ハリセンボン属は見るからに捌くの面倒くさそうだけど、このイシガキフグもトゲは短いけどおそらく似たような面倒くささだと思うので、ネットでお勉強してから捌きに入った。
挟みでバチバチと背中を切り開いて皮をベリベリ剥ぐのがお作法らしいんだけど、まあ普通背中の正中線の脇あたりには包丁が入るコースがあるもので、包丁でもイケるだろうと思ってたけど早々に認識の甘さを思い知る。棘は皮に埋もれているベンツマークのような形の土台?からチョコンと生えていて、ベンツマーク自体は交互に隙間なく重なるように配置されていて、それを切らずには皮を切り開くことができない。確かにこれは調理バサミでバチバチ切らないと無理。どうなってるかというと、確か骨格標本作ってる好き者が居たよなと「 イシガキフグ骨格標本」で画像検索かけたら、よくこんな面倒くさい標本作る気になったなというような力作が結構ヒットしてくる。この防御力なら毒無しでも生きていけるのも納得の骨組み、というか棘関連は鱗由来だけど、なんにしろ防御力が高い。でもさすがにホモサピの生み出した便利な道具であるハサミには勝てずバチバチッとぶち切りながら背中を切り開くと、皮自体はベリベリッと綺麗に剥がれて、各鰭と口周りをチョイチョイと追加で切ってやりながら丸裸にできる。 で、内蔵を包んでいる膜を剥がして、内臓を取り出すと肝臓はそこそこ大きい。浮き袋も美味しそうな分厚さ、消化管もフグの仲間なので膨らむための膨張嚢とかいう胃の部分とかこれは美味しそう。腸管もまあまあ食えそう。内臓を包んでた膜もたべられるだろう。ただ今回肝は食わなかった。もったいないけどなんかビタミンA中毒みたいな症状が出たと報告している方がいて、やめた方が無難かなと判断。フグ料理はお客に提供するにはフグ処理者免許が必要なぐらいで、まあ危ないと思ったら手を出さない方が良い。フグの毒化はテトロドトキシンにせよパリトキシンにせよ餌生物に左右されるので、海洋環境が変化しつつある昨今では、昔は無毒だったのにというのもあり得るので、アタると死にかねないので自家消費はやりたければやればいいけど気をつけてっていう話だと思う。 そして、捌いて報告している人のほとんどが”身が少ない”と驚いているけどワシも驚いた。右の写真は三枚おろしにした残りではない。背骨のまわりにまとわりついているのが筋肉であり、いわゆる”身”の部分。栄養状態よくなくて痩せていたとはいえ、まあこんなもんらしい。尻尾振って泳ぐための筋肉が貧弱ゥーッ!って感じで、防御力高くて急いで逃げる必要ないとこんなもんで足りるっていう話だろう。あとフグなので膨らむ関係上から助骨もない。生物は必要のないものはすぐに退化させるってのはありがちな話で、天敵の居ない孤島では鳥が飛ぶ能力を失うのなんかが典型だけど、イシガキフグにせよハリセンボン系にせよ防御力は棘で稼ぐので「毒は要らない」ってなったんだろう。無駄なコストをかけないのが進化の王道なんだけど、性選択による”派手なオス”とかの例外もあるのもまた生命の不思議で面白いところ。 こんなの食うところたいしてあらへんやン、と思ったけど頭を包丁でザクザク切り分けて行くと、胸びれまわりは結構いい肉付いている。まあ胸びれパタパタさせてホバリングのように姿勢制御しながら餌食ったりするので筋肉量多いのは納得。そして頬まわりの筋肉も発達している。くちばしみたいになった融合した歯で付着生物を囓りとったり、くちばしの後ろにある臼歯みたいなデカい歯でカニやら貝やらバリバリと噛み砕いているンだろうからこれも納得。という感じで顔まわりは食うところ意外に多くて、味噌汁鍋にちょうど良いぐらいの食材にしかならんのではないかと心配したけど、内臓とかも含めると、具だくさんのアバサー汁にしようと思うのでオデン用の大鍋が必要になってきた。ザルにアバサー汁用の切り身と一部内臓肉をとりわけ、それとは別に浮き袋と膨張嚢、腸間膜?あたりは湯がいてポン酢用に別にしておく。その上で未処理の皮がまだガッチリ残っている。存外に食うところ多い。
メインのアバサー汁は、出汁は具も兼用する昆布と干し椎茸で水からとって、各種野菜ぶち込んで沸騰させて、ザルのアラをぶち込んで、塩と味噌で味付ける。野菜は今回、大根、キャベツ、ネギ。湯がいてポン酢は、薬味に大根おろしと刻みネギ。まあこのへんはハズしようがない鉄板の旨さ。本場沖縄のアバサー汁はフーチーバー(ヨモギ)が入ってたりするけど、まあ臭み消しとかフグ肉で必要だと思わないし、探しに行って採ってきたら気分が盛り上がるだろうけど、今回は普通に普段の味噌汁の具にイシガキフグのアラが入っただけのお気楽アバサー汁。なんだけど、出汁は旨いし、肉は少ないけど締まったフグ独特の白身でもちろん旨く。軟骨やらベロベロとしたゼラチン質の部分。クニュクニュしてたりプルプルしてたりする内臓も浮き袋も文句なしに旨い。
