2023年10月28日土曜日

食欲の秋、読書の秋、スピニング熱の秋ーパソコン椅子探偵ダイナミック釣り具編ー

 インスプールの「コメット」買っちゃいました。とはいえワシ人気の大森コメット買えるほど老後資金に余裕はないし、ぶっちゃけ天邪鬼なのでみんな知ってるようなリールにあんまり興味はない。大森コメットのこと知りたければTAKE先生にでも訊いてくれと。今回買ったのはダイナミック釣り具ブランドの「コメットNo.170」である。皆さんご存じないのではなかろうか?ワシも買うまでしらんかった。

 見た目なんということのない、古い国産インスプールにありがちといえばありがちな寸胴なくびれのない形状でちょっとオリムピックの「S79」とかも思い出させる。

 ワシ”スピニング熱”患者だけどスピニングリールだったらなんでも欲しがるクレクレタコラかというとそうでもなくて、実際使いたいリールとスピニングリールの歴史というか”文脈”を理解するためにパックリ割って中身見てみたいリールの他には、不当に安い値段がついている大森を救出するぐらいで、見境なく買うわけじゃない。特に今回のダイナミック「コメット」のような誰も知らんような機種は、後で売るにしても知名度が無ければ、人気も需要も無いので売りようがないので、買うのも金かからずヤ○オクで500円落札+930円送料というゴミスピ価格だったのでまあ被害額はたかが知れているけど、整備して売っても500円スタートで買い手がつけば御の字で、なにしろワシが出品してるときはワシが買わんので買い手がつかないことが想像に難くない。写真わざとピンぼけにしまくって「ダイ・・なんとかいうブランドの”コメット”ですインスプールで希少です」とか嘘ではないけど詐欺的な売り方で売れンだろうか?売れんだろうな。

 でも買ったった。なぜなら名前が「コメット」だからである。見た目からして大森ではない気はする、するんだけど名前が一緒というのは、工業製品においては無視できない程度には意味があって、登録商標とかの関係があって、他社の製品名を使うことは難しくて、逆に自社の古い製品の名前は自分ところで押さえているので再利用したりしがちである。実際に大森製作所の「コメット」といえばタックルオートのインスプール版のような皆様ごぞんじのモノがパッと頭に浮かぶだろうけど、実は大森コメットには古い機種が存在して、それは外蹴りアウトスプールの「フリッパー」のベールにラインローラーが付いてるような機種で名前は一緒だけどモノは全く違うのである。というぐらいに名前一緒でモノは全く違うけど製造元は一緒というのはけっこうある(例:ダイワ「スマック」旧はインスプールスピニング→新は船用小型両軸、リョービ「メタロイヤル」旧はスピニング→新はチヌ落とし込み用片軸)ので、ダイナミック「コメット」もひょっとしたら大森製かも?という感じで山っ気が出てしまい、どうせ開始価格で落札だろうとマウスが滑ってしまったのである。

 とはいえ、冒頭写真の下のほうに総発売元として「ダイナミック釣具株式会社」とあるので、大森製の線は薄いかなとは薄々感じてはいた。じゃあダイナミック釣り具株式会社ってなんぞ?って調べてみると、これがまたネットには情報があんまりない。唯一それっぽい情報が引っかかってきたのは、ダイワが初期に1ブランドとして主に海外向けで「ダイナミック釣具」の名前を使ってたという記述だけど、ダイワの社史とかウィキっても該当するような記述はなく、確かにダイワには昔両軸リールで「ダイナミック」シリーズとかもあったので、なくもなさそうだけど確固たる根拠まではたどりつけなかった。

 中身見たらなんかヒントがあるかもって思ったけど、こちらも特に製造元特定につながるような部分はみあたらず、パソコン椅子探偵またも敗北である。れいによって情報お持ちの方はタレコミよろしくです。

 とはいえ、せっかく我が家に来ていただきパックリ割ってみたので、その様子はご紹介しておきたい。

 外観から見ていくと、まずは本体なんだけど、パッと見の形状から、大森「マイクロセブンDX」みたいに、左巻き右巻き双方ラインナップに対応して本体のハンドルと反対側も外れそうな雰囲気なんだけど、これ蓋じゃなくて外れません。っていうことは左巻き機種のみの可能性が高く、国内向けじゃなさそうって気はしてきて海外向けブランド説を後押しする特徴ではある。あと、熊の手対策でベール反転レバーの下に棚が設けてあるのかなと思ったら、下じゃなくて上に棚があってこれはベールアームの”止め”になっている。っていうのはベールアームの形状からして独特だなと思うけど同様の方式をとってる例は確かに古いダイワにあったりする。でも、ダイワのその時代のはナットの頭がオレンジ色のポチになってて微妙に違う。ラインローラーは固定式でベールワイヤー含めてこれといって特徴は無い。

