2023年8月19日土曜日

失われたアジを求めて-ナマジのビンボメシ豆アジミキサー編-

 豆アジの酢締めにさすがにちょっと飽きてきた。

 豆アジ料理において”必勝パターン”だった、揚げ物からの南蛮漬けの流れは、健康診断でお医者さんにコレステロール値が高いので揚げ物控えるように指導を受けて、お客さん来るときとかを除いて封印、新必勝パターンとしてはちょっと”背ゴシ”で食って残りは酢締めというものになった。とはいえ5月後半から2ヶ月以上食い続けてると飽きてきたことは否めない。飽きて「また今日も豆アジ酢締めかよ」と思ったとしても、食い始めると旨い旨い!と食ってしまうにしてもだ。

 ということで、新たな豆アジ料理のレパートリーを増やさねばと知恵を絞ってみた。煮付けとか塩焼きは豆アジだとイマイチで骨が中途半端に気になって外すのは面倒臭いけどそのまま食うにはジャマ。そう考えると揚げるのも酢に漬けるのも、骨ごといくには理にかなってる。高温や酸で骨を気にならない程度に柔らかくしてしまってるわけだけど、その他になにか骨対策はないのだろうか?ちなみに豆アジ釣ってくると100匹とか料理することになるので3枚おろしするような料理法は無理。揚げるときは胸ビレのあたりに爪立ててムシッとむしると鰓と腸が取れるのでその後調理、酢締めの時は後頭部にハサミ入れておいて頭をむしると腸ごと取れるので、100匹下処理しても30分かかるかどうかである。

 頭取って骨ごとザクザク切って酢をかけて”背ゴシ”は旨いんだけど、2,3日持たせるような保存性がまるでないので、沢山釣ってきてまとめて料理するには向いていない。背ゴシから包丁2本でチタタプして”ナメロウ”状態にしてしまえば、ハンバーグ風とかに火を通して保存食化も可能だけど、100匹からの量を毎回一人でチタタプするのも手間食いすぎだよなと思ってたけど、現時点のワシにとってそれは全然手間じゃないということにハタッと気がついた。

 ワシ、そういえばアジの頭粉砕してコマセ原料にするためにミキサー(フードプロセッサー)買ったやんけ!アレ使えば酢締めの時みたいに頭と腹だけ取ってチョッパーモードのミキサーにぶち込んでギュィーンと回してやればいいだけやン。と気がついた。デカいエソを釣ってすり身汁というのは密かに狙ってたけど、豆アジでやっても絶対旨いはず。

 ということで早速やってみた。

 最初の写真なにやってるのかというと、水を入れて凍らせたペットボトルで流しを冷やしているのである。豆アジの時期は夏なのでというのもあるけど、小さい魚って温まってしまいやすく、それはほぼ痛みやすいことと同義である。なので、釣ってこれまたペットボトルの氷で冷やした海水の入ったバケツにぶち込んで”水冷式”でさっさと魚の温度を下げてしまったら、保存から料理までなるべく温度を上げないことに留意する。どこか途中で一回温度が上がるとその後再度下げたとしても、上がるときと下がるときの往復の時間高い温度にさらされることになり、鮮度低下の早い青魚とかでは、せっかくの産直トレトレのはずの魚がグズグズになってしまいかねない。なので神経質にも、流しに魚をぶちまける前に流し自体を冷やしているのである。

 で、下処理としては頭とハラワタを取っていくんだけど、今のところハサミが一番手早く作業できる。このときもなるべく触らないように、冷えた流しの上を滑らせつつハサミを入れたら魚を保冷剤のある方に移動させていく。ハサミ入れるのは切れ目が入ったら背骨まで突っ込んでパチンと切る感じで、あんまり大きく切りすぎると今度は腸が頭と一緒に取れてこなくなるので、良い塩梅、最小限のハサミの入れ方を手におぼえさせる必要がある。

 最後、後頭部の切れ込みに親指突っ込むようにしてむしると頭に胸ビレと腸がくっついて取れる。取れたら保冷剤やらペット氷の上に積んでいく。このとき手で握らざるを得ないんだけど、なるべく握ってる時間が少なくて済むようにと試行錯誤した結果、今のところ2匹掴んで連続でむしるのが早い。ってな感じでとにかく原材料があったまらないように時短を意識して、今回80匹だったけどそのぐらいは30分掛からないぐらいで終えたいところ。

 でもって、下処理が終わったら間髪入れずにミキサーにかける。今回80匹一気にはできそうになかったので、半分づつギュイーンとやってみた。

 スリ身に添加が必須なものはなにかお分かりだろうか?今回できるだけ素の豆アジスリ身の実力を知りたかったので、それ以外は入れていない。

 まあこのブログ読んでくれてるような玄人衆にはいまさら説明するまでもないかもだけど、塩である。

 すり身と言って想像する製品「カマボコ」だの「竹輪」だのの弾力は、塩が魚肉のタンパク質(アクトミオシン等)を溶かしだして熱でゲル状に固めることで生じるので、塩の添加は必須。

 ただ、魚の種類によって弾力が出やすい魚、エソ系やらスリ身の大正義スケトウダラやらもあれば、弾力でず元々まとまりにくい魚種もあったり、そういう魚種ならいざ知らず、鮮度が良くなくてアクトミオシン等が少なくなってるのをつなぎの澱粉添加やらでごまかした”粉っぽい”製品もあったりする。マアジはそれほど弾力性出ない印象だけどどんなもんだろう。一回目はジップロックに入れて冷凍保存。冷凍後の品質の変化も見ておきたい。”冷凍スリ身保存”は、それこそ鮮度落ちが早すぎてまともな売り物にならなかったスケトウダラが、一躍重要魚種に躍り出た北海道水試開発の”船上凍結すり身”が水産加工流通に革命を起こしたぐらいに有用な技術なので、豆アジスリ身が冷凍で品質落ちなければ非常に使えるので大いに期待。

