2024年4月27日土曜日

そよ風が止まると桶屋は廃業するのか?

  「シャツの襟が多少黄ばんでるのと、海や川が汚れているのとどちらが嫌かっていえば、後者に決まってるからわが家では合成洗剤は使わない」と、働いてたときに職場の先輩が言ってるのを聞いて、ワシもそりゃそうだなと思って、以来洗濯にも食器洗いにも合成洗剤じゃない”石けん”成分のみのモノを使ってきた。

 今時の合成洗剤は”無リン”とか環境負荷が少ないことを謳ってたりして、そんなに海や川を汚さないのかもしれないけど、人工合成された洗剤成分の得体のしれなさとか、そもそも大昔から”驚きの白さに”とか嘘こきまくってるメーカーへの不信感から直感的に使わん方が良いに決まってると思い込んでいる。神奈川在住時に某都市河川で獲ってきた鮎を食べたら、強烈に薔薇の香りがしてナンジャコリャ?と驚いたけどど、原因としては河原に薔薇が群生してて落ちた花びらを鮎が食ってるとかなわけもなく洗剤に含まれる香料しかあり得ず、下水道とか普及して都市河川が綺麗になってきたと言っても、環境中に放出される家庭用の洗剤の影響って小さくはないんだなと思い知った。

 実際には、石けんも含め洗剤の役目って、油汚れを落としやすくする”界面活性剤”の役割が主なもので、歳食って肌から脂っ気が失せた今となっては、特になくても良いぐらいで、今時の洗濯機は水洗いだけでも充分に汚れを落としてくれるので、洗濯石けん入れるのは単なる習い性でしかないのかもしれない。

 そんな習い性で洗濯時に使ってた洗濯石けんだけど、この地では一番大きなスーパーに置いてあるMIYOSI社粉せっけん「そよ風」を愛用していた。いまどきは液体の合成洗剤が主流らしくて、なかなか粉石けんは置いてる店がない。まあ、近所に売ってなくても通販で手に入るので便利な時代になったものだけど、この「そよ風」2024年の3月末日をもって販売終了だそうである。1960年製造開始のロングセラーも採算性の問題等でサヨナラということで、自分のシャツの襟ばっかり綺麗にしたがるヤツが多いんだなとウンザリしかかるんだけど、代替品として液体洗濯石鹸は販売していくようだし、洗濯用粉石鹸としては他にも「ヤシの実」ブランドとかもあるし、洗濯石鹸を使い続けることはできるようではある。

 ただ、今回愛用の洗濯石鹸が廃盤になるに伴い、モヤモヤと心に引っかかっていたことを整理して、これからのお洗濯の方針を考えてみた。

 モヤモヤと心に引っかかっていた事項は2つあって、一つは洗濯石鹸が熱帯雨林の希少な動植物の生息地を奪っているかもしれないということで、どういうことかというと、「ヤシの実石鹸」なんていうブランドがあるぐらいで、合成洗剤じゃない純石けんの材料としては、化学で習ったように油脂類を苛性ソーダとかでケン化して作るわけで、パーム椰子の油が多く使われている。パーム椰子は熱帯気候で育つ作物で、他の油を取る作物より沢山の油が収穫できて、食用から石鹸のような用途まで使いでも広く熱帯地方ではとても有用な作物となっている。なってるが故にインドネシアやマレーシアでは大規模農園で集約的に生産するいわゆるプランテーションが行われていて、そのために生物多様性の象徴のような熱帯雨林が開発され、オランウータンのような希少な動植物の生息地が奪われているらしいのである。地球に優しいつもりでパーム油由来の洗濯石鹸使ってたらオランウータンの住み家を奪っていたと知って、それでも自分の川下の海と遠くの島のオランウータンとどっちが優先度高いかと考えれば前者を選ばざるをえず、地球に”やましい”気持ちで洗濯石鹸を愛用していた。まあ洗濯石鹸使わなくても、スナック菓子を揚げたりするのにも広く使われているようなので、このグローバルに物が動く時代、自分だけ手を汚さずに生きていくのは極めて難しい。難しいけどシャツの襟は汚れていてもなるべく手は汚したくない。

 もう一つは、マイクロプラスチックの問題で、マイクロプラスチックの海洋への流出の主な原因の一つが家庭からの洗濯排水ということで、正直「そんなもんどないせぇっちゅうねん」という話である。木綿と麻とシルクとウール以外は身につけません。とかちょっと無理でっせ、って話で、マイクロプラスチックが環境中に増えたらそれを食べて分解するような生態系が構築されるんじゃないの?という楽観論でこれまで真剣に対応を考えず、これまた地球にやましい気持ちで化繊の衣類を愛用し洗濯している。

