2023年1月20日金曜日

鹿肉の煮込みア・ラ・アラスカ ーナマジのビンボ飯ジビエ編ー

  へっへっへ鹿肉いただいちゃいました。ということで普段は主な蛋白源は魚なので、久しぶりの獣肉であり嬉しい。

 美味しくいただくにはどう料理すれば良いか?悩み所である。単純に美味しいのが分かってる料理方法なら”刺身”で生姜醤油なんだけど、野生の鹿の場合はE型肝炎のリスクがあるので人様にお薦めするものではないと思う。劇症化は稀で死ぬリスクは少ないとしてもそういう危険性がある料理を安易に褒めちゃ駄目よとは思う。慣習的に猟師さん達が普通に刺身で食べている、鹿にE型肝炎の流行がないような地域で、それでも鹿も移動するし危険性はゼロじゃないと分かって、自己責任で食べる分にはご自由にだとは思うし、ワシも過去いただいてきた。”ノロが怖くて生牡蠣食えるか!”ってのと”フグは食いたし命は惜しし”の中間ぐらいの、アタる確率と罹患したときの被害の大きさかなと感覚的には思ってる。フグみたいに当たったらあっさり死ぬような猛毒ではないけど、ノロみたいに当たっても腹下しまくるぐらいで死ににゃしないウイルスほど病原性弱くないので下手すると死にかねんという認識でだいたいあってるかと。

 とはいえ、冷凍では不活化しないE型肝炎ウイルスも加熱すれば安全なので、加熱しても美味しい料理方法があれば、そちらを選択するのが無難というもので、お薦めするならそっちだろうとワシャ思うんじゃ。ということで”ジビエ料理”なんていうのは”ビンボ飯”ネタとしてはオシャレが過ぎると感じるような時代になって来たけど、田舎住みだと、害獣駆除の副産物として出てきたジビエ肉がお裾分けされてくるなんてのもありえるので、スカベンジャーナマジ的にビンボ飯カテゴリーに分類してみました。

 まあ手っ取り早く、焼き肉にしてしまうのは簡単でハズレはないと思う。狩猟マンガ「山賊ダイアリー」ではニンニク効かせてステーキで食ってたけど、鹿肉は脂の少ないあっさり目の赤身なのでステーキはがっつり食えて旨そうだなと腹が鳴った。よく、ジビエ肉はっていうかマトン(羊)でさえ「癖が強い」とか「独特の臭いが」とか言う輩がいて、カツオの血の臭いや磯魚の風味でも同じだけど、「そこが味わいどころだろ?」っていう食材の個性を全否定するような話で、なんでも美味しいって食ってしまうワシがバカ舌なだけかもしれんけど、なんだか幼稚な味覚だなと正直馬鹿にしてる。その違いが楽しめないのなら一生カロリーメイトでも食っておけと(あっ大塚製薬さん、悪口じゃないですよ僕カロメ大好きです、一年分送って下さっても困りません!)。牛肉には牛の風味があるし、豚でも鳥でも一緒なように鹿には鹿の味や香りがある。ただ、鹿肉は個体差はあるのかもだけど牛よりは癖がないぐらいでジビエ初心者にもその点ではお薦めできると思う。まあワシ、ジビエゆうても猪と鹿と蛇亀蛙とクジラとカモ・キジぐらいしか食ったことないけどな。

 という鹿肉を味わう時に、焼き肉は正直他の肉でやっても、同じじゃないけど似たような感じになるので、もっと鹿肉っぽさを味わえる方法はないかと、昔色々試して「これだ!」と腑に落ちたのが、今回ご紹介する「鹿の煮込み」である。鹿を料理するにあたって”モミジのお刺身”以外に何があるか、参考にするなら鹿を常に食べているような先住民族とかの狩人の料理方法に倣うのは良いかもと思ったんだけど、鹿食ってる先住民族の料理方法ってアイヌのそれがモロにそれなんだろうけど、昔は「ゴールデンカムイ」なんて連載始まってなかったから、調べることができなかった。でもって目を付けたのがアラスカのエスキモーのハンター達のカリブー(トナカイ)料理だった。鹿じゃなくてトナカイなのは気にしないことにした。椎名誠先生か写真家の佐藤秀明氏の著書で紹介されていたんだったと記憶しているけど、アラスカってごぞんじのとおり寒い土地なので野菜がほとんど穫れなくて日持ちのするジャガイモやらタマネギぐらいしか流通していないようで、それらとトナカイ肉を基本塩味でハーブちょいと入れるぐらいで煮込んだのが、良い出汁が出て実に暖まって美味しいというので作ってみたら鹿でもいけた。

 以下作り方。っていっても鹿肉をジャガイモとタマネギとちょいハーブ効かせて塩味で煮込む。以上。ってぐらいで簡単。

 材料はそんなわけで、鹿肉適宜(今回写真の半分の4~500gぐらい)、タマネギ1個、ジャガイモ2個、ハーブは常備してある生姜半欠けとコショウ少々だけでは寂しいので、一番”ハーブ”っぽい香りづけになるのは何かなと考えて今回はローズマリーを買ってきてこれも適宜、後はお鍋に具材が浸かるぐらいの湯と塩小さじ3ぐらい、具材炒めるときにサラダ油少々、と至ってシンプル。

