2026年10月10日土曜日

ないものは作る

 ルアー制作は”自分で作ると安く上がる”と素人は考えがちだけど、実際には手間も時間も掛かって、材料費にさらに道具も買ってとなるととても元が取れるとは思えない。最低賃金のバイトでもいいから働いてルアー買った方がよっぽど安上がりである。とはいえ売ってないものが欲しい、自分の思い通りのモノが欲しい、とかになると作るしかないってのもこれありだけど、なにより自分で作ると楽しめるというまぎれもない事実があり、費用対効果だのタイパだのは楽しさの前ではクソ食らえなのである。

 ここのところクランクベイト方面に病状が出ていて、アタイ病気が憎いわけなんだけど、本当に欲しいものはなかなか手に入らない。売ってりゃ老後資金削って買うのもやぶさかではないけど、古い真鍮リグのバグリー「バルサB2」の良い色とか出てこないうえに、出てきたらさすがのワシでもちょっと金に糸目はつけねばならん値段になっててマウスの滑りが悪くなる。フラットサイドクランクも金出せば買えるけど、使用を前提とすると杉にヒートン打ってるだけのようなバス仕様のものでは、なんぼ釣れるルアーだとしても強度面で不安が生じて使えない(ヒートンじゃないスタンフォードのは1つ買った)。なら作るかということになった。

 まずは古い「バルサB2」的なものをでっちあげよう。古いフロリダはウィンターヘブン工場時代のものが、塗装が薄くて軽くて良い動きをするという、その再現というのが目指すところ。要するに”パクり”である。もう本物のドミニカB2から型紙起こして作っていくので、なんの新規性もありゃしない。ワシ、あんまりデキのいいパチモノはいかがなモノか?と書くところであるけど、”塗装が薄くて”というのを再現すると、どうしてもデキは木目の残る、良い風にいえばギルモアとかの古いウッドルアーみたいな風合いともいえるけど、完成度低いちゃちいモノにしかならないので、これで稼ごうとしてるわけでもなく”私的複製”の範囲を出ないものでもあり、バグリー様におかれましてはなにとぞお目こぼしをお願いしたい。

 作り方は、一般的なバルサを2枚貼り合わせる方式で、貼り合わせる面の端をマジックで黒く塗ってるのは、両面テープで貼り合わせて削るときに中心線が分かりやすく、左右のバランスが整えやすいからである。まあ、現物横に置いてカッターナイフで大まかに削り出して、あとはサンドペーパーで成形していく。バルサは柔らかいので目の大きいサンドペーパーでガリガリやると簡単に削れていって形状を整えることができるけど、逆に削りすぎないように注意が必要なぐらい。

 で、ここからがワシ的に大事なところで、内部のリグをどう処理するかということころで、ラパラとかみてると針金長く折り返した部分が接着剤の樹脂で固めてあるだけのようで、でも本体のバルサぶちこわされてもフックが抜けてしまった経験はない。とはいえもうちょい強力なイナバ物置的な頑丈さが欲しい。過去やったことがあるのは、単純にねじってへワイヤーツイスト決めておく方式でこれだと強度的にはなんの心配もいらなくなるけど、ややコブができてしまいバルサ削ってちょうど収める溝掘るのが面倒くさくなる。丈夫なポリエチレンとかケブラーのスレッド巻いて強化はそこそこイケると思うけど、今回もっと単純かつ丈夫なリグにしてみた。だるまスリーブでかしめる方式。これだと作業も簡単だし強度的には本体ぶっ壊されようが何しようが、ラインとフックがもちさえすれば魚は揚がる。で、最重要項目が重量で、ドミニカB2はフック無しで12.4g。なのでそれよりちょい軽くなるぐらいのをとなると塗装前の部品全部で11.9gとした。 オモリはお腹のふくれたあたりに腹のフックぶら下げるリグの前後に入れた。これで、貼り合わせて接着。真ん中変に強力な接着力を誇るコニシのSU、周辺部は削りやすい粘度のある瞬間接着剤を使った。塗装で0.5g増えるかどうか?そこはやってみないと分からない。どのみちシングルフックで運用するので、動きは”軽く”なる方向にいくとは思う。全体的な重量の増減ではなく、塗装というまんべんなく重量が増える要素が良くないのなら、真ん中下方重心に重量がまとまっていれば良いのかなと考えるところ。まあ、そのへんはプロのルアーデザイナーが苦心するところで、素人は下手な考え休むに似たりで、とりあえず作って投げてみろだろう。

