっていうか自分の幸せを考えろってのがとどのつまりなのかもしれない。
 でもイルカの自由を考えたときに、自分の自由に思いを馳せずにはいられなかった。
 イルカの幸せを考えたときに一つの理想として強制されずに自分で好きな方を選べるのが幸せなんじゃないかと書いた。そう考えると今の自分は自由にものもいえるし、職業選択の自由も保障されているし、ご飯のお代わりも自由だし幸せなような気がする。
 でも、もうちょっと突っ込んで考えていくと、ワシってホントに自由か?っていうのは疑問に思う。例えば素っ裸になって奇声をあげて通りを疾走したいと思ったとして、ワシは自由にそうすることができるだろうか。多分できないだろう。なんか常識とか世間体とか、警察にしょっぴかれるとかがあって二の足を踏むだろう。そういう目に見えない文化とか制度とか自分の感じ方とかが、ある種ワシをつなぐ鎖となって自由じゃすでにいられてないんじゃないか?とか、自由に生きるっていったって一人じゃ生きられないから社会で生きるならその定めた規則やらには従わねばならんし、金も稼がにゃ飯も食えんし、自由にやればやるほど責任は重くなって種々メンドクサいしって、とか考えるとある程度自分以外のものに頼らざるを得ず、そうなると餌もらうなら芸の一つもやって見せにゃならず、プールの中に囲われたイルカと本質的にワシ変わらんやんけ?と自由っていうことがどういうことなのかという、難しい課題について今日も答えは分かったような分からんようなところでお茶を濁すしかないようなのである。難しいさね。

 ただ、身近にいて一番自由な生き物だと思うのは、疑いようもなく自由に家を出入りできる飼われたイエネコである。やつら腹減ったら餌くれとか当然のように要求しやがるけど、気が向かないと触らせてもくれない。外で遊ぼうが恋しようが喧嘩しようが自由。あれが一番ワシの求める自由に近い存在だと思う。生態系における特権的貴族階級といっていいかもしれない。

 水槽のコウタイの牙を逃れ抜けだし、便所にも風呂場にも玄関にも神出鬼没な自由な存在としてのカマドウマの生き方に憧れを覚えるけど、ああいう危険も飢えも自らの力だけを頼りに切り抜ける野生の力を持ち得ないワシとしては、なんか上手に芸をして生きていくしかないのかなといまのところ思うのであった。
 ワシも若い頃は結構な美少年やったけど(嘘じゃないって、コラッそこ鼻で笑うんじゃない!)歳食って既に美しくもなくなっちゃったけど、まだしばらくはグダグダと生きていきたい。

2019年4月27日土曜日

嵐に闘え反逆者

 潜在的な保菌者だったのかもしれないけど、直接的には中古屋のワゴンでオリムピック社トゥルーテンパー727と出会ってしまったことが原因の急性インスプール熱発症に端を発し、一時的な小康状態を何度かむかえつつも、その度に再発を繰り返してきたスピニング熱もやっと今度こそ寛解に向かいつつある。と思う。よね。たぶん。希望的観測をもって。だと良いな。どうだろうね?
 とにかく半年がとこ頭の中を常にスピニングリールのベールアームがクルクル回ってるクルクルパー状態だったんだけど、今は新しい主力機となりつつある720Zを使うのが単純に楽しいって程度で、一時期の、分解整備して遊べるならどんなリールでもかまわんぞッ!ぐらいの勢いは全くなく、台数も規制値90台を1台割り込んで89台となり「まあ、よっぽどの出物があれば買えば良いさ」ぐらいに余裕の心境である。
 苦しいところを乗り切って、私は生還したようだ。ヤレヤレだぜまったく。

 という状況に思わぬ所に落とし穴が待っていた。現在私は突発性ポッパー症候群に冒されつつある。
 久しぶりに往年の名作「BHポッパー」でフッコ釣ったら、シーバス釣るためのポッパーがどうしても欲しいッ!!アタイもう我慢できないの!ってスピニング熱治ったところでおかしな物欲はナニも治まっておらず、むしろ日和見感染状態でメバル用シンペン症も同時発症してしまいそうでヤバかった。

 そんなもんオマエ、いっつも使ってるチャグバグがあるやろが?という一人つっここみは発症中の人間には意味をなさない。
 ポッパーなんて正直シーバス釣るためだけなら何でもいいんだと思ってる。竿先でチョンチョンしながら巻いたら適当に飛沫あげてポコポコ音してくれれば充分で、そんなもん売ってるポッパーほとんどそういうルアーだっちゅう話。
 でも、世の中にはよりどりみどり選びたい放題の多種多様なポッパーが存在して、ちょっとずつ違っててお好きな人にはその違いがまた楽しめる汁気のある部分なんである。
 ポッパーを大まかに分けるなら、まずはポッパーとチャガーとダーターに分かれるんだろうか?ただ引きでは潜って泳ぐダーターはまだ分かりやすいけど、ポッパ-とチャガーは正直違いがよくわからん。名前からチャガーなんだろうなというチャガースプークやらチャグバグ(旧型)が水平浮きなので水平浮きがチャガーかっていうとズイールのチマチマサーブとか水平浮きでもあんまりチャガーって認識されてないので、そのへん曖昧なんだと思う。気にしないでおこう。
 写真の上からダーターの代表「ラッキー13」のベビーとタイニーサイズでポッパーとして使うとポコンと音させて潜った後に後ずさり気味に浮き上がるので小場所でネチネチと粘るのが得意。タイニーでは小バス良く釣った。シーバス釣るならむしろポッパー的に使うよりユルヨタな感じで泳がせるダーターとしての方が出番あるかも。
 真ん中はポッパー代表の「ポップR」でバス釣りの世界ではつとに有名。ワシもお世話になりました。
 一番下がチャガー代表の「昔のチャグバク」。水平浮きでペンシルベイトのようなきれいな首振りがお得意。

 っていうあたりは既に我が家の蔵に転がっていて、それで充分な気もするんだけど明確な目的があっての物欲でない病的な物欲は始末が悪く、なんか分からんけど持ってるのと違うのがとにかくほしいのである。
 そもそも「(旧型)」「昔の」と書いてることからお察しのとおり、っていうかこのブログ読んでる人たちには常識かもしれないけど、チャグバグには、ラパラ傘下になった現行ストームブランド版のもがあって、それは既に例によってごっちゃり買い込んで蔵につっこんであって全然ポッパーの弾数的には困ってないのである。
 ちなみに写真ので全部じゃなくて、あちこちのタックルボックスに入ってるのはメンドクサくて出さずとも新品在庫と普段のボックスに入ってるだけでこのぐらいはある。まあ、主力のポッパーとかどこのご家庭でもこの程度は在庫されていることだろう。サイズは6センチの小っこいのがフッコ釣るには出番多し。

 で、ほかにもクロダイ釣ろうかなとか思ったときに、クロダイポッパーの火付け役に敬意を表して買ったザブラポッパーの黄色スイカ色とかついでに中古屋で安かったのを買ったポップXとかもあるんだけど、もっと別のも欲しいのである。人間はその欲望によって万物の霊長として進化し、その欲望によって滅びの道を歩むって感じが、自分の物欲を省みて強く実感できる。足ることを知れば人は幸せに生きていけるはずなのに、なぜ愚かにも多くを欲してしまうのか。ああっ!そうだとしても、欲で滅びる運命と書いてサダメだとしても、オレの魂がポッパーを求めてやまないのである。
 
 ちゅうことで買いました。えぇ買いましたともたんまりと。
 ちゅうても、わし別に80年代のヘドンもののチャガースプークとか大枚はいたいて買い求める人種じゃないので、基本、ラパラ、プラドコ、デュエル系の人なんである。
 ラパラは傘下のストームブランドのチャグバグ買いまくってあるしスキッターポップも持ってるし、プラドコはポップR持ってるしでデュエル(旧ヨーヅリ)から行ってみました。今回漁具系ルアーメーカーもう一方の雄ヤマリアはシーバスというより名作ポップクィーンとかシイラのイメージなので中古屋で1個買ったのみ。
 シーバス釣る場合のポッパーは一カ所で粘るというよりタダ引きにところどころ竿先で”ポップ”させるぐらいで使うことが多いので、太めで一カ所で粘るの得意そうな3Dインショアポッパーは無視して、たぶん昔は違う名前で出てましたな感じの、シルバーポップ75と3DSポッパー65がネット状の評判もおおむね「安いけど釣れる」といういかにもヨーヅリっぽい好評だったので新品中古双方から攻めてみた。
 まあ、このぐらいあればとりあえずデュエル方面は良いかなと。
 試投もしてみて、まあこの手のポッパーで失敗作作れって方が難しくて、普通に”縦浮き系”で後方重心で飛距離も出るし適度に首振りながら音も飛沫もどちらもそれなりにという平均的に良くできた感じのバランスに仕上がってて流石世界のYO-ZURIブランド。
 でも、優等生すぎていまいちものたんない。