 でも、まあ事ここまで来て、愛用の洗濯石鹸も廃盤となり、何か変えるには良い頃合いかもしれない。ということで色々考えて、今後はワシ洗濯に関しては以下の方針で臨みたい。

一.洗濯は基本水洗いで、洗濯石鹸は油汚れが酷いもの、お客さん用のシーツなど見栄をはりたいもののみに使用する。

二.頻繁に洗濯が必要な肌着の類いは、綿等の化繊ではない素材のものを着用し、肌着以外に使用する化繊の衣類は極力洗濯の回数を減らす。

 という2つである。一つめはまあいいだろう。二つめが、現在肌着でも速乾性重視で化繊混紡のものも愛用しているけど、今後はそういうのは買わず順次交換していくことにして、肌着以外でどうしてもフリースのインナーやらゴアテックスのカッパやらは必要だけど、それらは多少小汚くてもかまわんので洗濯はなるべくしないでどこまでやれるか試してみる。ボロは着てても心は錦。

 あと、食器洗いは手編みのアクリルウールタワシは優秀で、よほど油汚れが酷くない限り食器用石けんも使わなくて良いぐらいで、今でも必要最小限しか使ってない。使わんで良いモノは使わん方が良い気がするのである。アクリルタワシからマイクロプラスチックがどのぐらい流出するのかよく分からんけど、洗剤無しでの汚れ落ちを確保するには有用なので利点の方が大きいと信じる。 

 このぐらいが、今できる精一杯だろう。ボルネオのオランウータンよ未来の子孫達よ、現時点、ワシャこの程度しかデキんけど堪忍してつかあさい。


<おまけ>洗濯機はコバンを放流する1Fの広いコンクリ打ちっ放しの部屋に置いてあり、干すのもほとんどその部屋で室内干し。洗濯作業をしていると、洗濯物の汚れ具合を匂い嗅いだりしてお手伝い(邪魔)してくれる。

 干している洗濯物をたまにジャンプしてひっかけて床に落っことしたりしているけど、猫だから仕方ない。

2024年4月20日土曜日

フンギーッ!ーナマジのビンボ飯エリンギ編ー

 キノコは肉である。

 ナニ言ってんだこいつ?だろうけど、分かる人には分かると思う、昔っから野菜カテゴリーにキノコが入るということには違和感を感じていて、光合成もしない従属栄養の生物を植物扱いで野菜にいれたらあかんやろと思ってた。生物の分類においてワシの学生時代はまだ五界説なんてのが主流だったけど、それでもキノコの所属する菌界は植物界とは別になっていて、それ見たことかと思ったモノである。当時でさえリンネ先生が動物以外は植物ってやった名残のキノコ植物説は古くさかったのが見て取れるけど、その後、分子生物学的手法の発達とかに伴って五界説も廃れていく。”今日知ったことは明日覆る”で知識を更新していくのが科学の健全な姿とはいえ、”モネラ界”のモネラッとっした語感が好きだったのでちと寂しくはある。現在生物を分ける大くくりでは古細菌(アーキア)、細菌、真核生物の三つに分けるのが主流のようだ。このうち真核生物のくくりに動物・植物・菌類・原生生物などが含まれ、さらに真核生物の中で動物と菌類は「後方鞭毛生物」という系統に分類され、植物を含む系統とは違った系統となっているとのこと。つまり昔ワシがキノコ食って直感的に、歯ごたえといい味の濃さといいコリャ野菜じゃなくて肉に分類すべきだなと思った感覚は、非常に鋭かったと自画自賛しておきたい。動物と菌類の近さに比べると、菌類と植物は遠いようだ。まあ肉であるというのも乱暴だけどな。

 でもって、そんなワシ的にはほぼ肉なキノコ。川崎では大きな公園でのキノコ狩りにハマってたぐらいで、食材として大好きである。チョイお値段高めなこともありたまに半額札とか貼られてるときぐらいしか買えなかったけど、紀伊半島に来て異様に安いキノコが売られているのに気がついて、食いまくっている。ナニかというとエリンギの大きく成長しなかった規格外品を、産直とかで冒頭写真の様にビニール袋にミチッと詰めて150円とかで売ってるのである。紀伊半島は杉檜の産地であり当然製材所も多い。するとおが屑が出る。ホクトさんとかが代表だけど日本のキノコ業者の技術力はたいしたもので、本来針葉樹のおが屑はエリンギの菌床栽培には向かないようなんだけど、何か処理して杉檜のおが屑でエリンギが生産できるようになっているらしい。紀伊半島は水産物や柑橘、木材が名産物だけど裏名産として菌床栽培のキノコもなかなかにやりよるようなのである。これまで産直でたまに見かける程度だったんだけど、今年に入ってからスーパーでも定番商品として扱うようになって、ひょっとしてこれ促成栽培で傘が開く前にわざと収穫して薄利多売で売る販売形態を開拓したのか?っていうぐらいいつも売っている。好きなので毎回買って、主に味噌汁の具にこれでもかとぶち込んで、大根も好きなので「大根とエリンギの味噌汁」が今マイブームである。