 リップは、0.8mmの基盤板を使った。リップの位置と角度と大きさはドミニカB2に準拠。基盤板はサーキットボードとも呼ばれるようだけど、要するにFRPの板で薄いので水切りが良く、動きに切れがでるんだとかなんとか。ドミニカ製になる前のバグリーから基盤リップのバルサBシリーズとかも出てたように記憶している。逆に一体成形の分厚い重いリップがダメかというと、重量で振り子のようにボディーを振り回す効果があるとかないとか、ホンマかいな?だけど、ヘドン「タイガー」の大きく分厚いリップを思い浮かべると、そういうこともあるのかなと思う。まあ今回の良く動くクランクベイトをという趣旨からいって、薄くて”切れのある動き”が期待できる基盤リップで良いだろう。

 で、基本構造ができたら塗装。今回薄くしあげるということで、黄色ペンキ1回、のときにキンラメ振り掛けして、目を入れてからウレタンコーティング1回。リップをエポキシ接着剤で取り付けて、銘を入れて完成。なんだけどこの工程が一番時間が掛かる。手間はドブンとペンキ缶にどぶ漬けにせよ、書き目にせよ、ウレタン筆塗りにせよたいしたことないんだけど、乾燥時間が掛かる。しっかり乾燥させておかないとコーティング時に目の塗料がたれたりしてイーッとなるので、充分干す。軒下で天日干し。カラーに凝り始めると使った色毎に乾燥時間が掛かってきていつまで経っても完成しないので、単純な色構成にしておくのが釣るためだけなら最適解。ちなみに銘は”P2”と入れた。バグリーをパクったので「パクリー2(P2)」と命名。

 これが、予想外に重くなってしまった。ハリ無しで13.5g。塗装だけで1.6gも増えるとは思わんかった。2回塗装でこれだと厚く塗装していくと確かに全体にオモリを分散して貼り付けるようなモノだろう。ドミニカB2のトロプルフックとリングが2セットで1.4g、P2に使用したシングルフックとリング2セットは14.7gは1.2gで、そこまで差がない。塗装って重いということを学習した。ということで単純に目方を小さく仕上げることには失敗。でも、塗装は薄いので、重量がオモリ入れたフロントフック周りに集中していて、動きは良いという可能性はあるので、試しに投げてみる。

 いつも使ってる根魚用のリーダー12号ナイロンの道具立てで投げてみるとドミニカB2と比較して、あんまり遜色ない良い動きしてる。っていうか浮力の強さに負けてる感じで挙動が不安定なのが、いわゆる”チドり”状態を産んでてこれはこれで悪くない。ただ、同クラスの大きさのラッキークラフトの「LC2.5」やその対抗馬的なストライクキング「KVD2.5」は浮力はそこまでないけど、動きが大きく激しい。そっちの動きを目指したつもりなのでちょっと意図した方向性とは違ってしまっている。まあ原因は重量が増えてってのもあるかもだけど、なにげにドミニカB2と比較するとちょっとデブであり、そのへんが全体的な重量増を越えて浮力の強さを生じさせている気がして、重量増あんま効いてない気もする。が、そんなもん正直よく分からんって話で天然素材であるバルサ製ルアーの宿命で”個体差”ってヤツかなとも思う。バルサB2自体、時代やロット、個体差によって重さ12g強から15gぐらいまであるらしく、なので当然動きも全然違ったりするらしい。そう考えるとタンクテスト済みとはいえ、ほぼハズレ個体がなく均質に近いラパラは偉大って話か。生産国がフィンランド本国からアイルランド、エストニアと変わっても品質が保たれているのは賞賛に値する。P2は、これはこれで使える弾としては上首尾だけど、激しく暴れるような動きを出したいという思いもこれあり、まあ再挑戦でややスリムに軽くを心がけて作ってみることにしてまたバルサ削り始めている。


