2020年5月10日日曜日

退場方針


 人間なんて弱い生き物である。なんか外部に蓄積した情報やらをもとに文明やら文化やらを構築しエラそうにしたところで、生物としては「コイツホントに生物っていえるのか?」って疑問に思うぐらいの、鞘(エンペロープ)に核酸(DNAかRNA)と酵素がちょろっと入ってるぐらいのウイルスに、世界規模で経済活動をズタズタにされ、そしてワシは顔面の右上部を四谷怪談かガマガエルかってぐらいにボコボコの痘痕づらにされて、痛さに泣きが入っている。
 ナニが万物の霊長じゃ、生物単体としてはウイルスのような人類史始まって以来の”天敵”はおろか、戦闘能力考えると猫ぐらいの小型動物ならギリ勝てるカモだけど、大型犬ぐらいからは普通勝てない。
 高校の同級生で漁師町出身でケンカ超強い友人がいたんだけど、彼でも中型の野犬に襲われたとき、噛みつこうとくり出してくるアゴを必死の後退で避けながら、そのアゴめがけて左右のフック連打でなんとかしのぎきって相手の戦意喪失で難を逃れたけど、もうチョットデカいか群れで来られたらヤバかったと言ってて、ワシなら尻まくって逃げたところを後ろから襲われてやられてたのは明白で犬とコイツにはケンカ売らんでおこうと思ったモノである。

 今回ワシがやられているのは、3つあるらしいヘルペスウイルスの一つ水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスってやつで、一般的には水疱瘡(みずぼうそう)の原因ウイルスとしてしられていて、ワシも今回それが帯状疱疹を引き起こす原因だというのは初めて知った。
 この新型コロナウイルス感染症が猛威を振るってる中、ウイルス拾ってくるって防疫体制がなっとらんとお叱り受けそうだけどちゃうンです。これ、日本人だとだいたい九割方持ってるらしくって、一回目の発症では水疱瘡を引き起こして、ソレが収まっても神経のところに潜伏するらしく、ストレスやら疲労やらで免疫力が弱まるとやおら出てきて帯状疱疹を発症させるというウイルスのようで、ヘルペスっていうと悪い遊びをしてもらってくる性器ヘルペスが一番知られているけど、そういうもらってくる病気じゃなくて潜在的に持ってるウイルスに隙を突かれて押さえ込めなくなって発症するもののようである。

 ストレスと疲労には思い当たる節はある。頼りにしていた漁場は釣り自粛の看板が立ち、自転車であちこち走り回ってなんとか新しい釣りものを開拓するのは楽しいけど労力はかかって疲れる。シーバスとチヌがもう一つなのもストレスだしムキになってあまりやらない早朝の釣りとかで睡眠周期も崩れて、帯状疱疹が出始めた5月5日の数日前からドロッとした疲れが抜けてない感触はあった。
 そういう肉体的な疲労に加え、ネットニュースの見出しだけ見ていてもウンザリする「自粛警察」の横暴とか、すでに”正義を御旗”にっていう行動ですらなくて、たんなるインネンつけての私刑でしかなくなっていて、胸くそ悪く息苦しくなるようなストレスは確実に感じていた。こういう非常時にこそ人の本性って出るんだろうけど、なんとクソ野郎の多いことか。まあ、ぜんぜん自粛してない空気読めないワシもクソ野郎なのかもしれないけどな。
 ようするに、自粛自粛うるっせぇから、ジーサン年甲斐もなくムキになって、人にかける迷惑は少なめに抑えつつも、自粛なんてしてやんねェぜ、おれは疫病流行の中でも楽しく釣りすることを諦めないぜ、っていうのを体現したくてちょっと世間の流れに逆らって頑張り過ぎてしまったというところだろう。
 バカはいいよね、自分の価値観が絶対でソレを他人に押しつけて平然としていられるんだから。オラ下手に気が小さくてバカとしても小物なので他人様が言うことの逆張りするには、エラい神経使うし、この行為は自分的に許されるのか?整理できるのか?とか面倒くせえ自問自答を繰り返すことになって、ストレスかかりまくりだっての。