 すると、不思議なことが起こった。花粉症が軽くてすんでるのである。今年花粉症の症状がそれほど酷くなく、例年一回ぐらい目が痒くなって結膜炎が酷く保冷剤で冷やしながら寝なければならない日があるんだけど、今期はそこまで悪化することがない。かつ症状があんまり気にならない程度なので目薬が減っていかない。花粉の飛散が今年は少ないのかなと思ったらそうでもなさそう。繊維質の食べ物をたくさんとって、腸内環境を整えると花粉症が抑えられるというのは聞いてたんだけど、繊維質の食べ物としては大根は以前から常食しているので、それだけではなさそうで「これはエリンギにアレルギーを抑えるような働きがあるに違いない」とネット検索してみたら正解。キノコのホクト社さんのサイトに「花粉をブロックするIgA抗体を増やすにはエリンギが効果的!」という記事が載っていて、他にマイタケも良いらしい。チョイ脇にそれるけどマイタケの菌床栽培方法を開発した研究者には最大限の賛辞を送りたい。初めて鍋にぶち込んだとき、見つけたら舞を踊って喜ぶほどの美味という語源に違わぬ味の良さに感激したのを憶えている。マイタケ天麩羅も神がかってる。鍋の汁が黒くなるのがアレだけど味はスーパーで手に入るキノコでは最強だと思う。もちろんエリンギも素晴らしい食菌で、濃い出汁の味こそマイタケには譲るものの、歯ごたえのある食感と旨味、味噌汁の具でも旨いけど、炒め物でも天麩羅でも主役を張れる。

 というわけで、今回のビンボ飯メニューは”エリンギと大根の味噌汁”で行きます。つっても、特に変わったことをやるわけじゃない。とにかく、エリンギと大根をドカドカかと入れて具だくさんな味噌汁にしてしまうだけである。ミソをケチるために塩で水増しっていうのは言葉的にへんだけど、まあ塩味で高級調味料のミソを節約しているのと、出汁がマアジ出汁というと贅沢な響きだけど、何のことはない刺身だ酢締めだででた骨を焼いて干した、”アジの骨の焼き干し”がわが家の出汁じゃこ兼愛猫コバンのおやつであるあたりが貧乏臭いとはいえるかもけど、おあげさんとネギも入れてオカズそれだけでも成立する一品に仕上がっている。

 にもかかわらず、今回船持ってるお宅から「釣ってきたから食べて」といただいた初鰹の刺身なんてのまで食卓に上がるもんだから、ビンボ飯どころの騒ぎじゃなくなってしまっているかもしれない。

 でも、エリンギは一袋150円だし、大根もネギも直売所で安く買ってくる、ミソはケチってるし、初鰹はいただきものである。金なんかたいしてかかっとらんのである。貧乏だって旨いもん食って良いんである。貧乏だって旨いモノぐらい食えるんである。

 でも、「エリンギの規格外品なんて紀伊半島に住んでないし手に入らない、こんなのビンボ飯でも何でもない」って思うかもしれない。それはある意味正しいけど、ワシがが言いたいことはそういうことじゃない。単純にエリンギ沢山買ってこいって話では全くない。紀伊半島ではたまたま安い規格外品のエリンギが手に入る。他の土地では土地土地で手に入る、市場ルートに出せないようなものや、小規模で作ってて安く直売場に並べている食材とかがあるハズである。それは土地土地によって違うだろうし、季節によっても違うし、流行廃りで変わっても行くだろう。でも探せばあんまりまだ値がついてない掘り出し物があるハズである。そういうの探して貧乏でも美味しい飯食おうぜってのがワシの主張である。

 都会に住んでて、わが家の近所には直売場もなければそもそも農水産物作ってない。って人も居るだろう、でも都会には都会の掘り出し物がやっぱりあるハズで、ワシ、川崎に住んでたころ、獲れなくなってきて値段高騰しはじめてたサンマとか買わずに、増え始めてて値が安かったマイワシ食いまくってたし、値段のつかないビンチョウの赤身?やら太平洋産のワラサ(ブリの若魚)とか狙い撃ちしてた。