 もっとアクの強い個性派はおらんのか?と考えて、そういえば昔のチャグバグは今思うと灰汁が強かったなと年寄りは懐かしく思い出すのである。
 現行チャグバグは縦浮き(系の斜め浮き)ラトル入りの現代風な標準的なポッパーとして昔のチャグバグと見た目同じなのに機能は更新されてて全く別物になっている。
 昔のはラトル入りのラトリンチャグバグもあったけど、基本ラトルなしで水平浮きで今時のポッパーみたいに後方に重心がないので、飛距離が出しにくいっていうか、クルクル回って失速するのはまだしも、変な曲線をえがいてどこに飛ぶのか分からん感じでなかなかに投げづらかった、しかしながらオモリなんか入れてないだろう水平浮きの軽いボディーは水面で軽やかにポップ音を奏でて地味に飛沫飛ばしつつ、竿先一つできれいに180度近いターンを決めてくれたものである。
 でも眺めて楽しむのには昔のチャグバグも良いけど、実釣にはあんまり向かん。そこそこ良い値段してるし弾数そろえられん。
 ということで”水平浮き系”のポッパーぐらいあるだろうと探してみたら、意外に少なくてハンドメイドの高級品をのぞくと、プラドコのレーベルブランドからポップRの細長い版「スーパーポップR」をさらに後方のラトル兼オモリを小さくして横浮きにした「チャグR」というのがあったので中古とかで買ってみたら、そういえばこれ蔵にも新品があった。
 後は廃盤だけど日本製でスミスハトリーズのトレッピーというのとティファのスリックポップというのも買ってみた。
 しかし、アメリカンルアーの型同じでオモリだけ換えて違うルアーにしてみました。っていうのが合理的なアメ人らしくて笑える。チャグバグなんて典型的な水平浮きポッパーを斜めに浮かしたらあかんだろっ?と最初思ったけど、使ってみたらすぐ納得した。充分以上に縦浮き系ポッパーとして優秀なものになっていた。見た目一緒だけど実体は全く違うルアーとして新たなルアーが爆誕してた。ルアーなんて結局そんなもんで細かい外側の造形なんて些末な事項で、重心位置とか比重とか、そういう動きに直接大きく関係する部分がしっかりしていれば魚ぐらい釣れるものになるって話である。米国の釣り人は流石にそのへんよく分かってるんだろう。日本人釣るのにはまた別の要素があって”新開発”ですって見た目違う方が売れるんだろうけどね。その点世界のルアーメーカーであるデュエルはさすがの商売上手で、金型変えずに名前とか色とかパッケージとか変えて売り続けてる。昔からのファンは廃盤になっても同じような後継版が買えるので安心して愛着もって使えるし、新参者はなんか最新型っぽいルアーが安いって喜んで買ってくれる。誰も損してない。だから中古の弾数多くても一票入れる意味で新品も買う。千円しないしね。

 で、こいつらもシーバス釣りで日没待つ間とかに試投。
 投げてみるとチャグRは昔のチャグバグに近い。竿先で弾くとちゃんとクルックルと首振ってくれる。投げたときにたまにクルクル回って失速するのまで似てるけど昔のチャグバグほど酷くはなく結構遠投性もあって、いかにもレーベルなカラーでもありなかなか良い。だいぶ満足して症状治まってきた気がする。

 お次のトレッピーはやや小粒でサイズ的には現行チャグバグ小サイズでちょうど良いかなと思ったけど、これハトリーズだけあって結構芸達者で、ポップしながら頭水中に突っ込ませたりもできる。
 バス釣りとかで障害物際で小技効かせて楽しんだら面白そうだけど、逆に早め連続の動かし方では安定してポッピングしにくく潜ってしまったりして、ちょっと私がシーバス用ポッパーに求める性能とは外れるのでまた別の出番もあるだろうから蔵に入れておこう。

 最後のスリックポップがなかなかに良くできてて、後方にオモリが固定されていることもあって投げたときに姿勢が安定していて飛距離がかなりでる。
 しかも首振りがペンシルベイトのスケーティングみたいで、その動きが連続的に首振らせても破綻せず安定している。
 本体に入ってて転げ回るラトルがかん高い音なのだけは好みじゃないけど、そのぐらい目をつぶってやるのは問題ないぐらいに全体としてデキが良い。
 多分昔のチャグバグを意識して作ったんだと思うけど、改良されて上手に仕上げられているように感じた。日本人は”改良”が得意だというのが定説だけどさもありなんというところ。
 実際には使ってみて魚に判断してもらわないとだけど、まあ良い線いくんじゃなかろうかと思っている。こういう売ってた当時人気があって中古で弾数多く安く買える廃盤のルアーって流行が終わったってだけで釣る力は変わらないもんである。

 という感じで、それなりにポッパー欲も満たされて症状も治まりつつお届けした、久しぶりの「ルアー図鑑うすしお味」第40弾はシーバスに向かって投げてみるポッパーたちで行ってみました。
 それでは皆様連休中良い釣りを!!

2019年4月20日土曜日

PCチェアディテクティブ 「PENN101」編


 「PENN101」は日本製です!メイド・イン・ジャパン!!

 驚いていただけただろうか?
 私もネットフリーマーケットで2500円でベールスプリング破損状態のこの個体を見つけて「なんかシマノみたいな見た目やな、70年代から80年代にかけての日本製品の攻勢に対抗してそれっぽいの作ったンやろな」と思ったけど、届いてフットの裏に「MADE IN JAPAN」の刻印をみつけて、PENN社が日本でリール作らせてたことがあるという意外な事実に驚きを禁じ得なかった。
 考えてみればスピンフィッシャーも第4世代は中国製だし、日本で作らせててもおかしくない話だけど、見た目からももろ80年代のリールだけに、その頃のPENNはメイドインUSAだろうという先入観があった。

 マニアな方々にはナニを今更というネタかも知れないけど、面白いネタリールを入手したので、ついでにちょっと突っ込んで「はたしてこのリールを作ってたのは日本のどの会社か?」っていうのが今回のパソコン椅子探偵の推理であります。
 PENN好きの方々はじめ皆様にも楽しんでいただければ幸い。私も楽しく推理してました。

 まずは基本事項の確認から行く。ついでにベールスプリングも替えスプールも買わなきゃなのでいつものように「MYSTIC REEL PARTS」さんのサイトを参照する。
 このリール「PENN101」はPENNの「シルバーシリーズ」という一連のスピニングリール達の一番最初の一番小さい機種のようだ。想像通り製造されたのは80年代初頭から80年代後半にかけてで、その後は「C」の付く後継機種が出ていて最後の「CS」の付く機種は2006年まで製造と結構な長寿シリーズになっていて、「予算重視の釣り人に質の高い選択肢を提供」という感じでスピンフィッシャー等と比べて安めの価格帯で米本国ではそれなりに売れていたようだ。
 一方で日本製の安いPENNをわざわざ日本で買うなどという人間は、だったら日本のメーカーの買うよ、って話で想定しにくく、日本には正規に輸入されていないモデルかもしれない。私も初めて見て珍しく思ったので買ったわけである。
 ちなみに最初のモデルが日本製で、「C」以降は中国製。80年代終わりには安いリール作らせるなら日本じゃなくて中国ってなったようで、90年代日本は泡々とした景気の良さがあったけど、世界の工場の座はこのあたりから既に脅かされつつあったんだなとみてとれる。
 ただ、日本製とは記述があり明らかなんだけど、どこの会社が作ってたかなんてのは情報が無い。まあ、あたり前である。ワシもスピンフイッシャーの第4世代が中国製だということは知ってるけど、中国のどこで作ってるのか「○×公司」だろうが「△▼集団」だろうが気にしてないってのと同じだろう。”PENN使い”を自称するならそのぐらい知っとかんといかんのかしら?

 というわけで、ここからが探偵の推理のしどころになるわけだけど、まずは見た目から行くと「シマノっぽい」と最初感じたのは、最近こういう配色のスピニングとしてはシマノがD・A・M社と提携して作った「SLS2」を見ていたのでそう思っただけで、80年代当初は国内各社どこでも似たような黒銀のスピニング作ってたわけで、シマノっぽいと言うよりは日本製っぽい見た目というのが正しくて見た目じゃどうにもならないような
気がする。
 一応いろんなリールの写真と見比べて、ハンドルノブの形状とかオリムピックのランサーとかに似てるなとか、ドラグノブの作りがちょっとこれまたオリムピックのエメラルド350にも似てるなと思ったけど、金型一緒という程一致せずおそらく似たようなのどこでも作ってたんだろうなという程度。
 じゃあ、清掃がてら分解していって部品見てみましょ。
 ドラグは普通に3階建てでドラグパッドはテフロン製。当時やっすい国内向けのスピニングにはまともなドラグ入ってなかったけど、そこは依頼主がPENN社だけあってしっかりしている。

 ハンドルを外すと、共回りじゃなくて”ねじ込みハンドル”でかつ、ネジの切り方が先と奥で太さを変える方式で、この方式なら日吉産業か?と思ったんだけど、太さ変えてる境目にちょっとネジが切ってない隙間が空いているのが特徴的で、こういう細かい癖は重要だと思うんだけど日吉産業のスピードスピンのハンドルネジの写真を見るとそうはなっていないので違う可能性が高い。他のメーカーでねじ込みハンドルってどこだろう?と謎が深まる。


 でも、蓋をパカッと開けて逆転防止機構の歯がハンドル軸のギアの上に設けてあるのをみて、直感的に「アッこれダイワや!」と思う。吸収した稲村製作所の流れをくむらしいインスプールの「7250HRLA」が下の写真のとおりやっぱりハンドル軸のギアの上に逆転防止の歯を切っていた。
 ただ、ダイワがねじ込みハンドル作ってたってのも違和感あるけどそれ以上に、自社ブランドでアメリカでも勝負していたダイワがOEM(相手先ブランド製造)ってのは80年代にもなってなかったんじゃないかという気がして、一旦保留で他の部品とかも見ていく。
 細かいところで、蓋の位置決めのための突起がネジ穴の横に設けられているのを見てリョービの「メタロイヤル」を思い出したんだけど、この手の”位置決め突起”は日吉でもダイワでもやってたようで製造元を特定する決め手にはならないようだ。