 ドラグが、バラしてみると上の写真の順番になってたけど、もしこれが純正の順番ならドラグが分かってない製造元ということになって、初期ダイワ説は補強されるところ。まあ初めっからドラグが分かってたのは大森製作所ぐらいで他の日本メーカーも似たようなもんだったけど、大森ではないという可能性は高くなる。これ、せめて上段の金属製ワッシャーの順番を、片耳付きを真ん中に持ってくれば、下段右から2つめの手裏剣型のバネをドラグパッドの位置に入れてもドラグとして機能はすると思うけど、このままだと一番下の赤い繊維質のドラグパッドはスプールとスプールに同期する片耳付きワッシャーに挟まれて一緒に回ってるだけでドラグパッドの仕事していない。ドラグパッドの仕事してるのは下段左から2枚目の1枚だけである。いっそ一番下のドラグパッドと片耳付きワッシャー省略で1階建てでも単純で良いかも。とはいえ3階建てが入る高さもあるし、ちょうど良いテフロンパッドがあったので手裏剣型バネにはバネとしての仕事だけしてもらうことにして、写真下のような構成に組み替えておいた。ちょっと厚さが不足してドラグが締まりきらないので、1枚百均フェルトにして、これで3階建ての上出来なドラグになった。

 でもって本体蓋をパカッとご開帳すると、ギアは真っ直ぐの傘歯車どうしのシンプルなベベルギア。ハンドル軸のギアは鉄系の芯を鋳込んだたぶん亜鉛。ローター軸のギアは真鍮のパイプに亜鉛っぽい歯車をCクリップ留めしてある。ギアは若干アルミかなという気がしないでもないやや白い色調。

 ボールベアリング無しだけど、ちゃんと本体のアルミで直受けではなくて、真鍮製のスリーブがハメ殺されていてそこは真面目な作りになっている。

 このあたりは特に特徴のない、この時代にありがちな設計といえる感じで製造元につながるような情報は特に得られなかった。

 ベベルギアを回す感触は、ミッチェル304系で味わってるけど、なかなかに悪くないのよね。90度回転方向を変えるというケッタイな糸巻き機であるスピニングリールにおいて、一番基本的なギア方式という感じがする。素直に力が伝わって、ちょっとザラつく巻き心地も「ギアが頑張って回転方向変えて力伝達してるな」というのが感じられて悪くないように思う。このリールも使ってみたら案外楽しめるかも。とはいえ実釣に持ち出す場合に、こういう人気もなければ弾数もない無名の機種は、スペアスプール確保はおろか、どっか故障した時点で交換する部品も手に入らず詰むので使いにくい。

 逆転防止のストッパーはちょっと特徴的で、逆転防止のレバーからつながる棒が、バネでギア裏に突き出るようになっていて、ギア裏に片側が絶壁の山が設けられていて、ストッパーをONにすると、ストパーレバーがカタカタと上下しつつ逆転にはストップがかかる。

 ストッパーレバーを捻ってOFFにすると、ギア裏に突き出していた棒が引っ込んで、逆転可能な状態になる。

 っていう、D・A・Mっぽい仕組みの逆転防止機構になっている。

 ドイツのダム社はリールの歴史をお勉強していくと、どうも日本じゃ知名度いまひとつな感じだけど、なかなかどうして世界中のリールに色々と影響与えているようで、ABUの2番煎じのベイトリール作ってたメーカー的な印象をもたれがちというか、ワシも正直そう思ってたけど、なかなかに鋭いメーカーだなと改めて思うところである。

 ただこの逆転レバー、ハメゴロされている感じで、捻ってみたり引っ張ってみたりしても外し方が分からんかったので、無理して壊すとそれこそ部品が手に入らないのでグリスまみれにするだけでソッ閉じしておきたい。

 ローター内部を見てみるとベール反転方式は、本体から突き出た円柱で反転レバー蹴っ飛ばして反転させるというありふれた方式なんだけど、イヤに目立つのがクソデカい回転バランス取る用のオモリ。

 回転バランスはおかげで取れているけど、こんな大きなオモリはどうなのよとリールの重さをあんまり気にしないワシでも思ってしまうわけで、ネジ留めされてるのを外して測ってみたら45g強って、ちょっと重すぎじゃなかろうか?