 水産の世界では値段が高いことは必ずしもその分味が良いことを意味しない。むしろ高級食材においては、味ももちろん良いンだろうけど市場の評価や”ブランド力”というようなもので、値が高くなっていることが実態である。長年高品質の食材を提供し続けて育てたブランド、例えば昨今偽装問題で話題の”間人ガニ”なんてのは、一定の基準に基づいてブランド認定していたんだろうけど、ぶっちゃけそれでも個体差とかあるだろうし、他の産地の上等なズワイガニとブラインドテストしたら明確な差が出るかといえば出るわきゃないと思っている。実際騙されて食べた客から”味が違う”という文句は一件も出なかったはず。だって、食べるときにそういう高級ブランドガニだと聞かされて食べるとき、脳の美味しさを感じる部分は活性化されて美味しさを感じやすくなっているはずで、グルメどもはそういう”情報を食ってる(©ラーメンハゲ)”部分も大きいからである。まあそれはそれで悪くない。長年高品質を維持してきた信頼や伝統、美味しく食べさせる技法、接客技術、評判やらの事前情報もろもろ含めて、美味しいと感じるんだろうし、それが食の本来の姿でもあるだろうから、何でもかんでもブラインドテストで事前情報無しで味わって”本当の味”を求めたところで意味がない。

 となると、逆に、ブランド力が強くて値段が高いものもあるけど、ブランド力やもっと極端に認知度がが低くて値段が低いものもあるわけで、そういう一般には知られていない”お値打ち”食材を目利きで見つけてきて「これは関東じゃあまり知られてないけど、どこそこでは珍重されるぐらいの美味」とか、そういう情報も含めて食ってしまえば、これまた脳の美味しさを感じる部分は活性化しているだろうし、安いのに旨いが成立し得るのである。ここにビンボ飯のテクニックが隠されているのである。

 ぶっちゃけ魚とかだと、地域によって好みが違いすぎて、珍重する地域以外では値段がつかないなんてことがままあるので狙い目である。何度か書いたと思うけど、海水温上昇に伴って、南方系のブダイやアイゴが北上してきて藻場を食い荒らすとか聞いたときに、紀伊半島出身のワシは「食えば良いじゃん?」と不思議に感じた。当地でイガミと呼ぶブダイは幼少のころのワシの好物で、誕生日にナニ食べたいと聞かれて「イガミの煮付け」と答えていた渋いナマジ君であった。今はここらでは高級魚なのでちょっと買えないぐらいである。アイゴも普通に美味しく食べてました。アイゴはちょくちょく釣れるので今でも食べている。知り合いの漁師さんが、ここらではクエは別格で倍の値段がつくけど、スジアラやらヤイトハタでは悪くないけど半分ぐらいの値にしかならんとボヤいてた。スジアラは沖縄始め南方では超高級魚である。ヤイトハタは台湾で種苗生産技術が開発されたっていうぐらい彼の地では人気があるようだ。味はそれぞれ好みとか個体差とかあるけど、同じハタの仲間、どれが一番美味しいとかの絶対的な優劣はないと思ってる。ブラインドで味比べしたら好みとか個体差とかで評価はばらつくはず。クエの半額ならヤイトハタのほうがお得と思う。

 京都じゃ懐石で食べたら何万円のハモもこちらじゃ網に掛かっても捨ててるぐらいの雑魚扱いで、でも”骨切り”できるならその美味を堪能できる。秋のゴンズイの旨さも知らねば食えない。都会のスーパーでも、冒険して買い付けたけど売れずにたたき売られているような魚やら、その地での知名度がない魚とかが間違いなくある。おそらく野菜でも他の食材でも同様だろう。都会ならいろんな店があるので産地から遠いのは不利な点でも、選択肢の多さ店同士の競争の激しさとかは利点である。特売品とか田舎じゃ都会ほどはないよ。

 ようは、その地域地域でとりうる作戦でもって、人の見逃してるような美味を安価で楽しんだら、それが”ビンボ飯”の楽しみ方というモノなんだと思っている。

 くっだらねぇマスゴミに踊らされて、需要が高まって値上がりしたようなものを食わされてたら、貧乏人はやっていけないって話なので、同志貧乏人諸君には”目利き”はしっかりして、安くて旨いモノを食って「馬鹿が高いモノ食わされてやがる、ざまぁねぇな!」と高笑いして欲しいと思っちょります。

2024年4月13日土曜日

オマケの1台ーダムと言いつつシマノー

  ネットオークションでセットでジャンクなリールがまとめて売られていたりすると、欲しい一台を確保するために「ままよ」と全部行くときってありますよね?ネットフリマは交渉次第で1台だけバラ売りもありえるけど、モタクサしている間に買われてしまうのが嫌だったり、そもそもゴミみたいな扱いで持ってけ泥棒価格の一山いくらをバラで売ってもらう交渉も気が引ける。ということで、これまたまとめてスルルのポチチで買ってしまうことも、スピニング熱に限らず蒐集系の沼の住人にはアルアルではないかと存じます。