 平行巻機構のクランクを主軸に固定する方式は、クランクの端を折り曲げて主軸の上下を包むようにしつつ、ネジじゃなくピンを貫通させてピンの上下は本体と蓋に切った溝に填めている。
 これは特徴的なうえに、どっかで見たはずだけどすぐには思い出せずに悶絶しそうになりつつここしばらくの分解清掃時のデジカメデータを見直して確定した。ダイワの安リール「スプリンターマックスST600」だ。ちなみに左の写真でも確認できるように、このリールには”位置決め突起”も認められる。
 
 ここまで来ると、違和感はあるけど”ダイワ製”と考えざるを得ない。謎は多分解けた。
 部品を全部ダイワの自社工場でまかなってたかどうかまでは怪しいけど、全体としては”ダイワ製”のPENNリールであるというのが、今回の私の推理である。
 考えてみれば、ダイワは昔一時期PENNの輸入代理店もやってたようだし、付き合いも深かっただろうからありそうな話に思えてくる。今では考えにくいけど、シマノは独逸D・A・M社のリール作ってたし、ダイワは米国PENN社のリール作ってた、そんな時代もあったんだってことだろう。

 あー面白いネタリールだった。で、終わらせても良いんだけど、それだけで終わらせるにはもったいないぐらい良くできてるリールだと感じる。ベールスプリングが長持ちしない消耗品なのは、この時代コイル式の特許が押さえられてたからいかんともしがたかったんだろうけど、その他の部分は、かなり使い込まれた個体のように見受けられるけど、不具合生じているのは固着したまま使われて溝が掘れてしまっているラインローラーぐらいで、それもベールスプリングと一緒にまだ在庫あったってぐらいで問題なく復活。実戦投入も想定してスペアスプールもゲットしたら箱の日焼け具合が時の流れを感じさせてくれて趣深い。
 ボールベアリングはローター軸に1個しか使ってないけど、ハンドル軸はステンレスっぽい丈夫な素材だし、それを受ける本体と蓋はアルミの本体で直受けしているんじゃなくて黒い樹脂製のブッシュがはめ込んであって、今でもガタなく滑らかに回っている。
 ベアリング数少なく、ハンドルノブとかも安っぽく全体的に安上がりに作っているにしても、だからといって耐久性やらをないがしろにはしておらず、ドラグもしっかりしたのが入っていて、同じダイワが作った安リールだとしても日本国内向けのがもう少し後の時代のモノでさえまともなドラグさえ入ってなかったのと比べると、リールという道具を”使える”釣り人達を対象にしていることが良く分かる。

 常々、市場に魅力的な道具が売ってないのは、あるいはろくでもない道具が売られているのは、買う側の責任が大きいと思っているし書いてきた。でもまた書く。
 もちろん作る側、売る側が良いものを作って提案して普及していくなんていうのも大事だと思うけど、そんなもん売れやンかったら商売にならんって話で、売れる物を売るのが商売の基本であるのは仕方ないと思う。
 バカみたいに高い道具をありがたがったり、すぐに飽きて新しくモデルチェンジした機種を欲しがったりという日本の釣り人が、今の道具を求めてきていて、それにメーカーが応えているというのが事実だろう。
 米国でも欧州でも、金持ちの買うトローリングタックルとか別だろうけど、日本みたいにはバカ高い釣り具は売れないと聞く。ガイドなんてSICじゃなくて酸化アルミ系の実用上問題ないのが付いているのが普通のようだ。
 そのかわり、すぐ折れたり故障したり、まともにドラグが機能しないとか、道具としてダメなのは市場からすぐ消えるそうだ(の割にアグリースティックのガイドが改善される兆しがないのはなんでだろう?)。

 米国では最新式のも売れるけど、ダイワのトーナメントSS(買ったんじゃねぇですダ、SUZUKIさんちの米国版SSトーナメントの写真ですダ)のように基本性能がしっかりした実用機は長く売り続けられてきたし、PENNの706Z、704Zの復刻のように古くても良いものを評価もしている。米国の釣り人は道具を使いこなしているし道具を見る目があると敬意を覚えるところだ。



 日本の釣り人も古くて良いモノを好む層は多くて丸ABUやらインスプールスピニングやらを好むマニアは一定数いる。
 ただ、最新式かアンティークタックルかの両極端でその間の実用機を好む層が少ない歪な市場だと強く感じる。日本の釣り人は釣り具を本当の意味で使いこなせていない気がする。多くは小手先の技巧でなんかクチャクチャやってるようにしか見えない。
 最新鋭、最高の道具を使うことなんて、魚が居る場所の魚が食ってくる時期に釣りに行くことに比べれば、てんで比較にならないぐらい優先度の低い事項のはずで、あんまりそんなしょうもないことにこだわるなよと、もっと他に考えるべきことがあるだろうと思う。別に釣り具ぐらい自分が気に入って使いやすければそれで良くて、そんな程度の機能であれば、半世紀は前の道具で既に備えていたんだから、あんまり極端に道具の”性能”にこだわってくれるなと言いたい。
 とんがった先鋭的な道具がそういう釣りを求める一部の層のために売られているのは良いと思う。ただ、そういう尖った方向性の道具を普及品にまでもってこようとするのは止めてくれといいたい。
 具体的に書くなら、リールはまあ良いといえば良い、べつに今の普及品のリール使えといわれれば私でも普通に使えるだろうと思う。竿がもうワシには使えん”軽量・高感度”なのばっかりになってる。そういう道具を使いこなせるほど日本の釣り人平均的に上手になったのかっていったらそんなわけなくて、実態として下手クソなんで、感度は良いけどその分アタリ弾きやすい竿使って「ショートバイトばかりで苦労する」とか分かったような口をきいてるんだと思う。バカくせぇ。感度多少悪くて重くて丈夫なダルめの竿なら勝手に掛かって釣れてる魚をみすみす逃してるとしか思えないんだけどどうなのよ?みんなが魚が吐くより早くアワセ決めまくってるわきゃないでしょ?って話。
 自動車の技術開発するのに自動車会社がF1参戦しても良いけど、買い物行くのにレーサーでもない人間がそのままのフォーミュラーカー使おうとするなよって感じだろうか?自分の技量がレーサー並だと思いあがってる素人が日本の釣り人には多すぎるんだと思う。
 まあ仕方ない気はする。釣り番組でも雑誌でも、たいして難しくもないような技術をさもおうぎょうに言い立てて煽って「このタックルなら簡単にできます!」ってな具合に宣伝してるんだから、”釣りの技術”自体がその程度だと思い込まされている釣り人が多いのは想像に難くない。
 ”釣りの技術”って上手な人はほんとに信じられないぐらい上手で、私のような技術は下手と自認している釣り人が一生かかってもできないようなことを平気でやりよるモンである。いうてもワシも40年から釣りしてきた人間であり、素人と比べれば技術もあると思うけど、上手い人はナニが違うって見た目地味な基礎の技術がだいぶ違う。投げる正確性と投げにくい位置から投げる方法とかの応用とか、キッチリ底をとるとかそういう40年もやってきてたら誰でもある程度デキてるはずの差が出にくいような所でなお明確に差が出てしまって釣果に差が出るという恐ろしさ。
 そういう恐ろしさを身に染みて知っていると、いわゆる”技術”でどうにかしようとする方向性は早々と諦めざるを得なくなる。ワシャ20年は前に諦めた。
 ”技術”でさえ、釣りにおいては一要素でしかなく、他にやることはいくらでもある、ましてや”道具”なんていうので安易に改善できる要素などたかが知れている。にもかかわらず悪いのが”自分の腕”じゃなくて道具のせいだと思いたがる釣り人のなんと多いことか。
 釣れてる人間が釣れているのはルアーやら竿やらが良いからってことじゃなくて、本質はその良い道具を”使いこなせている”からだっていうことを分からん間抜けの多いことよ。
 どうも日本人は真面目すぎて道具にも高性能とか高機能とかを求めすぎる嫌いがある。それが行き過ぎると道具に心理的に依存してしまい”最高”とされる道具じゃないといけないような強迫観念にとらわれる。道具なんて遊びの釣りにおいては、大事な要素ではあるにしてもむしろ”楽しさ””面白さ”の方が重要なはずだ。
 で、日本のメーカーは世界でも有数の技術を持ってて、日本の釣り人が求めさえすれば、どんな道具も作ることができるはずである。なんたってPENNリールさえ作れるんだから。
 だからもっと、特殊なマニア向けじゃない、実用的で長く使えて愛着が湧くような道具を選んで一票投じて欲しいと思うのである。