 で二回目は一回目回したときに、頭と腸をミキサーにかけるのと違って身と皮と骨をミキサーに掛けるのはエラい粘りが強くて、ミキサーちょっとうなり始めるぐらいだったので、塩に加えて酒(焼酎甲類)をちょっと加えてゆるめてみた。で2回目はすぐにすり身汁にぶち込むつもりでいたんだけど、そういえば塩加減テキトーで全体に回りゃいいやぐらいでまったく味見してなかったので、塩気足らなかったら足そうかなとスリ身の状態で味見してみた。当然刺身にできる鮮度の魚なのでスリ身食っても食品衛生的には全く問題無い。

 塩味はちょうど良かった。どころの騒ぎではない。この状態で滅茶苦茶旨いんでやがる。

 ワシ高校出るまで実家暮らしで、とーちゃんカーチャン2艘曳き状態で共働きだったんだけど、食事はバーちゃんが作ってくれていた。そんなバーちゃんに生きている間に作り方教えてもらっとけば良かったと悔やんでる魚料理がいくつかあって、そのうちの一つに、なんか叩いたアジとかイワシとかに生姜すり下ろして酢をかけて食べているのがあって、当時育ち盛り肉食系男子だったナマジ君には旨そうに見えなかったので食べなかったけど、後年あれは旨かったんだろうなと思って、再現してみようと背ゴシの延長かなとアジを細かくチタタプして生姜と酢で食べたけど、塩が足りなかった気もするし、頭も入れた雑味がキツすぎたようにも思うけど今一ピンとこなかった。でも、たぶん正解はこれだ!頭とハラワタ抜きで骨ごとスリ身状態の魚に塩が入ってる”塩味ナメロウ”的なモノに生姜と酢で劇的に味が決まった。

 塩は魚のスリ身から弾力の元になるようなタンパク質を抽出し溶かしだす、と同時に当然旨味の元になるアミノ酸やらも抽出し溶かしだしているのだろう。マアジは味の良い魚で通ってるけど、その味が身の中に隠れてるんじゃなく染み出してきてしまって口の中に広がっていく感じといえば、多少は伝わるだろうか?料理の味と女性について書ければ物書きとして一人前だそうだけど、ワシの筆致では書き切れそうに思えない。でもあえて、一言で分かりやすく書こうとするならコレは”人間用のチャオチュール”である。これで少なくとも猫ッ飼いの人には伝わっていると嬉しい。

 思わぬ大収穫という感じだが、すり身汁も当然のように旨かった。サンマスリ身のようにボロボロと崩れるならつなぎに卵白とか入れた方がイイかなと思ってたけど、思いのほかしっかりとまとまって弾力もあり、つなぎは不要な気がする。スリ身の味付けに味噌入れたり、ネギ入れたりで変化つけてもまったく問題無さそうな感じ。ワシ、ちょっと骨が残ってるくらいの粗挽きが好きだけど、たぶんミキサーしつこく回してやれば気にならなくなる程度に骨も粉砕できるはず。すり身汁でこれだけイケるのなら、豆アジハンバーグ的な焼き物とかも充分イケそう。

 これで冷凍スリ身がイケるようなら完璧である。

 冷凍したスリ身を調理するときは、包丁が入る程度にちょっとだけ解凍してやって、ザクザクとサイコロ切りにしてグツグツ煮えてる鍋に投入でOK。へたに完全に解凍してしまうと自己消化とか始まって鮮度が落ちる方向に行くので凍ったままぶち込むぐらいの感じで良い。そうすると期待したとおり、弾力もしっかり出てまとまりも良く味も良く、合格という感じに仕上がった。

 ミキサーって以前も書いたかもだけど結婚式の引き出物とかにもらって、最初珍しくて使うけどすぐ飽きて、物置に放置されがちだと思うけど、料理に使うと意外に捗ります。って調理器具だから当たり前か?

 基本我が家ではコマセ用のマアジの頭と腸をミンチにする仕事を任せていて、もう包丁2本でチタタプには戻れないぐらい重宝しているんだけど、料理につかうとまたこれが良い仕事してくれました。

 ご自宅の物置に放置されたミキサー、フードプロセッサーの類いがございましたら、刺身にできる鮮度のアジとかで塩入れてスリ身作って”人間用チャオチュール”の美味を是非味わってみてください。アジはなにやっても旨いって話ではありますが、これはなかなか衝撃的に美味しいと思います。お薦めします。

4 件のコメント:

  1. 私もサバで似たような事やって
    美味いからついつい何匹も食べてしまい、腹が出たのを自覚するに至りましたwww
    頭とか骨の活用、面白いですね
    サバでも出来る筈なのでやってみようと思います

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    1. サバもなにやっても旨いですよね。
      今年は仔サバが湧かず寂しい限り。

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    2. メッキ好調みたいですが、ロウニンメッキで同じ手は
      骨が硬すぎて使えないように見えますがどうでしょうか?

      サバで同じ事やれば美味しいのは保証されると思ってますが

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    3.  ロウニンメッキはおろかアジが育って小アジサイズになってきて、すでに中骨がちょっと気になるようになってきました。その分刺身とかにしやすくなってるので、なんだったら3枚に下ろしてからミキサーでも良いかなと思ってます。

       新鮮なサバなら間違いないかと思います。粉砕すればアニサキスもさすがに生きてはおられず大丈夫でしょうし良いかもです。

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