 今回ご紹介しますシマノ「SLS1」もボロい大森「タックルNo.2」と2台まとめて1800円(送料込み)というゴミ処理価格。これをバラ売りで片方千円でとかいうのは、ワシが売りに出してる立場なら「安いんだからまとめて買っていらんほうを捨てろ!」って思うよね。などと他者の都合を思いやって生きていきたい今日この頃なのでポチった。タックルNo.2の方は既に整備済み改良済みで実戦投入中。こちらは良い感じに仕上がって実稼働中であり、すでに元は充分以上にとれている。マニュアルピックアップ機に仕上げてあるので、使いこなす喜びもあり、ミッチェル式で逆転防止OFFで使ってると、大森ハイポイドフェースギアの素直に滑らかな回転もカリカリ音抜きで楽しめてとても使ってて気持ち良い。スプールエッジをなで肩から真っ直ぐに調整したおかげか、単にスプールの直径が大きくなって、もともとその傾向のあった直径大きめスプールがさらにその傾向を強めたおかげか、ラインのさばけ方もよく、投げるのも快適。

 ということで、もう一台のオマケは複合ゴミの日に捨てても良いんだけど、ワシがそんなもったいないことをするわけもなく、わが家に来たからには全バラし分解整備のうえグリスグッチャリで仕上げてやりたい。

 だいぶ昔にこのシリーズの中型機を紹介したことがあるし、ご存じの方も多いかと思うけど、このシマノ「SLS」シリーズはドイツD・A・M社との技術協力のうえシマノが製造っていうシマノ製ダムなのである。同時期にダイワはPENNのスピニング作ってたようだし、今や考えられないけど、両国産メーカー2大巨頭もOEM(相手先ブランド生産)という下請け仕事を昔はやってたのである。

 前回の「SLS2」だったかはボロボロであんま状態良くなかったので、正直評価もクソもないような個体だったし、せっかっく小型のSLS1が手に入ったので、可能なら使用できるところまで持っていって、シマノ製ダム機の実力を見てみたいところであり、早速分解整備していこう。

 まずいつものとおり、スプール周りからなんだけど、このリール最大の売りが多分ドラグで、かなりケッタイな独特のドラグになっている。構造としては、スプールの上下の2面を使ったドラグなんだろうけど、まずは下側のスプールが乗っかる台座面は直径大きく、スプールが刺さる主軸に被せたスリーブも太くていい感じなのが写真右等で確認できるだろうか、直径大きな樹脂製台座の側面にギザギザが切ってあってドラグの音出しになっていて、写真右下のようにスプールの内側をグルッと回したワイヤーで音出しの爪になっている。メインのドラグはスプール上のもののようで、写真左上のようにドラグノブを外すとその下にコマのような円錐形をしたドラグ押さえが入っていて、それを摘まんで外すと、カーボンシートっぽいドラグパッドがスプール上面との間に入っているのが写真右上でみてとれるだろう。このパッド含めドラグの摩擦面が上も下も直径が大きく、ドラグの安定性自体は悪くなく、整備後ライン巻いてドラグの具合を試してみたけど、シャクリもせず滑り出しも悪くなく、ドラグ暗黒時代の日本製とはいえ、そこはダムと組むとまともなドラグが付くんだなというところ。ただ、このドラグよく見てもらっても”バネ”的な部品が見つけられないだろう。だって無いんだもん。ドラグパッドが乗っかってるのはスプールの上部がアリジゴクみたいに傾斜しているところで、それに合わせて円錐形のドラグ押さえが乗っていて、ひょっとしての斜めになってる構造で上手く調整幅が出せるのかも?と思ったけどイマイチよく分からず、バネがないので調整幅は狭くて、キュッと締まる、まあまあ良い感じに滑る、ズルズルの3段階ぐらいにしかならず、良い感じに滑る幅は狭くドラグ値の調整はこれでは思うようにはできないだろう。もう少し何とかならんのかといじくり回していて思いついた。これ、現状ではアリジゴクの巣にあわせてドラグパッドも傾斜してしまっているけど、元は平面で平面がアリジゴクの巣の傾斜に押しつけられてたわむことでバネの役割を果たしてたんじゃないか、と思いついてドラグパッドひっくり返して逆傾斜状態のドラグパッドにしてみた。今時のドラグみたいな幅広さはさすがに出なかったけど、そこそこ調整幅がでてバネ無しでも機能するように設計されていた。なかなか個性的で”攻めて”いて改めて悪くないドラグだと思う。

 次にハンドルなんだけど、ネジで”固定式”でハンドル根元のスリーブが捻りながらバネで上に押し上げられている方式で、ひねると折り畳める。まあこの時代の国産スピニングにはままある方式だったように思う。しかし、このハンドルなんかぐらつくんである。押し上げるバネが弱まってるのか、どっか摩耗しているのか気持ちよくキュッと止まるねじ込み式でも、パチンと止まるワンタッチでもあまりグラつくハンドルというのは見たことなかったけど、これはいただけない。なんとか調整しようにも折り畳み機構がハメ殺しなのでどうにもならん。まあ多少ガタつくのは気にしないでおくかと、次に本体開けていく。

