ナニ言ってんだこいつ?だろうけど、分かる人には分かると思う、昔っから野菜カテゴリーにキノコが入るということには違和感を感じていて、光合成もしない従属栄養の生物を植物扱いで野菜にいれたらあかんやろと思ってた。生物の分類においてワシの学生時代はまだ五界説なんてのが主流だったけど、それでもキノコの所属する菌界は植物界とは別になっていて、それ見たことかと思ったモノである。当時でさえリンネ先生が動物以外は植物ってやった名残のキノコ植物説は古くさかったのが見て取れるけど、その後、分子生物学的手法の発達とかに伴って五界説も廃れていく。”今日知ったことは明日覆る”で知識を更新していくのが科学の健全な姿とはいえ、”モネラ界”のモネラッとっした語感が好きだったのでちと寂しくはある。現在生物を分ける大くくりでは古細菌(アーキア)、細菌、真核生物の三つに分けるのが主流のようだ。このうち真核生物のくくりに動物・植物・菌類・原生生物などが含まれ、さらに真核生物の中で動物と菌類は「後方鞭毛生物」という系統に分類され、植物を含む系統とは違った系統となっているとのこと。つまり昔ワシがキノコ食って直感的に、歯ごたえといい味の濃さといいコリャ野菜じゃなくて肉に分類すべきだなと思った感覚は、非常に鋭かったと自画自賛しておきたい。動物と菌類の近さに比べると、菌類と植物は遠いようだ。まあ肉であるというのも乱暴だけどな。
でもって、そんなワシ的にはほぼ肉なキノコ。川崎では大きな公園でのキノコ狩りにハマってたぐらいで、食材として大好きである。チョイお値段高めなこともありたまに半額札とか貼られてるときぐらいしか買えなかったけど、紀伊半島に来て異様に安いキノコが売られているのに気がついて、食いまくっている。ナニかというとエリンギの大きく成長しなかった規格外品を、産直とかで冒頭写真の様にビニール袋にミチッと詰めて150円とかで売ってるのである。紀伊半島は杉檜の産地であり当然製材所も多い。するとおが屑が出る。ホクトさんとかが代表だけど日本のキノコ業者の技術力はたいしたもので、本来針葉樹のおが屑はエリンギの菌床栽培には向かないようなんだけど、何か処理して杉檜のおが屑でエリンギが生産できるようになっているらしい。紀伊半島は水産物や柑橘、木材が名産物だけど裏名産として菌床栽培のキノコもなかなかにやりよるようなのである。これまで産直でたまに見かける程度だったんだけど、今年に入ってからスーパーでも定番商品として扱うようになって、ひょっとしてこれ促成栽培で傘が開く前にわざと収穫して薄利多売で売る販売形態を開拓したのか?っていうぐらいいつも売っている。好きなので毎回買って、主に味噌汁の具にこれでもかとぶち込んで、大根も好きなので「大根とエリンギの味噌汁」が今マイブームである。
すると、不思議なことが起こった。花粉症が軽くてすんでるのである。今年花粉症の症状がそれほど酷くなく、例年一回ぐらい目が痒くなって結膜炎が酷く保冷剤で冷やしながら寝なければならない日があるんだけど、今期はそこまで悪化することがない。かつ症状があんまり気にならない程度なので目薬が減っていかない。花粉の飛散が今年は少ないのかなと思ったらそうでもなさそう。繊維質の食べ物をたくさんとって、腸内環境を整えると花粉症が抑えられるというのは聞いてたんだけど、繊維質の食べ物としては大根は以前から常食しているので、それだけではなさそうで「これはエリンギにアレルギーを抑えるような働きがあるに違いない」とネット検索してみたら正解。キノコのホクト社さんのサイトに「花粉をブロックするIgA抗体を増やすにはエリンギが効果的!」という記事が載っていて、他にマイタケも良いらしい。チョイ脇にそれるけどマイタケの菌床栽培方法を開発した研究者には最大限の賛辞を送りたい。初めて鍋にぶち込んだとき、見つけたら舞を踊って喜ぶほどの美味という語源に違わぬ味の良さに感激したのを憶えている。マイタケ天麩羅も神がかってる。鍋の汁が黒くなるのがアレだけど味はスーパーで手に入るキノコでは最強だと思う。もちろんエリンギも素晴らしい食菌で、濃い出汁の味こそマイタケには譲るものの、歯ごたえのある食感と旨味、味噌汁の具でも旨いけど、炒め物でも天麩羅でも主役を張れる。
というわけで、今回のビンボ飯メニューは”エリンギと大根の味噌汁”で行きます。つっても、特に変わったことをやるわけじゃない。とにかく、エリンギと大根をドカドカかと入れて具だくさんな味噌汁にしてしまうだけである。ミソをケチるために塩で水増しっていうのは言葉的にへんだけど、まあ塩味で高級調味料のミソを節約しているのと、出汁がマアジ出汁というと贅沢な響きだけど、何のことはない刺身だ酢締めだででた骨を焼いて干した、”アジの骨の焼き干し”がわが家の出汁じゃこ兼愛猫コバンのおやつであるあたりが貧乏臭いとはいえるかもけど、おあげさんとネギも入れてオカズそれだけでも成立する一品に仕上がっている。 にもかかわらず、今回船持ってるお宅から「釣ってきたから食べて」といただいた初鰹の刺身なんてのまで食卓に上がるもんだから、ビンボ飯どころの騒ぎじゃなくなってしまっているかもしれない。でも、エリンギは一袋150円だし、大根もネギも直売所で安く買ってくる、ミソはケチってるし、初鰹はいただきものである。金なんかたいしてかかっとらんのである。貧乏だって旨いもん食って良いんである。貧乏だって旨いモノぐらい食えるんである。