 軽く10年以上にわたってスピニングリールをスピンフィッシャーの第3第4世代だけで済ませてきた私が、ここ半年近く偏りはあるにしてもいろんなスピニングをいじってきて、魚を釣るための基本は40年前のインスプールスピニングでも既に備えていて普通に今の環境でも釣りが楽しめると実釣を通じて理解できた。
 実釣で問題生じるような悪い意味でのゴミスピは、むしろ日本のリール作りが試行錯誤を重ねる中で、日本の釣り人がスピニングリールというモノを良く分かっていないことから、その日本の釣り人の要望を反映した結果で歪んだ結果のものだというのも理解した。ドラグ使わない釣り人にドラグの良いリールが評価できるわけがない。
 でも、そういう失敗もあった試行錯誤の中からしか次の段階へは進めないというのもまた真実で、行きつ戻りつ遠回りをしつつも道具は進化してきていて、ナマジ的には小型のスピニングは樹脂製で瞬間的逆転防止機構が搭載される前ぐらいに完成の域に達したと思っている。
 その後の進化は蛇足で、値段が高くなって故障する箇所が増えただけだと現時点では思っているけど、それもまた必要な遠回りでそういう無駄を経て、今後素晴らしい傑作機が生まれるのかもしれない。
 430ssgの逆転スイッチさえ省略の単純さや、テイルウォーク”クロシオ”のマニュアルベールリターン機とかの発想なんていうのは、既存のスピニングリールの概念を取っ払って改めてナニが必要かを考え直さないと出てこないはずで、なかなかに鋭かった気がする。
 完璧なスピニングリールなど個人の胸の中にはあるにしても現実には存在し得ない。そうであったとしてもそこをめざし続ける限り、良いものが生まれるハズだとは思うけど、釣具屋は釣り人が求めるモノしか作れないんだから、釣り人がもっと釣り道具を理解し愛していかなければ良いものは生まれないと思う。
 正直、ベアリング数が”つ抜け”してるような機種は歪な道具だと思っている。そういう歪な道具を信仰しているような輩に冷や水を浴びせるようなことを書いて、書くだけじゃ説得力がないだろうから、ボールベアリング非使用のリールでも魚を釣っていかねばならんと思うのである。
 メーカー側のテスターやら雑誌やらが偏ったことを言ってくるので、バランスを取るためにも何者にも縛られることなく好き放題書けるお気楽ブロガーの務めとして、疑いもなく体よく騙されている釣り人達の顔を釣った魚のシッポでペチペチして目を覚ましてやらねばならんと思うのである。目が覚めてもそれでも好きなヤツがそれを求める分には勝手にしろだとは思う。

 スピニングリール熱は今度こそ快方に向かっていると信じている。だって、もう欲しいリール思いつかないんだもん。手を出すことはないだろうと思っていた往年の名機もアルチェードで経験したし、大森のインスプールもマイクロ2世を手に入れているし、何よりPENNの714Z、720Zがワシ好みの良いリールなのでしばらく他はいいかなという気がしている。中古屋のワゴンにもそうそう掘り出し物が湧いてくるわきゃないし、このまま完治を目指したい。
 また面白いブツを手に入れたら書くとは思うけど、それまでスピニングネタは一旦終幕ということでお付き合いいただいた皆様には感謝を、手元に残した90台のリール達はこれからもよろしくお願いネ。

2019年4月13日土曜日

すべてがZになる?


 以前、インスプール初心者にはベールを手で閉じようとする”熊の手”対策でベール反転レバーの保護のための”棚”がローター本体から張り出している機種が良いよ、とお薦めしたところである。
 まったく今でも「ワシ、我ながらイイこと書いてはるな」と思うところだけど、そういう”初心者用インスプールスピニング”の中でも、PENNスピンフィッシャーの714Zはダントツにお薦めできるリールじゃないかと感じている。
 ハッキリいってつまんないぐらい良くできていて、釣っててライントラブルだのが全くないとまではいわないけど、それはスピニングならどれでもそうって話で430ssgと同程度には気持ちよく問題生じずに使える。
 使えるから魚も何の問題もなく釣れる。少なくとも道具を言い訳にしなければいけないような不具合は生じそうにない。釣れてないのは腕が悪いせい。
 だって、初陣で仕留めたのが写真の80のコイだったんだけど、ドラグも流石PENNというかんじで安定して効いてくれるし、”投げて巻く”部分についても思いのほか調子が良い。とくに飛距離は直径大きな浅いめのスプールって実は有利なんじゃないか?って感じるぐらいに放出性良く飛んでくれる感じがあって投げてて気持ちいい。
 さすがにウォームギアは巻きが重い部分はあるけど4300ssや430ssgで慣れているので気にするほどのこっちゃない。ワシ、魚かかったらゴリ巻きせずに基本ポンピングで竿でよせた分だけ巻くから「重くて巻けない」とかいう、そう書いてる記事とか見る度に「ポンピングしろよ、それがいやならベイト使っとけ!」と心の中で突っ込まなきゃならんような台詞は吐かなくてイイけんね。まあコイの80問題なくあげときゃ春のシーバスならメーターぐらいまでは問題ないんじゃないの?釣ったことないから知らんけど。
 正直、もっと苦戦して、スペアスプール頻繁に交換して「ジャジャ馬乗りこなしてやってるぜ!」ってな達成感にひたれるモノかと思ってたけど拍子抜け。右手の人差し指でラインの放出調整して糸ふけ出さないようにしてハンドル巻いてベールを戻す、という古式ゆかしい”基本のスピニングリールのお作法”さえ手に憶えさせてしまえばどうってことない。憶えるまでには何度もベールを左手で起こしそうになるけど、トゥルーテンパー先生の”熊の手対策の棚”がワシの熊の手を何度も止めて教え込んでくれてたので、714Zでは既にベール手で起こそうとすることはなかった。
 さも「使うのが難しいインスプールのリール使ってる俺ってエラい」っていう雰囲気出してくるよな”ややこしいインスプール使い”は、多分ライントラブル防止のための、ラインローラーの水平を出すとかスプールの高さ調整でラインが後ろ巻きにならないようにとかの然るべき基本を押さえてないのでトラブル多発のリールを使ってて、それを喜んでるンじゃないだろうか。気持ちは分からんでもないけどウザいよね。
 まあ、そんなわけで714Zは”熊の手対策付きリール”でデキが良いのでお薦めできるっていうのに加えて、不死鳥のように復刻版が出るカーディナルを除くと、インスプールでは最後まで生き残った部類で、日本市場で90年代まで売ってたロングセラー機であり中古の弾数多くて、かつそれ程古くなってない程度の良いのも多い。値段も高くもなく安くもなくほどほどで7、8千円ぐらいが相場とお求めになりやすい。
 かてて加えて、PENNなので丈夫で部品もまだ結構手に入るということで、ダイワやオリムピックの古いインスプールより長期運用を考えると安心感がある。
 「PENNスピンフィッシャー714Z」ピュアフィッシングさん復刻してくれないかしら?米本国では一回復刻あったらしいような不確定情報あったけど日本でも是非。

 で、なんでワレ716Zまで買ってるねン?と責められると私も心苦しい。
 つい出来心でやってしまったんです。反省してます。って感じだけど、渓流もこれまで4300ss、430ssgの大きさで私にはちょうど良くて、4200ssは小っちゃすぎて巻き癖とかキツくてダメだと感じてたので、インスプールでも714Zで良いだろうと思ってたんだけど、正月に気仙沼に置いてあったフェンウィックHMGのGFS55Jが似合うんじゃなかろうかとこちらに持って帰ってきて付けてみたら、微妙にリールが大きく感じる。スプールの径が大きいのでちょっとバランスしない感じになってる。まあそのへん好みの問題という程度なので使ってれば目がそのうち慣れるんだろうと思う。思うんだけど、もう一つ小さい716Z”ウルトラライト”ならスプールの径はそれ程小さくないようだし、よく似合うんじゃなかろうかと思ってしまい、思ったらポチッとする手を止められなかった。病気が憎いッ!憎い憎い憎い!!渓流なんていつ行く予定があるっちゅうねんッ!
 でも、おかげさまで716ZはGFS55Jのリングシートにしっぽりと似合ってくれて、アタイ後悔なんてしてないワ。ちなみに相場は714Zよりちょっと高め。
 そして買ってみるとチマチマとした発見が。
 710系Zシリーズにはハンドルの根元に油差しの穴が開いている初期型と開いてない後期型があるというのは、714Z買ったときに気がついていて、写真の上の方が後期型の714Zで下が初期型の今回買った716Zなんだけど、じつは油差しの穴以外にも違いがあることが判明。
 下の写真をよく見て欲しい。銘板が714Zでは平らなのに対して716Zではリングが盛り上がっていて立体的、っていう細かい違いより実は大きな違いがあって、後期型714Zの蓋が樹脂製なのに対して、初期型716Zは蓋が金属製なのである。よく見ると金属製の蓋の方はのっぺりとしているけど樹脂製の蓋の方は枠っぽい出っ張りがある。
 714と714Zの違いについて書いたときに、714Zになった時に緑から黒金に色が変わったと共に蓋が樹脂化され軽量化が図られた旨書いたけど、謹んで訂正したい。ま~たまた嘘書いてました。度々スイマセン。
 スピンフィッシャー710系はZシリーズにモデルチェンジした時に色だけ黒金に変わっただけでしたとさ。ズルッとずっこけるけど、前回書いたとおり見た目って重要だからイメージカラーの変更は大きかったと思う黒金好きなナマジであった。
 でもって初期型が金属蓋で油差し有り、後期型が樹脂蓋で油差し無しかっていうと、どうもそれだけじゃないようで、中期型とでもいうべき樹脂蓋で油差し有りも普通にあるようだ。PENNの場合部品共有でマイナーチェンジしながら継続的に売っていくというのが普通なので、後期型に移行しようとしたらまだ油差しの穴の開いた本体が残ってたのでとりあえずそっちの在庫から樹脂蓋付けてさばいていったというのも充分あり得るけど、それにしては数が多いので、段階的に、軽量化でまず樹脂蓋になって、その後に経費削減か機械油の品質向上とかでいらんだろとなって油差しの穴が廃止ってなったと考えるのが自然か?復刻版が樹脂蓋で油差し有りという可能性もあるかも?いずれにせよ中古市場では3タイプがあるのでお好きな人はその辺の細かい違いも楽しんでいただければ幸いである。
 お約束で、また716Zもスペアスプールとか買ってるわけなんだけど、世のPENN使いな諸先輩方の記事とか読んでると、710Z系にはベールスプリング以外で壊れやすい部品が2カ所有るようで、1つはワンタッチスプールの着脱のための主軸の先端に付いた銅製の3本の爪で、これはハメ殺しなので壊れたら主軸ごと交換が必要なようだ。もう一つはベールスプリングが強いのでベールワイヤーに負担がかかって長期使用ではベールワイヤーかベールアームが折れるというのも目にした。これはベールワイヤー交換かもしくはベールアームのベールスプリングを引っかける穴をもう少しバネを絞らない方向にズラした位置に追加で開けてベール反転の衝撃を弱めてやるという改造も紹介されていた。なので、ついでに予備を買っておくかといつもの「MYSTIC REEL PARTS」さんに発注かけようとしたら残念ながら主軸もベールワイヤーも欠品だった。っていうのもあって復刻版出たら部品の欠品も解消されるだろうから期待しているのである。本体も1票入れるつもりで買うんだろうけどさ。
 現実的には、主軸については714,714Z、716Zで共通なので3本あれば足りそうな気はするし、ベールアームはまだ在庫していたので失敗した時用に確保して、穴開けて改造を試してみようと思う。いざとなったら中古一台追加して買えば良いっちゃいいか。