 もう少し加減して健康に留意してやるべきだったという反省やら後悔やらがないわけじゃないけど、少なくとも頑張りすぎたってことは努力が足りなかったことはなかったようで、それならいいやぐらいに思っている。なかなかちょうどいい努力量で物事を進めるなんていうのは難しく、いつも「まだ努力が足りないんじゃないか?」と不安に思うので、体が悲鳴を上げて医者からおとなしくしておけとお墨付きを得て休みが取れるというのは、ある意味心安らかである。努力に関して不足はなかったということに歪な満足感を感じている。
 奇しくも先日書いたように、健康を多少損ねても釣りにおいて得たいモノがあって、そのために限界まで努力しておきたいんだけど、それはできていたようだと思う。もっと効率よい健康を損なわない理想的な努力の方法を模索する必要はあるんだろうけど、バカなのでそんな小難しいことはできないというのはうすうす知ってるので、とにかく倒れるまで走って、倒れたら休憩、休憩終わったらまた走るっていう非効率で愚かな方法しかようせん気がしている。
 努力すれば欲しいものが得られるかっていえばまた別の話で、そんな甘い話じゃないんだけど、努力もせずに何かが得られるわけもなく、努力なんてのは賭場に払うショバ代みたいなもんで、それを支払わなければ博打を張ることさえできない前提条件だと思っている。努力をしても才能やらがなければ無駄とかいう意見を目にする度に、賭場にも立たずに勝負に勝てるわきゃないだろうバカじゃねぇのか?と思う。

 てな感じで、気持ち的にはスッキリしているけど、病状的にはちょっとエラいことになっていてしんどい状況にある。
 この病気は早期に薬を飲み始めた方が軽症で済んで予後も良いようなので、どんな風に発症してどういう治療を進めているのか、読者様方の参考になればと書きとめておきたい。
 