 もういっちょは、浅場に突っ込んで来た良型根魚を想定して1.5mぐらい潜るフラットサイドクランクをという目論見。今回は特にパクリ元はないので、まあこんなもんだろっていう、いい加減な脳内のイメージで適当に形とか決めていく。極端な薄いボディーにはせず、P2作るのに使った15mmの厚さのバルサ1枚分のボディー厚でいく。2枚に割る方式ではなく、下部に溝を掘って骨組みとオモリを埋め込む方式なので、大まかに成形したら金鋸の方を固定して溝掘るボディーの方を持って前後させてギコギコと溝を掘る。掘れたらサンドペーパーで成形。

 リップはそれなりに潜らせたいので、ルアーのおでこの角度と平行ぐらいのやや浅い角度で、狭い扇状で大きめの、これまた基盤板を用意。そのままでは内部のワイヤーが邪魔で差し込めなくなるのでリップの根元の方に切り込みを入れておく。こういう細かい加工が金切りバサミで適当にデキてしまう割れにくさは基盤板の扱いやすいところ。ステンワイヤーのリグは当然P2同様にだるまスリーブでか締めてある。リップの大きさはニールズマスター「インビンシブル8DR」とかハルコ「ソーサラー」のような、リップにアイが付いてなくてリップの上に張り出すようにして本体先端にアイがあるタイプの潜りやすいルアーを参考にした。リップにアイを付けるとワイヤー貫通方式が技術的に難しく、差し込みリップに付いてるアイがフックぶら下げるアイと繋がってない方式では欲しい強度が得られないのでこういう形が妥当と考えた。リップの大きさと形状は適当で、嫌われる要素少なめのおとなしい動きが良いので、そこそこ動けばいいやなんだけど、試してみてダメなら調整する。

 悩ましいのが重さで、参考となるパクリ元がないので、同程度の大きさのクランクベイトのビッグO19g、タイガー11g、ちょい小さいポーエリート12gと参考にならんような数値を参考に、まあ15gぐらいになれば良いだろうと、塗装抜きで14gに設定して、腹の隙間を拡張してペンチで挟んで平たくしたオモリを突っ込み、半田で調整。動きキビキビしてなくても良いとはいえ、せっかくのバルサボディーなのでそれなりには動いて欲しいので、最初写真のようにしっぽの方までオモリ入れてたけど、なんとか腹の方に収めるように拡張工事で収めた。収めたら溝のへこみをバルサの削り端を瞬着で貼り付けて、細かいところはティッシュを貼って瞬着で固めてサンドペーパーで均して成形。

 で、コイツはペンキ2回、ウレタンコーティング2回のうち一回目にキンラメ振り掛け、とP2の倍の塗装を施す。その途中のペンキ2回の段階でスイムテストを近所でやっておく。テストしたところ思ったほど潜ってはいかなくて、シャロークランクのストライクキング「リトルS」よりは潜るけど、金属リップの割には潜らないストーム「ホットN」よりまだ潜らない感じ。まあ1mから1.5mの間ぐらい。上等か?その分動きが良い。オモリが前後に分散させる形になってるので、もっとおとなしくなるかと思ったけど、バルサの軽さ舐めたらアカンね。浮き上がりも早いし動きも狙ってたヌルヌルというよりは、キビキビまでいかないけどブリブリと元気に泳ぐ。これはこれで有りだと思うので。リップはこれで一発合格にした。あとはウレタンコーティングしてキンラメ振り掛けて仕上げのもいっちょウレタンコーティングの後リップをエポキシで固定して完成。重量は17g強と3gは塗装で重くなった。やっぱり塗装は重いと再認識。名は「Pフラット」とした。パクリじゃないけど、バグリー「Bフラット」とスタンフォード「Cフラットスペシャル」にオマージュを捧げてみた。

 という感じで、ルアー図鑑第95弾は、自作した2つのクランクベイトでいってみました。2つとも実弾として使えそうなモノに仕上がったので、紀伊半島南国化に伴い、近所の漁港の浅場に接岸した根魚や、シーバス釣ってるような川の下流域に突っ込んで来た良型のメッキやらフエダイ系やらを向こうにまわして、いつの日か武勲を立ててくれることを夢想している。願わくは、その強い引きや迫力ある質量でボディーをぶっ壊すような魚を、貫通ワイヤーのリグが功を奏して水揚げに成功する、ってな展開を期待したい。

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