 さて、では最近の釣果写真にも出てくる冒頭写真の3台目の茶色いのは何なのか、そろそろ吐いたらどうなんだ?と取調室で刑事さんに凄まれそうなので白状します。
 「スピンフィッシャー720Z」ネットオークションで買っちゃいました。
 720系には他に720、722、722Zがあって、722と722Zが誤解を恐れず書くなら”PENNが作ったミッチェル408”で720、720Zはその低速巻き版なんじゃないかと解釈している。
 ミッチェルを真似して作られたリールなんてのは”オリムピック81”みたいな完全再現を始めいっぱいあって、むしろ世界的に売れた量産機であるミッチェルの各機種に同時代においては影響されたスピニングの方が自然というか、そういう流れがあったんだと思う。今のリールがみんな似たようなのばっかりで個性がないとかいうけど、昔も売れてるヤツの真似はとりあえずしておけってノリはあったんだと思っている。
 で、ミッチェル408は60年代に登場して、720系が作られたのは70年代中程らしいけど、その頃売れまくってた歴史的名機なんだけど、なにが特徴かという話は”ミッチェル大好きTAKE先生”がネッチョリ書きまくってるので詳しくはそっちを読んでもらうにして、簡単に説明するなら、「308譲りのスポーツフィッシングに対応した手に馴染む設計を引き継いで、力の伝達効率の良い”スパイラルベベルギア”を搭載し高速化を図った小洒落たフレンチリール」なのである。
 それを質実剛健、海にも強いぜなPENN社が「ギアを作るのは我が社も得意だし、うちもスパイラルベベルギア機作っちまおうぜ」と作ると、しちめんどくせぇ平行巻機構のロアナプラじゃなくてプラナマティックなんて省略で単純にギアの上にカム乗せて往復方式、ギアはローター軸のは真鍮切削もので、ハンドル軸のはステンレスを鋳込んだ丈夫なの、ハンドルノブはごっついアメ人の手に合うようにデカいけど、ちゃんと本家のように捻りの入った樹脂製で、なんとPENNにしては珍しく全体的な造形も本家とはまた違ったアメリカンポップカジュアルな感じでオシャレに仕上がってるスピニングが誕生するのである。
 特に、初期のZ以前のモデル(当時はスピンフィッシャーの名前は付いてなかったという情報有り)の青いやつで蓋の上に魚が二匹書いてあってその魚に「PENN」「722」とか書かれているデザインのは、なんちゅうか愛らしい見た目で素敵スピニングなんである。
 ただ、そういうオシャレな部分が逆にPENNリールとしては異質で異端でいまいちピンとこない部分もあって、「722Z良いっスよ」という書き込みをいただいたときも「ワシの使うペンのインスプールは710系じゃけん」と邪険なつれない態度を取ってたぐらいだけど、その実、喉から手が出るぐらい欲しくて仕方ないのを押し隠してツンデレっていたのである。
 屁理屈こねて遠ざけておかないと、古い時代のとか結構な値段もついてるのでエラいことになりそうで「あの葡萄は酸っぱいに違いない」と自分にいい聞かせていたのである。
 でも病気だから一度でも欲しいと思ってしまったら負けである。結局買うことになる。ブクブクと底の無い沼に沈んで行くのみである。

 とはいえ、90年代まで生産されてた黒金のZでも7千円ぐらいの実用機価格が相場だし、古いのは大1枚は軽くしているので使うアテもないのにおいそれとは買えず、程度悪い部品取り用とかの個体が出てこないかなと長期戦覚悟で狙ってはいたけど、そんな都合良いやつがそうそう現れるわけもなく、部品破損個体がオークションにかけられても、PENN使いどもは部品在庫有るかどうかぐらいすぐ把握できるので意外に値段が落ちなくて全然自分の入札額では落とせそうもなかった。
 ところがどっこい待てば海路の日和ありで、蒐集家が720系まとめて何台も放出するというまたとない機会が巡ってきた。さすがにまとめて全部落とせるほど潤沢な資金を持ってる入札者はいないだろうから、人気が割れて一台当たりの競争者が減るのは明白。
 箱入り美品から、ベールアーム折れてベールワイヤー無しのボロ個体まであって、どれに狙いを定めるか吟味を重ねて最終的に落札した個体に絞った。
 ベールワイヤーは「MYSTIC REEL PARTS」さんにも在庫がないようだったので一番ボロいのは回避して、2番目にボロい個体で「ハンドル回すとスプール上下することは確認、それ以外は不具合あり」という、どんな不具合かも良く分からないうえに銘板が剥がれていて720Zか722Zかも分からんという茶色い一台に決めた。
 茶色というのはメイシーズだかどっかの百貨店で売ってた色だとか何とか目にしたことある。PENNの青は薄い空色でなかなか合わせる竿が難しいし使う人間も選ぶ気がするけど茶色は無難かつ渋くて悪くない。っていうかイイ。
 不具合の状態やら、ハンドル一回転で何回ローター回るかとか質問したくなるのをグッと我慢して値段が釣り上がるのを回避し、開始価格3000円を例によって3200円で入札して見事3100円でハンマープライス。

 無事入手できて我が家に来て、ハンドルクルクル回してみると1回転でローターは4回転。ということはギア比1:4の720Zで確定。ちなみに722のほうは1:5。低速機なら同程度の糸巻き量の714Zとも使い分けできそうで結果的に正解だったかも。
 回転は重くもなく問題なさそうだけど”それ以外の不具合”がちょっと触った段階では酷かった。
 ベールスプリングは生きているようでベールは返るんだけど、反転レバーが機能していない。まあこれはレバーを押さえるバネの取り寄せで何とかなるだろう。でもドラグがまったく効かなくて締めてもスカスカなのにはちょっと何が起こってるのか分からなくて不安にさせられた。単にワッシャーはめそこなってるわけじゃない。
 ともあれ、分解清掃して購入必要な部品を洗い出していくしかあるまい。
 とりあえずスプール周りからかなとドラグノブをはずすと欠けててバラバラと部品が抜けてくる。ドラグが締まらないのはこのせいかと思ったけど、よく考えると欠けている樹脂製の部分は、ドラグノブのナットと調整幅持たせるためのバネとドラグに押しつける金属の皿とをバラバラにならないようにまとめているだけで本質的には部品さえあればドラグは締まるはずである。本格的に修復不能かなと不安になりつつ、とりあえずもう一方の不具合である反転レバーを押さえるバネを確認すると、取り付け方が間違っていただけでちゃんと組み直したら復活した。
 ドラグノブの方はあれこれいじるもドラグスカスカのままで、どうにもスプールとドラグノブ交換必要っぽいなと思って在庫あるか確認してみたらスプールはまだあったけどドラグノブは在庫がない。これはどうにかして直さないといかんなと危機感もってしげしげと眺めていたら、主軸のスプールが刺さってるところが、主軸そのものじゃなくて座面と一連の’’スプール刺し部"になってるんだけど、その上の部分がドラグの上面より先にドラグノブの皿状の部品と接触して皿がドラグをぜんぜん押さえていない。単純な話で皿の凸凹の面を逆に組んであったので機能してなかっただけだった。反転レバーのバネといいドラグノブといい壊した人間お粗末といわざるを得ない。おかげで安く手に入ったんだけど。
 たぶんスプールを填めてる主軸の部分にわざわざ太くした”スプール刺し部”を設けているのは、太くした分接触面積を増やしてドラグが効くときの摩擦抵抗を分散させて安定させるためなんだと思う。写真右のように4桁スピンフィッシャーでも同じような”スプール刺し部”が設けてあってかつスプールのほう軸が貫通する部分には樹脂製っぽいスリーブが入っていてベアリングなんていう錆びて経費がかかって過剰で下品なものをぶち込むより実用的な設計だと感じる。

