最初っからスプールを乗っける台座の上には真鍮で太らせたドラグ部を受ける部品が乗っていて、かつスプールの方にも真鍮スリーブが入っててアルミ直受けではないっていうところが、栴檀は双葉より芳しな感じである。
でドラグなんだけど、ドラグノブにはバネが入っていてそれなりに調整幅も出ている。700では3階建てではなくて1階建ての単純なドラグ構成になっているけど、そこそこの効き具合と滑らかさで存外悪くない。ドラグパッドは704にも使われていた、樹脂に繊維を混ぜて固めたような謎素材なんだけど、意外に重要なのはスプール裏面と座面に入ってるワッシャーだと思う。今時のリールなら3階建てのドラグの仕事を邪魔しないように直径小さめで滑りの良いテフロンのワッシャー入れてるかアホみたいにベアリング入れてるかだろうけど、当然ながらドラグ全体の”効き”としてはこのスプールの下のパッド等の摩擦力って含まれてきて、昔の日本製リールにここに摩擦力の大きなファイバーワッシャーが入ってるのは、ギッチリ締まらないとクレームが来るような“投げ釣り”偏重の我が国釣り具市場の要望にあわせて全体として締まりを良くしていたんじゃないかと思っている。でもって、この700のスプール座面には上の写真でも分かるように結構大きめの直径のが入っててスプール裏側にもそれを受ける面を設けてある。ちなみに材質は皮。スプール座面のワッシャーの直径を大きくしてドラグとして機能させるのは後の9500ssにも繫がるようなそうでもないような。ともかく単純な設計ながら割と良い塩梅のドラグになってるのはさすがPENN、”さすペン”という感じ。
本体蓋パカッと開けると、まあここはもう700番台インスプールではお馴染みのステン芯真鍮のハンドル軸ギアにステンのローター軸ギア、単純クランク方式にハンドル軸ギアの裏にラチェットがあって、そこに掛ける逆転防止機構。以前の持ち主は良く分かってらっしゃった感じでグリスグッチャリ。とここまではいいんだけど、ちょっと危なかったのがグリーニーな塗装。ちょっといつもと塗料が違う感じなので念のためと、パーツクリーナーかけるまえにスプール裏面を試しにとティッシュにパーツクリーナー液付けて拭いてみたら、写真の様に塗料溶けてきやがる。ダイナミックで失敗しておいて良かった。ダイワの作ったパチモンとではさすがにワシの中での重要性は月とすっぽんである。ということで今回グリーニーな本体やらスプールやらはパーツクリーナーではなくCRC666ぶっかけてティッシュで拭き拭きして古いグリスとかをぬぐい落として作業を進めた。
でもって、700の写真とか見る度にローターが下の方だけグリーニーカラーじゃなくて金属剥き出しなのはなんでじゃろ?と疑問に思っていた。海外オークションサイトとかで見てると、同じ色で下まで塗られている個体とかもあるので、初期の頃はアルミ鋳造一体成形では強度が出せないので、下部だけステンとかの丈夫なのにして継いでるとかか?と想像していた。704のローターにこれでもかというぐらい梁が入れられて強化されているのを見てその思いは強まってたんだけど、バラしてみたら大ハズれ。なんのことはないローターが円筒形で、色の違う下のカップ部はボールベアリングとローター軸のギアを押さえているリングと一体のもので、ついでにこのカップを本体に止めているネジの一つが大きく凸ってて、ベール反転レバーの蹴飛ばしを兼ねている。初めて見る面白い設計。ちなみにベール反転機構はベールアームと反対側に入ってて重量分散されてるのは後のスピンフィッシャーに引き継がれていく方式。多分だけど後の時代の700には704みたいにカップまで一体成形のもあったんだと思う。
ちょっと重めの質感からいってタングステンかなと思うんだけど、横から見るとなんかスリーブを填め込んだような段差が見て取れて、そのへんも謎なんだけどまあわからんもんはわからんわい。
ちょっと小ネタで面白かったのが、このリール、ボールベアリング一個使ってて、片面シールのステンレス製なんだけど「Maid in USA」でこの手の細かいボールベアリングって北欧やアジアあたりで作ってたんだと思ってたけど、米国製のもあったのね。って意外だった。でも今ググったらミニチュアベアリングの世界シェアは一位ミネベア(日本)、二位SKF(スウェーデン)、三位RBC(米国)と米国製ワシが知らんだけだった模様、そら工業国だしあたりまえか。そのわりにリールに入ってるのみかけんけど無印のは米国製だったりするんだろうか?米国製は誇らしく「Maid in USA」って入れるよね?