 調理も簡単。

1.材料を切る

 鹿肉は半解凍状態ぐらいでごろっとしたブロック状に切り分け、タマネギは薄切りにして、サラダ油をひいた鍋にぶち込み、塩小さじ3、コショウ少々、ローズマリー適量、細切りにした生姜半欠け分を投入。


2.中火から弱火で炒めていきます。

 鹿肉の表面に火が通った感じになって、タマネギがしんなりしたぐらいまで炒めたらOK。


3.お湯(水でも可)とジャガイモ投入。

 ゴロゴロっと切ったジャガイモを投入し、具材達がヒタヒタっと浸かるぐらいの湯を入れて中火で煮立たせます。


4.灰汁を適当に取る

 灰汁は野菜から出る苦みや渋みのもとになるのは取り除きたいとこでだけど、今回ジャガイモとタマネギからはたいした灰汁は出ず、肉から出るのは主に肉汁のタンパク質が凝固したものなので、残すと見た目が悪くなるし、場合によっては臭いが気になるかもだけど、取りすぎると旨味も取り除くことになり、今回の場合、特に楽しみたい”野趣”が削がれることにもつながるので、ブクブクと盛大に灰汁が盛り上がってきても、なん回か灰汁を汁に溶け込ますつもりでかき混ぜて、それでも出てくる灰汁をある程度取り残しつつ取る感じでいきます。見た目より味わい重視ということでヨロシクです。

 で、灰汁がある程度落ち着くぐらい煮立たせたら、ここから”ビンボ飯”的煮込み料理の必勝法である”保温調理”に入る。煮込み料理で肉が軟らかく味が染みた状態まで煮込むには「弱火でコトコト」やってたら時間もガス代もかかってこのご時世こまります。ビンボ飯にはあるまじき調理法。かといって圧力鍋も贅沢だし。っていうときにこれはガス代節約しつつ長時間煮込むのと同様の効果が発揮できる”ビンボ飯”ならではのテクニックなので是非憶えていってください。やることは簡単。「保温調理」の名の通り鍋ごと保温して長時間温かい状態を保ってやるってだけ。具体的にはタオルとかで適宜くるんで、ハッポーの箱やクーラーボックスにぶち込んで放置。それだけのこと。コツというのも馬鹿臭いけど、熱い鍋を直でハッポーの箱に入れるとハッポー溶けたり変形したりするのでタオルで巻きつつ保温効果を高めるべく隙間も埋めてやると良いかと思っちょります。今回ちょうどクーラーバックに鍋が入ったのでクーラーバックを利用。

 で4,5時間放置して完成。が左の写真の状態。

 見た目は茶色くて正直イマイチ。”映え”的にはよろしくない。

 しかし、これで良いんです。なぜなら美味しいから!

 味付けといっても塩ぐらいで、こんな”原始的”な料理がたいして美味しいわけがない、と思うかもしれない。でも鹿肉の旨味の出汁がタマネギの出汁と相乗強化で”塩だけでこんなに旨味が!”というぐらいの味になってて、ジャガイモにその味が染みている。臭みもほとんどないので無くても良いぐらいだけど、生姜、コショウ、ローズマリーの香りも邪魔ではなくほのかに香って食欲をそそってくれる。丼飯余裕。

 塩味でこれだけ美味しいんだから、まあ肉じゃがみたいに醤油味にしても、カレー味にしても、トマト煮込みにしても、煮込みは全体的に鹿肉の得意分野なんだろうと思っちょります。

 肉料理で肉の旨味を単刀直入に味わう方法として塩ふって”焼く”という方法は、ステーキにせよ焼き鳥にせよ人気料理でその美味しさはみんな知ってるところだけど、塩味で煮てしまうというのも、これがなかなかバカにできない美味で、”肉を焼くには才能がいる”と美食家の開高先生が書きつけていたと思うけど、焼き加減とか結構難しめ。でも、肉を煮るのは簡単で誰にでもできます。味付けも後から調整できるし、煮込み足りなかったら再度煮たらよい。ということでジビエを野趣溢れる感じで堪能したいなら塩味で煮てしまうのをナマジ的にはお薦めします。

 旨いぞ!

2 件のコメント:

  1. 鹿の煮込み、美味しそうですね。北欧でもトナカイはよく食べますので、一度トライされてはいかがでしょうか。

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    1. おはようございます
       トナカイ肉って日本で手に入るの?って検索してみたら北海道でも生産してるみたいですね。盲点でした。アラスカでは野生だけど北欧じゃ家畜化されてますからまた別の形で料理されて楽しまれてるんでしょうね。料理法のヒントもありそうです。トナカイ肉自体も食べてみたいですね。

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