<前兆>
 疲れがたまってるなというのはちょっと前から実感していて、水泡が出てくる2,3日前からは朝起きるとダルくて痰が絡む感じなので風邪気味だなと思っていたけど、今思うとこの時点でウイルスが暴れ始めていたのかもしれない。
<5月5日>
 朝、頭というか目の奥に重くしつこい感じの痛みがあって目が覚める。その時点ではまだ水疱は大きくなっておらず数も少なく目尻にちょっと赤いポツポツがある程度、ただ眉毛の中にヒリ付く痛みがあって、ちょうど寝ているあいだにムカデに噛まれたときのようなヒリつきかただったので、この時点ではムカデに噛まれて、ムカデの毒って噛みついたところにしみ出した毒液を塗りつけるという嫌な攻撃方法らしいので、目が痛くて充血しているのは、その毒液が目に入ったんだろうぐらいに思って、顔を洗って目も流水で流して”ほっときゃ直る”と無視して、夏日の中、炎天下でゴカイを掘って夕方釣りに行った。
 釣っている最中はアドレナリンかオステオカルシンだかが効いているからか、視線をズラしたときに目の奥がズキンと痛むことがあったけどあまり気にしていなかったけど、帰ってきてから目の痛みが激しくなって、どんな塩梅かと鏡を見ると目の充血も酷いけど、目尻の水疱が膨らんできてかつ周囲にも沢山できていて、髪の生え際や髪の中にもできている。
 これはムカデじゃない、触れれば水ぶくれができる系の毒虫で網戸の隙間とかから入ってきたンだろうから、アリガタハネカクシの類とかだろうか?そいつが寝てるときに顔の上を這ったか触った場所を手でこすって毒を塗り広げたかかなと思って、皮膚科に行くべきなんだろうけど祝日で休診なのでとりあえず酷い虫刺されにはステロイド軟膏だろうと、薬局に買いに行って再度熱いシャワーで良く洗ってから薬塗って寝た。
<5月6日>
 この日も目の痛さで起きてしまう最悪の目覚め。目の奥の痛みは激しくなっていて、特に眼球を動かさなくても周期的に、ズズーン、ズズーンと虫歯を思わせるような神経に響くような嫌な痛みが襲ってきて、早く連休明けて眼科が開いてくれるのを願うしかなく、対処療法的に保冷剤で目を冷やして炎症を多少なりとも抑えようとするけど気休めで、ひたすらジッと耐える。水疱は増えて成長しているしヒリヒリしているけど目の痛みに比べるとたいしたことはない。
 こんな酷い症状が出る毒虫はあまり聞いたことがなく、一体何なんだろうという不安も大きいけどとにかく目が痛い。
<5月7日>
 やっと連休が明けて、行きつけの眼科に飛び込む。
 虫刺されだと思うンですけどという当方の説明に、先生は即答で「これ虫刺されじゃなくてヘルペスですね、帯状疱疹です。」との診断。水疱瘡のウイルスが潜んでるのがストレスやら疲れで活性化して出てくること、抗ウイルス薬を1週間ぐらい飲むと、ウイルスの暴れてるのは収まって水疱はかさぶたになっていくんだけど、かさぶたが取れて痛みが取れるには時間が掛かること、特に痛みが後遺症的に残ることもあること、を説明してもらい目の炎症を抑える目薬と水ぶくれに塗る塗り薬を処方してもらい、一旦薬局へ。
 とりあえず原因がハッキリしたのと、治療方針がハッキリしたので一安心ではあるけど、思ったより重症のようで、薬局でも「帯状疱疹は目に出ると大変なんですよ、頑張ってください」と励まされてしまい、そんなにしんどいのかと嫌になる。
 内科に行って経緯を説明すると、内科の先生も特に説明もなく帯状疱疹として診断進めてたのでプロからすれば一目瞭然の症状だったのだろう。
 「眼科の先生から時間結構かかるって脅されたんですけどどうなんですか?」と聞いてみたら「A先生そんなこと言ってたんか」と笑いつつ、基本同じような説明をしてもらい、症状が治っても神経が傷ついてたりして”神経痛”的な痛みが後遺症的に残ることがあって、その場合は神経痛の治療に使うような”神経ブロック”とかを処方しますとのことだった、歳食ってからなると重症化しやすく予後も悪いらしい。薬は抗ウイルス薬と「目が痛くてたまらんので鎮痛剤をお願いしゃす」と泣きを入れてロキソニンも処方してもらう。
 抗ウイルス薬は”バラシクロビル”というヤツでカプセルかなとおもったらずっしり重い横長の錠剤で、パッケージにはDNAの2重螺旋をブッタ切ってるようなイラストがそえられていて頼もしい感じである。ネットで検索してみたらやはりウイルスのDNA合成を阻害する薬剤とのこと。
 薬局に再度寄って、しばらく籠城戦になるのだろうから食材買い込んで帰って、昼飯食って早速薬を飲んだけど、すぐに効き目が出るわきゃなくて痛みに耐えきれず1日2錠までとなっているロキソニンをもう一錠だけと2回泣きを入れて4錠飲んで、目を冷やしながら床についた。
<5月8日>
 この日が一番酷かったと思う。痛みはたいして引かず、水ぶくれはふくれあがり、水ぶくれできている顔面右半分上部が全体的に腫れてきて、右目は開けようとしないと開かなくて、かつ閉じてるつもりでも締まりが悪くたまに涙がこぼれてきて涙目のルカみたいになっている。鏡を見るとちょっと人様にお見せすることがはばかられる面相になっている。ブログネタにはするつもりだったので自撮りもしてあるけど、ちょっとグロすぎるので掲載は自粛させていただきます。あと、熱も出てきてしんどい。
 飯は食欲は落ちているけど食えなくはないので、病気の時は鶏卵で栄養補給だろうという昭和脳なので米炊いて卵ご飯か味噌汁でチャッと済ます。作業するのも結構しんどいので手は抜く。
 基本布団に横になってるんだけど、眠れれば良いんだけど24時間寝てるわけにはいかず暇になってくる、タブレットでネット動画やマンガは目を使うので長時間はしんどく、聞くだけで済む落語が暇つぶすのには良かった。活字データになってる書籍を読み上げてくれるアプリケーションソフトとかあるようなので使いたかったけど、設定とか上手くいかずに断念。集中力がないので難しいことはようせん。
<5月9日>
 相変わらず顔面は四谷怪談状態だし熱っぽくだるいんだけど、目の痛みがチョット治まってきてずいぶん楽になった。薬効いてきたのかなと期待する。寝るか動画見て過ごす。
 冷凍してあったアジの干物焼いて食ったら、ウニャ子に臭いでバレたようでカリカリあげたら「なんでアタイにはアジじゃないのニャ!!」とばかりに激しくウニャウニャ抗議してきてカリカリ食ってくれなかった。しばらく釣りにはいけんので我慢してくれ。
<5月10日>
 明らかに良くなってきて、水ぶくれはしぼんでかさぶたっぽくなってきてるし、熱も引いた感じで、目の痛みも治まっている。せっかくなので忘れないうちにとブログをしたためる。この調子で快方に向かってくれることを切に願う。

 という感じで、なんとか峠は越した気がする。
 大変な目に遭ってるけど、お医者さん始め現代医学のありがたさが身に染みた。当たり前なのかもだけど、すぐに診断して適切な処置を出せる本職の仕事にあらためて敬意を覚えるところである。
 コロナ禍の中で、医療従事者に対する差別やら誹謗中傷やらがあるとか聞くと「オマエら病気になっても医者にもかからず苦しみやがれ」って思うよネ。
 まあ、医療従事者はそういうクソ野郎どもも差別せず救おうとするんだろうけどね。尊いことである。

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