 ドラグ締めるのは問題なくできるようで、とりあえず最悪の事態は避けられそうなのでドラグノブの修繕は後回しにして全体ばらしてパーツクリーナーで洗っていく。
 ドラグの構造はテフロンパッドの3階建て方式で何の問題もなさそう。
 スプールの裏についている音出しが欠損していたけどこれは在庫があったので注文。
 蓋をパカッとあけると鎮座しておりますどとらも傘状のギアが主軸上で直交するスパイラルベベルギア。歯も欠けてないし何ら問題なさそう。
 ただ、ギアを横?に配列できるウォームギアと違って重ねる形になるので本体の厚みが必要で本体内部スカスカな印象がある。本体自体は同じぐらいの糸巻き量でもウォームギア機の714Zの方が小さくまとまっている印象。714Zは8フィートのシーバス竿にはやや小さいと感じたけど720Zはちょうど良い大きさ。
 ギアは亜鉛鋳造かと思ってたけど、パーツクリーナーで洗浄したらピカピカしててアルミ(切削?鋳造?)っぽい。軸はステンレスで、裏に設けた逆転防止の歯は真鍮製。

 ローター外してローター軸のギアが本体にネジ止めされているのを外してもボールベアリングが見えてこないので、これはれいの開放式のボールベアリングで油断してると弾が飛び散って落ちるヤツだなと、お盆の上にティッシュ敷いて慎重に真鍮のスリーブをズラしていくと、なんとビックリ弾なんて入ってねえぜ。

 このリールはボールベアリング一個も使ってません!!”ブロンズベアリング”機!なんと素晴らしい!

 我が家ではダイヤモンドスーパー99についで2台目のボールベアリング使ってないスピニングリールである。漢らしいジャン。
 グリスアップする前から普通にローター回っててグリスシーリング後は全く快調という感じで重くもなくクルクル回ってくれる。
 展開図見て確認すると、720Zはボールベアリング無しの”ブロンズベアリング機”で722Zは途中から設計変えて入れたのかもしれないけどローター軸に一つボールベアリング入れている。
 要するに、力の伝達効率の良いスパイラルベベルギアでギア比が低いのであれば、力強く巻けるので、ことさら摩擦の小さいボールベアリングなど入れなくても実用上問題ないという設計思想のようだ。逆にギア比大きく高速巻き仕様だと巻きが重くなるのでボールベアリングが必要になるという判断なんだろう。
 PENNと大森というナマジ大好きなリールメーカーが、等しく低いギア比のスパイラルベベルギア機にはボールベアリングを入れていないというのは、それが妥当な機械的解答だからなんだと思えてくる。
 実際に使ってみて、ボールベベアリングなしでも720Zなんの問題もなくクルクルと回ってくれる。回転が特に重いということはなく714Zとかのウォームギア機よりは軽いぐらいである。
 以前、ローター軸のベアリングが錆びて金属製ブッシュに成り下がっている状態の4400ssを使ったことがあるんだけど、正直重くて巻くのが嫌になるぐらいだった。ハイポイドフェースギアも力の伝達効率は悪くないはずで、あのときはギア比が高いからそう感じたのか、もしくは回らないボールベアリングの幅だけで受けていると回転が不安定で、ちゃんと最初から適切に設計された”ブロンズベアリング”とかなら滑らかに回ってくれたりするんだろうか?
 いずれにせよ今時の高級スピニング様がベアリング数10ッコ以上とかを誇っているのを尻目に、ボールベアリング無しの720Zで普通に魚を釣るっていうのは密かに「あんないりもせんベアリングゴチャゴチャ入ったリール買わされてゴクロウサン」という底意地の悪い優越感が湧いてきて気持ちよく釣りができる。
 「リールにボールベアリング入ってなくても魚ぐらい釣れまっせ!!」

 ということで、分解清掃してハンドル軸やらブロンズベアリングにはオイルを注しておいて、その他はとにかくグリスで全面を覆うグリスシーリングでグッチャリにしてやれば、じつはこの時点で欠品はスプール裏の音だし機構のみであり、無いと困るような部品の不足やら修理不能の不具合とかはなく即実戦投入できそうな感じである。
 ということで、実戦向けて調整を施していく。
 まずは壊れているドラグノブの再建。そのまま部品を順番に並べただけでも機能はさせられるけど、スプール交換とかしようとするときに、ばらけてしまうようではやはり塩梅悪いだろう。一旦パ-ツクリーナーで脱脂乾燥後、順番に樹脂のノブに填めていってドラグを押す金具の”皿”を半分ぐらい残っている樹脂製部品の填まる土手に瞬間接着剤で固定。これだけだとずれたり外れたりしそうなので、樹脂の欠けたところに熱した針金で穴を掘ってそこにカーボンの心棒を突き刺して”皿”がズレないように瞬間接着剤で固定。欠けているところ全体にウレタン樹脂を盛って防水性を高めておいた。これで皿・ばね・ナットが抜け落ちてくることは当面防げるだろう。ドラグを締め付ける動作も問題ないようでちゃんとドラグ効いてくれる。
 ラインローラー水平に角度調整するのはベールアームが金属なのでゴツいペンチ2本でちょっとずつ曲げてやれば問題ない。
 ただ、ラインローラーが固着したまま放置してあったらしく、パーツクリーナーで漬け置き洗いしても腐食した錆のようなモノまでは除去できない。
 ラインローラーの左右面は平面なので目の細かいサンドペーパーで錆を落とせるけど、曲面であるラインローラーの内側及びラインローラーが刺さっているベールアームの軸は下手に削ると偏ってしまい回転を妨げることになりかねない。
 ということで、大まかな部分はサンドペーパーで落としつつも、仕上げはラインローラーに研磨剤を塗りつつ実際に高速回転させて”あたり”をとる方式でいってみた。研磨剤は金属磨き用のコンパウンドとかがあればそれに越したことはないけど、歯磨き粉が身近な品で研磨剤入りなので使える。学生時代昆虫の樹脂包埋標本作ったときにレジン樹脂磨くのに歯磨き粉持参するように指示があったぐらいで、クレンザーほど削りすぎて傷つける恐れがなくつるつるに磨ける。
 手で回すわけに行かないのでラインクリッパーの上に付いているルーターに輪ゴムをかけてもう片方の端をラインローラーにかけてアニメ見ながら半時ほど回してやったら良い感じに引っかかりも少なく実用充分な感じに回るようになった。
 これで準備完了。とラインを巻いてみると困ったことに写真のように、えらい後ろ巻きになっている。
 とりあえずスプール座面のテフロンワッシャーを薄いのに変更してスプールを下げてみたけどまだ足りないので、あれこれ考えて、ローターの下にワッシャーを噛ませて上げる方法はこのリールは使えなさそうな構造なので、ベールアームとベール反転レバーの位置と形をいじってちょい前巻き程度に調整した。
 具体的にはラインローラーの位置を高くしたいので、ベール反転レバーを下げることでベールアームのラインローラーの付いている側を上げてやる。そうすると当然ラインローラー自体は水平だったのがベールワイヤー側に傾いた状態になるので、水平に戻すためにベールアームのラインローラー取り付け部分をベールアームの反対側に反らして曲げて調整してやる。
 これでバッチリの調整具合と実戦投入したら、ベールワイヤーの付け根が若干ろう付け剥がれかかってささくれていて、そこにラインがかかってラインローラーにかかるのを妨げてるときがあったので、引っかかる段差がないように瞬間接着剤を薄めに盛ってサンドペーパーでならしてみたら問題なくなった。以降好調で8時間労働でも特にライントラブルも生じず快適に使えている。
 ここのところの経験が生きて、壊れた樹脂部品の再建とかラインローラー角度調整、スプール後ろ巻きの補正等が、基本が分かってきているのか多少リール毎に状況違うにしても慌てることなくすんなりできるようになってきている。

 ということで替えスプール、ベールスプリング予備とかも発注して無事届いてるんだけど、落札して届いた時点でも、なくても釣りにはなるスプール裏のドラグの”音出し”以外は最初からそろってる完品に近い中古品だったという、最初不安な滑り出しだったけど結局大勝利的な落札であったとさ。
 ちなみに他に確保しておいたほうがいいパーツあるかなと確認していたら、「720Z」の銘板もあったのでコレも確保したった。見た目的にもかなり良い塩梅のイイ個体に復活した。スペアスプールも用意したしライントラブル防止のための微調整も決まって、かなり実釣能力の高いリールに仕上がっていると自画自賛する。
 私にとって、初の”熊の手対策の棚”が付いていない”インスプール初心者用”じゃないインスプールスピニングだけど、トゥルーテンパー先生、714Z先生によくお稽古つけてもらった後なので、手でベールを起こそうとするようなこともなく快適に使えている。
 ボールベアリングさえ入ってない単純なリールで、そこら辺でフッコ釣って遊ぶぐらいなら何ら問題なく釣りができるっていうか、むしろ単純ゆえの使いやすさも感じているところ。ギア比が低いのも気が短くて巻く速度が速くなりがちなワシにはおあつらえ向きかもしれん。手を掛けて修繕したこともあり使ってて楽しく嬉しいのでしばらくこいつを使ってご近所のフッコたちに挑みたい。間違ってスズキ様なんか釣れちゃったらなお嬉しい。

