2024年4月27日土曜日

そよ風が止まると桶屋は廃業するのか?

  「シャツの襟が多少黄ばんでるのと、海や川が汚れているのとどちらが嫌かっていえば、後者に決まってるからわが家では合成洗剤は使わない」と、働いてたときに職場の先輩が言ってるのを聞いて、ワシもそりゃそうだなと思って、以来洗濯にも食器洗いにも合成洗剤じゃない”石けん”成分のみのモノを使ってきた。

 今時の合成洗剤は”無リン”とか環境負荷が少ないことを謳ってたりして、そんなに海や川を汚さないのかもしれないけど、人工合成された洗剤成分の得体のしれなさとか、そもそも大昔から”驚きの白さに”とか嘘こきまくってるメーカーへの不信感から直感的に使わん方が良いに決まってると思い込んでいる。神奈川在住時に某都市河川で獲ってきた鮎を食べたら、強烈に薔薇の香りがしてナンジャコリャ?と驚いたけどど、原因としては河原に薔薇が群生してて落ちた花びらを鮎が食ってるとかなわけもなく洗剤に含まれる香料しかあり得ず、下水道とか普及して都市河川が綺麗になってきたと言っても、環境中に放出される家庭用の洗剤の影響って小さくはないんだなと思い知った。

 実際には、石けんも含め洗剤の役目って、油汚れを落としやすくする”界面活性剤”の役割が主なもので、歳食って肌から脂っ気が失せた今となっては、特になくても良いぐらいで、今時の洗濯機は水洗いだけでも充分に汚れを落としてくれるので、洗濯石けん入れるのは単なる習い性でしかないのかもしれない。

 そんな習い性で洗濯時に使ってた洗濯石けんだけど、この地では一番大きなスーパーに置いてあるMIYOSI社粉せっけん「そよ風」を愛用していた。いまどきは液体の合成洗剤が主流らしくて、なかなか粉石けんは置いてる店がない。まあ、近所に売ってなくても通販で手に入るので便利な時代になったものだけど、この「そよ風」2024年の3月末日をもって販売終了だそうである。1960年製造開始のロングセラーも採算性の問題等でサヨナラということで、自分のシャツの襟ばっかり綺麗にしたがるヤツが多いんだなとウンザリしかかるんだけど、代替品として液体洗濯石鹸は販売していくようだし、洗濯用粉石鹸としては他にも「ヤシの実」ブランドとかもあるし、洗濯石鹸を使い続けることはできるようではある。

 ただ、今回愛用の洗濯石鹸が廃盤になるに伴い、モヤモヤと心に引っかかっていたことを整理して、これからのお洗濯の方針を考えてみた。

 モヤモヤと心に引っかかっていた事項は2つあって、一つは洗濯石鹸が熱帯雨林の希少な動植物の生息地を奪っているかもしれないということで、どういうことかというと、「ヤシの実石鹸」なんていうブランドがあるぐらいで、合成洗剤じゃない純石けんの材料としては、化学で習ったように油脂類を苛性ソーダとかでケン化して作るわけで、パーム椰子の油が多く使われている。パーム椰子は熱帯気候で育つ作物で、他の油を取る作物より沢山の油が収穫できて、食用から石鹸のような用途まで使いでも広く熱帯地方ではとても有用な作物となっている。なってるが故にインドネシアやマレーシアでは大規模農園で集約的に生産するいわゆるプランテーションが行われていて、そのために生物多様性の象徴のような熱帯雨林が開発され、オランウータンのような希少な動植物の生息地が奪われているらしいのである。地球に優しいつもりでパーム油由来の洗濯石鹸使ってたらオランウータンの住み家を奪っていたと知って、それでも自分の川下の海と遠くの島のオランウータンとどっちが優先度高いかと考えれば前者を選ばざるをえず、地球に”やましい”気持ちで洗濯石鹸を愛用していた。まあ洗濯石鹸使わなくても、スナック菓子を揚げたりするのにも広く使われているようなので、このグローバルに物が動く時代、自分だけ手を汚さずに生きていくのは極めて難しい。難しいけどシャツの襟は汚れていてもなるべく手は汚したくない。

 もう一つは、マイクロプラスチックの問題で、マイクロプラスチックの海洋への流出の主な原因の一つが家庭からの洗濯排水ということで、正直「そんなもんどないせぇっちゅうねん」という話である。木綿と麻とシルクとウール以外は身につけません。とかちょっと無理でっせ、って話で、マイクロプラスチックが環境中に増えたらそれを食べて分解するような生態系が構築されるんじゃないの?という楽観論でこれまで真剣に対応を考えず、これまた地球にやましい気持ちで化繊の衣類を愛用し洗濯している。

 でも、まあ事ここまで来て、愛用の洗濯石鹸も廃盤となり、何か変えるには良い頃合いかもしれない。ということで色々考えて、今後はワシ洗濯に関しては以下の方針で臨みたい。

一.洗濯は基本水洗いで、洗濯石鹸は油汚れが酷いもの、お客さん用のシーツなど見栄をはりたいもののみに使用する。

二.頻繁に洗濯が必要な肌着の類いは、綿等の化繊ではない素材のものを着用し、肌着以外に使用する化繊の衣類は極力洗濯の回数を減らす。

 という2つである。一つめはまあいいだろう。二つめが、現在肌着でも速乾性重視で化繊混紡のものも愛用しているけど、今後はそういうのは買わず順次交換していくことにして、肌着以外でどうしてもフリースのインナーやらゴアテックスのカッパやらは必要だけど、それらは多少小汚くてもかまわんので洗濯はなるべくしないでどこまでやれるか試してみる。ボロは着てても心は錦。

 あと、食器洗いは手編みのアクリルウールタワシは優秀で、よほど油汚れが酷くない限り食器用石けんも使わなくて良いぐらいで、今でも必要最小限しか使ってない。使わんで良いモノは使わん方が良い気がするのである。アクリルタワシからマイクロプラスチックがどのぐらい流出するのかよく分からんけど、洗剤無しでの汚れ落ちを確保するには有用なので利点の方が大きいと信じる。 

 このぐらいが、今できる精一杯だろう。ボルネオのオランウータンよ未来の子孫達よ、現時点、ワシャこの程度しかデキんけど堪忍してつかあさい。


<おまけ>洗濯機はコバンを放流する1Fの広いコンクリ打ちっ放しの部屋に置いてあり、干すのもほとんどその部屋で室内干し。洗濯作業をしていると、洗濯物の汚れ具合を匂い嗅いだりしてお手伝い(邪魔)してくれる。

 干している洗濯物をたまにジャンプしてひっかけて床に落っことしたりしているけど、猫だから仕方ない。


(追記5.05)記事読んだF師匠から産直?の石鹸セットをいただきました。最初貼ってある送り状に送り主としてメーカーさんの名前しかなかったけど、こういうのすぐ送ってくれるのはF師匠だろうなと思って開けたら正解。F家20年来の愛用品だそうです。これでしばらくは大丈夫だろうし、通販できるなら次も安心。「シャボン玉石鹸」ってメーカーさんです。

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