とりあえずガッチリ量をつくったので3日ぐらいは楽しめる。
で、後回しにしていた皮。結構厚みがあって旨そうに思う。ただ、棘がギッチリ皮に埋没する形で入っているので、棘を外さないと食えない。どうやって取り除くべきか、良い方法がないかネットで調べてみたけど、どうも1つずつ手で外すしかないようだ。うへぇ。とりあえず生皮は丈夫すぎるので茹でる。茹でると縮んでなんか生前の形に戻る。茹でて皮が縮むと棘どうしの間隔が狭くなるというか互い違いに重なり合うようにしてビッシリと、皮に埋もれた”土台”の部分が並ぶ。膨らんだ時には皮の中で土台がある程度スライドすることで、”フグ提灯”形態に移行するのだろう。堅い鱗の変化したもので防御するにしても、完全に動かないガチガチの甲羅状に外側を固めたハコフグ系統を、甲冑や鎧甲に喩えるならば、ある程度柔軟性がありつつも個別の堅い小さな部品を並べて防御するというイシガキフグの方式は、忍者の使う鎖帷子、あるいは西洋のチェーンメイルに相似していると言って良いのではなかろうか。ハコフグが、箱っぽい甲羅から出た部分のヒレしか動かせないのに対し、イシガキフグやハリセンボン系統は一応、体をくねらせるってほどでもないけど動かすことができる。”鎧”において、ガチガチに固めて防御力に特化するか、ある程度の柔軟性を持たせて機動性を上げるか、どちらも利点欠点あり、なにを重視するかでどちらの選択も取り得るのは、 中世あたりの人間用でも鱗を防御用に特化したフグの仲間でも同じなんだろうなと思う。
で、皮の調理に戻ると、どうにも面倒くさくて手で1つ一つ外すのは嫌になる。なんか良い方法はないか?ミキサーで棘ごとっていうのは、棘が堅すぎて食えたしろものではなくなるのは明白でダメ。表面をスプーンとかでゴリゴリ擦って皮を削って集められないか?ってのは皮が丈夫でだめなのと、そもそも棘が邪魔で皮のほんの表面しか削れそうにない。ゼラチン質だけ煮出して利用はまあ有りかなと思うけど、せっかくの分厚い皮、食感含め楽しみたいので、やっぱり皮そのものを食べるには、棘を抜くしかない。どうすれば抜きやすいか。色々試していて最終的に、内側の尻尾側からヒネリながら抜くというところに落ち着いた。棘の土台の形は一部顔まわりに4方が尖った十字型のモノもあるけど、基本的にはベンツマークみたいに3方が尖った星形?がほとんどで、かつ、頭の方に向けて1本が尖って刺さっていて、残りの2本は尾ビレのある後方にやや横に開いた形になっている。この2本の後ろの棘を、皮に爪突っ込んで指で摘まんでグリッとヒネリながら後ろに引っ張って抜いてやるとスルッと抜けてくる。尻尾の方から始めて順次頭に向けて抜いていくと、所々に外側に出た棘の穴が空いたベロンとした皮のみの状態に下処理が完了する。コツさえつかめば単純作業の繰り返しで15分ぐらいでできる。これイシガキフグの場合外に出た棘がごく短いからできる方法だけど、棘が長いハリセンボン系だとどうすれば良いんだろう?骨格標本見たところだと、イシガキフグとは違って前方のとんがりは短く、逆にイシガキフグでは短い外側向いた棘が長く、膨らんでないと後ろに寝る形なので、イシガキフグの逆で前から攻めて、長い棘を皮から引っこ抜く感じなのか?そのうち、ヒトヅラハリセンボンあたりでも入手できたら試してみよう。
芸が細かいなと感心したのが、肛門まわりの棘の土台の形状で、単純なベンツマーク型だと尻の穴が塞がってしまう。そこで前方に伸びる棘と横に伸びる棘のうちの中心側(尻穴側)でユルい弓状の形にして、左右1セットで尻穴を守りつつ、出すモノも出せるようになっている。アーナルほど、という感じである。まずはシンプルに湯がいて味噌だれかけて田楽風で食べたけど、思ったほど味は濃くなく、ぷるぷるの食感を楽しむモノのように感じた。味噌汁にぶち込んでも、出汁自体ははんなりした薄い味で、やや拍子抜けしたけど、ゼラチン質は上質で、冬の室温で冷めた味噌汁がテロンテロンに固まってた。
せっかくなので、記念に棘を何本かと歯のまわりの骨を取っておくべく、棘はまあタワシで擦ったら綺麗になったけど、上下の顎はアバサー汁でまわりの皮や軟骨、筋肉を食べて、さらに汁にぶち込んで煮返して煮崩れたあたりにまたしゃぶりまくって綺麗な標本?になった。普通標本にするために骨周りの肉や軟骨を処理するのには、薬品やらヒメマルカツオブシムシ、海に沈めて動物プランクトン、とかを使うようだけど、ワシャ自分の舌でなんとかする流派。ひょっとして開祖か?
ちょっと手間はかかったけど、思ったより食いでもあったし、味も良い獲物で、手間かけて料理するのも楽しく、良い拾いものだった。











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