 インスプールのリールとかいうと小難しそうなこと言う人が多いので敬遠するかもしれないけど、大したこっちゃないので興味がある人は、まずは”熊の手対策の棚”付きの機種で稽古をつけてもらって、そのあとは、人気のABU、ミッチェル、大森にいこうが、イタリアやら英国やらにいこうが、アメリカに行こうが旧共産圏に行こうが、温故知新で古い日本製にいこうが、それぞれの道にそれぞれのふかいふか~い沼が待っていてズブズブと沈んで楽しめることうけあいなので、ぜひそういう方向にも楽しんでみてはいかがかな?と、ともに病と闘う仲間を集めるために感染の拡大を狙うナマジであった。

 そろそろ手持ちのネタもつきそうで、来週もいっちょPENNネタ連投でしばらくスピニングネタはお休みの予定。リール予備機を売りさばいたりして何とか90台に収めたし、そろそろスピニング熱は快方に向かってくれていると信じておきたい。

2019年4月6日土曜日

PCチェアディテクティブ 「フルーガーメダリスト1626Z」編


 今回のスピニングネタは名門フルーガーのメダリスト。
 って書くと、多くの読者は「メダリストっていったらフライリールだろ?ナマジもいよいよウロ入って自分の愛用のフライリールのことも分からんようになったか?」と思われるかも知れない。
 確かにワシの3~4番用で使ってるフライリールはご存じのフルーガーのメダリストである。
 でも、冒頭写真のスピニングもメダリストなんである。正確には「メダリスト1626Z」。
 銘板でご確認いただきたい。
 商品の名前って、商標の関係で何でも好きなのが使えるってわけじゃなくて、良い名前は釣り具に限らず他の会社が押さえてたりするので、伝統の名前を継ぐ、っていう積極的な理由から同じ名前を使い続ける場合の他にも”おんなじ名前の使い回し”的なのって結構あって、最近知ったのでは、ダイワのスマックっていう船用の小型ベイトリールがあって、チョイチョイと道糸の細かな出し入れで棚がとれる機能が付いててその機構もダイワじゃ”スマックレバー”って言っちゃってるんだけど、実は古い輸出用のインスプールスピニングにもスマックってあって、昔の名前で出ていますな感じなんである。
 他にもリョービの”メタロイヤル”が実は上州屋に移ってからはチヌ用落とし込みリールに使われてたとか、ちょくちょくある話なんで、まあ名前だけなら”そんなリールもあったんだ~”っていうだけのネタなんだけど、コレが意外に突っ込んでくと面白いリールで、しばらくパソコンの前で情報の海に潜って暇がつぶせたのである。

 まーた暇つぶし程度のためにわけ分からんゴミスピ買いくさってからに、とお叱りを受けるかも知れないけど、ちゃうんですこれ。もう20年近く前に買ったリールで自分でもほとんど忘れてたんだけど、棚卸しの時に出てきてそういやこんなんもあったな、となったブツでとっくに公訴時効成立してる案件なので赦してつかあさい。
 見つけたのは例によって釣りに行った際に立ち寄った釣具屋のワゴンでって書くと「オマエは釣りに行っても魚釣らんと釣り具エグってばっかりやな」と呆れられるかもだけど、釣り場で潮待ちとか日没待ちとか、渋滞する時間をさけてとかポッカリ空く時間がどうしても生じるので、仕方なくじゃあ釣具屋でも覗いて暇を潰すかというごく自然ななりゆきなんです。ホントだよ。
 その時も初めて入る釣具屋に胸ときめかしたんだけど、なぜか他では見ないような米国関係のバッタ臭い品が多くて、アグリースティックのフライロッドとか他で売ってるの見たことないような竿とかもあった。今思えばアグリースティックのフライロッド買っとけばよかった。当時は「グラスソリッドティップのトップヘビーなブランクスでフライロッドってなんぼなんでも振りにくくて塩梅悪いだろ?」とインチキフライマンでも思ったので買わなかったけど、そんなのフライロッドとしてはダメでも、アグリースティックのブランクスが格安で手に入ると考えたら、いくらでもルアーロッドとして再生可能で惜しいことをしたモンである。買い占めときゃ良かった。
 リールのほうは当時のワゴンスピニングはロングスプールで本体樹脂製というのがお約束だったけど、そういう新品段階からゴミスピなヤツらの中でコイツだけがロングスプールじゃなくて、手に取ったら、名前がフライリールでお世話になってるメダリストっていうのも面白いと思ったけど、これがちょっと触った感じワゴン品質じゃなくて良さげだった。スプールも本体も金属でドラグもまともなのが付いている。箱も何も付いてない裸単機でいかにもなバッタモンっぽかったけど、とりあえず値段がワゴン売り価格で、いくらか忘れたけどたいしたことなかったので買ってしまった。
 手元に来て一応ラインも巻いて、まともなリールっぽいのでそのうち使ってみようと思ったけど、とりあえず蔵にぶち込んで忘れ去られていたという1台。

 でもって、今回せっかくなのでブログネタにしてしまおうということで、分解したりしていじってみた。
 いじってみると、どうにもこれ日本製の臭いがしてくる。米国製のを輸入して問屋の棚にあったのが問屋潰れて流れてきたとかかなと思ってたんだけど、そうだとしたら新品なのに箱にも入ってなかったのが不自然。製造元が潰れたりしてハコヅメ前のが流れたと考える方が自然な気がするってのがそう感じた理由の一つと、作りがどうにも大森製作所とかの日本の小規模リールメーカーっぽい気がするのがもう一つの理由である。フルーガーは大森製の640とかもあって、昔はペリカンとか自社工場で作ってたんだろうけど、シェイクスピア同様、アジア等他国のリール屋に自社ブランド名で作らせるOEM方式に早々に移行したブランドなので充分あり得る話(っていうか今調べたら割と早い段階でシェイクスピアに吸収されてる)。


 分解していくと、まずはハンドルがねじ込み式なのにオッとなる。安っぽい共回り式じゃないゼ。
 左右両用にする方式はPENNとかと同様で手前と奥で太さとネジ山の向きを変える方式で大森製作所の左右のネジ山を同じ軸上に切る方式じゃないので、大森じゃなさそう。
 と思って、蓋をパカッと開けるとハンドル軸のギアの歯のない側、クランクがのってる面の面取りが小さく角が立った感じと、逆転防止がローター軸のギアの直上にかける方式なのは大森っぽい。
 でも、ローター外すとベアリングを固定する輪っかを押さえるネジ山が片方円筒になっていて、これがベール反転の内蹴りの突起になっているのが初めて見る方式。かつ大森は今までみたのは全部ココのネジは3カ所で止めているけどコイツは2カ所で止めている。
 そんなに凝ったリールじゃないし、特別な機能もないけど、ねじ込み式のハンドルっていうことは、当然ハンドル軸のギアには固い素材の軸を鋳込んであってどうも見た感じ真鍮っぽいとか、安物では決してないのは分かる。
 じゃあどこが作ったリールなんだっていう謎を解くのが、今回のパソコン椅子探偵の推理なんである。

 まず、このリールが作られた年代は、リアドラグブームとロングスプール化の前っぽいので多分80年代前半か70年代終わりぐらいで、そのころスピニングリールを作ってた国内メーカーで自社ブランド以外の生産もしていたとなると、大手4社はフルーガー(エビスが代理店だっけ?)とは付き合いなかったはずなので外して、70年代早々にはダイワに吸収された稲村製作所も外してと考えると、みんな大好きダイヤモンドリールの「大森製作所」、隠れた実力派でABUとかルーとかゼブコのリールも作ってた「日吉産業」、チャージャーが代表作で今でも小規模生産なリール作ってる「五十鈴工業」、カーディナル700シリーズ作ってた長野の「松尾工業」、カーディナルC3、C4作ってた愛知の「瑞穂機械製作所」あたりに絞られるンだと思う。
 この中で私が実際に製品に触って馴染みがあるのは大森だけで、どうもさっき書いたような理由で大森は外してよさそう。他はどんなリール作ってたのか正直知らなかったので、ネットでいろんなサイトみて勉強した。
 日吉産業はTAKE先生も絶賛のルーのスピードスピンとか作ってて、ねじ込み方式のハンドルに軸は真鍮を鋳込んであるというところが合致。ってふうに調べていこうと思ったけど、分解画像とかのせてるサイトが他の会社のリールじゃ見つからなかった。
 でも、五十鈴「チャージャーⅢ-E」っていうインスプールのリールが2010年代になって作られてるのとか驚きで面白かった。金型作らなくて済む削り出しで少数限定生産の高級品。一般の釣具屋に並ぶリールと同じ扱いでいいのか分からんけど、日本で最後に作られたインスプールスピニングの座を大森コメットから奪ったっぽいな。
 あと、釣り具以外も作ってる松尾や瑞穂は普通に今でも生き残ってて、それでも瑞穂とか会社案内にリール部門とか残ってて取引先「ピュアフィッシングジャパン」とかなってるので、今でもABUの高級リールとか瑞穂で作ってたりするんだろうか?
 ネットで調べるのは限界があるなと”現物買っちまうか”とまたスピニング熱悪化して、カーディナルは高そうなので難しいにしても、スピードスピンやら、チャージャー(昔のね)とかなら買えるかなと、ちょっと中古の値段調べたら高い高い。カーディナルC3とかの方がよっぽど安い。
 ということで現物方面も手詰まり。もし、現物お持ちのかたがおられて、ギアの角こんなんですよとか、ベアリング押さえるのはこういう方式ですとかあったら情報いただけると嬉しいです。