でも、「エリンギの規格外品なんて紀伊半島に住んでないし手に入らない、こんなのビンボ飯でも何でもない」って思うかもしれない。それはある意味正しいけど、ワシがが言いたいことはそういうことじゃない。単純にエリンギ沢山買ってこいって話では全くない。紀伊半島ではたまたま安い規格外品のエリンギが手に入る。他の土地では土地土地で手に入る、市場ルートに出せないようなものや、小規模で作ってて安く直売場に並べている食材とかがあるハズである。それは土地土地によって違うだろうし、季節によっても違うし、流行廃りで変わっても行くだろう。でも探せばあんまりまだ値がついてない掘り出し物があるハズである。そういうの探して貧乏でも美味しい飯食おうぜってのがワシの主張である。
都会に住んでて、わが家の近所には直売場もなければそもそも農水産物作ってない。って人も居るだろう、でも都会には都会の掘り出し物がやっぱりあるハズで、ワシ、川崎に住んでたころ、獲れなくなってきて値段高騰しはじめてたサンマとか買わずに、増え始めてて値が安かったマイワシ食いまくってたし、値段のつかないビンチョウの赤身?やら太平洋産のワラサ(ブリの若魚)とか狙い撃ちしてた。
水産の世界では値段が高いことは必ずしもその分味が良いことを意味しない。むしろ高級食材においては、味ももちろん良いンだろうけど市場の評価や”ブランド力”というようなもので、値が高くなっていることが実態である。長年高品質の食材を提供し続けて育てたブランド、例えば昨今偽装問題で話題の”間人ガニ”なんてのは、一定の基準に基づいてブランド認定していたんだろうけど、ぶっちゃけそれでも個体差とかあるだろうし、他の産地の上等なズワイガニとブラインドテストしたら明確な差が出るかといえば出るわきゃないと思っている。実際騙されて食べた客から”味が違う”という文句は一件も出なかったはず。だって、食べるときにそういう高級ブランドガニだと聞かされて食べるとき、脳の美味しさを感じる部分は活性化されて美味しさを感じやすくなっているはずで、グルメどもはそういう”情報を食ってる(©ラーメンハゲ)”部分も大きいからである。まあそれはそれで悪くない。長年高品質を維持してきた信頼や伝統、美味しく食べさせる技法、接客技術、評判やらの事前情報もろもろ含めて、美味しいと感じるんだろうし、それが食の本来の姿でもあるだろうから、何でもかんでもブラインドテストで事前情報無しで味わって”本当の味”を求めたところで意味がない。
となると、逆に、ブランド力が強くて値段が高いものもあるけど、ブランド力やもっと極端に認知度がが低くて値段が低いものもあるわけで、そういう一般には知られていない”お値打ち”食材を目利きで見つけてきて「これは関東じゃあまり知られてないけど、どこそこでは珍重されるぐらいの美味」とか、そういう情報も含めて食ってしまえば、これまた脳の美味しさを感じる部分は活性化しているだろうし、安いのに旨いが成立し得るのである。ここにビンボ飯のテクニックが隠されているのである。
ぶっちゃけ魚とかだと、地域によって好みが違いすぎて、珍重する地域以外では値段がつかないなんてことがままあるので狙い目である。何度か書いたと思うけど、海水温上昇に伴って、南方系のブダイやアイゴが北上してきて藻場を食い荒らすとか聞いたときに、紀伊半島出身のワシは「食えば良いじゃん?」と不思議に感じた。当地でイガミと呼ぶブダイは幼少のころのワシの好物で、誕生日にナニ食べたいと聞かれて「イガミの煮付け」と答えていた渋いナマジ君であった。今はここらでは高級魚なのでちょっと買えないぐらいである。アイゴも普通に美味しく食べてました。アイゴはちょくちょく釣れるので今でも食べている。知り合いの漁師さんが、ここらではクエは別格で倍の値段がつくけど、スジアラやらヤイトハタでは悪くないけど半分ぐらいの値にしかならんとボヤいてた。スジアラは沖縄始め南方では超高級魚である。ヤイトハタは台湾で種苗生産技術が開発されたっていうぐらい彼の地では人気があるようだ。味はそれぞれ好みとか個体差とかあるけど、同じハタの仲間、どれが一番美味しいとかの絶対的な優劣はないと思ってる。ブラインドで味比べしたら好みとか個体差とかで評価はばらつくはず。クエの半額ならヤイトハタのほうがお得と思う。
京都じゃ懐石で食べたら何万円のハモもこちらじゃ網に掛かっても捨ててるぐらいの雑魚扱いで、でも”骨切り”できるならその美味を堪能できる。秋のゴンズイの旨さも知らねば食えない。都会のスーパーでも、冒険して買い付けたけど売れずにたたき売られているような魚やら、その地での知名度がない魚とかが間違いなくある。おそらく野菜でも他の食材でも同様だろう。都会ならいろんな店があるので産地から遠いのは不利な点でも、選択肢の多さ店同士の競争の激しさとかは利点である。特売品とか田舎じゃ都会ほどはないよ。
ようは、その地域地域でとりうる作戦でもって、人の見逃してるような美味を安価で楽しんだら、それが”ビンボ飯”の楽しみ方というモノなんだと思っている。
くっだらねぇマスゴミに踊らされて、需要が高まって値上がりしたようなものを食わされてたら、貧乏人はやっていけないって話なので、同志貧乏人諸君には”目利き”はしっかりして、安くて旨いモノを食って「馬鹿が高いモノ食わされてやがる、ざまぁねぇな!」と高笑いして欲しいと思っちょります。
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