 オッ、ハイポイドフェースギアが入ってる。以前いじった中型機ではギアはローター軸のギアの歯が真っ直ぐで軸の中心が交差しないオフセットしたフェースギア的な作りのギアが入ってた。このギア方式は稲村製作所も使っていて、削れてる場合が多く、削れていると非常に嫌な感じのギヤーッという感じのギアノイズが生じるので、あんまりこのリールを整備しても使う気なかったけど、普通にハイポイドフェースギアが入っているなら、心臓部のギアは問題ないだろうから、ハンドルなんとか調整して使えるように整備してみたくなる。ちなみにスプール上下は単純クランク方式、ローター軸のギアは真鍮でハンドル軸のギアは亜鉛一体成形で、心棒が4角。ボールベアリングはローター軸のギア上に1個のみ、ハンドル軸のギアの軸は本体アルミで直受けしていてやや手抜き感がある。

 ローター周りを見ていくと、ラインローラーは真鍮にクロームメッキの回転式で直受け、ラインローラーの手前でラインが当たって糸溝できてるのでエポキシでここにはラインが止まらず流れてローラーに落ちるようにしておいた。ベールの反転はU時の金具を使ったどうと言うことのない方式。逆転防止はローターの下に入っていて、ローター側に六角穴で填めた、ステン打ち抜き2枚重ねのラチェットを本体上の爪で止める方式でこれは丈夫そうな作り。スプールのシールが剥がれるのはこの時代のならお約束か?エポキシで貼り直しておいた。

 分解、洗浄、グリスアップはサクサクと進み、難しい機構もなく整備性は悪くない。

 ただ、整備完了の冒頭写真の状態でハンドル回したり、ベール返してみたりすると、ハンドルのがたつきはやっぱり気になるし、ベールの返りが重くて、力入れるとハンドルがクニャッと畳まれてしまったりして、どうにもいただけない。ドラグは良い感じなれど、ドラグノブが浮き気味で、ドラグノブとスプールに間ができてしまっていてラインが巻いてしまいそうなのもイマイチな点。

 ぶっちゃけシマノ製ダムはダイワ製PENNに比べると見劣りする。ダイワ製ペンはボールベアリング1個の安い機種なりに、ハンドル軸には樹脂製のブッシュをいれてたり、ねじ込み式だったりと丁寧に作られていた。ワシ、固着して糸溝できていたラインローラーの予備と替えスプールを確保してしまうぐらいに、安いつくりながら良くまとまった設計だと感じた。けど、このSLS1はそもそもハンドルがダメでってなると、他の機種からガタつかないハンドル探してきて移植するとかも馬鹿臭く、まあ、いじってお勉強できたしそれで良いかなと思ってしまう。ハンドルがガタつくってあんまり経験無くて、ワンタッチでもワンタッチの爪が折れたとかは経験あるけど、こんなにグラグラするのは初めてで、亜鉛一体成形のハンドル軸ギアの場合は、安っぽいけど”共回り方式”の方が単純で信用できる気がしてきた。その方が軽いし。もちろん軸に鉄系や真鍮のを鋳込んで”ねじ込み式”なら何の問題もない。

 まあ、この時代の試行錯誤しているスピニングにあんまり完成度をもとめても意味ないのかもしれん。ダム社という欧州老舗と技術協力して、新しいリールを作ろうとした挑戦に意味があったのかも。少なくとも今みたいに技術は充分に成熟しているはずなのに、瞬間的逆転防止機構の搭載されたしょうもないクソリール作ってるってことよりはマシだろうと思う。

 せっかく整備したけど使い道なさげなので、いじってみたいという方は送料負担いただければ先着1名様に進呈いたします。なにげに読者プレゼントのPENN5500ssも応募者なしなので、欲しい人は是非うちの蔵の整理にご協力ください。PENNの方は送料も持ちます。よろしくね。

2024年4月6日土曜日

幸福の空色自転車act2ー鮮魚運搬仕様ー

 お気づきかもしれないけど、ワシ自転車が好き。いうてもロードバイクでピチピチのウェア着て爆走するわけでも、マウンテンバイクでため池の土手でダウンヒルごっこするわけでもない。ママチャリでチャリチャリと釣り場まで行ったり、折り畳み自転車を電車とかで運んで釣り場までの足にしたりというユルい愛し方である。