 組み上げた状態で約420gで、大きさの感じはカーディナルC4ぐらいなんだけど単純な設計なのに重め。まあこの時代は軽量化とか小うるせぇこと気にしてなかったのか?

 全バラしした感じはこんなもんで、部品数少なくて好ましい感じ。

 さて、全バラししたし、あとはパーツクリーナーで金属部品は洗浄して、グリスぶち込んで組み上げるか、ってなって予想外の問題発生。

 パーツクリーナ吹きかけて、歯ブラシでシュッシュと磨いてたら、ハンドルが付いてた本体蓋が、なんか汚れてるなとクリーナー液が濁るので不審に思ってたら、よく見たら、塗料が剥げてというか溶け出していて磨いてたところはアルミの地金が見えてきてしまっている。ナンジャこりゃ?

 ちなみに先に磨いてた脚付きの本体とローターはまったく問題なかった。パーツクリーナーが樹脂製部品に悪影響があるっていうのは聞いていたけど、塗装やられるとは想定外だった。ひょっとしてとおそるおそるスプールも磨いてみたら、あきらかに塗装が溶け始めて慌ててティッシュで拭いたのでスプールは被害免れたけど、本体蓋はすでに写真のような有り様で、ただでさえ買い手がつかなさそうな機種に見た目もボロいとなると致命的なので、どうにかせねばならなくなった。ワシ、塗装とか外観関係は苦手というかセンスがないというか、下手に触ると汚すに似たり、なのは自覚しているのでガックリ。

 とはいえこのまま放置するのも気分が悪い。いっそ全部塗装剥いでしまって「こういう仕様なんです」っていう体で行くか?とも思ったけど、耐腐食性が落ちるだろうしよろしくないなと、ならば仕方ない苦手の塗装に挑戦するか、まあ失敗しても良いからぐらいのつもりでコイツには悪いけど練習台になってもらおう。

 とりあえず、塗るにしてもなるべく色を合わせないと不自然になる。いっそここだけ思いっきり違う色にして「こういう仕様なんです」って顔をするというのも手だけど、蓋を違う色にすると、このリールのデザイン的に反対側の”なんちゃって蓋”の部分も色を揃えてやりたくなる。そうなると、このくすんだ鉛色に合うセンスの良い配色を選ばねばならず、そんなセンスがあったら苦労せんわい、ということで却下。まあくすんだ鉛色みたいな色をでっち上げるんだろうなという方針とした。

 基本は銀色のスプレーラッカーがあるので、それをベースにして茶色か黒を足して元の色に寄せていくっていう方法だろうと見当をつける。印刷屋さんマンガの「刷ったもんだ」読んでると、職人さんが色混ぜて出したい色に持っていく技術とか出てくるんだけど、もちろんワシそんな技術持ってない。でもやってみる。

 銀と黒は我が家にあったので、茶色のプラモ用の塗料を適当に買ってきて色々混ぜる量を変えたりして試してみたところ、茶色は赤茶系の錆っぽい色だったのでか、思ったよりも赤系の発色が出てしまって、ちょっと伝説の”アズキメタリックカラー”に近くなってしまい、茶色は極少なくして黒でくすんだ色調を合わせる感じで、ワシのセンスではこんなもんかなというところまで行ったんだけど、ベースにした銀色がつや消しなので、仕上がりもつや消しでいまいち本体と合わせると違和感が大きい。

 仕方ないのでツヤ出しに、透明な樹脂でコーティングすることにする。けど、いまエポキシもウレタンも接着剤はあるけど、コーティング剤は切らしている。どちらも基本使い切りなので、今回だけのために購入するのもためらわれる。ルアーとか貯めてたのはまとめてコーティングしてからまだ日が浅く、次使うまで日が空いてしまうと冷凍庫保存でもコーティング剤は固化してしまいがち。

