2017年6月18日日曜日
鉛よさらば
鉛という金属は何かと便利である。ある程度柔らかく融点が低いので、電化製品の基盤とか溶接に使うハンダに使われたり、昔は割れにくい柔らかさから水道管にも使われていた。
釣りの世界ではその「重金属」とも分類される比重の大きさ、つまり「重い」という性質から仕掛けを沈めるオモリとして好適で、オモリという意味で「ナマリ」と使うぐらいに利用されてきた。融点が低く加工が楽で様々な形に成型可能、柔らかく板オモリのような使い方もできる。
そのうえ、鉛は貴金属ではなく割とありふれた金属で値段も安いので、釣りに限らず様々な分野で利用されているところ。
ところが、この鉛には毒性がある。水道管に使われていたぐらいで、表面がすぐ黒ずんで酸化皮膜に覆われて水に対しては安定していて普通健康被害が出るほど溶け出したりしない。
ただ、鉛には毒性とともに蓄積性もあるようで、普段の食事から摂取される量の鉛ぐらいなら尿とかで排出されるようだけど、削れた砕片などが口から取り込まれるとか、排出が追いつかない量になると体内に蓄積され中毒を起こし様々な健康障害を起こすようだ。
ということで現在では、水道管も塩ビ管に置換されていっている。
釣りの世界で、鉛のオモリを使うことが問題視されるようになってきたのはここ、10年来ぐらいであろうか。
その論拠は主に、散弾銃の弾の鉛と併せて、池とかにばらまかれた鉛玉を、水鳥が餌をすりつぶすために砂嚢に貯める砂利などと一緒に飲み込んでしまい鉛中毒を起こして衰弱し死んでしまう、ということを防ごうという趣旨からのものだと理解していた。
中には、海の中に鉛のオモリを残してくると、その周りに貝も海藻もいっさい生物が付かなくなる。海で鉛のオモリを使ってはいけない、と主張する意見もあり。鉛ごときで付着生物が防止できるのなら船低塗料に毒性の強い有機スズとか使う必要なんてなかったわけで、なにを言ってるんだ?という気がする眉唾な話だと思う。鉛はダイオキシンやらPCBとは違ってもともと天然に存在し、まあぶっちゃけ海水中にもそれなりに溶けている。
ということで、鳥の口に入りそうなサイズのオモリを鉛から、スズだのタングステンだの鉄だののものに置き換えていけばいいやと思っていた。
なので、ヘラ釣りを始めるにあたって、オモリは鉛の板オモリを使うことが常識となっていたが、スズ製のオモリで何とかならないかと考えて、最初は市販のスズ製ガンダマを使おうと考えていたのだけど、微調整がきかないので困ってしまい何かないかと調べていたら、「鉛フリー」のスズ主体のハンダが売っていることがわかり、これの直径1ミリのと0.6ミリのを買って、仕掛け用パイプに巻き付けることで微調整も可能な「鉛非使用」のヘラ用のオモリとすることができた。上の写真のような感じである。
調整幅も自由自在でちぎったり追加したりも爪でできるぐらいで簡単。仕掛けが絡んだり回転したりもなく不具合なく使えている。
機能性やらをいい始めたら、もっと高性能なオモリ周りの工夫もあるかもだが、環境影響をふまえた評価をすれば、現時点で最も進歩した最先端のヘラ釣り用オモリになっているという密かな自信がある。
スズは鉛より比重が小さいので沈降速度が遅くなる可能性はあるが「ゆるふわヘラ道」ではそんな細かいことは気にしないし、気にする人はヘラ用のタングステンシンカーは市販されているので、それと組み合わせて使ってみてはどうだろうか。高比重のタングステンシンカーでストンと沈めつつ重さの微調整はスズハンダでってやれば完璧かと。
ついでに、ハゼ用の中通しシンカーとかもスズハンダをパイプに巻いて作ってみたりと、スズハンダを使ったオモリのバリエーションを考えていて、ふと「なんで「鉛フリー」を謳うハンダなんか売ってるんだろう?」と疑問が浮かんだ、鉛主体のハンダを使っていると、鉛の削りくずとかができて、それを吸い込んだりして人間に健康被害が生じるからかな?とかボヤッと思っていたが、今時そのぐらいはネットでサクサクッと調べられるので調べてみた。
欧州基準では、既にハンダは「鉛不使用」が原則になっているらしい。
電化製品の基盤やらに含まれる鉛ハンダは最終的には埋め立て処分される。それで昔は問題がなかったのだが、近年欧州で問題になっている酸性雨が最終処分場の埋め立てられた鉛を溶かし、地下水や河川を鉛で汚染するという状況が生じており、生態系への影響やひいては人間への健康被害を防ぐため喫緊の課題として「鉛不使用」が進められていて、欧州へ家電製品とか輸出するためには、鉛不使用でないといけないらしい。
というわけで、日本でも普通に「鉛フリー」表示のハンダが売っている。
日本ではまだ酸性雨の被害は顕著になっていないので、問題としては表に出てきていないけど、地球規模で起こっている環境問題なので明日は我が身というつもりでいた方がいいように思う。
オモリを始め、鉛を使った釣り具は可能な限り、スズやタングステン、鉄などを使ったものに置き換えていくべき時期にきたのかもしれない。狩猟の世界では既に北海道で鉛の散弾が禁止となっている。釣り人も続くべきだろう。
アメリカの通販では鉄製シンカーとか豊富な種類がそろっていて、かの国のこういうところでは真面目な姿勢がうかがえる。
日本でもバス用のシンカーなら高比重でストンと沈められる高性能なタングステンシンカーが種類豊富に出ている。
非鉛素材のオモリのメーカーとしては「フジワラ」というところが、鉄製の海用の大型オモリから、スズ製のガンダマやワカサギシンカーとかも作っていて、是非ガンダマとかはここのスズガンダマを買ってあげて欲しい。テナガ釣りとかに私も愛用している。
という感じで、ナマリ不使用の動きはすでに釣り具業界でも始まっているので、利用できるところから利用していってはどうだろうか?とすべての釣り人に押しつけてみたい。
とりあえず私も各種オモリに加え自作のルアーのオモリはスズハンダ使うことにして、新作の「お手元ルアー改環境対応型」とかも作ってみている。
魚釣りなんて、魚がいなければできない遊びだから、しょうもない目先の釣果のことばかりを考えていないで、たまには釣り場を含めた環境のことも考えるべきだろう。
環境に配慮した釣り具で、私が推薦しまくっていた「生分解性ショックリーダー」は、全く流行らなかった。今はどこからも出ていない。
多少太くて伸びるぐらいの性能の悪さぐらい、我慢して使えよ、そこをカバーして釣るのが、上手いつり人ってもんだろうがよ!と思うのだが、世の多くの釣り人はちょっとでも細くて強くとか、低伸度で感度良くとか、正直ショックリーダーにはあんまり必要ないことにこだわっていて、本当に大事な釣り場のためになる性能を評価しなかった。
とても残念なことだ。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
子供や孫の世代にも良い環境で釣りを楽しんで欲しいので、自分も最近は鉛は使わないようにしたいと思うようになりました。ハンダは良いアイデアですね、真似させていただきます。
返信削除真似してくれる人がいることは嬉しいです。
削除固めの仕掛け用パイプに巻いて、前後をウキ止めゴムで止める方法を多用してます。中通しオモリのように使えて再利用可能です。