 自転車の何が好きって、まずは単純な構造が良い。わけ分からん電子部品などついておらず、前照灯除けばテコとか滑車とかコロとかそのへんの応用で済んでいてスピニングリールの分解整備ができるぐらいの技術で整備が可能。

 体が機械に囲まれるような構造ではなく、開放的なのが素敵。乗り物酔いしやすいたちで、幼い頃は車酔いが酷くて窓を開けないとすぐ”トシャー(©福満先生)”っと吐いてしまうぐらいだった。そういう人間には全身を風に晒す乗り物は好ましい。

 そして、動力が人力っていうのがいい。エンジン付いてるバイクも風を感じて走れるけど、人が制御できないほどの力をブイブイ発生させる乗り物は、ハンドル操作一つ間違うと人が死にかねず、正直おっかねぇ。自転車でも死亡事故が起こり得ないわけじゃないけど、ママチャリでチャリチャリとゆるく走ってる分にはそんなに危険性を感じない。そして、地球温暖化や大気汚染に繫がるような排気ガスを出していないし化石燃料を使ってないのも好ましく感じられる。

 無論、ワシが動力であるからしてCO2は排出しているわけだし、ぶっちゃけ自転車作るのに電力やら使ってないわけがなく、化石燃料も使ってるんだろうけど、使用時にキコキコ漕いでるとエコな感じがするのは免罪符的な気持ちの問題的によろしい。

 化石燃料を使わない、CO2の排出を削減するっていうのは現代社会における大きな宿題となっているけど、なかなか上手くいってないように見受けられる。CO2削減のために”代替エネルギー”をと言ってるのに、山林を切り開いて”メガソーラー”とかのクソオブクソは論外として、代替エネルギー関連にはまだまだ技術的、制度的な問題が山済みで、太陽光発電はパネルが汚れると当然発電効率が落ちるので定期的な掃除が必要だけど、洗剤を垂れ流すと環境負荷がかかってくるとか(火災の際感電するので水で消火できないってのはデマ)、風力発電は”バードストライク”な直接的な野生動物への影響はもとより、イヌワシとか風力発電を嫌って棲息範囲が狭められるとか、ペラが起こす低周波の振動が結構な範囲の野生動物の行動に良くない影響を与えるとかあるようで、低周波の話は人間でもダメな人には良くないだろう気がする。ワシは新幹線の線路のそばに住んでたとき振動感じるような環境下でも平気だったぐらいで、鈍感な人間は音でも振動でも慣れるので多分低周波振動も大丈夫。どこでも生きていける。

 ということを鑑みると、結局どうすればいいのか分からんくなってくる。案外化石燃料だよりを続けて、化石燃料の枯渇に伴って、その使用量を減らしていくのが正解だったりして?と思わなくもない。燃料費高騰すれば嫌でも省エネ技術は発達していくだろう。ジャブジャブ使えるエネルギー源をいつまでも保持しておけると考えたり、それを前提条件に世の中の仕組みを構築するのは限界もあるんじゃねぇの?って思う。

 もしくは核融合発電を実用化して無限に近いエネルギー源を手に入れるか?池澤夏樹先生が「たのしい終末」で書いてたと思うけど、核融合発電を実用化すれば、実質”太陽”を手中に収めたようなものであり、核分裂反応を利用した現状の原子力発電のような連鎖反応による暴走がないから、事故のリスクも充分に小さく、燃料も海水に混じってる重水素とかでよく、ほぼエネルギー問題は解決である。ただ核融合はまともに熱核融合を起こさせるには超高温とかが必要で面倒くせえらしく、常温(低温)核融合は報告がある度に「またデマか?」と疑う程度には嘘くせぇ未確立の技術である。昔、釣り場に向かう車中の与太話で新興宗教を作って教祖として君臨して、金も女もむさぼりたいという情け容赦のない欲望を開放して、どういった教義にするかとか考えて、太陽神天照大神(アマテラスオオミカミ)を主神とあがめて、常温核融合発電を”神の降臨”と位置づけ、研究開発に必要な資金をお布施として奉納せよっ、ていうのはどうだろうか?とか話してたけど、宗教じゃないけど投資話でそういう詐欺じみたネタはいっぱいあるらしく、民間の研究機関とか存外存在してるようだ。多分ほとんど皆騙されて出資金絞られてるンじゃなかろうか?宗教でも投資でもうまい話にゃダボハゼみたいに食いつくなって話だろう。

 ともあれ、エネルギー問題なんていう地球規模の問題はさておき(さておくからいつまでも問題が解決せんのじゃ!)、我が愛車である”空色自転車”に問題が生じたのは、早急に対処が必要ということで楽しく修理しつつ、せっかくなのでちょっと改良してバージョンアップしておいた。