 どっか他に手がかりないかなと舐めるように眺め回していたら、ラインローラーをべールアームに固定するネジの頭がちょっと変わってるのに気がついた。
 これネジの頭じゃなくて中心のラインローラーの軸に雄ねじ切って、それに被せる雌ネジというかナットの頭がマイナスネジの頭っぽく見えてるんである。
 こういう細かいところに癖が出るっていうのは推理の基本かと。
 ただ、こういう雌ネジを使ってるリールが思いっきりあった気がするんだけど、脳内検索に引っかかってこなくて七転八倒して、ネットで調べようとしたらいちいち個別のリールのページを立ち上げるのが面倒臭くなって、結局「ベールアームは世界を回る」をペラペラぺラッとめくって見つけた。
 見つけてしまえばなぜ忘れてたのか理解に苦しむぐらいの有名どころで、ABUのカーディナルのインスプール。
 分かってしまえばカーディナルを狙い撃ちで、主にヤフオクの商品紹介写真でネジが写ってるので確認していくと、カーディナルでも松尾工業が作ってた700系と瑞穂機械が作ってたC3、C4は普通のネジが使われている。
 インスプールの他にはアウトスプールの55もこのタイプのネジが使われている。55はインスプールみたいなベール反転機構搭載のABUの最初の方のアウトスプール機である。
 つまりは、ある程度古いタイプのカーディナルにしかこのタイプのネジは使われていないようだ。ということは、多分C3以降もABUとお付き合いあったであろう瑞穂機械でもなく、まして途中でシマノに釣り具部門吸収されたっぽい松尾でもなく、多分「BUILT BY ABU SWEDEN(ABUが組み立てました)」
となってる古いカーディナルに部品供給してただろう(と勝手に推定した)日吉産業が作ってたとみるのが、今回ナマジの推理である。まあ、他のメーカーが部品供給してた可能性もあるガバガバ推理だけどね。いかがかな諸君。

 とブログネタ一つできたゼ一安心、と思ってたんだけど、別の線から意外な事実が出てきて物語は風雲急を告げるのであった。
 実はこのリール韓国製のようだ。
 このリールにはフットにメイドインコリアとか刻印されておらず、生産国不明な状態なんだけど、実はシェイクスピアの「アルファ040」という同型機があり、そのこと自体はまあフルーガーもそのころにはシェイクスピア傘下だったようだし、大森製インスプールのような前例もあるしで驚くほどのことでもなく。シェイクスピアのΣ(シグマ)シリーズに大森製で樹脂製本体のってないかな?あればキャリアの替えスプール手に入るかも(キャリアーそのものが手に入るとはこの時点では夢にも考えてなかった)、と海外ネットオークション眺めててアルファ見つけて、おんなじリール色と名前変えて出してやがんの。と軽く失笑を漏らした程度なんだけど、紹介写真よく見るとアルファ040についてはフットに「MADE IN KOREA」の刻印が入ってる。アルファがベータをカッバらったらイプシロンした級の笑撃である。
 ナニが「いじってみると、どうにもこれ日本製の臭いがしてくる。」じゃボケ。コリァいかんわい。
 日吉産業も最後の方生産拠点を韓国に移していたそうなので、韓国日吉が作ったんで日本臭いという線はじつは濃いとは思うんだけど、ダイワやら大森やら日吉の下請けとかで力を付けてABUの部品も作ったことある韓国のメーカーが作ってたっていう可能性もでてきて、そうなると韓国のリールメーカーなんてシルスターぐらいしか知らない二ダってくらいで、日本じゃ情報手に入れようがなく、この事件は迷宮入りとなったのである。
 どなたか真相知ってたらご教授いただけると、私がとってもスッキリしまスミダ。

 たしかに、アメリカから工場流れでバッタモンが流れてくるのはなさそうだけど、韓国中国からなら船便でひょいと持ってくるだけですむ。東シナ海も玄界灘も太平洋ほどには大きくない。
 バッタモンってのも値段安けりゃ買ってみるのもオツというもので”当り”引いたら儲けモンだし”ハズレ”掴まされても失うモノはたかが知れてる。
 我が最初のベイトロッドはダイコー製のルースピードスティックのシール貼る前の横流しモノと堂々と店主が説明していたホントかどうかも定かじゃないバッタモノだった。黒くて太い良いダイコー竿だった。
 九州では実際に中国から流れてきたバッタモンに遭遇していて、中国の製造元が依頼元に収めなかったB級品とかのブランクスで勝手に組んだとおぼしき、全くブランクスとガイドやらシートやらが合ってない、リングシートのシーバスロッドとかギンバルに対応してないトローリングロッドとかが流れてきているのを見て腹抱えて笑ったもんだ。ちなみに安全ピン曲げたような品質のガイドの付いているフライロッドを買った。魚は釣れた。
 蛇足だけど、その店は釣り具に限らない総合中古屋でアダルトコーナーがあったので「九州男児がみてるような凄いエロビデオとかあるんやろか?」とワクワクしながら入ってみたら、女性の使用済みのおパンツだのセーラー服だのが売っててビックリした。当時の言葉でいう”ブルセラショップ”って風俗営業の許可じゃなくて古物商の許可が必要なのでついでにと併設していたようだ。ええんか?九州男児がそんなもん買ってて。ワシャ買わんだけどな。ホントだよ。

 ということで、韓国で作られて日本に流れてきて、今我が家にあるこのリール、せっかくだし使えるように整備しておこうといじくってみたら、さすがバッタモン、色々とやらかしてやがるゼ。
 まずはドラグの構造がおかしい、
 スピニングリールのドラグってドラグパッドの枚数を基準に考えて大体3階建てで、そうじゃなければ1階建てである。リアドラグとかでワッシャーが代わりに入ってて2階建てとかの例外はあるけど、基本奇数になる。
 しかし、このリールドラグが2階建てである。一番下のドラグパッドがスプール底面とスプールと一緒に回る耳付きワッシャーとで挟まれていて、ドラグ効いてスプール回ってる状況下では下のドラグパッド1枚スプールと一緒に回ってるだけで何の仕事もしていない。
 それでも2枚目のドラグパッドが耳付きワッシャーと軸と固定で回らないワッシャーの間でお仕事しているのでちゃんとドラグは効いていた。ドラグパッドはフェルトの片面を滑りの良い樹脂で固めた凝ったもので(下の列の白黒のがドラグパッドの裏表)、性能良さげなのにナニやってんだか?というかんじ。ドラグパッドと軸と固定されるワッシャーがあと1セットあれば3階建ての普通のドラグになるんだけど、ドラグを填める穴の深さに余裕がない。仕方ないので、一番下からスプールの底、ドラグパッド、軸と固定されるワッシャー、ドラグパッド、耳付きワッシャーという順番にした。この場合ドラグノブが締める面がスプールと共に回る耳付きワッシャーなので、ひょっとしてドラグが効くときにドラグノブ一緒に回ってしまいドラグが締まっていくんじゃないかという懸念が大当たりで、昔の磯の底モノ師のつかう改造セネターじゃないんだから使ってるうちにドラグ締まってってどうする?
 対策考えて、一番上にポリカーボネイトの薄板(DVD割って剥いだ)で軸に固定して回らない”ドラグノブ置き”をつくってみたら上手くいって、ドラグはもともと1枚でも効いてたのが、輪をかけてスムーズな効きになった。”ドラグノブ置き”と耳付きワッシャーは滑らかな表面なのでドラググリス塗っときゃドラグの作動を邪魔しないようだ。

 もいっちょ困ったのが、ローター軸のギアの頭のネジとローターを固定するナットのサイズが合ってないってこと。ほんと余ってた部品でとりあえず組めるだけ組んでみた感じである。
 一応締まってるんだけど、きつめに締めようとするとスルッと空振りしてしまう。ナットぐらい探せば合うのあるだろうか?
 でも、お次が致命的なので、ナット探す気にもならんというのが正直なところ。
 写真じゃ見にくいかも知れないけど、ベールアームの樹脂、ネジの填まってる上あたりでパッキリと割れてます。
 ドラグテストで負荷かけたぐらいしか力かかってないはずで、その程度で割れるってのは不良品なんだろうなとおもう。
 まあ、今回はハズレ引いてしまったってことだな。
 売るわけにもいかんので、もし同じリール持ってるとかシェイクスピアの「アルファ040」の方持ってるって人で、部品取りやスペアスプールのために確保したいって人はnamajipenn-ss@yahoo.co.jpまでご相談下さい。
 ていうか、ワシがまともなアルファ040なりメダリスト1626Z入手してもいいのか?という考え方はスピ熱病状悪化なので気をつけて避けておきたい。

 別に名機でもなんでもない、知られてないようなリールでも、突っ込んで調べてみると意外に面白かったりして、スピニング熱はなかなか思うように下がらないのであった。
 ネットで調べることができる情報って、やっぱり限られてるし偏ってるしで、こういうの、その筋のマニアの人に聞けば一発で分かったりするのかもしれない。特にカーディナルなんて深くまで潜ってるマニアの人居るだろうから、時代ごとにどのパーツがどこのメーカーで作ってたとか知ってそうで、そういう人から見たら今回書いたことあたりはオママゴトなんだろうなと思いつつ、次回スピニングネタは得意のPENNで行く予定。
 PENN好きの皆さんこうご期待を。PENNならワシも深く潜れまっセ。