 ならばと、新機軸だけどドールアイ作成とロッドのスレッド塗装に使った紫外線固化レジンを使ってみることにした。紫外線固化レジンは固化するタイミングは自由に調整できるので、塗ってしばらく放置して表面が滑らかになってから紫外線照射すれば、綺麗に均一な皮膜が得られるのではないかと思ったけど、そんな簡単にはいかんですね。しばらく放置して待ってると一部下の塗装がレジンをはじき始めたりして斑状になっていく。ダメだコリャとティッシュで拭き取ろうとしたら、以外に薄くて均一な感じになったので、理想的とはいかないまでも”ここで手を打とう”というとっさの判断で紫外線照射。次の日1日たまに方向変えながら日光浴させてガッチリ固めた。

 今はこれが精一杯

 まあ、最初はこんなもんでしょう。塗装とか外観を整えることができるようになると、ボロリールを売りさばく上では非常に役に立つので、ちょっとずつでも挑戦して上手くなるようにボチボチと場数踏んでいくことにしよう。道のりは遠くとも。

 という感じで、涼しくなって作業ブース(台所部屋の隅)も暑くもなく寒くもない季節になってきたので、夏場放置していたリールの整備を再開してみましたとさ。

 秋の良い季節のうちにゴリゴリ整備を進めて、年内は難しいにしても、この冬中ぐらいに、いま積んである29台ぐらいはカタをつけないと、使ってるリールも年1回ぐらいは全バラして整備したいし、放っておくと”スピニング熱”が一向に治癒しないこともあり、リールが積み上がっていくばかりなので、精力的に取り組む所存であります。お楽しみに。

4 件のコメント:

  1. ナマジさん、ご無沙汰しております。

     私もこの砲弾三枚おろし型ボディーでハンドルが後ろよりのタイプが、ネットで見るたびにどこ製か分からず気になっていたのですが、今回のレビューで少しすっきりしました。ありがとうございます。

     ねじ止めローターウエイト含む、角と段がスパッとハッキリしたフライヤーの造形がコストカット前ウォーム系、
    ベールプレートがおっしゃられる通りコストカット後の角型ボディーのダイワに特徴が一致してると思います。

    あとフランケンされてる可能性は消しきれませんが、ハンドル一式がダイワ製シアーズと同じものに見えます。
     色づかいやロディ―銘の機種などダイワ臭はありましたがなんか違う感じがしていたのが、今回の情報で一変しました。  

     ただ、こういう雰囲気の物に、ガルシアやハーターズ・片軸へドン・エクセル・ブランディーなどダイワではないと思える物と特徴を共有するグラデーションな機種もあり、オリムや杉田的なやつから香港製サウスベンドまで巻き込むぐちゃぐちゃ具合です。

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  2. レクエル堂さん こんばんは
     このあたりの古めのダイワ界隈ならレクエル堂さんの出番かなと期待してました。期待通りのナイスな情報!
     グチャグチャ方面はとりあえず脇にどけておいて、暫定的に「ダイワ製」ということにしておこうと思います。
     タレコミありがとうございました。

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  3.  ネット画像をグルグルしていると、ハンドル後ろ寄り三枚おろし形状の元ネタは56年フルーガーフリースピードで類似形状乱発の理由が分かりました。
    しかし日本製特徴オーバーラップのグラデーションを追えば迷宮なのは変わらず、70年時点だけで国内30数社あったことを思い出すと気がめげてしまいます。

     ダイワは今回のに限らずATLASやRodac、Continentalと疑惑のネーミングがたまにありますが、おまけとしてグルグル最中見つけたのが、稲村で7250RLの同型機か、その名も!

    「RODDY CONVERTIBLE MICRO 2200」

    これは確信犯、
    減速往復・両ハン・重厚で大森MICRO7 DX/2200とは正反対の路線ですが、そこまで意識してたんですね。

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    1.  今フルーガーフリースピード画像見てきました。
       コレが元ネタか!と納得です。ダイナミック「コメット」は逆転防止まできっちりパクってますね。フルーガーってわりと早くに衰退してシェイクスピアに吸収されたのでスピニングの印象はやや薄いけど、ペリカンとか独創的なのも開発してたぐらいで、皆が真似する先進的なメーカーだったんでしょうね。
       しかし、「2200」とは稲村もなかなかやるなぁ。
       釣り具業界、今も昔もでパクリは伝統芸能なのかもですね。

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