 まああれだ、通常ママチャリの前カゴは鮮魚運搬には向いておらず、いわんや活魚運搬おや、ということは周知の事実である。にもかかわらずワシ自転車で釣りに出かけるので、バケツからシッポがはみ出すぐらいに下品にカマス突っ込んだ水くみバケツとか、場所移動の際のバケツに海水タップリ入れたままの活アジとかをビタビタ海水滴らせつつ運搬したりと、やりたい放題やってきた。そのツケがきて、先日畳んだパックロッドを前カゴに積んだバケツの横に刺したら、ブスッと前カゴの底を貫通した。

 ありゃコレは穴を針金とかで塞ぐとかせんといかんな、と思ったけど指で押して確認すると、かごの底の金網が全体的に錆びてグズグズになっていて”コリャダメだ”状態。しつこく書くが、ママチャリの前カゴは、鮮魚運搬にも活魚運搬にも向いていない。港町なので自転車は潮風にさらされるわけで、たまに手入れでグリスヌリヌリ、666プシャーッとかけて拭き拭きと手入れはしていたけど、その程度で鉄が錆びるのを止められるわけがない。むしろカゴ以外の本体はそこそこ無事なのは良くやってると思う。直に塩水かかると潮風どころの話じゃないのでアカンね。しゃーないっちゃしゃーない。

 穴を塞ぐのは諦めてカゴの交換である。安くあげたいのでネットフリマで中古のとかないか見てみると、2千円も出せば買えそう。ところが使いもしないリールが2千円ならスルリと滑るマウスが、おもいっきり重要な釣り具である自転車のための2千円ごときに滑りが悪い。まあ1500円で買った自転車なので「カゴの方が高いやんけ!」と思ってしまうというのもあるし、購入が2022年の夏で2年しないうちに錆びて朽ち果てるのでは、また金かかるしどうにかならんのかと悩んでしまう。

 往生際悪く悩んでたら良いこと思いついた。こんなモン鉄のカゴを使うから錆びるのであって、樹脂製のカゴを使えば錆びんだろ?ということで、手頃な大きさのカゴを見繕いに百均ショップに出かけたら、ちょうど良いのがあありました。

 洗濯物カゴの小さめのが我が空色自転車の前カゴにあしらえたようにちょうど良い大きさ。自転車本体に固定する金具は元々の金具と、押さえの板とステンのボルトナットは昔バイクの後部座席に道具箱を乗せて固定していた時のを残してあったので、それを使った。何でも捨てずに取っておくのは普段は蔵にモノが積み上がる悪癖でしかないけど、こういう「よくぞ取っておいたワシ、エラい!」ってことがあると、やはり捨てられないのである。

 プラスチック製なので手動のドリルで必要な位置に穴をドリドリと開けてボルトナットで固定して無事できあがり、なんだけど、せっかくなのでちょっと手を加えて”釣り用自転車”として快適に使えるようにバージョンアップ。

 カゴの端に結束バンドで斜めにパイプを固定して竿立てとする。これまで移動時は竿を担いでハンドルの上に乗っけて、指2本ぐらいで保持しつつチャリチャリと走ってたけど、これだと竿の保持には指1本も使わなくて良い。竿立ては1本だけで良い。釣りモノが絞れていればこれで充分。

 そして、片側を固定してゴム紐を設置。かごの中でグラつきそうな荷物はゴムで固定して安定させる。

 ってな感じで完成したのが冒頭写真。カゴが通常鉄製なのはコケたりしてぶつけたときに鉄だと割れずに凹む程度で直しやすいのと、プラだと外で使うと紫外線とかで経年劣化が早いので、とかがあって鉄に塗装したカゴにしているんだろう。ただ、明らかに自分の使い方を考えると、鉄製では錆びて使いものにならない。樹脂製で生じる欠点は、壊れやすいのも経年劣化が早いのも”価格が安い”ということで充分相殺できる。なにせ300円(税別)である。そうそう壊れるとも思えないけど、壊れたらまた買ってきて交換すればいい。手間というほどの手間もかからない。

 実戦投入してみたけど、良い塩梅である。特に今使ってるシーバスタックルを想定して竿立てを設置したんだけど、我ながら絶妙な位置どりだったなと、リールがハンドルにもカゴにも当たらず、ここが最良という位置に来る。

 水色の車体に白のカゴという色目は、なんか爽やかな青空のようで、乗ってて正直こっぱずかしいけど、まあ良いだろう。前の持ち主が全部ペンキで塗ったのは錆対策だったんだろうなと想像に難くない。意外に本体の錆は防げてる気がする。

 良いんだか悪いんだか個性的な見た目と、錆びにくいベタベタ塗った塗装、鮮魚運搬に対応し竿立て完備の釣り仕様。良い感じに仕上がって、さらに愛着が増してきた。これからも頼りになる”釣り場の足”としてよろしく頼みます。