ベールアームのブチ当たるところのストッパーが、キノコ型のゴムをバネで補強したような代物なんだけど、残念ながら経年劣化か割れ始めている。ぶっといナイロンショックリーダーと適当なスリーブとかで新しくこさえても良いんだけど、このリールは使用の予定はなく、なるべく元の状態を維持したい。仕方ないのでセメダインスーパーXで固めておくんだけど、右の写真なにやってるのかというと接着面を圧着するのに輪ゴムを使ったんだけど、輪ゴムそのまま使うと当然はみ出した接着剤で輪ゴムもくっついてしまう。なのでスーパーXの取説読んで接着できない素材となっているポリエチレンの袋の切れっ端をはさんで固定して接着。という接着剤の使い方の細かい技です。接着剤を使う時、そいつが何と何をくっつけるのかを知ってるべきなのは当然として、何と何がくっつけられないのかを知ってると意外に応用が効きます。
てな感じで、独特だけど単純な設計でサクサク分解終了でCRCかけて拭き拭き、金属部品はパーツクリーナーでピカピカに、仕上げはいつものようにグリスグッチャリであと50年は良い状態で保存可能かなとおもっちょります。
使って使えないリールではなく、実釣能力は充分あると思うけど、使わず保管という選択になったのは、一つには歴史的な資料価値のある1台だと思うっていうのと、もう一つにはぶっちゃけ704と使い分けどころがないのと違うか?っていうところ。
700の糸巻き量は250y/20lbで番手的に704より小さいんだと思ってたけど704zが前回も書いたけど235y/20lb(ついでに6500ssが220y/20lb)とやや700のほうが大きいぐらいで、700番台については下二桁が10以上のが700より小型、一桁が大型と思ってたけどどうも違うようである。一番下の写真見れば分かるように700、740,6500ssはだいたいサイズ感一緒である。
てなことや、設計が704に比べると詰め切ってない感じ、発売年が他の700番台より先ということを考えると、700は先行試作版的な意味もある、エヴァンゲリオンでいうところの零号機で、704やら714の改良が加えられたグリーニーな後発機がある意味完成形の初号機、Zの時代が我々がスピンフッシャーと聞いて想像する黒金になった本物のスピンフィッシャーで2号機、3桁が色目的には黒だけどちょい縁起悪いなな3号機、4桁が米国で(人気)爆発した4号機ってところか?例えると余計わけ分からんけど、とにかく700はPENNらしい海を想定した大型機の系譜の始祖にして、基本的な構造は整ったものの、ドラグやラインローラー、ローター形状等に改良の余地のあるプロトタイプ的な機種だったんだろうなと思いましたとさ。最初の機種がこの大きさってところが”さすぺン”。
スピンフィッシャーは最初からスピンフィッシャーそのものだったけど、歴史を見ていくと、何度も書くけど少しずつ改良を加えられて進化していったんだなと、改めてその長い歴史に敬意を抱くところである。
ベイルストッパーのバンパーが
返信削除樹脂だと時間経過すると割れるから
交換前提の設計になってるのはいいけど
もう手に入れるの難しいですからね
ミッチェルも411初期モデルは割れてました。
もう手に入らないからビニールテープ積層して代用品作ってます
初代700にまで手を出してたんですね
イタリアのザンギ系参考にしたらしいですけど
塩害対策でPENNらしい味付けになってちょいちょい手を入れて熟成させてますね
整備性はザンギ系の問題は完全に払拭、
YouTubeにはグリス石化した酷い状態の700を僅かな時間で復活させてる動画があります。
バンパー自作は古いスピニング使おうとすると逃れられないですよね。ビニールテープ積層はある意味SDプリンターっぽいですね。面白い発想。
削除イタリア系はアルチェード2Cぐらいしかいじってないですが、たしかに整備性はイマイチで開放型らしいベアリングにたどり着く前に、小ねじが外しにくくて断念しました。スピンフィッシャーは700から既に整備性はバッチリです。
ラインローラーの素材ですが、この頃には既に共産圏にもセラミックはありますし
削除工場の所在地フィラデルフィアは大型の軍艦も作ってた街ですから
そういう素材仕入れるのも造作もない事です。
意外と古くからあるもんなんですね。確かに見た目は酸化アルミ系のセラミックっぽくはあります。割るわけにいかんので分からんところではあります。
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